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【発明の名称】 接近検知センサおよびその信号処理方法
【発明者】 【氏名】瀬塚 武土

【氏名】後藤 英夫

【要約】 【課題】接近検知における検知もれ、ノイズの誤検知を防止して信頼性を向上させる。

【解決手段】物体の接近を電気信号として検出してセンサモジュール2の演算処理装置26において判定して警報を発する接近検出センサであって、検出部22を自己診断する自己診断部24と、パラメータ・コントロール部25を備えるとともに、前記演算処理装置26に学習機能、環境順応機能、自己診断機能を遂行する部分を備えたことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 物体の接近に感応する感応部(1)と、この感応部(1)における物理変化を電気信号に変換して検出する検出部(22)と、検出された信号を判定信号に変換する変換部(23)と、この変換部(23)からの判定信号を入力する演算処理装置(26)と、この演算処理装置(26)からの出力により出力ポート(28)を介して警報を発する警報装置(4)とからなる接近検知センサにおいて、前記演算処理装置(26)からの指令により前記検出部(22)を診断して診断結果を前記演算処理装置(26)に戻す自己診断部(24)と、前記検出部(22)および変換部(23)からの信号によりパラメータを作成してこれら検出部および変換部に戻すとともに前記演算処理装置(26)にもこれを入力するパラメータコントロール部(25)とを備えるとともに、前記演算処理装置(26)に学習機能、環境順応機能、自己診断機能、通信機能を遂行する部分を備えたことを特徴とする接近検知センサ。
【請求項2】 前記演算処理装置(26)からの出力を外部に伝達するとともに外部から前記演算処理装置(26)にパラメータを設定する経由点となる通信ポート(29)を備えた請求項1に記載の接近検知センサ。
【請求項3】 前記感応部(1)が、導電体のアンテナ(1)である請求項1または2に記載の接近検知センサ。
【請求項4】 物体の接近を感応部により検知し、この感応部における物理変化を検出部において電気信号に変換し、この電気信号を変換部において判定信号に変換して演算処理装置に入力し、設定されたしきい値と比較して接近を判断し、出力信号を出力して警報装置より警報を発する接近検知センサにおける信号処理方法において、前記検出部および変換部からの信号を自己診断部において判定して検出部および変換部に戻し、また、検出部および変換部からの信号をパラメータコントロール部に入力してパラメータを作成してこれら検出部および変換部に戻し、さらに前記演算処理装置において、前記変換部からの判定信号に前記自己診断部ならびにパラメータコントロール部からの情報を加えて接近の判定を行い警報を発することを特徴とする接近検知センサにおける信号処理方法。
【請求項5】 前記自己診断部において検知開始前に読み込まれたデータが設定した正常範囲にあることを自己診断し、外れている場合にはデータの読み込みをやり直すとともに、前記演算処理装置において前記自己診断部からの情報ならびに前記変換部からの判定信号が正常範囲にあることを自己診断し、外れている場合にはエラー通知を発することを特徴とする請求項4に記載の接近検知センサにおける信号処理方法。
【請求項6】 前記変換部からの判定信号に前記自己診断部ならびにパラメータコントロール部からの情報を加えて前記演算処理装置において基準値ならびにしきい値を設定し、判定信号がこのしきい値を超えたときに接近と判定する請求項4に記載の接近検知センサにおける信号処理方法。
【請求項7】 検知開始前に判定信号の示す定常値、変動幅等のアンテナ情報を学習して基準値を設定するとともに、同じく検知開始前に判定信号から検知対象情報を学習してしきい値を設定することを特徴とする請求項6に記載の接近検知センサにおける信号処理方法。
【請求項8】 判定信号から定常値のみを抽出してこれを基準値として設定することを特徴とする請求項6に記載の接近検知センサにおける信号処理方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば住宅や工場等の警戒を要する区域に不審な人間が接近したことを検知して警報を発する接近検知センサおよびその信号処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】住宅や工場の敷地等の警戒を要する区域に、不審な人間が接近したことを検知して音声やランプで警報を発し、また遠隔の監視室等に警報を伝達することは種々試みられている。例えばそのような場所の手前にマットスイッチを埋設して電気的に人間の接近を検知したり、可視光線や赤外線を投射してこれを遮るものがあれば受光器により検知するものが知られている。また、特開2000-28309号公報に記載されているように、検出しようとする区域を囲うフェンス等に複数のコンデンサにより構成される静電容量センサを取り付けて、静電容量の変化により接近を検知するやり方もある。
【0003】静電容量等の物理変化を検知して接近を判断する場合の信号処理の一例を図17により説明する。センサモジュ−ル2には物理変化を入力する入力ポ−ト21と、警報を出力する出力ポ−ト28とが設けられており、入力ポ−ト21と出力ポ−ト28との間には検出部22、変換部23、判定部26a が直列に接続されている。
【0004】このうち検出部22とは物理現象の変化を電気信号に変えて検出する機能ブロックで、例えば温度センサ、受光器、コンデンサ等がある。変換部23とは、検出部で得られた電気信号を判定部26a が判定しやすい信号(以下これを「判定信号」という)に変換処理する機能ブロックで、例えばリニアライザ、AC/DCコンバ−タ、増幅器等がある。
【0005】判定部26a とは入力信号に対して出力すべきかどうかの判定を行う機能ブロックで、例えば比較器などがこれに該当するが、CPU等の演算処理装置の機能の一部を利用することもできる。図17の例でいうと、物体の接近をコンデンサ等により検知し、その物理変化をセンサモジュ−ル2の入力ポ−ト21に入力し、検出部22において電気信号に変換して信号を出力し、この信号を変換部23において増幅するなど、判定信号に変換処理して判定部26a に入力して設定値と比較し、接近と判断したら出力ポ−ト28から警報出力信号を出力して警報装置により警報を発するのである。
【0006】いずれの場合も、接近によって生ずる物理変化を電気信号に変換し、設定値と比較して接近を判断するものが多いが、一般に設定値を低くすると誤報が多くなり、高くすると検知力が低下するという現象が見られ、信頼性においていまひとつ満足のゆく方式が実現していないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような現状に鑑み、アンテナ感度や周辺環境により検知信号の変化を常に学習しながら更新して環境に順応することにより検知の信頼性を飛躍的に向上させた接近検知センサを実現することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の本発明は、物体の接近に感応する感応部と、この感応部における物理変化を電気信号に変換して検出する検出部と、検出された信号を判定信号に変換する変換部と、この変換部からの判定信号を入力する演算処理装置と、この演算処理装置からの出力により出力ポートを介して警報を発する警報装置とからなる接近検知センサにおいて、前記演算処理装置からの指令により前記検出部を診断して診断結果を前記演算処理装置に戻す自己診断部と、前記検出部および変換部からの信号によりパラメータを作成してこれら検出部および変換部に戻すとともに前記演算処理装置にもこれを入力するパラメータコントロール部とを備えるとともに、前記演算処理装置に学習機能、環境順応機能、自己診断機能、通信機能を遂行する部分を備えたことを特徴とする接近検知センサである。
【0009】請求項2に記載の本発明は、前記演算処理装置からの出力を外部に伝達するとともに外部から前記演算処理装置にパラメータを設定する経由点となる通信ポートを備えた請求項1に記載の接近検知センサである。請求項3に記載の本発明は、前記感応部が、導電体のアンテナである請求項1または2に記載の接近検知センサである。
【0010】請求項4に記載の本発明は、物体の接近を感応部により検知し、この感応部における物理変化を検出部において電気信号に変換し、この電気信号を変換部において判定信号に変換して演算処理装置に入力し、設定されたしきい値と比較して接近を判断し、出力信号を出力して警報装置より警報を発する接近検知センサにおける信号処理方法において、前記検出部および変換部からの信号を自己診断部において判定して検出部および変換部に戻し、また、検出部および変換部からの信号をパラメータコントロール部に入力してパラメータを作成してこれら検出部および変換部に戻し、さらに前記演算処理装置において、前記変換部からの判定信号に前記自己診断部ならびにパラメータコントロール部からの情報を加えて接近の判定を行い警報を発することを特徴とする接近検知センサにおける信号処理方法である。
【0011】請求項5に記載の本発明は、前記自己診断部において検知開始前に読み込まれたデータが設定した正常範囲にあることを自己診断し、外れている場合にはデータの読み込みをやり直すとともに、前記演算処理装置において前記自己診断部からの情報ならびに前記変換部からの判定信号が正常範囲にあることを自己診断し、外れている場合にはエラー通知を発することを特徴とする請求項4に記載の接近検知センサにおける信号処理方法である。
【0012】請求項6に記載の本発明は、前記変換部からの判定信号に前記自己診断部ならびにパラメータコントロール部からの情報を加えて前記演算処理装置において基準値ならびにしきい値を設定し、判定信号がこのしきい値を超えたときに接近と判定する請求項4に記載の接近検知センサにおける信号処理方法である。請求項7に記載の本発明は、検知開始前に判定信号の示す定常値、変動幅等のアンテナ情報を学習して基準値を設定するとともに、同じく検知開始前に判定信号から検知対象情報を学習してしきい値を設定することを特徴とする請求項6に記載の接近検知センサにおける信号処理方法である。
【0013】請求項8に記載の本発明は、判定信号から定常値のみを抽出してこれを基準値として設定することを特徴とする請求項6に記載の接近検知センサにおける信号処理方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の接近検知センサならびにその信号処理方法を図面により詳細に説明する。図1は実施例のセンサモジュ−ル2の構成を示すブロック図で、図17と共通するものの他、24は自己診断部、25はパラメ−タ・コントロ−ル部、26は学習、環境順応、自己診断等の機能を有するとともにこれらの内容を記憶する演算処理装置、27は演算処理装置26に必要に応じて設定値を入力できる設定入力部、29は遠方の監視室等へ警報を出力したり、遠方からの操作を受け入れる通信ポ−トである。各要素を結ぶ太線は接近検知にかかわる主信号を、細線はこれをサポ−トする補助信号を示し、矢印はその伝達される方向を表す。
【0015】なお本明細書における「演算処理装置26」は、便宜上コンピュ−タの中央演算処理装置(CPU)のイメ−ジを持つ用語であるが、本発明の演算処理装置26において必要な学習、環境順応、自己診断などの各機能はそれぞれ固有の目的に応じた専用の回路によって実現が可能であり、これらを組み合せることによって本発明は実施できるのであるから、本明細書における「演算処理装置」は必ずしも単一の装置を指すものではない。
【0016】図1において、物体の接近を感応部1(図示せず)により検知し、この感応部における物理変化を入力ポ−ト21からセンサモジュ−ル2に入力し、検出部22において電気信号に変換して信号を出力し、この信号を変換部23において判定信号に変換して演算処理装置26に入力し、設定されたしきい値と比較して接近を判断し、出力ポ−ト28から出力信号を出力して警報装置4(図示せず)より警報を発するのであるが、この間において、前記演算処理装置26からの指令により前記検出部22を診断して診断結果を前記演算処理装置26に戻す自己診断部24と、前記検出部22および変換部23からの信号によりパラメータを作成してこれら検出部および変換部に戻すとともに前記演算処理装置26にもこれを入力するパラメータ・コントロール部25とを備えている。
【0017】前記演算処理装置26においては、前記変換部23からの判定信号に前記自己診断部24ならびにパラメータ・コントロール部25からの情報を加えた上で接近の判定を行い、警報を発するのである。なお自己診断部24、パラメ−タ・コントロ−ル部25の機能については追って説明する。図2は本発明の一実施例である接近検知センサユニットの外観斜視図で、1は感応部である板状ブロックの表面に導電体を貼りつけたアンテナ、2はセンサモジュ−ル、3はセンサモジュ−ル2のパッケ−ジに組み込まれた押しボタン、4は同じくセンサモジュ−ル2のパッケ−ジに組み込まれたブザ、5は電源プラグ、6は監視室等へ連絡する通信ケ−ブルである。
【0018】図3は図2の実施例におけるセンサモジュ−ル2の内部を機能別に表した機能ブロック図で、図1と同様、太線が主信号の流れを示す他、二重線は双方向の信号の伝達を示す。この実施例では、図1における検出部22は前記のアンテナを構成要素とする発振回路ならびにインピーダンス変化検出部であり、これに接続される変換部23は、このインピーダンス変化の検出値を電圧値として出力する直流変換回路ならびに増幅回路から構成されている。
【0019】また図3における「発振部自己診断」と「アンテナ接続自己診断」とは図1における自己診断部24を使用し、演算処理装置26からの指令により発振の有無、アンテナ状態の安否(断線の有無)をチェックして、診断結果を演算処理装置26に戻す。また図3における「周波数コントロール」、「ゲインコントロール」、「オフセットコントロール」の3つは図1におけるパラメータ・コントロール部25を使用し、検出部22および変換部23からの信号によりこれら3種のパラメータ(周波数、ゲイン、オフセット)を設定してそれぞれ検出部および変換部に戻すとともに前記演算処理装置26にもこれを入力する。
【0020】一方、図3における「ディジタル信号制御」と「ディジタル信号処理」、および「アンテナ学習」、「感度学習」、「環境順応」、「自己診断」、「学習記憶」の各機能、さらに「通信」機能は、図1における演算処理装置26において実行される。これらはコンピュータにおける中央演算処理装置(CPU)を使用し、追って説明するフローチャートによってプログラムすれば実施できるが、それぞれの機能を有する専用回路を作ってこれらを組み合せて実施することも可能である。
【0021】つづいて本発明の接近検知センサにより接近検知を行う作業手順をフローチャートおよびグラフにより前記の各機能毎に説明する。図4は全体の流れである。この接近センサには、学習モード、レジューム(パラメータ復帰)モード、センシングモードの3種のモードを設定してある。まず電源を入れて各種の初期設定を行い、設定入力部27からの学習設定条件がある場合は学習モードを経由して、すでに各パラメータが設定されていて学習不要の場合はレジュームモードを経てセンシングモードに入り、接近検知の待機状態となる。
【0022】ここで本発明の接近検知センサにおける測定データからの接近検知手順をグラフにより説明する。図5は用語を説明するためのモデルで、縦軸は電圧値、横軸は時間である。Aはディジタルフィルタリング後の判定信号すなわち測定データ(以下「信号値」という)、Bは基準値、Cは判定の基準となるしきい値、Dは環境順応モードにおいて基準値を設定するためのしきい値であるプレしきい値、Eは検知幅、Fはプレ検知幅で、B〜Fはいずれもパラメータであり、信号値Aを情報源として、基準値B、これに検知幅Eを加えたものがしきい値C、検知幅Eに対する割合を定めることでプレ検知幅F、プレしきい値Dが定まる。
【0023】図6は信号値と出力の関係を示すグラフで、信号値Aがプレしきい値を超えても出力はないが、しきい値Cを超えている時間だけ、検知出力が出ていることを示している。つぎに図7は学習モードを示すフローチャートである。ここではまずアンテナ学習を行う。アンテナ学習は、学習モード時に、判定信号からその定常値(検知情報やノイズを除いたアンテナの定常状態における信号値)、変動幅等のアンテナ固有の情報および環境情報を自動学習する機能である。この学習で設定するパラメータとしては、サンプリング周期、オフセット値、基準値、発振周波数、ノイズデータ、ディジタルフィルタ強度などがあり、アンテナから常時入ってくる測定データから適宜これらを切り出して設定するが、一部について、例えばサンプリング周期などは事前設定してもよい。
【0024】終了時に学習結果に異常値が含まれていないか自己診断し、問題が生じた場合はエラー通知を行うと共に再度アンテナ学習を行う。なお、ここでいう自己診断は演算処理装置26において行うものであり、前記の自己診断部における自己診断(発振の有無、アンテナ状態の安否)とは別のものである。自己診断結果がOKであれば、感度学習に移行する。感度学習は、学習モード時に検知対象情報、例えば検知対象のサイズ、検出しようとする位置等を自動学習し、検知エリアを設定する機能であり、リアルな空間で実際の人間等を所定の距離まで接近させて行う。この学習で設定するパラメータの主要なものは、検知幅、しきい値、プレしきい値、ゲイン、ヒステリシス値、ファジー値等である。ここでも終了時に自己診断して問題があれば学習エラーとしてアンテナ学習からやり直し、OKであればパラメータの書き込みを行って学習モードを終了する。
【0025】図8、図9はアンテナ学習、感度学習の手順をさらに詳しく示すフローチャートである。図10は学習機能を説明するグラフで、(a)は信号値に対して、例えば最初の3秒間はアンテナ固有情報の学習期間、つぎの5秒間はアンテナ環境情報の学習期間、やや時間をおいて5秒間は感度学習期間とすることを示している。
【0026】(b)は当初は入力データそのままであるが、アンテナ固有情報を学習して、途中から入力データが入力範囲のほぼ中央のレベルになるようにシフトしている状況を示している。この移動量がオフセットである。(c)ではアンテナ環境情報として学習期間内の基準値Bに対する変動成分をノイズ情報としている。
【0027】(d)では検知対象モデルを接近させる等してその際の信号変化値と基準値Bとの差を検知幅Eとし、この検知幅にヒステリシス特性やあいまい感度特性(ファジー値)を加味したものをしきい(閾)値Cとする。図11はレジュームモードを示すフローで、ここで使用されるのが学習記憶機能である。これは学習した情報を記憶し、メンテナンスや不時の停電等で電源が切断され、再度投入された場合に学習情報に基づいて再起動する機能であり、アンテナ学習、感度学習、環境順応、自己診断の各機能に対する援助機能として使用する。まずすでに書き込まれているパラメータを読み込み、読み込んだデータを自己診断してOKであれば終了するが、NGの場合は学習モードに戻り学習をやり直すことになる。
【0028】学習記憶させる主なパラメータとしては、サンプリング周期、発振周波数、ディジタルフィルタ強度、ゲイン、オフセット、基準値、検知幅、ノイズデータなどがある。図12はセンシングモードのフローチャートである。サンプリング、ディジタルフィルタリング、環境順応の各処理を経た測定データにより検知の判定を行う。環境順応機能については追ってくわしく説明する。
【0029】環境順応処理を行った基準値から定められるしきい値と判定信号を比較し、接近と判定したら検知出力を行い、ここでも自己診断を行った後、パラメータの書き込みを行う。エラーと判断されればエラー通知を発し、OKであればそのままセンシングモードのスタートに戻り、センシングを繰り返す。信号値の変化する要因としては、人間の接近という真の検知対象となる変化のほかに、種々の原因によるノイズと、温度変化等によるドリフトとがある。このうち、前2者による変化分を除去してドリフト成分のみ残る定常値とし、判定の基準となる基準値を刻々と修正しようとするのが環境順応機能である。
【0030】図13はこの環境順応機能を説明するグラフである。Aの信号値に基づいて基準値Bを設定するが、入力信号の急激な変化分は無視し、ゆるやかな変化のみを検知して(a)の楕円で囲んだ部分に示すように基準値B、しきい値C、プレしきい値Dをこれに追随させている。この機能がなく仮に基準値を一定値としていると、例えば(b)に示すように同じ程度の変化が2回あっても、2回目を検出できないことになる。環境順応機能が備わっていると、(c)に示すようにしきい値が変化して、2回目の変化を検出することができる。
【0031】この環境順応機能においては、判定信号から定常値のみを抽出してこれを基準値として設定することを特徴としている。例えば判定信号を一定時間遅延させてサンプリングしこれにより基準値を設定するとともに、判定信号が設定されたプレしきい値を超えている期間、ならびにその前後の期間では遅延サンプリングを停止し、その停止時間が終了後にサンプリングを再開し、データの欠落した期間について停止期間終了時点の信号値により補完を行う。
【0032】環境順応機能における信号処理を図14のグラフで説明する。(a)の信号値Aは本来のセンシングデータである。これに対して、一定時間、例えば10秒遅延させてサンプリングを行うと、(b)のようになる。つぎに(b)の信号値をプレしきい値と比較し、信号値がこれを超えている期間(t2)と、プレしきい値以下に下がった瞬間から一定時間の期間(t3、これをアフタープレ検知と呼ぶ)は、(c)に示すように遅延サンプリングを行わないことにする。また、(a)の信号値がプレしきい値を超えた瞬間から(b)の遅延データがプレしきい値を超えるまでの時間、すなわち遅延時間(t1)に相当する期間も、遅延サンプリングは行っているがデータは使用しない。つまり入力信号がプレしきい値を超えている期間とその前後の期間のデータを取り込まないこととし、このデータの欠落した期間については、停止期間終了時点の信号値を用いて補完すると、(d)のようになる。これで入力信号の急激な変動部分が除去され、ゆるやかな環境変化分のみが基準値に取り入れられる。なお期間t2は入力信号によって変動するが、t1、t3についてはパラメータ値として設定することができる。
【0033】ここで遅延サンプリングを行うことの意味を図15により説明する。(a)は信号値Aで、プレしきい値Dを超えようとする瞬間のサンプリングポイントを示している。実際にはこの後信号値はA’に示すようにしきい値Cには達しないで下降したとする。しかしサンプリングポイントの時点では下降するかどうかは予測できないから、もし遅延を行わずに直接の信号値で基準値を演算していれば(b)に示すように基準値Bを上昇傾向とせざるを得ず、これに伴ってプレしきい値も上昇してしまい、信号値Aの変化を検知できずに信頼性を低下させるおそれがある。しかし遅延サンプリング機能が備わっていると(c)に示すように一定時間前のデータが基準値となるので、信号値Aがプレしきい値Dを超えることによって環境順応機能を一時停止する際の仮の基準値が上昇前の定常状態に近く、そのようなことがない。
【0034】しかし前記したようなプレしきい値判定およびアフタープレしきい値検知などの遅延サンプリング条件が備わっていなければ、結局(d)に示すように時間遅れはあるものの(b)と同じ状況が訪れるが、遅延サンプリング条件が備わっているとこれを回避することができ、(e)に示すように定常状態にきわめて近い基準値が得られ、これによって判定を行えば、ゆるやかな環境の変化に順応した精度の高い判定を行うことができる。
【0035】図16は、以上説明した環境順応機能を表すフローチャートである。環境順応機能は、アンテナ固有情報、アンテナ環境情報を常時監視し、これらの環境変化に順応するように再学習することができ、センサ能力の安定化、再設定作業の省力化、センシングモード時における自己診断機能を実現するための判断パラメータの提供、高精度なディジタルフィルタを実現するためのパラメータの提供などの効果を奏する。
【0036】図16において、アフタープレ検知終了直後、すなわち停止時間終了後はサンプリングが再開され、ディジタルフィルタリングを行った上で環境順応用バッファの全データにセット(更新)される。それ以外のタイミングでは通常のプレしきい値による判定を行い、Yであれば遅延サンプリングが続行されるが、Nと判定されればさらにアフタープレ検知を判定し、Yであれば遅延サンプリング続行、ここでもNであれば前記と同様に環境順応用バッファの最新データとしてセットするとともに、環境順応用バッファをディジタルフィルタリングして最古データにより基準値データをセットし、この新しい基準値に対して、学習時に設定した検知幅Eを用いて新たなしきい値、プレしきい値を再設定して環境順応機能のスタートに戻る。
【0037】ここで更新されるパラメータは基準値、しきい値、プレしきい値、ヒステリシス値、ファジー値などであるが、サンプリング周期、発振周波数、ゲイン、ディジタルフィルタ強度などを事前設定する代わりにこの機能によって更新することもできる。前記したように、本発明においては学習、レジューム、センシングの各モードにおいて自己診断機能が使用されているが、アンテナ固有情報、アンテナ環境情報などのアンテナ情報や、センサモジュール状態を常時監視し、学習モード時の学習結果やセンシングモード時の自己診断結果に問題が発生した場合にはすみやかにエラー通知を行うとともに、レジュームモード時の自己診断で問題が生じた場合は学習モードに強制変更するので、メンテナンス作業の省力化、センサ能力の安定化が図られるほか、この接近検知センサを実際に使用するユーザにセンサの知識がなくても何ら支障を生じないという利点を有している。
【0038】自己診断の対象となるパラメータは、学習モードにおいては検知幅、しきい値など、レジュームモードにおいては主として基準値、センシングモードにおいては主としてしきい値である。またこの実施例においては、信号をディジタル処理することによってフィルタリング演算等による収集データの安定性、信頼性を高め、前記各機能の実現を図っている。またディジタル信号制御を行うことによってセンシング情報による内部処理制御や周辺機器制御が可能、かつ容易になっている。
【0039】さらに演算処理装置に通信ポートを接続して双方向の通信機能を持たせたことにより、設定パラメータ、自己診断情報等の内部処理データを送信してセンサの外部で読むことができ、また外部機器からパラメータを設定することによって設置時やメンテナンス時における専用診断装置によるセンサの診断や遠隔操作が可能となっている。
【0040】以上、実施例として物体の接近に感応する感応部として電磁波アンテナを使用する場合を説明したが、本発明の特徴とするところは感応部における物理変化を電気信号に変換した後の信号処理にあるので、感応部で検知する物理変化としてはこの他光、静電容量、音などさまざまなものを使用することが可能である。
【0041】
【発明の効果】本発明によれば、従来の接近検知センサに学習、環境順応、自己診断、学習記憶、通信の諸機能が付加されたことにより、検出すべき信号を見逃す検出ミスや、検出する必要のないノイズを誤って検出する検出ミスが解消し、接近検知センサの信頼性を著しく高めることができるという、すぐれた効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】501286989
【氏名又は名称】瀬塚 武土
【出願日】 平成14年1月23日(2002.1.23)
【代理人】 【識別番号】100099531
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 英一
【公開番号】 特開2003−215264(P2003−215264A)
【公開日】 平成15年7月30日(2003.7.30)
【出願番号】 特願2002−14730(P2002−14730)