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【発明の名称】 強磁性体又は非鉄導電体を探知する誘導性センサ装置及び方法
【発明者】 【氏名】ロジャー ゴールダー

【氏名】アルベルト ビンダー

【要約】 【課題】360°の全範囲の探知と深さの判定ができ、センサ装置の設計をコンパクトで小さなものにできる誘導性センサ装置及び方法を提供する。

【解決手段】周囲の媒体に埋め込まれた強磁性体又は非鉄導電体を探知する誘導性センサ装置であって、媒体内に侵入する交流磁束を発生する少なくとも1つの界磁コイルと、場合により強磁性体又は非鉄系導電体により生ぜしめられる磁界の乱れを検出する少なくとも1つの検出コイルとを有する誘導性センサ装置において、3つの界磁コイル(1A,1B,1C)が、本質的に同じ幾何学的平面内に配置され、且つこの平面に対して垂直な中心軸線を囲み、しかもこの平面において互いに所定の角距離で隣接しており、3つの検出コイル(2A,2B,2C)が設けられ、これら検出コイルのそれぞれが、関連の界磁コイルの内側に装着され、強磁性体又は非鉄導電体が存在しない環境において、これら3つの検出コイル内にそれぞれ関連の界磁コイルから実質的に電圧が誘起されないようになっている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 周囲の媒体に埋め込まれた強磁性体又は非鉄導電体を探知するための誘導性センサ装置であって、当該誘導性センサ装置が、前記媒体内に侵入する交流磁束を発生する少なくとも1つの界磁コイルと、場合により前記強磁性体又は非鉄導電体により生ぜしめられる磁界の乱れを検出するための少なくとも1つの検出コイルとを有する誘導性センサ装置において、3つの界磁コイル(1A,1B,1C)が、本質的に同じ幾何学的平面内に配置され、且つこの平面に対して垂直な中心軸線を囲み、しかもこの平面において互いに所定の角距離で隣接して位置しており、3つの検出コイル(2A,2B,2C)が設けられ、これら3つの検出コイルのそれぞれが、関連の界磁コイルの軸線に対しある方向で界磁コイルの内側に装着され、強磁性体又は非鉄導電体が存在しない環境において、これら3つの検出コイル内にそれぞれ関連の界磁コイルから実質的に電圧が誘起されないようになっていることを特徴とする誘導性センサ装置。
【請求項2】 請求項1に記載の誘導性センサ装置において、界磁コイルと検出コイルとの3つの対が、互いに120°の等しい角距離で配置されていることを特徴とする誘導性センサ装置。
【請求項3】 請求項1に記載の誘導性センサ装置において、前記検出コイル(2A,2B,2C)の軸線が、それぞれ、関連の界磁コイルの軸線に対し直交していることを特徴とする誘導性センサ装置。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれか一項に記載した誘導性センサ装置により周囲の媒体中に埋め込まれた強磁性体又は非鉄導電体を探知する探知方法において、前記3つの界磁コイル(1A,1B,1C)のそれぞれに、順次個別に供給するランプ電流によりこれら界磁コイルを励磁し、これにより前記界磁コイルの配置に対応している3つの異なる物理的位置から発生し、前記媒体に侵入する変化磁束を生成し、前記3つの検出コイルからの9個の個別の出力電圧、即ち、所定のランプ電流により第1界磁コイル(1A)を励磁している間に、これに関連する第1検出コイル(2A)から得られる第1出力電圧と、他の第2及び第3検出コイル(2B,2C)からそれぞれ得られる第2及び第3出力電圧と、次の所定のランプ電流により第2界磁コイル(1B)を励磁している間に、これに関連する第2検出コイル(2B)から得られる第4出力電圧と、他の第1及び第3検出コイル(2A,2C)からそれぞれ得られる第5及び第6出力電圧と、更にその次の所定のランプ電流により第3界磁コイル(1C)を励磁している間に、これに関連する第3検出コイル(2C)から得られる第7出力電圧と、他の第1及び第2検出コイル(2A,2B)からそれぞれ得られる第8及び第9出力電圧とを集め、これら9個の個別の出力電圧をアルゴリズム処理することにより、鉄性物体(R)に対する存在/非存在基準を得ることを特徴とする探知方法。
【請求項5】 請求項4に記載の探知方法において、前記9個の出力電圧の全てを一時的に記憶し、第1界磁コイル(1A)が励磁している第1の期間中に測定した第1、第2及び第3出力電圧を、関連の第1、第2及び第3記憶領域内に一次的に保持し、第2界磁コイル(1B)が励磁している第2の期間中に測定した第4、第5及び第6出力電圧を、関連の第4、第5及び第6記憶領域内に一次的に保持し、第3界磁コイル(1C)が励磁している第3の期間中に測定した第7、第8及び第9出力電圧を、関連の第7、第8及び第9記憶領域内に一次的に保持することを特徴とする探知方法。
【請求項6】 請求項5に記載の探知方法において、一時的に記憶した前記9個の個別の出力電圧の前記アルゴリズム処理が、第1、第4及び第7出力電圧を加算し、加算曲線(S)を形成する工程と、第2、第3、第5、第6、第7及び第8出力電圧を加算し、加算ハンプ曲線(H)を形成する工程と、この加算したハンプ曲線の各時間のサンプルに、−2<α<+2の範囲から選択した所定の重みαを乗じてしきい値曲線(T)を形成する工程と、前記加算曲線(S)のレベルをこのしきい値曲線(T)と比較する工程と、加算曲線(S)の値がしきい値曲線(T)の値より負である場合に「強磁性体が存在する」と判断し、加算曲線(S)の値がしきい値曲線(T)の値より正である場合に「導電体が存在する」と判断する工程とを含む探知方法。
【請求項7】 請求項6に記載の探知方法において、前記しきい値曲線(T)を規定するための前記重みαを−0.5<α≦+0.5から選択する探知方法。
【請求項8】 請求項6に記載の探知方法において、前記しきい値曲線(T)を規定するための前記重みαを−0.2<α≦+0.4から選択する探知方法。
【請求項9】 請求項1〜8のいずれか一項に記載した誘導性センサ装置及び探知方法を、処理すべき加工物中又は地中に埋め込まれた鉄性の物体を探知するための手持ち式工具へ一体的に適用する方法。
【請求項10】 請求項9に記載の方法において、前記手持ち式工具装置がドリルハンマである方法。
【請求項11】 請求項10に記載の方法において、作業領域を照射するための一体化した光源と組合せる方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、周囲の媒体に埋め込まれた強磁性体又は非鉄導電体を探知するための誘導性センサ装置であって、当該誘導性センサ装置が、前記媒体内に侵入する交流磁束を発生する少なくとも1つの界磁コイルと、場合により前記強磁性体又は非鉄導電体により生ぜしめられる磁界の乱れを検出するための少なくとも1つの検出コイルとを有する誘導性センサ装置に関するものである。
【0002】さらに、本発明は、本発明による誘導性センサ装置を用いることにより周囲の媒体中に埋め込まれた強磁性体又は非鉄導電体を検出する方法、及びその手持ち式工具への適用方法に関するものである。
【0003】
【従来の技術】金属探知器は通常、金属片が埋め込まれている可能性のある媒体の表面に亘って操作者が検出ヘッドを走査した際の選択パラメータの変化を測定するように機能する。パラメータは、キャパシタンス、インダクタンス又はある物質を他の物質と区別できる他の任意の物理的パラメータとすることができる。
【0004】特に、この要件は、コンクリート、レンガ、プラスター等のような媒体中に埋込まれた、通常強磁性体からなる補強用金属棒(以後「鉄筋」と称する)を見出すためにも必要である。市場にはこの要件を満たし得る探知器が存在するが、精密なものは、例えばコンクリートである媒体の表面に亘って走査する必要がある。探知器のこのような「走査運動」により、受けた応答信号から、例えば鉄筋のような埋め込まれた物体の位置及び(長さ)方向を決定できる。金属が存在する範囲は、自動で又は手動で決定できるが、自動で決定するにはかなり複雑なシステムが必要となる。手動で決定する場合には、媒体の表面上に鉄筋の存在範囲及び方向を手動でマークするのが一般的である。このように手動で走査し手動で決定するには、多くの時間を必要とするだけでなく、使用者、即ち操作者の特殊な技能及び知識も必要となることは言うまでもない。
【0005】米国特許第 5,729,143号明細書には、互いに平行で互いに重なる巻装平面内に配置され且つ誘導性ブリッジに接続されている受信コイル及び発信コイルを有する金属探知器が開示されている。これが、応答信号を判断するために操作者の特殊な技能及び知識が必要となる金属探知器の典型的な例である。
【0006】非金属物質中の金属物体を探知するための他の種類の装置は、米国特許第 2,546,771号明細書に開示されている。この探知装置は、一対の直列に接続した二次コイルを有しており、これら二次コイルは、これらの二次コイルの径が、互いにほぼ平行な平面内に位置するように配置されており、これらの平面は、二次コイルの各々をその直径上で囲む2つの一次巻線の間の検出空隙中に導入すべき非金属物質に隣接している。これら一次コイルは、磁束が非金属物質中で加算されるような極性の交流電流により附勢される。二次コイルは、場合に応じ非金属物質中に埋め込まれている可能性のあるいかなる金属物体も存在しない場合に前記一次コイルの磁界が歪まないと、前記二次コイルにまたがって得られる出力電圧が0となるように、直列のバッキング関係で接続されている。しかし、この既知の探知装置は、その物理的寸法と、空隙を有する一次コイルの配置との為に、周囲の媒体中の強磁性体又は非鉄導電体を探知するのには適していない。
【0007】欧州特許出願公開第 0 366 221号明細書には、埋め込まれている金属を探知する装置が開示されており、この探知装置は、回転して種々の方向に整列された外部交流電磁界を発生するようになっている継鉄接続コイルを有しており、周囲の媒体中に金属物体が存在するか又は存在しないかを表示するものとして、このコイルにより引き出されるエネルギー供給の変化を監視するものである。
【0008】欧州特許出願公開第 1 092 988号明細書は、本発明に最も近い従来技術に関するものであり、周囲の媒体中に埋め込まれた金属体を探知するための誘導性センサ装置を開示している。この誘導性センサ装置は、交流電流で順次に励磁することにより交流磁束を発生する一対の界磁コイルと、関連の各界磁コイル内にこの界磁コイルの軸線に対しある方向でそれぞれ装着された一対の検出コイルとを有し、金属体が存在しない環境において、前記検出コイル内に実質的に電圧が誘起されないようになっている。金属体がこの誘導性センサ装置の近傍に来ると、4つの特徴的な電圧値の組が検出コイルの対内で発生し、これら電圧値の組は、埋め込まれている金属体に対する位置及び識別の基準を規定するためのアルゴリズムを用いて処理される。このセンサ装置には、コンクリート中の鉄筋のような埋め込まれた金属体の位置を正確に識別できる一点測定の利点がある。しかし、このような誘導性センサ装置には、鉄筋のような鉄の物体を信頼して探知できるのが、±60°以内の角度、通常は±45°以内の角度だけであるという制限がある。このセンサ装置を360°の全角度範囲に亘って機能させ任意の角度の鉄筋を探知できるようにするために、この欧州特許出願公開第 1 092 988号明細書では、界磁コイル/検出コイルの対の2つより成る第2の組を、界磁コイル/検出コイルの対の2つより成る第1の組に対して90°の位置に配置し、互いに直交する±45°の範囲をカバーするようにすることが提案されている。しかし、このような4つの界磁コイル/検出コイルの装置は、ドリルハンマのような手持ち式装置に対して付加する鉄筋探知工具として考えた場合には、寸法的にかさばり、かなり高価なものとなる。
【0009】ドイツ国特許公開第 196 48 833 号明細書には、プラスチック地雷のような地中に埋め込まれた物体を検出し、識別するための装置が開示されている。この装置は、異なる励起周波数で動作する2つの横方向に並んで配置されている検出コイルを有する。導電率、透磁率等のような埋め込まれた物体の種々の物理的特性に応じ且つ物質特性に応じ、前記2つの検出コイルに重なる構成で配置されている受信コイルのインピーダンスが種々に変化する。この場合も、特定の地面の領域を走査し受けた信号を解釈するには、経験と技能とが必要である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、媒体中に埋め込まれた鉄筋のような強磁性体又は非鉄導電体を探知する誘導性センサ装置及び方法であって、360°の全範囲の探知と深さの判定ができ、センサ装置の設計をコンパクトで小さなものにできる誘導性センサ装置及び方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、周囲の媒体に埋め込まれた強磁性体又は非鉄導電体を探知するための誘導性センサ装置であって、当該誘導性センサ装置が、前記媒体内に侵入する交流磁束を発生する少なくとも1つの界磁コイルと、場合により前記強磁性体又は非鉄導電体により生ぜしめられる磁界の乱れを検出するための少なくとも1つの検出コイルとを有する誘導性センサ装置において、3つの界磁コイルが、本質的に同じ幾何学的平面内に配置され、且つこの平面に対して垂直な中心軸線を囲み、しかもこの平面において互いに所定の角距離で隣接して位置しており、3つの検出コイルが設けられ、これら3つの検出コイルのそれぞれが、関連の界磁コイルの軸線に対しある方向で界磁コイルの内側に装着され、強磁性体又は非鉄導電体が存在しない環境において、これら3つの検出コイル内にそれぞれ関連の界磁コイルから実質的に電圧が誘起されないようになっていることを特徴とする。これら3つの界磁コイル/検出コイルの対は、120°の互いに等しい角距離で規則的に配置されており、前記検出コイルの軸線がそれぞれ関連の界磁コイルの軸線に対し直交して配置されているようにするのが好ましい。
【0012】さらに、本発明による誘導性センサ装置の有利な点の詳細及び改善点は、特許請求の範囲の従属項に記載してある。
【0013】本発明は、本発明による誘導性センサ装置により、周囲の媒体中に埋め込まれた強磁性体又は非鉄導電体を探知する探知方法において、前記3つの界磁コイルのそれぞれに、順次個別に供給するランプ電流によりこれら界磁コイルを励磁し、これにより前記界磁コイルの配置に対応している3つの異なる物理的位置から発生し、前記媒体に侵入する変化磁束を生成し、前記3つの検出コイルからの9個の個別の出力電圧、即ち、所定のランプ電流により第1界磁コイルを励磁している間に、これに関連する第1検出コイルから得られる第1出力電圧と、他の第2及び第3検出コイルからそれぞれ得られる第2及び第3出力電圧と、次の所定のランプ電流により第2界磁コイルを励磁している間に、これに関連する第2検出コイルから得られる第4出力電圧と、他の第1及び第3検出コイルからそれぞれ得られる第5及び第6出力電圧と、更にその次の所定のランプ電流により第3界磁コイルを励磁している間に、これに関連する第3検出コイルから得られる第7出力電圧と、他の第1及び第2検出コイルからそれぞれ得られる第8及び第9出力電圧とを集め、これら9個の個別の出力電圧をアルゴリズム処理することにより、鉄性物体に対する存在/非存在基準を得ることを特徴とする。
【0014】これら9個の出力電圧の好ましい処理に関する有利な方法の特徴は、特許請求の範囲の従属項に記載してある。
【0015】3つの界磁コイルのそれぞれに供給される1回の励磁ランプ電流サイクルの間に、3つの検出コイルにより検出した9個の出力電圧を1組の出力電圧として処理し、これを順次繰り返すアルゴリズム処理を行うのが好ましい。
【0016】本発明によれば、一点測定により導電体(金属体)又は強磁性体、特に鉄筋を正確に位置決めしうるようになる。本発明の廉価で空間的寸法の小さなセンサ装置によれば、埋め込まれた物体の存在/非存在に関してのみでなく、表面上の測定点の下の媒体中の物体の深さに関しても判定できるようになる。本発明による誘導性センサ装置のこのような完全な機能は驚くべきことである。その理由は、鉄筋が存在する箇所を正しく判定するために探知曲線の形状を類似させる必要があるということから、界磁コイル/検出コイルの対をそれぞれ120°で斜めに配置することが当初は不可能であると信じられていた為である。本発明による装置によれば驚いたことに、3対の界磁コイル/検出コイルが、界磁コイル/検出コイルの2つの対を2組直交して配置した従来技術による装置に比べ幾つかの他の重要な利点を有することを確かめた。従来の装置の幾つかを以下に記載する。
【0017】4対の界磁コイル/検出コイルをドリルハンマのような手持ち式工具に使用する場合、磁性部材がセンサヘッドを囲む完全な円となる。このことにより、あらゆる所望のドリルマークを見るのが難しくなる。本発明による3対の界磁コイル/検出コイルの場合には、充分な空間が残っており外部成形において視界が増すという特徴が得られる。
【0018】さらに、この3対の界磁コイル/検出コイルの装置では、必要とする電池の電力が極めて少なくて足り、そのため電池の動作寿命が長くなる。また、3対の界磁コイル/検出コイルのセンサ装置は、極めて廉価に製造することができ、これを完備した手持ち式工具の重量は軽く、このことは、特にドリル先端において重要となる。その理由は、これにより操作者の手首にかかるモーメントが減少するためである。
【0019】既知の4対の界磁コイル/検出コイルに比べた、本発明による3対の界磁コイル/検出コイルより成るセンサ装置の他の利点は、後に詳細に説明するように、S字状応答曲線信号及びハンプ状応答曲線信号のみを必要とする単純なアルゴリズムを用いることができる点にある。これに対し、4対の界磁コイル/検出コイルより成るセンサ装置においては、±45°の角度範囲をカバーするために、対向している検出コイルの各応答信号は別々に処理され、この角度範囲に対し直交する±45°の角度範囲をカバーするために、他の組の界磁コイル/検出コイル対、即ち対向している検出コイルが必要となる。
【0020】本発明による検出ヘッド及び測定装置は用いるのが簡単であり、信頼性があり、一点測定の為に制限された空間内で動作し得る。
【0021】以下の記載は、例えば鉄筋のような強磁性体を検出する際の、本発明による誘導性センサ装置の機能に関するものである。非鉄導電体、例えばアルミニウム、銅等を検出する際には、全ての信号はそれぞれ鏡像関係となる。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明及びその有利な実施例を添付の図面を参照して更に詳細に説明する。図面を通じて、対応する構成又は機能の素子及び部品には同一の参照符号を用いている。まず、本発明による完成した誘導性センサコイル装置を図1Aを参照して説明する。この装置は、3つの同一のコイルアセンブリA、B及びCからなり、これらは、規定の中心間距離で配置されている。この中心間距離は代表的には30〜70mmであるが、これに限定されるものではない。各コイルアセンブリA、B、Cは、それぞれ、界磁コイル1A、1B、1Cと、検出コイル2A、2B、2Cとから成る。これら2つのコイルからなるコイルアセンブリA、B及びCの外側寸法を制限するために、界磁コイル1A、1B及び1Cの断面形状、即ち巻回面は図1Aに示すような非対称の長円形にすることができる。これら界磁コイル1A、1B及び1Cは、一定に変化する磁束が生じるように、時系列的なランプ電流で駆動される。界磁コイル1Aは、界磁コイル1B及び1Cが受動状態にある間駆動される。界磁コイル1Bは、界磁コイル1A及び1Cが受動状態にある間駆動される。界磁コイル1Cは、界磁コイル1A及び1Bが受動状態にある間駆動される。完成した誘導性センサコイル装置は1箇所の測定位置に固定したままにされるという事実にもかかわらず、鉄筋Rのような強磁性体が存在する場合には、異なる物理的位置から発生する3つの磁界パターンによりこの強磁性体を励磁する。非磁性環境において誘導電圧が検出コイル2A、2B及び2C中に発生しないように、これら検出コイル2A、2B、2Cを、これらの軸線が図1Aに示すように界磁コイル1A、1B、1Cに対し直交するように、界磁コイルの内側に装着する。鉄筋Rがこの誘導性センサコイル装置の近傍にもたらされると、磁界の平衡が乱れ検出コイル2A、2B及び2Cは特有の出力を発生する。
【0023】説明のために、鉄筋Rが完全な誘導性センサコイル装置の頂部を横切ったときの検出コイル2A、2B及び2Cの各出力における電圧を示す。図3〜5を参照して以下に説明する応答電圧のグラフは、図1Aの誘導性センサコイル装置上を単一の鉄筋Rが通過する際に測定した信号である。
【0024】測定した応答信号を解析することにより、鉄筋Rの限られた小さな動き即ち位置の変化のそれぞれについての特有の電圧の組を得ることが本発明に重要な要件である。前記特有の電圧の組、特に以下に詳細に説明する9つの電圧信号を測定して、応答信号を重畳することにより、鉄筋Rの配置を、平面的な位置に関してだけでなく、深さに関しても予測できるようになる。また、上述したコイル装置は、全ての鉄筋Rの角度、即ち測定位置を中心とした360°の鉄筋の角度に対して有効となる。
【0025】図3、4及び5に示す検出コイル2A、2B及び2Cの出力電圧は、図1Aの前記誘導性センサコイル装置にまたがって左から右に鉄筋Rを移動させた際に同時に得たものである。グラフの横軸は鉄筋Rの移動量を示しており、この場合、鉄筋Rの1mmの移動につき5つの測定点としているが、これに限定されるものではない。これら3つの信号の組は、界磁コイル1Aを駆動している間に得られた。しかし、典型的には、図2に示すような各駆動サイクルの持続時間と電流の振幅とにより、界磁コイル1B又は1Cが駆動している間でも、検出コイルの出力電圧は同じ特性形状を有するようにするが、これに限定されるものではない。特に、図3は検出コイル2Aの出力電圧を示しており、この検出コイル2Aに鉄筋Rが接近すると出力電圧が上昇する。鉄筋Rがこの検出コイル2Aの頂部を通過すると、曲線が下がり0まで達する。鉄筋Rが離れると出力電圧は更に減少する。この特性曲線はS字状応答曲線と称される。
【0026】図6は、界磁コイル1A、1B及び1Cをそれぞれ駆動させた場合の検出コイル2A、2B及び2CからのS字状応答曲線を示す。この3つのS字状応答曲線のそれぞれの振幅及び方向は、鉄筋Rが誘導性センサコイル装置に接近する方向に依存している。
【0027】図4及び5は、界磁コイル1Aを駆動させている間の検出コイル2B及び2Cのそれぞれにおける応答を示している。これら出力電圧は、鉄筋Rの存在による磁界の乱れに応答するものである。図3のS字状応答曲線と同じように、検出コイル2B及び2Cによる応答曲線の振幅は、鉄筋Rの大きさと、検出装置からの距離とに依存している。「ハンプ(HUMP)状曲線」(H応答曲線)と称されるこれら出力(図4及び図5)は、鉄筋Rの平面的な位置情報に対しては有効ではないが、以下に説明するように所望のS字状応答曲線の振幅を追尾するためのしきい値を発生させるのに用いることができる。
【0028】図7は、それぞれの界磁コイルを駆動させている際に検出コイル2A、2B及び2Cから得られるH応答曲線を示す。
【0029】上述したところから明らかなように、3つの検出コイル2A、2B及び2Cは、それぞれ、各界磁コイルに対応してそれぞれ1つずつで合計3つの異なる出力信号、即ち、1つのS字状曲線信号及び2つのH曲線信号を生じる。これら3つの信号の実際の振幅は、センサコイル装置に対する(任意の)鉄筋の角度に依存する。
【0030】上述した信号を発生する方法をまとめると以下のことが明らかとなる。3つのコイルアセンブリ上を鉄筋が通過すると、各界磁コイル/検出コイル対から1つずつで合計3つのS字状曲線信号と、各界磁コイル/検出コイル対から2つずつで合計6つのH曲線信号とが得られる。界磁コイル/検出コイル対A、B及びCからの信号間の唯一の相違は、これらコイル対相互間の物理的な距離と、鉄筋の向きとにより生ぜしめられる時間的なずれである。鉄筋Rは、センサコイル装置上を任意の角度で通過し得るため、信号の振幅及び信号間の時間的ずれは互いに関連して変化する。従って、S字状曲線信号及びH曲線信号を示すプロットが1つであれば、観測者は混乱しなくなる。
【0031】下記の表1は、各種の受信信号に対し駆動される界磁コイルと、検出コイル電圧との間の関係を示す。
【表1】

【0032】信号の処理は、3つのS字状曲線信号を加算することと、残りの6つのH曲線信号を加算することより成る。S字状曲線信号の加算は鉄筋Rの位置を示し、H曲線信号の加算は追尾しきい値である。
【0033】以下に、図8のプロットを参照して、例えば鉄筋Rのような強磁性体を探知したことを示すための簡単で廉価な探知アルゴリズムを説明する。アナログ又はデジタル信号処理技術を用いる他のアルゴリズムも使用できる。
【0034】図8に示す3つの信号の軌跡は、図6に示す3つのS字状曲線信号を合計したものの軌跡Sと、図7に示す6つのH曲線信号を合計したものの軌跡Hと、軌跡Hから得た値に、以下に説明するように所定のファクタを乗じて処理したしきい値である軌跡Tとである。
【0035】強磁性体(鉄筋)を3つの工程で発見しうる簡単且つ容易なアルゴリズムは以下の通りである。
1.3つのS字状曲線信号(図6)を互いに加算する。これにより得られた新たな形状の曲線は、図8に示す曲線Sである。この曲線Sの最小値、即ち最低点が、鉄筋の中心位置である。
2.6つのH曲線信号(図7)を互いに加算する。これにより得られた新たな形状は図8に示す曲線Hである。各時間のサンプルについて曲線Hに重みαを掛ける。この重みαは、−2<α<+2の範囲内にあり、代表的にはα=0.1であるが、これに限定されるものではない。これにより得られた新たな形状の曲線は図8に示す「しきい値曲線」Tである。
3.曲線Sのレベルを曲線Tと比較する。曲線Sが曲線Tより負の位置にあれば鉄筋Rが探知されている判断する。
【0036】図8は、曲線S、曲線H及び曲線Tを示す。曲線Sが曲線Tより負の位置にある間は、センサ装置の下に鉄筋Rがある。
【0037】鉄筋Rが存在しない場合又は鉄筋Rがセンサ装置から離れすぎている場合には、9つの基本信号はシステム雑音中に失われ、鉄筋Rを探知しうる形状は存在しない。
【0038】図9は、測定と信号処理のルーチンの流れ図である。鉄筋探知処理においては、4つの基本的な期間がある。第1の期間T1においては、界磁コイル1Aを励磁し、界磁コイル1B及び1Cを受動状態にする。この期間T1中検出コイル2A、2B及び2Cの電圧を測定し、一時記憶部に保持する。第2の期間T2においては、界磁コイル1Bを励磁し、界磁コイル1A及び1Cを受動状態にする。この期間T2中検出コイル2A、2B及び2Cの電圧を測定し、一時記憶部に保持する。第3の期間T3においては、界磁コイル1Cを励磁し、界磁コイル1A及び1Cは受動状態にする。この期間T3中検出コイル2A、2B及び2Cの電圧を測定し、一時記憶部に保持する。第4の期間T4においては、S字状曲線信号の加算値と、H曲線信号の加算値とをデジタル又はアナログ処理技術により計算し、得られた2つの信号を比較して鉄筋Rがセンサ装置の近傍に存在するかどうかを決定する。この測定及び信号処理のサイクルを繰り返す。
【出願人】 【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【出願日】 平成14年9月24日(2002.9.24)
【代理人】 【識別番号】100072051
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 興作 (外1名)
【公開番号】 特開2003−185758(P2003−185758A)
【公開日】 平成15年7月3日(2003.7.3)
【出願番号】 特願2002−277519(P2002−277519)