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【発明の名称】 岩石の破壊観測方法と岩盤斜面崩落監視装置
【発明者】 【氏名】福井 勝則

【氏名】大久保 誠介

【氏名】里 優

【要約】 【課題】派生する電磁波をパターンとして認識し易い形状に変換してニューラルネットワークで分別し、岩石の破壊や岩盤斜面での崩壊等の異常を観測できる岩石の破壊観測方法と岩盤斜面崩落監視装置を提供する。

【解決手段】本発明は、観測された電磁波データ1を所定時間毎にサンプリングして電磁波データパターン2に形成し、電磁波データパターン2をニューラルネットワーク3に入力させ、ニューラルネットワークで電磁波データパターン2と予め登録してある岩石派生電磁波データパターン4とを比較して最低誤差率を確認し、電磁波データ1を岩石派生電磁波として特定することによって、岩石の破壊や岩盤斜面で発生する崩落の予兆に基づく電磁波を正確に検知している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 岩石から観測された電磁波データを所定時間毎にサンプリングし、該電磁波を電磁波データパターンに形成し、該電磁波データパターンをニューラルネットワークに入力させて、該電磁波データパターンを該ニューラルネットワークに予め登録してある岩石派生電磁波データパターンと比較しながら最低誤差率を確認することで、サンプリングされた電磁波を岩石派生電磁波として特定する岩石の破壊観測方法。
【請求項2】 電磁波データパターンが、所定時間毎にサンプリングされた電磁波データを最大・最小値で正規化し、所定の波動データ領域を任意の水平区分領域に分割した後に各区分領域に分散される電磁波データの区分個数を集計して棒グラフ化し、該棒グラフを最大値で正規化すると共に該棒グラフを任意の高位区分領域に分割してヒストグラム化することで形成されることを特徴とする請求項1に記載の岩石の破壊観測方法。
【請求項3】 岩石派生電磁波データパターンが、所定の入力データに対して理想岩石派生電磁波データパターンを設定して置くと共に、入出力ユニット間に任意の重みを有するリンクが配置されているニューラルネットワークに該入力データに基づいて形成された岩石派生電磁波データパターンを入力して演算電磁波データパターンを算出し、該演算電磁波データパターンを理想岩石派生電磁波データパターンに近づけるように該リンクの重みを調整しながら両電磁波データパターンを一致させることでニューラルネットワークに所望の岩石派生電磁波データパターンとして登録されることを特徴とする請求項1又は2に記載の岩石の破壊観測方法。
【請求項4】 岩盤斜面の遠隔地に配置するアンテナ、該アンテナから受信した電磁波データを所定時間毎にサンプリングして電磁波データパターンに形成する電磁波パターン形成部と該電磁波データパターンを入力させると共に、予め登録してある岩石派生電磁波データパターンと比較して最低誤差率を確認するニューラルネットワークから成る演算部から構成される請求項1乃至3のいずれかに記載の岩石の破壊観測方法による岩盤斜面崩落監視装置。
【請求項5】 登録してある岩石派生電磁波データパターンが、岩盤斜面に発生する崩落の予兆に基づく各種の電磁波データパターンであることを特徴とする請求項4に記載の岩盤斜面監視装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、岩石の破壊観測方法と岩盤斜面崩落監視装置に関し、特に岩石の破壊や岩盤斜面で発生する崩落の予兆に基づく電磁波をパターン化して認識し易い形状に変換しながらニューラルネットワークで分別することで岩盤斜面の崩落を検知する岩石の破壊観測方法と岩盤斜面崩落監視装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から行われている岩盤斜面の崩落や地すべり等を監視する方式は、岩盤や地盤に発生している変形や歪等を長期に亘って計測する方式であり、岩盤や地盤の変形で発生する変動の急激な増加等があった場合には、これを検知して所定の警報を担当者に伝えるようにしてきた。
【0003】その一例としては、岩盤斜面に地震計を設置して岩盤や地盤の変形を監視する場合であり、岩盤斜面に落石等が発生した場合等に地震計がこれによる電磁波を検知して、担当者に警報を出すものであった。
【0004】しかして、岩盤斜面に設置されている地震計が異常データとして検知しているデータは広範囲に及んでいるが以下の各データに対してはデータの特性を考慮した方式で対応している。
【0005】第1グループは、■ 無変動■ フルスケール■ 逆向きの変動、であるが、本グループの異常データに対しては適当な閾値を設定しておいて、これを選定することによって検知不要のデータとして認識させている。
【0006】第2グループは、■ 周期性の変動■ ホワイトノイズ■ 急激な変動、であるが、本グループの異常データに対しては各周波数領域において特徴が存在することを利用することで一定期間内のデータにおける自己相関を求めこの変化を認識することで不要な検知として対処している。
【0007】しかるに、岩盤斜面に地震計を設置して岩盤や地盤の変形を監視する場合には、地震計が異常データとして検知する下記のようなデータに対しては、騒音振動波として検知することになり、一般的には振動波の周波数特性を分析する方式等が提案されてきた。
【0008】・ 遠くで発生した地震・ 車や電車等の騒音・ 風による木々の騒音・ 小動物の接触・ 電気的なノイズ・ 断線、落雷など【0009】しかしてこれらのデータは落石の場合と極めて類似した振動波パターンを示していることからそれぞれの周波数特性に従って分析することは岩盤斜面の崩落や落石によって発生する振動波とそれ以外の振動波とを区別して認識することが困難になっており落石以外の振動波に対しても地震計が落石として検知する場合が発生して、監視の役目を確実に果たせない状況にあった。
【0010】一方、岩石・岩盤の電磁気的特性を利用する研究が古くから行われており、地殻の調査として石油や鉱物などの資源探査を目的にしたり、地震の発生に際して電磁気的な変化がみられることからを近年になってこれを利用した地震予知の研究も見られるようになってきた。
【0011】これらの研究例として、VAN法と呼ばれる手法は地盤中の電位差の異常を観測して経験的に発生位置や大きさの予知を行うものであり、阪神・淡路大震災の直前においても電磁気的異常が観測されたとの報告がなされている。
【0012】又、地震以外の小規模な岩盤崩壊に関連する研究も行われており、深さ50m程度のボーリング孔の中で発破を行ってその際に発生した電磁波を地上で観測したり、鉱山の坑内において100kHz付近の電磁波を観測することで山はねの予知も試みられている.【0013】そこで、上述したような遠くで発生した地震、車や電車等の電磁波、風による木々の電磁波、小動物の接触、電気的なノイズ及び断線、落雷等の外部要因を回避して、岩石・岩盤が直接発する信号を検知する方式も検討されており、岩石・岩盤の電磁気的特性を利用して地震予知や岩盤斜面の崩落を検知しようとする研究もなされている。
【0014】これらの研究は、原位置で岩盤が破壊する際の電磁波を測定することで観測波動を明らかにし、雑音との関連や電磁波の観測に適したアンテナ等の問題点を明らかにしようとしており、当初に、岩石の破壊において電磁波の発生があるのか否かの確認がなされている。
【0015】一例として、図8に稲田花闇岩を試験片として用いた例を示している。本実験によると、載荷開始から強度破壊点にいたるまでの応力では雑音のみが観測されており、これより大きい電界強度は観測されていない。しかして、強度破壊点に達した直後に220MPaから170MPaまで応力が急激に低下すると、これに合わせて、電界強度に1回目の極大値(81dBμV/m)が見られ、その後、一旦応力低下が緩やかになって、応力が150MPa付近からほぼ0MPaに達するまで、再び急激な応力低下が現れると、再び電界強度に最も大きな値(87dBμV/m)が観測されている。
【0016】以上のように、本試験片では、2回の急激な破壊において電界強度が観測され、電界強度の立ち上がりは、応力が低下し始める時点とほぼ一致している。従って、電磁波は、強度破壊点を過ぎて応力が急激に低下する際に観測されるものであり、強度破壊点を過ぎて完全に破壊した後では、載荷し続けても電磁波は観測されるものでない。
【0017】以上の例でも明確なように、現状においては、岩石・岩盤の破壊や崩壊に際して電磁波の発生が確認され、同時にこれを検知することも可能である。しかるに、これらの観測結果とその実態に基づいて、これらを実際の観測技術として、地震予知や岩盤斜面の崩落を検知できるように、現場に適用する状況には未だに至っていない。
【0018】これらの要因は、岩盤や地盤の異常電磁波に対して、地震、電磁波等による雑音を区別出来ないのと同様に、電磁波の計測においても、岩石・岩盤の破壊や崩壊に伴って派生する電磁波と雑音として伝搬している電磁波とを明確に区別できないことであった。
【0019】そこで、岩石・岩盤の電磁気的特性を利用しながら、これらの破壊や崩壊を予知するためには、派生する電磁波を正確に計測すると共に、これを雑電磁波と明確に峻別することが必須であり、現場に適用しながら岩石・岩盤が派生する電磁波を精密に観測できる実用的な手法の開発が嘱望されている。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上述したように岩石の破壊や岩盤斜面での崩壊で発生する電磁波の存在が確認されていながら雑電磁波との区別が未解決になっている現状に鑑みて、その実用的な解決方法を提案するものであり派生する電磁波をパターンとして認識し易い形状に変換しながら、ニューラルネットワークによって電磁波パターンを雑電磁波パターンと分別することで、電磁波の計測によって岩石の破壊や岩盤斜面での崩壊等の異常を観測できる岩石の破壊観測方法と岩盤斜面崩落監視装置を提供している。
【0021】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明である岩石の破壊観測方法は、岩石から観測された電磁波データを所定時間毎にサンプリングし、電磁波を電磁波データパターンに形成し、電磁波データパターンをニューラルネットワークに入力させて、電磁波データパターンをニューラルネットワークに予め登録してある岩石派生電磁波データパターンと比較しながら最低誤差率を確認することで、サンプリングされた電磁波を岩石派生電磁波として特定しており、岩石の破壊や岩盤斜面で発生する崩落の予兆に基づく電磁波をパターン化して認識し易い形状に変換しニューラルネットワークで分別することによって正確に検知する。
【0022】請求項2に記載の発明である岩石の破壊観測方法は、請求項1に記載の岩石の破壊観測方法において、電磁波データパターンを、所定時間毎にサンプリングされた電磁波データを最大・最小値で正規化し、所定の波動データ領域を任意の水平区分領域に分割した後に各区分領域に分散される電磁波データの区分個数を集計して棒グラフ化し、棒グラフを最大値で正規化すると共に棒グラフを任意の高位区分領域に分割してヒストグラム化することで形成することを特徴としており、上記機能に加えて、岩石から観測された電磁波データを雑電磁波と峻別している。
【0023】請求項3に記載の発明である岩石の破壊観測方法は、請求項1又は2に記載の岩石の破壊観測方法において、岩石派生電磁波データパターンを、所定の入力データに対して理想岩石派生電磁波データパターンを設定して置くと共に、入出力ユニット間に任意の重みを有するリンクが配置されているニューラルネットワークに入力データに基づいて形成された岩石派生電磁波データパターンを入力して演算電磁波データパターンを算出し、演算電磁波データパターンを理想岩石派生電磁波データパターンに近づけるようにリンクの重みを調整しながら両電磁波データパターンを一致させることでニューラルネットワークに所望の岩石派生電磁波データパターンとして登録されることを特徴としており、上記機能に加えて、各種の正確な理想岩石派生電磁波データパターンを形成できるようにニューラルネットワークにおけるリンクの重みを調整している。
【0024】請求項4に記載の発明である岩盤斜面崩落監視装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載の岩石の破壊観測方法による岩盤斜面崩落監視装置であって、岩盤斜面の遠隔地に配置するアンテナ、アンテナから受信した電磁波データを所定時間毎にサンプリングして電磁波データパターンに形成する電磁波パターン形成部と電磁波データパターンを入力させると共に、予め登録してある岩石派生電磁波データパターンと比較して最低誤差率を確認するニューラルネットワークから成る演算部から構成されており、岩石の破壊や岩盤斜面で発生する崩落の予兆に基づく正確な電磁波を簡潔に検知している。
【0025】請求項5に記載の発明である岩盤斜面監視装置は、請求項4に記載の岩盤斜面監視装置において、登録してある岩石派生電磁波データパターンを岩盤斜面に発生する崩落の予兆に基づく各種の電磁波データパターンにすることを特徴としており、上記機能に加えて、岩石の破壊や岩盤斜面の崩落を正確に特定している。
【0026】
【発明の実施の形態】本発明による岩石の破壊観測方法は、基本的に、岩石から観測された電磁波データを所定時間毎にサンプリングし、電磁波を電磁波データパターンに形成し、電磁波データパターンをニューラルネットワークに入力させて、電磁波データパターンをニューラルネットワークに予め登録してある岩石派生電磁波データパターンと比較しながら最低誤差率を確認することで、サンプリングされた電磁波を岩石派生電磁波として特定している。
【0027】以下に、本発明による岩石の破壊観測方法における実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】図1は、本発明による岩石の破壊観測方法を示すフローチャートであり、電磁波データを受信してこれを分別することで警報を発信する経過を示している。
【0029】電磁波の分析は、本発明者等が既に開発した振動波形の分析方法(特願2001−273103号に添付した明細書の記載参照)と同様に、ニューラルネットワークのパターンマッチング手法を用いて分別している。
【0030】使用するニューラルネットワークのアルゴリズムは、誤差逆伝播学習であり、入力ユニット層と出力ユニット層の問に隠れユニット層を任意個数配置する多層構造にすると共に、入力ユニット層からのリンクは出力ユニット層へ向かうのみで逆方向に向かうリンクが存在しないフィードフォワード構造に構成されている。
【0031】ニューラルネットワーク3に受信、入力される電磁波データ1は、上記の振動波形の分析方法と同様である後述の手法によって、電磁波データパターン2に変成された後に、登録されている各種の岩石派生電磁波データパターン4と比較することによって、その最低誤差率5が、どの岩石派生電磁波データパターンとの間に存在するのかを確認している。
【0032】所定値を越えた最低誤差率5が示される電磁波データパターン2は、特定の岩石派生電磁波データパターン6として判断され、受信された電磁波データ1は、特定の岩石派生電磁波データパターンとして登録されている電磁波データであるとの分別処理7が行われる。
【0033】従って、登録されている電磁波が危険な電磁波として分類されている場合には、直ちに警報を発信8してその危険状態に対処することができる。
【0034】図2は岩盤斜面10を示しているが岩盤斜面10の崩落は崩落岩盤部分11の上部12に亀裂13が起こり始めることで発生する。亀裂の発生に連れて、崩落岩盤部分11は、亀裂13によって岩盤面14から分離することになるので、支持状態から開放された自重は、法尻15に対して荷重を漸次集中的に加えることになり、遂には法尻15がはみ出して岩盤の崩落へと発展することになる。
【0035】従って法尻部15の岩盤は、強烈な応力を加算されて行きながら、大きな応力状態に耐え続けるが崩壊に至るとこれに伴って加算された応力は急激に消滅することになる。
【0036】このために、法尻部15の岩盤では、急激な応力低下に伴って電界強度が急激に増加することになり、その崩壊に際して法尻部15の岩盤から電磁波16を派生させている。
【0037】上記した岩盤の例では、図3に示すような応力と派生電磁波の関係が形成されている。
【0038】岩盤には、200PMaの応力が加えられた状態になっているが、図示のように56.5s付近で岩盤の崩壊が発生すると、応力は0PMaまで急激に低下している。このような状況下においては岩盤の急激な応力低下に伴う電界強度が、それまでの雑電磁波レベルで伝播されている65dBμV/mの状態から73dBμV/mまで急激に増加することになり、この電界強度の変化を岩盤が崩壊する際に派生する電磁波として観測するものである。
【0039】この際の岩盤の破壊状態は、縦割れに近い状況に形成されるものであり、この急激な破壊と共に応力の低下が発生しているが、応力の低下とほぼ同時に電界強度の増加が始まりながら、電界強度の最大値は、図示のように応力が急激に低下する時よりも遅れて発生している。
【0040】次に、本発明による岩盤斜面崩落監視装置について説明する。図4は、本発明による岩盤斜面崩落監視装置20であり、図2で示した岩盤面14と遠隔した位置に配置しながら指向面を岩盤面14に向けることで岩盤面14を安全に監視できるループアンテナ21と演算部22及び異常警報発信装置23とから構成されている。
【0041】演算部22は、岩盤から発信されてくる電磁波16をループアンテナ21によって受信することで電磁波データを捕獲している。演算部22では、電磁波データを所定時間毎にサンプリングしながら電磁波データパターンに形成している。
【0042】次いで、形成された電磁波データパターンは、ニューラルネットワークに入力されると同時にニューラルネットワークに予め登録されている岩石派生電磁波データパターンと比較され、両データパターンの間に生じる最低誤差率を確認することで、法尻部の岩盤が崩壊を予兆している電磁波を岩石派生電磁波として正確に検知している。
【0043】演算部22に登録されている各種の岩石派生電磁波データパターンは、岩盤斜面の崩落や地滑り等で発生する岩石の亀裂に基づいて発生する電磁波データパターンとしてニューラルネットワークに学習されており、それ以外で発生する、遠くで発生した地震、車や電車等による電磁波、電気的なノイズ及び断線、落雷等による雑電磁波データパターンを認識しないように分別されている。
【0044】即ち、外界において伝播している各種の電磁波データは、ループアンテナ(垂直アンテナ)で計測している図5の観測例が示すように、崩壊に際して法尻部の岩盤から派生される電磁波16(17)と幅広い各種の周波数から構成されている雑電磁波18(19)とが混然状態にあるが、演算部22のニューラルネットワークによる分別によって、電磁波16(17)は、岩石派生電磁波として正確に検知されるものである。
【0045】従って、岩盤斜面崩落監視装置20は、ループアンテナ21で雑電磁波と混然状態で伝播して来る電磁波データを岩盤斜面から受信すると共に、演算部22のニューラルネットワークによって分別することで、岩石派生電磁波として正確に検知しており、演算部22に接続されている異常警報発信装置23から適切な警報を発信することができる。
【0046】岩盤から派生される電磁波の電磁波データパターンは、図6に示す手法で形成されている。
【0047】図6(a)は、岩盤から派生される電磁波データを示しており、図6(b)は、電磁波データを水平区分領域化する加工図であって、図6(c)には、高位区分領域化したヒストグラムを示している。
【0048】岩盤から派生される電磁波データ30は、図6(a)に区画するように所定時間毎にサンプリングされており、この区画における電磁波データ30は、最大・最小値で正規化された後に本実施の形態では、所定の波動データ領域31において5区分した水平区分領域32として分割している。
【0049】従って、電磁波データ30は、図6(b)に示すように各区分領域12−1〜12−5毎に分散されるが、各区分領域に含まれる個数は集計されて、3、80、500、120、5のように整理される。
【0050】次いで、これらの数値は、図6(c)のように棒グラフ33として表示される。そして、棒グラフ33は、最大値で正規化されると共に本実施の形態では、高位区分領域34として7区分に分割されて、5×7のパターンを構築しており、各区分を塗りつぶすことで逆T型のヒストグラム35として形成されている。
【0051】図7は、雑電磁波の場合であり、その電磁波データを示す図7(a)とこの電磁波データを上述の手法で同様に変成した電磁波データパターンを示す図7(b)である。
【0052】雑電磁波データ36は、図5の雑電磁波で説明した幅広い各種の周波数から構成されている。雑電磁波データ36は、図6で説明した岩盤から派生される電磁波データの場合と同様に、図7(a)に区画するように所定時間毎にサンプリングされて、最大・最小値で正規化されている。
【0053】電磁波データ30は、図示での説明を省略しているが、所定の波動データ領域において5区分の水平区分領域として分割しながら、各区分領域に含まれる個数として集計され、これらの数値は、図6(c)のように棒グラフ37として表示される。
【0054】棒グラフ37は、最大値で正規化されると共に、高位区分領域38として7区分に分割されて、5×7のパターンを構築しており、各区分を塗りつぶすことで山形のヒストグラム39として形成されている。
【0055】従って、雑電磁波データ36は、図6で説明した岩盤から派生される電磁波データ30のように、一瞬時に発生する上下方向の波動を示す電磁波データから変成された逆T型のヒストグラムとは、明確に峻別することが出来る。
【0056】本発明では、電磁波データを以上のようにパターン化しているものであり、これらのパターン化された電磁波データをニューラルネットワークにおいて岩石派生電磁波データパターンと比較することで、その一致度において電磁波データを特定しているが、岩石派生電磁波データパターンの形成は、以下の手法によってその正確度を高くしている。
【0057】以下に、岩石派生電磁波データパターンの形成について説明する。岩石派生電磁波データパターンの形成は、基本的に過去の計測実績に基づく電磁波を所定の入力データにとして採用しながら、上述した構造から成るニューラルネットに対して、次の学習アルゴリズムを適用することで行われている。
【0058】■ 所定の入力データと、それに対する複数の理想岩石派生電磁波データパターンを順に与える。
■ 所定の入力データに基づいて形成された岩石派生電磁波データパターンを、ニューラルネットの入力ユニットに入力して演算電磁波データパターンを出力ユニットから算出する。
■ 所定の入力データに対する理想岩石派生電磁波データパターンと演算電磁波データパターンとの誤差に基づいて、演算電磁波データパターンを理想岩石派生電磁波データパターンに近づけるように隠れユニットにおけるリンクの重みを調整する。
■ 理想岩石派生電磁波データパターンを示した演算電磁波データパターンを所定の入力データに対する特定の岩石派生電磁波データパターンとして登録し、この際の隠れユニットにおけるリンクの重みを求めて所定の入力データに対する岩石派生電磁波データパターンにおけるリンクの重みとして設定する。
【0059】従って、ニューラルネットワークに電磁波データパターンを入力して分別する場合には、ニューラルネットワークにおいて電磁波データパターンと比較するための各岩石派生電磁波データパターンを順次に設定するものであり、これに従って各岩石派生電磁波データパターン用の重みをニューラルネットワークの隠れリンクに順次に設定することになる。
【0060】電磁波データパターンは、以上の構成によって、各岩石派生電磁波データパターンの重みを持った隠れリンクの下に随時に比較されることになり、いずれの岩石派生電磁波データパターンに近いかを分別して特定の岩石派生電磁波データパターンとして処理されることになる。
【0061】しかして、岩石派生電磁波データパターンに対する一致度を向上させるためには、ニューラルネットワークの隠れユニット層におけるリンクの重みを高精度に調整することで対応可能であると共に、本実施の形態で採用している電磁波データパターンの形成において、正規化した後に構築するパターンの区分を5×7以上に細かく区分することによってもその精度をさらに向上させることが可能である。
【0062】従って、本発明においては、上記の手法によって、岩石派生電磁波データパターンとの一致度がほぼ100%に近いことが確認されており、類似性確認における確率の高さを示していることから、本発明では、予め登録してある岩石派生電磁波データパターンと雑電磁波データパターンを含めた任意の電磁波パターンとをニューラルネットワークにおいて対比、比較し、その最低誤差率を確認することによって、任意の電磁波の中から岩盤が発生する電磁波データを正確に分別することを可能にしている。
【0063】以上のように、本発明による岩石の破壊観測方法と岩盤斜面崩落監視装置は、岩石から観測された電磁波データを所定時間毎にサンプリングし、電磁波を電磁波データパターンに形成し、電磁波データパターンをニューラルネットワークに入力させて、電磁波データパターンをニューラルネットワークに予め登録してある岩石派生電磁波データパターンと比較しながら最低誤差率を確認することで、サンプリングされた電磁波を岩石派生電磁波として特定する方法とこれを実施する装置であり、岩石の破壊や岩盤斜面で発生する崩落の予兆に基づく電磁波をパターン化して認識し易い形状に変換しニューラルネットワークで分別することによって正確に検知することを可能にしている。
【0064】以上、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明してきたが、本発明は、上記実施の形態に何ら限定されるものでなく、検知する岩石の適用範囲や作成する岩石派生電磁波データパターン等に関して、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは当然のことである。
【0065】
【発明の効果】請求項1に記載の岩石の破壊観測方法は、岩石から観測された電磁波データを所定時間毎にサンプリングし、電磁波を電磁波データパターンに形成し、電磁波データパターンをニューラルネットワークに入力させて、電磁波データパターンをニューラルネットワークに予め登録してある岩石派生電磁波データパターンと比較しながら最低誤差率を確認することで、サンプリングされた電磁波を岩石派生電磁波として特定しているので、岩石の破壊や岩盤斜面で発生する崩落の予兆に基づく電磁波をパターン化して認識し易い形状に変換し、ニューラルネットワークで分別することによって正確に検知する効果を発揮している。
【0066】請求項2に記載の岩石の破壊観測方法は、請求項1に記載の岩石の破壊観測方法において、電磁波データパターンを、所定時間毎にサンプリングされた電磁波データを最大・最小値で正規化し、所定の波動データ領域を任意の水平区分領域に分割した後に各区分領域に分散される電磁波データの区分個数を集計して棒グラフ化し、棒グラフを最大値で正規化すると共に棒グラフを任意の高位区分領域に分割してヒストグラム化することで形成することを特徴としているので、上記効果に加えて、岩石から観測された電磁波データを雑電磁波と峻別する効果を発揮している。
【0067】請求項3に記載の岩石の破壊観測方法は、請求項1又は2に記載の岩石の破壊観測方法において、岩石派生電磁波データパターンを、所定の入力データに対して理想岩石派生電磁波データパターンを設定して置くと共に、入出力ユニット間に任意の重みを有するリンクが配置されているニューラルネットワークに入力データに基づいて形成された岩石派生電磁波データパターンを入力して演算電磁波データパターンを算出し、演算電磁波データパターンを理想岩石派生電磁波データパターンに近づけるようにリンクの重みを調整しながら両電磁波データパターンを一致させることでニューラルネットワークに所望の岩石派生電磁波データパターンとして登録されることを特徴としているので、上記効果に加えて、各種の正確な理想岩石派生電磁波データパターンを形成できるようにニューラルネットワークにおけるリンクの重みを調整する効果を発揮している。
【0068】請求項4に記載の岩盤斜面崩落監視装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載の岩石の破壊観測方法による岩盤斜面崩落監視装置であって、岩盤斜面の遠隔地に配置するアンテナ、アンテナから受信した電磁波データを所定時間毎にサンプリングして電磁波データパターンに形成する電磁波パターン形成部と電磁波データパターンを入力させると共に、予め登録してある岩石派生電磁波データパターンと比較して最低誤差率を確認するニューラルネットワークから成る演算部から構成されており、岩石の破壊や岩盤斜面で発生する崩落の予兆に基づく正確な電磁波を簡潔に検知する効果を発揮している。
【0069】請求項5に記載の岩盤斜面監視装置は、請求項4に記載の岩盤斜面監視装置において、登録してある岩石派生電磁波データパターンを岩盤斜面に発生する崩落の予兆に基づく各種の電磁波データパターンにすることを特徴としているので、上記効果に加えて、岩石の破壊や岩盤斜面の崩落を正確に特定する効果を発揮している。
【出願人】 【識別番号】500030482
【氏名又は名称】株式会社地層科学研究所
【出願日】 平成13年11月26日(2001.11.26)
【代理人】 【識別番号】100097423
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 良徳 (外1名)
【公開番号】 特開2003−161782(P2003−161782A)
【公開日】 平成15年6月6日(2003.6.6)
【出願番号】 特願2001−359467(P2001−359467)