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【発明の名称】 埋設物探査装置
【発明者】 【氏名】矢野 達朗
【住所又は居所】東京都千代田区大手町二丁目3番1号 日本電信電話株式会社内

【氏名】辻村 健
【住所又は居所】東京都千代田区大手町二丁目3番1号 日本電信電話株式会社内

【要約】 【課題】埋設物探査の測定が簡単であり、埋設管の判定に熟練を必要とせず、埋設管を適確に探査し得る埋設物探査装置を提供する。

【解決手段】偏波方向は相互に交差する送信アンテナ2と受信アンテナ4,5を車両7に配置し、送信アンテナ2から地表面に向けて電磁波を移動しながら送信し、該電磁波の地中に存在する埋設管15からの反射波を受信アンテナ4,5で受信し、この受信アンテナ4,5の受信信号と送受信アンテナの相互の配置情報に基づき反射波の方位強度パターンを演算部13で演算し、この方位強度パターンから埋設管15の埋設されている位置と方向を推定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 地中に存在する埋設物を移動しながら探査する埋設物探査装置であって、地表面に向けて電磁波を移動しながら送信するように設置された送信アンテナと、該送信アンテナから送信された電磁波の地中に存在する埋設物からの反射波を受信するように設置された受信アンテナと、前記送信アンテナと受信アンテナの相互の配置情報および前記受信アンテナからの受信信号に基づき反射波の方位強度パターンを演算する演算手段とを有し、前記送信アンテナおよび受信アンテナは、少なくともいずれか一方が複数設けられ、該送受信アンテナの偏波方向は相互に交差するように配置されていることを特徴とする埋設物探査装置。
【請求項2】 前記演算手段は、前記送信アンテナおよび受信アンテナの数をそれぞれn,m、第i番目の送信アンテナと第j番目の受信アンテナの組合せによる受信信号をSij(t)、送信アンテナと受信アンテナの偏波方向をそれぞれθi とψj 、送信アンテナと受信アンテナの偏波の影響を表す係数をfijとするとき、前記方位強度パターンとして【数1】

で定義される方位強度パターンを演算する手段を有することを特徴とする請求項1記載の埋設物探査装置。
【請求項3】 前記方位強度パターンは、時間軸を半径方向、角度軸を周方向に取った円グラフで表されることを特徴とする請求項1記載の埋設物探査装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、地中に存在する埋設物を移動しながら探査する埋設物探査装置に関し、更に詳しくは、地表面に向けて設置された送信アンテナを移動させながら電磁波を送信し、地中に存在する埋設物から反射した電磁波を受信アンテナで受信することにより地中に存在する埋設物を探査する埋設物探査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の従来の埋設物探査装置は、例えば図6に示すように、走査移動用車両7に送信アンテナ2および受信アンテナ3からなるアンテナ部6を搭載し、矢印14で示す移動方向に車両7を移動させながら送信アンテナ2に送信装置1から供給される数ナノ秒の時間幅のパルスを送信アンテナ2から電磁波として地中に放射するようになっている。この放射された電磁波は、地中を伝播し、周囲の媒質と電気的性質の異なる埋設管15で反射される。
【0003】この反射された電磁波は受信アンテナ3で検出され、受信アンテナ3から受信装置8に供給される。受信装置8は、この電磁波の受信と送信アンテナ2からの放射との時間関係に基づき埋設管15までの距離を算出し、この算出した距離をメモリ11に記憶し、更にこの記憶したデータを表示部12に表示するようになっている。
【0004】上記処理は、送信アンテナ2および受信アンテナ3が搭載され、車両7に取付けられたアンテナ部6が規定の距離移動する毎に行われ、これにより複数の観測信号を収集するようになっている。そして、この複数の観測信号を振幅値の大きさ毎に色変換した後、二次元的に並べることにより、地中断面の観測パターンを形成し、この地中断面観測パターンから埋設管15の埋設位置を判断している。
【0005】ここで、一例として図7に示すような道路面の平面図を参照して、図6に示した従来の埋設物探査装置で埋設管15の連続的な水平位置を探知する場合について説明する。
【0006】この場合、通常は道路を横断する方向にアンテナ部6を走行させて走査を行う。この走査は計測範囲を数mおきに複数の区間に分割して複数のアンテナ走査ラインA,B,Cを図7に示すように設定し、この結果得られた地中断面観測パターンから埋設管15の位置を操作者が判定する。
【0007】例えば、アンテナ走査ラインAに沿って測定するとき、埋設管15の真上PAの位置で反射信号が最大となる。また、アンテナ走査ラインB,Cに沿って測定した場合も、同様に埋設管15の真上PB ,PC の位置で反射信号が最大となる。この結果、位置PA ,PB ,PC を結んだ経路の真下に埋設管15が敷設されていることが推定できる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来の埋設物探査装置による探査方法では、例えば2個のマンホール間の埋設管の連続的な水平位置を測定するために、横断探査を多数回行う必要があり、測定に多大の時間が必要であるという問題があるとともに、横断探査の結果得られた複数の地中断面観測パターンを利用して埋設位置を判定するため、この判定に熟練が必要であるという問題がある。
【0009】また、走査方向によってはアンテナの偏波方向と埋設管の敷設方向とが一致しないため、反射波の振幅値が小さくなって、反射像が明瞭に観測できなくなり、埋設管の位置を判定するのが困難になるという問題がある。
【0010】具体的には、図8に示すように、送信アンテナ2および受信アンテナ3には偏波方向があり、この偏波方向が埋設管15と平行である場合には、反射信号が最大となるが、垂直である場合には、反射信号が最小となり、これにより反射像が明瞭に観測できなくなり、埋設管の位置を判定するのが困難であるという問題がある。
【0011】更に、走査ラインの下に例えば岩石や空洞などのような点物体が存在する場合にも、埋設管と同様な反射信号が得られるので、埋設管のような長大物を横断したときの反射と区別がつきにくいという問題がある。
【0012】本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、埋設物探査の測定が簡単であり、埋設管の判定に熟練を必要とせず、埋設管を適確に探査し得る埋設物探査装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、地中に存在する埋設物を移動しながら探査する埋設物探査装置であって、地表面に向けて電磁波を移動しながら送信するように設置された送信アンテナと、該送信アンテナから送信された電磁波の地中に存在する埋設物からの反射波を受信するように設置された受信アンテナと、前記送信アンテナと受信アンテナの相互の配置情報および前記受信アンテナからの受信信号に基づき反射波の方位強度パターンを演算する演算手段とを有し、前記送信アンテナおよび受信アンテナは、少なくともいずれか一方が複数設けられ、該送受信アンテナの偏波方向は相互に交差するように配置されていることを要旨とする。
【0014】請求項1記載の本発明にあっては、偏波方向は相互に交差する送信アンテナと受信アンテナの組を複数配置し、送信アンテナから地表面に向けて電磁波を移動しながら送信し、該電磁波の地中に存在する埋設物からの反射波を受信アンテナで受信し、この受信アンテナの受信信号と送受信アンテナの相互の配置情報に基づき反射波の方位強度パターンを演算するため、該方位強度パターンから埋設管が敷設されている位置および方向を適確に判定することができる。
【0015】また、請求項2記載の本発明は、請求項1記載の発明において、前記演算手段が、前記送信アンテナおよび受信アンテナの数をそれぞれn,m、第i番目の送信アンテナと第j番目の受信アンテナの組合せによる受信信号をSij(t)、送信アンテナと受信アンテナの偏波方向をそれぞれθi とψj 、送信アンテナと受信アンテナの偏波の影響を表す係数をfijとするとき、前記方位強度パターンとして【数2】

で定義される方位強度パターンを演算する手段を有することを要旨とする。
【0016】更に、請求項3記載の本発明は、請求項1記載の発明において、前記方位強度パターンが、時間軸を半径方向、角度軸を周方向に取った円グラフで表されることを要旨とする。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る埋設物探査装置の構成を示す図である。同図に示す埋設物探査装置は、走査移動用車両7に搭載された1個の送信アンテナ2と2個の受信アンテナ4,5からなるアンテナ部6を有し、送信アンテナ2は送信装置1に接続され、また2個の受信アンテナ4,5はそれぞれ2個の受信装置9,10に接続されている。
【0018】受信アンテナ4,5は、送信アンテナ2が送信装置1から供給される例えば数ナノ秒の時間幅のパルスを電磁波として地中に放射し、この放射された電磁波が地中を伝播し、地中に埋設されている周囲媒質と電気的性質の異なる埋設管15からの電磁波の反射波を受信し、この受信した反射波の受信電圧信号を受信装置9,10にそれぞれ供給するようになっている。
【0019】受信装置9,10は、送信アンテナ2からの電磁波の放射から受信アンテナ4,5における反射波の受信までの間の時間を計測し、この時間に基づき埋設管15までの距離を算出するとともに、この計測した時間および受信アンテナ4,5からのそれぞれの受信電圧信号をメモリ11に記憶するようになっている。
【0020】また、演算部13は、メモリ11に記憶された前記反射波の受信までの時間、各受信電圧信号、更に送信アンテナ2と受信アンテナ4,5との相互配置関係に基づき後述するように反射波の方位強度パターンを演算し、図1では図示しない表示手段に表示するようになっている。
【0021】送信アンテナ2と受信アンテナ4,5は、図2に上面図を示すように、それぞれの偏波方向が交差するように配置されている。なお、本実施形態では、送信アンテナおよび受信アンテナは、送信アンテナと受信アンテナとの組が複数構成されるように少なくともいずれか一方が複数設けられることが必要である。図1に示す本実施形態では、送信アンテナ2と受信アンテナ4からなる第1の送受信アンテナ組と送信アンテナ2と受信アンテナ5からなる第2の送受信アンテナ組の2組設けられ、それぞれの送受信アンテナの偏波方向が図2に示すように互いに交差している。なお、上述したように、送信アンテナと受信アンテナからなる組が複数設けられればよいものであり、そのためには送信アンテナと受信アンテナのうち、少なくともいずれか一方が複数設けられればよいものであるが、この場合、複数設けられた送信アンテナまたは受信アンテナの偏波方向のみが相互に交差していればよいものである。
【0022】次に、以上のように構成される本実施形態の埋設物探査装置の作用、特に埋設管の位置および延長方向を推定する処理について図3に示す道路面の平面図を参照して説明する。
【0023】図3に示すように、地中に埋設されている埋設管15に対して本実施形態の埋設物探査装置を図示のアンテナ走査ラインに沿って移動させながら送信アンテナ2から地表面に向けて電磁波を放射し、この電磁波の地中からの反射波を受信アンテナ4,5で受信し、この受信電圧を反射波の強度として計測すると、最大強度の直下の位置Pに埋設管15が存在することが推定できる。
【0024】しかしながら、地中には空洞や岩石などのような非長大物が存在する可能性があり、このような空洞や岩石などからの反射波の強度を間違って埋設管15からの反射波の強度として測定する可能性があるので、本実施形態では、このような間違いを排除するために、以下に説明するように、反射波の方位強度パターンを演算し、この方位強度パターンから埋設管15の位置および延長方向を推定するようにしている。
【0025】すなわち、上述したように計測した最大強度の位置において受信アンテナ4,5で受信した反射波の信号、すなわち受信信号をそれぞれS11,S12とすると、この受信信号S11,S12は図4の右側部分に示すグラフのように図示される。
【0026】具体的には、図4は、実際の計測データであり、同図の左側部分は縦軸に深さを示し、横軸に走査距離を示し、図中の丸で囲んだ位置に埋設管15からの反射像が表示されている。また、図4の右側部分は埋設管15のある地点での反射信号を示すグラフであって、縦軸が時間、横軸に受信アンテナ4,5の受信電圧を示し、上側に受信アンテナ4からの受信信号S11、下側に受信アンテナ5からの受信信号S12を示している。なお、縦軸の時間は、時間=深さ/電波伝播速度、すなわち深さ=時間×電波伝播速度の関係が深さとの間にある。
【0027】また、図5は、図4の右側部分に示した反射信号のグラフを用いて反射信号の方位特性を表示した円グラフであり、円周方向に受信アンテナ4の偏波方向を基準とする方位角φを示し、半径方向に深さ(depth)を示している。
【0028】ここで、送信アンテナ2と受信アンテナ4,5の偏波方向をそれぞれθ1 とψ1 ,ψ2 、送信アンテナ2と受信アンテナ4,5の偏波の影響を表す係数をf11,f12、すなわち送信アンテナ2と受信アンテナ4の偏波の影響を表す係数をf11、送信アンテナ2と受信アンテナ5の偏波の影響を表す係数をf12とすると、これらはf111 ,ψ1)=cosφf121 ,ψ2)=cos(φ−π/2)
のように表されるので、方位角φについての合成信号強度は次式のように計算される。
【0029】S11cosφ+S12sinφ従って、この式に対して図4の右側部分に示すように図1の埋設物探査装置の受信装置9,10で計測された受信信号S11,S12を演算部13で適用して、方位強度パターンを計算すると、図5に示すような方位強度パターンが得られる。図5に示す方位強度パターンの例では、角度55°を中心とする方向に白い縞で示される強い反射像が現れており、この方向に埋設管15が埋設されていることが推定できる。
【0030】なお、上述した計算式を一般化して、送信アンテナおよび受信アンテナの数をそれぞれn,m、第i番目の送信アンテナと第j番目の受信アンテナの組合せによる受信信号をSij(t)、送信アンテナと受信アンテナの偏波方向をそれぞれθi とθj 、送信アンテナと受信アンテナの偏波の影響を表す係数fijとすると、方位強度パターンは【数3】

で定義される。
【0031】従って、この式に対して図1の埋設物探査装置で計測された受信信号を演算部13で適用して、方位強度パターンを計算すると、図5に示すような方位強度パターンが得られるので、この方位強度パターンを観察して、白い縞で表示される強い反射像が現れている部分を検出することにより、埋設管15の埋設されている方向を簡単かつ適確に推定することができる。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、偏波方向は相互に交差する送信アンテナと受信アンテナの組を複数配置し、送信アンテナから地表面に向けて電磁波を移動しながら送信し、該電磁波の地中に存在する埋設物からの反射波を受信アンテナで受信し、この受信アンテナの受信信号と送受信アンテナの相互の配置情報に基づき反射波の方位強度パターンを演算するので、該方位強度パターンから埋設管が敷設されている位置および方向を従来のように熟練を必要とすることなく、簡単かつ適確に判定することができる。
【出願人】 【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区大手町二丁目3番1号
【出願日】 平成13年11月19日(2001.11.19)
【代理人】 【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和 (外1名)
【公開番号】 特開2003−156571(P2003−156571A)
【公開日】 平成15年5月30日(2003.5.30)
【出願番号】 特願2001−353698(P2001−353698)