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【発明の名称】 地震予知方法
【発明者】 【氏名】弘原海 清

【要約】 【課題】正イオン大粒子のイオン濃度を測定し、前記イオン濃度と震源地、地震規模及び地震発生日時との関連性を明確にして、より詳細な地震予知を可能にする。

【解決手段】単一の測定地点での連続的又は断続的な大気中の正イオン大粒子の大粒子イオン濃度の測定により、この大粒子イオン濃度の極大値P1,P2から地震規模及び地震発生日時を推定する地震予知方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 単一の測定地点での連続的又は断続的な大気中の正イオン大粒子の大粒子イオン濃度の測定により、該大粒子イオン濃度の極大値から地震規模及び地震発生日時を推定する地震予知方法。
【請求項2】 測定時間を横軸に、大粒子イオン濃度を縦軸に表した経時的なグラフを表し、該グラフにおける最大極大値から地震規模を推定し、該最大極大値と前記最大極大値より後の極大値とを結ぶ下降線の時間軸に対する交点から地震発生日時を推定する請求項1記載の地震予知方法。
【請求項3】 複数の測定地点での連続的又は断続的な大気中の正イオン大粒子の大粒子イオン濃度の測定により、各測定地点の大粒子イオン濃度を分布して示した地図上の前記分布から震源地、地震規模及び地震発生日時を推定する地震予知方法。
【請求項4】 各測定地点の大粒子イオン濃度を分布して地図上に示し、測定地点間の大粒子イオン濃度を補完して全測定地点を含む範囲のイオン濃度等高線地図を作って該イオン濃度等高線地図の極大値地点を求め、該極大値地点から震源地を推定し、該極大値地点の大粒子イオン濃度から地震規模及び地震発生日時を推定する請求項3記載の地震予知方法。
【請求項5】 測定時間を横軸に、極大値地点の大粒子イオン濃度を縦軸に表した経時的なグラフを表し、該グラフにおける最大極大値から地震規模を推定し、該最大極大値と前記最大極大値より後の極大値とを結ぶ下降線の時間軸に対する交点から地震発生日時を推定する請求項4記載の地震予知方法。
【請求項6】 測定データのノイズを除去するための最低大粒子イオン濃度により決定するオフセット軸を時間軸と平行に設け、下降線のオフセット軸に対する交点から地震発生日時を推定する請求項2又は5記載の地震予知方法。
【請求項7】 縦軸を表す大粒子イオン濃度は対数表示である請求項2,5又は6記載の地震予知方法。
【請求項8】 大粒子イオン濃度の測定と共に大気中の正イオン小粒子の小粒子イオン濃度を測定し、(大粒子イオン濃度/小粒子イオン濃度)の割合が予め定めた地震判定値以上である場合に、該大粒子イオン濃度の極大値は地震に起因する測定データと判定する請求項2,5又は6記載の地震予知方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、比較的容易でありながら精度の高い地震予知を実現する地震予知方法に関する。
【0002】
【従来の技術】自然災害のうち、地震列島とも呼ばれる我が国では、地震予知が大きな関心を集めるところであり、従来より多様な地震予知方法が提案されている。例として、特開平05-087938号「噴火・地震の予知方法及びその装置」、特開平08-220247号「地震予知方法」、そして特開2001-091665号「電磁界測定に基づく地殻内急速運動の予測方法及びその装置」等を例示できる。これらはいずれも、地震前に測定される自然現象の変化=予兆現象を捉えて地震予知する。
【0003】特開平05-087938号は、地球内部のマグマから放射される中性子の量を、予め設定した単位時間毎に連続的に行い、前記単位時間毎の積分計数値に基づいて得られるマグマ活動度から火山の噴火或いは地震の予知をする噴火・地震の予知方法を提案する。地震全般ではなく、あくまで火山性地震に対象を絞り、前記火山性地震を発生させるマグマの変動を、マグマから放射される中性子を予兆現象として測定し、地震予知に役立ている。
【0004】特開平08-220247号は、地震発生前の約14日前後に発生する強い上昇気流を伴う高空の雲及び夕焼け若しくは朝焼けの原因となる地下から放射される第1の音響放射(超音波)と、この第1の音響放射の発生後約14日前後に放射される第2の音響放射を検出し、第1の音響放射を検出した後約14日前後に第2の音響放射を検出した場合に、第2の音響放射を検出した時から数時間後に特に音響放射を強く検出した地域を中心に地震の発生を予知している。ここでは、音響放射(超音波)を予兆現象としている。
【0005】特開2001-091665号は、地下水が貯蔵、流動する被圧耐水層内やこの被圧耐水層の近傍で電磁界の計測を行うことにより、この計測した電磁界に基づき地下間隙水の運動を検知し地殻内急速運動(地震)の予測をする。このように、異常と感知できる電磁界の変化や超音波の発信から、地震予知を試みようとすることがこれまでの地震予知方法の主流と見ることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】大気中のイオン濃度の変化も、上述同様の予兆現象の一つであり、例えば特開平11-174158号「地震前兆現象の検出方法とその装置」等に前記イオン濃度の変化から地震予知を試みる方法が提案されてる。具体的には、この特開平11-174158号は、温度及び湿度の時系列表示から地震の短期前兆現象(予兆現象)を明確にすることを基本とし、これに空気正負電荷密度、イオン比、空中電位の測定値を加味して地震予知する。
【0007】ここで、イオン濃度計測装置が正しく目的のイオン濃度を計測できるかが重要となる。上記特開平11-174158号では、正負電荷濃度をイオン粒子の流径大、中、小に分けて、計6種類の計測データを取得し、地震予知に用いているが、現実にはイオン粒子を粒径毎に3種類に分別し、これらを同時に精度よく計測することは難しい。計測精度の問題は、上記電磁界や超音波を測定して地震予知する各地震予知方法にも当てはまる。すなわち、それぞれ地震予知の理論は正しくても、実現に際する計測精度の確保が難しく、結果として精度の高い地震予知を困難にしている。
【0008】大気中のイオン濃度の変化について考察すると、次のような現象が起きていると考えられる。すなわち、地震源となる活断層から発生したラドン(226Ra→α崩壊→222Rn)が数日の半減期を経て最終的には消滅する。対して、このラドンの現象に反比例して鉛(210Pb)が増大する。この鉛(210Pb)は、大気中の粒子と結びついて正エアロゾルを形成する。この大気中のイオン濃度は、前記鉛(210Pb)以外の要因によっても増減するが、地震前には鉛(210Pb)に起因するエアロゾルの増加が著しい。よって、このエアロゾル、すなわち正イオン大粒子のイオン濃度を測定すれば、地震予知が可能となるわけである。
【0009】こうした鉛(210Pb)に起因するエアロゾルの増加は、まさに地震前にしか起こり得ない予兆現象であり、この正イオン大粒子のイオン濃度の測定は正しく地震予知に結びつく。また、測定対象が「正イオン」かつ「大粒子」だけでよいために、従来の各地震予知方法に比べて、測定データの精度を高めやすく、それだけ正しい地震予知が実現できる。そこで、この鉛(210Pb)に起因するエアロゾルの増加、すなわち正イオン大粒子のイオン濃度を測定し、前記イオン濃度と震源地、地震規模及び地震発生日時との関連性を明確にして、より詳細な地震予知を可能にする地震予知方法を開発することとし、検討した。
【0010】
【課題を解決するための手段】検討の結果、単一の測定地点での連続的又は断続的な大気中の正イオン大粒子の大粒子イオン濃度の測定により、この大粒子イオン濃度の極大値から地震規模及び地震発生日時を推定する地震予知方法を開発した。具体的には、測定時間を横軸に、大粒子イオン濃度を縦軸に表した経時的なグラフを表し、このグラフにおける最大極大値から地震規模を推定し、この最大極大値と前記最大極大値より後の極大値とを結ぶ下降線の時間軸に対する交点から地震発生日時を推定する地震予知方法である。
【0011】大粒子イオン濃度の測定は、従来公知又は専用に作成したイオン濃度測定装置を用いる。測定対象の正イオン大粒子は、粒径0.005〜0.05μm、好ましくは0.007〜0.03μmの正イオン大粒子である。この正イオン大粒子からなる大粒子イオン濃度は、活断層から放出されたラドンに略比例し、断続的な極大値を示しながら減少していく。しかし、ラドン量を直接測定するよりも大粒子イオン濃度を測定する方が極めて容易(ラドンと正イオン大粒子を形成する鉛との半減期の違い)で、地震予知の精度を高めることができる。正イオン大粒子は、震源地から四方へ拡散しながら濃度を低下させていくため、震源地から一定程度離れると測定できなくなる。これまでの試験の結果、有効測定範囲は測定地点からおよそ300kmと判断している。
【0012】地震規模は、大粒子イオン濃度と指数関数的な対応関係にあり、また、(a)測定地点と震源地(より正確には活断層の位置)との距離、そして(b)地震タイプによる補正が必要になる。(a)測定地点と震源地(より正確には活断層の位置)との距離による補正は、前記距離及び大粒子イオン濃度と、実際に発生した地震規模(M値)との相関関係を求めることにより、およそ一義的に定まるようになる。現実に体感しにくい地震は頻繁に起きているので、大粒子イオン濃度の測定精度が向上すれば、日常的な小規模地震から補正データを確定できる。
【0013】(b)地震タイプによる補正については、地震タイプをI型地震(震源が深度20kmまでの直下型地震)、II型地震(震源が深度20km以下のスラブ内地震)、III型地震(海盆又は海溝の地震)に分けて考える。経験的に、I型地震に比べ、II型地震及びIII型地震は相対的に正イオン大粒子の放出量が少なくなる傾向にあるので、測定地点の地理情報から前記地震タイプを判別し、II型地震又はIII型地震のM値は、I型地震のM値に「+1」する(つまりM+1=M)。地震発生日時は、大粒子イオン濃度の極大値の収束を利用し、最大極大値と前記最大極大値より後の極大値とを結ぶ下降線が時間軸に至る付近で地震が発生する。この予知判別は、特にM6以上の大地震について有効である。
【0014】震源地の特定は、複数の測定地点の大粒子イオン濃度を比較すればよい。すなわち、複数の測定地点での連続的又は断続的な大気中の正イオン大粒子の大粒子イオン濃度の測定により、各測定地点の大粒子イオン濃度を分布して示した地図上の前記分布から震源地を推定し、地震規模及び地震発生日時を推定する地震予知方法を用いる。具体的には、各測定地点の大粒子イオン濃度を分布して地図上に示し、測定地点間の大粒子イオン濃度を補完して全測定地点を含む範囲のイオン濃度等高線地図を作ってこのイオン濃度等高線地図の極大値地点を求め、この極大値地点から震源地を推定し、この極大値地点の大粒子イオン濃度から地震規模及び地震発生日時を推定する。地震規模及び地震発生日時は、上記単一の測定地点の場合同様、測定時間を横軸に、極大値地点の大粒子イオン濃度を縦軸に表した経時的なグラフを表し、このグラフにおける最大極大値から地震規模を推定し、この最大極大値と前記最大極大値より後の極大値とを結ぶ下降線の時間軸に対する交点から地震発生日時を推定する。
【0015】複数の測定地点を用いる場合、全測定地点の測定条件が等価(測定データが同程度の価値を有する意味)でなければならない。測定条件の相違がそのまま測定データに現れると、作成するイオン濃度等高線地図に複数の極大値点が求められ、地震予知ができなくなる。この測定条件が相違する要因(条件相違要因)には、(1)測定機器特性の相違、(2)地理又は地層の相違、そして(3)測定時の気象条件の相違、等が考えられる。これらの条件相違要因は一様でないために、一律に補正するわけにもいかず、例えば基準となる地震(M4前後)に対する各測定地点の測定データを定常的に評価し、常に測定データを動的に補正すればよい。全測定地点の測定データが等価であれば、同時刻の各測定データを重みとして、全測定地点を含む範囲のイオン濃度等高線地図の重心を計算することで極大値点=震源地を求めることができる。
【0016】実際の測定においては、大粒子イオン濃度の測定データに地震の予兆現象とは無関係な正イオン大粒子に起因するイオン濃度が含まれているため、単純に極大値を捉えて下降線と時間軸との交点を求めても、地震予知の精度を上げにくい。そこで、測定データのノイズを除去するための最低大粒子イオン濃度により決定するオフセット軸を時間軸と平行に設け、下降線のオフセット軸に対する交点から地震発生日時を推定するとよい。良好な最低大粒子イオン濃度は2000個/cm3であるが、測定地点の地形又は地層、周囲の環境や測定装置の能力等に応じ、最低大粒子イオン濃度は前記数値を中心に加減してもよい。
【0017】大粒子イオン濃度の大小は、地震規模に比例するが、直線的な正比例とはならない。これは、地震規模を表す大きさM(マグニチュード)が対数表記であるほか、発生する正イオン大粒子は四方に拡散していくため、大粒子イオン濃度と地震規模とは、どうしても指数関数的な対応関係となる。そこで、大粒子イオン濃度をグラフに表す場合、縦軸を表す大粒子イオン濃度は対数表示(10を底とする対数(log)値)にするとよい。前記対数表示の大粒子イオン濃度は、およそマグニチュードに直線的な正比例の関係となり、グラフから直感的に地震規模を判断できる。正確な大粒子イオン濃度と対数によるM値との関係は、測定の蓄積により、実証的に定めることができる。
【0018】この場合、グラフの縦軸を分割し、下方の安全色(青、緑等)から注意色(黄等)、危険色(赤等)に塗り分けて地震規模を示す色帯を設けておくと、最大極大値がどの色帯に含まれるかで直感的に地震規模を理解できるので好ましい。また、上述した(a)測定地点と震源地との距離による補正は、距離R(km)、地震規模M、そして大粒子イオン濃度の対数(log)値をXとした場合、R=a/X、M=b*X(a,bは定数)の関係があり、測定データの集積によって距離−地震規模の対応表を作成しておき、距離による地震規模の補正は前記関係式による代入計算又は前記対応表を元に実施できる。
【0019】このほか、測定する大粒子イオン濃度と地震との関連性の正否判定は、大粒子イオン濃度とその他のイオン粒子濃度(通常小粒子イオン濃度)との変化の違いを測定すればよい。すなわち、大粒子イオン濃度の測定と共に大気中の正イオン小粒子の小粒子イオン濃度を測定し、(大粒子イオン濃度/小粒子イオン濃度)の割合が予め定めた地震判定値以上である場合に、この大粒子イオン濃度の極大値は地震に起因する測定データと判定する。
【0020】大粒子イオン濃度が上昇する場合、前記上昇が地震に起因するものであれば通常小粒子イオン濃度は上昇しないはずである。そこで、常態として測定される(大粒子イオン濃度/小粒子イオン濃度)の割合を基準として、前記基準を下回ることがあれば、この場合の大粒子イオン濃度の上昇は必ずしも地震と関係がないことになる。裏返せば、前記割合が予め定めた地震判定値以上である場合に、大粒子イオン濃度の極大値は地震に起因する測定データと判定できる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。図1は単一の測定地点における大粒子イオン濃度の変化を表すグラフ、図2は同測定地点における大粒子イオン濃度/小粒子イオン濃度の割合の変化を表すグラフ、図3は同測定地点における大粒子イオン濃度の対数値の変化を表すグラフである。
【0022】本例では、単一の測定地点において1日2回(12時間毎、昼及び晩)の測定を実施し、測定時間を横軸に、大粒子イオン濃度を縦軸に表した経時的なグラフから、地震規模と地震発生日時を推定する。各グラフの横軸(測定時間)は測定開始からの日数(各図中12日まで、単位:日)共通であるが、各グラフの縦軸は図1では測定データ(単位:個/cm3)、図2では大粒子イオン濃度/小粒子イオン濃度の割合(%)、そして図3では測定データの対数値(単位:個/cm3)である。測定地点の位置は予め特定しておくほか、GPS等を用いてリアルタイムに計測できるようにして、移動可能な測定地点とすることもできる。
【0023】本例では、図1に見られるように、まず測定開始から2日目昼に最大極大値P1を、その後測定開始から5日目晩に次の極大値P2を測定している。これから、最大極大値P1から次の極大値P2を結ぶ下降線1の時間軸に対する交点2を求めると、およそ測定開始から10日目晩に地震が発生する可能性が予測できる。
【0024】本例に示すグラフでは、大粒子イオン濃度4000個/cm3以上において2000個/cm3毎に色づけして色帯3による危険度を示している。これにより、仮に数値を細かく読まなくても、最大極大値P1が含まれる色帯3から直感的に地震規模を把握できる。この地震予知に用いた測定データと地震との相関は、図2に見られる大粒子イオン濃度/小粒子イオン濃度の割合が地震判定値80%以上における測定データであることから、測定した大粒子イオン濃度は地震の予兆を正しく示すものと判断できる。
【0025】図1のグラフからも明らかなように、大粒子イオン濃度は決して0になることはなく、2000個/cm3弱を下限として変動している。これは、地震予知に適当な測定データは、大粒子イオン濃度で2000個/cm3以上の正イオン大粒子だけであることを意味する。また、最大極大値P1は基本的に地震規模を表すが、最大極大値P1と次の極大値P2とを結ぶ下降線1は、必ずしも直線にはならない(図1では便宜上直線表示)。そこで、図3に見られるように、測定データを対数値(10を底とするlog値)に変換すると共に、最低大粒子イオン濃度を2000個cm3としてオフセット軸4を定め、最大極大値P1と次の極大値P2とを結ぶ下降線1とオフセット軸4との交点2から地震発生日時を推定する。図3では、図1との比較のために左縦軸を1000単位とし、右縦軸に対数値に対応するM値を示す。
【0026】図3においても、下降線1とオフセット軸4との交点2はおよそ測定開始から10日目晩に地震が発生する可能性を予測している。また、図1に示すグラフでは、大粒子イオン濃度4000個/cm3以上を2000個/cm3毎に色づけして色帯3による危険度を示している。これに対して、本例に示すグラフ(図3)では、対数値とM値との関係から、別途定めた間隔で、M値に対応するように色帯3を用いて危険度を示している。対数値を用いた場合、縦軸の間隔が一定にならないので、このように色帯3による判別は、直感的な地震規模の把握を助ける。
【0027】地震の予兆として発生する正イオン大粒子(エアロゾル)は、震源地を中心に四方へ拡散するから、単一の測定地点では震源地までの距離しか推測できず、測定し得た大粒子イオン濃度がそのままM値になるとは限らない。そこで、(a)測定地点と震源地との距離による補正、及び(b)地震タイプによる補正を経て、よりよく地震予知を果たすことになる。(a)の補正については、距離R(km)、地震規模M、そして大粒子イオン濃度の対数(log)値をXとして、R=a/X、M=b*X(a,bは定数)の関係があることから、過去に得た測定データから予め測定地点毎の定数を決めておく。
【0028】例えば、ある測定地点において最大極大値P1の対数値Xが4.043、発生した地震の規模Mが7.3、測定地点から震源地までの距離Rが79.52kmであれば、a=321.5、b=1.805となる。同様に、最大極大値P1の対数値Xが3.655、発生した地震の規模Mが6.4、測定地点から震源地までの距離Rが126.5kmであれば、a=462.5、b=1.751となる。これらのデータから、この測定地点における定数a=392、b=1.778と定めた場合(各平均値)、後日最大極大値P1=6500個の測定データが得られれば、X=3.813となり、震源地までの距離R=a/X=102.8km、地震規模M=b*X=6.780と推測できる。このとき、上記推測の震源地までの距離Rにおける地理情報により、I型地震であればM=6.780であるが、II型地震又はIII型地震であればM=7.780と補正する。
【0029】上記説明からも明らかなように、単一の測定地点では、震源地までの距離は推定できても、震源地を特定できない。そこで、複数の測定地点を設け、イオン濃度等高線地図を作成し、震源地を前記地図の重心として求める。図4は5点の測定地点A,B,C,D,Eの各大粒子イオン濃度の測定データを地理関係に合わせて記載した基本地図であり、図5は前記基本地図から作成したイオン濃度等高線地図である。測定地点の数は、好ましくは3点以上であるが、仮に2点であっても、各測定地点から震源地までの距離が推定できるため、単一の測定地点の場合に比べて震源地の推測が容易になる。各測定地点の間隔は、単一の測定地点での有効測定範囲がおよそ300kmであるから、相互の測定範囲が重なるように500〜600km間隔に設定する。各測定地点の位置は予め特定しておくほか、GPS等を用いてリアルタイムに計測できれば、移動可能な測定地点でもよいし、固定測定地点と移動測定地点とを混在して利用できる。
【0030】複数の測定地点A,B,C,D,Eを設けた場合、必ずしも全測定地点で同じ測定時間に同様な極大値が現れるわけではない(震源地からの距離的に基づくエアロゾル拡散時間に差があるから)が、イオン濃度等高線地図はあくまで各測定地点A,B,C,D,Eの最大極大値P1から作成する。この場合、イオン濃度等高線地図作成に用いる各測定地点A,B,C,D,Eの最大極大値P1は、時間的に接近した値を選択する。本例では、図4に見られるように、中心付近に位置する測定地点Aにお大粒子イオン濃度の最大極大値P1=6000個(図4中は×100個/cm3単位で表示)を測定した時を基準として、他の測定地点B〜Eにおいて時間的に近接した大粒子イオン濃度の最大極大値P1を選んでいる。この各測定地点A,B,C,D,Eの最大極大値P1を高さとみなし、各測定地点A,B,C,D,E間で補完しながら等高線を描くと、図5に見られるようなイオン濃度等高線地図が得られる。このイオン濃度等高線地図における中心(重心)が極大値地点であり、この極大値地点を震源地Xと推定する。
【0031】記述したように、本発明に地震予知方法における測定地点の有効測定範囲は300kmであり、複数の測定地点を設ける場合にも、500〜600km間隔で配置すればよい。これは、我が国で言えば10数点の測定地点を全国に設けるだけで、全国の地震予知が可能になることを意味する。しかも、上述のように説明してきたように、地震規模、地震発生日時は各測定地点でのみでも予測可能であり、本発明での複数の測定地点は相互に測定データを補完して、予断を排除した高い精度の地震予知を可能にする。加えて、複数の測定地点は震源地の確定をもたらすので、本発明に基づく地震予知方法により、およそ必要な地震予知が可能になる効果がある。
【0032】
【発明の効果】本発明により、従来に比べて測定が容易な正イオン大粒子を用いた精度の高い地震予知方法を提供できるようになる。本発明が対象とする正イオン大粒子を形成する鉛(210Pb)は半減期が長く、ラドンに比べて安定しているので、測定も容易であり、この結果測定装置が簡易で済むようになる。これは、本発明に基づく測定地点として、過般型測定装置を用いた移動測定地点の利用を可能にすることを意味し、例えば火山性微動等が見られる地域へ一時的に集中して測定装置を持ち込み、重点的地震予知を試みる、といった運用形態も容易に実現できるようになる効果を有する。
【0033】また、正イオン大粒子が地震規模に比例して濃度変化することから、本発明の地震予知方法では地震規模を推定するが、この場合でも、測定容易な正イオン大粒子は、測定データから高い精度で地震規模の予測を可能にする。同様にイオン濃度の測定による地震予知を試みていた従来の方法では、正イオンのみならず負イオンも測定するほか、粒子径を大、中、小と細かく区分するため、相互の粒子が重なって計測される等、地震予知のための測定データの精度を高めにくい問題があった。本発明では、正イオンのみを対象とし、しかも大、小の2区分で正イオンを捉えるので、より正確な測定データの取得を可能にし、もって地震予知の精度を高めている。
【0034】そして、こうした地震予知に結びつく高い測定データを取得しやすい利点を利用して、複数の測定地点からの測定データを地図上で比較することにより、イオン濃度等高線地図を作成して震源地の特定まで可能にしている。従来の各種地震予知方法も、同様に地図上に測定データを展開して震源地の予測もできなくはないが、各測定データの精度が低いため、これら複数の測定データの相関から決定する震源地の予測の精度はあまり高くなかった。本発明は、各測定データの精度を高めることにより、震源地の予測も高い精度で導き出せるようにする効果を有する。
【出願人】 【識別番号】301014971
【氏名又は名称】弘原海 清
【出願日】 平成13年6月18日(2001.6.18)
【代理人】 【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎 (外2名)
【公開番号】 特開2003−4859(P2003−4859A)
【公開日】 平成15年1月8日(2003.1.8)
【出願番号】 特願2001−183139(P2001−183139)