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【発明の名称】 精度管理方法
【発明者】 【氏名】井野 邦英
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区浜辺通2丁目1−30 国際試薬株式会社内
【課題】測定値の正確性を担保した精度管理方法の提供をする。

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】精度保証システムにおける測定値の正確さ評価において、日常の精度管理に用いられている試料(2濃度以上)の施設内変動値の合成変動値を計算する手段をシステムに導入する測定値の正確さ評価手段。
【請求項2】回帰係数a=0、b=1の検定を下記式を用いてt検定する請求項1の正確さ評価手段;
aの検定:【数1】

bの検定:【数2】

(ここで、t0<t(φ,α)であればa=0、b=1が採択され、t0>=t(φ,α)であればa=0、b=1が棄却される。SS:合成変動値、Sxx:xの変動、Xi:各標準物質の測定値、【数3】

:標準物質の平均値)
【数4】

α:危険率 φ:自由度(n x q - n)), n:試料数、q:繰り返し数【請求項3】請求項2に記載の危険率が5%である請求項2に記載の評価手段。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】この発明は、臨床検査における検査結果の精度管理方法であって、自施設の精度が回帰式の検定に影響を及ぼさない精度管理の正確性確保のための手段およびそれを利用するソフトウェアーに関する。
【0002】
【従来の技術】医学的診断の中で、最も客観的な情報提供が臨床検査である。正しい診断には、その検査情報が信頼できなければならない。高い客観性と信頼性には検査結果の正確さと精密さが長期に亘り維持・管理される必要がある。その精度管理を基盤に検査情報に適切な精度保証(Quality Assurance,QA)を与えるための工夫が種々検討されている。検査データの正確さ評価はJCCLSから指針がある〔「臨床化学における定量検査の精密さ・正確さ評価法指針(改訂版)(GC-JAMT1-1999):日本臨床検査標準協議会会誌、51,3-26(1999)〕。それによると、日間の誤差が無視できる状況下で3濃度以上(試料数:n)の試料を各5回以上測定し(繰り返し数:q)、外れ値や管理外データ処理を行ない、各試料毎に5回の測定値を用意する。各試料の繰り返し測定値(y)と各試料の表示値(x)で直線回帰式y=a+bxを算出する。回帰係数a=0、b=1の検定を式1を用いて有意水準5%でt検定する。この場合、a=0、b=1と採択された場合は正確性は満たされたと評価される。しかし、a=0が棄却されると一定系統誤差が、b=1が棄却されると比例系統誤差があると評価される。
【0003】式1aの検定【数5】

bの検定【数6】

ここで、Sy/x:回帰式の標準誤差α=危険率φ=n×q−n【数7】

であり、t0<t(φ,α)であればa=0、b=1が採択され、t0>=t(φ,α)であればa=0、b=1が棄却される。
【0004】しかし、この従来法における問題点は以下である。つまり、sy/xは標準物質を5回測定したときの各施設での信頼区間であり、測定値の再現性が大きい場合はsy/xの値が大きくなり回帰係数の検定が採択されやすい傾向になる。一方、測定値の再現性が小さい場合はsy/xの値が小さくなり回帰係数の検定が棄却されやすい傾向になる。この様に自施設の精度が回帰係数の検定に影響を及ぼし、精度が良好であればあるほど施設の検定結果が棄却されやすいという問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、臨床検査における検査結果の精度管理方法であって、自施設の精度が回帰式の検定に影響を及ぼさない精度管理の正確性を担保した精度管理方法の提供をすることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、sy/xの代わりに、日常の精度管理に用いられている試料(2濃度以上)の施設内変動値の優れた施設の合成変動値を計算する手段及びシステム導入することにより精度管理の正確性を担保した精度管理方法を提供し本発明を完成した。
【0007】
【発明の実施の形態】2濃度の試料を用いて、危険率を5%としたときの本発明の手段及びシステムを以下に説明する。
1)各施設のデータを集積し、分散分析により施設内変動値(intra‐SD)を算出する。
2)各施設のSDと施設内変動(intra‐SD)を比較し、施設のSD/施設内変動(intra‐SD)>=1を除外する。
3)各施設のSDをソートし施設内変動値の最小値より上位95%を抽出する。
4)上記で抽出した上位95%グループを再計算し、分散分析により施設内変動(intra‐SD)を算出する。
5)2試料の場合の計算された施設内変動(intra‐SD)をそれぞれintra‐SD1、intra‐SD2とし、次式より合成変動値(SS)を計算する。
SS=SQRT((intra-SD1^2 + intra-SD2^2)/2)6)上記で求めた合成変動値SSを従来法の式1のSy/xとして用いる。但し、この評価に使用する2試料は正確さ評価試料の中濃度域を管理できるものを必要とする。
(式2)
aの検定:【数8】

bの検定:【数9】

(ここで、t0<t(φ,α)であればa=0、b=1が採択され、t0>=t(φ,α)であればa=0、b=1が棄却される。SS:合成変動値、Sxx:xの変動【数10】

α:危険率 5%、φ:自由度(n x q - n))
3.前項2に記載の危険率が5%である前項2に記載の評価手段。からなる。
【0008】このことにより、自施設の精度が回帰式の検定に影響を及ぼすことなく、上記の問題点が解決されることを見出した。さらに、合成変動値は多くの施設から得られた値を集計しているので、現在の技術条件を用いた評価が可能である。さらに、全国的な規模で測定値が得られると全国レベルでの評価が可能となり、全国同一レベルで現在の分析水準での比較が行なえるので日常の精度管理との融合がはかれる。
【0009】さらに、合成変動値SSの代わりに、臨床的許容誤差を用いることができ、臨床的許容誤差としては、3種類の臨床的許容誤差が考えられており、■技術的水準(実際の測定精度):現在の技術水準に基づいて定める方法で優れた検査室における分析法の実際の測定誤差の大きさに目標を定めるもの。合成変動値SSはこの水準に相当できる。
■臨床的な有用性から経験的に定められた精度:有用性にもとづき医学的意思決定濃度における基準だが、治療方針決定の立場や疾患の種類により基準が異なる点等に解決すべき問題があると考えられる。
■測定誤差を生体の生理的変動と比較する考え方:個人の生理的変動値(SDw)の1/2(SDw/2)もしくは基準値(従来の正常値)で割った値(cvw)を誤差の限界とする考え方で、個人の時系列データの観察という目的からも優れたものと考えられる。
【0010】
【実施例】
【実施例1】日間の誤差が無視できる状況下で3濃度以上(試料数:n)の試料を各5回以上測定し(繰り返し数:q)外れ値や管理外データ処理を行ない、各試料毎に5回の測定値を用意する。各試料の繰り返し測定値(y)と各試料の表示値(x)で直線回帰式y=a+bxを算出する。回帰係数a=0、b=1の検出を外部精度管理「eQAP:国際試薬外部精度保証システム」での全国集計による施設内精度と許容誤差を併用した総合精密さ評価システムにより提供する。
1)システムの概要■eQAPへの参加により提供される管理試料(2濃度)と精度管理ソフトにて日常の精度管理を実施する。
■測定条件は、1日2回以上で月単位16日以上の精度管理データを週単位もしくは、月単位でQAPセンターにインターネット利用(ftpもしくはhttp)し、送信する。各検査室より送付されたデータは、表1のようにまとめられ、データ処理される。
【表1】

【0011】■収集された全国データには、各施設の各日の平均値と標準偏差、日数より一元配置分散分析を利用して、施設内変動(intra-SD:intra lavoratory SD)と施設間変動(SDP=各施設のSD/intra SD)を計算する。SDは、標準偏差を意味する。全データ数は、次式で計算され、【数11】

intra-SD(施設内変動)は以下のように求められる。
【数12】

【0012】■各施設のSDと施設内変動(intra-SD)を比較し施設のSD/施設内変動>=1を除外する。
■各施設のSDをソートし、施設内変動値の最小値より上位95%を抽出する。
■で抽出した上位95%グループを再計算し、分散分析により施設内変動を算出する。
■2試料についてそれぞれ施設内変動を求め、intra-SD1、intra-SD2とし、下式により合成変動値(SS)を求める。
SS=SQRT((intra-SD1^2 + intra-SD2^2)/2)■下式によりa=0、b=1、0を検定する。
aの検定:【数13】

bの検定:【数14】

■評価結果は、月毎に施設毎のレポートにまとめて「eMail」にて各施設に返送する。
【0013】
【発明の効果】本発明の精度管理法は、自施設の精度が回帰式の検定に影響を及ぼすことなく測定値の正確性を全国の集計値からの分析結果により評価できる精度管理方法を達成するものである。
【0014】
【参考資料・文献】参考資料・文献1)「臨床化学における定量検査の精密さ・正確さ評価法指針(改訂版)(GC-JAMT1-1999)」:日本臨床検査標準協議会会誌、51、3‐26 (1999)2)R.N.Barnett 著,臼井敏明 訳:「臨床検査統計学 正常値、精度管理」,医学書院,19803)丹後俊郎 著:「臨床検査への統計学」,朝倉書店,19864)臼井敏明:パーソナルコンピューターを用いた臨床検査プログラムTQASystemの解説.QAP News 22,2-18,国際試薬,19845)桑克彦:自動分析の精度管理―誤差の要因分析の手法―.QAP News 15,21-30,国際試薬,1982
【出願人】 【識別番号】000170565
【氏名又は名称】国際試薬株式会社
【住所又は居所】兵庫県神戸市西区高塚台4丁目3番2号
【出願日】 平成14年3月27日(2002.3.27)
【代理人】 【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
【公開番号】 特開2003−287542(P2003−287542A)
【公開日】 平成15年10月10日(2003.10.10)
【出願番号】 特願2002−89790(P2002−89790)