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【発明の名称】 歯車測定機
【発明者】 【氏名】關 亮
【住所又は居所】静岡県浜松市葵東1−13−1 本田技研工業株式会社浜松製作所内

【要約】 【課題】諸元の異なる多種類のワークギヤの歯厚測定を行う場合であっても、コスト増を抑えることができる歯車測定機の提供。

【解決手段】レーザ測長機22と、回転可能にワークギヤWを支持する支持台部21と、該支持台部21によりワークギヤWを回転させながらレーザ測長機22でワークギヤWを検出させ、支持台部21の回転データとレーザ測長機22の検出データとからワークギヤWの歯厚を演算する演算部24とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 レーザ測長機と、回転可能にワークギヤを支持する支持台部と、該支持台部によりワークギヤを回転させながら前記レーザ測長機で前記ワークギヤを検出させ、前記支持台部の回転データと前記レーザ測長機の検出データとから前記ワークギヤの歯厚を演算する演算部とを有することを特徴とする歯車測定機。
【請求項2】 前記ワークギヤの温度を検出する温度センサを有し、前記演算部は前記温度センサの検出データに基づいて前記歯厚を補正することを特徴とする請求項1記載の歯車測定機。
【請求項3】 前記演算部は、前記歯厚としてオーバーボール径を算出することを特徴とする請求項1または2記載の歯車測定機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ワークギヤの歯厚を測定する歯車測定機に関する。
【0002】
【従来の技術】ホブ盤やギヤシェーパによる歯切り加工、シェービング盤によるシェービング加工、歯車研削盤による歯研加工等、歯車を加工する全ての加工工程において、必要な精度のワークギヤを安定的に製造するためには、当然のことながら、ワークギヤの加工精度を測定し、測定結果を以後のワークギヤの加工にフィードバックすることが重要となっている。
【0003】このようなワーク歯車の加工精度の一例として例えば歯厚がある。歯車加工では、ワークギヤの歯厚を測定し測定値をフィードバックして、例えば歯厚が厚ければ以降の取り代を大きくするように切り込み量を変更する一方、歯厚が薄ければ以降の取り代を小さくするように切り込み量を変更する等のフィードバックを行っている。
【0004】ワークギヤの歯厚を測定する従来の歯車測定機としては、歯車の歯厚に応じてこの歯車とこれに隙間なく噛み合う歯車との間の軸間距離が変化することを利用し、マスターギヤをワークギヤに隙間なく噛み合わせるとともにこのマスターギヤのワークギヤに対する位置をマグネスケール等で検出することでワークギヤの歯厚を測定する歯車測定機がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のようなマスターギヤをワークギヤに隙間なく噛み合わせるとともにこのマスターギヤの位置を検出することでワークギヤの歯厚を測定する歯車測定機では、当然のことながら、諸元の異なるワークギヤ毎にマスターギヤを製作しなければならず、多種類のワークギヤの歯厚測定を行うためにはコストがかかってしまうという問題があった。
【0006】したがって、本発明は、諸元の異なる多種類のワークギヤの歯厚測定を行う場合であっても、コスト増を抑えることができる歯車測定機の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の歯車測定機は、レーザ測長機(例えば実施形態におけるレーザ測長機22)と、回転可能にワークギヤ(例えば実施形態におけるワークギヤW)を支持する支持台部(例えば実施形態における支持台部21)と、該支持台部によりワークギヤを回転させながら前記レーザ測長機で前記ワークギヤを検出させ、前記支持台部の回転データと前記レーザ測長機の検出データとから前記ワークギヤの歯厚を演算する演算部(例えば実施形態における中央制御装置24)とを有することを特徴としている。
【0008】このように、演算部が、支持台部によりワークギヤを回転させながらレーザ測長機でワークギヤを検出させ、支持台部の回転データとレーザ測長機の検出データとからワークギヤの歯厚を演算するため、マスターギヤが不要となる。
【0009】本発明の請求項2記載の歯車測定機は、請求項1記載のものに関し、前記ワークギヤの温度を検出する温度センサ(例えば実施形態における温度センサ23)を有し、前記演算部は前記温度センサの検出データに基づいて前記歯厚を補正することを特徴としている。
【0010】このように、演算部が、演算したワークギヤの歯厚を温度センサの検出データに基づいて補正するため、温度変化の影響を排除できる。
【0011】本発明の請求項3記載の歯車測定機は、請求項1または2記載のものに関し、前記演算部は、前記歯厚としてオーバーボール径を算出することを特徴としている。
【0012】このように、演算部が、歯厚としてオーバーボール径を算出するため、作業者にとって歯厚の精度管理が容易となる。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の一実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0014】図1は、歯車加工システムの全体構成を示すもので、図1中、符号11はワークに対し歯車加工を行う歯車加工機を、符号12は歯車加工機11に対しワークギアWの搬入・搬出を行う搬入・搬出ロボットを、符号13は搬入・搬出ロボット12で搬出されたワークギヤWを測定する歯車測定機を、それぞれ示している。
【0015】歯車加工機11は、切削油を使用しないいわゆるドライ加工を行うホブ盤であり、ホブカッタおよびワークを保持するとともにホブカッタの回転、送りおよび切り込みの駆動とワークの回転駆動とを行う加工機本体15と、この加工機本体15の駆動を制御する加工機コントローラ16とを有している。
【0016】搬入・搬出ロボット12は、歯車加工機11に対しワークギヤWの取り付けおよび取り外しを行うとともに、歯車測定機13に対しワークギヤWの取り付けおよび取り外しを行うロボット本体18と、このロボット本体18の駆動を制御するロボットコントローラ19とを有している。
【0017】歯車測定機13は、搬入・搬出ロボット12で取り付けられたワークギヤWを回転可能に支持する支持台部21と、支持台部21に支持されたワークギヤWにレーザを照射して照射位置までの距離を検出するレーザ測長機22と、支持台部21に支持されたワークギヤWの温度を検出する温度センサ23と、支持台部21とレーザ測長機22とを制御するパソコン等の中央制御装置(演算部、制御部)24とを有している。
【0018】支持台部21は、ワークギヤWを水平状態でクランプ可能な回転軸26と、この回転軸26を駆動するサーボモータ27と、サーボモータ27の回転を所定の減速比で減速させるギヤボックス28と、サーボモータ27をその回転位置データ等に基づいて制御するサーボコントローラ29とを有している。
【0019】レーザ測長機22は、図2に示すようにワークギヤWにレーザを照射して照射位置までの距離である測長データを検出するレーザセンサヘッド31と、レーザセンサヘッド31の測長データを増幅するアンプユニット32と、サーボコントローラ29によるサーボモータ27の回転データに基づいて、アンプユニット32で増幅された測長データの低次の成分のみを取り出すローパスフィルタ33と、ローパスフィルタ33で取り出された検出データの低次の成分からワークギヤWの歯振れを測定し、歯振れが問題ないレベルにあるか否かをしきい値と比較することにより判定して判定結果を表示するとともに判定結果のOK/NGデータを中央制御装置24に出力する歯振れ判定結果表示出力部34と、サーボコントローラ29によるサーボモータ27の回転データとアンプユニット32で増幅された測長データとに基づいて歯厚測定・解析用の形状データを中央制御装置24に出力する歯厚測定・解析用データ出力部35とを有している。
【0020】中央制御装置24は、加工機コントローラ16から出力される加工機本体15の作動状態データに基づいて、ロボットコントローラ19を介してロボット本体18を制御する。すなわち、加工機本体15によるワークギヤWの歯切り加工が完了したことが加工機コントローラ16から出力されると、ロボット本体18によりこのワークギヤWを取り外して次のワークを加工機本体15に取り付けさせるとともに支持台部21に取り付けられ歯車測定が完了していたワークギヤWを取り外して加工が完了した直後のワークギヤWを支持台部21に取り付けさせるようにロボットコントローラ19を制御する。
【0021】また、中央制御装置24は、ロボットコントローラ19から受けるロボット本体18の作動状態データに基づいて、サーボコントローラ29によりサーボモータ27の作動を制御する。すなわち、ロボット本体18が歯車加工直後のワークギヤWを加工機本体15から取り外し、支持台部21に取り付けたことがロボットコントローラ19からの作動状態データで確認されると、中央制御装置24は、支持台部21のワークギヤWの測定を開始させるようにサーボコントローラ29を介してサーボモータ27を駆動する。
【0022】さらに、中央制御装置24は、ロボットコントローラ19から受けるロボット本体18の作動状態データに基づいて、加工機コントローラ16により加工機本体15の作動を制御する。すなわち、ロボット本体18が次のワークを加工機本体15に取り付けたことがロボットコントローラ19からの作動状態データで確認されると、中央制御装置24は、加工機コントローラ16を介して加工機本体15の歯車加工を開始させる。
【0023】加えて、中央制御装置24は、ロボットコントローラ19を制御することで、ロボット本体18の作動/停止を制御する。すなわち、例えば、歯車測定機13の歯振れ判定結果表示出力部34からワークギヤWの歯振れが問題あるレベルにあると判定された判定結果のOK/NGデータが出力された場合には、加工機本体15に何らかの機械的調整が必要となるため、それ以上のワークギヤWの加工を行わないように次のワークの搬入を規制すべくロボット本体18を停止させるのである。
【0024】加えて、中央制御装置24は、歯厚測定・解析用データ出力部35から出力される歯厚測定・解析用の形状データからワークギヤWの歯厚を演算するとともに、この演算結果に基づいて、歯車加工機11の加工機コントローラ16を制御してホブカッタの切り込み量をフィードバック制御する。すなわち、加工後測定を行った歯車の歯厚が、基準となる所定値よりも厚ければ、次のワークギヤWについては所定値から厚い分だけ多く削れるように切り込み量(ホブカッタとワークギヤとの軸間距離)を変更する一方、歯厚が基準となる所定値よりも薄ければ、所定値から薄い分だけ削り量が少なくなるように切り込み量を変更する。このとき、中央制御装置24は、温度センサ23の出力データから上記切り込み量、すなわちフィードバック制御の制御量を補正する。
【0025】温度センサ23は、ワークギヤWの温度を検出するセンサ本体37と、このセンサ本体37の検出データを増幅するアンプ36と、このアンプ36で増幅された検出データを電圧に変換して中央制御装置24に出力する変換器38とを有している。ここで、センサ本体37は、非接触でワークギヤWの温度を検出する非接触熱電対を有している。
【0026】次に、レーザ測長機22を用いて非接触でワークギヤWの歯厚を測定する測定原理について説明する。
【0027】まず、レーザ測長機22で歯数がZ枚のワークギヤWの全ての歯に対し測長を行い、その測長データをローパスフィルタ33に入力してワークギヤWの歯振れである回転1次成分を取り出し、歯振れを歯振れ判定結果表示出力部34で判定する。その一方で、歯厚測定・解析用データ出力部35では、サーボコントローラ29によるサーボモータ29の回転データとレーザ測長機22の測長データとから、ワークギヤWの歯振れである回転1次成分の誤差量をキャンセルした図3に示すような歯形データを生成する。
【0028】次に、歯厚測定・解析用データ出力部35では、上記歯形データから、レーザセンサヘッド31から所定の距離L1の位置におけるワークギヤWの全歯分の谷部幅測定位置a1’,b1’,a2’,b2’,…,aZ’,bZ’を測定する。ここで、L1=L0−(d0+2*Xn*Mn)/2である。ただし、L0はレーザセンサヘッド31からワークギヤWの中心までの距離、d0はワークギヤWのピッチ円直径、XnはワークギヤWの転移係数、MnはワークギヤWのモジュールである。
【0029】そして、歯厚測定・解析用データ出力部35では、各谷部幅h1,h2,…,hZを以下にしたがって算出して、中央制御装置24に形状データとして出力する。
h1=a1’−b1’h2=a2’−b2’以下同様にしてhZ=aZ’−bZ’【0030】次に、中央制御装置24では、歯厚測定・解析用データ出力部35から出力された形状データh1,h2,…,hZから、測定値の平均値haveを以下にしたがって算出する。
have=(h1+h2+h3+…+hZ)/Z【0031】次に、中央制御装置24では、オーバーボール径を図るためのボールマイクロの理論ボールの中心を通る上記測定値における圧力角φvaveを上記測定値の平均値haveに基づき以下にしたがって算出する。
φvave=have/(d0+2*Xn*Mn)
【0032】一方、オーバーボール径を図るためのボールマイクロのボールの理論ボール径dpaは、以下にしたがって算出される。
dpa=Zva*Mn*cosαn*(invφva+Ψa/2)
【0033】ただし、Zvaは相当平歯車歯数であり、ワークギヤWのねじれ角をβ0としたときに、Zva=Z/(cos(β0))^3となる。また、Ψa/2は基礎円上歯溝角の半分の値であり、圧力角をαnとしたときに、Ψa/2=π/(2*Zva)−invαn−(2*Xn*tanαn)/Zvaである。さらに、φvaは理論ボールの中心を通る圧力角であり、φva=tanαva+Ψa/2である。ただし、αvaは理論ボールとワークギヤWの接点の圧力角であり、αva=cos−1{(Zva*cosαn)/(Zva+2*Xn)}で算出される。
【0034】そして、測長データに基づく実測値であるオーバーボール径dmaveは、正面圧力角をαsとしたときに、以下のようになる。すなわち、歯数が偶数の場合、dmave=Z*Mn*cosαs/(cosβ0*cosφvave)+dpaとなり、一方、歯数が奇数の場合、dmave=Z*Mn*cosαs/(cosβ0*cosφvave)*cos(π/Z)+dpaとなる。
【0035】このようにして算出された歯厚としてのオーバーボール径dmaveから、中央制御装置24では、切り込みのオフセット量δを以下にしたがって算出する。
δ=(dmave−dma)*2tanαnただし、dmaは、理論オーバーボール径であり、歯数が偶数の場合、dma=Z*Mn*cosαs/(cosβ0*cosφva)+dpaとなり、一方、歯数が奇数の場合、dma=Z*Mn*cosαs/(cosβ0*cosφva)*cos(π/Z)+dpaとなる。
【0036】さらに、中央制御装置24では、温度センサ23で検出された温度データTaveからオフセット量δを以下にしたがって温度補正のあるオフセット量δtaveに補正する。すなわち、常温と判定できる所定の設定温度をtとし、ワークギヤWの線膨張率ωと、歯先円径Dkとを用いて、δtave=δ+(Tave−t)*ω*Dk/2【0037】そして、中央制御装置24は、このように算出された温度補正のあるオフセット量δtaveを加工機コントローラ16に出力し、加工機コントローラ16では、このオフセット量δtaveだけ加工機本体15のホブカッタの切り込み量をオフセットさせて、歯車加工機11において以降のワークギヤWを歯切加工させる。
【0038】以上に述べた本実施形態によれば、歯車測定機13の中央制御装置24が、支持台部21によりワークギヤWを回転させながらレーザ測長機22でワークギヤWを検出させ、支持台部21の回転データとレーザ測長機22の検出データとからワークギヤWの歯厚を演算するため、マスターギヤが不要となる。
【0039】したがって、諸元の異なる多種類のワークギヤの歯厚測定を行う場合であっても、コスト増を抑えることができる。
【0040】また、中央制御装置24が、制御量を温度センサ23の検出データに基づいて補正するため、温度変化の影響を排除できる。
【0041】加えて、中央制御装置24が、歯厚としてオーバーボール径を算出するため、作業者にとって歯厚の精度管理が容易となる。
【0042】なお、以上の実施形態において、中央制御装置24は、温度センサ23で検出されたワークギヤWの温度に基づいて歯車加工機11の切り込みのオフセット量を直接補正する場合を例にとり説明したが、勿論、検出した歯厚を温度に基づいて補正するようにしてもよい。
【0043】また、以上の実施形態においては、歯車加工機11としてホブ盤を例にとり説明したが、ギヤシェーパやシェービング盤、さらには歯研盤等、他の種々の歯車加工機にも勿論適用可能である。
【0044】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の請求項1記載の歯車測定機によれば、演算部が、支持台部によりワークギヤを回転させながらレーザ測長機でワークギヤを検出させ、支持台部の回転データとレーザ測長機の検出データとからワークギヤの歯厚を演算するため、マスターギヤが不要となる。
【0045】したがって、諸元の異なる多種類のワークギヤの歯厚測定を行う場合であっても、コスト増を抑えることができる。
【0046】また、本発明の請求項2記載の歯車測定機によれば、演算部が、演算したワークギヤの歯厚を温度センサの検出データに基づいて補正するため、温度変化の影響を排除できる。
【0047】本発明の請求項3記載の歯車測定機によれば、演算部が、歯厚としてオーバーボール径を算出するため、作業者にとって歯厚の精度管理が容易となる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【住所又は居所】東京都港区南青山二丁目1番1号
【出願日】 平成14年2月22日(2002.2.22)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外5名)
【公開番号】 特開2003−247813(P2003−247813A)
【公開日】 平成15年9月5日(2003.9.5)
【出願番号】 特願2002−47033(P2002−47033)