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【発明の名称】 車両用灯具
【発明者】 【氏名】木ノ内 利行
【住所又は居所】静岡県清水市北脇500番地 株式会社小糸製作所静岡工場内

【要約】 【課題】所定の配光パターンで車両前方路面へ向けてビーム照射を行うように構成された車両用灯具において、車両走行状況に応じて異なる配光パターンでビーム照射を行えるようにする。

【解決手段】車両用灯具のベンディングランプユニット18を、その光源バルブ28のバルブシェード28cにより、前部フィラメント28aからリフレクタの反射面30aにおける下部反射領域30aLへ向かう光を遮蔽して上部反射領域30aUへの光入射のみを許容するように構成するとともに、光源バルブ28の上方近傍に設けられた上方光遮蔽シェード34により、後部フィラメント28bから上部反射領域30aUへ向かう光を遮蔽して下部反射領域30aLへの光入射のみを許容するように構成する。そして、前部フィラメント28aと後部フィラメント28bとの点灯切換えを行うことにより、リフレクタ30の反射面利用領域を変化させるようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 光源バルブと、この光源バルブからの光を前方へ反射させる反射面を有するリフレクタとを備えてなり、所定の配光パターンで車両前方路面へ向けてビーム照射を行うように構成された車両用灯具において、上記光源バルブが、バルブ中心軸に沿って略直列で配置された前部フィラメントおよび後部フィラメントと、上記前部フィラメントの下方近傍に設けられ、該前部フィラメントから上記反射面の下部反射領域へ向かう光を遮蔽して該反射面の上部反射領域への光入射のみを許容するバルブシェードとを備えてなり、上記光源バルブの上方近傍に、上記後部フィラメントから上記上部反射領域へ向かう光を遮蔽して上記下部反射領域への光入射のみを許容するシェードが設けられており、上記前部フィラメントの点灯時に上記上部反射領域からの反射光により車両前方路面に形成される第1配光パターンが、上記後部フィラメントの点灯時に上記下部反射領域からの反射光により車両前方路面に形成される第2配光パターンよりも、遠方側に形成されるように構成されている、ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】 上記バルブシェードが、上記前部フィラメントを180°未満の所定の中心角で囲むように構成されており、上記光源バルブが、該光源バルブのバルブ中心軸を上記リフレクタの光軸に対して所定角度上向きに偏軸させた状態で上記リフレクタに支持されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用前照灯。
【請求項3】 上記第1配光パターンの水平方向拡散角度が、上記第2配光パターンの水平方向拡散角度よりも小さい値に設定されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用前照灯。
【請求項4】 所定の設定車速以下のときには上記後部フィラメントが点灯する一方、上記設定車速を超えたときには上記前部フィラメントが点灯するように構成されている、ことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、所定の配光パターンで車両前方路面へ向けてビーム照射を行うように構成された車両用灯具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】車両前方路面へ向けてビーム照射を行うように構成された、ヘッドランプ以外の車両用灯具の1つとして、従来よりベンディングランプが知られている。このベンディングランプは、車両が旋回走行する際に点灯するように構成されており、これにより旋回方向前方路面の視認性を高めるようになっている。
【0003】図10は、車両が左方向へ旋回走行する際に、ベンディングランプからのビーム照射によって車両前方路面に形成される配光パターンPa´を透視的に示す図である。
【0004】同図(a)は、車両前方の交差点を低速で左折しようとしているときの様子を示しており、同図(b)は、ハイウェイの左曲線路を中高速で旋回走行しているときの様子を示している。なお、図中2点鎖線で示す配光パターンP(L)は、ヘッドランプからのビーム照射によって形成されるロービーム配光パターンである。
【0005】配光パターンPa´は、ロービーム配光パターンP(L)のホットゾーン(高光度領域)HZ(L)の近傍から左方向へ向けて斜め下方向に広がるように略楔状に形成されており、その上部右寄りの位置にホットゾーンHZa´を有している。そしてこれにより、低速旋回走行時から中高速旋回走行時まで、旋回方向前方路面の視認性を確保するようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来のベンディングランプは、単一の配光パターンPa´でビーム照射を行うように構成されているので、次のような問題がある。
【0007】すなわち、車両ドライバの注視点が近距離路面にある低速旋回走行時には、配光パターンPa´の遠方寄り領域A1の明るさが邪魔になって近距離路面の視認性を低下させてしまい、一方、車両ドライバの注視点が遠方路面にある中高速旋回走行時には、配光パターンPa´の手前寄り領域A2の明るさが邪魔になって遠方路面の視認性を低下させてしまう、という問題がある。
【0008】なお、このような問題は、ベンディングランプ以外の車両用灯具においても同様に生じ得る問題である。
【0009】本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、所定の配光パターンで車両前方路面へ向けてビーム照射を行うように構成された車両用灯具において、車両走行状況に応じて異なる配光パターンでビーム照射を行うことができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本願発明は、ダブルフィラメントを有する所定の光源バルブを用いるとともに所定のシェードを設けることにより、各フィラメント毎にリフレクタの反射面利用領域を使い分けて2種類の配光パターンを形成し得る構成とすることにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0011】すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、光源バルブと、この光源バルブからの光を前方へ反射させる反射面を有するリフレクタとを備えてなり、所定の配光パターンで車両前方路面へ向けてビーム照射を行うように構成された車両用灯具において、上記光源バルブが、バルブ中心軸に沿って略直列で配置された前部フィラメントおよび後部フィラメントと、上記前部フィラメントの下方近傍に設けられ、該前部フィラメントから上記反射面の下部反射領域へ向かう光を遮蔽して該反射面の上部反射領域への光入射のみを許容するバルブシェードとを備えてなり、上記光源バルブの上方近傍に、上記後部フィラメントから上記上部反射領域へ向かう光を遮蔽して上記下部反射領域への光入射のみを許容するシェードが設けられており、上記前部フィラメントの点灯時に上記上部反射領域からの反射光により車両前方路面に形成される第1配光パターンが、上記後部フィラメントの点灯時に上記下部反射領域からの反射光により車両前方路面に形成される第2配光パターンよりも、遠方側に形成されるように構成されている、ことを特徴とするものである。
【0012】上記「車両用灯具」は、光源バルブとこの光源バルブからの光を前方へ反射させるリフレクタとを備えたものであれば、その具体的構成は特に限定されるものではなく、リフレクタにより主たる配光制御を行うように構成されたものであってもよいし、リフレクタの前方にレンズを設けて該レンズにより主たる配光制御を行うように構成されたものであってもよい。
【0013】そして、この「車両用灯具」は、ヘッドランプが点灯しているときのみ点灯するように構成されたものであってもよいし、ヘッドランプとは独立して単独で点灯し得るように構成されたものであってもよく、また、例えば旋回走行時等のような所定の車両走行状況下においてのみ点灯するように構成されたものであってもよいし、常時点灯するように構成されたものであってもよい。
【0014】上記「光源バルブ」についても、前部フィラメント、後部フィラメントおよびバルブシェードを備えたものであれば、その具体的構成は特に限定されるものではく、例えば、いわゆるH4タイプのハロゲンバルブ等が採用可能である。
【0015】上記「上部反射領域」および「下部反射領域」の形状、大きさ等の具体的構成は、特に限定されるものではない。また、これら「上部反射領域」および「下部反射領域」の各々からの反射光により形成される配光パターンについても、その形状、大きさ、光度分布等の具体的構成は特に限定されるものではない。
【0016】
【発明の作用効果】上記構成に示すように、本願発明に係る車両用灯具は、その光源バルブが、バルブ中心軸に沿って略直列で配置された前部フィラメントおよび後部フィラメントと、前部フィラメントの下方近傍に設けられ、該前部フィラメントから反射面の下部反射領域へ向かう光を遮蔽して該反射面の上部反射領域への光入射のみを許容するバルブシェードとを備えた構成となっており、この光源バルブの上方近傍には、後部フィラメントから上部反射領域へ向かう光を遮蔽して下部反射領域への光入射のみを許容するシェードが設けられているので、前部フィラメントと後部フィラメントとの点灯切換えを行うことにより、リフレクタの反射面利用領域を変化させることができる。すなわち、前部フィラメントの点灯時には上部反射領域を利用してビーム照射を行うことができ、後部フィラメントの点灯時には下部反射領域を利用してビーム照射を行うことができる。
【0017】しかも、前部フィラメントの点灯時に上部反射領域からの反射光により車両前方路面に形成される第1配光パターンが、後部フィラメントの点灯時に下部反射領域からの反射光により車両前方路面に形成される第2配光パターンよりも、遠方側に形成されるように構成されているので、次のような作用効果を得ることができる。すなわち、第1配光パターンは、前部フィラメントに近接配置されたバルブシェードにより明瞭なカットオフラインを有するものとなり、該カットオフラインに沿って高光度領域を形成することが可能となるので、この第1配光パターンを第2配光パターンよりも遠方側に形成されるようにすることにより、車両前方路面の遠方視認性を高めることができる。
【0018】このように本願発明によれば、所定の配光パターンで車両前方路面へ向けてビーム照射を行うように構成された車両用灯具において、車両走行状況に応じて異なる配光パターンでビーム照射を行うことができ、これにより車両前方路面の視認性を十分に高めることができる。しかもこれを、単一の光源バルブにおける点灯切換えという極めて簡単な構成により実現することができる。
【0019】上記構成において、光源バルブを、そのバルブ中心軸がリフレクタの光軸に対して所定角度上向きに偏軸した状態でリフレクタに支持された構成とすれば、前部フィラメントの利用光束を増大させることができる。また、光源バルブとして、例えばH4タイプのハロゲンバルブのように、バルブシェードが前部フィラメントを180°未満の中心角で囲むように構成された光源バルブを採用した場合においても、上記上向き偏軸により、上端縁に水平カットオフラインを有する第1配光パターンを形成することが容易に可能となり、かつ、この水平カットオフラインの下方近傍にさらに明るい高光度領域を形成することができる。
【0020】また上記構成において、第1配光パターンの水平方向拡散角度を第2配光パターンの水平方向拡散角度よりも小さい値に設定すれば、遠方路面を十分な明るさで照射することができるとともに、近距離路面の近距離領域を適度な明るさで幅広く照射することができる。
【0021】さらに上記構成において、所定の設定車速以下のときには後部フィラメントを点灯させる一方、上記設定車速を超えたときには前部フィラメントを点灯させるようにすれば、車両ドライバが近距離路面を注視する低速走行時には、遠方路面はほとんど照射せずに近距離路面を幅広く略均一に照射することができる一方、車両ドライバが遠方路面を注視する中高速走行時には、近距離路面はほとんど照射せずに遠方路面を明るく照射することができる。そしてこれにより、低速走行時から中高速走行時まで車両ドライバの注視点に対応した配光パターンで車両前方路面を照射してその視認性をより一層高めることができる。
【0022】本願発明に係る車両用灯具は、特定種類の灯具に限定されるものではないが、車両が旋回走行する際に旋回方向前方を照射するベンディングランプとして構成されている場合には、旋回方向前方路面の視認性を十分に確保することができるので、旋回走行時の走行安全性を高めることができる。ここでいう「旋回走行する際」に、実際に旋回走行している状態が該当することはもちろんであるが、現時点ではまだ旋回走行してはいないが、近い将来旋回走行することが明らかな状態(例えば方向指示器が作動している状態)も「旋回走行する際」に含めるようにしてもよい。
【0023】この場合において、第2配光パターンを第1配光パターンよりも車幅方向外方側に形成するように構成すれば、車両ドライバの注視点が近距離路面にある低速旋回走行時には、旋回方向前方路面における近距離路面の視認性を十分に確保することができる一方、車両ドライバの注視点が遠方路面にある中高速旋回走行時には、旋回方向前方路面における遠方路面の視認性を十分に確保することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0025】図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具10を、その制御システムと共に示す正面図である。
【0026】図示のように、この車両用灯具10は、車両前端部の左側コーナ部に設けられる灯具であって、通常のヘッドランプとしての機能と、車両が旋回走行する際に旋回方向前方を照射するベンディングランプとしての機能とを有している。
【0027】すなわち、この車両用灯具10は、素通し状の透光カバー12とランプボディ14とで形成される灯室内に、ヘッドランプユニット16とベンディングランプユニット18とが収容されてなり、ベンディングランプユニット18については、コントロールユニット50により車両走行状況に応じたビーム照射制御が行われるようになっている(これについては後述する)。
【0028】ヘッドランプユニット16は、光源バルブ(H4タイプのハロゲンバルブ)22と、リフレクタ24と、直射光遮蔽シェード26とを備えてなり、図示しないエイミング機構を介してランプボディ14に上下方向および左右方向に傾動可能に支持されている。そして、このヘッドランプユニット16は、正規のエイミング調整が行われた状態では、その光軸Ax1が車両前後方向に対して僅かに(0.5〜0.6°程度)下向きとなるように構成されている。
【0029】リフレクタ24は、光軸Ax1を中心軸とする回転放物面上に複数の反射素子24sが形成されてなる反射面24aを有しており、該反射面24aにより光源バルブ22の光源(ロービーム用フィラメントまたはハイビーム用フィラメント)からの光を前方へ拡散偏向反射させて、所定の配光パターン(ヘッドランプ配光パターン)で車両前方へビーム照射を行うようになっている。そして、上記ロービーム用フィラメントが点灯した状態では、図6に示すようなロービーム配光パターンP(L)を形成するようになっている。
【0030】一方、ベンディングランプユニット18は、ヘッドランプユニット16の車幅方向外側に隣接配置されており、ヘッドランプユニット16が点灯している状態において、車両が左方向へ旋回走行する際に点灯するようになっている。
【0031】このベンディングランプユニット18は、光源バルブ28と、リフレクタ30と、直射光遮蔽シェード32と、上方光遮蔽シェード34(シェード)とを備えてなり、その光軸Ax2が車両前後方向に対して僅かに(0.5〜0.6°程度)下向きでかつ所定角度(30°程度)車幅方向外側(左方向)を向くようにしてランプボディ14に支持されている。
【0032】図2は、ベンディングランプユニット18を単品で示す側断面図であり、図3および4は、図2のIII-III 線およびIV-IV 線断面図である。
【0033】これらの図にも示すように、光源バルブ28は、H4タイプのハロゲンバルブであって、該光源バルブ28のバルブ中心軸Axbに沿って略直列で配置された前部フィラメント28aおよび後部フィラメント28bと、前部フィラメント28aの下方近傍に設けられたバルブシェード28cとが、円筒ガラス管28d内に収容されてなり、リフレクタ30の後頂部のバルブ挿着部30bに挿着された状態で該リフレクタ30に固定支持されている。
【0034】前部フィラメント28aは、バルブ中心軸Axbと同軸で配置されており、後部フィラメント28bは、前部フィラメント28aの後方近傍においてバルブ中心軸Axbよりも僅かに下方に配置されている。また、バルブシェード28cは、前部フィラメント28aをバルブ中心軸Axb回りに中心角165°で囲むように形成されており、これにより前部フィラメント28aから下方へ向かう光を遮蔽するようになっている。
【0035】リフレクタ30に対する光源バルブ28の固定支持は、図3に示すように、バルブシェード28cの両上端縁28c1を同じ高さ(すなわちバルブ中心軸Axbから左右斜め下向き7.5°となる角度位置)に位置させるようにして行われるとともに、図2に示すように、光軸Ax2に対してバルブ中心軸Axbを僅かに(1.5°程度)上向きに偏軸させた状態で行われている。この偏軸は、リフレクタ30のバルブ挿着部30bを傾斜させて形成することにより行われている。
【0036】リフレクタ30は、光軸Ax2を中心軸とするとともに該光軸Ax2における後部フィラメント28bの前端位置近傍に焦点Fを有する回転放物面上に、複数の反射素子30sが形成されてなる反射面30aを有しており、該反射面30aにより前部フィラメント28aまたは後部フィラメント28bからの光を前方へ拡散偏向反射させるようになっている。反射面30aは、光軸Ax2から左右斜め下向きにハ字形に延びる1対の境界線BLを境にして、上部反射領域30aUと下部反射領域30aLとに区分けされている。
【0037】境界線BLは、前部フィラメント28aの点灯時にバルブシェード28cの両上端縁28c1により反射面30aに形成される明暗境界線BL1よりも僅かに下方に位置するようにして形成されている。そしてこれにより、前部フィラメント28aから下部反射領域30aLへ向かう光をバルブシェード28cにより遮蔽して、上部反射領域30aUへの光入射のみを許容するようになっている。
【0038】直射光遮蔽シェード32は、光源バルブ28の前方近傍に設けられており、前部フィラメント28aおよび後部フィラメント28bから灯具前方へ向かう直射光を遮蔽するようになっている。この直射光遮蔽シェード32は、その下端部から後方へ延びるステー32aを介してリフレクタ30にネジ締め固定されている。
【0039】一方、上方光遮蔽シェード34は、光源バルブ28の上方近傍に設けられている。この上方光遮蔽シェード34は、バルブ中心軸Axbを中心にして光源バルブ28の略上半分を円錐面状に囲むように形成されており、その後端外周フランジ部34aにおいてリフレクタ30に圧入固定されている。上方光遮蔽シェード34の円弧状先端面34bは、後部フィラメント28bの前端上方において円筒ガラス管28dに近接する位置まで延びている。また、上方光遮蔽シェード34の左右両側の下端面34cは、後部フィラメント28bの中心軸線から左右斜め下向きにハ字形に延びるように形成されている。
【0040】そしてこれにより、上方光遮蔽シェード34は、図4に示すように、後部フィラメント28bから上部反射領域30aUへ向かう光を遮蔽して下部反射領域へ30aLの光入射のみを許容するようになっている。このとき上方光遮蔽シェード34により反射面30aに形成される明暗境界線BL2が、境界線BLよりも僅かに下方に位置するよう、左右両端面34cの位置設定がなされている。なお、この上方光遮蔽シェード34は、前部フィラメント28aから上部反射領域30aUへ向かう光に関しては、その内周縁部へ向かう光以外は該上方光遮蔽シェード34によって遮蔽してしまうことなく上部反射領域30aUに入射させるようになっている。
【0041】図5は、前部フィラメント28aまたは後部フィラメント28bを点灯させたときに、反射面30aにおいて各フィラメント28a、28bからの光が入射する領域を示す、ベンディングランプユニット18の正面図である。
【0042】同図において、斜線領域Aaが前部フィラメント28aの点灯時における光入射領域であり、斜線領域Abが後部フィラメント28bの点灯時における光入射領域である。斜線領域Aaは、上部反射領域30aUの略全領域(すなわち境界線BLの近傍領域および上方光遮蔽シェード34の陰になる領域を除く領域)となっており、斜線領域Abは、下部反射領域30aLの略全領域(すなわち境界線BLの近傍領域およびシェード32のステー32aの陰になる領域を除く領域)となっている。
【0043】図6は、ベンディングランプユニット18からのビーム照射により、灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを、ヘッドランプユニット16からのビーム照射によって形成されるロービーム配光パターンP(L)と共に示す図である。
【0044】同図(a)は、後部フィラメントの点灯時に下部反射領域30aLからの反射光により形成される第2配光パターンPa2を示しており、同図(b)は、前部フィラメント28aの点灯時に上部反射領域30aUからの反射光により形成される第1配光パターンPa1を示している。
【0045】ロービーム配光パターンP(L)は、その上端部に水平カットオフラインCL1および斜めカットオフラインCL2を有しており、両カットオフラインの交点であるエルボ点Eは、H−V(灯具前方真正面方向)のやや下方(0.5〜0.6°程度下方)に位置している。そして、このロービーム配光パターンP(L)には、エルボ点Eをやや左寄りに囲むようにしてホットゾーンHZが形成されている。
【0046】第1配光パターンPa1は、比較的高光度の配光パターンであって、H−H線(H−Vを通る水平線)の下方近傍においてロービーム配光パターンP(L)のホットゾーンHZの位置から左方向へ向けてやや偏平に延びるように形成されている。この第1配光パターンPa1の上端縁は、ロービーム配光パターンP(L)の水平カットオフラインCL1と略同じ高さ位置で水平方向に延びる水平カットオフラインCLaとして形成されている。また、この第1配光パターンPa1には、水平カットオフラインCLaに沿って水平方向に細長く延びるホットゾーンHZaが形成されている。
【0047】一方、第2配光パターンPa2は、第1配光パターンPa1に比して大きい水平方向拡散角度で広がる光度略均一の配光パターンであって、第1配光パターンPa1に対して左側(車幅方向外方側)のやや下方位置において、その右端部がロービーム配光パターンP(L)の左端部と重なるようにして形成されている。
【0048】図7は、第1配光パターンPa1を、その成立過程と共に示す図である。
【0049】同図(a)において実線で示す配光パターンPaoは、仮に、リフレクタ30の反射面30aに複数の反射素子30sが形成されておらず、該反射面30aが光軸Ax2を中心軸とする回転放物面であるとした場合に形成される配光パターンである。なお、同図(a)において2点鎖線で示す配光パターンPao´は、光源バルブ28が偏軸配置されていないとした場合に形成される配光パターンである。
【0050】同図(a)から明らかなように、配光パターンPao´では、扇形の配光パターンにおける左右上端縁Ca1´、Ca2´が水平方向に対して所定角度(7.5°)上向きで左右両側へ延びているが、配光パターンPoでは、光源バルブ28の偏軸により配光パターンPao´がやや偏平に変形するため、その左右上端縁Ca1、Ca2は左右両側へ向けて略水平方向に延びている。また、このように変形させることにより、配光パターンPao´のホットゾーンHZao´に比して、配光パターンPaoのホットゾーンHZaoを左右上端縁Ca1、Ca2寄りにやや偏平に形成するようになっている。
【0051】この配光パターンPaoは、同図(b)では2点鎖線で示しているが、この配光パターンPaoを複数の反射素子30sの拡散偏向反射作用で変形させることにより、同図(b)に実線で示すような第1配光パターンPa1を形成するようになっている。この第1配光パターンPa1の水平カットオフラインCLaは、配光パターンPaoの左右上端縁Ca1、Ca2を水平方向に拡散偏向させることにより形成され、また、第1配光パターンPa1のホットゾーンHZaは、配光パターンPaoのホットゾーンHZaoを水平カットオフラインCLaに沿って水平方向に拡散偏向させることにより形成されるようになっている。
【0052】なお、同図においては、H−Vを基準にして第1配光パターンPa1およびその成立過程の配光パターンPao´、Paoを示しているが、上述したようにベンディングランプユニット18の光軸Ax2は車両前後方向に対して所定角度(30°程度)車幅方向外側(左方向)を向いているので、第1配光パターンPa1は、実際には図6に示すように、H−Vに対して上記所定角度分だけ左方向に変位した位置に形成されるようになっている。
【0053】上述したように、ベンディングランプユニット18のビーム照射制御は、コントロールユニット50により車両走行状況に応じて行われるようになっているが、このビーム照射制御は、光源バルブ28の点消灯制御および該光源バルブ28の前部フィラメント28aと後部フィラメント28bとの点灯切換え制御によって行われるようになっている。
【0054】これを実現するため、コントロールユニット50には、図1に示すように、ヘッドランプユニット16の点消灯を行うヘッドランプスイッチ52と、ウインカ操作(方向指示器の作動)を行う方向指示器スイッチ54と、車両の舵角を検出する舵角センサ56と、車速を検出する車速センサ58とが接続されており、これら各スイッチおよびセンサからの信号が入力されるようになっている。
【0055】このコントロールユニット50は、ヘッドランプユニット16が点灯している状態において、車両を左方向へ旋回させるステアリング操作が行われたとき、あるいは左折方向のウインカ操作が行われたときに、光源バルブ28を点灯させ、それ以外のときには光源バルブ28を消灯させるようになっている。そして、光源バルブ28を点灯させる際には、車速が所定の設定車速(例えば40km/h)以下の低速のときには後部フィラメント28bを点灯させる一方、車速が上記設定車速を超えて中高速になったときには前部フィラメント28aを点灯させるようになっている。
【0056】図8は、ベンディングランプユニット18からのビーム照射により灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを、車両前方の走行路と共に示す図である。
【0057】同図(a)は、車両前方の交差点を低速で左折しようとしている状況下において照射される第2配光パターンPa2を示している。
【0058】車両が左折する際には予め方向指示器が作動するので、ベンディングランプユニット18の光源バルブ28が点灯する。その際、車両は左折するために低速で走行するのが一般的であるので、後部フィラメント28bが点灯する。そして車両前方路面には、下部反射領域30aLからの反射光により第2配光パターンPa2が形成される。
【0059】この第2配光パターンPa2は、ロービーム配光パターンP(L)の左端部から左方向へ大きく広がる光度略均一の配光パターンであるので、これにより車両ドライバが注視する左折進入路を含む近距離路面が幅広く略均一に照射される。
【0060】一方、同図(b)は、車両が中高速でハイウェイを左方向へ旋回走行している状況下において照射される第1配光パターンPa1を示している。
【0061】車両が左曲線路を旋回走行しているときにはステアリング操作が行われているので、ベンディングランプユニット18の光源バルブ28が点灯する。その際、車両はハイウェイにおいては中高速で走行するのが一般的であるので、前部フィラメント28aが点灯する。そして車両前方路面には、上部反射領域30aUからの反射光により第1配光パターンPa1が形成される。
【0062】この第1配光パターンPa1は、ロービーム配光パターンP(L)のホットゾーンHZの位置から左方向へ向けてやや偏平に延びる比較的高光度の配光パターンであって、その上端縁はロービーム配光パターンP(L)の水平カットオフラインCL1と略同じ高さ位置で水平方向に延びる水平カットオフラインCLaとして形成されており、この水平カットオフラインCLaに沿ってホットゾーンHZaが水平方向に細長く延びているので、これにより車両ドライバが注視する遠方路面の旋回方向前方部分が明るく照射される。
【0063】なお、前部フィラメント28aと後部フィラメント28bとの点灯切換え制御により、低速旋回走行時には、第2配光パターンPa2のみによるビーム照射が行われ、第1配光パターンPa1は形成されないので、第1配光パターンPa1の明るさが邪魔になって近距離路面が見えにくくなってしまうことはなく、一方、中高速旋回走行時には、第1配光パターンPa1のみによるビーム照射が行われ、第2配光パターンPa2は形成されないので、第2配光パターンPa2の明るさが邪魔になって遠方路面が見えにくくなってしまうことはない。
【0064】以上詳述したように、本実施形態に係る車両用灯具10は、ヘッドランプおよびベンディングランプの機能を有しているが、ベンディングランプとして機能するベンディングランプユニット18は、光源バルブ28のバルブシェード28cにより、前部フィラメント28aからリフレクタ30の反射面30aにおける下部反射領域30aLへ向かう光を遮蔽してその上部反射領域30aUへの光入射のみを許容するように構成されるとともに、光源バルブ28の上方近傍に設けられた上方光遮蔽シェード34により、後部フィラメント28bから上部反射領域30aUへ向かう光を遮蔽して下部反射領域30aLへの光入射のみを許容するように構成されているので、前部フィラメント28aと後部フィラメント28bとの点灯切換えを行うことにより、リフレクタ30の反射面利用領域を変化させることができ、これにより車両走行状況に応じた配光パターンでビーム照射を行うことができる。
【0065】具体的には、前部フィラメント28aの点灯時には、上部反射領域30aUからの反射光により、比較的小さく高光度の第1配光パターンPa1で車両前方路面の遠方領域(遠方路面の旋回方向前方部分)にビーム照射を行うことができ、一方、後部フィラメント28bの点灯時には、下部反射領域30aLからの反射光により、比較的大きく光度略均一の第2配光パターンPa2で車両前方路面の近距離領域(左折進入路を含む近距離路面)にビーム照射を行うことができる。
【0066】その際、光源バルブ28は、そのバルブ中心軸Axbがリフレクタ30の光軸Ax2に対して所定角度上向きに偏軸した状態でリフレクタ30に支持された構成となっているので、前部フィラメント28aの利用光束を増大させることができる。また、この上向き偏軸により、上部反射領域30aUからの反射光により形成される第1配光パターンPa1を、上端縁が明瞭な水平カットオフラインCLaで形成されるとともに該水平カットオフラインCLaに沿って高光度領域HZaが形成された配光パターンとすることができ、これにより車両前方路面の遠方視認性を高めることができる。
【0067】このように本実施形態によれば、車両走行状況に応じた配光パターンでビーム照射を行うことが容易に可能となり、これにより車両前方路面の視認性を十分に高めることができる。しかもこれを、単一の光源バルブ28における前部フィラメント28aと後部フィラメント28bとの点灯切換え制御を行うだけの極めて簡単な構成により実現することができる。
【0068】しかも本実施形態においては、低速走行時に後部フィラメント28bを点灯させ、中高速走行時に前部フィラメント28aを点灯させるようになっているので、車両ドライバが近距離路面を注視する低速走行時には、第2配光パターンPa2により遠方路面はほとんど照射せずに近距離路面を幅広く略均一に照射することができる一方、車両ドライバが遠方路面を注視する中高速走行時には、第1配光パターンPa1により、近距離路面はほとんど照射せずに遠方路面を明るく照射することができる。そしてこれにより、低速走行時から中高速走行時まで車両ドライバの注視点に対応した配光パターンで車両前方路面を照射してその視認性をより一層高めることができる。
【0069】なお本実施形態において、ベンディングランプユニット18は、ヘッドランプユニット16がロービーム照射状態のときにのみ点灯する構成としてもよいが、ヘッドランプユニット16がハイビーム照射状態のときにも点灯する構成としてもよい。あるいは、ベンディングランプユニット18をヘッドランプユニット16とは独立して単独で点灯する構成としてもよい。
【0070】また本実施形態においては、ベンディングランプユニット18が、透光カバー12とランプボディ14とで形成される灯室内にヘッドランプユニット16と共に収容された構成となっているが、ベンディングランプユニット18が単独で車両用灯具を構成している場合においても、本実施形態と同様の灯具構成を採用することにより本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0071】さらに本実施形態においては、ベンディングランプユニット18のリフレクタ30によりベンディングランプとしての配光制御機能を果たすように構成されているが、透光カバー12にレンズ素子を形成することによりベンディングランプとしての配光制御機能を果たすように構成してもよい。
【0072】なお本実施形態においては、ベンディングランプユニット18が、車両前端部の左側コーナ部に設けられた車両用灯具10の一部として、左方向へ旋回走行する際に旋回方向前方路面を照射する構成となっているが、ベンディングランプユニット18が、車両前端部の右側コーナ部に設けられた車両用灯具10の一部として、右方向へ旋回走行する際に旋回方向前方路面を照射する構成となっている場合においても、本実施形態と同様の灯具構成を採用することにより本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0073】ところで、本実施形態においては、車両が旋回走行する際に点灯するベンディングランプユニット18において、図6(b)に示すような第1配光パターンPa1または同図(a)に示すような第2配光パターンPa2でビーム照射を行うための灯具構成について説明したが、反射面30aの上部反射領域30aUからの反射光により図9(b)に示すような第1配光パターンPa3を形成するとともに、反射面30aの下部反射領域30aLからの反射光により同図(a)に示すような第2配光パターンPa4でビーム照射を形成するように、光軸Ax2の向きおよび反射面30aの反射面形状を設定すれば、本実施形態と同様の灯具構成により、車両が直進走行する際にも第1配光パターンPa3または第2配光パターンPa4でビーム照射を行うようにすることが可能である。
【0074】すなわち、低速直進走行時には、同図(a)に示すように、遠方路面はほとんど照射せずに近距離路面を大きい第2配光パターンPa4で幅広く略均一に照射する一方、中高速直進走行時には、同図(b)に示すように、近距離路面はほとんど照射せずに遠方路面を小さい第1配光パターンPa3で明るく照射する構成とすることが可能である。そして、このような灯具構成を採用することにより、ロービーム配光パターンP(L)(あるいはハイビーム配光パターン)の明るさを、車速に応じて効果的に補強することができる。
【出願人】 【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
【住所又は居所】東京都港区高輪4丁目8番3号
【出願日】 平成14年3月15日(2002.3.15)
【代理人】 【識別番号】100099999
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 隆
【公開番号】 特開2003−272414(P2003−272414A)
【公開日】 平成15年9月26日(2003.9.26)
【出願番号】 特願2002−71345(P2002−71345)