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【発明の名称】 防曇コート膜付き車両用レンズの製造方法
【発明者】 【氏名】後藤 卓
【住所又は居所】東京都目黒区中目黒2丁目9番13号 スタンレー電気株式会社内

【氏名】梅山 辰也
【住所又は居所】東京都目黒区中目黒2丁目9番13号 スタンレー電気株式会社内

【氏名】間野 英二
【住所又は居所】東京都目黒区中目黒2丁目9番13号 スタンレー電気株式会社内

【氏名】伏見 公宏
【住所又は居所】東京都目黒区中目黒2丁目9番13号 スタンレー電気株式会社内

【要約】 【課題】防曇コート膜塗料が塗装面に塗付される時にマスキング治具にも塗付され、その塗料が治具表面に垂れても、レンズの防曇コート膜形成面に付着し悪影響を与えない防曇コート膜付き車両用レンズの製造方法を提供する。

【解決手段】車両用レンズ18に防曇コート膜を形成する場合レンズの膜形成面を下にして塗装用治具24にセットして、塗料の吹き出し方向をレンズの下から上方向にする。また、塗装用治具を上側に開口部を持つ箱体とし、その開口部にレンズが覆われるようにセットし、箱体の内部の小空間を低湿度に空調管理するようにする。また、塗装用治具をレンズを受ける機能と防曇コート膜27をレンズの必要なエリアに形成するためのマスキング機能を合わせ持つようにする。また、塗装用治具にレンズがセットされた時にレンズの外側にハードコート膜29を形成するための塗装を実施可能とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両用レンズに防曇コート膜を形成する方法であって、前記レンズが前記膜形成面を下にして塗装用治具にセットされ、前記膜形成用塗料の吹き出し方向を前記レンズの下から上方向にしたことを特徴とする車両用レンズの防曇コート膜の形成方法。
【請求項2】 塗装用治具は上側に開口部を持つ箱体とし、その開口部に前記レンズが覆われるようにセットされ、前記箱体の内部を低湿度に空調管理するようにしたことを特徴とする1項記載の車両用レンズの防曇コート膜の形成方法。
【請求項3】 塗装用治具がレンズを受ける機能と防曇コート膜をレンズの必要なエリアに形成するためのマスキング機能を合わせ持つようにしたことを特徴とする1ないし2項記載の車両用レンズの防曇コート膜の形成方法。
【請求項4】 塗装用治具にレンズがセットされ、そのレンズの外側にハードコート膜を形成するための塗装を実施可能としたことを特徴とする1ないし3項記載の車両用レンズの防曇コート膜の形成方法。
【請求項5】 塗装用治具にレンズがセットされ、そのレンズの内側に防曇コート膜塗料が塗付され、外側にハードコート膜塗料が塗付された後、レンズが乾燥工程に搬送され、両方の膜が同時に乾燥されるようにしたことを特徴とする1ないし4項記載の車両用レンズの防曇コート膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は車両用レンズの製造方法に関し、詳しくは車両用レンズに被覆される防曇コート膜の形成方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】従来から車両用灯具に使われているレンズには灯具が曇らないようにレンズの灯室側に防曇コート膜が被覆されている。その膜の形成方法はレンズの灯室側、即ちランプが配置される側に防曇コート膜塗料が塗付され、乾燥されて防曇コート膜が形成される。
【0003】図2は防曇コート膜が形成される工程を説明するための斜視図で、10は塗装室(点線で囲まれている室)、11は塗装用ロボット、12はそのロボットの先端に設けられている塗装ガン、このガンから塗料が霧状に吹き出す。13は搬送機構で、この搬送機構により14で示すようにレンズが塗装治具にセットされて搬送されてくる。
【0004】塗装用ロボットは搬送されてきたレンズに防曇コート膜塗料を吹き付ける。15は塗装で発生する霧状の不要な塗料(ミストと呼ばれる)を集めるブースである。そのため、ブースは塗装室の空気を常時吸引して塗装室内をクリーンに保っている。16は制御装置でロボットの制御及び塗装室の空調が管理される。尚、塗装室の空間は通常14m程度である。
【0005】図3は防曇コート膜塗料がレンズに吹き付けられる塗装工程を示し、レンズがレンズ受け治具にセットされ、そのレンズにマスキング治具がセットされた時の断面図を示している。17はレンズ受け治具でこの治具に防曇コート膜が形成されるレンズがセットされる。18は前記レンズ、19はマスキング治具で、防曇コート膜が形成されるエリアを限定するための治具である。
【0006】20は塗料の垂れで防曇コート膜塗料がレンズに塗付される際にマスキング治具にも塗付され、その塗料が治具表面を垂れて、レンズの防曇コート膜形成面に付着する。この塗料の垂れは塗料がマスキング治具に何度も吹き付けられた場合に発生するもので、通常は治具表面から塗料が垂れる前に治具を清掃するとか或いは治具を交換するなどして対応している。このような対応が行われない時に垂れが発生する。21は塗装ガン、22は防曇コート膜塗料で霧状に吹き出される。そして、23は防曇コート膜が形成される面である。
【0007】防曇コート膜はレンズに塗料が吹き付けられ乾燥されて完成するが、レンズに塗料が吹き付けられる際に低湿度の環境で吹き付けられる必要がある。この点について説明する。
【0008】防曇コート膜が形成される塗装室内の湿度は必ず低湿度に管理されている。それは防曇コート膜塗料でレンズを塗装した場合、塗料中の溶剤が蒸発し、その時に発生する気化熱により熱が奪われ、塗装膜表面の温度が低下する。この状態で塗装室内の湿度が所定値以上になっていると、塗装膜中に空気中の水分が混入し、溶解しているポリマーを凝集させ、そのポリマーの凝集により塗装面の外観が白化状態となるからである。
【0009】図4はこの湿度管理について説明するための図で、横軸が温度。縦軸が相対湿度を示している。15〜35℃の範囲において、湿度は斜線で示した範囲に管理されるのが望ましいとされる。尚、この斜線部で27〜35℃の範囲は曲線より下側になっている。この曲線は絶対湿度で1mあたり18gの水が含まれる曲線である。
【0010】尚、車両用レンズには内側に前記説明した防曇コート膜が形成され、レンズの外側にはレンズ表面に傷が付かないようにハードコート膜が形成される。このハードコート膜が形成される製造工程は次のように行われる。樹脂成形されたレンズにアニーリング工程でひずみが除去され、洗浄工程で洗浄された後、レンズ表面にハードコート膜を形成するためにレンズ受け治具にレンズがセットされ、図2で示した塗装室に搬送され、そのレンズに対して塗装ガンにより、レンズ表面にハードコート膜塗料が塗付され、予備乾燥で溶剤を蒸発させた後、UV硬化処理が施されレンズ表面にハードコート膜が完成する。
【0011】尚、ハードコート膜にはUV硬化処理することで膜が完成するタイプの他に、加熱することで膜が完成するタイプがあり、この場合はUV処理の代わりに加熱処理が行われる。
【0012】また、レンズに防曇コート膜およびハードコート膜を形成する場合にどちらの工程を先にしても問題ないが、一般にはハードコート膜が形成された後に防曇コート膜が形成される。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】以上説明したような従来の膜形成方法では次のような課題が生じる。第一に防曇コート膜塗料が塗装面に塗付される時にマスキング治具にも塗付され、その塗料が治具表面に垂れて、レンズの防曇コート膜形成面に付着し悪影響を与える。
【0014】第二にレンズに塗料を低湿度の環境で塗付する必要があるため、塗装室内は空調設備、除湿装置などにより低湿度に管理される。そのため塗装室という大空間を空調する設備が必要になり、設備費用が高価となる。
【0015】第三に防曇コート膜およびハードコート膜を形成する場合に各々の工程が必要であり、そのため専用の塗装室、及び、治具、乾燥炉、空調設備、制御装置等の関連した設備が必要になる。また、両工程にレンズを搬送するための搬送機構およびレンズの表面(外側)にハードコート膜を形成し、裏面(内側)に防曇コート膜を形成するためにレンズの表裏を反転させる設備も必要である。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明は前記した従来の課題を解決するために次のように構成したものである。
【0017】(1)車両用レンズに防曇コート膜を形成する方法であって、前記レンズが前記膜形成面を下にして塗装用治具にセットされ、前記膜形成用塗料の吹き出し方向を前記レンズの下から上方向にした。
【0018】(2)(1)記載の車両用レンズに防曇コート膜を形成する方法において、塗装用治具は上側に開口部を持つ箱体とし、その開口部に前記レンズが覆われるようにセットされ、前記箱体の内部を低湿度に空調管理するようにした。
【0019】(3)(1)ないし(2)記載の車両用レンズの防曇コート膜の形成方法において、塗装用治具がレンズを受ける機能と防曇コート膜をレンズの必要なエリアに形成するためのマスキング機能を合わせ持つようにした。
【0020】(4)(1)ないし(3)記載の車両用レンズの防曇コート膜の形成方法において、塗装用治具にレンズがセットされ、そのレンズの外側にハードコート膜を形成するための塗装を実施可能とした。
【0021】(5)(1)ないし(4)記載の車両用レンズの防曇コート膜の形成方法において、塗装用治具にレンズがセットされ、そのレンズの内側に防曇コート膜塗料が塗付され、外側にハードコート膜塗料が塗付された後、レンズが乾燥工程に搬送され、両方の膜が同時に乾燥されるようにした。
【0022】
【発明の実施の形態】図1は本発明の車両用レンズに被覆する膜の形成方法を説明するための図で、レンズに防曇コート膜塗料を塗付するためにレンズを塗装用治具にセットした時の断面図である。
【0023】24は本発明の治具でレンズ受け治具およびマスキング治具を兼用した治具で箱型形状をしている。この箱型形状治具は上部に開口部が設けられ、18で示すレンズがこの開口部全面を覆うように配置されている。そして、このレンズの上面がレンズの外側で、レンズの下面がレンズの内側で、この内側に27で示す防曇コート膜が形成される。
【0024】レンズの下側空間には防曇コート膜を形成するために26で示す塗装機の塗装ガンが設けられ、レンズの上側空間にはハードコート膜29を形成するためのハードコート膜用塗装機の塗装ガン28が設けられている。そして、箱型形状治具には25で示すマスキング部が設けられていて、治具の側面には吸気口30及び排気口31が設けられている。尚、空気中には糸屑などのゴミがあり、このゴミが治具内部に入らないように吸気口、排気口にはフィルターが配置されている。
【0025】このように構成した本発明の膜形成方法について順に説明する。最初にマスキング部の塗料の垂れについて説明する。防曇コート膜を形成するための塗料がレンズの内側に塗装ガンにより上方向に吹き付けられる。その際マスキング部にも塗料が吹き付けられ、塗料の垂れが生じた場合でも、治具の表面を伝わって上から下方向に垂れるので塗装面に付着することがないので、従来のように悪影響を与えることがなく、安定した品質を維持できることに加えて、治具洗浄の頻度を減らすことが可能である。
【0026】次に空調について説明する。防曇コート膜塗料をレンズに吹き付ける時、前記したように、レンズ周辺の湿度を低湿度にする必要があるため、本発明の方法でも治具内部の湿度を低湿度に保つようにしている。そのため低湿度の空気を吸気口30から治具内部に導き、排気口31から排気している。このようにして箱型形状治具の内部の湿度が低湿度に管理されている。
【0027】従来は塗装室全体を空調管理していたが、本発明の方法では箱型形状の治具内部を空調管理すればよいことになり、即ち、レンズの投影面積ほどの面積に直動式塗装ガンが動作できる範囲の高さとする空間であればよいことになる。そして、箱型形状の治具の上側、即ち、開口部にレンズがセットされ、覆われるので治具の内側空間がよりクローズした空間となる。
【0028】このようにクローズした最小限の空間を空調すればよいので、空調設備が小型で充分であり設備が安価となる。また、空調のランニング費用も大幅に削減できる。前記小空間は0.1m程度であり、空調の流量としては従来は250m/分であったが、本発明の方法では10m/分と大幅に低減できる。
【0029】次に防曇コート膜およびハードコート膜の両方の膜を形成する場合について説明する。ハードコート用塗装ガンと防曇コート用塗装ガンをレンズの両側(内側および外側)に配置するようにしたので、両膜の塗装を同時に行うことができる。また、両工程で使用する治具を一つにすることができるため、治具コストの削減は勿論のこと、レンズの搬送および反転作業も不要となる。
【0030】また、膜を形成するには乾燥工程が必要であるが、この乾燥工程について説明する。ハードコート膜は塗装された後、65〜80℃の温度で10分程度予備乾燥され、UV硬化処理されて膜が完成する。防曇コート膜は塗装された後、60℃で5分程度乾燥されて膜が完成する。乾燥条件を比較すると防曇コート膜の乾燥条件がハードコート膜の乾燥条件に含まれることになるため、ハードコート膜の乾燥条件でレンズを乾燥させれば防曇コート膜の乾燥も同時に行えることになり、防曇コート膜の乾燥工程が省略できる。
【0031】また、防曇コート膜には前記したような熱を加えることにより硬化する熱硬化型の他に紫外線を照射することにより硬化するUV硬化型もある。この場合の硬化条件は予備乾燥が60〜70℃で2〜5分、UV照射量で1000〜1500mJ/cmである。防曇コート膜がUV硬化型であっても、ハードコート膜を形成するための予備乾燥条件(60〜85℃で2〜10分)およびUV硬化処理条件(UV照射量で1000〜2000mJ/cm)で充分硬化可能である。
【0032】また、本発明の治具を用いて、ハードコート膜および防曇コート膜を形成する場合に両膜を同時に形成してもよく、先にハードコート膜を形成し、その後で防曇コート膜を形成してもよい。或いはその逆でもよいことは言うまでもない。
【0033】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の方法によれば防曇コート膜塗料を膜形成面に塗布する時にマスキング部にも塗布されるが、塗装ガンの塗料吹き出し方法を下から上方向にしているので、マスキング部に塗料の垂れが生じても膜形成面には付着せず悪影響を与えることはない。
【0034】また、防曇コート膜塗料を低湿度の環境で塗布する必要があるが、低湿度に保つ空間が従来は塗装室のため大空間であり大設備を必要としたが、本発明の方法では塗装用治具内部を低湿度に保てばよいので小設備でよく安価である。また、ランニングコストも安価となる。
【0035】また、レンズに防曇コート膜の他にレンズの外側にハードコート膜を形成するが、このような時従来は防曇コート膜形成工程およびハードコート膜形成工程が必要なため、それぞれに専用の塗装室、及び、治具、乾燥炉、空調設備、制御装置等の関連した設備が必要であったが、本発明の方法ではレンズを塗装用治具にセットして、レンズの両側から膜を形成するための塗装ができるので、塗装室をはじめ関連する設備を別々に設ける必要がない。また、両工程にレンズを搬送するための搬送設備、および、レンズの表裏を反転させるための設備も不要になる。
【出願人】 【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
【住所又は居所】東京都目黒区中目黒2丁目9番13号
【出願日】 平成13年6月21日(2001.6.21)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−7105(P2003−7105A)
【公開日】 平成15年1月10日(2003.1.10)
【出願番号】 特願2001−187570(P2001−187570)