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【発明の名称】 木造建造物の耐震補強構造
【発明者】 【氏名】滝本 猛夫
【住所又は居所】東京都八王子市明神町3−25−4 トータルシステム株式会社内

【要約】 【課題】既設の木造構造物に対して耐震補強を行うに際して、十分な壁倍率を確保しつつ、対象の構造枠内に窓を設置できるようにする。

【解決手段】一対の柱102,104と一対の横架材106,108とで形成される構造枠110内において、前記一対の柱間に渡される貫材112によって、1つの窓部領域114と、その上下側における補強部領域116とを区画形成する。そして、この補強部領域116内にその領域を補強する補強金具118を取り付け、また、窓部領域114内に窓部材132を取り付ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 一対の柱と一対の横架材とで形成される構造枠内に形成される木造建造物の耐震補強構造であって、前記構造枠内において前記一対の柱間に渡される1又は複数本の貫材によって、1つの窓部領域と、該窓部領域の上下側における少なくとも1つの補強部領域とを区画形成し、前記少なくとも1つの補強部領域内にその領域を補強する補強金具を取り付け、前記窓部領域内に窓部材を取り付ける、ことを特徴とする木造建造物の耐震補強構造。
【請求項2】 2本の貫材によって前記1つの窓部領域の上下に各1つの前記補強部領域が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の木造建造物の耐震補強構造。
【請求項3】 前記補強部領域内に取り付けられる前記補強金具は、前記柱と前記横架材又は前記貫材との接合部を補強する複数の接合部補強金具を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の木造建造物の耐震補強構造。
【請求項4】 前記接合部補強金具が、前記柱と前記横架材又は前記貫材との接合部の角部に固定される第1の固定具と、該第1の固定具に対して前記柱及び前記横架材又は前記貫材の伸びる方向に離間した位置で固定される一対の第2の固定具と、前記第1の固定具と前記各第2の固定具とを連結する一対の第1の連結軸と、前記一対の第2の固定具同士を連結する第2の連結軸と、を備えることを特徴とする請求項3に記載の木造建造物の耐震補強構造。
【請求項5】 前記補強部領域内に取り付けられる前記補強金具は、前記柱と前記横架材又は前記貫材との接合部を補強する複数の接合部補強金具と、対角に位置する前記接合部補強金具間に張り渡された複数の筋交い金具と、を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の木造建造物の耐震補強構造。
【請求項6】 前記接合部補強金具が、前記柱及び前記横架材又は前記貫材に対して、これを囲繞する取付金具により固定されていることを特徴とする請求項5に記載の木造建造物の耐震補強構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、木造建造物の耐震補強構造に関し、特に、既設家屋における窓構造部分に耐震補強を施す場合において、窓を残しつつ耐震補強を図ることができる木造建造物の耐震補強構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、家屋などの木造建造物においては、大規模な地震等にも耐えられるような耐震設計が求められている。図6(A)に模式的に示したように、建造物600は、骨組み材として、土台602の上に立設された柱604と、横方向に架け渡された横架材(胴差し、梁など)606とを有している。過去の地震についての調査から、図6(B)に示したように、建造物600の倒壊の多くは、柱604と横架材606との連結部分の破損によって生じることが分かっており、この連結部分の補強が大きな課題となっている。
【0003】このような背景から、従来では既設の木造構造物において、窓や壁構造枠(一対の柱と一対の横架材とで囲まれた部分)内に、筋交いなどの構造材よりも強度の高い補強金具を追加的に取り付け、これによってその壁倍率を向上させて耐震補強を図るようにしている。そして、この場合の補強金具としては、構造枠の四隅に固定される固定具と、対角状にこれらの固定具間を結ぶ筋交い金具とからなるものが広く利用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながらこのような補強金具を用いて耐震補強を行う場合、その壁倍率を向上することはできるものの、その一方で、該構造枠部分には窓を設置できなくなるという問題があった。
【0005】従って本発明の目的は、既設の木造構造物に対して耐震補強を行うに際して、十分な壁倍率を確保し又はその向上を図りつつ、対象の構造枠内に窓を設置できるようにした木造建造物の耐震補強構造を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため本発明は、一対の柱と一対の横架材とで形成される構造枠内に形成される木造建造物の耐震補強構造であって、前記構造枠内において前記一対の柱間に渡される1又は複数本の貫材によって、1つの窓部領域と、該窓部領域の上下側における少なくとも1つの補強部領域とを区画形成し、前記少なくとも1つの補強部領域内にその領域を補強する補強金具を取り付け、前記窓部領域内に窓部材を取り付けることを特徴としている。
【0007】前記構成にあっては、補強対象の構造枠内に窓を設置できる一方で、その上下部分における補強構造によって全体の壁倍率の向上を図ることが可能となる。
【0008】この場合において、より安定した補強構造を得るためには、2本の貫材によって前記1つの窓部領域の上下に各1つの前記補強部領域が形成されている構造とすることが好ましい。
【0009】また、本発明において、前記補強部領域内に取り付けられる前記補強金具は、前記柱と前記横架材又は前記貫材との接合部を補強する複数の接合部補強金具を備えたものとすることが好ましい。
【0010】この場合において、前記接合部補強金具は、前記柱と前記横架材又は前記貫材との接合部の角部に固定される第1の固定具と、該第1の固定具に対して前記柱及び前記横架材又は前記貫材の伸びる方向に離間した位置で固定される一対の第2の固定具と、前記第1の固定具と前記各第2の固定具とを連結する一対の第1の連結軸と、前記一対の第2の固定具同士を連結する第2の連結軸とを備えることが好ましい。
【0011】また、本発明において、前記補強部領域内に取り付けられる前記補強金具は、前記柱と前記横架材又は前記貫材との接合部を補強する複数の接合部補強金具と、対角に位置する前記接合部補強金具間に張り渡された複数の筋交い金具とを備えたものであることが好ましい。
【0012】この場合において、前記接合部補強金具が、前記柱及び前記横架材又は前記貫材に対して、これを囲繞する取付金具により固定されていることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、図示した実施形態に基いて本発明を詳細に説明する。図1及び図2は本発明の第1の実施形態に係り、図1は第1の実施形態に係る耐震補強構造を備えた木造建造物の構造枠部分を示し、図2はその接合部を拡大して示している。
【0014】図1において、本発明に係る耐震補強構造100は、木造建造物の骨組み材である一対の柱102,104、並びに土台106及び胴差し108からなる一対の横架材で形成される構造枠110内に設置、形成されるもので、前記柱102,104間に渡される2本の貫材112によって、3つの領域、すなわち中央の1つの窓部領域114と、該窓部領域114の上下の2つの補強部領域116とを区画形成するものである。
【0015】そして、本実施形態の耐震補強構造100においては、この区画形成された上下2つの補強部領域116に、その領域を補強する補強金具118を取り付け、一方、中央の1つの窓部領域114に窓部材132を取り付けて構成される。すなわち、一対の柱及び一対の横架材で構成される構造枠110には、その中央の窓部領域114に窓部材132が設置され、これによって該構造枠における採光や換気が可能となり、その一方で、その上下の補強部領域116に補強金具118が設置され、これによって、補強壁としての構造を呈するようになるものである。
【0016】本実施形態において、上下の補強部領域116に取り付けられる補強金具118は、柱102,104と各横架材106,108又はその中間の貫材112との接合部を補強する複数の接合部補強金具120と、対角に位置する前記接合部補強金具120間に張り渡された2本の筋交い金具122との組で構成されている。接合部補強金具120は、後述するように当該接合部を補強するようにこれに固定され、地震等の際に生じ得る構造材間の引っ張り、捩れ、曲げなどの力に対抗するよう機能される。また、筋交い金具122は、対角位置の前記接合部補強金具120間を連結することによって、筋交いと同様の機能、すなわち補強部領域116延いては構造枠110の歪みにより生じる圧縮力と引っ張り力に対抗するものである。
【0017】図2には、前記補強金具118の接合部補強金具120と筋交い金具122の一部とが拡大して示されている。図に示すように、接合部補強金具120は、基本的には構造材(図においては、柱104及び土台106)の接合部に沿ってL字状のL字板材120aと、該L字板材120aの垂直状のフランジ部120bに重ね合わせ状に取り付けられる2枚の三角板材120c,120cで構成される。そして、この接合部補強金具120は、構造材104,106を囲むように設置される2つの取付金具124,124を介して、これら構造材に対し一体的に固定されるものである。
【0018】すなわち、接合部補強金具120のL字板材120aは、構造材104,106同士の接合部がなす角度と略同一の角度に折曲形成されており、柱104に当接する当接面(図示せず)と、土台106(他の接合部においては、胴差し108又は貫材112)に当接する当接面(図示せず)とを連続的に有している。また、L字板材120aの両側部(左右両端部)には、フランジ部120bが折曲形成されており、該フランジ部120bの内側面に沿って三角板材120cを重合させる一方、外側面に前記取付金具124のフランジ部124aを重合させ、これらをボルト126で締結することにより、接合部補強金具120及び取付金具124が一体化される。このとき、一対の三角板材120cは、L字板材120aの両側部に沿って一体化されることにより、L字板材120aと共に箱状の接合部補強金具120を構成する。そして、この接合部補強金具120は、2つの前記取付金具124,124によって、構造材に穴あけ等の傷を付けることなく、これらにしっかりと固定されることとなる。なお、本実施形態においては、図1に示すように、窓部領域114に隣接する部分に取り付けられる接合部補強金具120は、窓部材132との干渉を避けるために、貫材112に対して前記取付金具124を用いずに、ラグスクリューなどのネジ部材によって取り付けられている。
【0019】一対の三角板材120cは、所定間隔を存して対向すると共に、これらを貫通する連結ボルト128の締結により一体的に連結される。さらに、連結ボルト128の外周部には、三角板材120cの対向間隔と略同一の長さを有するパイプ材130が装着される。パイプ材130は、三角板材120cの間に介在して三角板材120cの対向間隔を維持すると共に、三角板材120c同士の一体性を高め、さらには、連結ボルト128の締め過ぎによる三角板材120cの曲げ変形を規制する。
【0020】前記筋交い金具122の両端は、図2に示されるように、リング状に構成され、前記パイプ材130に通され、これによって接合部補強金具120と回動可能に連結される。なお、ここでは図示しないが、筋交い金具122は、周知の長さ調整機構、例えば、ジョイントナットなどによる長さ調整が可能なように構成することができる。
【0021】以上のようにして、構造枠110内には、窓部材132及び補強金具118が設置され、これによって補強壁としての構造を呈すると同時に、該構造枠における採光や換気を可能とするものである。
【0022】次に本発明の第2の実施形態に係る耐震補強構造について説明する。図3〜図5は本発明の第2の実施形態に係り、図3は第2の実施形態に係る耐震補強構造を備えた木造建造物の構造枠部分を示し、図4はその接合部を拡大して示し、更に、図5は当該実施形態における補強金具の取り付け構造を示している。
【0023】本実施形態における耐震補強構造300は、木造建造物の骨組み材である一対の柱302,304、並びに土台306及び胴差し308からなる一対の横架材で形成される構造枠310内に、2本の貫材312を設置し、これによって、中央の1つの窓部領域314と、該窓部領域314の上下の2つの補強部領域316とを区画形成するという点において、先の実施形態と共通するが、前記補強部領域316内に設置する補強金具318が、先の構造のものとは異なっている。
【0024】すなわち、本実施形態において、補強部領域316内に設けられる補強金具318は、各構造材の接合部に設置固定される全体として三角状の接合部補強金具320を複数用意してなるものであり、図3においては、比較的高さのある上方の補強部領域316aにおいては4つの接合部補強金具320で、また、比較的高さの狭い補強部領域316bにおいては2つの接合部補強金具320で、補強金具318を構成している。
【0025】図4には、1つの接合部補強金具320が拡大して示してあり、ここに示されるように各接合部補強金具320は、前記柱302と横架材又は貫材(図では胴差し306)との接合部の角部に固定される第1固定具322と、該第1固定具322に対して各構造材の伸びる方向に離間した位置で固定される一対の第2固定具324,324と、第1固定具322と各第2固定具324,324とをそれぞれ連結する一対の第1連結アーム326,326と、第2固定具324,324同士を連結する第2連結アーム328とを備えて構成されている。後述するように、各固定具322,324は、ラグスクリューなどのネジ部材により各構造材に対し固定されている。このような構成により、接合部補強金具320は、構造材の接合部に沿う直角三角形状を呈して各角部において、地震時における構造材間の歪みに抵抗する。
【0026】図5は、第2固定具324に対する各連結アーム326,328の取り付け構造を拡大して示している。図に示すように、第2固定金具324は、金属板をコの字型に曲折して形成されるものであり、その背面部分を構造材側に当接した状態で、ラグスクリュー330によってこれに固定される。第2固定金具324の立ち上げられたフランジ部324a,324aには、貫通孔324b,324bがそれぞれ形成されており、ここに係止ピン332が貫通固定できるようになっている。
【0027】一方、第1連結アーム326の端部には貫通孔326aが、また、第2連結アーム328の端部には貫通孔328aが、それぞれ形成されている。そして、第2固定具324の貫通孔324bと、第1及び第2連結アーム326及び328の貫通孔326a及び328aとを位置合わせし、これらの貫通孔に係止ピン332を係合させることにより、各連結アームは、所定の回動の自由度をもって第2固定具324に取り付けられることとなる。なお、第1固定具322と第1連結アーム326,326との取り付け構造もこれと同様とすることができる。
【0028】以上のようにして、構造枠110内には、窓部材332及び補強金具318が設置され、これによって補強壁としての構造を呈すると同時に、該構造枠における採光や換気を可能とするものである。
【0029】以上、本発明の一実施形態を図面に沿って説明した。しかしながら本発明は前記実施形態に示した事項に限定されず、特許請求の範囲の記載に基いてその変更、改良等が可能であることは明らかである。前記発明の実施形態においては、その補強金具として2種類の異なる構造のものを示したが、本発明の範囲はこのような補強金具の構造に必ずしも限定されるものではない。また、各実施形態においては、窓部領域の上下に補強部領域を設けた構造のものを示したが、1つの貫材により窓部領域の上方のみ、又は下方のみに補強部領域を設け、ここに補強金具を設置するような構造を採用しても良い。なお、窓部領域に収める窓は、図で示した羽目殺し窓に限らず、引き違い窓や開き窓であって良い。
【0030】
【発明の効果】以上の如く本発明によれば、既設の木造構造物に対して耐震補強を行うに際して、十分な壁倍率を確保し又はその向上を図りつつ、対象の構造枠内に窓を設置できるようになる。
【出願人】 【識別番号】398007508
【氏名又は名称】トータルシステム株式会社
【住所又は居所】東京都八王子市明神町3−25−4
【出願日】 平成14年2月8日(2002.2.8)
【代理人】 【識別番号】100086759
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 喜平
【公開番号】 特開2003−232133(P2003−232133A)
【公開日】 平成15年8月22日(2003.8.22)
【出願番号】 特願2002−32054(P2002−32054)