| 【発明の名称】 |
壁パネル及び壁パネルの重ね合わせ構造 |
| 【発明者】 |
【氏名】早乙女 一美
【氏名】溝田 智敏
|
| 【要約】 |
【課題】壁パネル同士の目地部にシーリング材等を充填することなく風雨の侵入を防止できる乾式施工とすることができ、胴縁を用いることなく通気層を構成することが可能であり、部品点数及び施工工数を削減できる壁パネル及びその重ね合わせ構造を提供する。
【解決手段】壁パネル1は、パネル基部の裏面と、アンダーラップ部1bとが、相互に厚さ方向に重ね合わせて取り付けられる壁パネルにおいて、パネル上辺のアンダーラップ部1b1の一端に配置された第一レベル端部1cと、他端に配置され前記第一レベル端部と重ねられうる第二レベル端部1dと、パネル側辺のアンダーラップ部の下側先端に配置された第三レベル端部1b21とを有し、前記第一レベル端部1cと第二レベル端部1dとからなる後退部分の幅Wは、少なくとも前記第三レベル端部1dの幅よりも広く形成したことを特徴とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 パネル基部の裏面と、アンダーラップ部とが、相互に厚さ方向に重ね合わせて取り付けられる壁パネルにおいて、パネル上辺のアンダーラップ部の一端に配置され、表面が該アンダーラップ部の他端よりパネル裏面側に後退した第一レベル端部と、パネル上辺のアンダーラップ部の他端に配置され、前記第一レベル端部と重ねられうる、表面がパネル側辺のアンダーラップ部の下側先端よりパネル裏面側に後退した第二レベル端部と、パネル側辺のアンダーラップ部の下側先端に配置され、前記第二レベル端部と重ねられうる第三レベル端部とを有し、前記第一レベル端部と第二レベル端部とからなる後退部分の幅は、少なくとも前記第三レベル端部の幅よりも広く形成したことを特徴とする壁パネル。 【請求項2】 パネル上辺のアンダーラップ部において、前記第三レベル端部よりも幅が広く、かつ表面が前記第三レベル端部よりパネル裏面側に後退した凹部を形成したことを特徴とする請求項1記載の壁パネル。 【請求項3】 前記アンダーラップ部に、水返しが一体的に設けられたことを特徴とする請求項1記載の壁パネル。 【請求項4】 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の壁パネルを用いて、パネル基部の裏面とアンダーラップ部とを相互に厚さ方向に重ね合わせて取り付けられる壁パネルの重ね合わせ構造において、パネル上辺のアンダーラップ部の一端に配置され、表面が該アンダーラップ部の他端よりパネル裏面側に後退した第一レベル端部と、パネル上辺のアンダーラップ部の他端に配置された第二レベル端部を前記第一レベル端部と重ね、パネル側辺のアンダーラップ部の下側先端に配置した第三レベル端部を、前記第二レベル端部と重ね合わせてなることを特徴とする壁パネルの重ね合わせ構造。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、建物の壁パネルに関し、パネル基部の裏面と、アンダーラップ部とが、相互に厚さ方向に重ね合わせて取り付けられる壁パネルに関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来の建物の外壁面を形成する外装材パネル及びその重ね合わせ構造の一例について説明する。図20(a)は隣設される壁パネル51の縦目地58の位置を一致させてブロック積み状に組み合わせたものであり、図20(b)は隣設される壁パネル51の縦目地58を互い違いに配置してレンガ積み状に組み合わせたものである。図20(a)、(b)に示すように、壁パネル51は、該壁パネル51の4辺のうち、一方の2辺に壁パネル51の裏面側端辺に突出した裏実51a(うらざね)が形成され、他方の2辺に壁パネル51の表面側端辺に突出した表実51b(おもてざね)が形成されている。 【0003】上記パネルを建物に取り付ける際には、まず所定のピッチで立設された柱52及び間柱53に防水シート54を介して胴縁55が取り付けられる。胴縁55は通気層を形成する役割と、場合によりパネルを固定する役割を兼ねている。次に隣接される一方の壁パネル51の裏実51aと、他方の壁パネル51の表実51bとが壁パネル51の厚さ方向に接合された状態で、下段の壁パネル51を固定する。そして上段の壁パネル51の表実51bと、下段の壁パネル51の裏実51aとが壁パネル51の厚さ方向に接合された状態で、上段の壁パネル51を固定する。また壁パネル51の裏実51aの縁辺にはホットメルトと称する樹脂系の水返し材が取り付けられており、これにより止水性能が確保される。 【0004】しかしながら上記従来の構成にあっては、裏実51aは壁パネル51の表面から室内側に向けての距離が同じであるため、複数の壁パネル51を取り付けていくと裏実51a同士の突当部60(図20参照)が形成される。その突当部60においては縦目地58、横目地59からの浸入水を止めることができず、室内側へ漏水するおそれがあった。 【0005】また、壁パネル51の裏面側に通気層を形成するために別部材で胴縁55を介在させていたため、該胴縁55が柱52や間柱53の全数に対応して高さ方向全域に必要であった。このため部品点数が増加して部品コストが増大し、施工工数も増大するため工期が長くなるという問題があった。また胴縁55は長尺状の一部材で柱52や間柱53に沿って取り付けられ、通気層が高さ方向に仕切られて形成されるため、横方向(水平方向)の通気性能に限界があった。 【0006】また、壁パネル51の上辺の裏実51aの上端部横方向に設けられた水返し材であるホットメルトが樹脂系の材料であるため、セメント等の窯業系材料からなる壁パネル51に対しては後工程で取り付ける他なく、壁パネル51の生産効率が悪いという問題があった。 【0007】これに対し本願出願人は、先に出願した特願2001-191537において、図21(a)に示す壁パネルの発明を開示している。当該出願によれば、壁パネル70は上辺アンダーラップ71及び側辺アンダーラップ72を有し、上辺アンダーラップ71の一端に段差部73及び段差壁面構成部74a、他端に段差壁面構成部74bを設けている。そして側辺アンダーラップ72の下側先端部72aは該側辺アンダーラップ72の他の部位より幅を狭く形成し、壁パネル70を横方向に隣接して形成される段差部73に下側先端部72aを重ね合わせるよう構成している。 【0008】これにより図21(b)に示すように、突当部を形成することなくパネルを接合し、また段差部73、下側先端部72a、及びさらに重なるパネル基部とあわせて3ラップ構造を形成することにより止水性能を大幅に向上させようとしたものである。また段差部73がパネル基部の裏面側に突出することにより、胴縁を用いずに通気層を形成しようとしたものである。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】しかし、上記特願2001-191537にかかる構成にあっても、図21(b)に示すように側辺アンダーラップ72を伝って降りてきた水が段差部73の裏側に回ってしまう場合があり、止水性能が必ずしも完全でなかった。 【0010】また図22(a)に示すように、壁パネル51内側の間柱53の間には、保温、断熱のために、グラスウールやロックウールなどの繊維系断熱材66が充填される。しかし図22(b)に示すように、間柱53に内装用の横銅縁67を組み込み、これに内装材68が取り付けられると図22(c)に示すように、横銅縁67によって繊維系断熱材66が押されて、胴縁55によって形成した通気層65に向かって膨出する。このため通気層が繊維系断熱材66によって狭められてしまい、通気性能を低下させるという問題があった。 【0011】そこで本発明は、壁パネル同士の目地部にシーリング材等を充填することなく風雨の侵入を防止できる乾式施工とすることができ、胴縁を用いることなく通気層を構成することが可能であり、部品点数及び施工工数を削減できる壁パネルを提供することを目的としている。 【0012】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明に係る壁パネルは、パネル基部の裏面と、アンダーラップ部とが、相互に厚さ方向に重ね合わせて取り付けられる壁パネルにおいて、パネル上辺のアンダーラップ部の一端に配置され、表面が該アンダーラップ部の他端よりパネル裏面側に後退した第一レベル端部と、パネル上辺のアンダーラップ部の他端に配置され、前記第一レベル端部と重ねられうる、表面がパネル側辺のアンダーラップ部の下側先端よりパネル裏面側に後退した第二レベル端部と、パネル側辺のアンダーラップ部の下側先端に配置され、前記第二レベル端部と重ねられうる第三レベル端部とを有し、前記第一レベル端部と第二レベル端部とからなる後退部分の幅は、少なくとも前記第三レベル端部の幅よりも広く形成したことを特徴とする。 【0013】ここで、パネル上辺及び側辺の一方に設けられたアンダーラップ部の表面は、パネル基部の裏面よりもパネル裏面側に配置されている。そして上記第一レベル端部の表面は第二レベル端部の裏面よりもパネル裏面側に後退しており、第二レベル端部の表面は第三レベル端部の裏面よりもパネル裏面側に後退している。また、第一レベル端部と第二レベル端部とからなる後退部分の幅を、少なくとも第三レベル端部の幅よりも広く形成したことにより、後退部分に第三レベル端部を収容して嵌め込むことができる。 【0014】このように構成したことにより、隣接する一方の壁パネルのパネル基部の裏面と、他方の壁パネルのアンダーラップ部とが該壁パネルの厚さ方向に重ね合わせて取り付けられるので、壁パネル同士の目地部にシーリング材等を充填することなく風雨の侵入を防止できる乾式施工とすることができ、施工が容易で施工期間が短縮できる。すなわち、パネル上辺のアンダーラップ部の両端にそれぞれ配置された第一レベル端部と第二レベル端部とは重ね合わせて取り付けられるので、従来例のようなアンダーラップ部の突き当て部からの浸水を防止することができる。また、パネル側辺のアンダーラップ部の下側先端の第三レベル端部を第一レベル端部と第二レベル端部とからなる後退部分に重ね合わせることにより、さらに重なるパネル基部とあわせて4ラップ構造となるため、乾式であっても確実に浸水を防止しうる。 【0015】このとき第二レベル端部により第三レベル端部の位置規制ができ、隣接するパネル基部の表面相互を面一に構成することができる。これにより、前記壁パネルのパネル基部の裏面とアンダーラップ部とを相互に壁パネルの厚さ方向に重ね合わせた際に隣接されたパネル基部表面相互を面一で構成でき、平面的なパネル構造とすることができる。 【0016】また、重ねられた第一レベル端部及び第二レベル端部をあわせてパネル取付金具によって押圧することで、横方向に隣設される壁パネル相互の上端部を同時に係止することができる。ここで第一レベル端部の第二レベル端部と重ならない部分に、該第二レベル端部と略面一となる第四レベル部を形成することにより、隣接される両側の壁パネルをより安定して押圧、係止することができる。 【0017】また、パネル側辺のアンダーラップ部は第三レベル端部まで略同一幅とすることが好ましく、パネル上辺のアンダーラップ部の第二レベル端部はパネル基部の側面から突出していてもよいが略面一に形成することが好ましい。 【0018】また、パネル上辺のアンダーラップ部において、端部以外の部分に1つ若しくは複数、又は全幅に渡って、少なくとも第三レベル端部よりも幅が広く、かつ表面が第三レベル端部よりパネル裏面側に後退した凹部を形成することにより、凹部にも第三レベル端部を収容することができる。これにより隣接する上下段の壁パネルの相対的な配置をずらすことができる。なお、第一レベル端部と第二レベル端部とからなる後退部分と、前記端部以外の部分に1つ若しくは複数設けられた凹部とが略同形状であることにより、壁パネルの外観上の統一を図ることができる。 【0019】また、パネル側辺のアンダーラップ部の下側先端の第三レベル端部は、第一レベル端部と第二レベル端部とからなる後退部分に収容して嵌め込んだ際にパネル上辺のアンダーラップ部裏面側に後退するように構成してもよいが、略面一になるように構成することが好ましい。 【0020】また、第一レベル端部及び凹部の裏面は、パネル上辺アンダーラップの裏面よりもパネル裏面側に突出することから、壁パネルと下地材との間に通気層を容易に形成することができる。同様に、アンダーラップ部あるいはパネル基部の裏面に凸部を設けることにより、さらに安定して通気層を形成することができる。これにより、胴縁を取り付けなくても下地材の表面とアンダーラップ部裏面との間に通気層を形成することができるため、下地材に直接壁パネルを固定することができ、胴縁を省略して部品点数及び施工工数を削減し、施工期間を短縮することができる。 【0021】また、前記壁パネルのアンダーラップ部に水返しが一体的に設けられた場合には、壁パネルの製造工程で同時に水返しが形成されるので生産効率がよい。 【0022】また、前記壁パネルのパネル基部の上面は排水が可能な傾斜面により形成された場合には、該傾斜面を利用して壁パネルの屋外側に排水ができる。 【0023】また、前記壁パネルのパネル基部の下面にパネル取付金具に係合する凹溝を形成した場合には、該凹溝にパネル取付金具を係合して壁パネルを取り付けることができる。 【0024】また、パネル基部の裏面とアンダーラップ部とを相互に壁パネルの厚さ方向に重ね合わせた際に、前記第二レベル端部又は凹部と、パネル側辺のアンダーラップ部の裏面との間に所定の間隙を有する場合には、パネル取付金具によって係合した下段のパネル基部表面と、該金具の上から係合した上段のパネル基部表面とを面一で構成することができる。 【0025】また、本発明に係る壁パネルの重ね合わせ構造は、前述の壁パネルを用いてパネル基部の裏面とアンダーラップ部とを相互に厚さ方向に重ね合わせて取り付けられる壁パネルの重ね合わせ構造において、パネル上辺のアンダーラップ部の一端に配置され、表面が該アンダーラップ部の他端よりパネル裏面側に後退した第一レベル端部と、パネル上辺のアンダーラップ部の他端に配置された第二レベル端部を前記第一レベル端部と重ね、パネル側辺のアンダーラップ部の下側先端に配置した第三レベル端部を、前記第二レベル端部と重ね合わせてなることを特徴とする。上記構成によれば、互いに重ね合わされた壁パネルの縦横の目地部にシーリングをすることなく防水性能を確保することができるため、シーリング作業を省略することができ、作業性が良く、乾式工法とすることができるため施工期間の短縮を図ることができる。 【0026】また、本発明に係る壁パネルの重ね合わせ構造は、壁パネル同士の目地部から進入した水を該壁パネルのアンダーラップ部により受けて屋内側への進入を防止し、アンダーラップ部に巡回させて屋外側に排水することができる。 【0027】 【発明の実施の形態】本発明に係る壁パネル及びその重ね合わせ構造の実施形態について、図を用いて説明する。まず壁パネルの構成について説明し、次に壁パネルの重ね合わせ構造について説明する。 【0028】(壁パネルの構成)図1は本発明に係る壁パネルの構成を示す斜視説明図、図2は壁パネルの断面概略図及び重なり状態を示す図、図3は左右に隣接する壁パネル相互を接合する様子を示す斜視説明図、図4は上下に隣接する壁パネル相互を接合する様子を示す斜視説明図、図5は壁パネルのアンダーラップ部に一体的に設けられた水返しの構成を示す断面説明図、図6はパネル取付金具により壁パネルを取り付けた様子を示す断面説明図、図7は段差部に取り付けられるパネル取付金具の構成を説明する図、図8は段差部に取り付けられるパネル取付金具により壁パネルを下地材に固定する様子を示す斜視説明図、図9は段差部以外の部位に取り付けられるパネル取付金具の構成を説明する図、図10は段差部以外の部位に取り付けられるパネル取付金具により壁パネルを下地材に固定する様子を示す斜視説明図である。 【0029】図1に示す壁パネル1は、上下及び左右に配列されて建物の外壁面を構成するものである。壁パネル1は、セメント材やコンクリート材、或いは陶板材等の窯業系材料からなり、例えば粘土状のセメント材料をプレス成形により工場生産される。 【0030】壁パネル1は、パネル基部1aと、上辺アンダーラップ1b1と右辺アンダーラップ1b2とからなるアンダーラップ部1bを有している。アンダーラップ部1bの表面はパネル基部1aの裏面1a1よりも壁パネルの裏面側に配置され、複数の壁パネル1を上下左右に接合した場合には、これらパネル基部1aとアンダーラップ部1bが厚さ方向に重なり合わされる。なお右辺アンダーラップ1b2は壁パネル側面として右側面に配置したものであるが、アンダーラップを左側面に設け、後述する他の構成を左右対称とすることでもよい。 【0031】上辺アンダーラップ1b1の右辺アンダーラップ1b2と重複する端部には、表面が上辺アンダーラップ1b1の他端の裏面よりパネル裏面側に後退した第一レベル端部1cが形成されている。また上辺アンダーラップ1b1の他端には、表面が右辺アンダーラップ1b2の下側先端に配置された第三レベル端部1b21の裏面より、パネル裏面側に後退した第二レベル端部1dを有している。 【0032】図3(a)に示すように横方向に壁パネル1を隣接する際には、図3(b)に示すように固定された一方の壁パネル1の上辺アンダーラップ1b1の第一レベル端部1c上に他方の壁パネル1の第二レベル端部1dの左端部を重ね合わせると共に、固定された一方の壁パネル1の右辺アンダーラップ1b2上に重ね合わされる他方の壁パネル1のパネル基部1aの裏面1a1を重ね合わせる。 【0033】第一レベル端部1cは、上辺アンダーラップ1b1と右辺アンダーラップ1b2の重複部分を含み、さらにパネル基部1aの上方側に延長されている。上辺アンダーラップ1b1の第二レベル端部1dを有する端部は、パネル基部1aの側面と略面一か、又は突出して形成している。十分な重なり部分をとることにより、後述する止水性能を確保するためである。 【0034】そして第一レベル端部1cには、第二レベル端部1dと重ならない部分に、壁パネル1を左右に接合した場合に第二レベル端部1dと略面一となる第四レベル部1c1を有している。なお第四レベル部1c1は、第二レベル端部1dと重ならないために、これに準じた寸法の幅に形成している。これにより壁パネル1の取り付けの際の作業性を向上し、また第二レベル端部1dとの外観上の統一も得ることができるため好適である。 【0035】また第四レベル部1c1、第二レベル端部1dの表面は、上辺アンダーラップ1b1の表面からそれぞれ段差部1c11、1d1を有してパネル裏面側に後退している。従って第一レベル端部1cと第二レベル端部1dとを重ねると、段差部1c11と段差部1d1とが対向し、その表面が面一にされる。また同時に、左右に隣接したパネル基部1aの表面も、相互に面一にされる。さらに段差部1c11と段差部1d1は横目地7より上に位置されており、これにより横目地7から第四レベル部1c1、第二レベル端部1dのくぼみが見えることを防止し、設置後の外観を良好とすることができる。 【0036】このように複数の壁パネル1を左右に接合した場合には、図3(b)に示すように、第一レベル端部1cの前に第二レベル端部1dが厚さ方向に重なり、第一レベル端部1cと第二レベル端部1dとからなる後退部分Wが形成される。 【0037】後退部分Wは第三レベル端部1b21よりも広い幅に形成されており、上段に隣接される壁パネル1の第三レベル端部1b21を収容可能に構成されている。従って縦目地6と横目地7の交差部においては、第一レベル端部1c、第二レベル端部1dの前に第三レベル端部1b21が重なり、さらに重なるパネル基部とあわせて4ラップ構造を構成する。 【0038】ここで右辺アンダーラップ1b2は、上端の第一レベル端部1cから第三レベル端部1b21までの全長に渡って、略同一幅に形成している。また、右辺アンダーラップ1b2と第一レベル端部1cとは、傾斜部1b22を介して連続して接続されている。 【0039】上辺アンダーラップ1b1の横方向略中央部には、第三レベル端部1b21よりも幅が広く、かつ表面が該第三レベル端部1b21の裏面よりパネル裏面側に後退した凹部1eを形成している。凹部1eは、本実施形態においては、第二レベル端部1dと略面一に形成している。なお本実施形態においては、後退部分Wと凹部1eとを略同形状に形成し、外観上及び取付け方法の統一を図っている。これにより、凹部1eにも第三レベル端部1b21を収容することができ、隣接する上下段の壁パネルの相対的な配置をずらすことができる。 【0040】凹部1eの表面は、上辺アンダーラップ1b1の表面から段差部1e1を有してパネル裏面側に後退している。段差部1e1は第四レベル部1c1、第二レベル端部1dの有する段差部1c11、1d1と同様の高さに形成されている。 【0041】上記構成により、図4に示すように、後退部分W、凹部1eのいずれにも、上段の壁パネル1の第三レベル端部1b21を収容することができる。すなわち、高さ方向に壁パネル1を隣設する際には、図4(a)に示すように、固定された下段の壁パネル1の上辺アンダーラップ1b1に形成された後退部分W、若しくは凹部1eに、後接合される上段の壁パネル1の第三レベル端部1b21を重ね合わせることができる。 【0042】このとき図4(b)、(c)に示すように、上辺アンダーラップ1b1と、及び第三レベル端部1b21を有する右辺アンダーラップ1b2との相互の部位では、該アンダーラップ1b1、1b2相互の表面が略面一で構成される。また同時に、後退部分W、凹部1eにより第三レベル端部1b21の位置規制がされるため、隣接するパネル基部1aの表面相互を面一に構成することができる。 【0043】第一レベル端部1c及び凹部1eの裏側は、上辺アンダーラップ1b1の裏面よりも、下地材側(屋内側)に所定の寸法だけ突出している。また上辺アンダーラップ1b1の背面には、所定の間隔にて複数の凸部1pを設けている。これら第一レベル端部1c、凹部1e、凸部1pが、上辺アンダーラップ1b1と下地材となる柱4や間柱5との間に10mm以上の離間間隔を形成しうるようにその突出高さが設定されている。これにより、後述するように、パネル基部1aの裏面側に垂直及び水平方向に連通して通気層を形成することができる。 【0044】図5に示すように、壁パネル1の上辺アンダーラップ1b1と右辺アンダーラップ1b2には、アンダーラップ部1b全域に亘って方形状の水返し11が一体的に形成されている。図5(a)は一条の水返し11が上辺アンダーラップ1b1の上端部に形成された一例であり、図5(b)は2条の水返し11が並設された一例を示す。水返し11を2重に設けることで防波堤の効果を更に向上することができる。尚、水返し11の外形や条数は他の形状或いは他の複数条形成されたものでもよい。 【0045】前記各水返し11は壁パネル1の製造時に該壁パネル1と一体的に成形されるものであり、予め型枠に水返し11の形状に応じた部分が形成されている。このような型枠を用いて粘土状のセメント材料をプレス成形することにより、アンダーラップ部1bに水返し11が形成された壁パネル1が工場生産され、壁パネル1の製造工程で同時に水返し11が形成されるので壁パネル1の生産効率がよい。 【0046】図6に示すように、壁パネル1のパネル基部1aの下面にはパネル取付金具15に係合する凹部1fが形成されている。また、該凹部1fのパネル基部1aの裏面1a1側はパネル取付金具15の板厚に応じた溝1mが形成されている。同様に、第二レベル端部1dと、右辺アンダーラップ1b2の裏面との間には、パネル取付金具が介在するための所定の間隙を有している。これにより、パネル取付金具15と上部壁パネル1とが高さ方向で干渉することがなく、横目地7に不陸を生じることなく、パネル取付金具15によって係合した下段のパネル基部表面と、該金具15の上から係合した上段のパネル基部表面とを面一で構成することができる。 【0047】パネル取付金具15は、図7に示すように、壁パネル1の上辺アンダーラップ1b1の形状に応じてクランク状に形成されており、その先端部に設けられた係止部15aが壁パネル1のパネル基部1aの下面に形成された凹部1fに挿入されて係合し、上段の壁パネル1の下端部を係止する。また、パネル取付金具15の柱4や間柱5等の下地材に固定される側の垂直方向の固定片15bは、それに接続される水平片15cとの間の角度βが90°よりも大きな値(180°よりも小さい)で設定されており、図8に示すように、後退部分W、凹部1eにパネル取付金具15を装着して、固定片15bに釘やビス3を打ちつけて柱4や間柱5等の下地材に固定することで、図6(a)に示すように、パネル取付金具15の垂下片15dにより壁パネル1の上端部を押圧して係止する。 【0048】また、上辺アンダーラップ1b1における後退部分W、凹部1e以外の部位に柱4や間柱5等の下地材が配置された場合には、図9に示すパネル取付金具15を用いて、図10に示すように、後退部分W、凹部1e以外の上辺アンダーラップ1b1の部位にパネル取付金具15を装着し、柱4や間柱5等の下地材と後退部分W、凹部1e以外の上辺アンダーラップ1b1の裏面との間に緩衝材16を介在させて、固定片15bに釘やビス3を打ちつけて柱4や間柱5等の下地材に固定することで、パネル取付金具15の垂下片15dにより壁パネル1の上端部を押圧して係止する。 【0049】このとき図10(b)に示すように、上辺アンダーラップ1b1の裏面に凸部1pを所定の間隔にて複数設けたことにより、後退部分W、凹部1e以外の上辺アンダーラップ1b1の部位であっても、パネル取付金具15によって柱4、間柱5に押圧して係止することができる。これにより柱4、間柱5に対する壁パネル1の配置に自由度を増すことができる。 【0050】なお本実施形態では、図7(a)及び図9(a)に示すように、パネル取付金具15の固定片15bにその長手方向がパネル幅方向に配置された長穴15fが形成されている。これにより実際の施工時において柱4や間柱5等の下地材のパネル幅方向の中心位置にずれが生じた場合であっても、長穴15fの範囲内で釘やビス3の固定位置を調整して、柱4や間柱5等の下地材のパネル幅方向の中心位置に釘やビス3を打ち込んで壁パネル1を固定することができる。 【0051】(壁パネルの重ね合わせ構造)次に上記壁パネル1を用いて建物の外壁面を構成する重ね合わせ構造について説明する。図11は本発明に係る壁パネルの重ね合わせ構造を示す斜視説明図、図12は本発明に係る壁パネルの他の重ね合わせ構造を示す斜視説明図、図13は本発明に係る壁パネルの重ね合わせ構造により形成された通気層の構成を示す斜視説明図、図14は壁パネル及び内装材に関する重ね合わせ構造の説明図、図15は雨水の巡回経路を説明する斜視説明図、図16は雨水の巡回経路を説明する部分拡大図、図17は最下段の壁パネルの下部に設けた排水手段により排水される様子を示す断面説明図である。 【0052】先ず、図11及び図12に示すように、所定のピッチで立設された柱4及び間柱5に防水シート2を展張し、最下段に設けられた図示しない取付金物の係止部にパネル基部1a下面の凹溝1fを係合させ、図8及び図10に示すように、後退部分W、凹部1e或いはそれ以外の上辺アンダーラップ1b1に夫々のパネル取付金具15を装着して、固定片15bを介して釘やビス3を柱4や間柱5等の下地材に打ち込んで固定する。 【0053】このとき、前述したように、後退部分W、凹部1eのいずれにも、上段の壁パネル1の第三レベル端部1b21を重ね合わせることができる(図4参照)。従って、図11に示すように壁パネル1の縦目地6を互い違いに配置したレンガ組合せ状とするか、若しくは図12に示すように壁パネル1の縦目地6を一致させて配置したブロック組合せ状として、パネル基部1aの表面を連続的に面一に接合して全体的に平面的な外壁面を容易に形成することができる。互いに重ね合わされた壁パネル1の縦横の目地部である縦目地6及び横目地7には、特にシーリング材等によるシーリングは施さない。 【0054】また前述した如く、第一レベル端部1c、凹部1e、凸部1pが、上辺アンダーラップ1b1裏面と下地材となる柱4や間柱5との間に10mm以上の離間間隔を形成しうるようにその突出高さが設定されており、各壁パネル1はこれらの部位で柱4や間柱5に対して固定されている。すなわち各壁パネル1のアンダーラップ部1bは上辺アンダーラップ1b1の後退部分W、凹部1e、凸部1p以外の部分では、防水シート2の表面から10mm以上の所定の距離だけ離間間隔を形成した状態で固定されている。 【0055】また図14に示すように、凸部1pを複数設けたことにより、間柱5の屋内側に内装材68を取り付けるための横銅縁67を組み付けたとしても、通気層65に膨出しようとする繊維系断熱材66を抑えることができ、通気層を確保することができる。 【0056】従って、図13に矢印にて示すように、防水シート2とアンダーラップ部1bの裏面との間に通気層が縦横連続した状態で形成され、建物が室内から放つ湿気等に対して前述した従来例よりも多くの方向性を有する通気層が確保され、通気性能を向上させて壁パネル1や建物の耐久性を向上することができる。また、前述した従来例のように胴縁55を必要としないので、部品点数を削減して部品コストを低減し、施工工数を削減して工期を短縮することができる。 【0057】図11に示すように、最下段の壁パネル1′の屋内側から下部に向かって、該壁パネル1′屋外側に排水可能な排水手段となる土台水切り部材12が配置されている。土台水切り部材12は断面Z形状を有して外壁面の水平方向の全幅に亘って柱4や間柱5、或いは建物の布基礎13の上部に配置された基礎梁14に固定されている。 【0058】一方、壁パネル1のパネル基部1aの上面は、図16(d)に示すように排水が可能な傾斜面1gが形成されている。傾斜面1gは水平面に対して傾斜角度αを有しており、壁パネル1のアンダーラップ部1bに巡回している雨水を傾斜面1gを介して壁パネル1の屋外側に排水ができるようになっている。 【0059】図15は互いに重ね合わされた壁パネル1の縦横の目地部となる縦目地6及び横目地7から進入した雨水が壁パネル1のアンダーラップ部1bにおいて巡回する巡回経路及び排水経路を全体的に示したものである。図15に示すように、壁パネル1同士を重ね合わせた目地部となる縦目地6及び横目地7から雨水が進入した場合、進入した雨水を壁パネル1のアンダーラップ部1bにより受けて屋内側への進入を防止して、更に図16及び図17に示すように、その雨水を他の壁パネル1のアンダーラップ部1bに巡回させて屋外側に排水するようになっている。 【0060】即ち、壁パネル1相互の目地部である横目地7から進入した雨水は、図16(d)に示す傾斜面1gを介して下段の壁パネル1の表面に排水されるか、若しくは、図16(a)に示すように、上辺アンダーラップ1b1に沿って該上辺アンダーラップ1b1の左右方向に巡回して流れ、上辺アンダーラップ1b1に形成された後退部分Wから傾斜部1b22、右辺アンダーラップ1b2の経路を伝わって流れる。アンダーラップ部1bの右辺アンダーラップ1b2まで伝わった雨水は、図16(b)、(c)に示すように、更にその下方の壁パネル1の上辺アンダーラップ1b1に着水し、傾斜面1gを介して下段の壁パネル1のパネル基部1aの表面に排水されるか、若しくは、前述と同様の経路を伝わって更にその下段の壁パネル1のアンダーラップ部1bに巡回する。これを繰り返して最終的には、図17に示すように、建物の基礎部において最下段の壁パネル1′の下部に設けられた土台水切り部材12に着水し、該土台水切り部材12を介して壁パネル1の屋外側に排水される。 【0061】このように、壁パネル1の縦横の目地部となる縦目地6及び横目地7から進入した雨水を壁パネル1のアンダーラップ部1bにおいて巡回及び排水することができる構成としたことで、建物の屋内側への漏水を確実に防止することができ、目地部にシーリングをする作業工程を省略することができるので乾式工法とすることができ、施工が容易で且つ確実に且つ一様にでき、施工期間を大幅に短縮することができる。 【0062】特に縦目地6と横目地7の交差部において第一レベル端部1c、第二レベル端部1d、上段の壁パネル1の第三レベル端部1b21、上段の壁パネル1のパネル基部の4ラップ構造とできるため、図20に示して前述した従来例のように裏実51a同士の突当部60が形成されることがなく、乾式であっても屋内側への漏水を確実に防止することができる。 【0063】また、隣接する一方の壁パネル1のパネル基部1aの裏面1a1と、他方の壁パネル1のアンダーラップ部1bとが該アンダーラップ部1bに一体的に形成された水返し11を介在させて該壁パネル1の厚さ方向に重ね合わせて取り付けられるので、壁パネル1同士の縦目地6及び横目地7にシーリング材等を充填することなく風雨の侵入を防止できる乾式施工とすることができ、施工が容易で施工期間が短縮できる。 【0064】(他の実施形態)上記実施形態においては、第四レベル部1c1、第二レベル端部1d、凹部1eは、上辺アンダーラップ1b1からそれぞれ段差部1c11、1d1、1e1を有してパネル裏面側に後退するよう形成すると説明した。しかし本発明において段差部1c11、1d1、1e1は必須の構成要素ではなく、図18(a)に示すように、段差部を設けないことでもよい。このように構成すると横目地59から各レベル部1c1、1d、1eのくぼみが見えてしまうおそれがあるが、本発明に係る壁パネル1の機能、すなわち通気性能や止水性能を損なうことはない。 【0065】また第一レベル端部1cの第二レベル端部1dと重ならない部分に第二レベル端部1dと略面一となる第四レベル部1c1を形成すると説明したが、図18(b)に示すように、第四レベル部1c1を設けないことでもよい。これは、パネル取付金具15によって第二レベル端部1dを押圧した場合に、その裏面に重ねられた第一レベル端部1cを介して柱4や間柱5に押圧されるため、第四レベル部1c1がなくとも左右両側の壁パネル1を固定することができるためである。ただし第四レベル部1c1を設けた方が、取り付けの際の作業性がよく、また第二レベル端部1d、凹部1eとの外観上の統一も得ることができるため好適である。 【0066】また図18(c)は、第二レベル端部を有する端部を、パネル基部の側面から突出させて形成した例である。これにより、さらに十分なラップ部分をとることができ、止水性能を向上させることができる。このとき、図に示すように、第四レベル部1c1は、第二レベル端部1dの突出長さに準じて幅方向の寸法を短く形成している。 【0067】また本実施形態では凹部1eを上辺アンダーラップ1b1の横方向の略中央部の1箇所に設けた場合について説明したが、図19(a)に示すように、柱4や間柱5が立設されたピッチに応じて所定位置に所定ピッチで複数の凹部1eを形成してもよい。また、図19(b)に示すように、上辺アンダーラップ1b1の全幅に渡って凹部1eを形成することでもよい。この場合、面一に形成された第二レベル端部1d、第四レベル部1c1、凹部1eは全て同一平面となって区別されない。このように形成してもパネル取付金具15による壁パネル1の係止には影響がなく、また上下段の壁パネル1の相対的な配置を任意とすることができ、外壁面を構成する上での自由度を増すことができる。 【0068】 【発明の効果】上記説明した如く、本発明に係る壁パネル及び壁パネル重ね合わせ構造によれば、止水性能が大幅に向上し、乾式施工であっても確実に浸水を防止することができる。このように乾式施工が可能となることにより、シーリング材等を充填するなど壁パネルを後加工する必要がなく、施工工数を削減でき、施工が容易で施工期間を短縮することができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000000033 【氏名又は名称】旭化成株式会社
|
| 【出願日】 |
平成14年2月8日(2002.2.8) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100066784 【弁理士】 【氏名又は名称】中川 周吉 (外1名)
|
| 【公開番号】 |
特開2003−232114(P2003−232114A) |
| 【公開日】 |
平成15年8月22日(2003.8.22) |
| 【出願番号】 |
特願2002−32022(P2002−32022) |
|