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【発明の名称】 梁補強金具およびこれを用いた梁貫通孔補強構造
【発明者】 【氏名】北野 隆司
【住所又は居所】福岡県北九州市若松区北浜一丁目9番1号 日立金属株式会社若松工場内

【氏名】中野 建蔵
【住所又は居所】福岡県北九州市若松区北浜一丁目9番1号 日立金属株式会社若松工場内

【氏名】大庭 秀治
【住所又は居所】福岡県北九州市若松区北浜一丁目9番1号 日立金属株式会社若松工場内

【要約】 【課題】梁に開設された貫通孔に対する配管の取り付けの自由度を高めるとともに大きさの異なる貫通孔に対しても材料の無駄を省きつつ必要な強度まで補強することができる梁補強金具を提供する。

【解決手段】梁補強金具1は、H形鋼からなる梁2に形成された内径Rの貫通孔3に嵌入され、貫通孔3の周縁部に外周部4を溶接することによって固定されるリング状の補強部材である。梁補強金具1の外径d1は、貫通孔3の内部に形成された内径Rの円形の空間部6に嵌入可能な大きさであり、その軸方向の長さAは、梁2のウェブ部2wの厚みt1より厚く形成されている。また、梁補強金具1の内径d2は、その内側に配管5などを挿通可能な大きさであって、梁2の梁成Hの0.8倍以下に形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 梁に形成された貫通孔の周縁部に外周部が溶接固定されるリング状の梁補強金具であって、その軸方向の長さを半径方向の肉厚の0.5倍〜10.0倍としたことを特徴とする梁補強金具。
【請求項2】 前記梁補強金具の体積を、前記梁に形成された貫通孔の内部に形成された空間部の体積の1.0倍〜3.0倍としたことを特徴とする請求項1に記載の梁補強金具。
【請求項3】 前記貫通孔より外径が大きいフランジ部を前記外周部の軸方向の片面側に形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の梁補強金具。
【請求項4】 前記外周部を、軸方向の他面側に向かって徐々に縮径させたことを特徴とする請求項3に記載の梁補強金具。
【請求項5】 前記外周部の最小外径部から前記フランジ部外周までの長さを前記外周部の最小外径の半分以下とし、前記フランジ部の軸方向の長さを当該梁補強金具の軸方向の長さの半分以下としたことを特徴とする請求項3または4に記載の梁補強金具。
【請求項6】 前記梁補強金具の内径を前記梁の梁成の0.8倍以下としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の梁補強金具。
【請求項7】 前記貫通孔の内縁部に直接当接する3以上の位置決め突起部を前記外周部に形成したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の梁補強金具。
【請求項8】 柱梁接合構造を構成する梁に形成された貫通孔の周縁部に請求項1〜7のいずれかに記載の梁補強金具の外周部を溶接固定して形成した梁貫通孔補強構造であって、前記柱と前記梁との接合位置から前記梁補強金具の軸心までの距離を前記梁の梁成の2倍以下としたことを特徴とする梁貫通孔補強構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種建築構造物を構成する梁に形成された貫通孔に固定され当該梁を補強する梁補強金具およびこれを用いた梁貫通孔補強構造に関する。
【0002】
【従来の技術】H形鋼やI形鋼等は建築構造物の梁として多数使用されている。このような建築構造物においては、その内部に設けられている配管や配線を通過させるため、梁のウェブ部に1または2以上の貫通孔を形成することがある。この場合、梁の強度低下を防止する手段として、貫通孔に取り付ける補強用のスリーブ部材(例えば、特許文献1参照。)や補強プレート(例えば、特許文献2参照。)などがある。
【0003】特許文献1には、図11に示すような梁貫通スリーブ83が記載されている。この梁貫通スリーブ83は、スリーブ本体80と、このスリーブ本体80の外周部に位置するフランジ81とを、梁82に溶接可能な材料で一体成形されたものであり、スリーブ本体80の肉厚は、少なくともその内周面側が、スリーブ本体80の両端からスリーブ本体80とフランジ81との交接部に向かって徐々に厚くなるように形成されている。このような構成とすることにより、配管84を斜め方向から挿通しても梁貫通スリーブ83の端部に接触して配管84が損傷することがなくなるという効果がある。
【0004】特許文献2には、貫通孔が形成された梁ウェブ部の両面に、平板状の開口プレートを高力ボルト止めによって接合することを特徴とする貫通孔補強構造が記載されている。これによって、鉄骨加工工数の少ない合理的経済的な梁貫通孔の補強が可能となる。
【0005】
【特許文献1】特公平4−63942号公報(第1−2頁、第1図)
【特許文献2】実開平5−57149号公報(第3−4頁、第1図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特許文献1に記載されている梁貫通スリーブ83は、梁82のフランジ部85の幅より少し短い筒状の部材であるため、肉厚の調整によって形成できる内径の変化量にも限界があり、梁貫通スリーブ83の挿通角度にも限界がある。このため、さらに配管84の取付けの自由度が高い補強部材が求められている。
【0007】また、特許文献2に記載されている貫通孔補強構造は、2枚の開口プレートを必要とするため部品点数が多くなり、梁のウェブ部の両面に配置される2枚の開口プレートをボルトで締結する際の位置決めが困難であるなどの問題がある。
【0008】一方、近年のインテリジェントビルに代表されるように、建築構造物の設備機能の複雑化が進み、さらに設計対象である建築物が将来的にも建築計画上および建築設備上、十分に機能するように配慮する必要がある。このため、建築構造物内部の各種配管、配線類は柱梁接合構造において柱、言い換えれば、梁の接合端部に接近した領域に集約することが望ましいため、前記貫通孔も柱梁接合構造の柱に近い位置に形成したいという要請がある。
【0009】しかしながら、柱に接近した梁の端部は塑性化領域と呼ばれ、大地震時において地震エネルギを吸収して大変形する部位であり、このような領域に貫通孔を設置すると柱梁接合構造の著しい強度低下を招き、それを補うことのできる補強手段もないので、一般に、塑性化領域における貫通孔の設置は避けられている。したがって、配管や配線の面からは不都合な場所である、柱から離れた部位、即ち梁の塑性化領域から離れた部位に貫通孔を形成せざるを得ないのが実状である。
【0010】そこで、本発明が解決しようとする課題は、梁に開設された貫通孔に対する配管の取り付けの自由度を高めるとともに大きさの異なる貫通孔に対しても材料の無駄を省きつつ必要な強度まで補強することができ、柱梁接合部に近い塑性化領域における貫通孔設置を可能とする梁補強金具と、前記梁補強金具を用いた梁貫通孔補強構造とを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため、本発明の梁補強金具は、梁に形成された貫通孔の周縁部に外周部が溶接固定されるリング状の梁補強金具であって、その軸方向の長さを、半径方向の肉厚の0.5倍〜10.0倍としたものである。
【0012】梁に外力が加わったとき貫通孔の周縁部に生じる応力は、ウェブ部から貫通孔の中心軸に沿って離れるに従って徐々に小さくなるため、所定以上の軸方向長さは材料の無駄になる。そこで、梁補強金具の形状をリング状とし、その軸方向の長さを半径方向の肉厚の0.5倍〜10.0倍(より好ましくは0.5倍〜5.0倍)に規制することによって、大きさの異なる貫通孔に対しても材料の無駄を省きつつ必要な強度まで補強することができ、また、梁の貫通孔に対して配管を斜めから挿通しても梁補強金具に当接することがなくなり、配管の取り付けの自由度が高まる。
【0013】この場合、軸方向の長さを半径方向の肉厚の0.5倍〜10.0倍に設定したのは、0.5倍より小さくすると強度が不十分になり、また、10.0倍より大きくすると軸方向長さの増大の割には梁補強金具の強度が大きくならず、材料の無駄が大きくなるからである。
【0014】また、前記梁補強金具の体積を、前記梁に形成された貫通孔の内部に形成された空間部の体積の1.0倍〜3.0倍にすることも可能である。ここで、空間部の体積は、貫通孔の開口面積にウェブ部の厚みを乗じることにより求めることができる。
【0015】前記梁補強金具の体積を、空間部の体積の1.0倍〜3.0倍にしたのは、1.0倍より小さいと、貫通孔が形成されていない梁(以下「無孔梁」という。)より強度が小さくなり、また、3.0倍より大きいと梁の無孔部より強度が大きくなるので品質過剰になり、また、重量が大きくなり過ぎるからである。このような構成とすることによって、大きさが異なる貫通孔に対して所定の強度で補強が行われる。
【0016】また、前記貫通孔より外径が大きいフランジ部を外周部の軸方向の片面側に形成することも可能である。梁補強金具は、貫通孔の軸方向の片方の面側から嵌入されて取り付けられるが、このとき、梁補強金具のフランジ部が、貫通孔周囲の梁ウェブ部に当接するまで嵌入することにより軸方向の位置決めを正確に行うことができる。
【0017】また、前記外周部を、軸方向の他面側に向かって徐々に縮径させることも可能である。かかる構成によって、梁補強金具を貫通孔に嵌入させる作業が容易化されて作業時間が短縮される。
【0018】一方、前記外周部の最小外径部からフランジ部外周までの長さを、前記外周部の最小外径の半分以下とし、フランジ部の軸方向の長さを、当該梁補強金具の軸方向の長さの半分以下とすることが望ましい。このような構成を有する梁補強金具を、梁の貫通孔に溶接接合すると、その優れた補強作用により、貫通孔が形成されていない梁、いわゆる無孔梁と同等の強度が得られるので、柱梁接合部に近い塑性化領域における貫通孔設置が可能となる。
【0019】また、前記梁補強金具の内径を梁成の0.8倍以下とすることが望ましい。ここで、梁成とは、梁の重力方向の寸法、例えば、H形鋼を用いた梁であれば片方のフランジ部表面から他方のフランジ部表面までの寸法をいう。
【0020】従来の梁貫通孔スリーブの場合、梁に形成可能な貫通孔の内径は梁成の0.5倍程度が上限であったので、配管、配線が多いときは複数の貫通孔を設ける必要があったが、梁補強金具の内径を梁成の0.8倍以下とすることにより、梁の強度低下を招くことなく、配管・配線用の孔のサイズを梁成の0.8倍までサイズアップすることが可能となるため、複数の貫通孔を設ける必要がなくなり、工数低減を図ることができる。なお、梁補強金具の内径が梁成の0.8倍を超えると、梁補強機能が低下するため、0.8倍以下が好適である。
【0021】また、前記貫通孔に直接当接する3以上の位置決め突起部を外周部に形成することも可能である。このような構成とすることにより、貫通孔と梁補強金具の形状の誤差を吸収して中心位置を合わせることができる。
【0022】次に、本発明の梁貫通孔補強構造は、柱梁接合構造を構成する梁に形成された貫通孔の周縁部に、前述したいずれかの梁補強金具の外周部を溶接固定して形成したものであって、柱と梁との接合部から梁補強金具の軸心までの距離を梁成の2倍以下としたことを特徴とする。
【0023】このような構成とすることにより、建築構造物内部の各種配管、配線類を通すために梁に形成される貫通孔を、柱梁接合構造の柱に接近した位置に配置することができるようになるため、配管、配線の集約化を図ることが可能となり建築物の設計上好都合であり、配管・配線の施工性も大幅に向上する。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について説明する。
(第1実施形態)図1(a)は本発明の第1実施形態である梁補強金具の使用状態を示す側断面図であり、(b)は前記梁補強金具が取り付けられる梁の貫通孔を示す側断面図であり、図2は前記梁補強金具の使用状態を示す斜視図である。
【0025】図1に示すように、梁補強金具1は、例えばH形鋼からなる梁2に形成された内径Rの大きさの円形の貫通孔3に嵌入され、貫通孔3の周縁部に外周部4が溶接固定されるリング状の補強部材である。梁補強金具1の外径d1は、貫通孔3の内部に形成された内径Rの円形の空間部6に嵌入可能な大きさであり、その軸方向長さAは、梁2のウェブ部2wの厚みt1より厚く形成されている。また、梁補強金具1の内径d2は、その内側に配管5を挿通可能な大きさであって、梁2の重力方向の高さである梁成Hの0.8倍以下に形成している。
【0026】梁2のウェブ部2wの欠損部分である空間部6の体積V1は、V1=R×π×t1×1/4によって求めることができ、梁補強金具1の体積V2は、V2=(d1−d2)×π×A×1/4によって求めることができる。本実施形態においては、梁補強金具1の体積V2を空間部6の体積V1の1.0倍〜3.0倍に設定している。かかる構成によって、貫通孔3が形成された梁2の強度を無孔梁と同等にすることができる。
【0027】また、従来の梁貫通スリーブのように、軸方向の長さを長くしても強度への影響が少ないことを考慮し、軸方向の長さAを、半径方向の肉厚B(但しB=(d1−d2)/2)の0.5倍〜10.0倍(より好ましくは0.5倍〜5.0倍)に設定している。かかる構成によって、空間部6の体積V1と梁補強金具1の体積V2との体積比率の設定を変えずに必要な強度を確保できるとともに梁補強金具1の軸方向の長さを短くすることができ、梁補強金具1の内部を通過する配管5の梁2に対する挿通角度を大きくすることができるので、取り付けの自由度を上げることができる。
【0028】図1(a)に示すように、梁補強金具1は、外周部4の軸方向の両端部を、貫通孔3の周縁部に表側および裏側からそれぞれ全周にわたって溶接することによって固定されている。梁補強金具1を溶接固定した後は、図2に示すように、その内部に配管5などを挿通させることができる。
【0029】(第2実施形態)図3は本発明の第2実施形態である梁補強金具の使用状態を示す側断面図である。梁補強金具7は、前述した梁補強金具1の外周部4の軸方向の片面側に、梁2に形成された貫通孔3より外径が大きいフランジ部8を形成したものである。梁補強金具7は、その外周部9を梁2のウェブ部2wの片面側(図3の紙面左側)から貫通孔3へ嵌入し、フランジ部8を梁2のウェブ部2wに当接した後、その外周部9と、フランジ部8の外周部とをそれぞれ梁2のウェブ部2wの表面側および裏面側にそれぞれ溶接することによって固定される。このようなフランジ部8を設けることによって、軸方向の位置決めを設置用工具なしで確実に行うことができる。
【0030】(第3実施形態)図4は本発明の第3実施形態である梁補強金具を示す正面図であり、図5は図4におけるX−X線断面図であり、図6は図4に示す梁補強金具の使用状態を示す側断面図である。
【0031】図4,図5に示すように、梁補強金具10においては、その外周部12の軸方向の片面側にフランジ部13を設けるとともに、外周部12をその軸方向の他面側(フランジ部13の無い面側)に向かって徐々に縮径するテーパ形状としている。ここで、梁補強金具10の各部の寸法を図5に示すような符号で表すと、梁補強金具10の体積V2は、V2=(πT/3)×[(Q/2)+{(Q/2)×(d3/2)}+(d3/2)]+(S/2)πF−(d2/2)πAによって求めることができる。また、図6に示すように梁2のウェブ部2wに形成された貫通孔3の空間部6(図示せず)の体積V1は、図1(b)に基づいて算出した場合と同様に、V1=R×π×t1×1/4によって求めることができる。
【0032】本実施形態においては、梁2の貫通孔3に溶接接合された梁補強金具10の体積V2を、空間部6の体積V1の1.0〜3.0倍とし、梁補強金具10の内径d2を梁2の梁成Hの0.8倍以下としている。さらに、梁補強金具10においては、外周部12の最小外径部12aからフランジ部13の外周までの長さCを外周部12の最小外径d3の半分以下(より好ましくは1/4以下)とするとともに、フランジ部13の軸方向の長さFを、梁補強金具10の軸方向の長さAの半分以下としている。このような構成により、貫通孔3が形成された梁2の強度を無孔梁と同等にすることができる。
【0033】図6に示すように、梁2のウェブ部2wに形成された貫通孔3と梁補強金具10との溶接部Wにおいては、梁補強金具10の外周部12を貫通孔3の内縁部3aまで溶け込み溶接することによって強固に固定されている。また、梁補強金具10の外周部12をフランジ部13の無い方の面側に向かって徐々に縮径する形状としているため、梁補強金具10の外周部12を貫通孔3へ嵌入させたとき、外周部12は貫通孔3の内縁部3aに対して傾斜した状態となる結果、外周部12が溶接開先として機能するため、溶接性が向上し、溶接不良の発生を回避することができる。
【0034】(第4実施形態)図7は本発明の第4実施形態である梁補強金具を示す正面図であり、図8は図7におけるY−Y線断面図であり、図9は図7に示す梁補強金具の使用状態を示す側断面図である。
【0035】図7,図8に示すように、梁補強金具20においては、その外周部12の軸方向の片面側にフランジ部13を設けるとともに、外周部12を軸方向の他面側に向かって徐々に縮径するテーパ形状としている。また、外周部12の120度おきの3カ所に、梁2の貫通孔3の内縁部3aに直接当接する位置決め突起部11を均等配置している。
【0036】このような位置決め突起部11を設けることによって、梁2の貫通孔3の内縁部3aと梁補強金具20の外周部12との間に形状的な誤差がある場合でも、容易かつ正確に中心位置合わせを行なうことができ、これによって取り付け精度を向上させ品質向上を図るとともに作業時間も短縮することができる。
【0037】また、外周部12は、フランジ部13のない方の面側に向かって徐々に縮径する形状としているため、図9に示すように、梁補強金具20の外周部12を貫通孔3へ嵌入させたとき、外周部12は貫通孔3の内縁部3aに対して傾斜した状態となる結果、外周部12が溶接開先として機能するため、溶接性が向上し、溶接不良の発生を回避することができる。
【0038】さらに、梁補強金具20においては、外周部12の最小外径部12aからフランジ部13の外周までの長さCを外周部12の最小外径d3の半分以下(より好ましくは1/4以下)とするとともに、フランジ部13の軸方向の長さFを梁補強金具20の軸方向の長さAの半分以下としている。また、梁補強金具20の内径d2を、梁2の梁成Hの0.8倍以下としている。このような構成を有する梁補強金具20を、図9で示したように、梁2の貫通孔3に嵌入させ、外周部12と貫通孔3の内縁部3aとを溶接接合すると優れた補強作用を発揮し、貫通孔3が形成されていない無孔梁と同等の強度が得られる。
【0039】ここで、図10を参照して、前述した図4などで示した梁補強金具10を用いて構築した梁貫通孔補強構造について説明する。図10に示すように、垂直な1本の柱14に対して水平な4本の梁2が4方向から90度間隔で接合された柱梁接合構造が形成され、これらの梁2のうちの互いに直線をなすように配置された2本の梁2に形成された貫通孔3に、梁補強金具10が図6で示した状態で溶接接合されている。
【0040】図10に示す梁貫通孔補強構造においては、柱14とそれぞれの梁2との接合部16から梁補強金具10の軸心10cまでの距離17を梁2の梁成Hの2倍以下としている。このように、梁補強金具10を用いて補強することにより、貫通孔3を柱14に接近した位置に配置することができるようになるため、配管、配線の集約化を図ることが可能となって建築物の設計上好都合であり、建築構造物を構築する際の各種配管、配線類の施工性が大幅に向上する。
【0041】一般に、梁3と柱14との接合部16から梁成Hの2倍の距離だけ離れた位置までの領域を塑性化領域15といい、通常は貫通孔3の形成を回避する領域であったが、梁補強金具10を貫通孔3の周縁部に溶接接合することによって梁2の強度低下が抑制され、無孔梁と同等の強度が得られるため、このような塑性化領域15にも貫通孔3を形成することが可能となった。
【0042】前述のような構成を有する梁補強金具10が優れた梁補強作用を発揮する理由については、一部不明な部分もあるが、梁補強金具10の形状、各部の寸法比、体積比などを前述したように設定すれば、この梁補強金具10を梁2の貫通孔3に溶接接合することによって梁2のウェブ部2wの面外剛性が高まり、梁2に外力が加わったときのウェブ部2wの面外変形が防止されるためではないかと推測される。
【0043】また、梁補強金具10の軸方向の長さAを、半径方向の肉厚Bの10.0倍以下にすることにより、さらに材料の無駄を省いて梁2を軽量化すると共に、配管等の設置の自由度を高めることも可能である。
【0044】なお、図10においては梁補強金具10を用いて形成した梁貫通孔補強構造を示しているが、前述したその他の梁補強金具1,7,20を用いても同様の梁貫通孔補強構造を形成することが可能であり、いずれの場合においても梁補強金具10を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
【0045】
【発明の効果】本発明によって以下の効果を奏することができる。
【0046】(1)梁補強金具の形状をリング状とし、その軸方向の長さを半径方向の肉厚の0.5倍〜10.0倍(より好ましくは0.5倍〜5.0倍)とすることにより、大きさの異なる貫通孔に対しても材料の無駄を省きつつ必要な強度まで補強することができ、貫通孔に対して配管を斜めから挿通しても梁補強金具に当接することがなくなり配管等の取り付けの自由度を高めることができる。
【0047】(2)梁補強金具の体積を、梁に形成された貫通孔の内部に形成された空間部の体積の1.0倍〜3.0倍にすることにより、大きさが異なる貫通孔に対しても必要な強度で補強が行われ、また、重量が大きくなり過ぎることを防止できる。
【0048】(3)貫通孔より外径が大きいフランジ部を外周部の軸方向の片面側に形成することにより、軸方向の位置決めを正確かつ迅速に行うことができるようになる。
【0049】(4)外周部を軸方向の他面側に向かって徐々に縮径させることにより、梁補強金具を貫通孔に嵌入させる作業を容易化して作業時間を短縮することができる。
【0050】(5)外周部の最小外径部からフランジ部外周までの長さを、外周部の最小外径の半分以下とし、フランジ部の軸方向の長さを、当該梁補強金具の軸方向の長さの半分以下とすることにより、梁の貫通孔に溶接接合したとき優れた補強作用を発揮し、無孔梁と同等の強度が得られるので、柱梁接合部に近い塑性化領域における貫通孔の設置が可能となる。
【0051】(6)梁補強金具の内径を梁成の0.8倍以下とすることにより、梁の強度低下を招くことなく、梁の貫通孔のサイズを梁成の0.8倍までサイズアップすることが可能となるため、複数の貫通孔を設ける必要がなくなり、工数低減を図ることができる。
【0052】(7)梁の貫通孔の内縁部に直接当接する3以上の位置決め突起部を外周部に形成することにより、貫通孔と梁補強金具の形状の誤差を吸収して中心位置を合わせることができるため、取利付け精度が高まり品質が向上するとともに作業時間を短縮することができる。
【0053】(8)柱梁接合構造を構成する梁の貫通孔に前記(1)〜(7)のいずれかの梁補強金具を溶接接合して形成した梁貫通孔補強構造において、柱と梁との接合部から梁補強金具の軸心までの距離を梁成の2倍以下とすることにより、柱に近い位置に貫通孔を配置可能となるため、配管、配線の集約化を図ることができ、建築物の設計上好都合であり、配線・配管の施工性も大幅に向上する。
【出願人】 【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
【住所又は居所】東京都港区芝浦一丁目2番1号
【出願日】 平成14年12月3日(2002.12.3)
【代理人】 【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
【公開番号】 特開2003−232105(P2003−232105A)
【公開日】 平成15年8月22日(2003.8.22)
【出願番号】 特願2002−351706(P2002−351706)