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【発明の名称】 仮締切り工法
【発明者】 【氏名】山内一宏
【住所又は居所】大阪府大阪市西淀川区中島2丁目3番87号 ヒロセ株式会社内

【要約】 【課題】硬質地盤に鋼矢板を打設するにあたり、経済的でかつ工期が短い仮締切り工法を提供することを目的とする。

【解決手段】目的構造物の外周部1に仮設する仮締切り工法において、複数の親杭2を所定の間隔をおいて前記外周部1に打設し、打設した前記親杭2の外周に腹起し材31を架渡し、さらに外側に鋼矢板4を打設し、該鋼矢板4を前記腹起し材31に固設したことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】目的構造物の外周部に仮設する仮締切り工法において、複数の親杭を所定の間隔をおいて前記外周部に打設し、打設した前記親杭の外周に腹起し材を架渡し、さらに外側に鋼矢板を打設し、該鋼矢板を前記腹起し材に固設したことを特徴とする、仮締切り工法。
【請求項2】請求項1に記載する仮締切り工法において、前記鋼矢板の前面を築堤して釜場を構築し、該釜場に浸透した貯水を排水することを特徴とする、仮締切り工法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、硬質地盤又は岩盤に構築する仮締切り工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から水中または水際に構築物を築造する場合、一時的に工事に必要な部分から完全に水を排除してドライワークとし、工事を行うことが多い。この方法として、仮締切り工法が知られている。また、陸上に築造される構造物にあっても、地下水位以下の掘削を伴う場合の土留め工では水を締切る必要があり、この場合にも使用される。このように仮締切り工には、外部より主として水圧、土圧等の圧力が働くことになる。そのため、仮締切り工にはそれらの圧力に耐え得る十分な強度を備え持つと同時に、本工事内をドライな状態に保つための止水機能も併せ持つことが要求される。仮締切り工法は、一般的に鋼矢板bを地盤に打込んで連続した壁体を築造して締切る工法であるが、現場によっては鋼矢板bを打設する地盤が硬質地盤または岩盤(以下、硬質地盤という。)であることがある。この場合、従来ではたとえばあらかじめケーシングcを用いてダウンザホールハンマ工法等により所定の硬質地盤を先行して削孔した後、鋼矢板bを打設し硬質地盤に支持していた。而して、地盤からの受働抵抗により自立する鋼矢板bは外側から受ける水圧等を鋼矢板bの剛性により根入れ部に伝播し、また十分な深度を有することで鋼矢板bの下周りからの浸水を抑える。このため、従来の硬質地盤への仮締切り工法においては、鋼矢板bの全打設箇所にあらかじめ削孔を行う必要があった。しかしながら、仮締切り工はあくまで仮設工事として使用されることが多く、一般的に本工事に比べ安全率を低く設定するなどして、施工費を削減する動向にある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記した従来の硬質地盤への仮締切り工法にあっては、次のような問題点がある。
<イ>硬質地盤に鋼矢板を打設するにあたり、先行してダウンザホールハンマ工法等による硬質地盤への削孔が必要になる。このため、鋼矢板の全打設箇所において削孔が必要となり、施工費用や工期がかかり不経済である。
<ロ>水圧等の外部から受けた力を地盤へ伝播して抵抗する作用は鋼矢板のみで行っている。
そのため、現場の状況変更等の理由から設計変更に伴う各種施工の変更には、主部材である鋼矢板の種類変更および鋼矢板の打設方法の変更と施工全体に及ぶため非常に影響が大きい。
【0004】
【発明の目的】本発明は上記したような従来の問題を解決するためになされたもので、鋼矢板の硬質地盤への打設にあたり、あらかじめ削孔する箇所を極力少なくし、工期短縮および施工費を削減することができる仮締切り工法を提供することを目的とする。このほか、当初の予定から設計の変更を余儀なくされた場合でも、部材変更および工期への影響を最小限に抑えると共に、経済的に変更ができる仮締切り工法を提供することを目的としている。本発明はこれらの目的の少なくとも一つを達成するものである【0005】
【課題を解決するための手段】上記のような目的を達成するために、本発明の仮締切り工法は、目的構造物の外周部に仮設する仮締切り工法において、複数の親杭を所定の間隔をおいて前記外周部に打設し、打設した前記親杭の外周に腹起し材を架渡し、さらに外側に鋼矢板を打設し、該鋼矢板を前記腹起し材に固設する。
【0006】また、本発明の仮締切り工法は、前記に記載する仮締切り工法において、前記鋼矢板の前面を築堤して釜場を構築し、該釜場に浸透した貯水を排水することを特徴としている。
【0007】
【発明の実施の形態】以下図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0008】<イ>親杭親杭1は地盤に打設されて自立し、親杭1に略並行に立設する鋼矢板4が受ける水圧等を地盤に伝播する部材である。このため、地盤への自立は充分でなければならず、地質および地盤への打込み深度を十分に考慮の上打設し、土砂の受働土圧により抵抗して、転倒、滑動に対して安全を図る。そのため、たとえば表層61の下部に硬質地盤層62が堆積する地盤であれば硬質地盤層62まで打設して支持する。また親杭脚部の固定はコンクリート等を打設して根固めを行ってもよく、十分に支持が得られる地盤であれば必ずしも根固めを行う必要はない。親杭1の打設方法は、ダウンザホールハンマ工法単独であっても、また他の方法との併用であってもよく、特に制約は受けない。
【0009】親杭1は、目的構造物の外周に所定の間隔をおいて打設され、この間隔は設計によって決定する。親杭1には、たとえばH鋼杭等を使用することができる。この場合、材質・形状はJIS規格に規定されており、幅200〜400mmのもの等を使用することができる。H鋼杭は方向によって断面性能が異なるため、水平力の作用する方向を考慮して設置する。親杭1には係留材32を仮締切り工の外側へ向けて張り出すことができる。係留材32は、親杭2に架渡す腹起し材31を載置して固定する部材である。この係留材32は、架渡す腹起し材31の段数に応じて取り付ける。
【0010】<ロ>腹起し材腹起し材31は、水圧等を鋼矢板4が受け、地盤へ親杭2が伝播する伝達経路の間に介在する部材である。腹起し材31は、所定の間隔に立設する複数の親杭2の外側に略直交して配置する。これにより、鋼矢板4が受ける面圧を腹起し材31を介して親杭2に分散することで、鋼矢板4の水平変位を小さくすると共に、鋼矢板4のたわみも防止することができる。腹起し材31の固定は、親杭2から張り出す係留材32の上に載置して固定する。また、さらに外側に打設する鋼矢板4を腹起し材31に固定して一体とする。この固定方法は、溶接等によって行っても良い。腹起し材31には、たとえばH形鋼の鋼材を使用することができる。腹起し材31を親杭2に対して一段で架渡す場合には、鋼矢板4の頭部に近い箇所に設ける。また、腹起し材31は必要に応じて数段に設けてもよい。
【0011】<ハ>鋼矢板鋼矢板4は、目的構造物の周囲に連続して立設し、外部より働く水圧等の圧力を直接受ける構造材で、その圧力に耐え得る十分な強度を有すると同時に、本工事内をドライな状態に保持する止水機能を有した構造とする。また、場合によって鋼矢板4には静水圧以外に、流水圧、波圧などの動的な外力を受けることもあり、これらの影響についても十分考慮した構造でなければならない。なお、鋼矢板4は、必ずしも目的構造物の外周全体を囲繞する必要はなく、その一部に岸壁、護岸等を利用しても良い。鋼矢板4には、U形、直線形、鋼管形等の形状があるが使用に応じて選択し、任意の断面性能を有する材料を使用することができる。鋼矢板4の支持は、上部を腹起し材31、下部を地盤により行う。鋼矢板4の地盤への支持により、外部から働く水圧および土圧によって鋼矢板4が転倒したり滑動するのを防止し、かつ止水できればよく、特に地盤に力を伝播しなくてもよい。そのため、たとえば振動打込み機で打設可能な深度、つまり打設深度が表層6のみであってもよく、硬質地盤層62まで打込む必要はない。また、鋼矢板4の相互間においても止水構造を備える必要がある。このため、たとえば鋼矢板4継手の係合部分の遊隙内には、鋼矢板4の膨潤止水材や止水ゴム等の弾性材を充填して止水することもできる。
【0012】<ニ>釜場釜場5は、掘削した井筒内の底部である鋼矢板4の前面に築堤し、その間に溝を掘削して構築する(図1参照)。釜場5は、鋼矢板4の近傍に構築し、これは特に浸透流動、流速が大であり、また浸透水を掘削内部に流入するのを未然に防止するためである。これは、鋼矢板4に略並行に構築し、かならずしも全周に構築する必要はない。また、釜場5は木矢板壁などで保護してもよい。釜場5から通じる集水場所を別途、掘削底面から深い場所に構築してもよい。これは、浸透してきた水を釜場5を介して集水場所へ自然流入で導き、そこから水中ポンプあるいはヒューガルポンプなどにより外部へ排水するためである。排出に使用するポンプとしては、集水場所の大きさと地盤の透水によっても異なるが、たとえば一般的に持ち運びの容易な吐水出口径2インチの水中ポンプを使用してもよい。
【0013】<ホ>その他一般に鋼矢板4の打ち込みに際し、鋼矢板4を正しく計画線上に打ち込むためと、施工時の安定性をはかるために、導材と導杭からなる導枠を設けてこれを鋼管ケーシング打設時のガイドとすることができる(図示せず)。導杭は親杭2に対して略並行に打設し、導材は導杭に架渡して構築する。打込み始めには楔等を設けて鋼矢板4をさらに固定することもできる。なお、この導枠は、打込みの終わったところから順次取り外し、繰り返し使用してもよい。
【0014】この他、仮締切り工の内部の掘削と共に掘削内部の対峙する親杭2に切ばりを仮設して、周囲からの水圧を支持することもできる(図示せず)。また、仮締切り工の隅部には火打ち材を設けてもよく、切ばりが長い場合には中間杭を設けて、切ばりを固定するともに切ばりの座屈を防止することもできる。
【0015】
【実施例】以下図面を参照しながら、本発明の仮締切り工法の実施例について説明する。なお、この実施例は水中での仮締切り工法について説明するが、土留めによる仮締切り工法やまた本工事として利用することもできる。
【0016】<イ>親杭の打設準備(図1参照)
水上もしくは水際線近くで鋼矢板4を打ち込むのに際し、陸打ちか船打ちかまたは足場打ち等を決定して、くい打ち機および各種作業船の手配を行う。次に、河川内に導杭を打設する(図示せず)。導杭の貫入深度は、振動打込み機を用いて貫入できる深度までで良い。打設した導杭に導材を架渡し、仮固定して導枠を設置する。
【0017】<ロ>親杭の打設前記工程で仮設した導枠の間隙に鋼管ケーシングを打設する。鋼管ケーシングの打設は、地盤の硬度によって打込みの工法を使い分けて打設しても良い。たとえば、地盤の断層が軟弱地盤の表層61とその下方に堆積する硬質地盤層62とからなる場合、表層61部分への打設は振動打込み機によって行い、硬質地盤層62に対してはダウンザホールハンマ工法等で打設してもよい。このとき鋼管ケーシングの打込み、削孔に伴い掘削土の細粒分がベントナイト泥水と縣濁して孔底に発生するスライムを除去する。孔底の深度を確認した後、プランジャー等を使用して生コンを打設する。鋼管ケーシング引き抜き後、親杭2をクレーン等によって運搬して親杭2を建て込む。なお、親杭2の地盤への支持構造は現場や地盤等の諸条件に応じて、かならずしも根固めをする必要はない。
【0018】<ハ>腹起し材の固定所定の位置に建て込んだ親杭2から係留材32を張り出す。係留材32は親杭2の運搬時や建て込み時に支障がなければ、先に取り付けてもよい。係留材32は打設する親杭2の外側側面に取り付ける。腹起し材31を係留材32の上部に載置し、係留材32に固定する。
【0019】<ニ>鋼矢板の打設親杭2側面の外側に腹起し材31を架渡した後、地盤に鋼矢板4を順次打設する(図2参照)。この打設には、たとえば振動打込み機等を用いて打設することができ、打設深度は鋼矢板4が転倒、滑動しなければよく、たとえば表層61部分までの深度であってもよい。また、仮締切り工には必要に応じて内部に、火打ち材、切ばりを設けても良い。鋼矢板4の打込み後、該鋼矢板4継手の係合部分の遊隙内を充填して止水を行う。鋼矢板4の上部は、腹起し材31に固定する。
【0020】<ホ>井筒内の掘削目的構造物の外周部1に仮設した仮締切り工の井筒内部を適当な方法で排水し、必要に応じて切ばりを仮設する。切ばりを仮設する場合には、あらかじめ親杭2の内側面にブラケットを間隔をおいて配置しておく。そして前記排水によって順次水面が下降するが、この下降により水面上に出現する対向したブラケットに、夫々切ばりを架設する。また、必要に応じて火打ち材、中間杭を設けても良い。井筒内部を全部排水した後、掘削底部の鋼矢板4前面には必要に応じて釜場5を築堤する(図1参照)。これは、鋼矢板4の下部から浸入する恐れのある浸透水の流入を留めるためである。而して、仮締切り工内部をドライワークに保ち、目的構造物の構築が行われる。
【0021】
【発明の効果】本発明の仮締切り工法は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<イ>本発明の構造は、水圧等は親杭で受け、止水は鋼矢板で行う。このため、硬質地盤への削孔箇所は親杭の打設箇所のみで良いため、施工費の軽減および工期の短縮に繋がり非常に経済的である。さらに、水圧等に対する抵抗を主に親杭にたよる工法であるため、鋼矢板に対しては水圧等を地盤へ伝播する剛性、および地盤の変形による剛性等を考慮する必要がなく、鋼矢板の断面性能を従来より低く設定することができ、経済的である。
<ロ>また、水圧等の水平力を受ける働きと支持地盤に力を伝達する働きは、夫々異なる部材により構成されている。この為、設計変更を余儀なくされる場合でも全体に及ぶことなく一部の変更のみで済むため損失が少ない。
【出願人】 【識別番号】000112093
【氏名又は名称】ヒロセ株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市西淀川区中島2丁目3番87号
【出願日】 平成14年1月11日(2002.1.11)
【代理人】 【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生 (外2名)
【公開番号】 特開2003−206539(P2003−206539A)
【公開日】 平成15年7月25日(2003.7.25)
【出願番号】 特願2002−5230(P2002−5230)