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【発明の名称】 対地熱交換設備構築用の土木建設杭、及び、その施工方法
【発明者】 【氏名】内川 靖夫
【住所又は居所】大阪府枚方市中宮大池1丁目1番1号 株式会社クボタ枚方製造所内

【要約】 【課題】土木建設用杭を利用した対地熱交換設備の構築を能率良く安価に行なえるようにする。

【解決手段】熱媒Lを通過させる伝熱管2を杭1の外周面において杭長手方向に延設した状態で杭周方向に複数並べて配置し、杭1の外周面との間に伝熱管2を挟んだ状態で杭1に巻き付ける状態に取り付ける帯具3を杭長手方向に分散させて複数配置し、これら帯具3による締結により伝熱管2を杭1の外周面に取り付けておく。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 熱媒を通過させる伝熱管を杭の外周面において杭長手方向に延設した状態で杭周方向に複数並べて配置し、前記杭の外周面との間に前記伝熱管を挟んだ状態で前記杭に巻き付ける状態に取り付ける帯具を杭長手方向に分散させて複数配置し、これら帯具による締結により前記伝熱管を前記杭の外周面に取り付けてある対地熱交換設備構築用の土木建設杭。
【請求項2】 請求項1に記載した土木建設杭の施工方法であって、前記帯具により外周面に前記伝熱管を取り付けた前記杭を地上から地中に進行させるのに伴い地表部における杭周りの隙間に充填材を投入して、その充填材を地中における杭周りの隙間に充填する土木建設杭の施工方法。
【請求項3】 請求項1に記載した土木建設杭の施工方法であって、杭長手方向に延びる注入管を杭周方向で前記伝熱管どうしの間に配置して前記帯具により前記伝熱管とともに前記杭の外周面に取り付けておき、この杭を地上から地中に進行させて地中に埋設した後、地上から前記注入管を通じ充填材を地中に注入して、その充填材を地中における杭周りの隙間に充填する土木建設杭の施工方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は対地熱交換設備構築用の土木建設杭、及び、その施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、基礎杭や土留杭などの土木建設杭を利用して対地熱交換設備を構築するのに、杭を地中に埋設した後、伝熱管を地上から埋設杭の孔内に挿入し、その後、その孔内に充填材を充填する工法があった。
【0003】なお、この伝熱管は対地熱交換器を構成するものであり、設備の構築後、この伝熱管に熱媒を通過させることで熱媒を対地熱交換させて、地中からの採熱あるいは地中への放熱を行なう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この従来工法では、設備の構築現場において杭の埋設とそれに続く埋設杭の孔内への伝熱管の挿入との2工程を要するため、また、埋設杭の孔内へ充填する充填材が大量でその充填に時間を要するため、施工に長時間を要するとともに施工費が嵩む問題があった。
【0005】また、設備の構築現場において埋設後の杭の孔内へ伝熱管を地上から挿入するのでは、杭に対して伝熱管を対地熱交換に適した状態に精度良く装備することが難しく、このことで対地熱交換性能が低下する問題もあった。
【0006】この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、上記の如き問題を効果的に解消できる合理的な対地熱交換設備構築用の土木建設杭及びその施工方法を提供する点にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】〔1〕請求項1に係る発明は対地熱交換設備構築用の土木建設杭に係り、その特徴は、熱媒を通過させる伝熱管を杭の外周面において杭長手方向に延設した状態で杭周方向に複数並べて配置し、前記杭の外周面との間に前記伝熱管を挟んだ状態で前記杭に巻き付ける状態に取り付ける帯具を杭長手方向に分散させて複数配置し、これら帯具による締結により前記伝熱管を前記杭の外周面に取り付けてある点にある。
【0008】つまり、この構成によれば、工場等で杭の外周面に伝熱管を予め取り付けておくことができるから、その杭(伝熱管を予め取り付けた杭)を設備の構築現場において埋設することにより、その埋設と同時に伝熱管を地中に設置することができる。
【0009】また、杭の外周面に取り付けた伝熱管の対地伝熱性を高く確保するために地中における杭周りの隙間に充填材を充填するにしても、その隙間に充填する充填材の量は杭の孔内に充填材を充填する場合に比べ少量ですみ、これらのことから、先述の従来工法に比べ、設備構築現場での必要施工時間を効果的に短縮できるとともに施工費も効果的に低減することができる。
【0010】そしてまた、伝熱管を工場等で杭の外周面に予め取り付けるようにすることで、設備の構築現場において埋設杭の孔内に伝熱管を挿入するに比べ、杭に対して伝熱管を対地熱交換に適した状態により精度良く容易に装備することができ、これにより、対地熱交換性能についても先述の従来工法に比べ、高い性能をより確実に得ることができる。
【0011】ちなみに、杭に対して伝熱管を予め取り付けておくのに、伝熱管を杭の孔内に予め取り付けておくことも考えられるが、径が限られた長尺の杭の孔内に伝熱管を予め取り付けることは技術的に難しく、この点、帯具による締結により伝熱管を杭の外周面に取り付ける上記構造であれば、工場等で杭に対し伝熱管を予め取り付けておく際の取り付け作業も容易にすることができ、また、製作コストも安価にすることができる。
【0012】しかも、伝熱管を杭の外周面に取り付けた構造であるから、杭の埋設において複数本の杭を継ぎ足す場合や長すぎる杭の地上余り部分を切除する場合に、それに応じた処置を杭の埋設施工現場において伝熱管に対し施し易い(後述の如く伝熱管とともに注入管を杭の外周面に取り付けて置く場合では、その注入管に対する処置も施し易い)利点がある。
【0013】なお、請求項1に係る発明の実施においては、長尺の実質杭部分よりも大径の先端部を有する杭を用いて、その大径先端部と実質杭部分との径の差の範囲内に伝熱管を収める形態で伝熱管をその杭における実質杭部分の外周面に取り付ける構造にし、これにより、杭外周面の伝熱管を支障とすることなく、また、杭外周面の伝熱管の損傷を防止した状態で円滑に杭の打設施工を行なえるようにするのがよい。
【0014】〔2〕請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明による土木建設杭の施工方法に係り、その特徴は、前記帯具により外周面に前記伝熱管を取り付けた前記杭を地上から地中に進行させるのに伴い地表部における杭周りの隙間に充填材を投入して、その充填材を地中における杭周りの隙間に充填する点にある。
【0015】つまり、この方法によれば、杭の地中への進行に伴い地表部における杭周りの隙間に充填材を投入するから、地中において杭長手方向に分散する帯具どうしの間に生じる杭周りの隙間(すなわち、伝熱管の露呈箇所)に対し充填材を確実に充填することができて、空洞部の残存が少ない充填層を地中における杭周りに形成することができ、これにより、杭の外周面に取り付けた伝熱管の対地伝熱性を高く確保して対地熱交換性能を高めることができる。
【0016】〔3〕請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明による土木建設杭の施工方法に係り、その特徴は、杭長手方向に延びる注入管を杭周方向で前記伝熱管どうしの間に配置して前記帯具により前記伝熱管とともに前記杭の外周面に取り付けておき、この杭を地上から地中に進行させて地中に埋設した後、地上から前記注入管を通じ充填材を地中に注入して、その充填材を地中における杭周りの隙間に充填する点にある。
【0017】つまり、この方法によれば、杭の埋設の後、杭の外周面に取り付けてある杭長手方向に延びる注入管を通じて充填材を地中に注入するから、充填材を地中における杭周りの隙間に対し、その最深部から徐々に充填層上面を上昇させて行く形態で充填することができ、そのことで杭周りの隙間における空気を確実に地上へ追い出すようにして空洞部の残存が少ない充填層を地中における杭周りに形成することができ、この点で、杭の外周面に取り付けた伝熱管の対地伝熱性を高く確保して対地熱交換性能を高めることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】〔第1実施形態〕図1は基礎杭や土留杭などに用いながら対地熱交換設備を構築する対地熱交換設備構築用の土木建設杭を示し、この杭はPC杭などの既製の土木建設杭1を本体にして、その外周面に伝熱管2を取り付けたものである。
【0019】伝熱管2は、その直管部を杭1の外周面において杭長手方向に延設した状態で杭周方向に適当間隔で多数並べて配置し、そして、これら直管部を杭1の下端部及び上端部においてU字管により直列に接続したコイル構造にしてある。
【0020】3は杭1の外周面との間に伝熱管2を挟んだ状態で杭1に巻き付ける状態に取り付ける帯具であり、この帯具3を杭長手方向に分散させて複数配置し、これら帯具3による締結により伝熱管2を杭1の外周面に取り付けてある。
【0021】なお、2a,2bは伝熱管2の熱媒入口部及び熱媒出口部であり、これら熱媒入口部及び熱媒出口部2a,2bは杭1の埋設後における配管接続のために杭1の上端部に配置してある。
【0022】杭1の外周面に対する伝熱管2の取り付けは工場製作により行ない、杭の埋設施工現場(すなわち、対地熱交換設備の構築現場)では、伝熱管2を予め取り付けた状態で工場から出荷された杭1を適当な打設工法(例えば、回転打設)により図2に示す如く地中Gに埋設することで、杭1の埋設と同時に伝熱管2を地中Gに設置する。
【0023】また、伝熱管2を外周面に予め取り付けた杭1を埋設するにあたっては、同図2に示す如く、杭1を地上から地中Gに進行させるのに並行して地表部における杭1の周りの隙間に固化性の充填材S(例えば、セメントミルクと砂との混合物)を漏斗状の投入具4などを用いて連続的に投入することにより、地中Gにおける杭1の周りの隙間(特に、杭長手方向に分散する帯具3どうしの間に生じる杭1周りの隙間)に充填材Sを充填して、伝熱管2の対地伝熱性を高めるための固形充填層を埋設杭1の周りに形成する。
【0024】その後、図3に示す如く、埋設した杭1の上端部における伝熱管2の熱媒入口部2a及び熱媒出口部2bに対し熱媒供給管4a及び熱媒排出管4bを接続し、これにより、熱媒供給管4aからの供給熱媒Lを地中Gの伝熱管2に通過させることで熱媒Lを対地熱交換させて地中Gから採熱する、あるいは、地中Gへ放熱する対地熱交換設備を構築する。
【0025】なお、1aは充填材Sの投入で地中Gに閉じ込められる空気を杭1の孔1bを通じて地上に排出するための空気抜き孔である。
【0026】また、本第1実施形態及び後述の第2実施形態において、杭1の先端部1cは長尺の実質杭部分よりも大径にして、その大径先端部1cと実質杭部分との径の差の範囲内に伝熱管2を収める形態で伝熱管2をその杭1における実質杭部分の外周面に取り付ける構造にし、これにより、杭外周面の伝熱管2を支障とすることなく、また、杭外周面の伝熱管2の損傷を防止した状態で円滑に杭1の打設施工を行なえるようにしてある。
【0027】〔第2実施形態〕図4は上述の第1実施形態で示した対地熱交換設備構築用の土木建設杭に対し改良を施した杭を示し、この杭では、杭1の上端から下端にわたって杭長手方向に延びる注入管5を伝熱管2どうしの間に配置する形態で杭周方向に分散させて複数配置し、これら注入管5を帯具3により伝熱管2とともに杭1の外周面に取り付けてある。
【0028】第1実施形態と同様、杭1の外周面に対する伝熱管2及び注入管5の取り付けは工場製作により行ない、杭の埋設施工現場(対地熱交換設備の構築現場)では、伝熱管2及び注入管5を予め取り付けた状態で工場から出荷された杭1を適当な打設工法により図5に示す如く地中Gに埋設することで、杭1の埋設と同時に伝熱管2及び注入管5を地中Gに設置する。
【0029】そして、伝熱管2及び注入管5を外周面に予め取り付けた杭1を地上から地中Gに進行させて埋設した後、同図5に示す如く、地上から注入管5を通じ固化性の充填材Sを地中Gに注入することにより、その充填材Sを地中Gにおける杭1の周りの隙間に対し、その最深部から徐々に充填層上面を上昇させて行く形態(すなわち、そのことで杭1周りの隙間における空気を地上へ追い出す形態)で充填して、伝熱管2の対地伝熱性を高めるための固形充填層を埋設杭1の周りに形成する。
【0030】その後、第1実施形態と同様に、埋設した杭1の上端部における伝熱管2の熱媒入口部2a及び熱媒出口部2bに対し熱媒供給管4a及び熱媒排出管4bを接続することで、熱媒供給管4aからの供給熱媒Lを対地熱交換させて地中Gから採熱する、あるいは、地中Gへ放熱する対地熱交換設備を構築する。
【0031】〔別実施形態〕次に別実施形態を列記する。
【0032】外周面に伝熱管2を取り付ける杭1は、PC杭に限られるものではなく、他に鋼製の杭を初め、どのような材質の杭であってもよく、その断面形状も円形に限らず矩形や楕円形であってもよい。
【0033】前述の実施形態では先端が尖頭形状の杭1を示したが、杭1の先端形状も尖頭形状のほか、杭1の孔1bが先端で開口する大径円筒形状など、どのような形状であってもよい。
【0034】また、その杭1の土木建設杭としての用途も、種々の建築物の基礎や土留めを初め、土木建設用途であれば、どのような用途であってもよい。
【0035】杭1の外周面において杭長手方向に延設した状態で杭周方向に並べて配置した複数の伝熱管2は、前述の実施形態の如く、それらを直列接続した状態で熱媒供給管4a及び熱媒排出管4bに対し直列接続する形態、あるいは、熱媒供給管4a及び熱媒排出管4bに対し並列接続する形態のいずれを採用してもよい。
【0036】また、伝熱管2は金属管、樹脂管、コンクリート管など、どのような材質の管であってもよい。
【0037】杭1の外周面との間に伝熱管2を挟んだ状態で杭1に巻き付ける状態に取り付けて伝熱管2を杭1に固定する帯具3には、種々の形状・構造のものを採用できる。
【0038】地中Gにおける杭1周りの隙間に充填する充填材Sには、セメントミルクに限らず、杭1の外周面に取り付けた伝熱管2の対地伝熱性を高め得るものであれば、種々の材質のものを採用できる。
【0039】また、請求項1に係る発明の土木建設杭を埋設施工するにあたり、充填材Sの注入充填方法は請求項2又は3に係る発明で採用する注入充填方法に限らず、種々の注入充填方法を採用でき、例えば、先に充填材Sを注入しておいた縦坑に杭1を挿入する形態で埋設施工することによりその充填材Sを地中Gにおける杭1周りの隙間に行き渡らせる方法や、杭1の埋設施工後にその杭1の孔1b及び杭1の先端開口を通じて充填材Sを注入充填する方法を採るなどしてもよい。
【0040】杭長手方向に延びる注入管5を伝熱管2とともに杭1の外周面に取り付けておく場合、その注入管5の取り付け本数は複数本に限られるものではなく、場合によっては1本の注入管5のみを複数本の伝熱管3とともに杭1の外周面に取り付けておくようにしてもよい。
【0041】杭1の外周に取り付けた伝熱管2に通過させる熱媒Lは、ヒートポンプの蒸発器(吸熱器)ないし凝縮器(放熱器)と伝熱管2との間で循環させる形態、あるいは、融雪用や凍結防止用として路面等に設置した放熱管と伝熱管2との間で循環させる形態など、どのような利用形態を採ってもよい。
【0042】杭1の外周に取り付けた伝熱管2において地中Gから採熱する場合、その採取熱の用途は融雪、凍結防止、暖房、物品加熱など、どのような用途であってもよく、また逆に、杭1の外周に取り付けた伝熱管2において地中Gへ放熱する場合、その放熱の目的は冷房排熱の放熱、物品冷却排熱の放熱、機器発生熱の放熱など、どのような目的の放熱であってもよい。
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【住所又は居所】大阪府大阪市浪速区敷津東一丁目2番47号
【出願日】 平成14年1月10日(2002.1.10)
【代理人】 【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
【公開番号】 特開2003−206528(P2003−206528A)
【公開日】 平成15年7月25日(2003.7.25)
【出願番号】 特願2002−3270(P2002−3270)