| 【発明の名称】 |
再帰反射部材及び路面標示体 |
| 【発明者】 |
【氏名】杉元 崇紀 【住所又は居所】神奈川県相模原市南橋本3−8−8 住友スリーエム株式会社内
【氏名】笠井 紀宏 【住所又は居所】神奈川県相模原市南橋本3−8−8 住友スリーエム株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】特殊なガラスビーズを使用することなく、容易に、耐久性のほか雨天時の視認性も特に改善した再帰反射部材を提供すること。
【解決手段】反射性基材と、反射性基材に部分的に埋設された複数個の透明な複合微小球とを備え、複合微小球が、1.9〜2.6の屈折率を有する透明な微小球と、透明微小球より低い屈折率を有する透明材料からなり、ほぼ一定の厚さをもって透明微小球の全体を均一に被覆した保護層とを含んでなるように構成する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 反射性基材と、前記反射性基材に部分的に埋設された複数個の透明な複合微小球と、を備え、前記複合微小球が、1.9〜2.6の屈折率を有する透明な微小球と、前記透明微小球より低い屈折率を有する透明材料からなり、ほぼ一定の厚さをもって前記透明微小球の全体を均一に被覆した保護層と、を含んでなることを特徴とする再帰反射部材。 【請求項2】 前記透明微小球が50〜200μmの平均直径を有することを特徴とする、請求項1に記載の再帰反射部材。 【請求項3】 前記透明材料が1.34〜1.75の屈折率を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の再帰反射部材。 【請求項4】 前記反射性基材が、支持体と、前記支持体と前記複合微小球との間に設けられた反射層と、を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の再帰反射部材。 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の再帰反射部材を備えることを特徴とする路面標示体。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は再帰反射部材に関する。より詳細には、本発明は、雨天等に水で濡れた路面の表示に有用な再帰反射部材に関する。また、本発明は、かかる再帰反射部材を備えた路面標示体に関する。 【0002】 【従来の技術】周知の通り、再帰反射部材は、一般に高い視認性を有していて、道路標識や路面標示体に使用されている。典型的な再帰反射部材は、ガラスの透明微小球(以下「ガラスビーズ」と言う。)からなる反射要素を備え、光源等から発した入射光線と平行な方向に光線を反射させること(すなわち、再帰反射)ができるようになっている。 【0003】上述した再帰反射部材は、一般に、ガラスビーズ露出型とガラスビーズ埋め込み型に大別される。ガラスビーズ露出型再帰反射部材の一例は、特開昭50−81794号公報、実公平6−13229号公報、米国特許第2,440,584号明細書ならびにPCT国際公開第00/23655号パンフレット、同第00/23257号パンフレット及び同01/29587号パンフレットに開示されている。これらの文献に記載された再帰反射部材では、部分的に露出したガラスビーズと反射層の間に透明スペース層が設けられている。 【0004】特に、実公平6−13229号公報には、ガラスビーズのような透明微小球の個々の表面に、透明スペース層(樹脂層)及び反射層を部分的に順次被覆した反射要素が開示されている。また、米国特許第2,440,584号明細書には、1.50〜1.55の屈折率をもった通常のガラスビーズが、それと同じ屈折率の樹脂からなる透明被覆層で(好適にはガラスビーズ直径の20〜40%の厚さをもって)部分的に覆われて、再帰反射性能の角度依存性を改善していることが開示されている。 【0005】典型的なガラスビーズは、高い硬度と低い靭性を有しており、したがって、破壊又は損傷を被り易い。そのために、もしもガラスビーズ露出型再帰反射部材が上記文献に記載のガラスビーズの反射要素を備えて路面標示体に適用されたならば、通常は、路上に散在している小石又は砂等が自動車等の車両を介してガラスビーズに実質的な衝撃を与える。かくして、その路面標示体は耐久性に劣り、視認性を長期にわたって維持し難い。 【0006】また、特開平10−102444号公報には、長期間の視認性を図るため、酸化物の光触媒粒子、シリコーン及び撥水性フッ素樹脂を含む複合材料でガラスビーズを被覆することが開示されている。しかし、上記複合材料は透明性に劣り、約1μm以下の厚さでガラスビーズを被覆しないと、そのガラスビーズ埋め込み型再帰反射部材は効果的な視認性を示さない。また、そのような厚さでは、ガラスビーズへの衝撃が避けられない。したがって、ガラスビーズ埋め込み型再帰反射部材はガラスビーズ露出型に比べ一般に耐久性に優れるけれども、このような再帰反射部材の路面標示体は、実際上耐久性を期待できず、長期間の視認性は困難である。 【0007】さらに、ガラスビーズ露出型再帰反射部材は、通常、雨天時に視認性を低下させる。ガラスビーズが雨水で覆われ、入射光線と平行な方向に光線を効率よく反射させることができないからである。ガラスビーズが、特開昭63−123835号公報に開示されているように比較的高い屈折率を有していると、雨天時におけるガラスビーズ露出型再帰反射部材の視認性の低下を防止できるかもしれない。一般に、ガラスビーズがその周囲の媒質に対して2倍の屈折率を有するときは、顕著な再帰反射が見られることが知られている。例えば、媒質が水(屈折率は約1.3)からなる場合、好ましいガラスビーズは約2.6の屈折率を有するけれども、このようなガラスビーズは非常に特殊である。 【0008】さらに、実公平6−13229号公報の反射要素は、その非対称性・不均一性のため、複雑な工程を経て製造される。また、再帰反射部材を形成するために、この反射要素は、透明微小球の露出面を外部に向けながら、通常は2次元に配設する必要がある。さもなければ、再帰反射部材は透明微小球の露出面をあらゆる方向に配して、効果的な視認性を示すことができない。 【0009】他方、ガラスビーズ埋め込み型再帰反射部材の一例は、特開昭50−81794号公報に開示されているように、ガラスビーズを透明材料で被覆している。一般に、ここで使用される透明材料は約1.5の屈折率を有しており、空気の屈折率(ほぼ1)よりも高くなっている。したがって、かかるガラスビーズ埋め込み型再帰反射部材が天候に関わらず所望の再帰反射又は視認性を示すためには、上述した理由により、通常は2.6〜3の非常に高い屈折率をもった極めて特殊なガラスビーズを必要とする。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、上述したような特殊なガラスビーズを使用することなく、容易に、耐久性のほか雨天時の視認性も特に改善した再帰反射部材を提供することを目的とする。 【0011】また、本発明は、かかる再帰反射部材の優れた特徴を生かすことのできる物品を提供することにある。 【0012】 【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、反射性基材と、前記反射性基材に部分的に埋設された複数個の透明な複合微小球と、を備え、前記複合微小球が、1.9〜2.6の屈折率を有する透明な微小球と、前記透明微小球より低い屈折率を有する透明材料からなり、ほぼ一定の厚さをもって前記透明微小球の全体を均一に被覆した保護層と、を含んでなることを特徴とする再帰反射部材にある。 【0013】本発明は、また、本発明の再帰反射部材を備えた道路標識にある。 【0014】本発明は、さらに、本発明の再帰反射部材を備えた路面標示体にある。 【0015】 【発明の実施の形態】本発明による再帰反射部材は、いろいろな形態で実施することができる。以下、下記の実施形態に限定されるわけではないけれども、本発明をその好適な実施形態について説明する。 【0016】図1は、本発明による再帰反射部材の好ましい1形態を示した断面図である。図示の再帰反射部材10は、反射性基材7と、その反射性基材7に部分的に埋設された複数個の透明な複合微小球3とを有している。ここで使用した反射性基材7は、支持体5と、それによって支持された反射層6とからなっている。また、透明な複合微小球3は、1.9〜2.6の屈折率を有する透明な微小球(コア)1と、その透明微小球1の全体を均一に、かつ調整された膜厚で被覆した保護層2とからなっている。保護層2は、透明微小球1より低い屈折率を有する透明材料からなり、また、その膜厚はほぼ一定であり、したがって、透明微小球1の全体を均一に被覆している。なお、図示の再帰反射部材10の構成は、以下に詳細に説明するように、本発明の範囲内でいろいろに変更することができる。 【0017】本発明の再帰反射部材の主たる構成要素の1つである反射性基材は、その再帰反射部材の使途や適用場所などを考慮して最適な材料を選択して使用することができる。反射性基材は、一般的には、その反射性基材の表面の加工(例えば突起部の形成)や、下地に対する良好な追従性などを考慮して、熱的に塑性変形可能な材料、例えば天然もしくは合成のゴムあるいは樹脂から形成するのが好ましい。適当な基材の材料は、以下に列挙するものに限定されないけれども、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ネオプレン、ポリアクリレート、天然ゴム又はスチレン−ブタジエン共重合体、あるいはそれらの少なくとも1種を含む未加硫ゴムなどである。 【0018】また、本発明で使用する反射性基材は、必要に応じて、熱及び(又は)光によって硬化可能な材料から形成してもよい。このような材料は、基材に対して改良された耐久性を付与することができる。 【0019】反射性基材は、それを使用した再帰反射部材の形態に応じて、任意の形で使用することができる。反射性基材は、通常、シート状の形態で用いられるが、必要なら、平板状、円柱状、角柱状などの形態で使用してもよい。反射性基材の寸法は、したがって、このような形態に応じて任意に変更可能である。 【0020】また、反射性基材の表面は、平坦であってもよく、突起部分を任意のパターンで有していてもよい。例えば、本発明の再帰反射部材を路面標示体などに使用する時には、視認性の向上などのために、突起部分を付設するのが好ましい。 【0021】反射性基材の表面に必要に応じて付設される突起部分は、基材と一体的に設けられていることが好ましい。換言すると、突起部分は、反射性基材の製造もしくは加工の途中で基材と一体的に成形されることが好ましく、しかし、必要に応じて、基材と同一もしくは異なる材料から、独立して形成されていてもよい。後者の場合には、例えば、接着剤等の固着手段を用いて基材の表面に突起部分を取り付けることができる。 【0022】反射性基材の表面に突起部分を設ける際、水の水平面から微小球を露出させてウェット時の再帰反射性を改良するため、いろいろな配置パターンで複数の突起部分を設けることができる。突起部分の適当な配置パターンは、複数のストライプ、複数の円形ブロック、複数の矩形ブロックあるいはそれらの組み合わせなどである。また、本発明の作用効果に悪影響を及ぼさない限り、その他の形状も任意に組み合わせてもよい。 【0023】それぞれの突起部分の大きさは、特に限定されるものではなく、広く変更することができる。また、突起部分の基材の表面からの高さは、通常、約0.5〜2.0mmの範囲であることが好ましい。突起部分の高さが約0.5mmより低いと、その表面に固着した複合微小球の再帰反射効率が著しく低下し、また、その反対に、突起部分の高さが約2.0mmを超えた場合には、基材の材料費がかさむなどの不都合がある。 【0024】本発明の再帰反射部材において、反射性基材は、好ましくは、支持体と、その支持体と複合微小球との間に設けられた反射層とを有するように構成される。しかし、単独で使用しても本発明の作用効果に悪影響がでないのであるならば、反射層のみで反射性基材を構成してもよい。 【0025】支持体は、前記したように、アクリロニトリル−ブタジエン重合体、ネオプレン、ポリアクリレート、天然ゴム、少なくとも1種のスチレン−ブタジエン重合体を含む未加硫ゴムなどから構成するのが好ましい。これらの支持体材料は、適度の可とう性を有し、反射性基材に対して粘弾性を与えることができるからである。この粘弾性によって、例えば本発明の再帰反射部材を路面標示体等として使用する場合、道路から標示体を除く傾向のある内力を生じることなく車両道路交通の力および圧力の吸収ができる。さらに、路面標示体の場合には、自動車又は歩行者等の往来がある場合に、すなわち、標示体の流れ方向に対して垂直な方向に歩行者等が往来する場合に、突起部分が目立たなくなり、突起部分のすき間がなくなった部分だけ視認性がより一層向上するという効果がある。 【0026】複合微小球の固着のための反射層は、好ましくは、樹脂材料と、それに分散せしめられた顔料とからなる。ここで、樹脂材料は、バインダとして機能するものであり、熱可塑性あるいは熱硬化性の高分子バインダからなっている。このようなバインダは、例えば、ビニールベースの熱可塑性樹脂、ポリウレタン樹脂又はエポキシベースの樹脂などである。また、顔料は、好ましくは、白色顔料、例えば酸化チタンである。酸化チタンの粒子は、白色着色剤としての機能の他に、反射層に効率の良い反射の機能を提供する。その結果、自動車のヘッドライトの光が路面標示体に入射するとき、広い視野角でもって再帰反射されて運転手に到達することが可能である。したがって、酸化チタンの粒子は路面標示体に一層高い視認性を提供することができる。なお、ここで使用する顔料は上述の酸化チタンに限定されない。その他の有効な顔料は、真珠光沢顔料、アルミニウム粉又はフレークの如き鏡面反射物、黄鉛顔料などがある。また、必要に応じて、舗道マーキングの着色に用いられるその他の顔料も使用可能である。なお、かかる反射層の詳細に関して、必要ならば、例えば特開平2−38605号公報を参照されたい。 【0027】反射性基材は、上記した支持体及び反射層のほか、必要ならば、再帰反射部材で常用のその他の要素を追加的に有していてもよい。適当な基材構成要素としては、例えば、支持体の背面に設けられた接着層などを挙げることができる。 【0028】本発明の再帰反射部材のもう1つの主たる構成要素であって、反射性基材によって固着され、本発明の再帰反射特性、耐久性等に大きく貢献する複合微小球は、前記したように、透明微小球をコアとして有するとともに、そのコアの表面の全体に、コアより低い屈折率をもった透明材料が保護層として被覆されている。 【0029】コアとしての透明微小球は、本発明の再帰反射部材において高レベルの再帰反射性を発現するためのものであり、各種の透明材料から形成することができる。適当な微小球は、ガラスビーズ、プラスチックビーズ、ガラス−セラミックビーズなどであり、とりわけガラスビーズが有用である。 【0030】透明微小球の屈折率は、通常、1.9〜2.6の範囲であり、特に、2.0〜2.4の範囲にあることが好ましい。透明微小球の屈折率が1.9を下回ると、所望とする再帰反射効率を得ることができない。反対に2.6を上回ると、保護層を薄くせざるを得ず、保護層が有効に機能しなくなる傾向がでてくる。 【0031】また、透明微小球の粒径(直径)は、所望とする作用効果に応じて広く変更することができるというものの、通常、平均して約50〜200μmの範囲であり、特に100〜200μmの範囲にあることが好ましい。透明微小球の粒径が50μmより小さいと、再帰反射効率が著しく低下する。反対に、透明微小球の粒径が200μmより大きいと、例えば本発明の再帰反射部材を路面標示体として使用したとき、走行中の自動車から大きく衝撃を受け、反射性基材の表面から剥離し、脱落し易くなる。 【0032】透明微小球は、ガラスビーズやプラスチックビーズ又はその他のビーズだけから構成されていてもよい。好適な透明微小球は、酸化チタン、チタン酸バリウムなどの添加剤を有して、効果的に屈折率を向上させることができる。 【0033】コアの表面全体を被覆した保護層は、上記したように、透明微小球より低い屈折率を有する透明材料からなる。かかる透明材料の屈折率は、通常、約1.34〜1.75の範囲であるのが好ましい。透明材料の屈折率が1.34を下回ると、保護層をうすくしなければならないといった不都合が発生し、反対に1.75を上回ると、所望の再帰反射効果を得ることができないといった不都合が発生する。 【0034】また、保護層の形成に用いられる透明材料は、上記したような屈折率に加えて、靭性もあわせて有していることが好ましい。 【0035】上記したような屈折率や靭性を満足させ得る透明材料は、いろいろな材料を包含するが、樹脂材料、例えばウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などが好ましい。必要ならば、これらの樹脂材料を混合して使用してもよい。保護層の形成には、とりわけウレタン樹脂が有用である。 【0036】保護層は、通常、上記した透明材料の単独から形成されるが、再帰反射効率の向上などのため、任意の充填材を含むことが好ましい。ここで使用する充填材は、通常、粒子の形で使用され、無機粒子でも、有機物粒子でも、あるいはそれらの粒子の混合物であってもよい。以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、適当な無機粒子は、例えば、コロイダルシリカ、二酸化珪素、酸化アルミニウムなどであり、また、適当な有機物粒子は、例えば、ポリメチルメタクリレートなどである。 【0037】保護層は、通常、透明微小球からなるコアの形成と同時にあるいはその後、上述のような透明材料(必要により、充填材を含有)を常用の薄膜形成法に従ってコアの表面に被覆することによって、有利に形成することができる。その際、保護層の膜厚は、所望とする作用効果などに応じて広い範囲で変更することができる。保護層の膜厚は、通常、透明微小球のサイズによって決まるけれども、上述のように透明微小球の粒径が50〜200μmの範囲である場合、約5〜50μmの範囲であり、好ましくは、約10〜30μmの範囲である。保護層の膜厚が5μmを下回ると、保護層としての機能がなくなるといった不都合が発生し、反対に50μmを上回ると、膜形成に手間がかかるといった不都合が発生する。 【0038】また、コアの透明微小球及び保護層の透明材料がそれぞれ2.26及び1.50の屈折率を有するとき、保護層の膜厚は、実質的に透明微小球の半径の13〜22%であることが好ましい。このような範囲のとき、再帰反射効率の有意な向上を達成できるからである。また、このような条件の場合、水中での再帰反射効率が最も高くなるような保護層の膜厚の最適値は、透明微小球の半径の15%程度である。 【0039】複合微小球は、通常、サイズを揃えて、すなわち、ほぼ同一のサイズのもののみで使用されるが、必要ならば、サイズに変化を持たせて、すなわち、2種類もしくはそれ以上の複合微小球を任意に組み合わせて使用してもよい。さらには、上記したような複合微小球に組み合わせて、再帰反射部材の分野に置いて常用の微小球を追加的に使用してもよい。 【0040】追加的に使用し得る微小球は、特に、水を付着させていないときにも路面標示体等やその他の物品に再帰反射性を提供し、よって、晴天時においても視認性を得ることができるようにすることや、路面標示体等から表面摩擦の問題を解消することを目的として用いられるものであり、好ましくはガラスビーズからなる。この透明微小球の屈折率は、好ましくは、少なくとも1.5以上である。この透明微小球の屈折率が1.5を下回ると、上記したような効果を十分に得ることができない。追加の透明微小球の屈折率は、入手の容易性などから、特に1.5〜2.0の範囲にあることが好ましい。 【0041】また、追加の透明微小球の粒径は、所望とする作用効果に応じて広く変更することができるというものの、通常、平均して約20〜100μmの範囲にあることが好ましい。この透明微小球の粒径が20μmより小さいと、滑り抵抗値が低下する。反対に、透明微小球の粒径が100μmより大きいと、走行中の自動車からの衝撃により、反射性基材の表面から剥離し、脱落し易くなる。 【0042】また、追加の透明微小球は、それが自動車や歩行者等の往来などによって破損するのを回避するため、少なくとも6.5、好ましくは約7〜12のモース硬度を有していることが好ましい。この透明微小球の硬さが上述の下限を下回ると、破損を回避することができないばかりか、路面標示体等の表面に対して滑り抵抗を付与することができなくなる。 【0043】複合微小球は、その効果を十二分に発揮させるため、反射性基材の表面に部分的に埋設して使用される。埋設時の深さは、所期の作用効果が得られるとともに、使用中に基材から容易に脱離することがない限り、特に限定されるものではない。複合微小球の埋設率は、通常、粒径の約40〜60%の範囲であり、好ましくは、約45〜55%の範囲である。 【0044】同様に、複合微小球は、所望とする再帰反射性に応じて、いろいろなパターンで基材表面に埋設することができる。すなわち、複合微小球は、基材の表面に全面的あるいは部分的に密に埋設してもよく、さもなければ、粗く埋設してもよい。複合微小球は、粗くも密にも埋設することができるが、通常、約10〜400g/m2の密度で設けることが好ましい。複合微小球の分布密度が約10g/m2を下回ると、再帰反射効率が低下し、反対に約400g/m2を上回ると、複合微小球どうしの影に原因した再帰反射の阻害が発生する。また、反射性基材がその表面に突起部分を有するような場合には、その突起部分に限って複合微小球を埋設してもよく、さもなければ、隣接して配置された突起部分の間、すなわち、突起部分の谷間の部分に、選択的に埋設してもよい。また、透明微小球は、突起部分の谷間の部分に追加して、突起部分の側面にも設けられていてもよい。 【0045】本発明の再帰反射部材では、その複合微小球を、例えばガラスビーズのような高屈折率な微小球(コア)の周囲に、低屈折率の透明材料(保護層)が均一に完全被覆する形で構成しているので、ガラスビーズよりも高屈折率なビーズに匹敵する水中での再帰反射性能を持つように設計できる。高屈折率のコア微小球の表面に低屈折率の保護層を同心球状に形成した場合、保護層は、入射光の屈折角を大きくする作用があるからである。以下、このことを図2及び図3を参照して説明する。 【0046】図2は、図1に示した再帰反射部材の部分拡大図であり、再帰反射効率の理論計算にこの光学系を使用した。例として、屈折率2.26の透明微小球(コア)1と、これを被覆した屈折率1.5の保護層2からなる複合微小球3の水中での再帰反射性能を考察する。入射光L1は、図示のように、複合微小球3に入射し、保護層2の壁面で反射された後、複合微小球3から矢印L2の方向に出射する。ここで、保護層2の膜厚が理想の範囲を下回る場合、大部分の入射光L1の屈曲角は180°(再帰反射)に及ばない。反対に、保護層2の膜厚が大きすぎると、屈曲角は180°を上回り、再帰反射効率(複合微小球3に入射した光に対して再帰反射した光の割合)が低下する。このために、コア微小球及び保護層の屈折率に応じて、保護層の膜厚を最適化する必要がある。屈折率2.26のコア微小球と屈折率1.5の保護層からなる複合微小球の場合、保護層の膜厚は、コア微小球の半径の15%程度が望ましい。 【0047】図3は、上記したような複合微小球に関して、保護層の屈折率と最大再帰反射効率及びこれを与える保護層の膜厚の関係を幾何光学により解析した結果を示したグラフである。図中、曲線Iは、保護層の膜厚を表し、また、曲線IIは、最大再帰反射効率を表す。ここでいう再帰反射効率とは、全入射光(平行光)のうち屈曲角が、180±1.5°の範囲に含まれるものの割合である。図3の曲線から理解できるように、保護層の屈折率がコア微小球のそれよりも小さい領域で、保護層の最大再帰反射効率は高い値を示し、その値は、保護層の屈折率が2.26(光学的には、コア微小球と同等)の場合に比べ、約4〜4.5倍である。図示していないが、保護層の屈折率がコア微小球のそれを上回るような場合には、保護層の再帰反射効率は、保護層の屈折率が2.26の場合に比べて低下する。また、最大再帰反射効率を与える保護層の膜厚は、保護層の屈折率の増加とともに増加する。 【0048】本発明の再帰反射部材は、歩留まりの低下を被ることなく、簡単かつ容易に製造することができる。例えば、再帰反射部材に使用される複合微小球は、コアの透明微小球を保護層が均一に完全被覆しているため、その構造は球対称である。したがって、大量の透明微小球を一度に均一被覆することが可能である。また、得られた複合微小球が球対称であるので、多数の複合微小球を反射層上に散布し、それらを部分的に埋没させ、目的とする再帰反射部材を形成した後でも、すべての複合微小球は同方向に配向していることになり、したがって、従来どおり簡便に、高再帰反射性能をもつ再帰反射部材を製造することができる。 【0049】本発明の再帰反射部材は、いろいろな技法に従って製造することができる。好ましい一例を示すと、再帰反射部材は、次のような工程に従って製造することができる。 (1)熱的に塑性変形可能な材料から反射性基材を形成する工程、(2)複数の開口部が貫通した成形型を用意し、少なくともその成形型の一方の表面に複合微小球を塗布する工程、及び(3)前記成形型の複合微小球塗布面を前記反射性基材の一面に押し付けて、前記基材の一部を前記成形型の開口部に侵入させながら、前記複合微小球を前記反射性基材に転写させる工程。 【0050】工程(1)において、反射性基材は、通常、市販の材料を使用することができる。 【0051】また、工程(2)で使用する複合微小球は、例えば、保護層の形成のためのコーティング溶液を用意して、そのコーティング溶液をコアとなる透明微小球の表面に薄くかつ均一に被覆することによって製造することができる。コーティングには、スプレーコーティング法を有利に使用することができるが、必要なら、その他の常用のコーティング法を使用してもよい。 【0052】さらに、工程(3)における複合微小球の転写は、例えば、複数の円筒状開口部が貫通し、したがって、上面及び下面の両方で円形開口が露出している成形型を使用して実施することができる。 【0053】本発明の再帰反射部材は、その使途に応じていろいろな形態で提供することができる。例えば、道路標識として使用する場合には円筒形、角柱形、平板形などの形態であり、また、路面標示体として使用する場合には正方形、長方形等のシートの形態である。必要ならば、球形、三角柱形、円錐形などの形態で再帰反射部材を提供してもよい。 【0054】また、再帰反射部材は、その形態ばかりでなく、寸法も任意に変更することができる。一例を示すと、シート状の路面標示体として再帰反射部材を使用するならば、縦横10cm程度の小さいものから、幅約10〜50cm×縦約2〜10mもしくはそれ以上の大きなものまで、使途に応じていろいろな寸法を採用することができる。 【0055】本発明の再帰反射部材は、その優れた耐久性や雨天時の良好な視認性、そして優れた再帰反射性を活用して、いろいろな分野において有利に使用することができる。再帰反射部材の好適な用途は、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、道路標識、路面標示体などである。 【0056】例えば、本発明の再帰反射部材を路面標示体に使用する場合、その取り付け場所や所望とする作用効果などに応じて、路面の所定の部位にいろいろなパターンで適用することができる。路面標示体は通常区画線、すなわち、センターライン、歩道表示マークなどや、方向指示マーク、規制表示マークとして用いられるので、それらの用途に見合ったパターンを有することができる。一般的には、平面的に見て、線状パターンを呈するように路面標示体が設けられていることが好ましい。線状パターンとしては、例えば、直線、破線又はその組み合わせを挙げることができる。 【0057】図4は、本発明の再帰反射部材を路面標示体として使用した例を模式的に示したものである。図示の路面標示体20では、舗装材11の表面に台形の突起部12が設けられており、その突起部12を覆うように、本発明の再帰反射部材10が貼り付けられている。ここで使用した再帰反射部材10は、その反射性基材7の全面に複合微小球3が配設されているのではなくて、段差部に限って配設されている。また、図示の例では、舗装材11の表面に台形の突起部12が設けられているが、不要なら、このような突起部は省略してもよい。 【0058】 【実施例】次いで、本発明をその実施例を参照してさらに説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではないことを理解されたい。 再帰反射部材の製造:保護層の形成のため、屈折率約1.48のウレタン樹脂(商品名「ウレタンディスパージョンRESAMIN D−6028」、大日精化製)及びコロイダルシリカ(商品名「SNOWTECH C」、日産化学製)を重量比1:2で混合してコーティング溶液を調製した。次いで、別に用意しておいた屈折率約2.26、平均粒径約60μm及び密度約4.6g/cm3のガラスビーズ(以下、「タンゴビーズ」という)の表面に上記のコーティング溶液を、それぞれのガラスビーズの表面全体に目的とする保護層が均一に形成されるように、入念に被覆した。ここで、「タンゴビーズ」は、酸化チタン(TiO2)及び酸化バリウム(BaO)を主成分として含むガラスビーズであり、特公昭48−31734号公報(米国特許第3,493,403号に対応)に記載の手法に従って調製可能である。被覆装置には、スパイラルフロー方式を採用した湿式スプレーコーティング装置(フロント産業社製)を使用し、保護層の膜厚が、ガラスビーズの半径の約15%となるように、コーティング条件を設定した。得られた複合微小球の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、それぞれの複合微小球が球形であり、コア微小球が透明なウレタン樹脂からなる保護層によって均一にかつ完全に被覆されていることが確認された。 【0059】上記のようにして複合微小球を作製した後、複数の円筒状開口部が貫通し、したがって、上面及び下面の両方で円形開口が露出している成形型を使用して再帰反射部材を製造した。成形型の全体を水で濡らした後、その成形型の表面と開口部の内側に、先の工程で作製した複合微小球を付着させた。 【0060】次いで、別に基材として用意しておいた白色顔料を分散含有するウレタン樹脂製の基材を約150℃まで加熱して溶融させた。その後、予め用意しておいた1mmの厚さをもったアルミニウム板に、その溶融した基材を約2mmの平坦な塗布厚でもって塗布した。 【0061】引き続いて、複合微小球を付着させた成形型の表面をウレタン樹脂製の基材に密着させて圧力を与え、開口部から基材の一部を突出させながら突起部分を基材と一体的に成形した。複合微小球を基材に転写した後、室温まで基材を冷却したところ、複合微小球が部分的に埋没した所望とする再帰反射部材が得られた。 視認性の評価:上記のようにして製造した再帰反射部材の視認性を下記のようにして評価した。 【0062】夜間、再帰反射部材を、その配置場所から10m離れた自動車の中からヘッドライトを当てて、目視によって観察した。この観察は、晴天時及び雨天時の両方で行った。さらに、雨天時の観察は、再帰反射部材の摩耗を促進させた後にも行った。なお、再帰反射部材の摩耗の促進は、平成元年7月21日建設省告示第1322号の促進摩耗試験方法に準じて、再帰反射部材の摩耗を約4,000回相当について反復することで行なった。観察の結果、晴天時及び雨天時とも、再帰反射部材を高い視認性をもって観察することができた。摩耗を促進させた後でも、磨耗前と比較して遜色ない観察結果が得られた。したがって、本発明による再帰反射部材は、雨天時の効果的な再帰反射を長期間にわたって維持し得ることが明らかとなった。 耐久性加速試験:上記のようにして製造した再帰反射部材の耐久性加速試験をサンドブラストテストにより実施した。試験手順は、下記の通りである:(i)直径50mm及び長さ1mの中空管を作業台の上に間隔をあけて鉛直に立てかける。 【0063】(ii)中空管の下端部と作業台との間に、再帰反射部材を配置する。 【0064】(iii)再帰反射部材を、中空管の下端部に対して45°傾けて固定する。 【0065】(iv)中空管に、その上端からアルミナ研磨粒子(半径2〜5mm)を供給し、4.5kg/min(75g/sec)の質量速度でアルミナ研磨粒子を中空管内を落下させ、再帰反射部材に衝撃を与える。 【0066】(v)再帰反射部材が衝撃を受けた後に示す再帰反射効率の保持率(%)を測定する。 【0067】図5に曲線IVでプロットしたような試験結果が得られた。なお、図5では、アルミナ研磨粒子の量(g)が横軸に、再帰反射効率の保持率(%)が横軸に、それぞれプロットされている。また、曲線IIIは、比較のために保護層を被覆しないで作製した再帰反射部材(対照)の試験結果である。図示の試験結果から、本例の再帰反射部材の場合、その再帰反射輝度半減期は、対照のそれの約2〜2.5倍に増加していることがわかる。 【0068】 【発明の効果】上記したように、本発明によれば、耐久性のほか雨天時の視認性も特に改善した再帰反射部材を特殊なガラスビーズを使用することもなく提供することができる。 【0069】また、本発明によれば、複合微小球が球対称であるので、容易かつ簡便な手法で歩留まりよく再帰反射部材を製造することができる。 【0070】さらに、本発明によれば、本発明の再帰反射部材の注目すべき特徴をいかんなく発揮した道路標識や路面標示体を提供することができる。特に、反射性基材に、コア微小球の周囲に高靭性の保護層を被覆した複合微小球を固着したので、割れやチッピングに対する優れた耐性を複合微小球に付与することができ、したがって、道路標識等を補修や交換を伴うことなく長期間にわたって使用することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】599056437 【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー 【住所又は居所】アメリカ合衆国,ミネソタ 55144−1000,セント ポール,スリーエム センター
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| 【出願日】 |
平成14年1月16日(2002.1.16) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100077517 【弁理士】 【氏名又は名称】石田 敬 (外4名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−206513(P2003−206513A) |
| 【公開日】 |
平成15年7月25日(2003.7.25) |
| 【出願番号】 |
特願2002−7495(P2002−7495) |
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