トップ :: D 繊維 紙 :: D06 繊維または類似のものの処理;ラウンドリ−;他に分類されない可とう性材料




【発明の名称】 洗濯機
【発明者】 【氏名】池水 麦平
【住所又は居所】大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シャープ株式会社内

【氏名】吉川 浩史
【住所又は居所】大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シャープ株式会社内

【要約】 【課題】長期間にわたり使用しても、電極にスケールなどが堆積することがなく、安定して金属イオンを溶出し、また、電極の消耗も均一に進行するイオン溶出ユニットを具備する洗濯機を提供する。

【解決手段】本発明の洗濯機は、複数の電極間に電圧を印加し、電極からイオンを溶出するイオン溶出ユニットを備える洗濯機であって、電極に印加する電圧の極性が周期的に反転することを特徴とする。反転する各極性を維持するための電圧印加時間は0.1秒〜60秒が好ましく、電極間に印加する電圧の波形が正弦波であることが好ましい。また、電極間を流れる電流が一定になるように印加する電圧を変動させ、電極に電圧を印加する合計時間は設定水量に比例して調整することが好ましい。さらに、電極に印加する電圧の最初の極性を維持する時間は、反転後の極性を維持する時間より短い方が好ましい。電極は、銀もしくは銅または銀と銅の混合物からなるものが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の電極間に電圧を印加し、前記電極からイオンを溶出するイオン溶出ユニットを備える洗濯機において、前記電極に印加する電圧の極性が周期的に反転することを特徴とする洗濯機。
【請求項2】 反転する各極性を維持するための電圧印加時間が、0.1秒〜60秒であることを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】 前記電極間に印加する電圧の波形が正弦波であることを特徴とする請求項1または2に記載の洗濯機。
【請求項4】 前記電極間を流れる電流が一定になるように印加する電圧を変動させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項5】 前記電極に電圧を印加する時間の合計が、設定水量に比例して調整されることを特徴とする請求項4に記載の洗濯機。
【請求項6】 前記電極に印加する電圧の最初の極性を維持する時間が、反転後の極性を維持する時間より短いことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項7】 前記電極は、銀もしくは銅または銀と銅の混合物からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、衣類などの洗濯物および洗濯槽などの洗濯機の各部位を殺菌できる洗濯機に関し、特に、金属電極から金属イオンを溶出するイオン溶出ユニットを給水経路に備える洗濯機に関する。
【0002】
【従来の技術】女性就労率の向上や核家族化による日中の在宅率の低下に伴い、洗濯した衣類などを室内に干すケースが増加している。このような室内干しの場合、屋外干しの場合と異なり、太陽光で洗濯物自体を殺菌することができない。また、高湿時や低温時など乾燥に時間がかかる場合には、湿った洗濯物の表面で菌が繁殖しやすく、異臭の原因となることがある。
【0003】一方、清潔志向の強まりを受け、様々な抗菌製品が開発されている。衣類も例外ではなく、種々の抗菌防臭加工繊維または制菌加工繊維などからなる繊維製品が開発されている。
【0004】このような状況において、銀などの金属からなる電極を給水経路または洗濯槽などに備え、電極に電圧を印加することにより溶出される金属イオンの殺菌効果を利用する洗濯機の開発が試みられている。
【0005】実開平5−74487号公報には、金属電極、被覆電線、直流電源装置で構成されるイオン発生機器を装備し、殺菌力を有する銀イオン、銅イオンなどの金属イオンで洗濯物に付着している細菌類を殺菌する電気洗濯機が紹介されている。また、特開2000−93691公報には、洗浄液の撹拌により生じる洗浄液循環路に、洗浄液中に電界を発生させる電極を設け、電界の発生により洗浄液を殺菌する洗濯機が紹介されている。さらに、特開2001−276484公報には、洗浄水に銀イオンを添加する銀イオン添加ユニットを備え、複数回の洗浄工程における最終回のすすぎ工程で、銀イオンを有する洗浄水を供給する洗濯機が紹介されている。
【0006】これらの洗濯機は、陽極である銀電極において、電圧印加時にAg→Ag++e-の反応が起こり、水中に銀イオンAg+が溶出し、それに伴い、電極が消費される。一方、陰極では、電極の材質によらず、H++e-→1/2H2の反応が起こり、水素が発生するが、同時に水中のカルシウムなどがスケールとして陰極の表面に析出する。したがって、長期的に使用する場合、電極表面への水道水中の成分の蓄積、銀の塩化物および硫化物の堆積などが起こり、銀イオンの溶出量が不安定になったり、電極の消耗が不均一になったりするなどの問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、長期間にわたり使用しても、電極にスケールなどが堆積することがなく、安定して金属イオンを溶出し、また、電極の消耗も均一に進行するイオン溶出ユニットを具備する洗濯機を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の洗濯機は、複数の電極間に電圧を印加し、電極からイオンを溶出するイオン溶出ユニットを備える洗濯機であって、電極に印加する電圧の極性が周期的に反転することを特徴とする。
【0009】反転する各極性を維持するための電圧印加時間は0.1秒〜60秒が好ましく、電極間に印加する電圧の波形は正弦波であることが好ましい。また、電極間を流れる電流が一定になるように印加する電圧を変動させ、電圧を印加する合計時間は設定水量に比例して調整することが好ましい。さらに、電極に印加する電圧の最初の極性を維持する時間は、反転後の極性を維持する時間より短い方が好ましい。電極は、銀もしくは銅、または銀と銅の混合物からなるものが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明は、複数の電極間に電圧を印加し、電極からイオンを溶出するイオン溶出ユニットを備える洗濯機において、電極に印加する電圧の極性が周期的に反転することを特徴とする。複数の電極に印加する電圧の極性を反転することにより、電極が陰極であったときに付着したスケールを、電極が陽極に反転したときに除去することができる。また、電極が両極とも銀からなる場合には、特に再生時間を設ける必要はなく、陽極は金属イオンの溶出を行ないながら再生することができる。ここに、電極の極性が反転するとは、正の電位を有する電極が、つぎに負の電位を有し、一方、負の電位を有する電極は、つぎに正の電位を有することをいう。
【0011】本発明の洗濯機の構成を図1に概略的に例示する。この洗濯機においては、水槽9と、水槽9の中の洗濯兼脱水槽8と、洗濯兼脱水槽8の底部の撹拌用のパルセータ10と、が機構部12に軸着され、パルセータ10は、駆動用のモータ13に連結し、これらの運転は制御部11によりコントロールする。本発明の洗濯機に搭載するイオン溶出ユニット5は、水道栓(図示していない。)から洗剤溶解ボックス6までの給水経路に設置するのが好ましく、図1の例では、給水電磁弁3と洗剤溶解ボックス6の間に設けている。この洗濯機は、洗濯機外装7と、洗濯物を出し入れするためのふた4を上部に有する。
【0012】イオン溶出ユニットを水平面で切断したときの断面図を図2に示す。この例では、イオン溶出ユニットは、電極1aと、電極1aに接続する端子部2aと、電極1bと、電極1bに接続する端子部2bと、を有する。電極と端子部とは一体としてもよいが、電極と端子部とを一体としない場合には、電触を防ぐために、電極と端子部との接合部と、端子部とは、水に接触しないように樹脂でコートしておくのが好ましい。たとえば、洗濯のすすぎ工程における給水中に、イオン溶出ユニットの端子部2aと端子部2bとの間に電圧を印加すると、陽極から銀イオン(Ag+)などの金属陽イオンが溶出し、殺菌効果および防カビ効果を奏する。
【0013】イオン溶出ユニットを鉛直面で切断したときの断面図を図3に示す。この例では、電極1の上面の端縁部に端子部2を有する。イオン溶出ユニットの底面は、洗濯機に通水した後、イオン溶出ユニット中に水がたまらないようにすることができる点で、下流側が低くなるように傾斜していることが好ましい。
【0014】反転する各極性を維持するための電圧印加時間は、安定して銀イオンなどの金属陽イオンを溶出することができる点で、0.1秒〜60秒が好ましい。各極性を維持する時間が0.1秒より短いと、一旦溶出した銀イオンなどの金属イオンが、極性が反転したときに、Ag++e-→Agという逆反応が起こし、電極に戻るためである。一方、各極性を維持する時間が60秒より長いと、電流が流れにくくなり、電極に印加する電圧を高くしなければならなくなる。これは電圧が印加されている間に電極にスケールが析出し蓄積するためであり、短い周期で極性を反転させることにより、スケールの付着を少なくし、スケールの除去を容易にすることができる。また、洗濯機の給水時間は短い場合は120秒程度であり、本発明では、電極の極性が反転するため、一つの極性を維持する時間は最大で、120秒÷2=60秒となる。さらに、一般の浴場、プールなどで循環式に用いられる銀電極と異なり、洗濯機用のイオン溶出ユニットでは、極性反転周期を長くすると、各極性を維持する時間が不均一になりやすいからである。
【0015】電極間に印加する電圧の波形は、正弦波であることが好ましい。正弦波で印加する場合、直流電圧を極性を反転させながら印加する場合に比べて、金属陽イオンの溶出量が減少するが、たとえば、銀イオンの溶出量が25ppb程度以下でよい場合、または、銀イオンの溶出量が50ppb程度必要な場合であっても、給水流量が10L/分以上あればよい場合などでは、直流電圧を使用し、電極に印加する電圧の極性を反転するよりも、家庭用電源など正弦波の商用交流電源をそのまま使用する方が効率的であり、経済的である。
【0016】電極に印加する電圧は、電極間を流れる電流が一定になるように変動させることが好ましい。理論上、単位時間あたりの銀イオンなどの金属陽イオンの溶出量は、電極間を流れる電流に比例するため、電流が一定になるように電極に印加する電圧を変動させることにより、金属陽イオンの溶出量を安定にすることができ、電圧の極性反転と組み合わせることで、さらに溶出量の安定化を図ることができる。
【0017】電極に電圧を印加する時間の合計は、設定水量に比例して調整することが好ましい。洗濯機における水槽内の設定水量に比例して電圧印加時間の合計を設定し、所定の水量となった時に、給水を停止することにより、水槽内の水量にかかわらず、銀イオンの濃度を一定にすることができる。
【0018】電極に印加する電圧の最初の極性を維持する時間は、反転後の極性を維持する時間より短いことが好ましい。洗濯機の水槽が所定の水量に達するまでの時間をT秒とすると、T=n(t1+t2)+mt1:最初の極性を維持する時間(秒)
2:反転後の極性を維持する時間(秒)
:(t1+t2)秒に満たない残余の時間(秒)
:(t1+t2)秒の組数(組)
との関係が成立する。
【0019】この場合、m≦t1のとき、t1の累計時間はnt1+m、t2の累計時間はnt2となる。また、m>t1のとき、t1の累計時間は(n+1)t1、t2の累計時間はnt2+m−t1であり、1の累計時間−t2の累計時間=(n+1)t1−(nt2+m−t1
仮に、t1=t2であれば、 =nt1+t1−nt1−m+t1 =2t1−m1+t2>mであり、t1=t2より、 2t1−m>0したがって、t1の累計時間−t2の累計時間>0また、m≦t1のときは、明らかに、t1の累計時間−t2の累計時間>0よって、どちらの場合もt1の累計時間の方が長くなり、t1秒に陽極であった電極が、もう一方に比べて速く溶出してしまう。そこで、t1<t2とすることにより、2枚の電極の陽極である時間を等しくし、溶出量を等しくすることができる。特に、洗濯機のように、1回の電極の動作時間が短時間である場合には、溶出量を等しくすることは有効である。
【0020】電極は、銀もしくは銅、または銀と銅の混合物からなるものが好ましい。銀電極から溶出する銀イオンは殺菌効果に優れ、銅電極から溶出する銅イオンは防カビ効果に優れている。銀および銅の混合物からは銀イオンおよび銅イオンが溶出し、洗濯物の殺菌効果とともに洗濯機の防カビ効果に寄与する。
【0021】
【実施例】実施例1図2および図3に示すようなイオン溶出ユニットを用意した。電極1は、銀からなり、20×50×1(mm)の平板とし、電極間の距離は6mmとした。試験には水道水を用い、給水流量は20L/分とした。定電流回路を用いて、電極間に流れる電流が16mAとなるように電極に印加する電圧を変化させた。また、タイマを用いて、電極電位を図4に示すように周期的に変化させた。表1に、t1、t2を変化させたときの水の銀イオン濃度を示す。
【0022】
【表1】

【0023】表1の結果から明らかなとおり、t1とt2が0.1秒〜120秒であるとき、銀イオン濃度は50ppbであった。しかし、t1とt2が0.01秒であるときは、銀イオン濃度は20ppbしか得られなかった。また、16mAの電流を流すために必要な印加電圧は、t1とt2が0.1秒〜60秒では10V以下であったが、t1とt2が120秒では12V印加する必要があった。水道水の導電率や水温によっても必要な印加電圧は変化するが、電気用品安全法に電圧の上限(45V)があるため、できるだけ印加電圧は低いことが望ましい。
【0024】つぎに、このイオン溶出ユニットを図1に示すように洗濯機に取付け、洗濯のすすぎ工程を実施した。すすぎは、布負荷1kg、設定水量23Lで、運転時間は10分とした。その結果、銀イオン濃度が50ppbであった水ですすいだ布は、乾燥中の臭いの発生を防止することができた。また、JIS−L−1902に基き抗菌効果を確認したところ、乾燥後の布には抗菌効果が付与されていた。
【0025】実施例2実施例1と同じ構成の洗濯機を用い、電極間に印加する電圧の波形が正弦波である周波数60kHz、7.9Vの電圧を印加した。水道水の給水流量が20L/分のときの銀イオン濃度は25ppbであり、10L/分のときの銀イオン濃度は50ppbであった。
【0026】実施例3実施例1と同じ構成の洗濯機を用い、極性の反転をt1=t2=10秒とし、水道水の流量を20L/分、10L/分、4L/分として、表2に示すように、洗濯機における水槽内の設定水量と、電圧の印加時間の合計と、を変化させて、銀イオン濃度を測定した。
【0027】
【表2】

【0028】表2の結果から明らかなとおり、設定水量に電圧印加時間の合計を比例させることで、同じ銀イオン濃度の水を得ることができた。
【0029】実施例4実施例1と同じ構成の洗濯機を用い、極性の反転をt1=t2=10秒とし、水道水の流量を20L/分として、耐久試験を行なった。洗濯機の寿命を8年とし、1日2回洗濯を行ない、洗濯1回にすすぎ水40Lを使用するとして、8.1日間連続で、水を流しながら電圧を印加しつづけたが、最後まで安定して、銀イオンを溶出することができた。
【0030】実施例5実施例1と同じ構成の洗濯機を用い、図5に示すようにt1=9.5秒、t2=10.5秒とし、設定水量を35Lとし、電圧印加時間の合計を105秒としたところ、t1の累計時間は52.5秒となり、t2の累計時間は52.5秒となり、両累計時間は同じになった。
【0031】今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0032】
【発明の効果】本発明によれば、長期間にわたり使用しても、電極にスケールなどが堆積することがなく、安定して金属イオンを溶出し、また、電極の消耗も均一に進行するイオン溶出ユニットを具備する洗濯機を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号
【出願日】 平成14年3月29日(2002.3.29)
【代理人】 【識別番号】100064746
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 久郎
【公開番号】 特開2003−290594(P2003−290594A)
【公開日】 平成15年10月14日(2003.10.14)
【出願番号】 特願2002−94550(P2002−94550)