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【発明の名称】 スチームアイロン
【発明者】 【氏名】梅田 章広
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器産業株式会社内

【氏名】河瀬 茂樹
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器産業株式会社内

【要約】 【課題】水垢の形成を抑えること。

【解決手段】撥水性被膜6を気化室1の表面に形成させることによって、表面を化学的に不活性とすることができるため、水垢の原因物質の結合を抑えることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 加熱手段を有したベースと、前記ベース上に構成された気化室と、前記気化室に水を供給するタンクとを備え、前記気化室内の表面に撥水性被膜を形成させたスチームアイロン。
【請求項2】 撥水性被膜は、気化室の水の注水口と対向した面に施した請求項1に記載のスチームアイロン。
【請求項3】 撥水性被膜は、アルキルアルコキシシラン化合物の反応生成物である請求項1または2に記載のスチームアイロン。
【請求項4】 アルキルアルコキシシラン化合物は、パーフルオロアルキルアルコキシシラン化合物である請求項3に記載のスチームアイロン。
【請求項5】 撥水性被膜は、金属アルコキシド化合物の縮重合物とパーフルオロアルキルアルコキシシラン化合物との反応生成物である請求項1または2に記載のスチームアイロン。
【請求項6】 パーフルオロアルキルアルコキシシラン化合物は、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン化合物とヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン化合物の少なくとも一つである請求項4または5に記載のスチームアイロン。
【請求項7】 撥水性被膜は、金属酸化物とフッ素化合物の微粒子とを混合させたものである請求項1または2に記載のスチームアイロン。
【請求項8】 フッ素化合物の微粒子は、テトラフルオロエチレンとテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の少なくとも一つである請求項6に記載のスチームアイロン。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、蒸気を吹き付けて衣類のケアを行うスチームアイロンに関するもので、特に気化室内に水垢が堆積することを抑えるようにした技術に属するものである。
【0002】
【従来の技術】スチームアイロンを長期間使用すると、気化室内に水垢が堆積してスチームの流れを阻害したり、堆積した水垢によって衣類を汚したりすることがある。こらの弊害を減少させるために、アイロンを分解しやすくして掃除を図る方法や、瞬間的に多量のスチームを発生させて、その蒸気圧の勢いで掃除を行う方法がある。
【0003】また、イオン交換樹脂を用いて水に含まれている水垢の原因物質を取り除くものや、特開平6−254299号公報に記載されているようにホスホン酸塩化合物を用いて水垢の堆積を制御するものも考えられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、アイロンを分解して掃除することは手間であり、またスチームの勢いで掃除することはその効果が不十分であった。イオン交換樹脂の使用は効果があるものの、短期間で性能が落ちてしまし、メンテナンスが必要であった。
【0005】また、ホスホン酸塩化合物を使用したものは、適当な大きさに制御された状態で水垢が排出されるため、気化室や通路を閉塞させることはないものの、堆積が制御された水垢はスチーム口よりスチームと共に排出されるため、水垢が衣類に付着しやすく、また水垢の塊は大きいために目立ちやすいという問題がある。
【0006】本発明は前記従来の課題を解決するものであり、メンテナンスを必要とせずに水垢の付着を抑えて、安定したスチーム性能が得られるスチームアイロンを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記従来の課題を解決するために、本発明のスチームアイロンは、気化室内の表面に撥水性被膜を形成させたものである。
【0008】これによって、水垢の原因物質と気化室の表面との化学結合を阻害することができるため、水垢の堆積を抑えることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】請求項1に記載の発明は、加熱手段を有したベースと、ベース上に構成された気化室と、気化室に水を供給するタンクとを備え、気化室内の表面に撥水性被膜を形成させたものである。
【0010】水垢は、水道水に含まれている水溶性の珪酸イオンと気化室内の金属表面に現れているヒドロキシル基とが脱水的に化学反応することによって形成される。さらに、水道水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンを核として大きく成長し、目視でも確認できる大きな堆積物となる。
【0011】本発明では、水垢の原因物質である水溶性の珪酸イオンと気化室表面のヒドロキシル基との反応を妨げて原因物質の付着を抑えるというものである。つまり水垢の初期形成を抑えることによって、堆積を防止するというものである。その水垢の初期形成を抑える本発明の手段は、気化室表面のヒドロキシル基を撥水性被膜によって被覆するというものである。被覆された気化室表面は化学物質に対して不活性となりるため、水垢の原因物質である珪酸イオンと反応し難くなっている。そして珪酸イオンは普段のスチーム使用時に排出されることとなる。その際、珪酸イオンや金属イオンは堆積しておらず、水に溶けた状態なので衣服を汚すことはない。以上のように、本発明によって、一度処理を施した後はメンテナンスが不必要であり、水垢の付着が抑えらて安定したスチーム性能が得られるスチームアイロンを実現できる。
【0012】請求項2に記載の発明は、特に、請求項1に記載の気化室の表面が水の注水口と対向した面とするものである。気化室表面上で水垢の原因物質が最も通過する面は、注水口から滴下された水が落ちて当たる場所である。
【0013】また、その面上は温度差も大きいことから水垢が形成しやすい状態でもある。したがってその部分を撥水性被膜で被覆することは水垢形成を抑えるために効果的である。以上のように本発明によると、水垢の付着が効果的に抑えらて安定したスチーム性能が得られるスチームアイロンを実現できる。
【0014】請求項3に記載の発明は、請求項1と2に記載の撥水性被膜がアルキルアルコキシシラン化合物の反応生成物とするものである。アルキルアルコキシシラン化合物の基本構造は直鎖状であり、その一端はアルコキシル基であり、もう一方はアルキル基である。アルコキシル基は加水分解によって反応性の高いアルコールとなり、気化室表面のヒドロキシル基と脱水結合する。
【0015】また、アルキル基はその側鎖に反応性の低いメチル基を持っているため、形成される被膜を不活性にする。以上より、撥水性被膜としてアルキルアルコキシシラン化合物を用いることによって、気化室表面と密着性が良く、水垢の原因物質と反応性が低い被膜が得られる。すなわち、水垢の付着が抑えらて安定したスチーム性能が得られるスチームアイロンを実現できる。
【0016】請求項4に記載の発明は、特に、請求項3に記載のアルキルアルコキシシラン化合物が、パーフルオロアルキルアルコキシシラン化合物である。アルキル基の側鎖のパーフルオロ基は、表面自由エネルギーが著しく小さいことからも推測されるように、メチル基以上に反応性が低い。したがって、パーフルオロ基を持つ化合物を用いると、水垢の原因物質である珪酸イオンとの結合を抑える効果が大きい。すなわち本発明によって、水垢の付着が効果的に抑えらて安定したスチーム性能が得られるスチームアイロンを実現できる。
【0017】請求項5に記載の発明は、請求項1と2に記載の撥水性被膜が金属アルコキシド化合物の縮重合物とパーフルオロアルキルアルコキシシラン化合物との反応生成物である。加水分解した金属アルコキシド化合物はヒドロキシル基を多数有しているため、気化室表面のヒドロキシル基と脱水反応する。これにより強固な化学結合が形成される。
【0018】また、パーフルオロアルキルアルコキシシラン化合物が加水分解したアルコールとも反応し、もう一端のパーフルオロアルキル基が被膜表面に配向することになる。その結果、気化室表面との密着性が極めて良く、原因物質との結合を抑えた撥水性被膜が形成される。
【0019】また、被膜の主成分である金属アルコキシド化合物の生成物は無機質であるため耐熱性も高い。すなわち、水垢の付着防止効果に優れスチームアイロンを実現できる。
【0020】請求項6に記載の発明は、請求項4、5に記載のパーフルオロアルキルアルコキシシラン化合物が、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン化合物とヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン化合物の少なくとも一つである。これらの化合物はアルコキシル基を三つ有しているため、加水分解によって生成するアルコールがこの種の化合物の中では最大の三つとなる。したがって気化室表面のヒドロキシル基や金属アルコキシド化合物のヒドロキシル基との反応性が高い。すなわち、水垢の付着防止効果に優れスチームアイロンを実現できる。
【0021】請求項7に記載の発明は、請求項1、2に記載の撥水性被膜が、金属酸化物とフッ素化合物の微粒子とを混合させたものである。シリカやアルミナのような金属酸化物は無機質であり、耐熱温度が高い。しかし、表面に撥水性を付与できる化合物は有機化化合物であり、有機化合物は一般に耐熱温度が低い。本発明では、高分子である樹脂の微粒子を用いることによって耐熱温度を向上させた。
【0022】特に、請求項8に記載した発明であるテトラフルオロエチレンやテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体はその融解温度が280℃以上あるため、使用温度が高くても220℃〜240℃であるスチールアイロンにおいても用いることができる。すなわち本発明により、水垢の付着防止効果に優れスチームアイロンを実現できる。
【0023】
【実施例】以下本発明の実施例について、図面および明細書用別紙を参照しながら説明する。
【0024】(実施例1)図1、図2は、本発明の実施例におけるスチームアイロンの気化室の断面図を示すものである。気化室1はアルミニウムの金属ベース2とヒーター3を埋設したアルミニウムの金属壁から構成された空間である。4は気化室1の頂壁部に設けられた注水口で、図示されていない貯水タンクに連結されている。5は金属ベース2に形成されたスチーム噴出口である。これら注水口4、スチーム噴出孔5はそれぞれが非対向関係に設置されている。6は本発明の骨子である撥水性被膜であり、注水口4から滴下される水を受ける位置に形成されている。本実施例では金属ベース2の内側にしか形成していないが、気化室壁面全体であればさらに効果的である。
【0025】撥水性被膜の前駆物質は、分子式CH3(CH2)9Si(OCH3)3のアルキルアルコキシシラン化合物である。これを1%溶解したイソプロピルアルコールをアルミニウムの金属ベースに塗布し、100℃で30分乾燥後、さらに300℃で20分間焼成して所望の被膜を得た。初期状態での水に対する接触角は90°であった。
【0026】(実施例2)スチームアイロンの気化室の構成は、実施例1と同様である。ただし、本実施例においては、撥水性被膜はフッ素系である。フッ素系のパーフルオロアルキルアルコキシシラン化合物としては、以下実施例に使用した化合物以外にも、例えばトリメチルメトキシシランまたはトリメチルエトキシシラン(以下メトキシがエトキシであってもよい)、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等のアルキルシラン化合物のアルキル基のいくつかがフッ化炭素基に置換されたものがあり、例えば、CF3(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2SiCH3(OCH3)2、CF3(CF2)3(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2SiCl3等の炭素数が1〜20のシラン化合物でも良い。
【0027】本実施例の撥水性被膜の前駆物質は、分子式CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)3のヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン化合物である。これを1%溶解したイソプロピルアルコールをアルミニウムの金属ベースに塗布し、100℃で30分乾燥後、さらに300℃で20分間焼成して所望の被膜を得た。初期状態での水に対する接触角は110°であった。
【0028】(実施例3)スチームアイロンの気化室の構成は、実施例1と同様である。
【0029】本実施例の撥水性被膜の前駆物質は、分子式CF3(CF2)7(CH2)2Si(OC2H5)3のヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン化合物である。これを1%溶解したイソプロピルアルコールをアルミニウムの金属ベースに塗布し、100℃で30分乾燥後、さらに300℃で20分間焼成して所望の被膜を得た。初期状態での水に対する接触角は110°であった。
【0030】(実施例4)スチームアイロンの気化室の構成は、実施例1と同様である。ただし、本実施例の撥水性被膜は、金属アルコキシド化合物の縮重合物とパーフルオロアルキルアルコキシシラン化合物との反応生成物である。本実施例ではパーフルオロアルキルアルコキシシラン化合物として、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン化合物を用いるが、それ以外にも、例えばトリメチルメトキシシランまたはトリメチルエトキシシラン(以下メトキシがエトキシであってもよい)、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン化合物、およびアルキル基のいくつかがフッ化炭素基に置換されたもの、例えば、CF3(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2SiCH3(OCH3)2、CF3(CF2)3(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2SiCl3等の炭素数が1〜20のシラン化合物でも良い。
【0031】また、本実施例では金属アルコキシドとしてテトラエトキシシラン化合物を用いるが、それ以外にも例えばテトラメトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラターシャリーブトキシシラン等のテトラアルコキシシランや、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラターシャリーブトキシチタン等のテトラアルコキシチタン、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラターシャリーブトキシジルコニウム等のテトラアルコキシジルコニウム、トリエトキシアルミニウム、トリメトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウム等のトリアルコキシアルミニウム、ブトキシイットリウム等のトリアルコキシイットリウム、およびペンタプロポキシタンタル等のペンタアルコシキタンタルのいずれか1種類か、あるいは2種類以上を組み合わせたものでも良い。
【0032】撥水性被膜の形成前の状態は、上記2種の材料とエタノールを混合した溶液に、エタノール、水、塩酸によって予め調整した溶液を攪拌しながら滴下したシリカゾルである。これをアルミニウムの金属ベースに塗布し、室温で60分乾燥後、100℃で10分、続いて350℃で20分間焼成して所望の被膜を得た。初期状態での水に対する接触角は110°であった。
【0033】(実施例5)スチームアイロンの気化室の構成は、実施例1と同様である。ただし本実施例では、撥水性被膜は、金属酸化物とフッ素化合物の微粒子とを混合させたものである。
【0034】撥水性被膜の形成前の状態は、エタノール、テトラエトキシシラン、平均粒径1μm以下のテトラフルオロエチレン微粒子、ノニオン系の界面活性剤を混合した溶液に、エタノール、水、塩酸によって予め調整した溶液を攪拌しながら滴下したゾル液である。これをアルミニウムの金属ベースに塗布し、室温で60分乾燥後、100℃で10分、続いて350℃で20分間焼成して所望の被膜を得た。初期状態での水に対する接触角は115°であった。
【0035】以上の実施例1〜5によって作製した金属ベースをスチームアイロンに設置して、スチーム試験を行った。試験は金属ベースを加熱した状態で、注水口から1CCの水道水を滴下してスチームを発生させる操作を5回と20回繰り返した。評価は、金属ベースの表面を電子顕微鏡によって300倍で観察した時、水垢が形成しない「○」か、水垢が形成した「×」かどうかで判断した。また、比較例として、撥水性被膜を形成させない金属ベースについても試験を行った。試験結果を(表1)に示す。
【0036】
【表1】

表1より次の事項が明らかとなる。まず第一として、実施例1〜5と比較例との対比より、撥水性被膜を形成させた気化室内表面では、水垢の付着が抑えられる。第二に、実施例4、5と実施例1〜3との対比より、撥水性被膜に無機成分を配合することによって、水垢防止効果の熱に対する耐久性が向上する。
【0037】
【発明の効果】以上のように、請求項1〜8に記載の発明によれば、水垢の付着防止効果のあるスチームアイロンを容易に構成することができる。
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地
【出願日】 平成14年3月12日(2002.3.12)
【代理人】 【識別番号】100097445
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 文雄 (外2名)
【公開番号】 特開2003−260299(P2003−260299A)
【公開日】 平成15年9月16日(2003.9.16)
【出願番号】 特願2002−66452(P2002−66452)