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【発明の名称】 スチームアイロン
【発明者】 【氏名】梅田 章広
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器産業株式会社内
【氏名】河瀬 茂樹
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器産業株式会社内
【課題】熱衝撃による性能劣化を抑えた熱緩衝性被膜を容易に形成すること。

【解決手段】耐熱性樹脂フィルム6を気化室1の底面に接着することなく設けることにより、熱緩衝性能を容易に得ることができ、熱衝撃による性能劣化を抑えることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 気化室の底面に耐熱性樹脂フィルムを設けたスチームアイロン。
【請求項2】 耐熱性樹脂フィルムは、融解温度が250℃以上である請求項1に記載のスチームアイロン。
【請求項3】 耐熱性樹脂フィルムは、ポリフェニルサルファイド樹脂である請求項2に記載のスチームアイロン。
【請求項4】 耐熱性樹脂フィルムは、フッ素樹脂である請求項2に記載のスチームアイロン。
【請求項5】 フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂とテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル樹脂の少なくとも一つである請求項4に記載のスチームアイロン。
【請求項6】 耐熱性樹脂フィルムは、表面に形状加工を施した請求項1に記載のスチームアイロン。
【請求項7】 形状加工は、注水口と対向した面に施した請求項6に記載のスチームアイロン。
【請求項8】 形状加工は、凹凸形状である請求項6または7に記載のスチームアイロン。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スチームを吹き付けて衣類のケアを行うスチーマに関するものであり、詳しくは気化室に改良を加えて、滴下水の気化能力を向上させた技術に属するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のスチームアイロンとしては、例えば、実開昭55−60899公報に記載されているように、アルミニウム材で形成された気化室底部にシリコン樹脂やポリフェニルサルファイド樹脂を塗装して気化能力を上げるものであった。これはアルミニウム生地のみでは、滴下した水滴が膜沸騰によって玉状になり、スチーム噴出口から水滴の状態で流れ出してしまう。したがって熱伝導率の小さな熱緩衝性被膜を塗装することで水滴の膜沸騰を抑えたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従来の熱緩衝性被膜は被膜形成のための塗装工程と焼き付け工程が必要であった。さらに被膜は気化室底面に接着していることから熱衝撃を受け易いものであった。すなわち、被膜と金属性気化室面は熱膨張率が違うため、常温から200℃以上の温度を繰り返すことによって、熱緩衝性被膜が剥がれたり割れたりするという課題を有していた。
【0004】本発明は、前記従来の課題を解決するもので、熱緩衝性被膜を気化室の底面に接着することなく機構的に配置することによって、容易に装着が可能であり、熱劣化を抑えて安定したスチームの発生が可能となるスチームアイロンを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記従来の課題を解決するために、本発明のスチームアイロンは、耐熱性のある樹脂フィルムを気化室の底面と接着させることなく設けたものである。
【0006】これによって、熱緩衝性能を容易に得ることができ、さらに熱衝撃による性能劣化を抑えることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】請求項1に記載の発明は、気化室の底面に耐熱性樹脂フィルムを設けたものである。樹脂フィルムは金属と比較して1/000倍の熱伝導率であるために熱緩衝性が高い。そして熱緩衝性の底面は、予めある一定形状に形取ったフィルムを気化室に配置することによって実現させることができ、従来の塗装および焼成工程を省くことができる。また、金属性の気化室底面との熱膨張率や熱収縮率の違いによる樹脂塗装膜の割れや剥離を避けることができるため、熱耐久性のある熱緩衝性被膜を有したスチームアイロンを実現できる。
【0008】請求項2に記載の発明は、特に、請求項1に記載の耐熱性樹脂フィルムを融解温度が250℃以上の樹脂フィルムとするものである。アイロンのベースは高温時で220℃〜240℃まで上昇することもあるため、この雰囲気下で使用する材料としては安全値を考慮して250℃以上の熱耐久性が必要である。しかし逆に250℃以上の高融点の材料を使用すれば、熱劣化を防ぐことができる。すなわち、熱耐久性のある熱緩衝性被膜を有したスチームアイロンを実現できる。
【0009】請求項3に記載の発明は、特に、請求項2に記載の融点が250℃以上の耐熱樹脂フィルムをポリフェニルサルファイド樹脂としたものである。ポリフェニルサルファイド樹脂は融点が280℃であるため、スチームアイロンのベース上昇温度の雰囲気内に設けして使用することができる。すなわち、熱劣化を抑えることができるため、熱耐久性のある熱緩衝性被膜を有したスチームアイロンを実現できる。
【0010】請求項4に記載の発明は、特に、請求項2に記載の融点が250℃以上の耐熱樹脂フィルムの材料をフッ素樹脂としたものである。フッ素樹脂の融点は300℃前後であるため、スチームアイロンの気化室内に設けて使用することができる。特に、請求項5で示すテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル樹脂は融点が310℃であり、またポリテトラフルオロエチレン樹脂は融点が340℃であり、かつそれぞれのフィルムは入手しやすいフッ素樹脂フィルムであるため特に好ましい。さらに、フッ素樹脂の表面には化学的に不活性なフッ化炭素が配向しているため、スケールの原因物質である珪酸イオンとの反応を防ぐことができ、スケールの生成および堆積を抑えることができる。すなわち、熱耐久性のある熱緩衝性被膜を有し、かつスケールの生成を抑えたスチームアイロンを実現できる。
【0011】請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の耐熱性樹脂フィルムの表面に形状加工を施したものである。特に、請求項7のように注水口と向き合う面に形状加工を施すことによって、滴下した水滴との接触面積が大きくなるため、熱の伝わりが良くなり、気化能力が向上する。さらに、請求項8のように凹凸形状では、たとえ膜沸騰が発生して水滴が転がる可能性があったとても、凹部や凸部が障壁となって転がり難くなる。すなわち、熱耐久性があり気化効率の良い熱緩衝性被膜を有したスチームアイロンを実現できる。
【0012】
【実施例】以下本発明の実施例について、図面および明細書用別紙を参照しながら説明する。
【0013】(実施例1)図1、図2は、本発明の実施例におけるスチームアイロンの気化室の断面図を示すものである。気化室1はアルミニウム製の金属ベース2とヒーター3を埋設した壁面から構成された空間である。つまり気化室の底面とは、金属ベースの内側の面のことである。本実施例での金属ベース2は2室に区画されている。4は気化室1の頂壁部に設けられた注水口で、図示されていない貯水タンクに連結されている。5は金属ベース2に形成されたスチーム噴出孔である。これら注水口4、スチーム噴出口5はそれぞれが非対向関係に設置されている。
【0014】6は本発明の骨子である耐熱性樹脂フィルムであり、注水口4から滴下される水を受ける位置に、突起部7によって固定されている。耐熱性樹脂フィルム6は、表1に示すような融解温度が250℃以上である材料である。特に、コストの点からポリフェニルサルファイド樹脂が最も好ましい。
【0015】
【表1】

以上のような構成において、気化室1がスチーム発生に必要な温度に達していれば、耐熱性樹脂フィルム6に滴下された水は熱緩衝作用によってフィルム上に広がり、ただちに気化される。発生したスチームは、金属ベース2のスチーム噴出口5から安定的に噴出される。このとき、耐熱性樹脂フィルムがないと、流入された水は高温により膜沸騰となって充分に気化されず、高温の水滴状態でスチーム噴出口5から滴下してしまう。以上より、本実施例によれば、塗装や焼成などの処理工程を経ることなく、熱に対して耐久性のある熱緩衝性被膜を容易に得ることができ、安定したスチームの発生が可能なスチームアイロンを実現できる。
【0016】(実施例2)スチームアイロンの気化室の構成は、実施例1と同様である。ただし、本実施例においては、耐熱性樹脂フィルム6はフッ素系の樹脂フィルムである。特に、融解温度が250℃以上であるポリテトラフルオロエチレン樹脂やテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル樹脂がより好ましい。
【0017】気化室1で蒸発する水は一般に水道水であり、水道水には水溶性の珪酸イオンが含まれている。この珪酸イオンが気化室1の底面で湿乾を繰り返す過程でスケールが形成される。しかしこの部分をフッ素樹脂フィルムで覆うことにより、スケールの成長を抑えることができる。これはフッ素樹脂の表面には化学的に不活性なフッ化炭素が配向しているため、珪酸イオンとの反応を妨げることができるからである。そして、気化室1がスチーム発生に必要な温度に達していれば、フッ素樹脂フィルムに滴下された水は熱緩衝作用によってフィルム上に広がり、ただちに気化される。そして発生したスチームは、金属ベース2のスチーム噴出口5から安定的に噴出される。すなわち、本実施例によって、塗装や焼成などの処理工程を経ることなく、容易に熱緩衝効果を得ることができ、安定したスチームの発生が可能なスチームアイロンを実現できる。
【0018】(実施例3)スチームアイロンの気化室の構成および耐熱性樹脂フィルムの材料は、実施例1、2と同様である。本実施例においては、耐熱性樹脂フィルムの表面を形状加工し、水がより気化しやすい工夫を行っている。
【0019】水を気化しやすい状態にするためには、加熱された樹脂フィルムとの接触面積を大きくすればよい。その手段として本実施例では、表面に形状加工を施している。図4では表面を凹凸加工8を施した耐熱性樹脂フィルム6に水滴9が落ちた状態を示している。
【0020】一方、図5は平滑な耐熱性樹脂フィルム6に水滴9が落ちた状態を示している。それぞれの水滴と樹脂フィルムとの接触面積の大きさを比べると、凹凸状に加工した方が接触面積が大きい。つまり熱の伝わる面積が大きくなるため、気化しやすいということである。
【0021】さらに、たとえ膜沸騰によって水滴が転がるような場合でも、凹凸加工8の面では転がり難い構造となっている。そして、気化室1がスチーム発生に必要な温度に達していれば、樹脂フィルムに滴下された水は熱緩衝作用および形状効果によって水滴として転がることがなくフィルム上に広がり、ただちに気化される。そして発生したスチームは、金属ベース2のスチーム噴出口5から安定的に噴出される。すなわち、本実施例によって、塗装や焼成などの処理工程を経ることなく、容易に熱緩衝効果を得ることができ、熱に対して耐久性があり、効率的なスチーム発生が可能なスチームアイロンを実現できる。
【0022】
【発明の効果】以上のように、請求項1〜8に記載の発明によれば、熱に対して耐久性のある安定したスチームの生成が可能なスチームアイロンを容易に構成することができる。
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地
【出願日】 平成14年3月12日(2002.3.12)
【代理人】 【識別番号】100097445
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 文雄 (外2名)
【公開番号】 特開2003−260298(P2003−260298A)
【公開日】 平成15年9月16日(2003.9.16)
【出願番号】 特願2002−66451(P2002−66451)