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【発明の名称】 編み物の製造方法及び天竺編み用糸
【発明者】 【氏名】近藤 英雅
【住所又は居所】新潟県見附市柳橋町1103番地1 株式会社近藤商店内

【氏名】金子 嘉通
【住所又は居所】新潟県見附市柳橋町1103番地1 株式会社近藤商店内

【要約】 【課題】紡毛単糸等を用いても天竺編みによる無斜向の編み物の製造ができ、これにより編み物業界でのより一層広い商品展開を可能とした極めて実用性,用途性に秀れた画期的な編み物の製造方法及び天竺編み用糸を提供すること。

【解決手段】所定の撚りを有する編み物用の撚糸1の外周面に、この撚糸1の撚りの向きとは逆向きに且つ前記撚糸1の撚り回数未満の回数で水溶性ビニロン糸2を逆撚り状態に巻回することで、前記撚糸1の外周面に水溶性ビニロン糸2が設けられ前記撚糸1の撚りが前記水溶性ビニロン糸2の巻回により戻された状態の複合撚糸3を形成し、この複合撚糸3を用いて天竺編みにより編み物4を形成し、続いて、この編み物4に水分を加えることで前記複合撚糸3の水溶性ビニロン糸2を溶かし撚糸1の外周面から除去する編み物の製造技術。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定の撚りを有する編み物用の撚糸の外周面に、この撚糸の撚りの向きとは逆向きに且つ前記撚糸の撚り回数未満の回数で水溶性ビニロン糸を逆撚り状態に巻回することで、前記撚糸の外周面に水溶性ビニロン糸が設けられ前記撚糸の撚りが前記水溶性ビニロン糸の巻回により戻された状態の複合撚糸を形成し、この複合撚糸を用いて天竺編みにより編み物を形成し、続いて、この編み物に水分を加えることで前記複合撚糸の水溶性ビニロン糸を溶かし撚糸の外周面から除去することを特徴とする編み物の製造方法。
【請求項2】 天竺編みする前の前記複合撚糸は、外周面に逆撚り状態に巻回された前記水溶性ビニロン糸による撚りを有し、この撚りにより、複合撚糸を天竺編みした前記編み物には斜向が形成され、この斜向が形成された編み物に前記水分を加えることで前記水溶性ビニロン糸が除去され前記水溶性ビニロン糸の巻回により撚りが戻された状態の前記撚糸で構成された編み物となり、この編み物は撚糸の撚り回数と前記水溶性ビニロン糸の逆撚り回数との差の分前記斜向が消去されていることを特徴とする請求項1記載の編み物の製造方法。
【請求項3】 前記撚糸が紡毛単糸であることを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の編み物の製造方法。
【請求項4】 前記複合撚糸とする前の前記撚糸の撚り回数と前記水溶性ビニロン糸の逆撚り回数との回数差を1.0×102(回/100cm)に設定し、且つ、この水溶性ビニロン糸の逆撚り回数を前記回数差より大に設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の編み物の製造方法。
【請求項5】 所定の撚りを有する編み物用の撚糸の外周面に、この撚糸の撚りの向きとは逆向きに且つ前記撚糸の撚り回数を超える回数で水溶性ビニロン糸を撚り状態に巻回することで、前記撚糸の外周面に水溶性ビニロン糸が設けられ前記撚糸の撚りが前記水溶性ビニロン糸の巻回により戻され且つ逆撚りされた状態の複合撚糸を形成し、この複合撚糸を用いて天竺編みにより編み物を形成し、続いて、この編み物に水分を加えることで前記複合撚糸の水溶性ビニロン糸を溶かし前記撚糸の外周面から除去することを特徴とする編み物の製造方法。
【請求項6】 所定の撚りを有する編み物用の撚糸に、この撚糸の撚りの向きとは逆向きに且つ前記撚糸の撚り回数未満の回数で水溶性ビニロン糸を逆撚り状態に合撚することで、前記撚糸と前記水溶性ビニロン糸とから成り前記撚糸の撚りが前記水溶性ビニロン糸の合撚により戻された状態の複合撚糸を形成し、この複合撚糸を用いて天竺編みにより編み物を形成し、続いて、この編み物に水分を加えることで前記複合撚糸の水溶性ビニロン糸を溶かし除去することを特徴とする編み物の製造方法。
【請求項7】 天竺編みする前の前記複合撚糸は、撚糸に合撚された前記水溶性ビニロン糸による撚りを有し、この撚りにより、複合撚糸を天竺編みした前記編み物には斜向が形成され、この斜向が形成された編み物に前記水分を加えることで前記水溶性ビニロン糸が除去され前記水溶性ビニロン糸の合撚により撚りが戻された状態の前記撚糸で構成された編み物となり、この編み物は撚糸の撚り回数と前記水溶性ビニロン糸の逆撚り回数との差の分前記斜向が消去されていることを特徴とする請求項6記載の編み物の製造方法。
【請求項8】 天竺編みに使用する糸であって、所定の撚りを有する撚糸の外周面に、この撚糸の撚りの向きとは逆向きで且つ前記撚糸が有する撚り回数未満若しくは撚り回数より多い回数で水溶性ビニロン糸を逆撚り状態に巻回したことを特徴とする天竺編み用糸。
【請求項9】 天竺編みに使用する糸であって、所定の撚りを有する撚糸と水溶性ビニロン糸とを前記撚糸の撚りの向きとは逆向きで且つ前記撚糸が有する撚り回数未満若しくは撚り回数より多い回数で逆撚り状態に合撚したことを特徴とする天竺編み用糸。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、編み物の製造方法及び天竺編み用糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来、広く一般的に用いられている編み物の一つに、図1に示す天竺編み(平編み)がある。
【0003】ところで、この天竺編みでは、紡毛単糸21(紡績工程によって一定方向に所定回数の撚りがかけられた糸)は使用できないといわれている。なぜなら、紡毛単糸21を用いて天竺編みを実施すると、図2(a)に示すように、編み物22の表面に斜向(編み目のズレ)が形成されて体裁が悪くなるからである。尚、図2における符号23は斜向の向きを示す線である。
【0004】詳述すると、紡毛単糸21は一定方向に強い撚りがかけられており、この強い撚りがかけられた紡毛単糸21で天竺編みを実施すると、前記撚りのため、編み物22の編み目の配列がズレ、このズレにより斜向が生じる。
【0005】また、この斜向が生じた編み物22に染色やソーピング処理を施すと、水分によって紡毛単糸21を構成する繊維が伸張し、これにより前記紡毛単糸21の撚り回数が増えて編み目の配列が更にズレ、このズレにより図2(b)に示すように、前記斜向が更に大きくなる。
【0006】一方、この斜向を防止する為に紡毛単糸の撚りを斜向が生じない撚り回数まで減らすと(戻し撚りすると)、糸の保形性が失われ、編み物を編む際に、紡毛単糸を構成する繊維がバラバラにばらけて糸として使用できなくなったり、糸の撚り回数が少なくて編み針が糸に引っ掛かることができなくなり、これにより天竺編みができなくなる等の問題が生じる。
【0007】そこで、従来の天竺編みでは、単糸同志を撚り合わせることで夫々の撚りを打ち消した糸(例えば二本の右撚りした単糸を左撚りして合わせた双糸)を用いて斜向を防止することが行われていたが、この場合、糸が太番手(太い糸)となってしまい、必然的に天竺編みによる編み物が厚くなり、商品展開範囲が限られてしまうという問題があった。
【0008】本発明は、これまで実現化されなかった紡毛単糸を用いての天竺編みによる無斜向の編み物の製造に成功したもので、これにより編み物業界でのより一層広い商品展開を可能とした極めて実用性,用途性に秀れた画期的な編み物の製造方法及び天竺編み用糸を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0010】所定の撚りを有する編み物用の撚糸1の外周面に、この撚糸1の撚りの向きとは逆向きに且つ前記撚糸1の撚り回数未満の回数で水溶性ビニロン糸2を逆撚り状態に巻回することで、前記撚糸1の外周面に水溶性ビニロン糸2が設けられ前記撚糸1の撚りが前記水溶性ビニロン糸2の巻回により戻された状態の複合撚糸3を形成し、この複合撚糸3を用いて天竺編みにより編み物4を形成し、続いて、この編み物4に水分を加えることで前記複合撚糸3の水溶性ビニロン糸2を溶かし撚糸1の外周面から除去することを特徴とする編み物の製造方法に係るものである。
【0011】また、天竺編みする前の前記複合撚糸3は、外周面に逆撚り状態に巻回された前記水溶性ビニロン糸2による撚りを有し、この撚りにより、複合撚糸3を天竺編みした前記編み物4には斜向が形成され、この斜向が形成された編み物4に前記水分を加えることで前記水溶性ビニロン糸2が除去され前記水溶性ビニロン糸2の巻回により撚りが戻された状態の前記撚糸1で構成された編み物4となり、この編み物4は撚糸1の撚り回数と前記水溶性ビニロン糸2の逆撚り回数との差の分前記斜向が消去されていることを特徴とする請求項1記載の編み物の製造方法に係るものである。
【0012】また、前記撚糸1が紡毛単糸であることを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の編み物の製造方法に係るものである。
【0013】また、前記複合撚糸3とする前の前記撚糸1の撚り回数と前記水溶性ビニロン糸2の逆撚り回数との回数差を1.0×102(回/100cm)に設定し、且つ、この水溶性ビニロン糸2の逆撚り回数を前記回数差より大に設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の編み物の製造方法に係るものである。
【0014】また、所定の撚りを有する編み物用の撚糸1の外周面に、この撚糸1の撚りの向きとは逆向きに且つ前記撚糸1の撚り回数を超える回数で水溶性ビニロン糸2を撚り状態に巻回することで、前記撚糸1の外周面に水溶性ビニロン糸2が設けられ前記撚糸1の撚りが前記水溶性ビニロン糸2の巻回により戻され且つ逆撚りされた状態の複合撚糸3を形成し、この複合撚糸3を用いて天竺編みにより編み物4を形成し、続いて、この編み物4に水分を加えることで前記複合撚糸3の水溶性ビニロン糸2を溶かし前記撚糸1の外周面から除去することを特徴とする編み物の製造方法に係るものである。
【0015】また、所定の撚りを有する編み物用の撚糸1に、この撚糸1の撚りの向きとは逆向きに且つ前記撚糸1の撚り回数未満の回数で水溶性ビニロン糸2を逆撚り状態に合撚することで、前記撚糸1と前記水溶性ビニロン糸2とから成り前記撚糸1の撚りが前記水溶性ビニロン糸2の合撚により戻された状態の複合撚糸3を形成し、この複合撚糸3を用いて天竺編みにより編み物4を形成し、続いて、この編み物4に水分を加えることで前記複合撚糸3の水溶性ビニロン糸2を溶かし除去することを特徴とする編み物の製造方法に係るものである。
【0016】また、天竺編みする前の前記複合撚糸3は、撚糸1に合撚された前記水溶性ビニロン糸2による撚りを有し、この撚りにより、複合撚糸3を天竺編みした前記編み物4には斜向が形成され、この斜向が形成された編み物4に前記水分を加えることで前記水溶性ビニロン糸2が除去され前記水溶性ビニロン糸2の合撚により撚りが戻された状態の前記撚糸1で構成された編み物4となり、この編み物4は撚糸1の撚り回数と前記水溶性ビニロン糸2の逆撚り回数との差の分前記斜向が消去されていることを特徴とする請求項6記載の編み物の製造方法に係るものである。
【0017】また、天竺編みに使用する糸であって、所定の撚りを有する撚糸1の外周面に、この撚糸1の撚りの向きとは逆向きで且つ前記撚糸1が有する撚り回数未満若しくは撚り回数より多い回数で水溶性ビニロン糸2を逆撚り状態に巻回したことを特徴とする天竺編み用糸に係るものである。
【0018】また、天竺編みに使用する糸であって、所定の撚りを有する撚糸1と水溶性ビニロン糸2とを前記撚糸1の撚りの向きとは逆向きで且つ前記撚糸1が有する撚り回数未満若しくは撚り回数より多い回数で逆撚り状態に合撚したことを特徴とする天竺編み用糸に係るものである。
【0019】
【発明の実施の形態】好適と考える本発明の実施の形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいてその作用効果を示して説明する。
【0020】尚、本説明では、理解を容易ならしめるための具体的数値を入れ、更に撚糸1の太さと水溶性ビニロン糸2の太さを同一と仮定して説明する。
【0021】撚り回数300回、即ち、300回/100cm(1メートル)の撚りを有する撚糸1の外周面に、この撚糸1が有する撚りの向きとは逆向きに、水溶性ビニロン糸2を200回/100cm(1メートル)逆撚り状態に巻回して複合撚糸3を形成する。
【0022】この複合撚糸3の外周部は、撚糸1の外周面に巻回された水溶性ビニロン糸2により、200回/100cm逆撚りされた状態となっている。
【0023】また、この複合撚糸3の芯部に存在する撚糸1は、前記300回/100cmの撚りが、水溶性ビニロン糸2の巻回により200回/100cm分、戻し撚り(逆撚り)された状態となり、これにより実質の撚り回数は100回/100cm程度となる。また、撚糸1は、実質の撚り回数が100回/100cmと少なくとも、この撚糸1の外周面に巻回された水溶性ビニロン糸2によって保形されており、よってこの撚糸1を構成する繊維がばらばらにばらけてしまうことはない。
【0024】この複合撚糸3で天竺編みにより編み物4を形成すると、この編み物4は前記複合撚糸3が有する逆撚りによって編み目の配列がずれ、一旦斜向が形成されることとなる。
【0025】この斜向の形成は、複合撚糸3の外周部が水溶性ビニロン糸2により200回/100cm逆撚りされた状態となっており、複合撚糸3に強い撚りが存在することによる。
【0026】また、この複合撚糸3で天竺編みする際、編み針が水溶性ビニロン糸2の巻回によって形成された凹凸に引っ掛かることができ、よって前記天竺編みによる編み物4の形成は良好に行えることとなる。
【0027】続いて、この一旦斜向が形成された編み物4に染色処理やソーピング処理等により水分を加えると、複合撚糸3の水溶性ビニロン糸2が溶け、この編み物4から水溶性ビニロン糸2が除去されることとなる。
【0028】この際、水溶性ビニロン糸2が編み物4から除去されることで、編み物4は実質、前記水溶性ビニロン糸2によって逆撚りされた状態の撚り回数の少ない(弱い)撚糸1(撚り回数100回/100cm)のみで形成されたものと同じとなる。
【0029】また、この撚り回数が100回/100cmの撚糸1は、その撚りが弱いため編み目の配列にズレを生ぜず、ソーピング処理する前に水溶性ビニロン糸2の巻回により生じていた前記斜向は解消することとなる。
【0030】即ち、本発明は、複合撚糸3を用いた天竺編みにより編み物4を形成した後に、この複合撚糸3から水溶性ビニロン糸2だけを除去することで、本来ならば撚りが弱すぎるために編み物を極めて形成しにくい撚りの少ない(弱い)撚糸1により編み物4を形成できることとなる。
【0031】また、編み物4を構成する複合撚糸3から水溶性ビニロン糸2を除去することで、水分を加える前に比べて薄くて軽い編み物4に形成されることとなる。
【0032】従って、例えばこれまで斜向の発生が避け得なかった例えば紡毛単糸等の撚糸1を用いて天竺編みしても斜向を生じない編み物4を製造することができ、また、これにより従来にない軽くて薄い編み物4を形成可能となって幅広い商品展開が可能となる。
【0033】尚、所定の撚りを有する撚糸1と水溶性ビニロン糸2とを、撚糸1が有する撚りの向きとは逆向きに合撚しても、上記作用と同様の理由により、斜向を生じない編み物4を製造することができる。
【0034】
【実施例】本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0035】第一実施例撚糸1は紡毛単糸1を採用している。
【0036】紡毛単糸1とは紡毛繊維に撚りを加えて形成される単糸状の糸である。
【0037】具体的には、羊毛等の毛を原料とし、比較的短い繊維同志を撚り合わせしてつくられる糸で、繊維の毛並みを揃えたり延伸したりしないため、繊維の配列が不規則であり、よって柔軟で膨らみがあり、粗野な感じで軽く、ウオーム感が特徴の糸であり、ニット等を製造する際に用いられている。
【0038】また、紡毛単糸1は、洗毛等した例えば羊毛等の繊維同志を撚り合わせる工程である精紡工程を経て形成される糸である。
【0039】また、第一実施例の紡毛単糸1は300回/100cm(1インチ)の撚り回数のものを採用している。
【0040】第一実施例では、先ず、この紡毛単糸1の外周面に水溶性ビニロン糸2を巻回して複合撚糸3を形成する。
【0041】水溶性ビニロン糸2は、水に溶ける性質を有したビニロンで形成されている。
【0042】この複合撚糸3は、図3に示すように、300回/100cmの撚りを有する編み物用の紡毛単糸1の外周面に、この紡毛単糸1の撚りの向きとは逆向きに200回/100cmの撚り回数で水溶性ビニロン糸2を逆撚り状態に巻回することで、前記紡毛単糸1の外周面に水溶性ビニロン糸2が設けられ前記紡毛単糸1の撚りが前記水溶性ビニロン糸2の巻回により戻された構成となっている。
【0043】この際、複合撚糸3の芯部の紡毛単糸1は、水溶性ビニロン糸2により200回/100cm戻し撚りされて、その撚り回数は100回/100cmとなる。
【0044】第一実施例では、次に、この複合撚糸3を用いた天竺編みにより編み物4を形成する。
【0045】この際、複合撚糸3は、紡毛単糸1の外周面に水溶性ビニロン糸2が逆撚り状態に確固に巻回していることで、編み針が水溶性ビニロン糸2の巻回によって形成された凹凸に引っ掛かることができ、これにより天竺編みによる編み物4を良好に形成できる。
【0046】尚、この天竺編みとは、例えばニットを編む際などに用いられる編み方で、例えば毛糸をループ状に縦横方向に連続して形成(ループ同志を繋ぎあわせ)する編み方である(図1参照)。また、平編みとも言う。
【0047】このように複合撚糸3で天竺編みをすると、この複合撚糸3の外周部の水溶性ビニロン糸2の巻回による200回/100cmの強い撚りにより、図4(a)に示すように、編み目にズレが生じて編み物4に斜向が生じる。尚、図中符号5が斜向の方向を示す線5である。
【0048】第一実施例では、次に、この斜向が形成された編み物4に水分を加えることで前記水溶性ビニロン糸2を溶かして除去する。
【0049】具体的には、第一実施例では、ソーピング処理により編み物4に水分を加えて編み物4から水溶性ビニロン糸2を除去している。尚、ソーピング処理は編み物を編み上げた後に、この編み物に形成されるしわを除去するために従来から行われている加水処理工程で、例えば編み物4を水洗い若しくは湯洗いい、その後、水や湯と編み物4とを分離する方法が採用されている。
【0050】前記ソーピング処理により水溶性ビニロン糸2を除去すると、ソーピング処理前に編み物4に生じていた斜向が直る。
【0051】これは、複合撚糸3の水溶性ビニロン糸2の除去により、紡毛単糸1のみで編み物4が形成されることによる。
【0052】即ち、撚り回数が100回/100cmの紡毛単糸1は撚りが弱いために編み目の配列にズレが生じず、ソーピング処理前に水溶性ビニロン糸2の巻回により生じていた斜向はソーピング処理によって前記水溶性ビニロン糸2が除去されて図4(b)に示すように消去される。
【0053】この後は、通常の染色処理工程等の後処理を行い、斜向が生じない編み物4を完成させる。
【0054】第一実施例は上述のようにするから、紡毛単糸1で斜向のない天竺編みの編み物4が形成できる。
【0055】また、単に紡毛単糸1の外周面に水溶性ビニロン糸2を巻回する構成の複合撚糸3を用いて編み物4を形成し、単に業界で通常普通に行われるソーピング処理や染色処理で水溶性ビニロン糸2を容易に溶かすことができることで、紡毛単糸1を用いた天竺編みでも斜向を生じない編み物4を簡易に形成することができる。
【0056】また、第一実施例は、特別な装置,器具,機械等を必要とせず、これまでの装置類を用いて簡易に天竺編み用糸(無斜向糸)を形成できる上、業界で通常行われるソーピング処理や染色処理を利用して水溶性ビニロン糸2を溶かして除去するため、極めて実用的であり、量産性に秀れ安価に無斜向の編み物を実現できる画期的な編み物の製造方法及び天竺編み用糸となる。
【0057】また、第一実施例によれば細い紡毛単糸1を用いて編み物を形成できるため、従来は天竺編みでは出来なかった軽くて薄い編み物を形成できる。
【0058】尚、第一実施例では、紡毛単糸1の外周面に巻回する水溶性ビニロン糸2の巻回数を、紡毛単糸1の撚り回数未満に設定したが、紡毛単糸1の撚り回数以上でも良い。また、この際は、紡毛単糸1の撚り回数と水溶性ビニロン糸2の逆撚り回数との回数差が1.0×102回程度となるように設定し、且つ、この水溶性ビニロン糸2の逆撚り回数はこの逆撚りによって逆撚りされた紡毛単糸1の撚り回数が1.0×102回程度となるように設定すると良い。
【0059】第二実施例第二実施例では先ず、図5に示すように、300回/100cmの撚りを有する紡毛単糸1(撚糸1)と水溶性ビニロン糸2とを、紡毛単糸1が有する撚りの向きとは逆向きに、200回/100cmの合撚回数で互いに撚り合わせて複合撚糸3を形成する。
【0060】この紡毛単糸1と水溶性ビニロン糸2との合撚により、複合撚糸3を構成する紡毛単糸1は、元々有していた撚りが戻された構成となっている。
【0061】具体的には、複合撚糸3を構成する紡毛単糸1は、合撚により200回/100cm戻し撚りされて、その撚り回数は100回/100cmとなる。
【0062】また、複合撚糸3は、前記合撚により200回/100cmの撚られた状態となる。
【0063】続いて、第一実施例と同様に、この複合撚糸3を用いた天竺編みにより編み物4を形成すると、この編み物4は複合撚糸3の撚りによって、一時的に斜向が生じるが、前記ソーピング処理により、水溶性ビニロン糸2を溶かして除去することで、編み物4に生じた斜向を直すことができる。
【0064】また、その余は第一実施例と同様である。
【0065】また、各実施例では撚糸1として紡毛糸を採用したが、綿紡でも良いし、梳毛糸でも良く、紡績糸であれば適宜採用しても良い。
【0066】
【発明の効果】本発明は上述のようにするから、単に撚糸に水溶性ビニロン糸を巻回した複合撚糸を用いて天竺編みの編み物を形成し、この天竺編みの編み物に水分を加えてこの編み物から水溶性ビニロン糸を除去するだけで斜向が生じない天竺編みの編み物を製造できる極めて用途性に秀れ、実用性に秀れた画期的な編み物の製造方法となる。
【0067】また、編み物を形成する複合撚糸から水溶性ビニロン糸を除去することは、この水溶性ビニロン糸を水に溶かすだけで簡単にできるから、編み物業界で通常普通に行われている例えばソーピング処理や染色処理を利用することで、特別な工程を増やすことなく安価に無斜向の編み物を実現できる極めて用途性に秀れ、実用性に秀れた画期的な編み物の製造方法となる。
【0068】また、請求項3記載の発明については、紡毛単糸を用いても無斜向の編み物を実現することができるため、これにより従来にない軽くて薄い編み物を製造することができる極めて用途性に秀れ、実用性に秀れた画期的な編み物の製造方法となる。
【0069】また、請求項4記載の発明については、複合撚糸を構成する撚糸及び水溶性ビニロン糸を最適な撚り回数に設定しているから、上記作用効果を確実且つ良好に発揮できる極めて用途性に秀れ、実用性に秀れた画期的な編み物の製造方法となる。
【0070】また、請求項5記載の発明については、撚糸の外周面に巻回する水溶性ビニロン糸の逆撚り回数を、撚糸の撚り回数よりも多く設定したが、撚糸の芯部で水溶性ビニロン糸の除去の後に残る撚糸は、請求項1記載のものと同様の撚り回数であり、よって上記作用効果を良好に実現して編み物を形成できる極めて実用性に秀れた画期的な編み物の製造方法となる。
【0071】また、請求項6記載の発明については、単に撚糸に水溶性ビニロン糸を合撚した複合撚糸を用いて天竺編みの編み物を形成し、この天竺編みの編み物に水分を加えてこの編み物から水溶性ビニロン糸を溶かして除去するだけで斜向が生じない天竺編みの編み物を製造できる極めて用途性に秀れ、実用性に秀れた画期的な編み物の製造方法となる。
【0072】また、請求項8,9記載の発明については、従来できないといわれていた撚糸を用いた天竺編みによる無斜向の編み物を製造できる極めて実用性に秀れた天竺編み用糸となる。
【出願人】 【識別番号】390019297
【氏名又は名称】株式会社近藤商店
【住所又は居所】新潟県見附市柳橋町1103番地1
【出願日】 平成13年11月29日(2001.11.29)
【代理人】 【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛 (外1名)
【公開番号】 特開2003−166151(P2003−166151A)
【公開日】 平成15年6月13日(2003.6.13)
【出願番号】 特願2001−364908(P2001−364908)