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【発明の名称】 座席シート用立体編物
【発明者】 【氏名】小原 和幸
【住所又は居所】大阪府高槻市八丁畷町11番7号 旭化成株式会社内

【要約】 【課題】自動車、鉄道車両、航空機等の座席シートとして、立体編物単独で張設しても、振動減衰性に優れ、長時間あるいは繰り返し座った後の形態安定性に優れた座席シート用立体編物を提供する。

【解決手段】表裏二層の編地および該二層の編地を連結するモノフィラメントの連結糸から構成され、張設式振動減衰測定における共振周波数が5〜12Hzであり、20Hzにおける加速度伝達比が0.8以下であることを特徴とする座席シート用立体編物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 表裏二層の編地および該二層の編地を連結するモノフィラメントの連結糸から構成され、張設式振動減衰測定における共振周波数が5〜12Hzであり、20Hzにおける加速度伝達比が0.8以下であることを特徴とする座席シート用立体編物。
【請求項2】 弾性率が40cN/dtex以下かつ10%伸長時の弾性回復率が90%以上かつ糸/糸摩擦係数が0.2〜0.6である未加工糸、及び/又は、初期荷重0.25cN/dtexでのtanδが0.02〜0.1である未加工糸及び/又は初期荷重0.25cN/dtexでのtanδが0.025〜0.2である加工糸、を表裏二層の編地の少なくとも一部に用いることを特徴とする請求項1に記載の座席シート用立体編物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車、鉄道車両、航空機等の座席シート用立体編物に関する。
【0002】
【従来の技術】表裏二層の編地および該二層の編地を連結する連結糸から構成された立体編物は、優れたクッション性を有し、ウレタンに比べてリサイクル性が良好で燃焼時の有毒ガス発生等の問題を低減できたり、振動減衰性や乗員保持性に優れることから、座席シート等のクッション材として応用されつつある。例えば、特開2001−87077号公報には、表裏の編地がメッシュの立体編物をシートクッションフレームとシートバックフレームに張設したシートが開示されている。
【0003】しかしながら、上記の公報に記載されている、例えば、表裏の編地がメッシュ等の通常一般の立体編物の張設では、人が座った場合に立体編物の表裏の編地が伸長してたわむため良好なクッション性を示すが、該立体編物は、ヒステリシスロスを大きくして振動減衰性を高めている為、伸長する際に生じる表裏の編目の変形や、メッシュ形態の変形からくる繊維間のずれが瞬時には元に戻り難く、座った後に立体編物のたわみが回復せず、また、繰返し座ることにより張設した立体編物の反発感が徐々に低下し、座った後の跡形が残る等形態安定性にも劣るという問題点があった。さらに、立体編物の振動減衰が最適化されていないため、立体編物単独でシートを構成した場合、共振周波数の低下が十分でなく、また、15Hz以上の高周波数域での加速度伝達比が十分に低減しないという問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記問題点を解決したもので、張設式の座席シート材に単独で用いた場合でも、振動減衰性に優れる為に微振動を吸収し、繰り返し座った場合の形態安定性に優れ、長時間運転時の乗り心地に優れた座席シート用立体編物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、座席シートの振動特性について鋭意検討した結果、立体編物の振動特性における共振周波数を特定範囲とすることにより本発明の目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】すなわち、本発明は下記の通りである。
【0007】1.表裏二層の編地および該二層の編地を連結するモノフィラメントの連結糸から構成され、張設式振動減衰測定における共振周波数が5〜12Hzであり、20Hzにおける加速度伝達比が0.8以下であることを特徴とする座席シート用立体編物。
【0008】2.弾性率が40cN/dtex以下かつ10%伸長時の弾性回復率が90%以上かつ糸/糸摩擦係数が0.2〜0.6である未加工糸、及び/又は、初期荷重0.25cN/dtexでのtanδが0.02〜0.1である未加工糸及び/又は初期荷重0.25cN/dtexでのtanδが0.025〜0.2である加工糸、を表裏二層の編地の少なくとも一部に用いることを特徴とする上記1に記載の座席シート用立体編物。
【0009】以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】本発明の立体編物は、表裏二層の編地と、その二層の編地を連結するモノフィラメントの連結糸から構成されている。
【0011】本発明の立体編物は、張設式振動減衰測定における共振周波数が5〜12Hzであり、好ましくは5〜10Hz、さらに好ましくは5〜8Hzである。共振周波数がこの範囲であると、シートを構成した場合、高周波数域に2次共振が発生することを抑制し、また、人体の共振周波数と異なるため、人体に不要な振動が伝達し難いので優れた乗り心地が得られる。
【0012】本発明の立体編物は、20Hzにおける加速度伝達比が0.8以下、好ましくは0.7以下、さらに好ましくは0.5以下である。加速度伝達比が0.8以下であると、高周波数域での振動減衰性が十分であるため快適な乗り心地が得られる。
【0013】本発明の立体編物は、伸長時の平均剛性が800〜5000N/5cmであることが好ましく、より好ましくは1000〜2500N/5cmである。伸長時の平均剛性がこの範囲であると、柔軟性が適度であるため、シートに座った際の乗員保持性に優れ、また、適度な共振周波数および変形性を有するため、優れたフィット感および柔軟で良好な座り心地が得られる。
【0014】本発明の立体編物は、張設式圧縮時、980N荷重でのたわみが40〜110mmであることが好ましく、より好ましくは50〜100mmである。たわみがこの範囲であると、適度な共振周波数および変形性を有するため、優れたフィット感および柔軟で良好な座り心地が得られる。また、座った際のヒップポイントが下がりすぎることがないので、安定した姿勢を維持することができる。
【0015】さらに、本発明の立体編物は、張設式圧縮時、980N荷重までの線形性が50%以上であることが好ましく、より好ましくは60%以上である。線形性が50%以上であると、乗員の体重による振動減衰性、乗員保持性等の変化がなく、快適な座り心地が得られる。また、張設式圧縮時、980Nまで負荷−除荷した場合のヒステリシスロス率が60%以下であることが好ましく、より好ましくは50%以下である。ヒステリシスロス率が60%以下であると、長時間あるいは繰り返し座った後の形態安定性に優れる。
【0016】以上の通り、本発明の立体編物は、静的特性である伸長特性、張設式圧縮特性を特定範囲とすることにより、振動減衰性はもちろん、フィット感、乗員保持性、形態安定性等に優れた座席シートとすることが可能である。
【0017】本発明の立体編物を得るためには、表及び/又は裏側の編地の少なくとも一部に特定の物性を有する未加工糸及び/又はtanδが向上する加工糸を用いる事が好ましい。
【0018】未加工糸としては、弾性率が40cN/dtex以下かつ10%伸長時の弾性回復率が90%以上かつ糸/糸摩擦係数が0.2〜0.6の未加工糸であることが好ましい。このような未加工糸を用いることにより、伸長時の平均剛性を所望の範囲にし、張設式圧縮時のたわみ、ヒステリシスロスを所定の範囲にし、振動減衰性を向上させることができる。弾性率が大きすぎると伸長時の平均剛性が大きくなりすぎ、10%伸長時の弾性回復率が小さすぎると張設式圧縮時のヒステリシスロスが大きくなる場合が生じる。また、糸/糸摩擦係数が小さすぎると、糸/糸摩擦に起因するエネルギー散逸が充分でなく、振動減衰性が劣る場合があり、大きすぎると、編み地組織の変形を起こした際、ヒステリシスロスが大きくなる傾向があるので、糸/糸摩擦係数は、より好ましくは0.3〜0.5、さらに好ましくは0.35〜0.45である。このような未加工糸の例としては、ポリトリメチレンテレフタレート繊維が挙げられる。
【0019】また、初期荷重0.25cN/dtexでのtanδが0.02〜0.1の未加工糸を用いることが好ましい。このような未加工糸を用いることにより、加速度伝達比を低減することができる。このような未加工糸の例としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維が挙げられる。なかでも、特にtanδの値が大きいポリブチレンテレフタレート繊維が好ましいが、上記特性を満たせば、特に限定されない。
【0020】また、上記の未加工糸は単独で用いても良く、2種以上を複合、混用しても構わない。
【0021】本発明において、表及び/又は裏側の編地に用いる加工糸としては、tanδが0.025〜0.2である加工糸が好ましい。このような加工糸を用いることにより、加速度伝達比を低減することができる。このような加工糸の例としては、甘撚糸〜強撚糸、仮撚加工糸(POYの延伸仮撚糸を含む)、流体噴射加工糸、押し込み加工糸、ニットデニット加工糸等tanδを向上させた加工糸が挙げられる。
【0022】加工糸に用いる原糸は特に限定されず、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリプロピレン系繊維等の合成繊維、綿、麻、ウール等の天然繊維、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、リヨセル等の再生繊維等を挙げることができる。耐久性、弾性回復率から合成繊維が好ましく、ポリエステル系繊維がより好ましく、ポリトリメチレンテレフタレート繊維がさらに好ましい。
【0023】また、加工糸は単独で用いても良く、2種以上を複合、混用しても構わない。
【0024】本発明の立体編物に用いる繊維の繊度は、表裏の編地を構成する繊維としては、通常、56〜2000dtexのものが好ましく用いられるが、コース/ウェル数を所定の範囲に設定できるという点で、56〜500dtexがより好ましい。フィラメント数は任意に設定できるが、耐久性を向上させる上で、単糸繊度が好ましくは2〜10dtex、より好ましくは3〜8dtexとなるようにフィラメント数を設定することが望ましい。
【0025】本発明において、未加工糸、加工糸として好ましく用られるポリトリメチレンテレフタレート繊維は、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステル繊維であって、トリメチレンテレフタレート単位を好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上含むものである。したがって、第三成分として他の酸成分及び/又はグリコール成分の合計量が、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは20モル%以下、最も好ましくは10モル%以下含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0026】ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸又はその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に結合せしめることにより合成される。この合成過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよい。
【0027】添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(p−オキシ安息香酸等)等が例示される。また、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も、重合体が実質的に線状である範囲内で使用できる。
【0028】さらに、二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
【0029】ポリトリメチレンテレフタレート繊維の紡糸については、1500m/分程度の巻取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延撚する方法、紡糸−延撚工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)の何れを採用しても良い。
【0030】又、繊維の形態は、長繊維でも短繊維でもよく、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面においても、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
【0031】さらに糸条の形態としては、リング紡績糸、オープンエンド紡績糸等の紡績糸、原糸(極細糸を含む)、甘撚糸〜強撚糸、仮撚加工糸(POYの延伸仮撚糸を含む)、空気噴射加工糸、押し込み加工糸、ニットデニット加工糸等が例示される。
【0032】尚、本発明の目的を損なわない範囲内で、通常50wt%以下の範囲内で天然繊維、他の合成繊維等、例えば、綿、羊毛、麻、絹等の天然繊維、キュプラ、ビスコース、ポリノジック、精製セルロース、アセテート、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン、アクリル等の各種人造繊維、さらにはこれらの共重合タイプや、同種又は異種ポリマー使いの複合繊維(サイドバイサイド型、偏芯鞘芯型等)を、混紡(コアヤーン、サイロスパンやサイロフィル、ホロースピンドル等)、カバリング(シングル、ダブル)、例えば沸水収縮率3〜10%程度の低収縮糸又は、例えば沸水収縮率15〜30%程度高収縮糸との混繊や交撚、仮撚(伸度差仮撚、POYの延伸仮撚における複合等)、2フィード空気噴射加工等の手段で混用してもよい。
【0033】本発明の立体編物において、二層の編地を連結する連結糸を形成する繊維としては、単糸繊度56〜1500dtexのモノフィラメントを用いることが好ましい。反発感のあるクッション性を保持するためには、200〜1000dtexがより好ましい。このような繊維としては、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリプロピレン系繊維等の合成繊維のモノフィラメントが例示されるが、立体編物の形態安定性、クッション性向上の点で、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を用いることが好ましい。
【0034】本発明の立体編物は、相対する2列の針床を有する編機で編成することができる。このような編機として、ダブルラッセル編機、ダブル丸編機、Vベッドを有する横編機等がある。寸法安定性のよい立体編物を得る上で、ダブルラッセル機を用いるのが好ましい。
【0035】立体編物の表裏の編地は、伸長時の平均剛性を適切に設定できるバックハーフ、バックサテン、クインズコード等の組織が、表面を平坦な組織にして肌触りを良好なものにする上でも好ましいが、4角、6角等のメッシュ編地やマーキゼット編地等複数の開口部を有する編地に編成して、意匠性を付与しても良い。表裏の編地を異なる編組織としても良い。
【0036】編地のコース/ウェル数は、10/10〜30/30個/2.54cmが好ましく、特に15/15〜25/25個/2.54cmが好ましい。コース/ウェル数がこの範囲であると、糸と糸の交差部が十分で、糸/糸摩擦に起因する振動減衰性が充分であり、また、ループが詰まりすぎることなく、編成時に糸切れ等の問題が生じないので実用的な編成が可能である。所定のコース/ウェル数とするには、編み機ゲージ、機上コース、ヒートセット条件等を適宜選択することにより達成できる。
【0037】立体編物における連結糸の密度は、立体編物2.54cm平方の面積中に占める連結糸の総断面積(N・D/1×106・ρ)が、0.05〜0.5cm2であることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.3cm2である。但し、Nは立体編物2.54cm平方の面積中にある連結糸の本数(本/2.54cm平方)、Dは連結糸の繊度(g/1×106cm)、ρは連結糸の比重(g/cm3)を表す。連結糸の密度が上記の範囲であると、立体編物は、適度な剛性を有し、より一層良好なクッション性を有するようになる。なお、密度が小さすぎると反発性が低下し、大きすぎると、硬くなり、軽量性も低下する傾向がある。
【0038】連結糸は、表裏の編地中にループ状の編み目を形成してもよく、表裏の編地に挿入組織で引っかけた構造でもよいが、表裏の編地の伸長性を阻害しないように、引っかけた構造が好ましい。但し、少なくとも2本の連結糸が表裏の編地を互いに逆方向に斜めに傾斜して、クロス状(X状)やトラス状に連結することが、立体編物の形態安定性を向上させる上で好ましい。
【0039】立体編物の厚み及び目付は、立体編物の使用目的に応じて任意に設定できるが、厚みは3〜30mmが好ましい。厚みがこの範囲であると、優れたクッション性が得られ、また、立体編物の仕上げ加工が容易である。目付は100〜3000g/m2が好ましく、より好ましくは200〜2000g/m2である。
【0040】立体編物の仕上げ加工方法は、例えば、生機を精練、染色、ヒートセット等の工程を通して仕上げることができるが、立体編物の表裏及び/又は連結糸に原液着色糸を用いると染色工程を簡略化することできる。
【0041】仕上げ加工された立体編物は、座席フレームに張設する際に、あらかじめ融着等の手段で端部を処理したり、熱成形により所望の形状にして用いても良い。
【0042】本発明の立体編物は、座席フレームに張設されて主にハンモック状で好適に使用されるが、ハンモック状の立体編物の下部を、両端をコイルスプリングで支持した金属ワイヤー群や高弾性で伸長回復性の良好な布帛等で補強し、クッション性を向上させても良い。又、ハンモック状で使用せずに、座席に表皮材として張り合わせても良好なクッション特性を示すものとなる。
【0043】
【発明の実施の形態】以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0044】なお、測定方法、評価方法等は下記の通りである。
【0045】(1)伸長特性未加工糸及び加工糸の弾性率及び10%伸長時の弾性回復率は、以下の方法により測定した。
【0046】試料に0.009cN/dtexの初荷重をかけ、毎分20%の一定の速度で伸長し、伸度10%になったところで、今度は逆に同じ速度で収縮させて、応力−歪曲線を画く。収縮中、応力が初荷重と等しい、0.009cN/dtexにまで低下した時の残留伸度をLとする。
【0047】弾性率は、伸長時伸度2〜5%の傾きから常法により算出する。
【0048】10%伸長時の弾性回復率は下記式により算出する。
【0049】10%伸長時の弾性回復率(%)=〔(10−L)/10〕×100(2)糸/糸摩擦係数編成性測定機Model KS−2(杉原計器(株)社製)を用い、20℃、65%RH環境下で、糸速度50m/分、初期糸張力3gの条件で測定する。
【0050】(3)tanδ動的特性測定装置RSA−II(米国:RHEOMETRICS社製)を用い、室温下、サンプル長26mm、初期荷重0.25cN/dtex、付加歪み1%一定、周波数0.16〜16Hz、正弦波ログスイープの条件で測定し、周波数5、10、15Hzでのtanδを平均して算出する。
【0051】(4)伸長時の平均剛性立体編物を、長さ300mm、幅50mmにサンプリングし、チャック間200mmとなるように島津オートグラフDSS2000型((株)島津製作所製)に取り付ける。200mm/分の引っ張り速度で破断するまで伸長し、荷重−伸度曲線を得る。得られた曲線から、10%伸長時と破断時の2点間の傾きを算出し、タテ、ヨコ方向の傾きを平均して、伸長時の平均剛性とする。
【0052】(5)張設式圧縮特性4隅に高さ15cmの足を取付けた内径が1辺30cm、外径が1辺41cmの四角形の板状の金属枠(上面に40番のサンドペーパーを貼りつけて滑り止め性を付与)と、内径が1辺30cm、外径が1辺41cmの四角形の板状の金属枠(下面に40番のサンドペーパーを貼りつけて滑り止め性を付与)との間に、立体編物を弛まない様に挟み、周囲を万力で固定する。
【0053】島津オートグラフAG−B型(島津製作所製)を用い、直径100mmの円形平面状の圧縮端子により、張設した立体編物の中央部を100mm/分の速度で圧縮し、980Nの荷重になったら同速で元に戻す。この際に得られる荷重−変位曲線から、980N荷重時の変位をたわみとする。
【0054】圧縮荷重曲線と圧縮変位軸で形成される面積P、回復圧縮荷重曲線と圧縮変位軸で形成される面積R、原点とたわみ時の荷重を結んだ線分と圧縮変位軸で形成される三角形の面積Qを求め、次式により、線形性L及びヒステリシスロスHを算出する。
【0055】L(%)=〔P/Q〕×100H(%)=〔(P−R)/P〕×100(6)張設式振動減衰特性上記(5)と同様に張設した立体編物と金属枠を、加振機VIBRATIONGENERATOR F−300BM/A(エミック(株)社製)にボルトで固定する。サンプル中心部に水平になるよう直径100mmの円柱状で鉄製2kgの重りを静置する。金属枠に入力加速度、重り上部中央に出力加速度を測定する加速度ピックアップ(独B&K社製、4371型)を磁石で固定し、アンプ(独B&K社製、2692AOSI)を介してFFTアナライザー(小野測器(株)DS2000型)に接続する。
【0056】±1mmの一定変位で周波数1〜20Hz、正弦波ログスイープの条件で、加速度を測定し、加速度伝達比(=出力加速度/入力加速度)−周波数曲線を得る。該曲線において、加速度伝達比が最大になる周波数を共振周波数とし、20Hzでの加速度伝達比も併せて求める。
【0057】(7)シートの振動減衰性座部が40cm角の四角い金属フレームで作られた椅子(4脚、背もたれなし)のフレームに立体編物の周囲を緩まないように縫製して張設し、上記(6)で用いた加振機に椅子フレームをボルトで固定する。椅子フレームに入力加速度、体重65kgの男性の座骨部に出力加速度を測定する加速度ピックアップ(独B&K社製、4371型)を固定し、アンプ(独B&K社製、2692AOSI)を介してFFTアナライザー(小野測器(株)DS2000型)に接続する。
【0058】±1mmの一定変位で周波数1〜15Hz、正弦波ログスイープの条件で、加速度を測定し、加速度伝達比−周波数曲線を得る。該曲線から、共振周波数、10Hzでの加速度伝達比を求める。
【0059】(8)形態安定性上記(7)の評価で用いた椅子に、体重65kgの男性が10回、各5分間座った後、椅子に張った立体編物のへたり状態を外観評価により、下記の4段階で評価した。
【0060】
◎:へたりが全くない○:へたりが殆どない△:ややへたりがある×:へたりが激しい。
【0061】〔製造例〕実施例及び比較例において連結糸に使用したポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメントは、以下の方法により製造した。
【0062】ηsp/c=0.92(o−クロロフェノールを溶媒として、35℃で測定)のポリトリメチレンテレフタレートを紡糸温度265℃で紡口から吐出し、40℃の冷却浴中に導いて冷却しつつ、16.0m/分の速度の第1ロール群によって引張って細化し、未延伸モノフィラメント糸とした。
【0063】次いで、温度55℃の延伸浴中で4.9倍に延伸しながら78.4m/分の第2ロール群によって引張り、その後、120℃のスチーム浴中で弛緩熱処理を施しながら、71.6m/分の第3ロール群を経た後、第3ロール群と同速の巻取り機で巻取り、280dtexの延伸モノフィラメントを得た。
【0064】〔実施例1〕6枚筬を装備した18ゲージ、釜間12mmのダブルラッセル編機を用い、表裏の編地を形成する4枚の筬(L1、L2、L5、L6)から167dtex/48フィラメントのポリトリメチレンテレフタレート繊維(旭化成社製)の未加工糸をオールインで、連結糸を形成する二枚の筬(L3、L4)から製造例で得られたポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメントを、1イン1アウトの配列でガイドに供給し、打ち込み15コース/2.54cmで、以下に示す編組織で連結糸が部分的にクロス構造(×構造)を形成する表裏バックハーフ組織の立体編物を編成した。
【0065】この立体編物を170℃×45秒、フリーでプレセットし、70℃×20分で精練、乾燥後、熱セット(170℃×45秒)し、立体編物を得た。得られた立体編物の特性を評価した結果を表1に示す。
【0066】(編組織)
L1:1011/2322L2:1211/1011L3:1023/4532L4:4532/1023L5:1112/1110L6:1110/2223得られた立体編物は,優れた振動減衰性を有し、モニターの評価も良好であった。また、繰り返し着座しても反発感に優れ、形態変化もほとんどみられない優れた特性を有していた。
【0067】〔実施例2及び3〕実施例1において、表裏の編地に用いる繊維を、167dtex/48フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維(旭化成社製)の未加工糸(実施例2)、167dtex/48フィラメントのポリトリメチレンテレフタレート繊維(旭化成社製)の2ヒータ加工糸(実施例3)にそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして立体編物を得た。得られた立体編物の特性を評価した結果を表1に示す。
【0068】得られた立体編物は、優れた振動減衰性を有し、モニターの評価も良好であった。また、繰り返し着座しても反発感に優れ、形態変化もほとんどみられない優れた特性を有していた。
【0069】〔実施例4〜6〕実施例1〜3において、以下に示す編組織で連結糸が部分的にクロス構造(×構造)を形成する表裏クインズコード組織の立体編物を編成したこと以外は、実施例1〜3と同様にして立体編物を得た。得られた立体編物の特性を評価した結果を表1に示す。
【0070】(編組織)
L1:1011/3433L2:0111/1000L3:1023/4532L4:4532/1023L5:0001/1110L6:1110/3334得られた立体編物は、優れた振動減衰性を有し、モニターの評価も良好であった。また、繰り返し着座しても反発感に優れ、形態変化もほとんど見られない優れた特性を有していた。
【0071】〔実施例7〕実施例4において、編成した立体編物を170℃×45秒、定長でコース/ウェル数が15/15個/2.54cmとなるようプレセットし、70℃×20分で精練、乾燥後、定長でコース/ウェル数が15/15個/2.54cmとなるよう熱セット(170℃×45秒)し、立体編物を得た。得られた立体編物の特性を評価した結果を表1に示す。
【0072】得られた立体編物は、振動減衰性は極めて優れていたが、繰り返し着座した際の形態安定性が若干劣るものであった。
【0073】〔実施例8〕実施例4において、編成した立体編物を70℃×20分で精練、乾燥後、フリーで熱セット(185℃×50秒)し、立体編物を得た。得られた立体編物の特性を評価した結果を表1に示す。
【0074】得られた立体編物は、若干振動減衰性に劣るが、繰り返し着座しても反発感に優れ、形態変化もほとんどみられない優れた特性を有していた。
【0075】〔比較例1〕実施例2で表裏の編地に用いた167dtex/48フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維(旭化成社製)の未加工糸を伸長率10%で180℃乾熱で連続熱処理した。得られた繊維はtanδが0.015に低下した。該繊維を表裏の編地に用いたこと以外は、実施例2と同様にして立体編物を得た。得られた立体編物の特性を評価した結果を表1に示す。
【0076】表1から明らかなように、高周波数における加速度伝達比が大きく、充分に振動減衰しないため、振動減衰性に劣るものであった。
【0077】〔比較例2〕6枚筬を装備した9ゲージ、釜間14mmのダブルラッセル編機を用い、表裏の編地を形成する4枚の筬(L1、L2、L5、L6)から1670dtex/108フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維(旭化成社製)の未加工糸を1イン1アウトで、連結糸を形成する二枚の筬(L3、L4)から880dtexのポリエチレンテレフタレートモノフィラメント(旭化成社製)を、1イン1アウトの配列でガイドに供給し、打ち込み10コース/2.54cmで、以下に示す編組織で連結糸が部分的にクロス構造(×構造)を形成する表裏メッシュ組織の立体編物を編成した。
【0078】この立体編物を、170℃×45秒、定長でプレセットし、70℃×20分で精練、乾燥後、熱セット(170℃×45秒)し、立体編物を得た。得られた立体編物の特性を評価した結果を表1に示す。
【0079】(編組織)
L1:1011/2322L2:2322/1011L3:1023/4532L4:4532/1023L5:2223/1110L6:1110/2223表1から明らかなように、共振周波数が大きく、人体と共振を起こしやすいために快適性に劣るものである。
【0080】〔比較例3〕実施例1において、打ち込み32コース/2.54cmに変更した以外は、実施例1と同様にして編成を行おうとしたが、繊維同士が接触する等で毛羽、糸切れが発生し、実用的な編成が出来なかった。
【0081】
【表1】

【0082】
【発明の効果】本発明の立体編物は、張設した立体編物単独で構成したシートであっても、振動減衰性に優れ、長時間、あるいは繰り返し座った後の形態安定性を向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市北区堂島浜1丁目2番6号
【出願日】 平成13年11月21日(2001.11.21)
【代理人】 【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬 (外2名)
【公開番号】 特開2003−155648(P2003−155648A)
【公開日】 平成15年5月30日(2003.5.30)
【出願番号】 特願2001−356291(P2001−356291)