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【発明の名称】 柄付き伸縮性布帛
【発明者】 【氏名】大家 義信
【住所又は居所】大阪市北区堂島浜二丁目2番8号 東洋紡績株式会社本社内

【氏名】森谷 明
【住所又は居所】大阪市北区堂島浜二丁目2番8号 東洋紡績株式会社本社内

【要約】 【課題】本発明の目的は、伸縮性布帛における柄の着用前と着用中の間の審美性低下が小さく、着用時の柄について消費者の誤認が生じにくい柄付き伸縮性布帛を提供することにある。

【解決手段】以下の条件、1.弾性糸を含む伸縮性布帛において、該弾性糸の熱セット率が60%以上であることを特徴とする柄付き伸縮性布帛、2.1記載の弾性糸がポリウレタン弾性糸であることを特徴とする柄付き伸縮性布帛、3.1又は2記載の弾性糸を芯糸とし、非弾性糸を巻き付けたカバリング糸を含むことを特徴とする柄付き伸縮性布帛、4.3記載の伸縮性布帛が、タイツであることを特徴とする柄付き伸縮性布帛、の構成される柄付き伸縮性布帛をからなるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】熱セット率が60%以上である弾性糸からなることを特徴とする柄付き伸縮性布帛。
【請求項2】弾性糸がポリウレタン弾性糸であることを特徴とする請求項1に記載の柄付き伸縮性布帛。
【請求項3】弾性糸を芯糸とし、該弾性糸に非弾性糸を巻き付けてなるカバリング糸を含むことを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の柄付き伸縮性布帛。
【請求項4】請求項1乃至3のいずれかに記載の柄付き伸縮性布帛からなることを特徴とするタイツ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、着用前と着用中の間における審美性の低下が小さく、消費者が着用時の柄について、着用前の柄との誤認を生じることを避けた柄付き伸縮性布帛に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ストレッチ性が要求される衣料分野で伸縮性布帛は、広く使用されており、ファッションの進歩と共に、種々柄を有する製品が市場で取り引きされている。しかし従来の伸縮性布帛は、着用前と着用中で大きく性量が変化するため、着用中は柄が引き延ばされた状態となって審美性が低下し、消費者が製品購入時にイメージした柄と実際に使用する着用時の柄が大きく異なり、消費者に不利益を及ぼすものであった。
【0003】着用前と着用中の性量変化を小さくするためには、伸縮性布帛製造時における弾性糸のドラフトを小さくすることが考えられるが、かかる場合は弾性糸の解除不良や製造時のテンション不足などにより糸切れが多くなり、著しく操業性が低下する。また弾糸のドラフトを小さくして製造できたとしても、仕上がった布帛の性量が大きくなり、軽量感に欠けるものしか得られなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、着用前と着用中の柄の変化が小さい、すなわち審美性の低下が小さく、消費者が、展示された製品の柄に基づいて着用時の柄を製品購買時に容易に認識できる伸縮性布帛を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、以下の条件を満たす伸縮性編地に関する。
■弾性糸を含む伸縮性布帛において、該弾性糸の熱セット率が60%以上であることを特徴とする柄付き伸縮性布帛、■記載の弾性糸がポリウレタン弾性糸であることを特徴とする柄付き伸縮性布帛、■又は■記載の弾性糸を芯糸とし、非弾性糸を巻き付けたカバリング糸を含むことを特徴とする柄付き伸縮性布帛、■記載の伸縮性布帛が、タイツであることを特徴とする柄付き伸縮性布帛、の構成からなるものである。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明者らは、消費者が誤認を生じにくい、即ち着用前と着用中の柄の変化が小さい布帛を提供すべく鋭意検討した結果、伸縮性を付与するために布帛に含まれる弾性糸の熱セット率を60%以上、好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上とすることにより、本発明の目的を達成することを見いだした。即ち、本発明による柄付き伸縮性布帛は、熱セット性に優れ、熱セット工程において十分に熱セットがなされるため、軽量でかつ着用時の性量に近い布帛が得られ、店頭等に展示されている布帛の柄と消費者の使用時、即ち着用時の柄が近くなり、消費者が持つ着用時のイメージに近い柄の伸縮性布帛製品を提供することができる。
【0007】本発明でいう伸縮性布帛とは、ストッキング、ソックス、セーター、ショーツ、インナー等が挙げられるが、これらに限られず、本発明の弾性糸を用いた着用前と着用時の性量が変化する布帛を意味する。特に本発明による柄付き伸縮性布帛からなるタイツに効果は大きい。
【0008】本発明の伸縮性布帛に用いる弾性糸はポリウレタン弾性糸が好ましく、更に好ましくは熱可塑性のポリウレタン弾性糸である。熱可塑性弾性糸は一般に熱セット性が良好であり、本発明に用いる弾性糸に適する。
【0009】その一例として以下に挙げる特性を有するポリウレタン弾性糸は、本発明に用いることができる。即ち、(1)小角X線散乱測定における方位角スキャンの最大ピーク強度の半価幅のなす角度が60度以上、(2)小角X線散乱測定における赤道方向の半価幅のなす角が2.5度以下、(3)熱応力測定における最大収縮応力ピーク温度が135℃以下、からなるポリウレタン弾性糸である。
【0010】ここで小角X線散乱及び熱応力測定は以下の通り測定したものである。
(小角X線散乱測定)糸をかせ取りし、約1800本の束の両端を結んで測定試料とした。写真撮影はRADRC X線発生装置を用い、点収束カメラでカメラ距離350mm,30分露光で撮影を行った。X線源はCuKα線(Niフィルター使用、波長1.5418オングストローム)、出力40.Okvを用いた。
(熱応力測定)セイコー電子工業(株)製、SSC#5200装置を用いて糸長2c血の一本の糸にデニールあたり、5mgの初期荷重をかけ、昇温速度20℃/分で測定をおこなった。
【0011】上記の条件を満たすポリウレタン弾性糸を用いれば、熱セット性が良好な柄付き布帛が得られ、消費者が着用時の柄を容易に認識できる柄付き布帛を提供することができる。
【0012】本発明に係る柄付き伸縮性布帛に用いるポリウレタン弾性糸の小角X線散乱測定における方位角スキャンの最大ピーク強度の半価幅のなす角が60度以上であることが望ましい。ここで言う、小角X線散乱測定における方位角スキャンの最大ピーク強度の半価幅のなす角とは、方位角スキャン測定を行い得られた回折像写真の中心と最大ピーク強度の半価幅とのなす角を意味する。
【0013】60度未満であると主としてウレタンハードセグメントからなる結晶領域の配向性が高くなるため、収縮力が過大となり、ひいては良好な熱セット性が得られず、又は着用時の締め付け感が過大となる。本発明では、結晶領域の配向性をあえて乱すことにより、繊維軸方向に歪みが生じる際に比較的低応力で歪み変形するポリウレタン弾性糸となすものである。好ましくは75〜85度である。
【0014】本発明にかかるポリウレタン弾性糸は上記特徴に加えて小角X線散乱測定における赤道方向の半価幅のなす角が2.5度以下である構造を有するものが好ましい。ここで言う小角X線散乱測定における赤道方向の半価幅のなす角とは、回折像写真における子午線方向の散乱の赤道方向の半値幅とサンプルから作られる二等辺三角形の頂角である。2.5度を超えると結晶領域、特に繊維軸方向に対して横方向の成長が不十分となり得られた糸の強伸度が低くなり実用上に問題が生じる。好ましくはO.8度以上2.5度以下、更に好ましくは0.8度以上1.5度以下である。0.8度未満ではウレタンハードセグメントからなる結晶領域の、特に繊維軸方向の広がりが大きくなり、伸縮力が過大となり、良好な熱セット性及び着用感が得られないからである。
【0015】本発明にかかる伸縮性編地用いるポリウレタン弾性糸の熱応力測定における最大収縮応力ピーク温度は135度以下であることが望ましい。135度を超えると、アクリル及びウール、綿、絹等の素材と組み合わせた場合、これらの素材の適正加工条件で十分なセット性が得られず、消費者の多様な要請に応えられない。従って最大収縮応力ピーク温度は低温であるほど望ましく、130以下、更には115度以下、更には100度以下が好ましい。
【0016】本発明の伸縮性布帛に用いる弾性糸は、カバリング糸として用いても良く、該カバリング糸はポリウレタン弾性糸を芯糸とし、非弾性糸巻き付けるか交絡させたカバリング糸であっても良い。また伸縮性布帛は、上記の商品の中で特にタイツにおいてそのその効果が顕著である。一般にタイツは着用前と着用時の局部的な性量変化が他の最終製品に比して大きく、着用前後での柄イメージ変化が少ない本発明の効果が顕著に表れる。
【0017】本発明でいう柄とは、編み組織による生成される柄以外にも、プリント、染色等による色分けによる模様を含み、社会通念上の柄と認識されるものをいう。例えば、ダイヤ柄、ニット柄があげられる。
【0018】伸縮性布帛に柄を付ける方法としては、柄編み機によるもの、ラッセルによるもの、プリントによるもの等がある。本発明においては、柄編み機によって柄を付する方法であるが、特に限定されることなく、通常の方法でも柄付けができる。本発明に採用する方法では、110℃の熱セットを行うために、上述したように熱セット率が60%以上であれば、問題なく使用できる。
【0019】本発明に用いるポリウレタン弾性糸の繊度は、10dtex〜280dtexが好ましく、更に好ましくは20dtex〜78dtexである。また、カバリング糸とする時の鞘糸としては、ナイロン、エステルを使用することができ、好ましくは、ナイロンである。また、その繊度としては、20dtex〜140dtexが好ましく、更に好ましくは30dtex〜70dtexである。
【0020】本発明に使用するポリウレタン弾性糸は、ジイソシアネート、ポリオール、ジアミン又はジオールを原料として重合して供せられる。この弾性体は溶媒に溶かして乾式紡糸をすることもできるが、好ましくは、ポリマーそのものを溶かしておこなう溶融紡糸が生産性からも有効である。
【0021】[実施例]以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、熱セット率測定は、以下の方法に従った。
【0022】(熱セット率測定法)初期長22.5cm(L1)の弾性系を100%伸張下で乾熱120℃で一分間処理した後、室温で10分間放縮、放冷させた後の糸長(L2)を測定し次式により求めた。
熱セット率(%);(L2-L1)/L1×100【0023】(着用前と着用中の柄の変化評価方法)体型の異なる被験者10名により着用テストをおこない、着用前の柄と着用中の柄について殆ど変化が見られないものについては3点、若干柄が変化するが着用前の柄から着用中の柄を十分に想起できたものを2点、着用前の柄から着用中の柄を想起できず、極端に審美性が低下する物に対しては1点とし、10名分の点数を加算して評価をおこなった。
【0024】[実施例1]実質的にNC0/0Hのモル比が1以下であるポリプチレンアジペート系ポリオール/ジフェニルメタンジイソシアネート/1,4ブタンジオールからなるショアA高度90のポリウレタン重合体を、単軸押し出し機付き紡糸装置に供給して、紡糸温度220度、孔径O.2mmφの口金を用い、巻き取り速度500m/min.の条件下で溶融紡糸し、22dtexのモノフィラメントを得た。この時、紡糸筒内のクエンチ温度から巻き取り装置に至るまでの環境温度を10度に制御して紡糸をおこなった。こうして得られたポリウレタン弾性糸の熱セット率は77%であった。得られたポリウレタン弾性糸を芯糸とし、巻き糸にナイロン6のウーリーナイロン44dtex、22filの糸条を用い、カバリングの際の芯糸ドラフトを2,8、撚り数650回/mに設定し、シングルカバリング糸を製造した。得られたシングルカバリング糸を地糸とし、柄糸にウーリーナイロン28dtex、10fi1双糸を使用し、4ロパンティストッキング編み機(4φ×400本)にて編成した。編成の際、針下げカムを調整し、対角線が9ウェールと11コースがからなるひし形の柄を付与した。この後プレセット(80℃×20分)を行い、裁断、縫製、染色加工、ファイナルセット(110℃×20秒)の一連の後加工を行いひし形の柄を有するパンティストッキングを得た。得られたパンティストッキングの着用前と着用中の柄の変化評価をおこなったところ、27点であり、消費者の誤認を生じ難いパンティストッキングであると判断した。
【0025】[実施例2]実質的にNC0/OHのモル比が1以下であるポリテトラメチレングリコールーポリブチレンアジペート共重合系ポリオール(3/7)/ジフェニルメタンジイソシアネート/1,4一ブタンジオルからなるペレット状のポリウレタン重合体を、単軸押し出し機付き紡糸装置に供給して、紡糸温度215度、孔径0.28mmφの口金を用い、巻き取り速度550m/min.の条件下で溶融紡糸し、22dtexのモノフィラメントを得た。この時、紡糸筒内のクエンチ温度から巻き取り装置に至るまでの環境温度を10℃に制御して紡糸をおこなった。こうして得られたポリウレタン弾性糸の熱セット率は75%であった。上記のポリウレタン弾性糸を使用した以外は、実施例1と同様の方法でパンティストッキングを得た。得られたパンティストッキングの着用前と着用中の柄の変化評価をおこなったところ、23点であり、消費者の誤認を生じ難いパンティストッキングであると判断した。
【0026】[比較例1]実質的にNC0/0Hのモル比が1.1であるポリテトラメチレングリコールーポリブチレンアジペート共重合系ポリオール(3/7)/ジフェニルメタンジイソシアネート/1,4一ブタンジオールからなるショアA高度90のポリウレタン重合体を、単軸押し出し機付き紡糸装置に供給して、紡糸温度220℃、孔径O.28mmφの口金を用い、巻き取り速度500m/min.の条件下で溶融紡糸し、22dtexのモノフィラメントを得た。この時、紡糸筒内のクエンチ温度から巻き取り装置に至るまでの環境温度を25℃に制御して溶融紡糸をおこなった。こうして得られたポリウレタン弾性糸の熱セット率は40.4%であった。上記のポリウレタン弾性糸を使用した以外は、実施例1と同様の方法でパンティストッキングを得た。得られたパンティストッキングの着用前と着用中の柄の変化評価をおこなったところ、17点であり、消費者の誤認を生じ易いパンティストッキングであると判断した。
【0027】[比較例2]ポリプチレンアジペート系ポリオール/ジフェニルメタンイソシアネート/エチレンジアミンのジメチ/レアセトアミド溶液からなる紡糸原液を孔径O.28mmφ、孔長O.56mmの口金を用い、220℃の加熱空気を流した紡糸筒内に押しだし、巻き取り速度500m/分の条件下で乾式紡糸し、22dtexのモノフィラメントを得た。こうして得られたポリウレタン弾性糸の熱セット率は20.4%であった。上記のポリウレタン弾性糸を使用した以外は、実施例1と同様の方法でパンティストッキングを得た。得られたパンティストッキングの着用前と着用中の柄の変化評価をおこなったところ、12点であり、消費者の誤認を生じ易いパンティストッキングであると判断した。
【0028】
【表1】

【0029】
【発明の効果】本発明によると、着用前と着用中の柄の変化が小さい、すなわち審美性の低下が小さく、消費者が、展示された製品の柄に基づいて着用時の柄を製品購買時に容易に認識できる伸縮性布帛を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡績株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市北区堂島浜2丁目2番8号
【出願日】 平成13年11月6日(2001.11.6)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−147666(P2003−147666A)
【公開日】 平成15年5月21日(2003.5.21)
【出願番号】 特願2001−340876(P2001−340876)