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【発明の名称】 安全ネット
【発明者】 【氏名】北原 洋
【住所又は居所】愛媛県松山市北吉田町77番地 帝人株式会社松山事業所内

【氏名】山内 俊男
【住所又は居所】愛媛県松山市北吉田町77番地 帝人株式会社松山事業所内

【要約】 【課題】折畳みや、張設に伴う繰り返し受けても、網強力の低下が少ない安全ネットを提供する。

【解決手段】鎖編糸及び挿入糸として使用されている繊維が、固有粘度0.7〜1.2、強度6〜10cN/dtex、破断伸度13〜25%および伸長弾性回復率85%以上のポリトリメチレンテレフタレート繊維である安全ネットによる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 鎖編糸と挿入糸とで編組された編地からなる安全ネットにおいて、鎖編糸及び挿入糸として使用されている繊維が、固有粘度0.7〜1.2、強度6〜10cN/dtex、破断伸度13〜25%および伸長弾性回復率85%以上のポリトリメチレンテレフタレート繊維である安全ネット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建築工事用等に好ましく用いられる安全ネットに関する。更に詳しくは鎖編糸と挿入糸から構成されるラッセル編網地からなり、繰り返し使用に際して、優れた伸長回復性を有し、網強力の経時劣化が少ない安全ネットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリエステル繊維は、種々の優れた特性を有するため、高強度を要求される産業資材用途、例えば安全ネット等に使用が拡大している。該安全ネットでは、作業の安全性確保の上で、編地網強力およびその経時耐久性が要求される諸特性の中でも最も重要視されている。
【0003】このような網強力およびその経時耐久性を改善する方法として、特開平3−137255号公報には、固有粘度0.7以上、破断強度7.0g/d以上、破断伸度15%以上、タフネス110以上、引掛け強度5g/d以上のポリエステル繊維を用いる方法が提案されている。しかし、このような繊維を鎖網糸と挿入糸からなるラッセル編網地となした場合、該鎖網糸と挿入糸との伸長挙動が異なるため、目付けの割には網強力は充分に向上しないし、また工事現場での折畳みや、張設に伴う伸長を繰り返し受けると、伸長回復性が低下し、網強力が使用限界を下回り、使用不可となるという問題があった。
【0004】特開平6−240885号公報では、鎖編糸と挿入糸に異なった伸度を有するポリエチレンテレフタレート繊維を用い、伸長応力挙動を近づけることにより、網強力を向上させる方法が提案されている。この方法によれば,網強力の初期値は確かに向上するが、工事現場での折畳みや、張設に伴う伸長を繰り返し受ける場合、伸長回復性が乏しく使用経時に伴い網強力が低下するという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技術の課題を背景になされたもので、その目的は、優れた初期網強力を有し、かつ工事現場での折畳みや、張設に伴う伸長を繰り返し受けても、優れた伸長回復性を有し網強力の低下が少ない安全ネットを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、鎖糸と挿入糸とで編組された編地からなる安全ネットにおいて、鎖編糸及び挿入糸として使用されている繊維が、固有粘度0.7〜1.2、強度6〜10cN/dtex、破断伸度13〜25%および伸長弾性回復率85%以上のポリトリメチレンテレフタレート繊維である安全ネットに到達した。
【0007】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明の安全ネットは、鎖網糸と挿入糸とで編組された網地、縁編、仕立糸、吊網等によって構成された安全ネット製品のうち、その中枢である網地に特徴があるものである。
【0008】本発明の安全ネットは、鎖編糸及び挿入糸として使用されている繊維が、固有粘度0.7〜1.2、強度6〜10cN/dtex、破断伸度13〜25%および伸長弾性回復率85%以上のポリトリメチレンテレフタレート繊維でなければならない。
【0009】本発明の編網地を構成する繊維の成分であるポリトリメチレンテレフタレートとは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルであって、本発明の目的を阻害しない範囲内で、例えば酸成分を基準として5モル%以下で第三成分を共重合したポリエステルであっても良い。
【0010】好ましく用いられる第三成分としては、例えば、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、金属スルホイソフタル酸等の酸成分や、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等のグリコール成分など、各種のものを用いることができ、紡糸安定性などを考慮して適宜選択すれば良い。
【0011】このようなポリトリメチレンテレフタレート繊維を、鎖網糸と挿入糸とに使用して編組した安全ネットは、驚くべきことに、従来のポリエチレンテレフタレート繊維を使った安全ネットに比較して、繰り返し使用時の伸張回復性が飛躍的に優れていることを見出した。このポリトリメチレンテレフタレート繊維が繰り返し使用時の伸張回復性にもたらす効果のメカニズムは明確ではないが、ポリトリメチレンテレフタレート繊維はポリエチレンテレフタレート繊維に比較し、よりソフトで、弾性に富んでいる物性が関係しているのではないかと推定される。
【0012】本発明で用いられるポリトリメチレンテレフタレート繊維の固有粘度は0.7〜1.2、より好ましくは0.8〜1.0、の範囲でなければならない。ポリトリメチレンテレフタレート繊維の固有粘度が0.7未満の場合、繰り返し使用時の伸張回復性が改善されず、また初期の網強力も使用基準に達しない。ポリトリメチレンテレフタレート繊維の固有粘度が1.2を超える場合は、初期網強力は充分高くなるか、繰り返し使用時の伸長回復性が乏しく、網組織が変化し網強力が経時的に低下する。
【0013】次に、本発明の安全ネットを構成するポリトリメチレンテレフタレート繊維の破断強度(引張強度)は6〜10cN/dtex、より好ましくは7〜9cN/dtex、の範囲でなければならない。破断強度が6cN/dtex未満の場合は、仮設工業会で規制している網強力の基準値400N以上を達成することが出来ない。ポリトリメチレンテレフタレート繊維の破断強度が10cN/dtexを超える場合は繰り返し使用時の伸長回復性が乏しく、網組織が変化し網強力が経時的に低下する。
【0014】次に、本発明の安全ネットを構成するポリトリメチレンテレフタレート繊維の破断伸度は13〜25%、より好ましくは16〜20%、の範囲でなければならない。ポリトリメチレンテレフタレート繊維の破断伸度が13%未満の場合は糸の柔軟性が不充分で強力利用率が低下するため、網強力400N以上を達成することができないし、繰り返し使用時の伸長回復性が乏しく、網組織が変化し網強力が経時的に低下する。ポリトリメチレンテレフタレート繊維の破断伸度が25%を超える場合は、安全ネット自体の寸法安定性が悪く実用に耐えるものとはならない。
【0015】次に、本発明の安全ネットを構成するポリトリメチレンテレフタレート繊維の伸長弾性回復率は85%以上、より好ましくは88%以上でなければならない。ポリトリメチレンテレフタレート繊維の伸長弾性回復率が85%未満の場合は、繰り返し使用により、網組織が変化し網強力が経時的に低下する。
【0016】このようなポリトリメチレンテレフタレート繊維の重合体中に、ポリエチレンテレフタレート繊維で従来使用されている2官能性リン化合物を、リン元素量として0.2〜1.0重量%、特に0.3〜0.7重量%の範囲で共重合させると、網強力を低下させることなく難燃性を向上させることができるので好ましい。
【0017】また、上記ポリトリメチレンテレフタレートには、本発明の目的を阻害しない範囲で着色剤、艶消剤、耐光性向上を目的とした紫外線吸収剤を添加してもよい。特にシアニン系、スチルベン系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ペリノン系、無機顔料などの着色剤が配合されている場合、着色されるのみでなく耐光性も向上するので好ましい。さらには耐光性が45%以上であることが好ましい。
【0018】本発明のポリトリメチレンテレフタレート繊維は、従来公知の方法で製造することができる。すなわち、ポリトリメチレンテレフタレート重縮合工程で、必要に応じて、例えば前記2官能性リン化合物を所定量添加し共重合させ、固有粘度が0.6〜0.9のポリトリメチレンテレフタレートを得る。次いで、ペレット状に細断したポリトリメチレンテレフタレート(以下ポリトリメチレンテレフタレートチップと称する)を常法で固相重合し、固有粘度0.7〜1.5のポリトリメチレンテレフタレートチップを得る。
【0019】得られたポリトリメチレンテレフタレートチップは、必要に応じて、例えば着色剤、艶消剤、紫外線吸収剤等の添加剤を予めマスターチップに配合した着色チップと混合され(実施例では随時原着と称する)、乾燥後、溶融・吐出し、吐出された糸条を融点以上の温度に加熱された雰囲気中を通過せしめた後、冷却風にて冷却固化せしめ、油剤を0.05〜1.0重量%付与し、紡糸速度500〜1000m/分の速度で引き取る。
【0020】得られた未延伸糸をガラス転移点以上の温度で予熱し未延伸糸の応じた引き取り速度に応じた延伸倍率で4.0〜6.0倍に延伸し、次いで120〜200℃の温度で熱セットをして巻き取ることにより得られる。
【0021】得られた延伸糸に下撚及び上撚を施して所定の繊度の合撚糸となし、次いでラッセル編機を用いて網地となし、更に150〜200℃で0.5〜3分間熱処理して安全ネットを得る。
【0022】
【実施例】以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、実施例における各項目は次の方法で測定した。
【0023】(1)固有粘度フェノール/テトラクロロエタン=1/1混合溶媒にて、定法により30℃で測定した。
【0024】(2)破断強度、破断伸度JIS−L1013の方法により破断強度、破断伸度を測定した。
【0025】(3)伸長弾性回復率JIS−L1013の定義による伸長弾性率の測定方法に準拠して行った。繊維を、20℃、65%RHの温湿度管理された部屋で24時間放置後、引張試験機により糸長20cm、引張り速度2cm/分で10%伸長後、直ちに除重し、元のつかみ間隔に戻した後、直ちに2cm/分の引張り速度で引張った。そして、下記式により伸長弾性回復率を求めた。
伸長弾性回復率(%)=(L−L1)/L×100L:10%伸長時の伸び(mm、ここでは20mm)
L1:第1回目引張り後の残留ひずみ(mm)
【0026】(4)網強力仮設工業会法に準じ、試長20cm、引張速度20cm/分で測定した、なお挿入糸のみの荷伸曲線は、他方の糸を編組織を崩さないままカットし、上記(2)の方法で測定した。
【0027】(5)網強力維持率(張設試験)
安全ネットをネット長縦方向5m×横方向5m、8点支持法によって屋外に2日間放置する張設試験を5回繰り返し行い、試験前および5回終了後の各々の網強力より網強力維持率を求め、この維持率が80%以上を合格とした。
【0028】(6)難燃性JIS・L−1091(D)に従って測定した。
【0029】(7)耐光性糸をブラックパネルに捲いて、83℃で紫外線照射200時間経過後のポリトリメチレンテレフタレート繊維の強度保持率を測定した。
【0030】[実施例1]
(2−カルボキシエチル)メチルホスフィン酸をリン元素量として0.5重量%共重合した固有粘度0.60のポリトリメチレンテレフタレート(PTT)チップを減圧下、180℃で固相重合を行い、固有粘度0.88のチップを得た。このチップと同一組成で固有粘度0.80のポリトリメチレンテレフタレートに着色剤としてシアニン系ブルーを20重量%配合したブルーの着色チップとを35:1の割合で280℃の温度で混合溶融し、孔径0.6mmの紡糸孔を有する口金から吐出した。吐出された糸条は口金下に設けられた長さ300mm、温度300℃の加熱雰囲気を通過させた後、長さ500mmにわたって25℃、6Nm3/分の冷却風で冷却固化させ、800m/分の速度で引き取った。得られた未延伸糸を一旦巻き取ることなく、70℃加熱ローラーで予熱した後、延伸倍率4.8倍で延伸し、180℃で熱セットを行って1670dtex/250フィラメントのポリトリメチレンテレフタレート繊維を得た。得られたポリトリメチレンテレフタレート繊維をラッセル編機を使用し、フロント10020dtex(鎖編糸)バック3340dtex(挿入糸)で編成して目付け410g/m2の編地にした後、180℃で1分間熱処理して安全ネットを作成し、その性能を検査した。該ポリトリメチレンテレフタレート繊維物性および網特性を表1に示す。
【0031】[比較例1]
(2−カルボキシエチル)メチルホスフィン酸をリン元素量として0.5重量%共重合した固有粘度0.64のポリエチレンテレフタレート(PET)チップを減圧下、230℃で固相重合を行い、固有粘度0.97のチップを得た。このチップと同一組成で固有粘度0.80のポリエチレンテレフタレートに着色剤としてシアニン系ブルーを20重量%配合したブルーの着色チップとを35:1の割合で305℃の温度で混合溶融し、孔径0.6mmの紡糸孔を有する口金から吐出した。吐出された糸条は口金下に設けられた長さ300mm、温度350℃の加熱雰囲気を通過させた後、長さ500mmにわたって25℃、7Nm3/分の冷却風で冷却固化させ、600m/分の速度で引き取った。
【0032】得られた未延伸糸を一旦巻き取ることなく、90℃加熱ローラーで予熱した後、延伸倍率5.2倍で延伸し、200℃で熱セットを行って1670dtex/250フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維を得た。
【0033】得られたポリエチレンテレフタレート繊維を用い、実施例1と同様にして安全ネットを作成し、その性能を検査した。該ポリエチレンテレフタレート繊維物性および網特性を表1に示す。
【0034】[実施例2]
(2−カルボキシエチル)メチルホスフィン酸の共重合量をリン元素量として0.3重量%とし、固相重合後のチップの固有粘度を1.50とし、溶融温度を295℃、紡糸速度を650m/分、延伸倍率を5.3倍に変更した以外は実施例1と同様にして原着されたポリトリメチレンテレフタレート繊維を得た。得られたポリトリメチレンテレフタレート繊維を用い、実施例1と同様にして安全ネットを作成し、その性能を検査した。該ポリトリメチレンテレフタレート繊維物性および網特性を表1に示す。
【0035】[実施例3]
(2−カルボキシエチル)メチルホスフィン酸の共重合量をリン元素量として0.7重量%とし、固相重合後のチップの固有粘度を0.80とし、延伸倍率を4.5倍に変更した以外は実施例1と同様にして原着されたポリトリメチレンテレフタレート繊維を得た。得られたポリトリメチレンテレフタレート繊維を用い、実施例1と同様にして安全ネットを作成し、その性能を検査した。該ポリトリメチレンテレフタレート繊維物性および網特性を表1に示す。
【0036】[比較例2]
(2−カルボキシエチル)メチルホスフィン酸の共重合成分は添加していない固有粘度0.60のポリトリメチレンテレフタレート(PTT)チップを使用し、固相重合後のチップの固有粘度を0.65とし、ブルーの着色チップを使用せず、溶融温度を275℃、紡糸速度を750m/分、延伸倍率を4.6倍に変更した以外は実施例1と同様にしてポリトリメチレンテレフタレート繊維を得た。得られたポリトリメチレンテレフタレート繊維を用い、実施例1と同様にして安全ネットを作成し、その性能を検査した。該ポリトリメチレンテレフタレート繊維物性および網特性を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【発明の効果】本発明によれば、工事現場での折畳みや、張設に伴う伸長を繰り返し受けても、網強力の低下が少ない高強力安全ネットを提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区南本町1丁目6番7号
【出願日】 平成13年9月27日(2001.9.27)
【代理人】 【識別番号】100077263
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 純博
【公開番号】 特開2003−96649(P2003−96649A)
【公開日】 平成15年4月3日(2003.4.3)
【出願番号】 特願2001−296324(P2001−296324)