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【発明の名称】 快適性編物
【発明者】 【氏名】田中 潤
【住所又は居所】大阪市中央区備後町四丁目1番3号 ユニチカファイバー株式会社内

【要約】 【課題】長時間の着用においてもムレやベタツキがなく、涼感性に優れた衣料素材、特に肌に直接接触するインナーウェアに好適な快適性編物を提供する。

【解決手段】表面層と裏面層からなり、裏面層が主として吸放湿性合成繊維フィラメントで構成された二層構造編物であって、編物の20℃×65%RHの環境条件下における裏面から内側への移行消費熱量が0.13W/cm2 以上である快適性編物。吸放湿性合成繊維フィラメントは、アルキレンオキサイドとポリオール及び脂肪族ジイソシアネート化合物との反応によって得られたポリアルキレンオキサイド変性物又は前記変性物とポリアミドからなる芯成分と、ポリアミドからなる鞘成分で構成された芯鞘複合型吸放湿性合成繊維が好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面層と裏面層からなり、裏面層が主として吸放湿性合成繊維フィラメントで構成された二層構造編物であって、編物の20℃×65%RHの環境条件下における裏面から内側への移行消費熱量が0.13W/cm2 以上であることを特徴とする快適性編物。
【請求項2】 吸放湿性合成繊維フィラメントが、アルキレンオキサイドとポリオール及び脂肪族ジイソシアネート化合物との反応によって得られたポリアルキレンオキサイド変性物又は前記変性物とポリアミドからなる芯成分と、ポリアミドからなる鞘成分で構成された芯鞘複合型吸放湿性合成繊維である請求項1記載の快適性編物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、涼感性に優れ、吸水性、吸放湿性を有したシャツ地、特に肌に直接接触するインナーウェアに好適な快適性編物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】合成繊維は、木綿、麻、ウール等の天然繊維に比べて、強力、耐摩耗性、寸法安定性、ウォッシュアンドウェアー性、速乾性等の点で優れており、衣料素材として広く使用されている。しかし、合成繊維は、一般に天然繊維が有する優れた制電性、吸水性能、吸放湿性能を有しておらず、冬場の着用時には静電気によるまとわりつきや埃の付着など、また夏場の着用時には発汗により、ムレ・ベタツキ等が生じ、天然繊維よりも快適性の面で劣っていた。
【0003】これらの問題を解決するために、従来より合成繊維に吸水性や吸放湿性を付与する試みがなされている。例えば、後加工によってナイロン繊維、ポリエステル繊維に上記機能を付与する方法として、ラジカル開始剤や電子線を用いてビニルカルボン酸をグラフト重合する方法(特開平4−146271号公報、特開平4−272272号公報)が知られているが、この方法では加工処理による繊維の強力低下や風合いの硬化、効果の耐久性不足といった種々の問題を有していた。また、原糸の製造段階でポリアルキルキシレングリコールを配合した複合繊維(特開昭39−5214号公報)、繊維表面から中空部まで貫通溝を有する繊維形成性ポリマーよりなる中空繊維(特開昭60− 37203号公報)、有機スルホン酸化合物を均一に分散させたポリエステル繊維をアルカリ処理した微多孔性繊維(特開昭60−167969号公報)等が提案されている。しかし、これらの繊維はいずれも吸湿性のレベルが低く、また吸水性能、吸放湿性能の両性能を同時に十分なレベルまで有するものではなかった。
【0004】これらの問題を解消するために、10%以上の吸水性能を有する樹脂を芯部に、ポリエステルを鞘部として構成された芯鞘複合繊維(特開平2− 99612号公報)が提案されている。しかしながら、この繊維は、原糸の製造段階では十分な吸水性と吸放湿性を有するものの、染色加工時、特に減量加工時に繊維の鞘部が破損し、芯成分である吸放湿性樹脂が溶出してしまい、初期の吸水性と吸放湿性が損なわれるという問題があった。
【0005】さらに、特開平11−241226号公報等には、鞘成分がポリアミドからなり、芯成分がポリアミドとポリアルキレンオキシド変性物との混合物からなる芯鞘型の吸放湿性繊維が提案されている。この繊維は十分な吸水性と吸放湿性を有するものであるが、この繊維を単に織編物としても、生地の寸法安定性が悪く、実用に供することは困難であった。
【0006】また、合成繊維を用いた衣服は、特に夏場の着用において涼感性を必要としており、夏用の衣服は、通気性や肌との接触面積、素材の熱伝導率などを考慮して改良されてきたが、未だ天然繊維の涼感性に優るものはないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記のような現状に鑑みてなされたものであり、高度の吸水・吸湿性を兼ね備え、長時間の着用においてもムレやベタツキがなく、着用時に涼感性があり、シャツ地、特に肌に直接接触するインナーウェアに好適な快適性編物を提供することを技術的な課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、次の構成を要旨とするものである。
(1) 表面層と裏面層からなり、裏面層が主として吸放湿性合成繊維フィラメントで構成された二層構造編物であって、編物の20℃×65%RHの環境条件下における裏面から内側への移行消費熱量が0.13W/cm2 以上であることを特徴とする快適性編物。
(2) 吸放湿性合成繊維フィラメントが、アルキレンオキサイドとポリオール及び脂肪族ジイソシアネート化合物との反応によって得られたポリアルキレンオキサイド変性物又は前記変性物とポリアミドからなる芯成分と、ポリアミドからなる鞘成分で構成された芯鞘複合型吸放湿性合成繊維である上記(1) 記載の快適性編物。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。本発明の快適性編物は、表面層と裏面層からなる二層構造編物であるが、前記裏面層を構成する糸条には、主として、好ましくは全て吸放湿性合成繊維フィラメントを用いることが必要である。本発明でいう吸放湿性合成繊維とは、高度な吸放湿性を有する合成繊維であって、このような合成繊維としては、吸放湿性を有する化合物と繊維形成性ポリマーとをブレンドして製糸した繊維、吸放湿性を有する化合物を芯成分あるいは吸放湿性を有する化合物と繊維形成性ポリマーとをブレンドしたものを芯成分とし、鞘成分として繊維形成性ポリマーを用いて製糸した芯鞘複合繊維等が挙げられる。裏面層に吸放湿性合成繊維フィラメントを用いることにより、編物に高レベルの吸水性能と吸放湿性能を付与することができる。
【0010】ここで繊維形成性ポリマーとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート単位に第3成分を共重合されたポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等のポリエステルが挙げられる。
【0011】吸放湿性を有する化合物としては、良好な吸湿性を有し、色調変化の少ないものであればよいが、ポリアルキレンオキサイド、ポリオール及び脂肪族ジイソシアネート化合物との反応によって得られるポリアルキレンオキサイド変性物が好ましく用いられる。このポリアルキレンオキサイド変性物の原料として用いられるポリアルキレンオキサイドとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド及び両者の共重合体、ポリオールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、脂肪族ジイソシアネートとしては、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。このようなポリアルキレンオキサイド変性物を吸放湿性を有する化合物として用いると、芳香族イソシアネート化合物を用いた場合に見られるようなイソシアネート基と芳香環との共鳴構造により形成されるイミド環に起因する黄変が抑制され、長時間使用しても繊維が黄変することがなくなり、耐候性に優れた複合繊維とすることができる。
【0012】本発明における吸放湿性合成繊維の吸放湿性を有する化合物としてのポリアルキレンオキサイド変性物の含有率は、 0.5〜60質量%の範囲にあることが好ましい。ポリアルキレンオキサイド変性物の含有率が 0.5質量%未満では目的とする吸放湿性が得られない場合があり、含有率が60質量%を超えると、製糸性に問題が生じるおそれがある。
【0013】また、芯鞘複合繊維とする場合の芯鞘複合比は、使用するポリマー等により異なるが、質量比で15/85〜85/15の範囲にあることが好ましく、これよりも芯成分の割合が少ないと吸放湿性に劣り、芯成分が多いと製糸性に問題が生じるおそれがある。
【0014】本発明で用いる吸放湿性合成繊維フィラメントは、通常の合成繊維フィラメントとは異なり、湿気を吸収し繊維芯部に蓄え、外部環境の湿度変化によって外気への放湿を行う繊維である。この繊維は、繊維に吸湿された水分が放湿され、繊維から離れる際に熱を奪い、着用者に涼感性を与えることができる。このため、通常の合成繊維よりも移行消費熱量が高く、さらに湿度の高い環境にあれば吸湿量が増加するため、移行消費熱量も高くなる。
【0015】本発明の快適性編物は、表面層と裏面層からなる二層構造編物であるが、裏面層を構成する吸放湿性繊維は裏面に露出していることが必要である。これは、吸放湿性繊維が肌と接することによって涼感性を着用者に与えるためであり、少なくとも裏面の50%以上、好ましくは全面に露出していないと十分に涼感性を与えることができない。
【0016】そして、本発明の快適性編物は、20℃×65%RHの環境条件下での移行消費熱量が、0.13w/cm2 以上、好ましくは0.14w/cm2 以上であることが必要である。消費熱量が高ければ高いほど、肌面の熱が瞬間的に編物側へ移動し、人体に涼感性を与えることができる。消費熱量が0.13w/cm2 未満になると、肌面の熱が編物側へ移動し難くなり、着用時の涼感性が得難いものとなる。
【0017】本発明において、裏面層と共に二層構造編物を構成する表面層に使用する繊維は特に限定されるものではないが、W型断面ポリエステル繊維等の異形断面繊維で、裏面層を形成する吸放湿性合成繊維フィラメントより単糸繊度が小さく、毛細管現象により裏面層から吸水し、表面側に拡散させる機能を発現させやすい組み合わせが好ましい。
【0018】
【作用】本発明の快適性編物は、表面層と裏面層からなり、しかも裏面層が主として吸放湿性合成繊維フィラメントで構成された二層構造編物なので、表面層が吸水拡散層、着用時に肌側となる裏面層が接触吸熱層となり、しかも編物の20℃×65%RH環境下における移行消費熱量が0.13w/cm2 以上なので、着用時に涼感性を有し、長時間の着用においてもムレやベタツキがなく、特に肌に直接接触するインナーウェアに好適な衣料用素材である。
【0019】
【実施例】次に、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。なお、実施例における性能の測定と評価は、次の方法で行った。
(1)水分率試料を温度 105℃で2時間乾燥して重量Wを測定し、その後34℃、相対湿度90%の条件下で2時間調湿して重量Vを測定し、下記式にて水分率を算出した。
水分率(%)=〔(V−W)/W〕×100(2)移行消費熱量カトーテック社製サーモラボII(KES−F−M7)を用い、温度20℃、相対湿度65%の環境条件下で試料(6×6cm)を試料台(Water Box:22℃)に乗せ、上から32℃の貯熱板(3×3cm、純銅製)を接触させた時に貯熱板から試料側に移行する熱流のピーク値(w/cm2 )で表す。なお、移行消費熱量の値が大きいほど涼感性が高い。
(3)着用試験作成した編物でインナー用のシャツを縫製し、10人の着用モニターによって着用時の涼感性、ムレ、ベタツキの有無を下記3段階にて官能評価した。
○:涼感性、吸湿性ともに優れている。
△:涼感性あるいは、吸湿性のうちどちらか一方の性能が劣っている。
【0020】実施例1m−クレゾール溶媒中で濃度0.5 g/dl、温度20℃で測定した相対粘度2.6のナイロン6を85質量部とポリエチレンオキサイド、1,4−ブタンジオール及びジシクロヘキシルメタン4,4ジイソシアネートの反応物であるポリアルキレン変性物(1gの吸収能35g)15質量部とをブレンドした混合物を芯成分とし、相対粘度2.6のナイロン6を鞘成分として、芯成分/鞘成分の質量比を50/50として、24孔の吐出孔を有する芯鞘複合紡糸口金を使用して、紡糸温度255 ℃で溶融紡糸し、紡出した糸条に18℃の空気を吹き付けて冷却して油剤を付与した後、1300m/分で巻き取り、3.0 倍の延伸を行って、78dtex/24fの芯鞘型吸放湿性合成繊維フィラメントを得た。
【0021】次に、28ゲージ両面丸編機を用い、図1に示す組織で生地表面(シリンダー針側)に通常の83dtex/36fのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸、生地裏面(ダイヤル針側)に吸放湿性合成繊維フィラメントを配して生機を編成した。染色加工はキャリアーを使用して 100℃で行い、浴中に高松油脂株式会社製SR1000(アニオン系親水加工剤)を2%o.w.f 使用して吸水加工を施した後、ポリアミドへの汚染を除去して仕上げセットを行い、吸放湿性合成繊維フィラメントを43質量%含む二層構造編物を得た。
【0022】比較例1生地表面に吸放湿性合成繊維フィラメント、生地裏面に通常の83dtex/36fのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸を配して生機を編成した以外は、実施例1と同様にして吸放湿性合成繊維を54質量%含む二層構造編物を得た。
【0023】比較例2生地の表裏面共に通常の83dtex/36fのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸を配して生機を編成し、ポリエステルの条件で染色加工して浴中で吸水加工した後、仕上げセットを行った以外は実施例1と同様にして二層構造編物を得た。実施例1と比較例1〜2で得られた編物の評価結果を表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】表1から明らかなように、実施例1の編物は優れた吸放湿性、涼感性を有し、衣料用素材、特にインナー用途に適したものであった。一方、比較例1の編物は、吸放湿性に優れてはいるものの、着用時の涼感性に劣るものであり、また、比較例2の編物は、吸放湿性、涼感性共に劣るものであった。
【0026】
【発明の効果】本発明によれば、着用時の涼感性に優れ、高い吸放湿性により衣服内のムレ、ベタツキがなく、着用快適性に優れた衣料素材となる編物が提供される。
【出願人】 【識別番号】399065497
【氏名又は名称】ユニチカファイバー株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区備後町四丁目1番3号
【出願日】 平成13年8月23日(2001.8.23)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−64558(P2003−64558A)
【公開日】 平成15年3月5日(2003.3.5)
【出願番号】 特願2001−252972(P2001−252972)