トップ :: D 繊維 紙 :: D04 組みひも;レ−ス編み;メリヤス編成;縁とり;不織布

【発明の名称】 三次元立体編物
【発明者】 【氏名】津村 美男
【住所又は居所】大阪府松原市大堀1−5−8 住江織物株式会社内

【氏名】島津 秀一
【住所又は居所】大阪府松原市大堀1−5−8 住江織物株式会社内

【氏名】上田 和宏
【住所又は居所】大阪府松原市大堀1−5−8 住江織物株式会社内

【氏名】高治 重彦
【住所又は居所】大阪府松原市大堀1−5−8 住江織物株式会社内

【要約】 【課題】凹凸付与のための2次加工を要することなく製造できて生産性に優れ、軽量性、通気性、体圧分散性、滑り防止性に優れ、適度のクッション性を有し、人間工学的に心地良いとされる10mm程度の沈み込み感が得られ、触感が良く、かつ立体奥行き感があって意匠性に優れた三次元立体編物を提供する。

【解決手段】表編地2と裏編地3とを連結糸4でつないだ三次元立体編物1を編成する際に、連結糸4のランナー値(編込張力)を適宜調整することによって、連結糸4により表裏編地2、3間を連結する距離を2種類以上に変化せしめるものとし、これにより表裏編地2、3のうち少なくとも一方の編地が、突出編地部10、12と、該突出編地部の表面よりも内方に入り込んだ位置に配置された凹陥編地部11、13とで構成されるものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 表編地と裏編地とを連結糸でつないだ三次元立体編物からなり、編成の際の連結糸のランナー値を調整することによって連結糸による表裏編地間の連結距離が2種類以上に変化せしめられて、表編地と裏編地のうち少なくとも一方の編地が、突出編地部と、該突出編地部よりも内方に入り込んだ位置に配置された凹陥編地部とで構成されていることを特徴とする三次元立体編物。
【請求項2】 前記表編地と裏編地のいずれもが突出編地部と凹陥編地部とで構成されると共に、表編地の突出編地部と裏編地の突出編地部とが上下相対応する領域に配置され、表編地の凹陥編地部と裏編地の凹陥編地部とが上下相対応する領域に配置されている請求項1に記載の三次元立体編物。
【請求項3】 前記突出編地部につながれる連結糸の5%以上が、該突出編地部に対してオーバーラップした編目を作らずにタックした挿入連結組織を構成したものとなされている請求項1または2に記載の三次元立体編物。
【請求項4】 前記突出編地部につながれる連結糸に関し、突出編地部に対してタックした挿入連結組織を構成した連結糸/突出編地部に対してオーバーラップした編目を作ったオーバーラップ連結組織を構成した連結糸の比率が2/8〜8/2の範囲に設定されてなる請求項3に記載の三次元立体編物。
【請求項5】 前記挿入連結組織を構成する連結糸の少なくとも一部がマルチフィラメント糸からなる請求項3または4に記載の三次元立体編物。
【請求項6】 前記凹陥編地部につながれる連結糸が、該凹陥編地部に対してタックした挿入連結組織を構成したものとなされている請求項1〜5のいずれか1項に記載の三次元立体編物。
【請求項7】 前記突出編地部における凹陥編地部近傍部位につながれる連結糸が、該突出編地部に対してオーバーラップした編目を作ったオーバーラップ連結組織を構成すると共に、該連結糸の少なくとも一部がマルチフィラメント糸からなる請求項6に記載の三次元立体編物。
【請求項8】 前記挿入連結組織を構成する連結糸は、前記表裏編地のうち少なくとも一方の編地に対して、該編地を構成する編目にタックされた後、この同一編地面に沿って1ないし数コースの範囲移動した位置で更に同一編地の編目にタックされた後に、他方側の編地に移動してこれにタックされるものとなされている請求項3〜7に記載の三次元立体編物。
【請求項9】 前記表編地の少なくとも一部が、メッシュまたはトリコット等の透孔組織に編成されている請求項1〜8のいずれか1項に記載の三次元立体編物。
【請求項10】 前記連結糸の1%以上が、表裏編地の相対する編目から1ないし複数ウェールおよび/または1ないし複数コース離れた編目に向かって斜めに移行したトラス構造の連結層を構成したものとなされている請求項1〜9のいずれか1項に記載の三次元立体編物。
【請求項11】 前記表裏編地が、相互に異なる種類の組織に編成されてなる請求項1〜10のいずれか1項に記載の三次元立体編物。
【請求項12】 多数個の突出編地部が相互に間隔をあけて平面視において分散状態に配置されている請求項1〜11のいずれか1項に記載の三次元立体編物。
【請求項13】 平面視において、前記突出編地部の面積/前記凹陥編地部の面積=1/10〜10/1の範囲に設定されてなる請求項1〜12のいずれか1項に記載の三次元立体編物。
【請求項14】 前記表編地側の圧縮率が、前記裏編地側の圧縮率より1%以上大きくなるように設定されている請求項1〜13のいずれか1項に記載の三次元立体編物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、三次元立体編物に関し、特に自動車座席用のクッションシート材、椅子用のクッションシート材、ベッドシート用クッションシート材、フロアーシート用クッションシート材等のクッション材として好適に用いられ、その他間仕切り、パーティション、振動吸収材、ブラインド等にも適用可能な三次元立体編物に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車座席用、椅子用のクッションシート材としては、軽量であり、厚さ方向に適度のクッション性を有することのほか、良好な通気性および体圧分散性を有していることが求められる。
【0003】従来、このような要請に対応するためのクッションシート材として、立体二重編物によるものが既に提案されている。即ち、二列針床を有するダブルラッセル編機により、網目構造に編成されたフラットな表編地と裏編地とを連結糸でつないで三次元の立体編物に構成したものが提案されている。
【0004】しかしながら、上記構成の三次元立体編物は、表面側で着座者の臀部等が滑り易く、ひいては着座安定性に劣るという問題があった。また、適度のクッション性を有するものの、人間工学的に心地良いとされる10mm程度の沈み込み感(ストローク感)が得られ難く、着座感の更なる向上が求められていた。更に、三次元立体編物としての意匠性は、基本的に表編地の意匠で決まってしまい、いわば平面的な意匠でしかなく、立体編物であるにも拘わらず立体感、奥行き感のある意匠性に優れたものを構成することができないという問題もあった。
【0005】そこで、これらの問題を一挙解決するものとして、近年、上記網目構造に編成されたフラットな表編地(101)と裏編地(102)とを、収縮率の異なる2種以上の糸からなる連結糸(103a)(103b)でつないだ三次元立体編物(図9(イ)参照)をダブルラッセル編機により編成した後、この三次元立体編物に熱水による熱処理(2次加工)を施すことによって、収縮率の小さい連結糸(103a)でつながれた編地部分が凸部(104)となる一方、収縮率の大きい連結糸(103b)でつながれた編地部分が凹部(105)となって、表裏両編地面に凹凸形状が形成された三次元立体編物(図9(ロ)参照)が提案されている(特開平4−222260号公報及び実開昭57−18693号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の表裏両編地面に凹凸形状が形成された三次元立体編物は、フラットな表編地と裏編地とを連結糸でつないだ三次元立体編物を編機により編成した後、これに更に凹凸付与のための熱水処理による2次加工を施す必要があり、工程数が多くなるのは勿論のこと、特開平4−222260号公報にも記載されているようにこのような熱水処理は通常30分程度の時間が必要となるし、更にはこれを乾燥させる必要がある等、生産性に劣るという問題があった。
【0007】更に、一旦編成された三次元立体編物に対して熱処理することで凹凸が付与されるので、即ち連結糸の熱収縮によって凹凸形状が形成されるので、凸部(104)における凹部(105)近傍部位において歪みが生じやすく、このために凸部(104)の縁部において硬さ感が感じられるようになって良好な触感が得られ難いものとなるし、前記歪みのために体圧分散性も低下するという問題があった。
【0008】この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであり、凹凸付与のための2次加工を要することなく製造できる生産性に優れた三次元立体編物であって、軽量性、通気性、体圧分散性に優れ、適度のクッション性を有し、優れた滑り防止性を確保できると共に、人間工学的に心地良いとされる10mm程度の沈み込み感(ストローク感)が得られ、また良好な触感が得られ、かつ立体感、奥行き感があって意匠性に優れた三次元立体編物を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明者は鋭意研究の結果、三次元立体編物を編成する際の連結糸のランナー値(編込張力)を適宜調整することによって、連結糸により表裏編地間を連結する距離を2種類以上に変化せしめるものとし、これにより表裏編地のうち少なくとも一方の編地に凹凸を付与せしめた構成とすることにより、上記所望の三次元立体編物が得られることを見出すに至り、この発明を完成したものである。
【0010】即ち、この発明に係る三次元立体編物は、表編地と裏編地とを連結糸でつないだ三次元立体編物からなり、編成の際の連結糸のランナー値を調整することによって連結糸による表裏編地間の連結距離が2種類以上に変化せしめられて、表編地と裏編地のうち少なくとも一方の編地が、突出編地部と、該突出編地部よりも内方に入り込んだ位置に配置された凹陥編地部とで構成されていることを特徴とするものである。
【0011】この三次元立体編物は、表裏編地を連結糸でつないだ立体編物であるので、軽量で通気性、クッション性に優れ、体圧分散性にも優れるものである。また、編地に凹凸を付与せしめるに際し、熱処理等の2次加工を行う必要がなく、編成する際の連結糸のランナー値調整という編み技術によって凹凸を付与せしめるものであるから、工程数が少なくて済み生産性に優れてコストの低減にも繋がる。また、表裏両編地のうち少なくとも一方の編地が突出編地部と凹陥編地部とで構成されて編地に凹凸が付与されているので、着座者の着衣の一部がこれら突出編地部間の凹陥部に入り込みやすく、着座者の着衣が突出編地部の表面側だけでなくその側面側にも接触することとなるから、立体編物としての摩擦力を向上させることができて優れた滑り防止性を確保できるものとなる。また、編地に凹凸が形成されているので、人間工学的に心地良いとされる10mm程度の沈み込み感(ストローク感)が得られると共に、立体感、奥行き感を十分に付与することができて立体編物としての意匠性も顕著に向上させることができるし、振動吸収性にも優れたものとなる。更に、従来の凹凸を有した三次元立体編物のように連結糸を熱収縮させることを要しないから、突出編地部と凹陥編地部の境界領域においても構造上の歪みを生じることがなく、従ってこの境界領域において硬さ感が生じることが効果的に防止されて良好な触感が確保される。また、連結糸としては、従来構成のように収縮率の相異なる糸を複数用いる必要がないので、設計上、編成上の制約が減少する利点もある。
【0012】特に好ましい形態は、表編地と裏編地のいずれもが突出編地部と凹陥編地部とで構成されると共に、表編地の突出編地部と裏編地の突出編地部とが上下相対応する領域に配置され、表編地の凹陥編地部と裏編地の凹陥編地部とが上下相対応する領域に配置された構成である。このような構成により、体圧分散性及びクッション性が顕著に向上する。
【0013】突出編地部につながれる連結糸の5%以上は、該突出編地部に対してオーバーラップした編目を作らずにタックした挿入連結組織を構成したものとなされているのが好ましい。これにより、連結糸が突出編地部の表面より突出するようなことが効果的に防止されるので、異物感や硬さ感が減少してよりソフトな触感が得られるものとなる。
【0014】突出編地部につながれる連結糸に関し、突出編地部に対してタックした挿入連結組織を構成した連結糸/突出編地部に対してオーバーラップした編目を作ったオーバーラップ連結組織を構成した連結糸の比率を2/8〜8/2の範囲に設定するのが好ましい。このような特定範囲に設定されることで、突出編地部の形態安定性を向上させつつ、一層ソフトな触感が得られるものとなる。
【0015】上記突出編地部につながれる連結糸のうち、挿入連結組織を構成する連結糸の少なくとも一部はマルチフィラメント糸からなるのが好ましい。突出編地部における、マルチフィラメント糸からなる連結糸がつながれた当該部位の組織締結力が向上するので、三次元立体編物はクッション性及び復元力に優れたものとなり、人間工学的に心地良いとされる10mm程度の沈み込み感(ストローク感)が確実に得られるものとなる。
【0016】一方、凹陥編地部につながれる連結糸は、該凹陥編地部に対してタックした挿入連結組織を構成したものとなされているのが好ましい。これにより、突出編地部の高さ位置に対して凹陥編地部をより低い位置に編成することができる、即ち編地凹部の窪み深さを大きくできる利点がある。
【0017】更に、突出編地部における凹陥編地部近傍部位につながれる連結糸は、該突出編地部に対してオーバーラップした編目を作ったオーバーラップ連結組織を構成すると共に、該連結糸の少なくとも一部がマルチフィラメント糸からなる構成を採用するのが好ましい。編地の凹凸部位の境界領域における連結糸の構成を上記のようにすることで、編地の凹凸部位の境界領域において傾斜面を容易に形成させることができる、即ち突出編地部における凹陥編地部との境界領域に傾斜面を容易に形成させることが可能となる。このような傾斜面の存在によって、圧縮力をより均等に分散し得て圧縮変形時間が長くなるので、体圧分散性が一段と向上して心地良さを更に向上させることができる利点がある。
【0018】更に、挿入連結組織を構成する連結糸は、表裏編地のうち少なくとも一方の編地に対して、該編地を構成する編目にタックされた後、この同一編地面に沿って1ないし数コースの範囲移動した位置で更に同一編地の編目にタックされた後に、他方側の編地に移動してこれにタックされるものとなされているのが好ましい。挿入連結組織を構成する連結糸が同一編地面に沿って1ないし数コースの範囲移動することで、表裏編地間にいわばアーチ構造の柱が形成される(連結糸によるアーチ構造が形成される)し、かつアーチの両端が編地の編目にタックされているので、三次元立体編物のクッション性及び復元性が一段と向上する。
【0019】表編地の少なくとも一部は、メッシュまたはトリコット等の透孔組織に編成されているのが好ましく、これにより通気性が向上される。また、透孔組織により透明感も付与されるので、間仕切り、パーティションとして好適である。
【0020】連結糸の1%以上が、表裏編地の相対する編目から1ないし複数ウェールおよび/または1ないし複数コース離れた編目に向かって斜めに移行したトラス構造の連結層を構成したものとなされている場合には、連結糸の倒れによる偏座屈を生じることがなく、方向性のない優れたクッション性と復元力を保有したものとなし得る。
【0021】表裏編地は、相互に異なる種類の組織に編成されることが推奨される。このような構成を採用することにより、例えばシートフレームへの取り付けが容易となる利点がある。例えば表編地を菱形の透孔組織(網組織)とし、裏編地を鎖組織を基本としたクインズコード組織に編成する形態、或いは表編地を六角形の透孔組織(網組織)とし、裏編地を鎖組織を基本とした挿入組織に編成する形態等が挙げられる。
【0022】また、突出編地部の配置態様としては、多数個の突出編地部が相互に間隔をあけて平面視において分散状態に配置された態様を採用するのが好ましい。このような配置態様の採用により、立体編物としての意匠性を大きく向上させることができると共に、突出編地部の上部からだけではなく前後左右斜め方向のいずれの方向からの荷重応力に対しても圧縮弾性力を効果的に発揮できるものとなり、前記いずれの方向からの荷重に対しても人間工学的に心地良いとされる10mm程度の沈み込み感(ストローク感)が確実に得られるものとなる。このような配置態様の例としては、例えば碁盤目状配置、千鳥状配置、バイアス状配置等が挙げられる。
【0023】平面視において、突出編地部の面積/凹陥編地部の面積=1/10〜10/1(比率)の範囲に設定されているのが好ましい。人間工学的に心地良いとされる10mm程度の沈み込み感が確実に得られると共に、滑り防止性を一層向上させることができる。更に、上記特定範囲の比率に設定されることで、立体感、奥行き感が十分に付与されるので、意匠性も一段と向上する。
【0024】表編地側の圧縮率は、裏編地側の圧縮率より1%以上大きくなるように設定されているのが好ましい。このような構成とすることにより、例えばシートフレームへの取付が容易なものとなるのみならず、振動吸収性も向上するのでクッション材としてより好適なものとなるし、振動吸収材としての性能も向上する。
【0025】
【発明の実施の形態】この発明に係る三次元立体編物の一実施形態を図1〜4に示す。この三次元立体編物(1)は、表編地(2)と裏編地(3)とを連結糸(4)でつないだ三次元立体編物からなり、表編地(2)が、突出編地部(10)と該突出編地部(10)よりも内方に入り込んだ位置に配置された凹陥編地部(11)とで構成され、同様に裏編地(3)も突出編地部(12)と凹陥編地部(13)とで構成され、表裏両編地(2)(3)いずれにおいても凹陥編地部(11)(13)が格子状に配置されてこれらの間に多数個の突出編地部(10)…(12)…が碁盤目状に相互に間隔をあけて配置されている。そして、表編地の突出編地部(10)と裏編地の突出編地部(12)とが上下相対応する領域に配置され、同様に表編地の凹陥編地部(11)と裏編地の凹陥編地部(13)とが上下相対応する領域に配置されている。前記表編地(2)の突出編地部(10)は、図3(イ)に示すように、メッシュ組織による多数の透孔を規則的配置に備えた編組織、即ち透孔組織からなり、表編地(2)の凹陥編地部(11)は緻密な組織形態に編成されている。また、裏編地(3)は、図3(ロ)に示すように、突出編地部(12)、凹陥編地部(13)ともに緻密な組織形態に編成されている。
【0026】この三次元立体編物(1)は、表裏編地(2)(3)を連結糸(4)でつないだ立体編物であるので、軽量性、通気性、クッション性、体圧分散性に優れている。また、編地(2)に凹凸が付与されているので、着座者の着衣の一部が突出編地部(10)(10)間の凹陥部に入り込みやすく、着座者の着衣が突出編地部(10)の表面側だけでなくその側面側にも接触するので、立体編物(1)の摩擦力を向上させることができて優れた滑り防止性を確保できる。また、編地(2)(3)に凹凸が形成されているので、人間工学的に心地良いとされる10mm程度の沈み込み感(ストローク感)が得られると共に、立体感、奥行き感を十分に付与することができて立体編物(1)としての意匠性も顕著に向上させることができるし、また振動吸収性にも優れたものとなる。
【0027】上記三次元立体編物(1)は、二列針床を備えた編機、最も一般的にはダブルラッセル機によって編成されるが、ここに本発明の立体編物(1)は特に針列の配置密度が比較的粗い6〜18ゲージ、即ち2.54cm(1インチ)当たりに6〜18の針列を有する編機を用いて、しかも針床頂端からのニードルによる編糸の引き込み量(度目)が1.2〜3.0mm程度で、結果的に8〜30コース/2.54cmのコース密度に編成したものとすることが好ましい。
【0028】針列密度が6ゲージ未満あるいはコース密度が8コース/2.54cm未満では、形態安定性に優れた編地を編成することが困難なものとなるので好ましくない。また、18ゲージを超え、あるいは30コース/2.54cmを超えるときは、特にオーバーラップ編目を構成する場合において編目部分の糸の太さが太いものとなることとの関係で、編成困難となるので好ましくない。より好適には、8〜18ゲージの編機を用い、8〜28コース/2.54cmの編成条件を採用するのが良い。
【0029】本発明においては、表編地(2)と裏編地(3)のうち少なくとも一方の編地が、突出編地部と、該突出編地部よりも内方に入り込んだ位置に配置された凹陥編地部とで構成されるが、このような編地(2)(3)の凹凸形状が、編成の際の連結糸のランナー値(編込張力)を調整することによって連結糸(4)による表裏編地(2)(3)間の連結距離を2種類以上に変化せしめることで形成されたものである点に主たる特徴を有するものである。このように編成の際の連結糸(4)のランナー値の調整という編み技術によって編地(2)(3)に凹凸を付与するものであって、編地(2)(3)に凹凸を付与せしめるに際して熱処理等の2次加工を行う必要がないので、工程数が少なくて済み生産性に優れている。また、編地(2)(3)に凹凸を付与せしめるに際し連結糸(4)を熱収縮させたりしないので、突出編地部(10)(12)と凹陥編地部(11)(13)の境界領域においても構造上の歪みを生じることがなく、従ってこの境界領域において硬さ感が生じることが効果的に防止されて良好な触感が確保されるものとなる。更に、連結糸(4)としては、従来のように収縮率の相異なる糸を複数用いることを特に要しないので、構造設計上の制約や編成上の制約が低減される利点もある。
【0030】前記突出編地部(10)(12)につながれる連結糸(4)の(突出編地部に対する)連結態様は特に限定されない。例えば、突出編地部(10)(12)に対してオーバーラップした編目を作ってこれにつながれた態様(オーバーラップ連結組織)が採用されても良いし、或いは突出編地部(10)(12)に対して単にタックされることでこれにつながれた態様(挿入連結組織)が採用されても良いし、その他の連結態様であっても良い。
【0031】これらの態様の中でも、前記突出編地部(10)(12)につながれる連結糸(4)の5%以上は、該突出編地部(10)(12)に対してオーバーラップした編目を作ることなくタックした挿入連結組織(15)を構成したものとなされているのが好ましい。例えば突出編地部(10)(12)につながれる連結糸(4)の全てが、突出編地部に対してオーバーラップした編目を作った場合には、該編目の一部が突出編地部(10)(12)の表面より突出しやすいので、突出編地部(10)(12)の表面において手や臀部等の人体が触れた際に、連結糸(4)による編目が異物感や硬さ感を感じさせるものとなるのであるが、これに対して突出編地部(10)(12)につながれる連結糸(4)の5%以上が突出編地部(10)(12)に対して単にタックされた構成を採用すれば、突出編地部(10)(12)表面における異物感や硬さ感が減少してよりソフトな触感が得られるものとなる。
【0032】中でも、突出編地部(10)(12)につながれる連結糸(4)に関し、突出編地部(10)(12)に対してタックした挿入連結組織(15)を構成した連結糸/突出編地部(10)(12)に対してオーバーラップした編目を作ったオーバーラップ連結組織(16)を構成した連結糸の比率が2/8〜8/2の範囲に設定されているのが特に好ましい。例えば突出編地部(10)(12)につながれる連結糸の全てがタックによる挿入連結組織(15)を構成するものとした場合には、突出編地部(10)(12)の組織締結力が低下することで突出編地部の形態安定性が低下してしまうが、挿入連結組織(15)/オーバーラップ連結組織(16)の比率が上記特定範囲に規定された場合には、突出編地部(10)(12)の形態安定性に優れつつ一層ソフトな触感が得られるものとなる。
【0033】上記のような連結糸(4)による挿入連結組織(15)とオーバーラップ連結組織(16)が混在した三次元立体編物の編成は、例えば図7に示すような編成機構を備えた編機(例えばダブルラッセル編機)で行うことができる。即ち、この編成機構は、8枚の筬を備えており、このうち左側の2枚の筬(G1)(G2)が一方の編地編成用、右側の2枚の筬(G3)(G4)が他方の編地編成用であり、中央部に配置された4枚の筬のうち(P2)(P3)が挿入連結組織編成用であり、(P1)(P4)がオーバーラップ連結組織編成用である。なお、(N1)(N2)は編針である。なお、この発明の三次元立体編物(1)は、図7に示される編成機構で編成されるものに特に限定されるものではない。
【0034】前記突出編地部(10)(12)につながれる連結糸(4)のうち、挿入連結組織(15)を構成する連結糸(4)の少なくとも一部はマルチフィラメント糸からなるのが好ましい。挿入連結組織(15)は突出編地部(10)(12)に対して連結糸(4)をタックしているだけであるから、例えば連結糸(4)の全てにモノフィラメント糸を用いた場合には突出編地部(10)(12)の組織締結力が低下してしまうが、該連結糸(4)の少なくとも一部にマルチフィラメント糸を用いれば当該部位の組織締結力が向上するので、三次元立体編物(1)としてクッション性及び復元力に優れたものとなり、人間工学的に心地良いとされる10mm程度の沈み込み感(ストローク感)が確実に得られるものとなる。或いは、前記挿入連結組織(15)を構成する連結糸(4)としては、芯鞘2重構造(例えば融点の高い芯部にこれより融点の低い鞘部を被覆せしめた構造)からなる糸を用いるものとしても良く、該鞘部を編地に熱融着せしめることで当該部位の組織締結力を向上させることができる。
【0035】一方、凹陥編地部(11)(13)につながれる連結糸(4)に関しては、該凹陥編地部(11)(13)に対してタックした挿入連結組織(15)を構成したものとなされているのが好ましい。これにより、突出編地部(10)(12)の位置に対して凹陥編地部(11)(13)をより低い位置(内方位置)に編成することができる、即ち編地(2)(3)凹部の窪み深さを大きくできるので、さらに立体感のあるものを構成できる。
【0036】更に、突出編地部(10)(12)における凹陥編地部(11)(13)近傍部位につながれる連結糸(4c)は、図4に示すように、該突出編地部(10)(12)に対してオーバーラップした編目を作ったオーバーラップ連結組織(16)を構成し、かつ該連結糸(4c)の少なくとも一部がマルチフィラメント糸からなる構成を採用するのが好ましい。編地(2)(3)の凹凸部位の境界領域における連結糸(4c)の構成を上記のようにすることで、編地(2)(3)の凹凸部位の境界領域において傾斜面(20)を容易に形成させることができる、即ち突出編地部(10)(12)における凹陥編地部(11)(13)との境界領域に傾斜面(20)を容易に形成させることが可能となる。このような傾斜面(20)の存在によって、圧縮力をより均等に分散し得て圧縮変形時間が長くなるので、体圧分散性が一段と向上して心地良さを更に向上させることができる利点がある。なお、図4の連結態様図は、構造の理解の容易化のために、各編地部(10)(11)(12)(13)を構成するコース数、ウェール数を減らして簡略化して書いたものである。
【0037】また、前記挿入連結組織(15)を構成する連結糸は、前記表裏編地(2)(3)のうち少なくとも一方の編地に対して、次のような連結態様でつながれるのが好ましい。即ち、図4に示すように、連結糸(4a)は、編地(2)を構成する編目(図示しない)にタックされた後、この同一編地(2)面に沿って1ないし数コースの範囲(S)移動し、この位置(50)で更に同一編地(2)を構成する編目(図示しない)にタックされてアーチ構造が形成された後に、他方側の編地(3)に移動して、この位置(51)で該他方側編地(3)にタックされるものとなされ、以後順次同様の態様で連結編成されるのが好ましい。表裏編地間に連結糸によるアーチ構造が形成され、かつアーチの両端が編地(2)の編目にタックされているので、三次元立体編物(1)のクッション性及び復元性を一段と向上させることができる。なお、本実施形態においては、裏編地(3)に対しても同様の連結態様(連結糸によるアーチ構造)で連結糸がつながれているものである。
【0038】この発明の立体編物(1)において、表編地(2)の編組織形態、裏編地(3)の編組織形態はいずれも特に限定されない。例えば透孔組織に編成されていても良いし、緻密な組織形態に編成されていてもいずれであっても良いが、表編地(2)の少なくとも一部はメッシュまたはトリコット等の透孔組織に編成されるのが、通気性を向上できる点で、好ましい。また、表裏編地(2)(3)は、相互に異なる種類の組織に編成されているのが好ましく、このような構成により、シートフレームへの取り付けを容易化できる利点がある。また、表編地(2)において、突出編地部(10)の編組織形態と、凹陥編地部(11)の編組織形態は同一に構成されていても良いし、異なるものに構成されていても良い。この点は裏編地(3)についても同様である。
【0039】前記表裏両編地(2)(3)において、突出編地部(10)(12)及び凹陥編地部(11)(13)の配置態様は、特に限定されない。例えば図1に示すように、凹陥編地部(11)(13)が格子状に配置されて多数個の突出編地部(10)…(12)…が碁盤目状に相互に間隔をあけて配置された構成であっても良いし、或いは図5(イ)に示すような突出編地部(10)が千鳥状に配置された構成、図5(ロ)に示すような列状の突出編地部(10)がバイアス状(斜め平行状に延びた態様)に配置された構成、図6に示すような列状の突出編地部(10)と列状の凹陥編地部(11)とが相互に交互配置された構成(巾方向に対して直角状に延びる態様)であっても良い。
【0040】中でも、前記碁盤目状配置、千鳥状配置等のように、多数個の突出編地部(10)(12)が相互に間隔をあけて平面視において分散状態に配置された構成を採用するのが好ましい。このような構成を採用すれば、立体編物(1)としての意匠性を大きく向上させることができるのは勿論のこと、突出編地部(10)(12)の上部(又は下部)からだけではなく前後左右斜め方向のいずれの方向からの荷重応力に対しても圧縮弾性力を効果的に発揮できるものとなるので、これらいずれの方向からの荷重に対しても人間工学的に心地良いとされる10mm程度の沈み込み感(ストローク感)が確実に得られるものとなる利点がある。
【0041】平面視において、前記突出編地部の面積/前記凹陥編地部の面積は1/10〜10/1の範囲に設定されるのが好ましい。突出編地部(10)(12)の面積が上記範囲より多くなると、人間工学的に心地良いとされる10mm程度の沈み込み量が得られ難くなるので好ましくないし、突出編地部(10)(12)の面積が上記範囲より少なくなると、良好な着座感が得られ難くなるし、滑り防止性も低下するので好ましくない。また、上記範囲の上下限を逸脱すると、立体感、奥行き感が十分に得られず意匠性も低下するので、好ましくない。中でも、前記突出編地部の面積/凹陥編地部の面積は5/6〜10/1の範囲に設定されるのが一層好ましい。
【0042】なお、図2に示されるような編地の凹凸部位の境界領域において傾斜面(20)が形成されている場合における上記面積比率の算出に際しては、図2に示すように突出編地部(12)と凹陥編地部(13)の境界線は傾斜面(20)の中点(幅方向の中点)にあるものとして算出するものとする。
【0043】また、突出編地部(10)(12)と凹陥編地部(11)(13)の高低差(h)は、2mm以上とするのが好ましい。2mm未満では人間工学的に心地良いとされる10mm程度の沈み込み量が得られ難くなるので好ましくない。
【0044】また、この発明の三次元立体編物(1)の厚さは、3〜35mmとするのが好ましい。厚さが3mm未満では、良好なクッション性を保有せしめることが難しくなるので好ましくないし、一方35mmを超えると形態安定性に乏しいものとなるので好ましくない。中でも、上記厚さは5〜20mmの範囲とするのが、良好なクッション性を確保しつつ形態安定性をより向上させることができる点で、好ましい。
【0045】この発明において、表編地(2)側の圧縮率は、裏編地(3)側の圧縮率より1%以上大きくなるように構成されるのが好ましい。これにより、例えばシートフレームへの取付をよりスムーズに行うことが可能となるし、振動吸収性も向上するので、クッション材としてより好適なものとなるし振動吸収材としても高性能なものとなる。なお、「表編地側の圧縮率」とは、立体編物(1)を表編地を上にして水平に配置してこの表編地の上面側から荷重を加えて測定される圧縮率であり、「裏編地側の圧縮率」とは、立体編物(1)を裏編地を上にして水平に配置してこの裏編地の上面側から荷重を加えて測定される圧縮率である。
【0046】前記表裏編地(2)(3)を編成する地編糸の種類や太さ等は、特に限定されないが、比較的太い120〜2800デシテックスのマルチフィラメント糸やスパン糸を用いるのが好適である。120デシテックス未満の細い糸で編成するときは、立体編地に所要の好ましい腰の強さを具備せしめることが困難になり易いので、好ましくない。一方、2800デシテックスを超える太すぎる編糸を用いるときは、編成作業が困難になることに加えて編地の表面の風合いが低下しやすいので、好ましくない。なお、地編糸にはモノフィラメント糸を用いても良いが、風合い等の観点から、マルチフィラメント糸またはスパン糸を用いるのが好ましい。
【0047】また、連結糸(4)の種類や太さ等も特に限定されず、例えばモノフィラメント糸、マルチフィラメント糸、スパン糸等を用いる。
【0048】また、連結糸(4)によって構成される表裏編地(2)(3)間の連結層の構造は、連結糸の1%以上が、表裏編地(2)(3)の相対する編目から1ないし複数ウェールおよび/または1ないし複数コース離れた編目に向かって斜めに移行したトラス構造とするのが好ましい。即ち、連結糸(4)は、表裏編地(2)(3)の互いに相対する編目間を両編地面とほぼ直角に往復した部分を99%未満の割合で有しても良いが、上記の相対する編目から1ないし複数ウェールおよび/または1ないし複数コース離れた編目に向かって斜めに移行した斜行部分を1%以上有するものとすることが好ましい。連結層を上記のような構造とすることで、連結糸(4)の倒れによる偏座屈を効果的に防止し、方向性の殆どないクッション性と復元力を保有させることができる。中でも、連結糸(4)の30%以上が、表裏編地(2)(3)の相対する編目から1ないし複数ウェールおよび/または1ないし複数コース離れた編目に向かって斜めに移行したトラス構造となされているのが一層好ましい。
【0049】上記地編糸、連結糸の素材は特に限定されるものではない。例えばポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、レーヨン等の合成繊維や再生繊維、ウール、絹、綿等の天然繊維等が挙げられる。上記素材を単独で用いても良いし、これらのいくつかを併用しても良い。素材としてポリエステル系繊維を用いればリサイクル性に優れ好適である。また、地編糸、連結糸の糸形状としては、特に限定されず、例えば丸断面糸でも異形断面糸等でも良い。
【0050】また、地編糸、連結糸等の構成糸の色は、例えば同色であっても良いし、類似色であっても良いし、あるいは相互に補色であっても良く、特に限定されず、意匠性との兼ね合いで自由な組み合わせを採用することができる。前記同色、類似色、補色は、地編糸同士の関係、連結糸同士の関係、地編糸と連結糸との間の関係のいずれについても採用できる。
【0051】なお、上記実施形態においては、図2に示すように、表裏いずれの編地(2)(3)においても、突出編地部(10)(12)は全て同じ高さに配置され、凹陥編地部(11)(13)も全て同じ高さに配置されているが、特にこのような形態に限定されるものではなく、例えば凹陥編地部(11)(13)の高さ(位置)が複数種類に変化せしめられた構成を採用することもできる。
【0052】また、上記実施形態では、表裏編地(2)(3)のいずれもが、突出編地部と凹陥編地部とで構成されるものとなされているが、表裏編地(2)(3)のうちいずれか一方の編地が突出編地部と凹陥編地部とで構成され、他方の編地がフラットな編地に編成されたものであっても良い。
【0053】この発明の三次元立体編物(1)は、例えば自動車座席用のクッションシート材、椅子用のクッションシート材、ベッドシート用クッションシート材、フロアーシート用クッションシート材等のクッション材として好適に用いられ、その他間仕切り、パーティション、振動吸収材、ブラインド、或いは防護緩衝体、壁材、天井材等の建築構造材等にも用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。
【0054】
【実施例】次に、この発明の具体的実施例について説明する。
【0055】<実施例1>図8に示す編組織により下記仕様による三次元立体編物(図1〜4参照)を、7枚の筬を備えた編成機構からなるダブルラッセル編機を用いて編成した。
【0056】編機:ダブルラッセル編機(9ゲージ/2.54cm、釜間距離15mm)
表編地の突出編地部のウェール密度:9.8本/5cm(5本/インチ)
表編地の突出編地部のコース密度:23.6本/5cm(12本/インチ)
表編地の凹陥編地部のウェール密度:3.9本/5cm(2本/インチ)
表編地の凹陥編地部のコース密度:23.6本/5cm(12本/インチ)
裏編地の突出編地部のウェール密度:9.8本/5cm(5本/インチ)
裏編地の突出編地部のコース密度:23.6本/5cm(12本/インチ)
裏編地の凹陥編地部のウェール密度:3.9本/5cm(2本/インチ)
裏編地の凹陥編地部のコース密度:23.6本/5cm(12本/インチ)
表編地の突出編地部の組織:ダブルトリコット表編地の凹陥編地部の組織:ダブルトリコット裏編地の突出編地部の組織:クインズコード裏編地の凹陥編地部の組織:クインズコード表編地の編糸:1450デシテックス/96fポリエステルBCFマルチフィラメント裏編地の編糸:1450デシテックス/96fポリエステルBCFマルチフィラメント連結糸:660デシテックス/1fポリエステル、330デシテックス/96fポリエステルBCFマルチフィラメント仕上がり厚みt:13.5mm編地の凹凸の高低差h:2mm突出編地部の面積/凹陥編地部の面積=2/1(比率)
1つの突出編地部の面積=1.27cm2突出編地部につながれる連結糸に関し、挿入連結組織/オーバーラップ連結組織=5/2(比率)
【0057】<実施例2>突出編地部につながれる連結糸は全て挿入連結組織を構成したものとなされた以外は、実施例1と同様にして三次元立体編物を得た。
【0058】<実施例3>突出編地部につながれる連結糸は全てオーバーラップ連結組織を構成したものとなされた以外は、実施例1と同様にして三次元立体編物を得た。
【0059】<実施例4>突出編地部につながれる連結糸としてモノフィラメント糸のみを用いるものとした以外は、実施例1と同様にして三次元立体編物を得た。
【0060】<実施例5>下記仕様による三次元立体編物(図6参照)を編成した。
【0061】編機:ダブルラッセル編機(9ゲージ/2.54cm、釜間距離15mm)
表編地の突出編地部のウェール密度:13.7本/5cm(7本/インチ)
表編地の突出編地部のコース密度:23.6本/5cm(12本/インチ)
表編地の凹陥編地部のウェール密度:3.9本/5cm(2本/インチ)
表編地の凹陥編地部のコース密度:23.6本/5cm(12本/インチ)
裏編地の突出編地部のウェール密度:13.7本/5cm(7本/インチ)
裏編地の突出編地部のコース密度:23.6本/5cm(12本/インチ)
裏編地の凹陥編地部のウェール密度:3.9本/5cm(2本/インチ)
裏編地の凹陥編地部のコース密度:23.6本/5cm(12本/インチ)
表編地の突出編地部の組織:2コースメッシュ表編地の凹陥編地部の組織:2コースメッシュ裏編地の突出編地部の組織:鎖挿入裏編地の凹陥編地部の組織:鎖挿入表編地の編糸:1450デシテックス/96fポリエステルBCFマルチフィラメント裏編地の編糸:660デシテックス/192fポリエステルBCFマルチフィラメント連結糸:660デシテックス/1fポリエステル仕上がり厚みt:13mm編地の凹凸の高低差h:6mm突出編地部の面積/凹陥編地部の面積=3/1(比率)
突出編地部につながれる連結糸に関し、挿入連結組織/オーバーラップ連結組織=2/7(比率)
【0062】上記のようにして編成された各三次元立体編物に対して、下記評価法により評価を行った。これらの結果を表1に示す。
【0063】<圧縮率及び圧縮復元率測定法>三次元立体編物シートを5×5cmの試験片に切出し、その初期厚みAを測定した。次に試験片(の表編地)上に5kgの重りを載せて10分間放置し、そのときの厚さBを測定したのち、重りを取り除いて10分経過後の厚さCを測定した。下記算出式により圧縮率、圧縮復元率を求めた。
【0064】
圧縮率(%)={(A−B)/A}×100圧縮復元率(%)={(C−B)/(A−B)}×100【0065】<編地の形態安定性評価法>編地を手で強く押してその形態変化を調べた。編地の編組織の形態に変化が全く認められなかったものを「◎」とし、殆ど認められなかったものを「○」とし、形態変化が目立っていたものを「×」とした。
【0066】<触感評価法>三次元立体編物に実際に手で触れてみて、異物感、硬さ感、ざらつき感が感じられず非常にソフトな触感であるものを「◎」とし、異物感、硬さ感、ざらつき感が殆ど感じられずソフトな触感であるものを「○」とし、異物感、硬さ感、ざらつき感が少し気になるものを「△」とし、異物感、硬さ感、ざらつき感が顕著であるものを「×」とした。
【0067】<10mm程度の沈み込み感>三次元立体編物に実際に座ってみて、10mm程度の沈み込み感が確実に得られるものを「◎」とし、10mm程度の沈み込み感がほぼ得られるものを「○」とし、10mm程度の沈み込み感が得られ難いものを「×」とした。
【0068】<滑り防止性評価法>三次元立体編物に実際に人が着座し、臀部によって前後方向にずらす力を加えた時に、滑り移動が極めて生じ難いものを「◎」とし、比較的小さい力が加わる場合には滑り移動が殆ど生じないものを「○」とし、比較的小さい力でも滑り移動が生じやすいものを「×」とした。
【0069】
【表1】

【0070】表1から明らかなように、この発明の実施例1〜5の三次元立体編物は、圧縮率及び圧縮復元率ともに優れているし、編地の形態安定性及び触感も良好で、人間工学的に心地良いとされる10mm程度の沈み込み感が得られ、また臀部の滑りが抑制されて滑り防止性に優れていた。また、立体感、奥行き感も十分にあって意匠性にも優れていた。更に、編地に凹凸を付与せしめるに際し熱処理等の2次加工を行う必要がないので、生産性にも優れる。
【0071】
【発明の効果】この発明の三次元立体編物は、表裏編地を連結糸でつないだ立体編物であるので、軽量で、通気性、クッション性、体圧分散性に優れる。また、編成する際の連結糸のランナー値調整という編み技術によって凹凸を付与せしめるものであり、編地に凹凸を付与せしめるに際し熱処理等の2次加工を行う必要がなく、従って工程数を削減できて生産性に優れ、コストの低減にもなる。また、編地表面に凹凸が形成されているので、滑り防止性に優れたものとなるし、人間工学的に心地良いとされる10mm程度の沈み込み感(ストローク感)が得られ、また立体感、奥行き感も十分に付与できるし、振動吸収性にも優れたものとなる。更に、従来のように連結糸を熱収縮させる必要がないので、編地の凹凸の境界領域においても構造上の歪みを生じることがなく、従ってこの境界領域において硬さ感が生じることを効果的に防止できて良好な触感を確保できる。
【0072】請求項2の発明によれば、編地の凹凸が上下相対応する領域に配置されているから、体圧分散性及びクッション性を顕著に向上させることができる。
【0073】請求項3の発明によれば、突出編地部につながれる連結糸の5%以上が挿入連結組織を構成するので、連結糸が突出編地部より外方に突出することを効果的に防止でき、これにより異物感や硬さ感が減少して一層ソフトな触感を確保できるものとなる。
【0074】請求項4の発明によれば、突出編地部につながれる連結糸に関し、挿入連結組織を構成する連結糸/オーバーラップ連結組織を構成する連結糸の比率が2/8〜8/2の範囲に規定されているから、突出編地部の形態安定性を向上させつつ、一層ソフトな触感を確保できる。
【0075】請求項5の発明によれば、上記挿入連結組織を構成する連結糸の少なくとも一部がマルチフィラメント糸からなるので、編地における組織締結力が向上し、クッション性及び復元力に一層優れたものとなり、人間工学的に心地良いとされる10mm程度の沈み込み感(ストローク感)が確実に得られる。
【0076】請求項6の発明によれば、凹陥編地部につながれる連結糸が挿入連結組織を構成するので、編地凹部の窪み深さ(凹凸の高低差)を大きくすることができ、一層立体感のあるものを提供できる。
【0077】請求項7の発明によれば、突出編地部における凹陥編地部近傍部位につながれる連結糸が、オーバーラップ連結組織を構成し、かつ該連結糸の少なくとも一部がマルチフィラメント糸からなるので、編地の凹凸部位の境界領域において傾斜面を容易に形成させることができ、この傾斜面の存在によって体圧分散性を一段と向上させることができる。
【0078】請求項8の発明によれば、表裏編地間に連結糸によるアーチ構造の柱が形成され、かつアーチの両端が編地の編目にタックされたものになるので、三次元立体編物のクッション性及び復元性をより一層向上させることができる。
【0079】請求項9の発明によれば、表編地の少なくとも一部が透孔組織に編成されるので、通気性を向上させることができる。
【0080】請求項10の発明によれば、連結糸の1%以上がトラス構造の連結層を構成するので、連結糸の倒れによる偏座屈を生じることがなく、方向性のない優れたクッション性と復元力を保有せしめ得る。
【0081】請求項11の発明によれば、表裏編地が相互に異なる種類の組織に編成されるので、シートフレームへの取り付けが容易となる利点がある。
【0082】請求項12の発明によれば、多数個の突出編地部が相互に間隔をあけて平面視において分散状態に配置されているから、立体編物としての意匠性を大きく向上させることができるし、編地の上部からだけではなく前後左右斜め方向のいずれの方向からの荷重応力に対しても圧縮弾性力を効果的に発揮できるものとなり、いずれの方向からの荷重に対しても人間工学的に心地良いとされる10mm程度の沈み込み感(ストローク感)が確実に得られるものとなる。
【0083】請求項13の発明によれば、突出編地部と凹陥編地部の面積比率が1/10〜10/1の範囲に設定されているので、10mm程度の沈み込み感が確実に得られるし、滑り防止性及び意匠性も一層向上させることができる。
【0084】請求項14の発明によれば、表編地側の圧縮率が裏編地側の圧縮率より1%以上大きいので、例えばシートフレームへの取付が容易になるし、振動吸収性も向上する。
【出願人】 【識別番号】390014487
【氏名又は名称】住江織物株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区南船場3丁目11番20号
【出願日】 平成13年6月27日(2001.6.27)
【代理人】 【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義 (外2名)
【公開番号】 特開2003−13346(P2003−13346A)
【公開日】 平成15年1月15日(2003.1.15)
【出願番号】 特願2001−193920(P2001−193920)