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【発明の名称】 アクリル繊維系立毛製品及びその製造方法
【発明者】 【氏名】栗本 博史
【住所又は居所】大阪市北区堂島浜二丁目2番8号 東洋紡績株式会社本社内

【要約】 【課題】毛抜けの問題を解消するアクリル繊維系立毛製品を提供する。

【解決手段】繊度0.9〜19.0デシテックスのアクリル短繊維(A)を20〜80重量%、沸水収縮率40%以上の高収縮性アクリル短繊維(B)を80〜20重量%含有する紡績糸をパイル糸として有し、ガードパイル部が前記(A)、ダウンパイル部が前記(B)で構成されてなり、毛抜け防止性に優れることを特徴とするアクリル繊維系立毛製品であり、さらに高沸水収縮性アクリル短繊維を含有する紡績糸をパイル糸として使用し、高沸水収縮性アクリル短繊維を収縮させることによって、パイルの毛抜けを防止することを特徴とするアクリル繊維系立毛製品の製造方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】繊度0.9〜19.0デシテックスのアクリル短繊維(A)を20〜80重量%、沸水収縮率40%以上の高収縮性アクリル短繊維(B)を80〜20重量%含有する紡績糸をパイル糸として有し、ガードパイル部が前記(A)、ダウンパイル部が前記(B)で構成されてなり、毛抜け防止性に優れることを特徴とするアクリル繊維系立毛製品。
【請求項2】高沸水収縮性アクリル短繊維を含有する紡績糸をパイル糸として使用し、高沸水収縮性アクリル短繊維を収縮させることによって、パイルの毛抜けを防止することを特徴とするアクリル繊維系立毛製品の製造方法。
【請求項3】前記高沸水収縮性アクリル短繊維の沸水収縮率が40%以上であることを特徴とする請求項2に記載のアクリル繊維系立毛製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はマイヤー毛布やボアなどの所謂立毛製品に関し、毛抜け防止性に優れたアクリル繊維系立毛製品を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】立毛製品のパイル部に供するアクリル繊維紡績糸において、従来のアクリル繊維紡績糸をダウンパイルに用いると、風合い、嵩高性等の良好な立毛製品は得られるが、ガードパイルを形成する繊維の拘束が十分ではなくガードパイルの脱落(以下毛抜けと称する)が発生し易い問題があり、さらに、この毛抜けの発生によって、見栄えや風合い等で品位の低下を招き、また他の物へ付着する、床上へ綿屑となって堆積するなどの不衛生な2次的問題の発生もあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述した毛抜けの問題を解消するアクリル繊維系立毛製品を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、以下の手段を採用するものである。
1.繊度0.9〜19.0デシテックスのアクリル短繊維(A)20〜80重量%と沸水収縮率40%以上の高収縮性アクリル短繊維(B)80〜20重量%とを含有する紡績糸をパイル糸として有し、ガードパイル部が前記(A)、ダウンパイル部が前記(B)で構成されてなり、毛抜け防止性に優れることを特徴とするアクリル繊維系立毛製品。
2.高沸水収縮性アクリル短繊維を含有する紡績糸をパイル糸として使用し、高沸水収縮性アクリル短繊維を収縮させることによって、パイルの毛抜けを防止することを特徴とするアクリル繊維系立毛製品の製造方法。
3.前記高沸水収縮性アクリル短繊維の沸水収縮率が40%以上であることを特徴とする前記2に記載のアクリル繊維系立毛製品の製造方法。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の立毛製品とは、立毛製品製造機、すなわちダブルラッセル経編機(一般にはマイヤー編機と呼ばれる)、メリヤスボア編機、片面および両面シール織機等によって製造され、布帛のパイル部に対し毛さばき、ポリッシングおよび剪毛の加工を施したものである。
【0006】本発明の立毛製品は、繊度0.9〜19.0デシテックスのアクリル短繊維(A)を20〜80重量%、沸水収縮率40%以上の高収縮性アクリル短繊維(B)を80〜20重量%含有する紡績糸をパイル糸として使用されて製造されるものである。
【0007】アクリル短繊維(A)のパイル糸中の含有率は、20〜80重量%であるが、好ましくは40〜70重量%であり、80重量%を超えると、高収縮性アクリル短繊維(B)の含有量が少なすぎて本発明の効果が発揮され難くなる。また、高収縮性アクリル短繊維(B)のパイル糸中の含有率は、20〜80重量%であるが、好ましくは30〜60重量%であり、80重量%を超えると、紡績性や取扱性が悪くなる傾向がある。パイル糸中には、本発明の効果を損なわない範囲で、羊毛、レーヨン、ポリエステルなどのアクリル繊維以外の繊維を含有させることができる。
【0008】アクリル短繊維(A)は立毛製品においてガードパイル部を構成する素材であり、繊度は、0.9〜19.0デシテックスであり、用途に応じて適宜繊度を選択する。繊度が0.9デシテックス未満の場合、細繊度化によるアクリル短繊維綿の凝集が進み、立毛製品製造工程での仕上げ性不良および立毛製品での品位低下を招くことがある。また19.0デシテックスよりも太くなると、紡績工程において混紡斑やフライの増加といった問題が発生し、品位良好な立毛製品が得られない。
【0009】ガードパイル部を構成するアクリル短繊維(A)の断面形状は、丸、偏平、その他異形等いかなる形状のものを用いても良い。特にフェイクファーとして用いる場合には、見栄えや風合いの面から偏平または丸型、または両者の混紡品であることが望ましい。
【0010】本発明における高収縮性アクリル短繊維(B)は、紡績される前の綿の状態で沸水収縮率40%以上の高収縮性のアクリル短繊維であり、立毛製品においてダウンパイル部を構成する素材であり、沸水収縮率が40%以上であれば、高い収縮能力による毛抜け防止、より嵩高な風合いとする効果を発現させることができるが、高収縮性アクリル短繊維(B)の製造のし易さや取扱易さの点で沸水収縮率が40〜60%程度のものが好ましい。
【0011】ダウンパイル部を構成する高収縮アクリル短繊維(B)は、沸水収縮率が40%未満のものを用いた場合、毛抜けの発生は避けられない。該アクリル短繊維の断面形状は、丸型のものを使用する。また該アクリル短繊維の断面形状が丸型以外の場合、均一な収縮力を発現させることが難しくなる傾向がある。
【0012】本発明のアクリル繊維系立毛製品は、高沸水収縮性アクリル短繊維を含有する紡績糸をパイル糸として使用し、高沸水収縮性アクリル短繊維を収縮させることによって、パイルの毛抜けを防止することができる。高沸水収縮性アクリル短繊維を収縮させる方法は、特に限定されないが、染色工程、仕上げ工程など、高沸水収縮性アクリル短繊維が収縮できる方法や条件を適宜採用すればよい。
【0013】
【実施例】以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明は、何らこれらの実施例によって限定されるものではない。後述する実施例における測定方法は以下の通りである。
■パイルの毛抜け評価法パイルの先端から5mm部分を手で把持し、該ボア基布に荷重を掛けていき、パイルが該ボア基布から引き抜かれたときの荷重で評価する。また、パイルの把持の仕方は、双糸形態でV字状に基布に植毛されている1パイルの一端を手で把持する方式とした。
■立毛製品の風合い評価立毛製品の風合い評価は、パネラーによる4段階の官能評価を行なった。
◎(極めてソフトでボリューム感がある)、 ○(概ね良好)、△(やや硬くボリューム感不足)、 ×(不良)
【0014】[実施例1]ガードパイル用として、偏平タイプのアクリル短繊維綿(偏平度=3.8、繊度3.3デシテックス、繊維長76〜127mmのバイアスカット、東洋紡績(株)製タイプK891)を60重量%、ダウンパイル用として、アクリル短繊維高収縮綿(沸水収縮率=45%、繊度5.0デシテックス、繊維長89〜140mmのバイアスカット、東洋紡績(株)製タイプF49)を40重量%混綿し、梳毛紡績方式にてメートル番手2/42の紡績糸を得た。なお該アクリル紡績糸の撚数は、単糸撚数=410回/m(撚係数=63.3)、双糸撚数=250回/m(双糸撚数/単糸撚数=0.61)とした。また撚係数は、下記の式により算出した。
撚係数 =1メートル間の撚数/メートル番手の平方根得られた紡績糸を綛に仕立て(単量=250g、綛枠周2.3m)、カチオン染料による常法にて綛染色後にコーンに仕立て直してボア編機に供した。その後ピンテンターによる幅出し・裏張りを施し、ブラッシング、ポリッシャー・シャーリング機による従来からの立毛製品製造工程にて常法によりメリヤス編み立毛ボア製品を製造した。得られた立毛製品についての評価結果を表1に示した。
【0015】[比較例1]ガードパイル用として、偏平タイプのアクリル短繊維綿(偏平度=3.8、繊度3.3デシテックス、繊維長76〜127mmのバイアスカット、東洋紡績(株)製タイプK891)を60重量%、ダウンパイル用として、アクリル短繊維収縮綿(沸水収縮率=28%、繊度3.3デシテックス、繊維長76〜127mmのバイアスカット、東洋紡績(株)製タイプK89)を40重量%混綿し、実施例1同様に梳毛紡績方式にてメートル番手2/32を紡績した。なお該アクリル紡績糸の撚数は、単糸撚数=360回/m(撚係数=63.6)、双糸撚数=220回/m(双糸撚数/単糸撚数=0.61)とした。実施例1をもとに撚係数は同じとし、また紡績番手については染色揚がり後の番手が同じになるように設定した。以下、該アクリル紡績糸を用いて実施例1と同様にしてメリヤス編み立毛ボア製品を製造し、実施例1と同様評価した。評価結果を表1に示した。
【0016】[実施例2]ガードパイル用として、丸断面タイプのアクリル短繊維(繊度0.9デシテックス、繊維長51mm定長短繊維、東洋紡績(株)製タイプK815)を60重量%、ダウンパイル用として、アクリル短繊維高収縮綿(沸水収縮率=40%、繊度2.4デシテックス、繊維長51mm定長短繊維、東洋紡績(株)製タイプF49)を40重量%混綿し、合繊紡績方式にてメートル番手2/40を紡績した。撚数は、単糸撚数=500回/m(撚係数=79.1)、双糸撚数=300回/m(双糸撚数/単糸撚数=0.60)とした。以下、該アクリル紡績糸を用いて実施例1と同様にしてメリヤス編み立毛ボア製品を製造し、実施例1と同様評価した。評価結果を表1に示した。
【0017】[比較例2]ガードパイル用として、丸断面タイプのアクリル短繊維(繊度0.9デシテックス、繊維長51mm定長短繊維、東洋紡績(株)製タイプK815)を60重量%、ダウンパイル用として、アクリル短繊維収縮綿(沸水収縮率=25%、繊度2.2デシテックス、繊維長51mm定長短繊維、東洋紡績(株)製タイプK85)を40重量%混綿し、合繊紡績方式にてメートル番手2/32を紡績した。撚数は、単糸撚数=450回/m(撚係数=79.5)、双糸撚数=270回/m(双糸撚数/単糸撚数=0.60)とした。以下、該アクリル紡績糸を用いて実施例1と同様にしてメリヤス編み立毛ボア製品を製造し、実施例1と同様評価した。評価結果を表1に示した。
【0018】[実施例3、比較例3]実施例2、比較例2において、ガードパイル用の丸断面タイプのアクリル短繊維綿を偏平タイプ(偏平度=2.0、繊度1.9デシテックス、繊維長51mm定長短繊維、東洋紡績(株)製タイプK891)に変更する以外は、同一条件にてメリヤスボア編み立毛製品を製造し、実施例1と同様評価した。評価結果を表1に示した。
【0019】
【表1】

前述したパイルの毛抜け評価法による結果から、アクリル短繊維高収縮綿(沸水収縮率40%及び45%)を使用した本発明の立毛製品の方が、従来のアクリル短繊維収縮綿(沸水収縮率25%及び28%)使いのものに比べて、1.7〜2.1倍パイルが抜け難いものとなった。また立毛製品の風合いについても、アクリル短繊維高収縮綿使いの方が嵩高性は高く、ボリューム感のあるものが得られた。特にガードパイル部に1.0デシテックス以下の細繊度のアクリル短繊維綿を用いた場合(実施例2、比較例2がこれに該当)、より一層ソフト感が顕在化し、アクリル短繊維収縮綿(沸水収縮率25%及び28%)使いとの差異が明確であった。
【0020】
【発明の効果】本発明によれば、沸水収縮率が40%以上の高収縮性アクリル短繊維綿を混紡したアクリル紡績糸を立毛製品に使用し、かつ高収縮性アクリル短繊維を収縮させることで、立毛製品での毛抜け防止効果を発現することができ、かつ腰張り、嵩高性に優れるアクリル繊維系の立毛製品が得られる。
【出願人】 【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡績株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市北区堂島浜2丁目2番8号
【出願日】 平成13年6月28日(2001.6.28)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−13342(P2003−13342A)
【公開日】 平成15年1月15日(2003.1.15)
【出願番号】 特願2001−196913(P2001−196913)