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【発明の名称】 マグネシウム合金の表面処理法
【発明者】 【氏名】鈴木 光夫
【住所又は居所】埼玉県上尾市原市1333−2 三井金属鉱業株式会社総合研究所内
【氏名】笠原 暢順
【住所又は居所】埼玉県上尾市原市1333−2 三井金属鉱業株式会社総合研究所内
【氏名】百武 正浩
【住所又は居所】埼玉県上尾市原市1333−2 三井金属鉱業株式会社総合研究所内
【氏名】土橋 誠
【住所又は居所】埼玉県上尾市原市1333−2 三井金属鉱業株式会社総合研究所内
【課題】マグネシウム合金表面の耐食性及び塗膜密着性を改善する表面処理法を提供すること。

【解決手段】マグネシウム合金表面を、炭酸塩濃度が0.05〜0.19Mであり、リン酸塩濃度が0.005〜0.15Mである電解液中で、電解液温度50〜95℃、電流密度1〜50A/dm2 、電解電圧40〜150Vで30秒〜20分間陽極酸化処理する、マグネシウム合金の表面処理法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】マグネシウム合金表面を、炭酸塩濃度が0.05〜0.19Mであり、リン酸塩濃度が0.005〜0.15Mである電解液中で、電解液温度50〜95℃、電解電圧40〜150Vで30秒〜20分間陽極酸化処理することを特徴とするマグネシウム合金の表面処理法。
【請求項2】マグネシウム合金表面を、炭酸塩濃度が0.07〜0.15Mであり、リン酸塩濃度が0.02〜0.13Mである電解液中で、電解液温度75〜93℃、電解電圧70〜140Vで2〜15分間陽極酸化処理する請求項1記載のマグネシウム合金の表面処理法。
【請求項3】炭酸塩が炭酸ナトリウム、炭酸カリウム又は炭酸アンモニウムである請求項1又は2記載のマグネシウム合金の表面処理法。
【請求項4】リン酸塩がリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム又はリン酸二水素アンモニウムである請求項1、2又は3記載のマグネシウム合金の表面処理法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はマグネシウム合金の表面処理法に関し、より具体的には、マグネシウム合金表面を特定組成の電解液を用いて特定の電解条件下で陽極酸化処理することにより、マグネシウム合金表面の耐食性及び塗膜密着性を改善する表面処理法に関する。
【0002】
【従来の技術】マグネシウム合金は実用金属中で最も軽量で且つ比強度も大きいので、その特性を利用して、航空機、自動車、二輪車等の構造材、内外装部品、家電製品の部品、カバン、スーツケース等の収納容器類、更にはコンピュータ、音響などの電子工業製品の部品等に広く用いられている。
【0003】しかしながら、マグネシウム合金は実用金属中で最も活性な金属材料であるため、耐食性の点で素材のままでの使用は困難であり、またマグネシウム合金は、大気中ですぐに酸化されて表面に薄い皮膜が形成されるため、塗装し難く、また塗膜密着性も著しく低下するという欠点を有している。
【0004】マグネシウム合金の耐食性、塗膜密着性を改善するための表面処理法として、従来、化成処理や陽極酸化処理が実施されてきている。従来の陽極酸化処理としてはDOW17法、HAE法や、特公昭56−11392号公報、特公平5−8278号公報、特開平9−176894号公報等に開示された方法がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】特公昭56−11392号公報に開示された方法は発色皮膜の形成を目的として30V以下という低い電解電圧で陽極酸化処理を行う手法である。このように低い電解電圧ではバリア型皮膜の厚さが薄くなるため耐食性は不充分となる。
【0006】また、特公平5−8278号公報に開示された方法は炭酸塩を2規定以上の濃度で含有する浴中で陽極酸化処理を行う必要があり、また、特開平9−176894号公報に開示された方法は炭酸塩を0.2モル/リットル以上の濃度で含有する浴中で陽極酸化処理を行う必要がある。このような濃度で炭酸塩を含有する浴中で40〜150Vの電解電圧で陽極酸化処理を行うと火花放電が生じ、得られる陽極酸化皮膜の耐食性は不十分となる。
【0007】本発明は、従来の陽極酸化処理法の問題点を解消するためになされたものであり、マグネシウム合金表面を特定組成の電解液を用いて特定の電解条件下で陽極酸化処理することにより、マグネシウム合金表面の耐食性及び塗膜密着性を改善する表面処理法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、リン酸塩及び炭酸塩を低濃度で含有する電解液中で、火花放電をさせずに40〜150Vの電解電圧で陽極酸化処理を行う事により、腐食性の強いMg−Li合金等に対しても、耐食性が高く且つ塗膜密着性の良好な陽極酸化皮膜を形成し得ることを見いだし、本発明を完成した。
【0009】即ち、本発明のマグネシウム合金の表面処理法は、マグネシウム合金表面を、炭酸塩濃度が0.05〜0.19Mであり、リン酸塩濃度が0.005〜0.15Mである電解液中で、電解液温度50〜95℃、電解電圧40〜150Vで30秒〜20分間陽極酸化処理することを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明のマグネシウム合金の表面処理法は、いかなるマグネシウム合金の表面にも陽極酸化皮膜を形成することができる。そのようなマグネシウム合金としては、組成的には、例えば、Mg−Al系合金、Mg−Zn系合金、Mg−Mn系合金、Mg−Zr系合金、Mg−Al−Zn系合金、Mg−Al−Mn系合金、Mg−Zn−Zr系合金、Mg−希土類元素系合金、Mg−Zn−希土類元素系合金、Mg−Li系合金、Mg−Li−Y系合金、Mg−Ca−希土類元素系合金等のマグネシウム合金があり、また用途的にはAZ63、AZ91、AZ92、AM100、ZK51、EZ33、ZE41等からなる金型鋳造品、砂型鋳造品、ダイカストや、AZ31、AZ61、AZ80、ZK60等からなる展伸材がある。また、いかなる表面状態のマグネシウム合金にも陽極酸化皮膜を形成することができ、例えば、ダイカストのままの表面でも、塑性加工したままの表面でも、研磨により鏡面仕上げした表面でもよい。
【0011】本発明のマグネシウム合金の表面処理法においては、一般的には、前処理したマグネシウム合金を陽極酸化処理する。この前処理は、例えば、ダイカストのままの表面に対しては、マグネシウム合金の陽極酸化処理に先立って従来実施されていた公知の種々の処理法、例えば酸洗浄、ピロリン酸塩処理、苛性アルカリ処理で実施することができる。例えば、60%硝酸溶液40mLを希釈して1Lとした溶液中に室温で2分間浸漬し、その後水洗する。また、光沢を有する表面を形成する場合には、研磨により鏡面仕上げした表面を形成した後、その研磨表面を溶解しない(光沢をなくさない)前処理を実施する必要がある。このような前処理としては界面活性剤処理やアルカリ処理、或いはそれらの組合せによる洗浄を行うことが好ましい。
【0012】本発明のマグネシウム合金の表面処理法においては、炭酸塩濃度が0.05〜0.19Mであり、リン酸塩濃度が0.005〜0.15Mである電解液を用いる。この炭酸塩としては好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び/又は炭酸アンモニウムを用いる。炭酸塩濃度が0.19Mを超える場合には、得られる陽極酸化皮膜の耐食性は不十分となる傾向があり、また、炭酸塩濃度が0.05M未満である場合には、高電圧での電解が困難になる傾向がある。炭酸塩濃度は好ましくは0.07〜0.15Mである。
【0013】また、リン酸塩としては好ましくはリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム及び/又はリン酸二水素アンモニウムを用い、より好ましくはリン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム及び/又はリン酸水素二アンモニウムを用いる。リン酸塩濃度が0.15Mを超える場合には、得られる陽極酸化皮膜の耐食性は不十分となる傾向があり、また、リン酸塩濃度が0.005M未満である場合にも、得られる陽極酸化皮膜の耐食性は不十分となる傾向がある。リン酸塩濃度は好ましくは0.02〜0.13Mである。
【0014】本発明のマグネシウム合金の表面処理法においては、電解液温度(浴温、電解処理温度)を50〜95℃、好ましくは75〜93℃に維持する。電解液温度が50℃未満の場合にはマグネシウム合金の溶解が生じる傾向があり、また95℃を超える場合には電解液の蒸発が激しくなり、浴の管理が難しくなる。
【0015】本発明のマグネシウム合金の表面処理法においては、電解電圧を40〜150Vの範囲内に維持して陽極酸化処理を実施するのであるが、まず最初に、1〜50A/dm2 の範囲内、好ましくは3〜40A/dm2 の範囲内の所定の初期電流密度で、通常は10〜20秒間程度、定電流密度電解を行い、槽電圧が40〜150Vの範囲内、好ましくは70〜140Vの範囲内の所定の電圧に上昇した後に定電位電解を行う。この定電位電解時の電流密度は、一般的には、0.1A/dm2 程度以下である。定電流密度電解の際の電流密度が1A/dm2 未満である場合には20分間以上の電解処理が必要となって生産性が低下し、また、電流密度が50A/dm2 を超える場合には高電圧での電解が困難になる傾向がある。定電位電解の際の電圧が40V未満である場合には得られる陽極酸化皮膜の耐食性は不十分となる傾向があり、また、電圧が150Vを超える場合にも得られる陽極酸化皮膜の耐食性は不十分となる傾向がある。
【0016】本発明のマグネシウム合金の表面処理法においては、必要な電解処理時間は、電解液中の炭酸塩濃度及びリン酸塩濃度、電解液温度、初期電流密度、電解電圧に依存して変化するが、一般的には30秒〜20分間であり、好ましくは2〜15分間である。電解処理時間が30秒未満である場合には得られる陽極酸化皮膜の耐食性は不十分となる傾向があり、また電解処理時間が20分間を超えても得られる陽極酸化皮膜の耐食性はそれ以上には増加しない。
【0017】
【実施例】以下に、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明する。
実施例1〜24圧延によって作製したMg−9.5Li−1Y合金の多数の試験片(45mm×40mm×0.5mm)を室温の2.4%希硝酸溶液(60%硝酸溶液(関東化学社製)40mLを希釈して1Lとした溶液)中に2分間浸漬し、その後室温の水道水で30秒間洗浄し、次いで室温の純水で30秒間洗浄した。
【0018】上記の様にして処理した各々の試験片を、第1表に示す炭酸塩濃度及びリン酸塩濃度の電解液中、第1表に示す電解液温度で、第1表に示す初期電流密度で定電流密度電解を開始し、槽電圧が第1表に示す電解電圧まで上昇した時点で(定電流密度電解を開始してから10〜20秒後に)定電位電解を実施し、合計で第1表に示す処理時間電解した。その後室温の水道水で30秒間洗浄し、次いで室温の純水で30秒間洗浄した。最後に80℃で20分間乾燥した。
【0019】上記のように陽極酸化処理を実施し、乾燥した各々の試験片の耐食性についてJIS Z 2371に従って24時間塩水噴霧試験を実施し、レイティングナンバ法によって評価した。それらの結果は第1表に示す通りであった。また、上記のように陽極酸化処理を実施し、乾燥した各々の試験片の表面に、浸漬塗装法よりエポキシ系焼付け塗料を塗布し、15分間静置した後、150℃で20分間加熱乾燥を実施した。その後JIS K 5400の8.5.2に準拠した碁盤目テープ法(1mm間隔)によって塗膜密着試験を実施した。その結果は第1表に示す通りであった。
【0020】
【表1】

【0021】実施例25〜34圧延によって作製したMg−9.5Li−1Y合金の多数の試験片(45mm×40mm×0.5mm)を室温の2.4%希硝酸溶液(60%硝酸溶液(関東化学社製)40mLを希釈して1Lとした溶液)中に2分間浸漬し、その後室温の水道水で30秒間洗浄し、次いで室温の純水で30秒間洗浄した。
【0022】上記の様にして処理した各々の試験片を、第2表に示す種類の炭酸塩及びリン酸塩を第2表に示す濃度で含有する電解液中で、電解液温度90℃、初期電流密度16A/dm2 で定電流密度電解を開始し、槽電圧が110Vまで上昇した時点で(定電流密度電解を開始してから10〜20秒後に)定電位電解を実施し、合計で10分間電解した。その後室温の水道水で30秒間洗浄し、次いで室温の純水で30秒間洗浄した。最後に80℃で20分間乾燥した。
【0023】上記のように陽極酸化処理を実施し、乾燥した各々の試験片の耐食性についてJIS Z 2371に従って24時間塩水噴霧試験を実施し、レイティングナンバ法によって評価した。それらの結果は第2表に示す通りであった。また、上記のように陽極酸化処理を実施し、乾燥した各々の試験片の表面に、浸漬塗装法よりエポキシ系焼付け塗料を塗布し、15分間静置した後、150℃で20分間加熱乾燥を実施した。その後JIS K 5400の8.5.2に準拠した碁盤目テープ法(1mm間隔)によって塗膜密着試験を実施した。その結果は第2表に示す通りであった。
【0024】
【表2】

【0025】実施例35〜39圧延によって作製した第3表に示す実施例35〜36の合金種のマグネシウム合金の試験片(45mm×40mm×0.5mm)及びダイカストによって作製した第3表に示す実施例37〜39の合金種のマグネシウム合金の試験片(45mm×40mm×0.8mm)を室温の2.4%希硝酸溶液(60%硝酸溶液(関東化学社製)40mLを希釈して1Lとした溶液)中に2分間浸漬し、その後室温の水道水で30秒間洗浄し、次いで室温の純水で30秒間洗浄した。
【0026】上記の様にして処理した各々の試験片を、Na2 CO3 濃度12.5g/L、K2 HPO4 濃度15g/Lの電解液中で、電解液温度90℃、初期電流密度16A/dm2 で定電流密度電解を開始し、槽電圧が110Vまで上昇した時点で(定電流密度電解を開始してから10〜20秒後に)定電位電解を実施し、合計で10分間電解した。その後室温の水道水で30秒間洗浄し、次いで室温の純水で30秒間洗浄した。最後に80℃で20分間乾燥した。
【0027】上記のように陽極酸化処理を実施し、乾燥した各々の試験片の耐食性についてJIS Z 2371に従ってそれぞれ第3表に示す時間塩水噴霧試験を実施し、レイティングナンバ法によって評価した。それらの結果は第3表に示す通りであった。また、上記のように陽極酸化処理を実施し、乾燥した各々の試験片の表面に、浸漬塗装法よりエポキシ系焼付け塗料を塗布し、15分間静置した後、150℃で20分間加熱乾燥を実施した。その後JIS K 5400の8.5.2に準拠した碁盤目テープ法(1mm間隔)によって塗膜密着試験を実施した。その結果は第3表に示す通りであった。
【0028】
【表3】

【0029】比較例1〜10圧延によって作製したMg−9.5Li−1Y合金の多数の試験片(45mm×40mm×0.5mm)を室温の2.4%希硝酸溶液(60%硝酸溶液(関東化学社製)40mLを希釈して1Lとした溶液)中に2分間浸漬し、その後室温の水道水で30秒間洗浄し、次いで室温の純水で30秒間洗浄した。
【0030】上記の様にして処理した各々の試験片を、第4表に示す炭酸塩濃度及びリン酸塩濃度の電解液中、第4表に示す電解液温度で、第4表に示す初期電流密度で定電流密度電解を開始し、槽電圧が第4表に示す電解電圧まで上昇した時点で(定電流密度電解を開始してから10〜20秒後に)定電位電解を実施し、合計で第4表に示す処理時間電解した。その後室温の水道水で30秒間洗浄し、次いで室温の純水で30秒間洗浄した。最後に80℃で20分間乾燥した。
【0031】上記のように陽極酸化処理を実施し、乾燥した各々の試験片の耐食性についてJIS Z 2371に従って24時間塩水噴霧試験を実施し、レイティングナンバ法によって評価した。それらの結果は第4表に示す通りであった。また、上記のように陽極酸化処理を実施し、乾燥した各々の試験片の表面に、浸漬塗装法よりエポキシ系焼付け塗料を塗布し、15分間静置した後、150℃で20分間加熱乾燥を実施した。その後JIS K 5400の8.5.2に準拠した碁盤目テープ法(1mm間隔)によって塗膜密着試験を実施した。その結果は第4表に示す通りであった。
【0032】
【表4】

【0033】本発明の実施例に相当する第1表〜第3表に示すレイティングナンバと、比較例である第4表に示すレイティングナンバとの比較からも明らかなように、本発明のマグネシウム合金の表面処理方法によって処理したマグネシウム合金は耐食性に優れている。
【0034】
【発明の効果】本発明のマグネシウム合金の表面処理方法によって得られる陽極酸化皮膜は耐食性及び塗膜密着性に優れている。
【出願人】 【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
【住所又は居所】東京都品川区大崎1丁目11番1号
【出願日】 平成14年5月10日(2002.5.10)
【代理人】 【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
【公開番号】 特開2003−328188(P2003−328188A)
【公開日】 平成15年11月19日(2003.11.19)
【出願番号】 特願2002−135669(P2002−135669)