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【発明の名称】 耐放電摩耗性に優れた銅材料
【発明者】 【氏名】山本 佳紀
【住所又は居所】東京都千代田区大手町一丁目6番1号 日立電線株式会社内

【氏名】佐々木 元
【住所又は居所】東京都千代田区大手町一丁目6番1号 日立電線株式会社内

【氏名】▲冬▼ 慶平
【住所又は居所】東京都千代田区大手町一丁目6番1号 日立電線株式会社内

【要約】 【課題】銅の優れた導電性・熱伝導性を維持しつつ、銅以外の金属成分を添加せずに強度・硬さを向上させることによって、スイッチの接点などの部品で問題となる耐放電摩耗性を向上させた銅材料を提供する。

【解決手段】重量にして0.3〜2.0%の酸素を含有し、残部が銅と不可避不純物からなる銅材料で、前記酸素の大部分は、粒径が0.1〜2μmの酸化第一銅(Cu2O)粒子の形で銅の母相中に分散されているものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】重量(または質量)にして0.3〜2.0%の酸素を含有し、残部が銅と不可避不純物からなることを特徴とする耐放電摩耗性に優れた銅材料。
【請求項2】前記酸素の大部分が粒径0.1〜2μmの酸化第一銅(Cu2O)粒子の形で銅の母相中に分散されていることを特徴とする請求項1に記載の銅材料。
【請求項3】素材が銅と酸化第一銅または酸化第二銅(CuO)を混合して溶解鋳造したものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の銅材料。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種スイッチの接点など放電摩耗が起こる部分に用いるのに適した銅材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】各種スイッチ類の接点のように、電気回路のON−OFFが繰り返される部分では、ON−OFFの切り換え時にアーク放電が生じると共に、接点材料の消耗が起こる。ONからOFFへの移行時には接点間の接触に伴って接点間の実接触面積が減少し、一定接触面積当たりの電流密度が上昇してジュール熱で接点材料が溶融し、接点間にブリッジを形成する。さらに、接点間が解離するとブリッジが切れ、接点材料が蒸発してイオン化し接点間を移動するアーク放電が起こり、これによって、一方の接点から他方の接点へ材料が移動し、一方の接点材料が消耗することになる。材料の消耗は接点間の安定した接触を阻害し、接点故障の原因となる。
【0003】こうした用途では、銀合金などの比較的高価な材料と共に、タフピッチ銅、無酸素銅、微量の銀を含む銅合金などが用いられている。これらの銅をベースとする材料は、良好な導電性・熱伝導性を有することを特長とするが、良好な導電性・熱伝導は、ON−OFF切り換え時に生じるジュール熱を抑える効果や、生じた熱が材料を通して放散される効果につながるため、アーク放電による材料の消耗を軽減させるための重要な特性の一つである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】スイッチ類の接点では、ON−OFF切り換え時に両接点が擦れ合いながら解離と接触を行うため、前記したアーク放電による材料の消耗とは別に、機械的な摩耗による材料の消耗が起こるが、従来使用されているタフピッチ銅、無酸素銅、微量の銀を含む銅合金では、こうした機械的な摩耗による消耗が大きいことが問題であった。
【0005】機械的な摩耗による材料の消耗を軽減するためには、材料の強度、特に硬さを高める必要があり、一般に合金元素を添加する方法が考えられる。しかし、通常の合金化では銅の持つ導電性・熱伝導性が低下し、アーク放電による材料の消耗が増加する問題を伴うため、適切な方法とはいえない。
【0006】また、時効析出が期待できる合金元素を添加し、合金元素を析出させることで導電性・熱伝導性の低下を抑えながら強度の改善を図る方法も提案されている(例として、特開2000−63968号公報、同2001−64740号公報)。しかし、材料のリサイクル性を考慮した場合、なるべく銅以外の金属成分を含まない材料で対応することが望ましい。
【0007】したがって、本発明の目的は、銅の優れた導電性・熱伝導性を維持しつつ、銅以外の金属成分を添加せずに強度・硬さを向上させることによって、スイッチの接点などの部品で問題となる耐放電摩耗性を向上させた銅材料を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明では、前記の課題を解決するために、重量(または質量。以下同じ。)にして0.3〜2.0%の酸素を含有した銅材料を用いる方法を採用する。
【0009】この場合、銅中に固溶できる酸素量は僅かであり、大部分の酸素は銅と化合物を形成して酸化第一銅(Cu2O)となるため、銅の母相中に酸化第一銅の粒子が分散した構造になる。アーク放電による材料の消耗を少なくするためには、前述したように良好な導電性・熱伝導性を維持しつつ放電時の材料の溶融を少なくすると共に、機械的な耐摩耗性を改善することが必要である。本発明の材料は、銅の母相によって良好な導電性・熱伝導性が維持されると共に、分散した酸化第一銅によって機械的な耐摩耗性が改善されことでアーク放電による材料の消耗を少なくすることができる。また、本発明の材料は銅と酸化第一銅から構成されるため、銅以外の金属元素を含んだ銅合金に比べてリサイクル性に優れているといえる。
【0010】本発明では、通常の銅材に含まれる酸素量に比べて遥かに高い値である0.3〜2.0%の酸素を銅中に含有させることにより、銅の母相中に酸化第一銅の粒子が分散した構造を持つ材料を得ている。ここで酸素の含有量の下限を重量にして0.3%に制限した理由は、これより少ない量では分散する酸化第一銅粒子の密度や大きさが不十分であり、十分な耐摩耗性の改善効果が期待できないためである。耐摩耗性の改善効果を期待するためには、粒径が0.1〜2μmの酸化第一銅粒子を分散して存在させることである。そのためには、0.3%以上の酸素含有量が必要である。また、上限を2.0%に制限した理由は、多くの酸化第一銅粒子が分散した構造で得られる効果よりも、材料の加工性が悪化すことや、材料全体の導電性・熱伝導性が低下すことによる悪影響がより強く現われ、好ましくないためである。
【0011】本発明の高い酸素含有量を持った銅材料を製造する方法としては、電気銅などの一般的な銅材料と酸化第一銅または酸化第二銅(CuO)を混合して溶解鋳造する方法が容易であり有効な方法といえるが、これ以外の方法、例えば銅の溶湯中に酸素ガスまたは空気を吹き込んで溶湯を酸化させて鋳造する方法を用いても差し支えない。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明について実施例をあげて説明する。
[実施例1]酸素含有量が重量にして0.03%のタフピッチ銅と酸化第二銅(CuO)とを重量比9:1の割合で配合し、大気雰囲気下で高周波溶解炉を用いて溶解した後、直径30mm、長さ250mmのインゴットに鋳造した。これを熱間で押出加工して幅30mm、厚さ8mmの板状にした後、厚さ3.0mmまで冷間圧延した。これを600℃で焼鈍した後、厚さ1.0mmに冷間圧延して試料とした。
[実施例2及び3]タフピッチ銅と酸化第二銅の配合量を変えて実施例1と同様にして夫々試料を得た。
[比較例1]酸素含有量が重量にして0.03%のタフピッチを単独で溶解鋳造し、実施例1と同じ加工工程で試料を得た。
[比較例2]酸素含有量が重量にして0.001%以下の無酸素銅を窒素雰囲気下で溶解鋳造し,実施例1と同じ加工工程で試料を得た。
[比較例3及び4]タフピッチ銅と酸化第二銅の配合量を変えて実施例1と同様にして夫々試料を得た。
【0013】以上のようにして得られた各試料について、導電率とビッカース硬さを測定すると共に、耐放電摩耗性の評価を行ない、得られた結果を表1に示した。
【0014】耐放電摩耗性の評価は、各試料から3mm×3mmの陰極側接点材と、10mm×20mmの陽極側接点材を採取し、この両接点材間に48Vの開放電圧を加え、接触通電時に1.0Aの直流電流が流れる条件で、両接点を毎秒1サイクルの解離と接触を10万サイクル繰り返した後、放電摩耗によって陽極側接点の表面に生じた凹みの深さを測定して摩耗深さとした。
【0015】
【表1】

【0016】表1の結果から、本発明である実施例1〜3の材料は、何れも80%IACSを超える導電率を維持しながら、通常のタフピッチ銅(比較例1)や無酸素銅(比較例2)に比べ、硬さが20ポイント程度向上した特性を持つことがわかる。また、耐放電摩耗性においても通常のタフピッチ銅や無酸素銅に比べて消耗深さが小さく、明らかな改善が見られる。
【0017】一方、酸素含有量が本発明の範囲より低い比較例3の場合、硬さに十分な改善が見られず、耐放電摩耗性も比較例1、2と同等のレベルである。また、酸素含有量の多い比較例4の場合、硬さは高いものの、導電率が70%IACS程度まで低下しており、耐放電摩耗性にも改善が見られないことがわかる。
【0018】
【発明の効果】以上から明らかなように、本発明の銅材料は、従来のスイッチ接点材よりも優れた耐放電摩耗性を有し、且つ従来の材料と同等の優れたリサイクル性を維持することが可能である。すなわち、銅以外の金属成分を含まないため、再溶解してリサイクルする際に不要な金属成分を除去する処理が不要である。
【0019】したがって、本発明によれば、銅材料が使用されている家庭向けや自動車向けの電気スイッチについて、低コストで信頼性の向上を実現できる効果がある。
【出願人】 【識別番号】000005120
【氏名又は名称】日立電線株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区大手町一丁目6番1号
【出願日】 平成14年4月10日(2002.4.10)
【代理人】 【識別番号】100116171
【弁理士】
【氏名又は名称】川澄 茂
【公開番号】 特開2003−301228(P2003−301228A)
【公開日】 平成15年10月24日(2003.10.24)
【出願番号】 特願2002−107999(P2002−107999)