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【発明の名称】 |
機械構造用鋼 |
| 【発明者】 |
【氏名】松井 直樹 【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内 【氏名】渡里 宏二 【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内 【氏名】西 隆之 【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内 【氏名】加藤 徹 【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内 【氏名】松本 斉 【住所又は居所】福岡県北九州市小倉北区許斐町1番地 株式会社住友金属小倉内 【氏名】多比良 裕章 【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内 |
【課題】被削性に優れた機械構造用鋼の提供。
【解決手段】質量%で、C:0.1〜0.6%、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.2〜2.0%、S:0.005〜0.2%、Al:0.009%以下、Ti:0.001%以上で0.04%未満,Ca:0.0001〜0.01%、およびO(酸素):0.001〜0.01%、N:0.02%以下を含み下記の■〜■式を満たす被削性にすぐれた機械構造用鋼。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】質量%にて、C:0.1〜0.6%、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.2〜2.0%、P:0.1%以下、S:0.005〜0.2%、Al:0.009%以下、Ti:0.001%以上で0.04%未満、Ca:0.0001〜0.01%、O(酸素):0.001〜0.01%、N:0.02%以下で、残部はFeおよび不純物からなり、かつ鋼中に存在する介在物が下記の■〜■式を満足することを特徴とする機械構造用鋼。 n0/S(%)≧ 2500 ・・・・■n1/n0 ≦ 0.1 ・・・・・・・■n2 ≧ 10 ・・・・・・・・■ここで、n0、n1、n2は下記のとおりである。n0:圧延方向に平行な断面の1mm2中における円相当直径1μm以上の硫化物の全個数(個/mm2)、n1:圧延方向に平行な断面の1mm2中における円相当直径1μm以上でCaを1.0%以上含有するMnSの個数(個/mm2)、n2:酸化物系介在物のうち、組成がCaO、Al2O3、SiO2およびTiO2の合計を100質量%としたときの換算で、CaO:5〜60%、Al2O3:5〜60%、SiO2:10〜80%、TiO2:0.1〜40%のCaO−Al2O3−SiO2−TiO2および不純物からなる円相当直径1μm以上であるものの圧延方向に平行な断面の1mm2中における個数(個/mm2)。 【請求項2】質量%にて、C:0.1〜0.6%、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.2〜2.0%、P:0.1%以下、S:0.005〜0.2%、Al:0.009%以下、Ti:0.001%以上で0.04%未満、Ca:0.0001〜0.01%、O(酸素):0.001〜0.01%、N:0.02%以下で、下記の第1群から選んだ1種以上の元素を含み、残部はFeおよび不純物からなり、かつ鋼中に存在する介在物が下記の■〜■式を満足することを特徴とする機械構造用鋼。 第1群Cr:0.02〜2.5%、V:0.05〜0.5%、Mo:0.05〜1.0%、Nb:0.005〜0.1%、Cu:0.02〜1.0%およびNi:0.05〜2.0%n0/S(%)≧ 2500 ・・・・■n1/n0 ≦ 0.1 ・・・・・・・■n2 ≧ 10 ・・・・・・・・■ここで、n0、n1、n2は下記のとおりである。n0:圧延方向に平行な断面の1mm2中における円相当直径1μm以上の硫化物の全個数(個/mm2)、n1:圧延方向に平行な断面の1mm2中における円相当直径1μm以上でCaを1.0%以上含有するMnSの個数(個/mm2)、n2:酸化物系介在物のうち、組成がCaO、Al2O3、SiO2およびTiO2の合計を100質量%としたときの換算で、CaO:5〜60%、Al2O3:5〜60%、SiO2:10〜80%、TiO2:0.1〜40%のCaO−Al2O3−SiO2−TiO2および不純物からなる円相当直径1μm以上であるものの圧延方向に平行な断面の1mm2中における個数(個/mm2)。 【請求項3】質量%にて、C:0.1〜0.6%、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.2〜2.0%、P:0.1%以下、S:0.005〜0.2%、Al:0.009%以下、Ti:0.001%以上で0.04%未満、Ca:0.0001〜0.01%、O(酸素):0.001〜0.01%、N:0.02%以下で、下記の第2群から選んだ1種以上の元素を含み、残部はFeおよび不純物からなり、かつ鋼中に存在する介在物が下記の■〜■式を満足することを特徴とする機械構造用鋼。 第2群Se:0.0005〜0.01%、Te:0.0005〜0.01%、Bi:0.05〜0.3%、Mg:0.0001〜0.0020%および希土類元素:0.0001〜0.0020%n0/S(%)≧ 2500 ・・・・■n1/n0 ≦ 0.1 ・・・・・・・■n2 ≧ 10 ・・・・・・・・■ここで、n0、n1、n2は下記のとおりである。n0:圧延方向に平行な断面の1mm2中における円相当直径1μm以上の硫化物の全個数(個/mm2)、n1:圧延方向に平行な断面の1mm2中における円相当直径1μm以上でCaを1.0%以上含有するMnSの個数(個/mm2)、n2:酸化物系介在物のうち、組成がCaO、Al2O3、SiO2およびTiO2の合計を100質量%としたときの換算で、CaO:5〜60%、Al2O3:5〜60%、SiO2:10〜80%、TiO2:0.1〜40%のCaO−Al2O3−SiO2−TiO2および不純物からなる円相当直径1μm以上であるものの圧延方向に平行な断面の1mm2中における個数(個/mm2)。 【請求項4】質量%にて、C:0.1〜0.6%、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.2〜2.0%、P:0.1%以下、S:0.005〜0.2%、Al:0.009%以下、Ti:0.001%以上で0.04%未満、Ca:0.0001〜0.01%、O(酸素):0.001〜0.01%、N:0.02%以下で、下記の第1群および第2群のそれぞれから選んだ1種以上の元素を含み、残部はFeおよび不純物からなり、かつ鋼中に存在する介在物が下記の■〜■式を満足することを特徴とする機械構造用鋼。 第1群Cr:0.02〜2.5%、V:0.05〜0.5%、Mo:0.05〜1.0%、Nb:0.005〜0.1%、Cu:0.02〜1.0%およびNi:0.05〜2.0%第2群Se:0.0005〜0.01%、Te:0.0005〜0.01%、Bi:0.05〜0.3%、Mg:0.0001〜0.0020%および希土類元素:0.0001〜0.0020%n0/S(%)≧ 2500 ・・・・■n1/n0 ≦ 0.1 ・・・・・・・■n2 ≧ 10 ・・・・・・・・■ここで、n0、n1、n2は下記のとおりである。 n0:圧延方向に平行な断面の1mm2中における円相当直径1μm以上の硫化物の全個数(個/mm2)、n1:圧延方向に平行な断面の1mm2中における円相当直径1μm以上でCaを1.0%以上含有するMnSの個数(個/mm2)、n2:酸化物系介在物のうち、組成がCaO、Al2O3、SiO2およびTiO2の合計を100質量%としたときの換算で、CaO:5〜60%、Al2O3:5〜60%、SiO2:10〜80%、TiO2:0.1〜40%のCaO−Al2O3−SiO2−TiO2および不純物からなる円相当直径1μm以上であるものの圧延方向に平行な断面の1mm2中における個数(個/mm2)。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明が属する技術分野】この本発明は、産業機械や自動車などの部品のように、切削加工が施される機械構造用鋼材に関する。本発明は、特に優れた切屑処理性を有し、併せて切削工具の寿命を延長する効果(以下「工具寿命の改善」と記す)を有する機械構造用鋼に関する。 【0002】 【従来の技術】産業機械や自動車などの部品に用いられる機械構造用鋼には、JIS規格で規定されるJIS−G−4051の機械構造用炭素鋼、合金鋼としてのJIS−G−4102のニッケルクロム鋼、JIS−G−4103のニッケルクロムモリブデン鋼、JIS−G−4104のクロム鋼、JIS−G−4106の機械構造用マンガン鋼およびマンガンクロム鋼などがある。また、これらの鋼の規定諸成分量を多少変更したり、B(ホウ素)などをさらに添加して焼入れ性を向上させたり、Ti、Nb、Vなども添加して組織を改善した鋼も使用されている。 【0003】これらの鋼は、多くの場合、圧延加工して作られたものをそのまま、あるいはさらに鍛造加工などをおこなった後、切削して所定の形状にし、必要とされる特性に応じた熱処理を施して最終部品とする。この切削工程における生産能率向上のため、鋼材は被削性にすぐれていることが強く望まれる。被削性がすぐれているということは、切削時に使用する工具の摩耗による交換までの期間が長いこと、すなわち工具寿命が長いこと、切削時に排出される切屑が細かく分断されること,切削抵抗が低いこと、あるいは切削面や研削面の仕上がりが良好であることなどを意味する。 【0004】切削作業の無人化や自動化が進むと、工具寿命に加えて切屑が分断する性質、すなわち「切屑処理性」がきわめて重要になってくる。工具寿命は、鋼材の特性ばかりでなく、工具の性能にも影響されるので、工具の選定も重要である。これに対し、すぐれた切屑処理性というのは、切削時に発生した切屑が細かく分断されて、工具にまつわりつかないことであり、これは鋼材そのものの特性に大きく支配される。この切屑処理性を改善することは、鋼材の被削性の向上には特に重要である。 【0005】鋼材の被削性は、Pbの添加により向上させることができる。しかし、Pbの添加は、鋼材価格の上昇を伴うばかりでなく、環境汚染を招く懸念がある。そこで、Pbを添加せずに鋼の被削性を改善する技術の研究が進められてきた。その代表的なものは、MnS介在物の活用による被削性改善技術であり、その技術に関しては多くの検討がなされ、実用化もおこなわれている。 【0006】例えば、特許文献1(特公平5-15777号公報)に開示されている鋼は、Caを3〜55%含有するMn−Ca−S系介在物が鋼中に均一に分散し、この介在物の大きさは長径Lが20μm以下で短径Wとの比(L/W)が3以下の鋼である。しかし、この鋼では、個々の硫化物が粗大化し、同一S濃度では硫化物個数は減少する。そのため、切屑処理性の改善が必ずしも十分なものではない。また、Alキルド鋼を前提とするため、Ca処理しても酸化物系介在物はCaO-Al2O3系であり、工具寿命等の被削性改善効果も十分には得られない。また、高S濃度において、高濃度のCaSを含む硫化物を多数分散させようとすれば、多量のCa添加を必要とするのでコストが嵩むという難点もある。 【0007】特許文献2(特開2001−131684号公報)には、Mn硫化物系介在物中の平均酸素含有量が10%以下の機械構造用鋼が開示されている。その鋼の主要組成は、質量%で、C:0.05〜0.7%,Si:2.5%以下,Mn:0.1〜3.0%,Al:0.1%以下,S:0.003〜0.2%,N:0.002〜0.025%,O(酸素):0.003%以下、残部がFeである。これらの成分に加えて更に、希土類元素、Ca及びMgからなる群から選択される1種以上を合計で0.01%以下を含有してもよい。 【0008】しかし、上記特許文献に開示される発明の鋼は、実施例を見ると、切屑処理性の改善に有効な硫化物形態を得ることを目的として、硫化物中の平均酸素濃度を10%以下とするために、脱酸元素として用いられるAlを0.018%以上含有している。このような場合、鋼中に存在する酸化物は硬質なAl2O3系酸化物が主体のものとなり、工具寿命の改善が十分でなくなる。すなわち、上記公報の発明は、切屑処理性の改善と同時に、工具寿命を改善することを図った発明ではない。 【0009】特許文献3(特開2000−34538号公報)には、C,Si,Mn,P,S,Al,CaおよびNを所定量含有する旋削加工性に優れた機械構造用鋼が開示されている。この鋼は、次の特徴を有する。即ち、Ca含有量が40%を超える硫化物の調査視野全面積に対する面積率をA、Ca含有量が0.3〜40%の硫化物の調査視野全面積に対する面積率をB、Ca含有量が0.3%より少ない硫化物の調査視野全面積に対する面積率をCとすると、A/(A+B+C)≦0.3で、かつ、B/(A+B+C)≧0.1である。この特許文献の発明は、Caを0.3〜40%含む硫化物の存在割合を大きくすることを特徴としている。しかし、Caを多く含む硫化物の存在割合を大きくすると、個々の硫化物が粗大化し硫化物の個数が減少するため良好な切屑処理性を得ることが困難になる。 【0010】特許文献4(特開2000-282169号公報)には、C,Si,Mn,PおよびSを含有し、更にZr,Te,CaおよびMgのうちの1種または2種以上含有すると共に、Al≦0.01%,total-O≦0.2%,total-N≦0.02%とした鋼が開示されている。この鋼は、硫化物を球状化することによって鍛造加工性に優れ、かつ良好な被削性を有する鋼である。つまり、Ca添加を前提とした場合には、CaがMnSに固溶してその変形能を低下させ、球状化することをねらった鋼である。しかし、この場合、個々の硫化物は粗大化し、良好な切屑処理性を得るための硫化物形態が得られない。すなわち、切屑処理性の改善が十分ではない。 【0011】 【特許文献1】特公平5-15777号公報【特許文献2】特開2001−131684号公報【特許文献3】特開2000−34538号公報【特許文献4】特開2000-282169号公報上記の各刊行物に開示されている鋼は、いずれもCaを含み得るものであり、主として被削性を改善した鋼である。しかし、その製鋼過程におけるCaの添加量、添加タイミング、鋼中溶存酸素量について十分考慮されていなかった。そのため、必ずしも切屑処理性と工具寿命の両方を改善するものではなかった。 【0012】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、Pbを含有せずに、被削性、とくに切屑処理性が改善され、かつ工具寿命も長くすることのできる機械構造用鋼を提供することにある。 【0013】 【課題を解決するための手段】鋼の被削性に、硫化物や酸化物の介在物の状態が大きく影響することはよく知られている。本発明者らは、Pbを含まない機械構造用鋼材について、その被削性を改善するため、鋼中の介在物の形態や分布状態と被削性との関係を詳細に調査し、調査結果を検討した。なかでもCaおよびTiの作用効果に着目し、製鋼条件についても調査した。その過程で、次に述べるような興味ある事実をあきらかにすることができた。 【0014】Caは、Sと強力に結びついてMnSを主とする硫化物の形態を変えるとともに、酸素との結合力も強く安定な酸化物を形成する。 【0015】製鋼条件を考慮しないでCaを添加すると、溶鋼中で形成されるCaSやCa系酸化物がMnSの生成核となり、Caを1%以上含有する硫化物の個数が増大する。しかし、Caを添加する場合に、添加量や鋼の溶存酸素量およびCaの添加タイミング等の製鋼条件を適切に選べば、Caを含まないMnSを主体とする硫化物系介在物が多く生成することがわかった。そして、この場合に限って鋼の切屑処理性が良好になることが明らかとなった。 【0016】介在物には硫化物系のものと酸化物系のものとがあるが、析出物のような微細なものは切削性改善に効果がないので、観察面にてその占める面積を円形状に置き換えたときの直径でその大きさを評価することとし、その直径がある程度以上大きいものを対象にして調査した。 【0017】その結果、全硫化物系介在物の個数のうち、Caをほとんど含まない硫化物の個数割合が90%を超える場合、言い換えれば、Caを含むMnS系介在物の個数が10%未満の場合に、特にすぐれた切屑処理性が得られることがわかった。 【0018】鋼のS含有量が同じであれば、数少ない粗大な硫化物が存在する鋼よりも、多数の小さい硫化物が存在する鋼の方が切屑処理性に優れる。Caを固溶している硫化物を溶鋼あるいは凝固初期から多い状態にすると、それがMnSの晶出核となって粗大な硫化物となる。したがって同一S濃度では分散個数は少なくなり、微細な硫化物は生成しがたい。一方、Caを固溶している硫化物が少ない状態にすると、ほとんどの硫化物は微細な硫化物として多数生成することになる。 【0019】切削中に排出される切屑の分断は、変形を受けた切屑の鋼中介在物に応力が集中し、亀裂が発生伝搬することによって生じる。そしてCaを含まないMnS系介在物は、圧延など加工方向に変形しやすくなっており、延伸されたものが多い。大きな延伸した介在物が存在すると、鋼材の機械的性質の異方性が大きくなる上、切欠きの起点として応力集中源となり切屑処理性を向上させる介在物個数が減少するために、良好な切屑処理性は得難い。しかし、小さい介在物が数多く存在すると、切削中に変形を受ける切屑中には亀裂の発生起点が増加することになり、また、介在物に応力が集中して亀裂の伝播も助長されやすくなる。これが切屑処理性向上の原因であると推定される。 【0020】工具寿命には、鋼中に含まれる酸化物の組成が大きく影響する。Caを添加することによって酸化物を低融点酸化物にすれば、工具寿命が著しく延長される。従ってCa処理を行うことは必須であり、上記の硫化物制御と酸化物制御を両立させるために、さらにCa処理前後も含めた製鋼条件を詳細に検討した。その結果、C、Si、Mnなど、鋼中の酸素との相互作用の大きい成分の含有量を限定し、Sを特定量含有させ、Alを極力少なくした上で適切な量のTiとCaとを適切なタイミングで添加し、かつ溶存酸素量を調整することによって、同一組成範囲でありながら、工具寿命の改善に好適なCaO−Al2O3−SiO2−TiO2を主要構成物とするものに制御できることが明らかとなった。この酸化物系介在物は融点が低く軟質なものであり、これに含まれるCaおよびTiによる工具寿命向上ばかりでなく、切屑に生じる亀裂発生の起点や亀裂伝播を助ける効果もあると考えられる。 【0021】硫化物系介在物および酸化物系介在物をこのような形態にしたとき、切屑処理性や工具寿命が向上することに対し、C、Si、Mn、などの組成の他、機械構造用鋼材の強度向上、焼入れ性改善、組織改善などの目的で添加されるCr、Ni、Mo、Nb、Vその他の元素の含有による影響を調べた。その結果、これら元素は、鋼の硬さや強度、焼入れ性などの機械的特性を向上させることはあっても、同じ組成で被削性を向上させるという本発明の効果は同様に得られることが確認できた。 【0022】そこで、さらに化学組成や介在物の状態の限界を確認し、本発明を完成させた。本発明の要旨は次のとおりである。 【0023】(1)質量%にて、C:0.1〜0.6%、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.2〜2.0%、P:0.1%以下、S:0.005〜0.2%、Al:0.009%以下、Ti:0.001%以上で0.04%未満、Ca:0.0001〜0.01%、O(酸素):0.001〜0.01%、N:0.02%以下で、残部はFeおよび不純物からなり、かつ鋼中に存在する介在物が下記の■〜■式を満足することを特徴とする機械構造用鋼。 【0024】n0/S(%)≧ 2500 ・・・・■n1/n0 ≦ 0.1 ・・・・・・・■n2 ≧ 10 ・・・・・・・・■ここで、n0、n1、n2は下記のとおりである。 【0025】n0:圧延方向に平行な断面の1mm2中における円相当直径1μm以上の硫化物の全個数(個/mm2)、n1:圧延方向に平行な断面の1mm2中における円相当直径1μm以上でCaを1.0%以上含有するMnSの個数(個/mm2)、n2:酸化物系介在物のうち、組成がCaO、Al2O3、SiO2およびTiO2の合計を100質量%としたときの換算で、CaO:5〜60%、Al2O3:5〜60%、SiO2:10〜80%、TiO2:0.1〜40%のCaO−Al2O3−SiO2−TiO2および不純物からなる円相当直径1μm以上であるものの圧延方向に平行な断面の1mm2中における個数(個/mm2)。 【0026】(2)上記(1)に記載の成分に加えて下記の第1群または/および第2群から選んだ1種以上の成分を含み、上記の■式、■式および■式を満たす機械構造用鋼。 【0027】第1群Cr:0.02〜2.5%、V:0.05〜0.5%、Mo:0.05〜1.0%、Nb:0.005〜0.1%、Cu:0.02〜1.0%およびNi:0.05〜2.0%第2群Se:0.0005〜0.01%、Te:0.0005〜0.01%、Bi:0.05〜0.3%、Mg:0.0001〜0.0020%および希土類元素:0.0001〜0.0020%【0028】 【発明の実施の形態】本発明の鋼材において、介在物の分布や組成など、その形態を限定した理由について以下に説明する。なお、以下の説明において、鋼の成分に関する%は「質量%」を意味する。 【0029】対象とする介在物の大きさを、圧延方向に平行な断面で観察される形状を円形状に置き換えたとき、その直径が1μm以上のものに限定するのは、この大きさ未満の介在物は、工具寿命や切屑処理性に及ぼす効果がほとんどないからである。なお、この円形状に置き換えたときの直径で10μmを超える介在物は、鋼の強度などの特性を損ない、介在物の均一分散を妨げて被削性、特に切屑処理性の改善には効果がないので好ましくない。 【0030】加工方向に平行な断面で観察される介在物は、加工方向に伸ばされたものや不特定形状のものが多い。形状調査に際しては、鋼試料の断面を鏡面研磨して400倍程度の光学顕微鏡観察にて写真撮影をおこない、画像解析の手法でその面積を求め、その面積を円に換算したときの直径1μm以上の介在物を対象にする。このとき、同じ組成の介在物で、あきらかに圧延によって分断されたと判断できるものは、1個の介在物として処理するとよい。介在物の組成は、例えば、EPMAまたはこれと同等の微小部分の分析が可能な装置にて分析する。 【0031】これらの介在物のうち、MnSを含む硫化物系の介在物の1mm2当たりの総数をn0個、Sの分析値をS(%)とするとき、n0/S(%)≧ 2500 ・・・■であることとする。n0/S(%)が2500を下回ると、S含有量が同一である鋼で比較した場合、介在物の個数が少なく、鋼材としての特性が劣るだけでなく、切屑処理性の劣ったものとなる。同一S含有量で介在物の個数が少なくなるのは、個々の硫化物が粗大化しているからである。■式を満たす範囲であれば良好な切屑処理性が得られるが、さらに安定して良好な切屑処理性を得るためには、n0/S(%)が3500以上であることが望ましい。n0は■式を満足していれば大きくてもかまわないが、大きくなりすぎると機械構造用鋼としての引張強度や疲労強度などの機械的性質が得難くなるので、2000以下であることが好ましく、1000以下であることがさらに好ましい。 【0032】硫化物系の介在物のうち、その介在物がCaを1.0質量%以上含んでいるものの1mm2当たりの個数をn1とするとき、n1/n0 ≦ 0.1 ・・・・■であることとする。これはCaを1.0質量%以上含む硫化物の全硫化物個数に対する割合が0.1を超える場合には、個々の介在物は粗大化する傾向にあり、切屑処理性が低下するからである。上式の範囲内であれば、鋼中介在物を小さくすることが可能となる。これは、Caを1.0質量%以上含まない硫化物系介在物の個数を増加させることにつながり、良好な切屑処理性が得られる。なお、さらに安定して良好な切屑処理性を得るためには、n1/n0が0.08以下であることが望ましい。n1は少ない程良く、0であってもよい。 【0033】酸化物系介在物のうち、その介在物中に含まれるCaO、Al2O3、SiO2およびTiO2の合計が80質量%以上を占める酸化物系介在物であって、これら4種の酸化物量の合計を100質量%とするとき、それぞれの含有範囲がCaO:5〜60%、Al2O3:5〜60%、SiO2:10〜80%、TiO2:0.1〜40%であるものの1mm2当たりの個数n2は、n2≧10 ・・・・■であることとする。 【0034】上記の酸化物系介在物が10個以上であることとするのは、10個未満の場合にはCaおよびTiの添加によって生成する低融点組成の酸化物以外に、Al2O3等の高融点組成で硬質な酸化物が生成しており、工具寿命延長の効果が得られないからである。 【0035】介在物中の酸化物それぞれにおける含有量の範囲を限定するのは、この組成範囲の酸化物は低融点だからである。この組成範囲内に限定する限り、この酸化物は切削温度の上昇に伴って、軟質化し、そのために酸化物自身が工具の摩耗を促進することがなく、工具寿命の延長に寄与する。この組成範囲から外れた場合には、酸化物の融点の上昇と硬さの増大をきたし、酸化物自体が工具の摩耗を促進するために工具寿命を短くする。 【0036】鋼中の介在物の形態を上記のようにするとともに、機械構造用鋼として必要な機械的特性と被削性を得るためには、鋼に含有される成分を以下のように限定しなければならない。 【0037】Cの含有量は0.1〜0.6%とする。Cは鋼の強度にかかわる性質を支配する重要な元素であり、その含有量は、通常、機械的性質を考慮して決定される。Cが0.1%を下回るとクランクシャフトやその他の自動車用機械部品としての機械的性質が得られない。一方、0.6%を超えると工具寿命の低下が著しくなり、また、所望の被削性が得られない。クランクシャフトやその他の自動車用機械部品としての機械的性質、硬さや靭性、疲労強度および被削性を安定して得るためには、Cの含有量は0.30〜0.55%であることが望ましい。 【0038】Siの含有量は0.01〜2.0%とする。Siは本発明の酸化物組成を得るために必須の元素であり、溶鋼の脱酸の目的でも含有させる。含有量が0.01%未満では目的とする酸化物組成が得られず、2.0%を超えるとその効果が飽和するばかりか鋼の靭性の低下をきたす。したがってSiの含有量を0.01〜2.0%とする。なお、安定して所望の酸化物組成を得、且つ機械的特性を劣化させない範囲として、Siのより好ましい含有範囲は0.15〜1.0%である。 【0039】Mnの含有量は0.2〜2.0%とする。Mnは被削性向上に大きな効果をもたらす硫化物系介在物を形成させるために重要な元素であり、溶鋼の脱酸効果もある。その上、被削性の向上を目的としてSを含有させる際に、鋼材の熱間加工性劣化を抑止する作用があるが、そのためには0.2%以上の含有は必須である。しかし、2.0%を超えると切削抵抗が増すので0.2〜2.0%とする。なお熱処理して用いる鋼材の場合、Mnは焼入れ性に大きく寄与する元素であり、この目的のための含有量は上記範囲内で適宜選定する。その際、Mnの含有量としてより好ましい範囲は0.4〜1.70%である。 【0040】Sの含有量は0.005〜0.2%とする。Sは被削性を向上させるために必要で、Mnなどと結合させ、硫化物系介在物の形で存在させる。硫化物系介在物であるMnSは、鋼の凝固過程においてCaやTiの添加によってその形態が変化しやすいので、本発明ではこのMnS系硫化物の形態を同時に規定する。含有量が0.005%未満では被削性向上の効果は得られず、含有量が多すぎると、熱間加工性の悪化や鋼の靭性の劣化をきたすので、0.005%〜0.2%の範囲とする。被削性と機械構造用鋼材としての機械的性質を両立させるために好ましい範囲は、0.01〜0.18%である。この範囲であれば良好な被削性と機械的性質が得られるが、熱処理などを施し、さらに機械構造用鋼材として適切な機械的特性と被削性を両立させるためには、Sは0.03〜0.12%であることが望ましい。 【0041】Al(sol.Al、即ち、酸可溶Al)の含有量は0.009%以下とする。Alは溶鋼の脱酸効果が大きく、脱酸調整のために添加する。ただし脱酸の結果として生じるAl2O3は硬く、工具寿命を低下させるので、これが多くならないように、Alの上限は0.009%までとする。 【0042】なお、この範囲内であれば単独のAl2O3およびAl2O3が主体の酸化物が生成する頻度を小さくすることができる。製鋼の初期段階で速やかな酸素低減のために用いられる少量の脱酸剤のAl分、あるいは合金鉄等から不可避的に入るAl分のほとんどは、CaO-Al2O3-SiO2-TiO2酸化物の形成に用いられるので問題にならない。したがって、Al含有量は0.009%以下とし、下限値は特に設定しない。さらに上記酸化物をより安定して形成するために望ましいAl含有量は、0.005%以下である。 【0043】Tiの含有量は0.001%以上、0.04%未満とする。TiにはCaO―Al2O3―SiO2―TiO2からなる酸化物を安定して生成させる効果があるとともに微細化させる効果があるので本発明鋼では必須の元素である。Tiを含有しないCaO―Al2O3―SiO2系においても、被削性に好ましい低融点酸化物を形成させることは可能であるが、TiO2を複合含有させればその効果はより一層高くなる。Tiの含有量は0.001%未満ではその効果は現れず、0.04%以上含有させるとその効果は飽和するばかりでなく、硬質のTiNの析出が多くなり、工具寿命を低下させる。被削性に好適な酸化物を安定的に生成させるのにより好ましいTi含有量は、0.005〜0.025%である。 【0044】Caの含有量は0.0001%〜0.01%とする。Caには工具寿命を向上させる効果があり、被削性向上に有効なCaO―Al2O3―SiO2―TiO2からなる酸化物の形成のため必要である。0.0001%未満ではこのような効果は十分でない。一方、0.01%を超えると上記の酸化物が形成できなくなるばかりではなく、Caの添加歩留りが低いために製造コストが嵩む。また、Caを固溶するMnSが増加し、MnSが粗大化する。つまり、MnSの個数が減少し、所望の切屑処理性向上等の効果が得られない。より安定して本発明で規定する介在物形態を得るためのより好ましいCaの含有量は、0.0005〜0.005%である。なお、本発明において規定される被削性向上に好適な介在物形態とするためには、Ca添加前後における製鋼条件を考慮する必要がある。 【0045】O(酸素)の含有量は0.001%〜0.01%とする。酸素は被削性向上に好ましいCaO―Al2O3―SiO2―TiO2酸化物の生成、および硫化物系介在物を被削性向上に好ましい形態および個数を得るのに重要な元素である。0.001%未満の含有ではこのような効果は十分ではないだけでなく、被削性向上に好ましい酸化物系介在物の形態が得難くなる。一方、0.01%を超える含有量ではMnSなどを含む硫化系介在物が粗大化し、その上酸化物系介在物の量が増加して被削性を低下させるばかりでなく靭性低下などの鋼材の特性が低下してくる。本発明で規定する介在物の形態や組成をより確実に安定して得るためには、酸素の含有量は0.005%以下であることが望ましい。 【0046】切屑処理性を改善し、工具寿命を延長する硫化物系介在物の形態や酸化物系介在物の組成は製鋼過程において制御されるので製鋼工程の制御は重要である。 【0047】本発明において規定する介在物の形態や組成を得るための溶製手順を例示して説明する。なお、本発明鋼の製造方法は以下の手順による製造方法に限定されるものではない。 【0048】まず、炭素を少量含んだ溶鋼をAl含有量の少ない状態で真空処理すること等により、過剰な酸素の調整を行う。その後、主要のC、Si、Mn、Sおよびその他の元素を目標含有量となるように調整し、次いで溶存酸素量を予備調整する。このとき、必要に応じて溶存酸素量を調整するためにAlを添加してもよい。但し、このとき含まれるAl含有量は、前記のように0.009%以下、好ましくは0.005%以下とする。その後、Tiを添加し、最後にCaで処理して、鋳塊または鋳片に鋳造する。 【0049】上記の手順の製造方法が望ましい理由は、下記のとおりである。 【0050】少量の炭素を含む状態で溶鋼の過剰な酸素を取り除くことにより、主要成分を調整する際に添加するMnとSiによる脱酸によって生じる酸化物は、Alを添加する場合に生じるAl2O3が過剰な組成の酸化物ではなくなる。成分を調整する際にはC、MnおよびSiによって生じる脱酸反応によって、溶存酸素量が低くなりすぎないように調整する必要がある。溶存酸素量の調整は、鋳造前に添加するCaを酸化物として生成させ、Caを固溶するMnSが生成する要因となるCa系硫化物を形成させないことを目的としている。次いで溶存酸素量の調整のために、必要に応じてAlの添加を行う場合があるが、酸素濃度及び酸化物系介在物の組成が既に調整された後の必要最小限の添加であるので、過剰なAl2O3系酸化物は生成しない。なお、それでもAl2O3の存在は工具寿命を低下させるので、この段階で含有されるAlは0.009%以下であることが必要であり、0.005%以下であることが一層望ましい。 【0051】次いでTiを添加することにより脱酸はさらに進むが、そのときにできたTi酸化物はすでにある酸化物と複合して熱力学的により安定な形となり、大型介在物の形成を抑止して、1〜10μm程度の介在物を均一に分散させる作用がある。その後のCaの処理は、カルシウムシリコンなどの合金または合金鉄の形で添加されるが、Caは溶鋼にほとんど溶解せず、溶鋼中の酸素及び分散している酸化物と反応して、CaO―Al2O3―SiO2―TiO2酸化物が形成される。 【0052】本発明の機械構造用鋼の一つは上記の成分の外、残部はFeと不純物からなる。不純物のうち、PとNの含有量はそれぞれ下記の上限値以下とする。 【0053】P:0.1%以下Pは、鋼中に不純物として混入する元素である。固溶強化効果があり、焼入れ性を向上させる効果もあるが、鋼の靭性を劣化させるので、悪影響が顕著でない範囲として0.1%以下とする。望ましいのは0.05%以下であり、少なければ少ないほどよい。 【0054】N:0.02%以下Nは、Alと共存して微細な窒化物を形成し、鋼の結晶粒を微細化する効果がある。しかしながら 本発明では鋼のAl含有量を低く限定しているのでこのような効果は期待できず、それよりも前述のTiと結合してTiNを形成し、工具寿命を劣化させるおそれがある。したがって、その含有量は少なければ少ないほどよい。0.02%以下であれば悪影響は大きくないので許容上限を0.02%とする。より好ましいのは0.015%以下である。 【0055】本発明の機械構造用鋼の他の一つは、上記の成分に加えてさらに下記の第1群または/および第2群の成分から選んだ1種以上の成分を含む鋼である。 【0056】第1群Cr:0.02〜2.5%、V:0.05〜0.5%、Mo:0.05〜1.0%、Nb:0.005〜0.1%、Cu:0.02〜1.0%およびNi:0.05〜2.0%。 【0057】第2群Se:0.0005〜0.01%、Te:0.0005〜0.01%、Bi:0.05〜0.3%、Mg:0.0001〜0.0020%および希土類元素:0.0001〜0.0020%。 【0058】上記の第1群に属する成分は、いずれも鋼の強度向上に寄与する。また、第2群に属する成分は鋼の被削性の改善に寄与する。これらの元素の含有量を規制する理由は次のとおりである。 【0059】Cr:0.02〜2.5%以下Crには鋼の焼入れ性を改善する効果があり、機械構造用の合金鋼には好んで添加される。焼入れ性向上の目的には 0.02%以上の含有が好ましいが、2.5%を超えると焼入れ性が高くなりすぎて耐久比や降状比を低下させるだけでなく、被削性を劣化させる。したがってCrの含有量は0.02〜2.5%とする。 【0060】Mo:0.05〜1.0%Moにはフェライト・パーライト組織を微細化する効果があり、調質をおこなう場合には焼入れ性を向上させ、靭性を向上させる効果がある。その効果を確実に得るためには含有量を0.05%以上とすることが望ましい。ただし 1.0%を超えると効果が飽和し、かえって疲労強度を低下させることもあり、コストも上昇する。したがってMoの含有量は、0.05〜1.0%とする。 【0061】Ni:0.05〜2.0%Niには固溶強化によって鋼の強度を向上させる効果があり、焼入れ性の向上や靭性向上の効果もある。この効果を確実に得るためにはその含有量が0.05%以上であることが望ましい。ただし、2.0%を超えると上記の効果が飽和するばかりでなく、熱間加工性が劣化する。したがってNiの適正な含有量は0.05〜2.0%である。 【0062】Cu:0.02〜1.0%Cuには鋼の焼入れ性を向上させる効果があり、その効果を得たいときは0.02%以上含有させるとよい。さらに析出強化によって鋼の強度を向上させる効果があるので、この効果を得るためにはその含有量を0.1%以上とすることが望ましい。しかし、含有量が1.0%を超えると熱間加工性の劣化を招いたり、Cuの析出物の粗大化によって前記の効果が失われる。したがってCuの含有量は0.02〜1.0%とする。 【0063】V:0.05〜0.5%Nb:0.005〜0.1%VおよびNbは、微細な窒化物や炭窒化物として析出し、鋼の強度を向上させる。その効果を確実に得るためにはVは0.05%以上、Nbは0.005%以上の含有量とすることが望ましい。しかし、Vは0.5%、Nbは0.1%をそれぞれ超えると、上記の効果が飽和するばかりでなく、窒化物や炭化物が多く生成しすぎて鋼の被削性の劣化をきたし、靭性も低下する。したがってVの含有量は0.05〜0.5%、Nbの含有量は0.005〜0.1%とする。 【0064】Se:0.0005〜0.01%、Te:0.0005〜0.01%SeおよびTeは、Mnと共にMnSeまたはMnTeを生成して鋼の被削性を改善する。この効果を得るためにはSeおよびTeの含有量をそれぞれ0.0005%以上とすることが望ましい。ただし、Se、Teのいずれも含有量が0.01%を超えると、その効果が飽和するばかりでなく熱間加工性を劣化させる。したがってSeおよびTeの適正含有量は、それぞれ0.0005〜0.01%である。 【0065】Bi:0.05〜0.3%Biは鋼の被削性を改善する。これは、Pbと同じく低融点介在物として切削時に潤滑効果を発揮するためと考えられる。その効果を確実に得るためには、含有量を0.05%以上とするのがよい。ただし、含有量が0.3%を超えると、その効果が飽和するばかりでなく、鋼の熱間加工性を劣化させる。したがってBiの適正な含有量は0.05〜0.3%である。 【0066】Mg:0.0001〜0.0020%Mgは、SおよびO(酸素)との親和力が強く、硫化物や酸化物を形成する。含有量が0.0020%以下であれば有害な酸化物は形成されず、主に硫化物を形成して鋼の被削性を改善する。この効果を得るには0.0001%以上の含有量が必要である。0.0005%以上が一層望ましい。但し、0.0020%を超えると酸化物が硬質化かつ高融点化し、被削性を劣化させる。従って、Mgを添加する場合の適正含有量は0.0001〜0.0020%、更に望ましいのは0.0005〜0.0020%である。 【0067】希土類元素:0.0001〜0.0020%希土類元素を含有させると、硫化物を含む介在物を形成し、硫化物個数を増大させるので被削性の改善効果が得られる。希土類元素にはLa、Ce、Nd等があり、REMと略記される。希土類元素の添加にはミッシュメタルを用いてもよい。希土類元素の1種または2種以上の合計で0.0001%以上あればその効果が現れる。より確実に効果を得たい場合には 0.0005%以上含有させることが望ましい。ただし、0.0020%を超えると、希土類元素を含有する酸化物や硫化物の割合が増加し、所望の介在物形態が得られないために被削性の改善が得られない。したがって希土類元素の適正な含有量は 0.0001〜0.0020%である。 【0068】 【実施例】表1および表2に示す化学組成の鋼を下記の手順で溶製して150Kgの鋼塊とした。ただし、表2の鋼の一部は、後述の手順で溶製した。なお、表2のNo74および75の鋼はPbを含有させた鋼である。 【0069】■ 炭素を少量含む状態で溶鋼を真空処理することにより、Al含有量の少ない状態で過剰な酸素の調整を行った。 【0070】■ その後、炉内をアルゴン雰囲気として調整した後、まず主要成分のC、Si、Mn、Sおよびその他の元素を所定量に調整するとともに、必要に応じて溶存酸素量を調整するために酸化鉄を添加した。次いで溶存酸素量を更に調整する必要があれば、Alの添加を行った。 【0071】■ その後、Tiを添加し、最後にCaで処理した後に鋳造して鋳塊または鋳片とした。 【0072】表1の鋼は、いずれも本発明で規定する組成範囲の鋼である。表2の鋼は、本発明で定める組成範囲を外れるものである。 【0073】表2に示した鋼の中で、同一成分範囲内であっても介在物形態が本発明で規定するものと異なる鋼は、以下の方法によって溶製した。すなわち、酸素濃度が高いものの溶製では、少量のCを含む状態での真空処理を実施しないか、または途中段階での溶存酸素濃度調整のための酸化鉄添加を過剰に行った。Al濃度が高いものの溶製では、主要成分調整の段階でAlを添加し、さらに十分に脱酸する場合には分析結果等をみて、通常おこなわれるCaを添加する直前にAlを添加し脱酸する方法とした。Alにて更なる脱酸を行わなかった鋼については、C、SiおよびMnによる脱酸後、酸化鉄等の添加による溶存酸素量の調整を行うことなく、鋳造する直前にTiおよびCaを添加した。この溶製方法では脱酸反応に寄与しない過剰なCaは、Sとの親和力が強いために溶鋼段階でCaSを生成し、後に晶出するMnSの生成核となる。その結果、脱酸が十分に行われた状態で、脱酸反応に寄与しない過剰なCaが含まれる場合、溶鋼段階でCaSを生成し、それを生成核としてMnSが晶出するため、Caを1%以上固溶するMnSの個数(n1)が増加するので■式の左辺「n1/n0」が 0.1を超える。その結果、硫化物の粗大化を招き、介在物の全個数(n0)が低減するので、■式、即ち、「n0/S(%)≧2500」を満たさなくなって所望の切屑処理性が得られなくなる。 【0074】各鋼塊は、1250℃に加熱後、1000℃までの温度で熱間鍛造をおこなって直径70mmの丸棒に仕上げ、鍛造の後、室温まで空冷した。得られた丸棒の表面から17.5mmの深さの位置、即ち、丸棒の半径の1/2の位置、にて採取した試験片により、延伸方向に平行な断面を鏡面研磨し、EPMAを用い400倍の倍率で一試料20視野以上の観察をおこなって、円に換算した直径(円相当直径)1μm以上の大きさを有する硫化物および酸化物の数を計数した。次いで各視野において、任意に選び出した10個以上の上記硫化物および酸化物を定量分析してその組成を求めた。 【0075】 【表1】
【0076】 【表2】
【0077】このようにして観察した介在物の試料単位面積1mm2当たりの全硫化物個数(n0)と鋼のSの分析結果とから「n0/S(%)」を求めた。次に硫化物系介在物のうちCaを1.0質量%以上含有するものの個数を求めて「n1/n0」を計算した。 【0078】上記の分析をおこなった酸化物について、その組成のCaO、Al2O3、SiO2およびTiO2の合計が80質量%以上を占め、かつこの4成分の合計量を100質量%とするとき、CaOが5〜60%、Al2O3が5〜60%、SiO2が10〜80%、TiO2が0.1〜40%である酸化物系介在物の個数(n2)を求めた。これらの介在物の調査結果を表3および表4に示す。なお、表4の*を付した値は、本発明で定める条件を満たしていない値、または目標性能に達していない値を示す。 【0079】 【表3】
【0080】 【表4】
【0081】被削性は、上述のようにして作製した直径70mmの丸棒から、60mmの長さに輪切りにした円柱状試片を用い、その断面に対して垂直方向にドリル穿孔試験をおこなって評価した。穿孔条件は、高速度鋼製の直径6mmのストレートシャンクドリルを使用し、水溶性切削油剤(エマルジョン型)を用いて送りを0.15mm/rev、回転数980rpm、穴深さ50mmとした。 【0082】この試験において、刃先摩損により穿孔不能となったときの穿孔数で工具寿命を判定した。また、切屑処理性の評価は、そのとき排出された切屑の単位質量当たりの個数を計測し、切屑個数をその鋼のS含有量(質量%)で除した値を切屑処理指数(f)とした。単位質量当たりの切屑個数は、鋼に含有されるS量が高いほど多くなることが知られており、同じS含有量に対し、単位質量当たりの切屑個数が大きいほど切屑処理性がすぐれている。これらの被削性評価の結果も合せて表3および表4に示す。 【0083】表3および表4に示す介在物数および被削性の測定結果からわかるように、本発明で規定する化学組成を有し、かつ硫化物系および酸化物系の介在物の形態が本発明で定める条件を満たす鋼、即ち、表1に示した鋼は、No.78および79の鋼を除く表2のいずれの鋼に比較しても、切屑処理性および工具寿命ともにすぐれた結果を示している。表1の鋼は、参考例として示したNo.78および79のPb添加した鋼と同等またはそれ以上の被削性を示すことがあきらかである。 【0084】図1は、表3および表4に示した切屑処理指数とS含有量との関係を図示したものである。なお、とくに工具寿命の劣るNo.66からNo.77までの鋼のデータは除いてある。この図からも同じS含有量のレベルである限り、本発明鋼の切屑処理性がすぐれていることがわかる。 【0085】図2は、表3および表4に示した切屑処理指数と「n1/n0」の関係を図にしたものである。但し、とくに工具寿命の劣るNo.66からNo.77までの鋼のデータを除いてある。この図から「n1/n0≦0.1」を満たす本発明鋼の切屑処理性が優れていることがわかる。 【0086】図3は、表3および表4に示した切屑処理指数と「n0/S(%)」との関係を図示したものである。なお、とくに工具寿命の劣るNo.66からNo.77までの鋼のデーターは除いた。図3から「n0/S(%)≧2500」を満たす本発明鋼の切屑処理性が優れていることがわかる。 【0087】図4は、表3および表4に示した工具寿命とS含有量との関係を示す図である。なお、とくに切屑処理性の劣るNo.43からNo.65までの鋼のデータは除いた。この図からも同じS含有量のレベルである限り、本発明鋼の工具寿命が優れていることがわかる。 【0088】図5は、表3および表4に示した工具寿命とn2との関係を図示したものである。この図では、とくに切屑処理性の劣るNo.43からNo.65までの鋼のデータを除き、さらに同一S含有量レベルで比較するために、0.074〜0.119%の範囲でSを含有する本発明鋼(No.8〜11,17〜18,21,23,27〜28,31〜32,34,40の鋼)と、比較例であるNo.70,72〜76の鋼のデータを示した。図5から、同じS含有量のレベルで比較した場合に「n2≧10」を満たす本発明鋼の工具寿命が優れていることが明らかである。 【0089】 【発明の効果】本発明の機械構造用鋼材は、Pbを含まないにもかかわらず、被削性、とくに切屑処理性に優れ、工具寿命を延長する効果にも優れている。切削加工を必要とする部品の材料としてこの鋼を使用することにより、その部品の製造コストを大幅に低下させることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000002118 【氏名又は名称】住友金属工業株式会社 【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号
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| 【出願日】 |
平成14年11月13日(2002.11.13) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100083585 【弁理士】 【氏名又は名称】穂上 照忠 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−213368(P2003−213368A) |
| 【公開日】 |
平成15年7月30日(2003.7.30) |
| 【出願番号】 |
特願2002−329960(P2002−329960) |
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