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【発明の名称】 貴金属の回収方法
【発明者】 【氏名】田中 栄治
【住所又は居所】兵庫県神戸市西区室谷1−6−3 アサヒプリテック株式会社テクノセンター内

【氏名】磯本 博
【住所又は居所】兵庫県神戸市西区室谷1−6−3 アサヒプリテック株式会社テクノセンター内

【氏名】緒方 博憲
【住所又は居所】兵庫県神戸市西区室谷1−6−3 アサヒプリテック株式会社テクノセンター内

【要約】 【課題】本発明は貴金属を含む有機系物質から、高収率で、且つ、有害物質を生成させること無く、貴金属を回収する方法を提供しようとするものである。

【解決手段】貴金属を含有する有機系物質を加熱・炭化して、炭素量が 0.5重量%以上の炭化物を生成させ、該炭化物を主成分がシリカ、アルミナ、及びカルシウム化合物からなるフラックスと共に加熱溶融して、貴金属が吸収された金属層とフラックス層とに分離する。得られた貴金属含有金属層を更に酸化して貴金属を濃縮した後、濃縮された貴金属含有金属層から貴金属を精製することを特徴とする、貴金属の回収方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】貴金属を含有する有機系物質を加熱・炭化して、炭素量が 0.5重量%以上の炭化物を生成させ、該炭化物を主成分がシリカ、アルミナ、及びカルシウム化合物からなるフラックスと共に加熱溶融して、貴金属が吸収された金属層とフラックス層とに分離し、該貴金属含有金属層を更に酸化して貴金属を濃縮した後、濃縮された貴金属含有金属層から貴金属を精製することを特徴とする、貴金属の回収方法。
【請求項2】加熱・炭化工程において、 200℃までは 600℃/ 時間以下で昇温させ、 200から 450℃までは 200℃/ 時間以下で昇温させて炭化して、炭素量が5重量%以上の炭化物を得ることを特徴とする、請求項1記載の貴金属の回収方法。
【請求項3】加熱・炭化工程において、ナトリウム、カリウム、カルシウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸、炭素、シリカ及び、アルミナからなる群より選ばれた、少なくとも一つの成分を、該有機系物質に対して、 10 から 500重量%添加することを特徴とする、請求項1または2に記載の貴金属の回収方法。
【請求項4】該有機系物質が、貴金属触媒を含有する有機物及び/ またはその廃棄物であり、得られた炭化物を該フラックス成分と共に金属酸化物を加えて、加熱溶融することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の貴金属の回収方法。
【請求項5】金属酸化物が酸化銅であり、加熱溶融及び相分離させる温度が、1100℃から1500℃である、請求項4に記載の貴金属の回収方法。
【請求項6】濃縮された貴金属含有金属層から、貴金属を精製する方法が、無機酸を用いた湿式法である、請求項1から5のいずれかに記載の貴金属の回収方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は貴金属を含有する有機系物質から貴金属を回収する方法に関するもので、更に詳しく述べると、化学工業で使用される貴金属触媒等が微量含まれた有機物、貴金属を含む熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、イオン交換樹脂や活性炭、電気電子部品等を構成する貴金属含有回路基板などの有機高分子系物質、貴金属とともに有機物を含有するセラミックス触媒等、さらにはそれらを含む廃棄物から、ロスの発生を防止して高収率で貴金属を回収するとともに、有害物質を生成させず環境との調和も図った回収方法である。
【0002】
【従来の技術】化学工業の発展につれて、担持触媒系、錯体触媒系等の貴金属触媒が合成反応に多く使用されるようになっている。また、情報産業の発展につれ、電子機器の使用量も増大の一途をたどり、これらに伴って微量の貴金属が含まれた有機系物質の廃棄量も急速に増大している。貴金属は高価な物質であるからこれらの有機系物質からも回収する必要があるが、多量の有機物中に含まれているため、有機物を除去しないと貴金属を効率よく回収することが困難である。
【0003】また、貴金属イオン等が反応液中に混入した廃液等も多量に発生している。これらの廃棄物から貴金属を回収する場合、従来は先ずこれらの廃棄物に多量に含まれる有機物を焼却除去する方法が用いられていた。しかし、焼却によって生成した灰分は見かけ比重が軽いため、燃焼ガス中へ飛散しロスとなる比率が高く、貴金属の回収率を低下させる大きな要因となっていた。更に焼却時に発生するダイオキシンの環境汚染も大きな障害となっている。
【0004】更に貴金属を含むこれらの有機系物質を焼却した場合、貴金属は酸化され酸化物として灰分中に含まれている。灰分中から貴金属を回収する場合常法としては酸等に溶解する湿式法が採用されているが、この方法では貴金属酸化物の溶解性が悪いため回収率を充分に高めることが困難である。更に、焼却によって生成した灰分中では、貴金属は強固なカ−ボンマトリックスの中に閉じ込められているため溶出し難く、回収率を低下させる要因となっている。
【0005】その他、貴金属を含むイオン交換樹脂や活性炭を珪素、アルミニウム、マグネシウムの酸化物及び酸化銅、更に溶融時の融点を低下させるため融点低下剤を加えて、 1300 〜1400℃で処理する方法も提案されている(特開平 4- 317423号公報)。しかし、多量の有機物を含むイオン交換樹脂や活性炭を処理する場合には高温の炉内に投入すると、有機物が分解して急激に多量の有機性ガスが発生するため、爆発、火災、有毒ガス発生、臭気発生などの問題が起こることが多い。このため揮発性分を多量に含む有機系物質を直ちに高温で処理することは現実的には困難である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前述の問題点にかんがみ、貴金属を回収する過程におけるロスの発生を極力防止して、高収率で貴金属を回収できると共に、有害物質を生成させず環境と調和した回収方法であり、かつ、多くの種類の貴金属を含む有機系物質が複合した混合物にも適用できる回収方法を開発して提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は貴金属を含む有機系物質から貴金属のロスの発生を極力防止して、有機物を除去する方法について鋭意検討した。その結果有機系物質を特定の条件下で加熱・炭化処理を行うことにより、加熱・炭化の際の発泡を防止し貴金属の酸化を抑制して貴金属を炭化物の中に閉じ込めることによって、貴金属のロスが、著しく減少することを見出した。
【0008】更に炭化物に含まれる微量の貴金属を濃縮するため、炭化物を主成分がシリカ、アルミナ、及びカルシウム化合物からなるフラックスと共に加熱溶融することにより、貴金属が吸収された金属層とフラックス層に分離し、分離して得られた貴金属を吸収した金属層を、更に酸化することによって貴金属を濃縮すれば、貴金属のロスを防止して、金属層中に貴金属を濃縮できることを見出した。更にこの貴金属含有濃度を高めた金属層を精製して貴金属回収すれば、高収率で貴金属が回収できることを確認し、これらの知見に基づいて本発明に到達した。
【0009】本発明の方法は、液状、固体状、半固体状の有機化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、イオン交換樹脂、活性炭、電気電子部品などの回収基板などの有機高分子系物質、有機物含有セラミックス触媒等、微量な貴金属を含む広範囲な廃棄物を含む有機系物質に適用可能であり、高収率で貴金属の回収が可能である。
【0010】すなわち、貴金属を含有する有機系物質を加熱・炭化して、炭素量が 0.5重量%以上の炭化物を生成させ、該炭化物を主成分がシリカ、アルミナ、及びカルシウム化合物からなるフラックスと共に加熱溶融して、貴金属が吸収された金属層とフラックス層とに分離する。得られた貴金属含有金属層を更に酸化して貴金属を濃縮した後、濃縮された貴金属含有金属層から貴金属を精製することを特徴とする、貴金属の回収方法である。
【0011】また、加熱・炭化工程において、昇温速度が 200℃までは 600℃/ 時間以下で、200から 450℃までは 200℃/ 時間以下で炭化し、炭素量が5重量%以上の炭化物を得る方法であることも本発明に含まれる。またこの工程において、炭化促進剤として、ナトリウム、カリウム、カルシウムの水酸化物、水酸化物、炭酸塩および硫酸、炭素、シリカ、アルミナからなる群より選ばれた、少なくとも1つの成分を有機系物質に対し、10から 500重量%添加する方法も本発明に含まれている。或いは、貴金属触媒を含有する有機物及び/ またはその廃棄物から得られた炭化物に、フラックス成分と共に金属酸化物を加えて加熱溶融する方法も本発明に含まれている。
【0012】更には貴金属を含む炭化物をフラックス成分と共に金属酸化物を加えて、加熱溶融する工程において、金属酸化物が酸化銅であり、加熱溶融及び相分離させる温度が、1100℃から1500℃である方法及び、濃縮された貴金属含有金属層から、貴金属を精製する方法が、酸を用いた湿式法である、貴金属の回収方法も本発明に含まれている。
【0013】ここで、貴金属とは通常金、銀及びパラジウム、ロジウム及び白金を含む白金属元素を指しているが、特に高価で本発明で言う有機系物質に含まれることが多い、レニウム、ルテニウムやイリジウム等も本発明の回収の対象となっている。また、炭化物とは有機系物質には金属やセラミックス等を含むものもあり、 450℃以上の加熱・炭化処理により得られる生成物で、これらの金属やセラミックス等の無機物は当然残留するが、これらと炭素を含む残留物を総称している。以下、本発明について詳しく説明する。
【0014】これらの貴金属を含む有機系物質には液状、固体状、半固体状の有機化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、イオン交換樹脂、活性炭、電気電子部品を構成する回路基板等の有機高分子系物質、有機物含有セラミックス触媒等が含まれ、その形態も多岐にわたっている。また、貴金属の含有量は、微量な場合が多く、劣化した貴金属担持触媒等には多量の有機物が蓄積しているが、本発明の貴金属回収方法はこれらの広範囲にわたる原料に適用することができる。
【0015】有機溶媒や水に貴金属イオン等が溶解している液状の有機系物質は、一般に貴金属の濃度が低いため、貴金属を回収するには溶媒を蒸発させ濃縮する必要がある。しかし、液状物は蒸発の時突沸し易く、貴金属が飛沫に伴われて飛散しロスとなるため、収率が著しく低下する。また、液状物を噴霧燃焼して灰分を回収する場合も同様である。樹脂状物は加熱によって有機成分が溶融、分解して発泡したり、或いは昇華性分解物が生成し貴金属がこれらの揮発分に伴って飛散しロスとなるため収率が低下する他、設備の閉塞等のトラブルが発生し易い。
【0016】このため本発明の貴金属回収方法では、先ず貴金属を含む有機系物質に炭化促進剤を添加して、固形状物或いは半固形状物とする。当然のことながら、溶媒が多量に含まれている場合には、経済的に見合う範囲内で溶媒を除去した後、炭化促進剤を添加することも有効である。即ち熱処理後、固形状物或いは半固形状物が得られるように炭化促進剤を添加すればよい。炭化促進剤の添加によって融点及び炭化収率が向上し、発泡が防止されるため、従来油化が困難とされていたポリエステル系廃棄物さえも炭化・分解処理が可能となり、かつ貴金属が炭化物の内部に固定されるため、貴金属回収率が著しく向上する。
【0017】炭化促進剤とは、有機物の分解温度を上昇させ炭化速度を速めるために加える成分であり、ナトリウム、カリウム、カルシウムなどの水酸化物、酸化物、炭酸塩、及び硫酸、更には活性炭、炭素、シリカ、アルミナ等の多孔性固体等が使用可能である。また、これらの成分は粉末、成形品いづれでも使用可能である。炭化促進剤の添加量は、有機系物質 100重量部に対して 10 〜500 重量部が好ましく、有機物の酸当量、組成により適宜定めることができる。
【0018】また、セラミックや活性炭等の固体でも、揮発性有機物を含む場合には、炭化促進剤を添加して貴金属の回収率を高めることができる。炭化促進剤の添加方法は特に限定しないが、粉末にして混合したり、或いは有機系物質を粉砕しながら混合した後、ペレタイザ−等市販の機器を用いて造粒した後、加熱・炭化処理することができる。
【0019】本発明の加熱・炭化処理工程においては、貴金属を含有する有機系物質を加熱・炭化して炭化物を得るが、この際貴金属のロスを防止するため特定の条件で処理することが好ましい。また、有機系物質によっては空気を用いることもできるが、雰囲気ガス中の酸素濃度が少なくとも大気中の酸素濃度以下、好ましくは、0.1%以下となるように調整することが好ましい。雰囲気ガスは、用いる有機系物質の性質、量により左右されるが、簡便には、これらの有機系物質を加熱・炭化処理装置に投入中、あるいは投入後に、新しい空気が導入されないことで達成される。また燃焼排ガスも、容易に酸素濃度 0.1%となり、本発明では好適に使用できる。
【0020】有機系物質に含まれる有機質分が反応、分解、揮発などにより、炭化物中に少なくとも 0.5重量%以上の炭素が残留するように処理する必要があり、5重量%以上残留するようにすることが好ましい。加熱・炭化処理装置としては、特にロータリーキルン、縦型シャフトキルン、バッチ式炉のいずれか、あるいはそれらを組み合わせた装置が好ましい。加熱・炭化処理時の酸素濃度の管理、更には温度条件を設定するのが容易であるからである。
【0021】加熱・炭化処理の条件については、昇温速度が 200℃までは 600℃/ 時間以下であり、 200から 450℃までは 200℃/ 時間以下の昇温速度とすることが好ましい。低温領域を低速昇温することによって、発泡や貴金属の同伴飛散を防ぐことができる。また加熱・炭化処理の最高温度を 800℃以下にすることにより、炭素の高次構造の過度の発達を防ぎ、次工程での金属層への貴金属の吸収が効率よく行える。更に好ましくは、 200℃までの熱分解の速度は 400℃/ 時間から40℃/ 時間程度とすることにより、有機系物質中に含まれるハロゲン、酸素、窒素等の原子を除去することができる。次の 450℃までに加熱する炭化処理工程は、熱分解された有機物を更に加熱して炭化を進めるための工程で、この処理工程の昇温速度は 200℃/ 時間から50℃/ 時間が好ましく、この処理によって炭化物中に含まれる揮発性成分の含有量を5%以下に低下することができる。
【0022】熱分解並びに炭化処理工程における昇温条件が、本発明の範囲を越えて急速に加熱された場合は、貴金属のロスが大きくなることが多いため使用することができない。また、昇温速度の下限は、限定しないが、経済的に成立つ範囲であればよい。また、この工程において炭化促進剤を所定量添加することにより、より効率よく炭化物を得ることができる。また、次工程への移送が必要な場合には、固体状、あるいは半固体状になるように熱処理することが好ましい。
【0023】更に、最終の加熱・炭化処理温度は低い方が経済的であり、高温にする必要はない。貴金属が炭素に取り込まれるのに充分な温度である 450から 800℃でよく、0.5重量%以上の炭素が炭化物中に残留するように、最高温度と保持時間を調整すればよい。
【0024】炭化促進剤の添加による融点上昇効果によって、有機物の分解・炭化が徐々に進むため分解ガスの発生速度が低く、且つ分解ガス発生量も燃焼時に比べて遙かに少ない。また、貴金属は炭化物中に閉じ込められるため、分解ガスに伴なう飛散量が少なく、貴金属の残存率は 90 %以上であり、大半の場合は 99 %以上に達している。炭化工程における貴金属の残存率をより高めるためには、原料を均一な形状にペレット化しておくことがより好ましい。
【0025】加熱・炭化処理工程によって有機物を分解炭化して得られた炭素量 0.5%以上の炭化物を、次に主成分がシリカ、アルミナ、及びカルシウム化合物からなるフラックスを含む系で、高温に加熱、溶融して、貴金属を含む金属層と、酸化物からなるフラックス層に分離する。発明においては、貴金属の回収率を高めるため主成分がシリカ、アルミナ、及びカルシウム化合物からなる組成物が好ましい。
【0026】貴金属層とフラックス成分の分離不良や、貴金属の貴金属層への吸収が不十分な場合には状況に応じて還元剤を添加することもできる。還元剤としては炭素材料が簡便かつ、安価で好ましい。特に本発明では熱処理により炭素分を含有した炭化物が得られるので、還元剤を更に添加する必要がなくなり、且つ溶融加熱炉で通常用いられる炭素電極の消耗も低減される。また、得られた炭化物をフラックス成分と共に加熱し、金属層とフラックス層に分離させる場合、金属分が不足して分離が困難な場合には、金属酸化物を添加して分離不良を解消させることもできる。
【0027】金属酸化物としては、銅、鉄、鉛、亜鉛、スズ、アンチモン等の酸化物が使用できるが、銅、鉄或いは銅と鉄の混合物が価格、安定性などの点から好ましい。本発明では、フラックスの主成分がシリカ、アルミナ、及びカルシウム化合物であるから、金属酸化物として酸化銅を加えることにより、溶融分離温度を1100から1500℃と低くすることができ、かつ金属層とスラグ層の分離性、貴金属の金属銅層への抽出効率も向上し、後述するように酸溶解による貴金属精製も容易となる。
【0028】この工程でスラグ層の融点を下げたり、分離をよくするため、溶融助剤として更に、硼砂、珪石、石炭、石灰石、螢石、頁岩、カルシア等を使用することができる。また、炭化物を粉砕してこれらのフラックス成分を加えて混合し、溶融炉で1300〜1500℃に加熱して、貴金属が金属層に吸収されるのに充分な時間、3〜10時間保持して溶融する方法が好ましい。これによってガラス状の酸化物スラグ層と、還元された金属層に分かれ、比重差によって貴金属を含む金属の溶融層が沈降し、上層のガラス状の酸化物スラグ層とに分離される。分離性を高めるため更に金属を添加することもできる。
【0029】引続いて上層の溶融したスラグ層を溶融炉より排出させ、下層の溶融した金属層を酸化炉に導き金属を酸化する。酸化処理は溶融した金属層に含まれる貴金属を更に濃縮するためで、酸素ガスまたは酸素を含有するガス(以下酸素含有ガスと言う)を溶融した金属に吹付けて、あるいは吹き込んで金属酸化物を生成させる工程である。この際金属層中に未反応の貴金属含有炭化物が残存していても、この酸化処理によって酸化・分解され、含有する貴金属は金属層へ移動する。
【0030】酸化されて生成した酸化物の層は、溶融した金属層との比重差によって、酸化炉の内部で酸化物層は上層に、溶融した金属層は下層に分離する。この層分離の間に酸化操作により酸化物層内に取り込まれていた貴金属も溶融した金属層に移行し貴金属が濃縮された金属層が形成される。この際鉄、クロム、アルミニウム等の貴金属以外の元素は殆どこの金属層へは移行せず、酸化物となり酸化物層へ移行する。
【0031】この様にして得られた溶融した金属層は鋳造・冷却した後、貴金属採取用の粗原料とされ、電解精製や酸溶解などの常法によって精製され貴金属が得られる。金属酸化物として、銅、鉄あるいは銅と鉄の混合物を用いた場合は、王水、塩酸一塩素等の無機酸に溶解し精製する方法が好ましい。また、酸化工程で分離された酸化物層は多量の金属酸化物を含む他、尚貴金属元素も微量残存しているため、貴金属回収用原料として循環使用することが好ましい。
【0032】
【発明の実施の形態】以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【0033】(実施例1)電子回路基板を含む使用済携帯電話の破砕物(大きさ20mm前後)をロータリーキルンを用いて、酸素濃度 0.1%以下の燃焼排ガス雰囲気下、加熱・炭化処理を行った。昇温速度は、 200℃までは 300℃/ 時間、 200〜 450℃は 100℃/ 時間で処理した。この時の炭化収率は 20.1 %であり、炭化物の主成分は銅で、炭素含有量が 36.3 %であり、その他、金が 1175ppm、銀が 5535ppm、パラジウムが265ppm 含まれていた。
【0034】この炭化物 100重量部に対し、フラックス成分としてアルミナ 80 重量部、シリカ 200重量部、酸化カルシウム 180重量部を加え、加熱炉で 1450 ℃に加熱して4時間保持することにより、混合物を溶融し、貴金属を含む金属銅とスラグからなる層に分離した。
【0035】貴金属を含む金属銅層を酸化炉に移送し、酸素ガスを吹き込んで酸化処理し、酸化銅スラグと貴金属が濃縮された金属銅の溶融層に分離した。貴金属を含む金属銅は、移送量に対し10重量部であった。この金属銅を硝酸、塩酸に溶解し、湿式法で、順次金、銀を回収し、パラジウムは抽出により回収した。回収率は、それぞれ、97.3、96.8、98.2%と高いものであった。
【0036】(実施例2)パラジウム 1000ppmを含むポリエチレンテレフタレート樹脂廃棄物を溶融成形し、直径5mmのペレットした。得られたペレット 100重量部をバッチ式加熱炉に投入し、密閉した大気圧下で窒素を微量流しながら 200℃までは、 200℃/ 時間で200から 450℃までは 50 ℃/ 時間で昇温した後、10分で最終温度 500℃まで昇温し30分保持し熱処理した。熱処理後のペレットの形状は、若干形状崩れが見られるものの、炭化物の生成量は 5.6重量部( 炭素量91%) でパラジウム含有量は18690ppm であった。この結果によって、加熱・炭化工程終了後のパラジウムの残存率は 99.1 %となる。
【0037】次にこの炭化物 100重量部に対し、アルミナ 40 重量部、シリカ 70 重量部、消石灰 100重量部、酸化銅 30 重量部を加えて、加熱炉で 1450 ℃に加熱して6時間保持して混合物を溶融し、パラジウムを含む金属銅と酸化物からなる層に分離した。
【0038】更にパラジウムを含む金属銅溶融層を酸化炉に移送し、酸素ガスを吹き込んで酸化すると、酸化銅(スラグ)とパラジウムが濃縮された金属銅の溶融層に分離した。パラジウムを含む金属銅の溶融層を抜き出して王水に溶解し、湿式法でパラジウムを回収した。回収率は原料のポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれるパラジウムに対して 97 %であった。
【0039】(実施例3)実施例2で使用した樹脂 100重量部に対し炭化促進剤であるシリカ粉末 80 重量部を添加して溶融成形し、直径5mmのペレットとした。得られたペレット 100重量部をバッチ式加熱炉に投入し、窒素雰囲気中にて 200℃までは、 350℃/ 時間で、 200から 450℃までは 200℃/ 時間で昇温した後、10分で最終温度 500℃まで昇温し 30 分保持加熱・炭化処理した。加熱・炭化後のペレットの形状には崩れが見られなかった。炭化物の生成量は 99 重量部(残留炭素量 18.2 %) でパラジウム含有量は 1005ppmであった。この結果によって、加熱・炭化工程終了後のパラジウム残存率は 99.5 %となる。次に、酸化銅 70 重量部とした以外は、実施例1と同様にして溶融、分離、濃縮、回収を行った。パラジウムの回収率は、98%であった。
【0040】(実施例4〜7)パラジウム 300ppm を含むポリ酢酸ビニル樹脂に、炭化剤として表1に示す様に使用比率を変えた、消石灰を加えて混合し溶融・成形して径5mmのペレットを調製し、バッチ式加熱炉を用い窒素雰囲気中で熱処理した。消石灰の添加量、熱処理条件及び熱処理工程終了後の炭化物生成量、含有炭素量及び、パラジウムの残存率を併せて表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】ここで、実施例4は炭化促進剤である消石灰の添加量が最も少なく、熱処理工程で少し発泡して炭化物の飛散が認められるが、充分に許容できる範囲であった。実施例5は消石灰の添加量が最も多く加熱・炭化処理終了後パラジウムの残存率がやや低下しているが、操業効率を勘案すれば許容できる範囲であった。実施例6、7はパラジウムの残存率が最も高く好ましい条件である。
【0043】(実施例8)メッキ廃液処理に使用した金を 10 %含有するイオン交換樹脂 100重量部に対、硫酸を 30 重量部添加して混合してほぼ固形状物を得た。得られた固形状物をロータリーキルンに投入し、酸素濃度 0.1%以下の燃焼排ガス中にて、 200℃までは、 400℃/ 時間、 200から 450℃までは、 100℃/ 時間で昇温し、1時間で最終炭化温度 600℃まで昇温し10分保持して加熱・炭化処理した。炭化物生成量は53.4 重量部で金含有率は、18.8%であった。この結果によって、加熱・炭化工程終了後の金の残存率は 99.3 %となる。また、炭素含有量は 38.1 %であった。
【0044】次にこの炭化物 100重量部に対し、アルミナ 200重量部、炭酸カルシウム 220重量部、酸化鉄 80 重量部を加え、加熱炉で 1500 ℃に加熱して4時間保持して金を含む金属鉄の溶融層を得た。金を含む金属鉄の溶融層を酸化炉に導入し、酸素ガスを吹き込んで酸化し酸化鉄(スラグ)と、金が濃縮された金属鉄の溶融層に分離した。
【0045】この金含有金属鉄を塩酸に溶解し金を分離精製した。得られた金の原料イオン交換樹脂に含まれていた金に対する回収率は 97.6 %であった。
【0046】(実施例9)ポリイソプレンの部分水添に使用した後の、金属白金に換算した濃度が 300ppmの、白金錯体(テトラキストリフェニルフォスフィン錯体)のトルエン廃液100重量部に対して、消石灰を 20 重量部を混合し、ネバネバしたほぼ固形状の分散液を得た。この分散液をバッチ式熱分解炉に投入し、窒素雰囲気中にて 200℃までは、50℃/ 時間、 200から 450℃までも50℃/ 時間で昇温し、450 ℃に30分保持して熱処理した。得られた炭化物の生成量は 26.1 重量 (炭素量6.1 %) で、白金含有率は、1140ppm であった。この結果により熱処理工程終了後の白金の残存率は 99.2 %となる。
【0047】次にこの炭化物 100重量部に対し、アルミナ 30 重量部、シリカ 130重量部、消石灰 20 重量部、酸化銅 1000 重量部を加えて、加熱炉で 1500 ℃に加熱して4時間保持して、白金を含む金属銅の溶融層を得た。白金を含む金属銅の溶融層を酸化炉に移送し、酸素ガスを吹き込んで酸化すると、酸化銅(スラグ)と白金が濃縮された金属銅の溶融層に分離された。
【0048】濃縮された白金を含む金属銅を王水に溶解し、湿式法で金を回収した。回収率は、白金錯体に含まれていた白金に対して 98.1 %であった。
【0049】(比較例1)ロータリーキルンの温度条件を、 200℃までは、650 ℃/ 時間、 200℃から 450℃までは 100℃/ 時間に設定した場合を除き、実施例1と同様の加熱・炭化処理を行ったが、携帯電話破砕物に含まれた有機系高分子部材による、急激な熱分解による発泡と部材間の融着が起こり、キルンの運転ができなくなった。
【0050】(比較例2)ロータリーキルンの温度条件を、 200℃までは、600 ℃/ 時間、 200℃から 450℃までは 250℃/ 時間に設定した場合を除き、実施例1と同様の加熱・炭化処理を行ったが、比較例1と同様な現象が発生し運転不能に陥った。
【0051】(比較例3)ロータリーキルン炉内に少量の空気を導入し酸素濃度を平均5%に保ちながら、実施例1と同様な温度の昇温条件で加熱・炭化処理を行った。炭化物の収率は15.8 %であり、主として酸化銅が得られ、炭素量 0.35 %であった。貴金属の残存率は、金で 78.3 %、銀で 71.9 %、パラジウムで 65.8 %であった。引き続いて炭化物に対しコークス粉を2重量部添加した以外は、実施例1と同様にして、溶融加熱、分離、濃縮操作を行い、貴金属を回収したが、回収率は金で 78.3%、銀 68.2 %、パラジウム 61.9 %の回収率となり、大幅な貴金属の回収ロスが認められた。
【0052】(比較例4)実施例2の加熱・炭化処理の昇温速度を、 200℃までは、650 ℃/ 時間で、 200℃から 450℃までは 180℃/ 時間に変更して、実施例2と同様な熱処理をしたが、炭化後の状態は激しく発泡飛散しており、回収できた残渣は、 1.3重量部、炭素量 0.27 %で、パラジウム残存率は 73.1 %であった。
【0053】(比較例5)メッキ廃液の処理に使用した金を 10 %含有するイオン交換樹脂 100重量部を、バッチ式分解炉に入れ、炉に導入する空気量を調節しながら、 200℃までの昇温速度 500℃/ 時間、 200℃から 450℃までの昇温速度 300℃/ 時間とし、それ以降 30 分で 700℃まで昇温して燃焼させた。燃焼後に残された残渣は 10.5 重量部であった。また、炭素量は、 0.43 %であった。
【0054】この残渣を王水に溶解し、湿式法で金を回収した。回収率は原料のイオン交換樹脂に含まれる金に対し、 88.4 %であった。燃焼時にかなりの金が飛散ロスしたものと推察された。
【0055】(比較例6)実施例9で使用した試料と同じ白金媒体を含むトルエン廃液を、噴霧式焼却炉で950℃で燃焼させた。燃焼後に残された炉内の灰分は 1.5重量部で、炭素量は0.21 %であった。
【0056】この灰分を王水に溶解して湿式法で白金を回収した。回収率は原料の白金錯体に含まれる白金に対して 53.8 %であった。
【0057】
【発明の効果】本発明は貴金属を微量含有する電子部品等の廃棄物をはじめ、化学工業で使用される貴金属触媒等が微量含まれた有機物や樹脂等から、貴金属を元素の状態で回収する方法である。貴金属の回収は従来からなされているが、含有量が微量でその担体も広範囲な態様にわたるため、高い回収率を達成することが困難であった。本発明の回収方法によれば、微量の貴金属の酸化並びに飛散を防止するための加熱・炭化処理及び、溶融工程における貴金属の濃縮によって、高い回収率を達成すると共に環境との調和も図ることができる。
【出願人】 【識別番号】591234307
【氏名又は名称】アサヒプリテック株式会社
【住所又は居所】兵庫県神戸市東灘区魚崎浜町21番地
【出願日】 平成14年4月11日(2002.4.11)
【代理人】 【識別番号】100088410
【弁理士】
【氏名又は名称】小田中 壽雄
【公開番号】 特開2003−301225(P2003−301225A)
【公開日】 平成15年10月24日(2003.10.24)
【出願番号】 特願2002−109747(P2002−109747)