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【発明の名称】 連続溶融亜鉛めっき用インライン焼鈍炉
【発明者】 【氏名】中島 宏幸
【住所又は居所】千葉県千葉市中央区川崎通1番地 川崎製鉄株式会社千葉製鉄所内
【氏名】天笠 敏明
【住所又は居所】千葉県千葉市中央区川崎通1番地 川崎製鉄株式会社千葉製鉄所内
【課題】間接加熱によるインライン焼鈍方式を採用する場合において、鋼板の酸化−還元の制御を確実かつ容易に行い得るようにし、高張力鋼板に溶融亜鉛めっきを不めっき部の発生することなく行い得る連続溶融亜鉛めっき用インライン焼鈍炉を提案する。

【解決手段】間接加熱方式による連続溶融亜鉛めっき用インライン焼鈍炉において、前記焼鈍炉内に周囲に対して負圧に維持される酸化雰囲気帯を設けるとともに、該酸化雰囲気帯に続いて還元帯を設ける。上記酸化雰囲気帯は、鋼板温度が300〜850℃となる帯域に設けるのがよく、また、酸化雰囲気帯は外気吸引ブロワー及び吸引ブロワーを設けることによって構成するのがよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 間接加熱方式による連続溶融亜鉛めっき用インライン焼鈍炉において、前記焼鈍炉内に周囲に対して負圧に維持される酸化雰囲気帯を設けるとともに、該酸化雰囲気帯に続いて還元帯を設けることを特徴とする連続溶融亜鉛めっき用インライン焼鈍炉。
【請求項2】 酸化雰囲気帯は、鋼板温度が300〜850℃となる帯域に設けられていることを特徴とする請求項1記載の連続溶融亜鉛めっき用インライン焼鈍炉。
【請求項3】 酸化雰囲気帯には、外気吸引ブロワー及び吸引ブロワーが設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の連続溶融亜鉛めっき用インライン焼鈍炉。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は鋼帯をインライン方式により加熱・焼鈍した後、連続溶融亜鉛めっきを施す溶融亜鉛めっき設備に係り、特にSi、Mn等のめっき阻害成分を多く含む高張力鋼板に連続溶融亜鉛めっきするのに好適な連続溶融亜鉛めっき用インライン焼鈍炉に関する。
【0002】
【従来の技術】鋼板(鋼帯)に連続亜鉛めっきを施すに当たっては、一般に、インライン焼鈍方式が採られ、冷間圧延された鋼板の組織を再結晶させて軟化させるとともに、鋼板表面に溶融亜鉛めっきをするのに必要な状態が付与される。この焼鈍を行う加熱炉として、近年では間接加熱方式による、いわゆるオールラジアント方式の加熱炉が広く採用されている。
【0003】このオールラジアント方式の間接加熱炉では、冷間圧延された鋼板は、たとえば、電解脱脂方式などにより十分脱脂・清浄化された後、鉄(Fe)にとって無酸化ないし還元領域の雰囲気、たとえば容量比で3〜10%の水素を含み残部窒素のHNガスにより焼鈍される。したがって、鋼板の表面は原則として酸化されず、かつ還元もされない。
【0004】通常の軟鋼板の場合は、このような方式で焼鈍し、めっき浴を通しても特に問題なく良好なめっき層を得ることができる。しかるに、たとえば、自動車の外板に使用される高張力鋼板をこの方式により溶融亜鉛めっきすると、高張力鋼板に含有されるSi、MnあるいはPなどの合金成分のため、めっきが完全に行われない不めっきが発生することがある。この不めっきは焼鈍の際、上記合金成分が鋼板表面に濃化、酸化し、そのため鋼板表面とめっき浴の溶融亜鉛との濡れ性が低下するため生ずるものであることが解明されており、その対策として、焼鈍の前半において鋼板表面を僅かに酸化させ、その後酸化層を還元してフレッシュな鉄(Fe)層を表面に形成させてめっきする手段が行われている(たとえば特開平-34210号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、オールラジアント方式の間接加熱炉は、炉の入り側から出側までほぼ同一の組成を有するHNガス雰囲気に維持されるものであり、先に挙げた特開平7-34210号公報記載のように焼鈍炉内(予熱帯)で鋼板表面の鉄(Fe)を酸化させ、その後還元焼鈍を行うことは、雰囲気調整の問題もあり、設備上相当の困難を伴う。また、鋼板の材質に応じた酸化度の調整も困難であり、高張力鋼板の不めっきを完全には解決できないという問題があった。
【0006】本発明は、上記従来の間接加熱によるインライン焼鈍方式を採用する場合において、鋼板の酸化−還元の制御を確実かつ容易に行い得るようにし、高張力鋼板に溶融亜鉛めっきを不めっき部の発生することなく行い得る連続溶融亜鉛めっき用インライン焼鈍炉を提案することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、めっき用鋼板を焼鈍する際に鋼板表面を酸化した後、還元してめっきするに当たりフレッシュな鉄(Fe)層を現出させる手段を間接加熱方式、いわゆるオールラジアント方式の加熱炉に適用する手段について検討し、加熱帯に空気を吸引して酸化に必要な雰囲気を作る酸化雰囲気帯を設け、それに続いて還元帯を設け、かつ両帯域の雰囲気が混合することのないようにすれば、確実に所期の目的を達成し得ることを知見して本発明をなすに至った。
【0008】本発明は、間接加熱方式による連続溶融亜鉛めっき用インライン焼鈍炉において、前記焼鈍炉内に周囲に対して負圧に維持される酸化雰囲気帯を設けるとともに、該酸化雰囲気帯に続いて還元帯を設けるものである。
【0009】上記酸化雰囲気帯は、鋼板温度が300〜850℃となる帯域に設けるのがよく、また、酸化雰囲気帯は外気吸引ブロワー及び吸引ブロワーを設けることによって構成するのがよい。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を具体的に説明する。図1は、本発明を適用した連続溶融亜鉛めっき用インライン焼鈍炉11の全体構成を示す概念図であり、図2は、そのA-A断面図である。鋼帯(素材)Sは、加熱帯12によって所定焼鈍温度まで加熱され、冷却帯13で溶融亜鉛めっき温度まで冷却され、溶融亜鉛めっき槽14によって所定の厚さのめっきが施されて溶融亜鉛めっき鋼板(製品)Gとなる。なお、加熱帯12は、いわゆる昇温帯、加熱帯及び均熱帯を包含する広義の加熱帯を意味する。
【0011】本焼鈍炉11では、加熱はラジアントチューブが壁面に取り付けられ、そこから発生する輻射熱により鋼板を加熱するようになっている。また、焼鈍雰囲気は、特に断らない限りHNガスが用いられ、また、炉内ガスの露点は-20〜-40℃とされる。したがって全体としては還元領域の雰囲気で焼鈍が行われるようになっている。
【0012】本発明の連続溶融亜鉛めっき用インライン焼鈍炉11では、焼鈍過程において鋼板表面を必要に応じて酸化し、次いで還元するためその加熱帯12に酸化雰囲気帯21が設けられ、次いで還元帯15が設けられる。なお、先に述べたように、加熱帯12は、いわゆる昇温帯、加熱帯及び均熱帯を包含する広義の加熱帯をいい、還元帯15はこれらのいずれの帯域に設けることもできる。
【0013】この酸化雰囲気帯21には、図2に示すように外気吸引ブロワー22及び排気ブロワー23が設けられており、これらの出力及び制御弁24の開度を調節することにより酸化雰囲気帯21内の圧力をその前後の帯域及び大気圧に対して負圧に調整できるようになっている。これにより酸化雰囲気帯21の前後の帯域に酸化ガスを漏洩させることなく外気(空気)を導入させることが可能になっている。
【0014】その具体的構造は、図3に示すように鋼帯を取り囲む形に耐火れんが製チャンバー25が配置され、その鋼帯の入・出口には酸化雰囲気帯21の気密性を向上させる手段として、例えばシールロール26A、26Bが配置されている。このチャンバー25には外気取り入れ口および排気口(図示しない)が設けられ、それに外気吸引ブロワー22及び排気ブロワー23が接続されている。なお、チャンバー25は鋼製とすることもできる。
【0015】一方、還元帯15は、図1に示すように、酸化雰囲気帯の後段に位置し、鋼帯表面の還元および焼鈍工程における加熱・均熱を担う。
【0016】上記連続溶融亜鉛めっき用インライン焼鈍炉11を用いて鋼板を焼鈍するには次のようにする。まず、SiやMnなどの合金含有量の高い高張力冷延鋼板がラインに投入されたときには、その信号を鋼板成分、命令ライン速度(通板速度)、焼鈍温度とともにプロセスコンピュータにインプットする。該プロセスコンピュータでは鋼板の酸化、還元条件を予め決定しておいたテーブルから選択し、併せて酸化雰囲気帯21に付設されている外気吸引ブロワー22及び排気ブロワー23の出力並びに制御弁24の開度を決定し、制御信号を発する。該制御信号を受けてこれら外気吸引ブロワー22及び排気ブロワー23並びに制御弁24が作動する。
【0017】これらの条件は、上記鋼板組成、操業条件、ならびに製品性状の相互関係の解析によって予め得ることができる。たとえば、図4は、鋼板成分Mn:2mass%を含む高張力冷延鋼板を、酸化雰囲気帯の温度を700℃として通板したとき、酸化雰囲気帯で生成される酸化膜厚みと不めっき評点との関係を示すグラフである。これから、この組成を有する鋼板では厚さ1μm以上の酸化膜を生成させたとき、不めっき評点が1以下となることが分かる。なお、不めっき評点の基準は表2に示したものである。
【0018】また、図5は、同様の鋼板を700℃までの速度25℃/sで昇温し、酸化雰囲気帯に2s滞留させたときの酸化雰囲気帯で生成される酸化膜厚みと酸化雰囲気帯の酸素濃度との関係を示すグラフであり、この場合酸化雰囲気帯の酸素濃度が1.0vol.%以上とすれば必要な1μm以上の厚さの酸化膜が得られることが分かる。
【0019】適正な酸化膜の厚さ、それを得るための酸化雰囲気帯中の酸素濃度は鋼板組成及び焼鈍炉の操業条件(通板速度、昇温速度等)により異なる。しかしながら、これらの条件は積み上げた操業結果の解析により明確にすることができる。例えば、鋼成分(特にMn及びSi含有量)、板厚、通板速度、炉温等から酸化雰囲気帯中の板温、滞留時間が適切になるように操業条件をプロセスコンピュータによって求め、これにしたがい操業をコントロールするのがよい。いうまでもなく、形成させる酸化膜の厚さは、続く還元帯で還元反応により完了する厚さとしながら、最終的に不めっき防止に足るフレッシュな鉄層を十分形成できる厚さとする。
【0020】なお、酸化雰囲気帯を通過するときの鋼帯温度は、300〜850℃とするのがよい。温度が低すぎると適正な厚さの酸化膜を形成させるのに時間がかかりすぎ、通板速度を遅くせざるを得ないので経済的でない。、一方、850℃を超えると製品が過度に軟化する傾向があること、また余分のエネルギー投入をするためにコスト的に不利である。
【0021】このようにして、適正厚さの酸化膜が表面に生成した鋼板は、次いで還元帯に移行され、酸化膜の還元が行われる。還元条件は、水素濃度、露点等により決定されるが、これらは酸化膜の厚さ、鋼板の温度、通板速度等を考慮して予め決定しておく。なお、水素濃度は加熱帯および冷却帯との間で差が小さいほど操業が容易である。
【0022】なお、還元帯の圧力は酸化雰囲気帯に対し正圧に維持するのがよい。これにより酸化雰囲気帯から空気などの酸化性ガスが侵入することが完全に防止され、フレッシュな鉄層を表面に有するめっき付着性の優れた焼鈍板を得ることができる。
【0023】このようにして表面層の酸化、ついで還元が行われた鋼板(鋼帯)は次いで冷却帯を通過して、めっきに必要な温度に冷却され、通常の操業条件にしたがいめっき槽に浸漬して製品とされる。上記冷却帯の雰囲気は、還元帯の雰囲気をそのまま持ちきたしてもよいが、通常のHNガス雰囲気としてもよい。なお、この際、冷却帯において高張力鋼板を得るために必要な急冷過程をとることやめっき後合金化処理を行うことを必要に応じて行うことができる。
【0024】以上、合金成分の高い高張力鋼板に対して本発明の連続溶融亜鉛めっき用インライン焼鈍炉を利用してめっきする場合について説明したが、本発明を通常の軟鋼板(C:0.03mass%程度のほか、Si、Mn、Pなどの元素を僅かに含むもの)にも適用することができ、めっき付着性をより向上させることができる。しかしながら通常の軟鋼板は単純なHNガスで焼鈍しても十分なめっき性を有しているものであるから、その通板時にはインライン焼鈍炉の使用ガスをすべてHNガスに切り替えて操業を単純化するのが経済的である。
【0025】
【実施例】表1に示す仕様の連続溶融亜鉛めっき用インライン焼鈍炉を用い、これにMnを0.01mass%含有する軟鋼帯(厚さ:1.0mm、幅:1000mm)を速度60m/minで通板した後、Mnを1.0mass%含有する高張力鋼鋼帯(厚さ:1.0mm、幅:1000mm)を速度60m/minで通板した。これら軟鋼帯及び高張力鋼鋼帯通板時には、通板される鋼帯の組成をプロセスコンピュータに入力し、予め決定しておいた条件テーブルから還元条件を選択して酸化雰囲気帯の酸素濃度を算出して制御した。
【0026】
【表1】

【0027】図6に操業結果を示す。本発明を適用した結果、鋼張力鋼板通板時には酸化雰囲気帯のO2濃度が1vol.%となり、適正な酸化膜の形成とその還元帯での還元が行われた結果、不めっき評点が実質的に0となった。これに対し、本発明を適用せず、単にHNガスで焼鈍した場合には、フレッシュな鉄層の形成が行われなかったため不めっき評点が4ないし5となった。なお、不めっき評点とは先に述べた場合を含め表2に示すものである。
【0028】
【表2】

【0029】
【発明の効果】本発明は、間接加熱によるインライン焼鈍方式を採用しながら、鋼板の酸化−還元の制御を確実に行い得るようにし、高張力鋼板に溶融亜鉛めっきを不めっき部の発生することなく行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区内幸町二丁目2番3号
【出願日】 平成14年5月30日(2002.5.30)
【代理人】 【識別番号】100108176
【弁理士】
【氏名又は名称】白木 大太郎
【公開番号】 特開2003−342645(P2003−342645A)
【公開日】 平成15年12月3日(2003.12.3)
【出願番号】 特願2002−157263(P2002−157263)