| 【発明の名称】 |
圧潰強度に優れたUOE鋼管の製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】津留 英司 【住所又は居所】千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技術開発本部内
【氏名】朝日 均 【住所又は居所】千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技術開発本部内
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| 【要約】 |
【課題】UOE方式によるラインパイプ用鋼管において、外圧負荷時の圧潰強度を著しく改善できる鋼管の製造方法を提供する。
【解決手段】UOE方式により製造する鋼管の製造方法において、拡管後、鋼管の外表面及び内表面においてそれぞれ式(1)及び(2)を満足する熱処理を施す。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 鋼板を順にC成形、U成形、O成形し、鋼板の端部同士をシーム溶接後、拡管するUOE鋼管の製造方法において、外表面の温度T1及び外表面の加熱時間t1が下記(1)式を満足し、かつ内表面の温度T2及び内表面の加熱時間t2が下記(2)式を満足するように熱処理を施すことを特徴とする圧潰強度に優れたUOE鋼管の製造方法。 T1−503≧−37.6×lnt1 ・・・(1) ここでT1:外表面の加熱温度(℃) t1:外表面の加熱時間(s) T2−407<−31.3×lnt2 ・・・(2) ここでT2:内表面の加熱温度(℃) t2:内表面の加熱時間(s) 【請求項2】 熱処理を誘導加熱により行うことを特徴とする請求項1に記載の圧潰強度に優れたUOE鋼管の製造方法。 【請求項3】 熱処理中又は熱処理後冷却中に塗覆装を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の圧潰強度に優れたUOE鋼管の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はラインパイプ等に使用される鋼管をUOE製造法で成形する方法において、圧潰特性を改善するための方法に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、原油・天然ガスの長距離輸送方法としてラインパイプの重要性が高まっており、なかでも海洋を渡る海底ラインパイプは3000mにおよぶ深度にまで達してきた。一般にパイプラインの設計では、まず鋼管内径が流体輸送量より決定され、続いて肉厚、材質が、内圧負荷時の周方向応力を一定値に押さえるべく亀裂伝播特性、腐食減量を考慮し、決定されている。しかし、深海化に伴って水圧が高まり、従来はあまり重要視されなかった圧潰強度が問題になりつつある。圧潰強度は外径と肉厚の比に相関があり、鋼管の圧潰強度を高めることによって大径化及び薄肉化が可能になる。従って、圧潰強度が鋼管サイズを決定する主な設計因子となりはじめた。 【0003】ところで、鋼管の圧潰強度は油井管においては古くから研究されており、統計的にも数多くの実験式が提案されてきた。その中で外径/肉厚比、降伏強度、真円度、偏肉度、残留応力がその主な支配因子とされた。これらの研究は材質が均質なシームレス鋼管について主に行われたものであるため、材料の異方性については多くを論じる必要はなかった。 【0004】しかし、長距離輸送に使用される幹線ラインパイプでは大径であるため、UOE方式の製造法による鋼管が使用される。UOE方式による鋼管の製造工程は、図1に示すようにC成形(プレス)、U成形(プレス)、O成形(プレス)、シーム溶接及び拡管する工程からなる。いずれの成形も冷間で行われるため、最終製品、すなわち鋼管は、加工硬化とバウシンガー効果の複合により機械的性質に異方性を生じることになる。なお、バウシンガー効果とは材料に塑性歪を与えた後、それとは逆方向の降伏強度が低下する現象である。従って、周方向に引張方向の塑性歪を与えたUOE鋼管は、周方向の圧縮降伏強度、すなわち外圧負荷に対する降伏強度がバウシンガー効果によって低下する。 【0005】一方、軸方向の荷重負荷に対しては成形時の主歪みに荷重方向が直交するため、軸方向の引張及び圧縮負荷ではその応力挙動に差を生じにくい。また、周方向の荷重負荷が引張応力である場合、すなわち内圧負荷に対しては全厚引張試験から得られる値を基準に強度設計を行えば問題が生じることはない。 【0006】しかし、近年では深海用ラインパイプに適用し得るUOE鋼管の需要が高まり、外圧による鋼管の圧潰強度が問題になり始めた。圧潰は外圧により鋼管が潰れる現象であり、座屈の一つであるため、圧縮の降伏強度が圧潰強度を決定することとなる。従って、圧潰強度が要求されるラインパイプにUOE鋼管を適用する際には、バウシンガー効果による周方向の圧縮強度の低下が問題になる。 【0007】このような問題に対し、低下した圧縮降伏強度を熱処理によって回復させる方法が、特開平9−3545号公報及び特開平9−49025号公報に開示されており、また、多くの研究論文に報告されている。これらの方法では、成形により低下した圧縮降伏強度は成形前の板材レベルにまで回復し、UOE鋼管の圧潰強度はある程度改善される。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】しかし、通電加熱や熱処理炉によって鋼管全体を加熱すると、UOE方式による製造工程では鋼管の内表面から肉厚中心部(以下、内表面側)で起こる圧縮歪みによる加工硬化も失われることになる。従って、UOE鋼管全体を均一に熱処理する圧潰強度の改善方法は、極めて有効であるとは言い難い。 【0009】本発明はUOE鋼管に、内表面側の冷間加工による加工硬化を残存させ、外表面から肉厚中心部(以下、外表面側)のバウシンガー効果を消滅させる熱処理を施すことで圧潰強度を改善することを目的としている。 【0010】 【課題を解決するための手段】このような課題を解決するために、本発明者は、まずUOE鋼管において圧潰強度の板厚方向による変化を明らかにするために、詳細な検討を行った。その結果、外表面側の圧縮降伏強度は成形前の鋼板よりも低下し、内表面側では上昇していることを見出した。この知見から、外表面が高温で内表面を低温とする熱処理によって、外表面側の圧縮降伏強度を鋼板と同等まで向上させ、かつ、内表面側の圧縮降伏強度を維持し、軸方向の強度の低下も抑制する熱処理方法について詳細に検討した。その結果、最適な熱処理条件を見出し、圧潰強度に優れたUOE鋼管の製造に成功した。すなわち、本発明の要旨とするところは、以下の通りである。 (1) 鋼板を順にC成形、U成形、O成形し、鋼板の端部同士をシーム溶接後、拡管するUOE鋼管の製造方法において、外表面の温度T1及び外表面の加熱時間t1が(1)式を満足し、かつ内表面の温度T2及び内表面の加熱時間t2が(2)式を満足するように熱処理を施すことを特徴とする圧潰強度に優れたUOE鋼管の製造方法。 T1−503≧−37.6×lnt1 ・・・(1) ここでT1:外表面の加熱温度(℃) t1:外表面の加熱時間(s) T2−407<−31.3×lnt2 ・・・(2) ここでT2:内表面の加熱温度(℃) t2:内表面の加熱時間(s) (2) 熱処理を誘導加熱により行うことを特徴とする(1)に記載の圧潰強度に優れたUOE鋼管の製造方法。 (3) 熱処理中又は熱処理後の冷却中に塗覆装を行うことを特徴とする(1)又は(2)に記載の圧潰強度に優れたUOE鋼管の製造方法である。 【0011】 【発明の実施の形態】本発明者らは、先ず、深海用ラインパイプに使用される代表サイズのUOE鋼管、φ660×25.4mm、X−65について周方向の圧縮応力−歪み挙動を全断面について調査した。試験片は直径6mm、長さ15mmの円柱で、外表面より1/4全厚部、内表面より1/4全厚部及び肉厚中心部で周方向を長手として採取した。図2に、圧縮降伏強度増減率を板厚方向の試験片採取位置に対してプロットした。圧縮降伏強度増減率は、鋼管の圧縮降伏強度より成形前の鋼板の圧縮強度を減じ、それを成形前の鋼板の圧縮強度で除した値の百分率である。これより、外表面側では圧縮降伏強度が成形前の鋼板に対して約20%以上も低下するが、逆に内面側では上昇していることがわかった。 【0012】これまでは、UOE成形プロセスでは最終的には拡管時の引張歪に起因するバウシンガー効果によって、圧縮降伏強度の低下が板厚全体で起こるものと考えられていた。しかし、実際には圧縮降伏強度の低下は外表面側に限定され、内表面側では製管時の曲げ加工による圧縮の加工硬化が拡管後も残留し、圧縮降伏強度が上昇していることを見出した。 【0013】以上のことから、成形時に低下した外表面側の圧縮降伏強度を回復させ、かつ成形時に上昇した内表面側の圧縮降伏強度を維持する熱処理方法を指向し、検討を行った。 【0014】冷間歪みにより変化した鋼の機械的性質は熱処理により回復することがよく知られている。そこでラインパイプとして実績のあるX−65、X−80及びさらに高強度の800MPa以上の強度を有する材料について、引張加工予歪みを与えた後に熱処理を施し、引張予歪みにより低下した圧縮降伏強度が素材の90%にまで回復する加熱温度と加熱時間を調査した。その結果、最適な熱処理条件は、材質や1%以上の予歪みに大きく依存せず、図3の関係にあることがわかった。これを定式化すると180℃以上の温度に対し、式(1)で表される。 T1−503≧−37.6×lnt1 ・・・(1) ここでT1:外表面の加熱温度(℃) t1:外表面の加熱時間(s) なお、外表面の加熱温度T1は、相変態等の組織変化を生じさせないように、上限を700℃以下とすることが好ましい。上限は生産性を考慮すると6000s以下にすることが好ましい。 【0015】さらに同様に圧縮予歪みについて検討し、加工硬化により増加した降伏強度を維持し得る熱処理条件を調査したところ、材質や1%以上の予歪みに大きく依存せず、図4の関係が得られ、式(2)で定式化できた。 T2−407<−31.3×lnt2 ・・・(2) ここでT2:内表面の加熱温度(℃) t2:内表面の加熱時間(s) なお、内表面の加熱温度T2は低いほど良いが、実際には外表面からの熱伝導によって下限は100℃程度になる。また、内表面の加熱時間t2の下限は規定せず、加熱温度T2に到達後、直ちに冷却しても良い。上限は外表面からの熱伝導に依存するため、規定しない。 【0016】すなわち、図5に示すように外表面温度と内表面温度をそれぞれ別の温度−時間範囲に加熱することによって、加工硬化により上昇した内面側の圧縮降伏強度を維持し、バウシンガー効果により低下した外表面側の圧縮降伏強度を上昇させることに成功した。 【0017】バウシンガー効果による外面側の圧縮降伏強度低下率は拡管時の引張歪の大きさ及び肉厚によって変化する造管時の曲げ加工による引張歪みの大きさには依存しない。一方、内面側の圧縮降伏強度の上昇は、Oプレス時の圧縮歪みの大きさ及び肉厚によって変化する加工硬化の度合いに依存する。従って、肉厚が厚くなると外面側の圧縮降伏強度は変化せず、内面側の圧縮降伏強度が大きくなるため、肉厚が25〜40mm程度の深海用ラインパイプ鋼管においては、本発明による効果が極めて顕著になる。また、圧潰モードは外径/肉厚比で区別できることが知られており、薄肉材では圧潰強度が圧縮降伏強度に依存しない弾性圧潰を呈し、厚肉になるほど、圧縮降伏強度に依存する遷移圧潰、塑性圧潰、降伏圧潰へと推移する。一般的なラインパイプのサイズは比較的薄肉であるため、弾性圧潰領域にあったが、深海に適用されるサイズでは厚肉になるため、圧縮降伏強度が強く影響し始める。従って、本発明の熱処理による内面側の圧縮降伏強度の維持及び外面側の圧縮強度の回復が効果を発揮する。 【0018】また、外表面が高温で内表面が低温という温度勾配のある温度履歴を得るには、誘導加熱によって外表面を加熱する方法が極めて効果的であり、内外面に急激な温度分布を短時間で簡便に付けることができる。温度分布の調整は誘導加熱の浸透深さ、鋼管搬送速度を肉厚との関係で適宜、最適化することで得ることができる。誘導加熱以外にも本発明の温度分布を得る方法に油槽、あるいはソルトバスなど、外表面から熱伝達係数の大きい雰囲気で加熱する、又は、内表面から強制冷却することでも実現できる。 【0019】また、熱処理後の潜熱を利用して、コーティングを極めて効率良く行うことができる。海底ラインパイプでは主に耐食性を向上させるために鋼管の外表面にプラスティックコーティングを行う。このようなプラスティック等のコーティングは、密着強度を上げるために150〜250℃程度の温度で実施する必要がある。 【0020】従って、従来のように鋼管全体を高温に加熱して圧潰強度を向上させた場合、特に肉厚が大きい場合には適正温度範囲になるまで長時間の待ち時間を必要とした。本発明では内表面と外表面の温度差が大きいために肉厚方向の熱伝導による外表面温度の低下が速く、短時間でコーティングの適正温度に到達する。これにより時間あたりのコーティング本数が増し、圧潰強度を向上させると同時に製造コスト削減を図ることができる。 【0021】コーティング剤の塗覆装を熱処理中に行う際には、内表面温度が本発明で定義する内表面の温度−時間条件を超える場合もあり得る。しかし、本発明の内表面の温度範囲は、外表面を本発明の温度範囲に保ったとき、伝熱上可能で、かつ内表面側の加工硬化が失われない範囲に規定している。従って、コーティング時の外表面及び内表面の温度−時間の関係が、伝熱上可能でないという理由で本発明範囲を満たさなくても、熱処理時の温度−時間の関係が(1)式及び(2)式を満たせば、本発明に含まれる。 【0022】 【実施例】材質がX−65、X80及びX100であり、外径及び肉厚が、それぞれ660〜711mm及び25〜38mmの範囲であるUOE鋼管を図1に示す方法により製造した。これに、表1に示した条件で熱処理を施した。なお、鋼管の外表面及び内表面の温度は熱電対によって測定した。これらの鋼管の圧潰強度を単軸圧潰試験によって測定した。単軸圧潰試験は、長さ5mの鋼管を圧潰試験体とし、圧力容器内に設置して鋼管に軸力が発生しないように水圧を負荷して行った。結果を表1に示す。製造No.1〜6及び9〜12は誘導加熱による熱処理であり、製造No.7及び8は雰囲気加熱と強制冷却を併用した熱処理である。熱処理時間は、加熱温度が400℃以上では、温度上昇が急峻であるため、外面温度については当該温度を上回った時間を意味し、内表面温度については当該温度を最高温度に−10℃までの温度範囲にあった時間を意味する。 【0023】製造No.13、15、17及び18は熱処理を施していないため、それぞれ、同サイズかつ同材質で本発明の範囲内の製造No.1〜3、4〜8、9及び10よりも圧潰強度が大幅に低下している。また、製造No.14は、内表面の熱処理条件が本発明の範囲外であるため、外表面が同じ温度に加熱された本発明の範囲内である製造No.1より明らかに圧潰強度が低下していることがわかった。 【0024】また、製造No.16は外表面及び内表面の熱処理条件が本発明の範囲外であるため、外面が同じ温度にまで加熱された本発明の範囲内の製造No.6より圧潰強度が明らかに低下している。製造No.11は、材質がX−100のUOE鋼管に本発明の範囲内の熱処理を施したもので、圧潰試験の結果、高い圧潰強度が得られた。 【0025】 【表1】
【0026】 【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、鋼管の外表面及び内表面に異なった加熱履歴を与えることで、UOE方式で製造した鋼管に、より高い圧潰抵抗を付与することが可能であり、圧潰強度に優れたUOE鋼管を低コストで提供できる、これは、深海のような高い圧潰抵抗が要求される環境においても、天然ガス、原油等の輸送用ラインパイプ等に使用することができ、産業上、極めて貢献度が高いものである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000006655 【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社 【住所又は居所】東京都千代田区大手町2丁目6番3号
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| 【出願日】 |
平成14年5月24日(2002.5.24) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100077517 【弁理士】 【氏名又は名称】石田 敬 (外3名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−342639(P2003−342639A) |
| 【公開日】 |
平成15年12月3日(2003.12.3) |
| 【出願番号】 |
特願2002−151008(P2002−151008) |
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