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【発明の名称】 高強度ベンド管の製造法
【発明者】 【氏名】寺田 好男
【住所又は居所】君津市君津1番地 新日本製鐵株式会社君津製鐵所内

【氏名】坂本 真也
【住所又は居所】君津市君津1番地 新日本製鐵株式会社君津製鐵所内

【要約】 【課題】X80以上の高強度と溶接金属部の低温靱性に優れたベンド管の製造方法を提供する。

【解決手段】実質的にAlを含有しない低C−低Si−Nb−微量Ti系の母材とAl、N,酸素、Ti量のバランスを考慮した溶接金属部を有する鋼管を800〜900℃に加熱後、曲げ加工しながらその直後に焼入れ処理する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 質量%で、 C :0.03〜0.10%、 Si:0.3%以下、 Mn:0.8〜2.2%、 P :0.015%以下、 S :0.003%以下、 Nb:0.01〜0.10%、 Ti:0.005〜0.030%、Al:0.004%以下、 N :0.001〜0.006%、O :0.006%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、 CEB=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15で定義されるCEB値が0.40〜0.60の範囲にある母材と、 C :0.03〜0.10%、 Si:0.6%以下、 Mn:1.0〜2.2%、 P :0.015%以下、 S :0.01%以下、 Ti:0.005〜0.030%、 Al:0.05%以下、 N :0.001〜0.010%、 O :0.04%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、P={1.5(O−0.89Al)+3.4N}−Tiで定義されるP値が−0.010〜0.010の範囲にあり、さらにかつ、CEW=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15で定義されるCEW値が0.45〜0.75の範囲にある溶接金属部を有する鋼管を800〜900℃に加熱後、曲げ加工しながら直ちに急冷することを特徴とする低温靱性の優れた高強度ベンド管の製造法。
【請求項2】 質量%で、 C :0.03〜0.10%、 Si:0.3%以下、 Mn:0.8〜2.2%、 P :0.015%以下、 S :0.003%以下、 Nb:0.01〜0.10%、 Ti:0.005〜0.030%、Al:0.004%以下、 N :0.001〜0.006%、O :0.006%以下を含有し、さらに、 Ni:0.1〜1.0%、 Cu:0.1〜1.0%、 Cr:0.1〜1.0%、 Mo:0.1〜1.0%、 V :0.01〜0.10%、 B :0.0003〜0.002%Ca:0.001〜0.005%のうち一種または二種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ CEB=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15で定義されるCEB値が0.40〜0.60の範囲にある母材と、 C :0.03〜0.10%、 Si:0.6以下%、 Mn:1.0〜2.2%、 P :0.015%以下、 S :0.01以下%、 Ti:0.005〜0.030%、 Al:0.05以下%、 N :0.001〜0.010%、 O :0.04以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、P={1.5(O−0.89Al)+3.4N}−Tiで定義されるP値が−0.010〜0.010の範囲にあり、さらに、CEW=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15で定義されるCEW値が0.45〜0.75の範囲にあるる溶接金属部を有する鋼管を800〜900℃に加熱後、曲げ加工しながら直ちに急冷することを特徴とする低温靱性の優れた高強度ベンド管の製造法。
【請求項3】 質量%で、 C :0.03〜0.10%、 Si:0.3以下%、 Mn:0.8〜2.2%、 P :0.015以下%、 S :0.003%以下、 Nb:0.01〜0.10%、 Ti:0.005〜0.030%、Al:0.004%以下、 N :0.001〜0.006%、O :0.006%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、 CEB=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15で定義されるCEB値が0.40〜0.60の範囲にある母材と、 C :0.03〜0.10%、 Si:0.6%以下、 Mn:1.0〜2.2%、 P :0.015%以下、 S :0.01%以下、 Ti:0.005〜0.030%、 Al:0.05%以下、 N :0.001〜0.010%、 O :0.04%以下に、さらに、 Ni:0.1〜1.0%、 Cu:0.1〜1.0%、 Cr:0.1〜1.0%、 Mo:0.1〜1.0%、 Nb:0.005〜0.05%、 V :0.01〜0.10%、 B :0.0003〜0.003%、Ca:0.001〜0.005%のうち一種または二種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、 かつ、P={1.5(O−0.89Al)+3.4N}−Tiで定義されるP値が−0.010〜0.010の範囲にあり、さらに、 CEW=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15で定義されるCEW値が0.45〜0.75の範囲にある溶接金属部を有する鋼管を800〜900℃に加熱後、曲げ加工しながら直ちに急冷することを特徴とする低温靱性の優れた高強度ベンド管の製造法。
【請求項4】 質量%で、 C :0.03〜0.10%、 Si:0.3%以下、 Mn:0.8〜2.2%、 P :0.015%以下、 S :0.003%以下、 Nb:0.01〜0.10%、 Ti:0.005〜0.030%、Al:0.004%以下、 N :0.001〜0.006%、O :0.006%以下に、さらに、 Ni:0.1〜1.0%、 Cu:0.1〜1.0%、 Cr:0.1〜1.0%、 Mo:0.1〜1.0%、 V :0.01〜0.10%、 B:0.0003〜0.002%、Ca:0.001〜0.005%のうち一種または二種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、 CEB=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15で定義されるCEB値が0.40〜0.60の範囲にある母材と、 C :0.03〜0.10%、 Si:0.6%以下、 Mn:1.0〜2.2%、 P :0.015%以下、 S :0.01%以下、 Ti:0.005〜0.030%、 Al:0.05%以下、 N :0.001〜0.010%、 O :0.04%以下に、さらに、 Ni:0.1〜1.0%、 Cu:0.1〜1.0%、 Cr:0.1〜1.0%、 Mo:0.1〜1.0%、 Nb:0.005〜0.05%、 V :0.01〜0.10%、 B :0.0003〜0.003、Ca:0.001〜0.005%のうち一種または二種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、P={1.5(O−0.89Al)+3.4N}−Tiで定義されるP値が−0.010〜0.010の範囲にあり、さらに、 CEW=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15で定義されるCEW値が0.45〜0.75の範囲にある溶接金属部を有する鋼管を800〜900℃に加熱後、曲げ加工しながら直ちに急冷することを特徴とする低温靱性の優れた高強度ベンド管の製造法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はAPI規格X80(降伏強度:約551N/mm2 )以上X100(降伏強度:約689N/mm2 )以下の強度と高靱性を有するベンド管(曲がり管)の製造法に関するものである。
【従来の技術】原油・天然ガスを輸送するパイプラインに使用するラインパイプ(直管)や異形管(ベンド管、エルボ−管、T字管など)には、安全性の観点から優れた強度、低温靱性、溶接性などが求められる。特にパイプライン敷設域の寒冷地化や深海化、敷設時のコスト削減、高圧輸送によるコスト削減のニーズに伴い、X80〜X100級の高強度ベンド管が要求されるようになっている。
【0002】従来、ベンド管などは直管に比較して鋼管の機械的性質(強度、低温靱性など)が劣化するため、特開昭62−10212号公報、特開平4−154913号公報、特開平7−3330号公報、特開平5−279743号公報、特開昭59−232225号公報など、ベンド管の機械的性質を改善する方法が種々開示されている。
【0003】例えば特開昭62−10212号公報、特開平4−154913号公報、特開平7−3330号公報、特開平5−279743号公報は、鋼管を加熱後、曲げ加工しながら焼入れした後、冷却後特定の範囲内で焼戻し処理する方法である。しかしながらこれらの方法は、焼戻し処理が必須であるため、生産性や製造コストの観点から問題があった。
【0004】これらに対して、特開昭59−232225号公報では、生産性の向上や製造コストの低減を図るために、焼戻し処理を省略して高強度と良好な低温靱性を確保するためのベンド管の製造法が記載されている。しかしながら、これはC量の低減による強度の低下をMn,Cr,Moを添加して高強度化するものであり、この場合、加熱〜加工〜焼入れ後の組織中にMA(Martensite-Austenite Constituent)、いわゆるマルテンサイトとオ−ステナイトが共存した組織が生成するため、極低温での靱性を安定的に確保することは不可能であると考えられる。そこで、X80〜X100級の高強度を有し、かつ低温での優れた靱性を有する高強度ベンド管の開発が強く望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、X80〜X100級の強度と低温での優れた靱性を有する高強度ベンド管の製造技術を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、質量%で(以下、各成分の含有量は質量%を意味する。)、C:0.03〜0.10、 Si:0.3以下、 Mn:0.8〜2.2、P:0.015以下、 S:0.003以下、 Nb:0.01〜0.10、Ti:0.005〜0.030、 Al:0.004以下、 N:0.001〜0.006、 O:0.006以下に、必要に応じてさらに、Ni:0.1〜1.0、 Cu:0.1〜1.0、 Cr:0.1〜1.0、Mo:0.1〜1.0、 V:0.01〜0.10、 B:0.0003〜0.002、 Ca:0.001〜0.005のうち一種または二種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつCEB=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15で定義されるCEB値が0.40〜0.60の範囲にある母材と、C:0.03〜0.10、 Si:0.6以下、 Mn:1.0〜2.2、P:0.015以下、 S:0.01以下、 Ti:0.005〜0.030、Al:0.05以下、 N:0.001〜0.010、 O:0.04以下に、必要に応じてさらに、Ni:0.1〜1.0、 Cu:0.1〜1.0、 Cr:0.1〜1.0、Mo:0.1〜1.0、 Nb:0.005〜0.05、 V:0.01〜0.10、 B:0.0003〜0.003、 Ca:0.001〜0.005のうち一種または二種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつP={1.5(O−0.89Al)+3.4N}−Tiで定義されるP値が−0.010〜0.010の範囲にあり、さらにCEW=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15で定義されるCEW値が0.45〜0.75の範囲にある溶接金属部を有する鋼管を800〜900℃に加熱後、曲げ加工しながら直ちに急冷することを特徴とする低温靭性に優れた高強度ベンド管の製造法である。
【0007】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の低温靱性の優れた高強度ベンド管の製造方法について詳細に説明する。従来より、極低炭素−高Mn−Nb−(Mo、Cr)−微量Ti鋼管を、加熱後、曲げ加工しながら焼入れ処理することにより高強度と良好な低温靱性を確保できることが知られている(特開昭59−232225号公報)。しかしながらX80以上に高強度化、極厚化する場合、さらに合金元素量の増加が必要となり、ベンド管母材の低温靱性は不十分となる。
【0008】一方、ベンド管の溶接金属については、低炭素−Nb系鋼管を加熱後、曲げ加工しながら焼入れ処理することにより高強度と良好な低温靱性を確保できることが知られている(特開平1−44769号公報)。しかしながら、高強度化する場合、さらに合金元素量の増加が必要となるが、従来の製造法では結晶粒の粗大化と相まって溶接金属の低温靭性は劣化する。
【0009】そこで、加熱後曲げ加工し、焼入れままの高強度ベンド管の母材および溶接金属部の低温靱性を改善するために鋭意研究した結果、本発明に至った。すなわち本発明の特徴は、(1)実質的にAlを含有しない低C−低Si−Nb−微量Ti系の母材と低C−高Mn−微量Tiを含み、かつAl,N,酸素,Ti量のバランスを考慮した溶接金属成分を有する鋼管であること、(2)この鋼管を適正な温度範囲に加熱後、曲げ加工しながら、その直後に焼入れ処理することにあり、これらによって母材と溶接金属部の高強度と優れた低温靱性を同時に達成できる。
【0010】低合金鋼の低温靱性は、(1)結晶粒のサイズ、(2)MAや上部ベイナイト(Bu)などの硬化相の分散状態など種々の冶金学的要因に支配される。とくに高強度化、厚肉化するほど合金元素の添加量は必然的に多くなり、焼入れ時の組織は上部ベイナイト主体の組織となり、MA生成の完全抑制は困難になる。本発明では鋼中のSi量とAl量を極力低減することにより、上部ベイナイトが生成する場合でもMAの生成量が抑制され、かつ微細に分散させて、低温靱性を向上させる。SiとAlを添加した場合には、SiやAlはセメンタイトへの溶解度が小さく、セメンタイト中にSiやAlが固溶しないために、未変態オ−ステナイト中でγが安定化してMAの生成が顕著になる。
【0011】この効果を十分に発揮させるために、母材のSiおよびAlの量をそれぞれSi:0.3%以下、Al:0.004%以下に限定した。Si、Al量の上限の値はMAの生成を抑制して、低温靱性を向上させるために必要な値である。Siは脱酸や強度向上のために必要な元素であり、その上限の値を0.3%とした。ただし、Si量は強度が確保できる範囲内でできるだけ少ない方が望ましい。
【0012】Alは通常脱酸剤として鋼に含まれるが、本発明では好ましくない元素である。Al量が0.004%を超えるとHAZでのMAの生成量が顕著となり、低温靱性の劣化を招くので、上限を0.004%とした。鋼の脱酸はTiのみでも十分であり、Si,Alは必ずしも添加する必要はない。
【0013】Cの下限0.03%は、母材および溶接熱影響部(HAZ)の強度、低温靱性の確保ならびにNb,V添加による析出硬化、結晶粒の微細化効果を発揮させるための最小量である。しかしC量が多過ぎると低温靱性、現地溶接性の著しい劣化を招くので、上限を0.10%とした。
【0014】Mnは強度、低温靱性を確保する上で不可欠な元素であり、その下限は0.8%である。しかしMnが多過ぎると鋼の焼入性が増加して現地溶接性、HAZ靱性を劣化させるだけでなく、連続鋳造鋼片の中心偏析を助長し、低温靱性も劣化させるので、上限を2.2%とした。
【0015】Nbは制御圧延において結晶粒の微細化や析出硬化に寄与し、鋼を強靱化する作用を有する。この効果を発揮させるための最小量として、その下限を0.01%とした。しかしNbを0.10%超添加すると、現地溶接性やHAZ靱性に悪影響をもたらすので、その上限を0.10%とした。
【0016】Ti添加は微細なTiNを形成し、スラブ再加熱時および溶接HAZのオ−ステナイト粒の粗大化を抑制してミクロ組織を微細化し、母材およびHAZの低温靱性を改善する。このようなTiNの効果を発現させるためには、最低0.005%のTi添加が必要である。しかしTi量が多過ぎると、TiNの粗大化やTiCによる析出硬化が生じ、低温靱性が劣化するので、その上限は0.03%に限定しなければならない。
【0017】さらに本発明では、不純物元素であるP,S,O量をそれぞれ、0.015%以下、0.003%以下、0.006%以下とする。この主たる理由は母材、HAZ靱性の低温靱性をより一層向上させるためである。P量の低減は連続鋳造スラブの中心偏析を低減し、粒界破壊を防止し低温靱性を向上させる。またS量の低減は延伸化したMnSを低減して延靱性を向上させる効果がある。O量の低減は鋼中の酸化物を少なくして、低温靱性の改善に効果がある。したがってP,S,O量は低いほど好ましい。
【0018】NはTiNを形成してスラブ再加熱時および溶接HAZのオ−ステナイト粒の粗大化を抑制して母材、HAZの低温靱性を向上させる。このために必要な最小量は0.001%である。しかし多過ぎるとスラブ表面疵や固溶NによるHAZ靱性の劣化の原因となるので、その上限は0.006%に抑える必要がある。
【0019】さらに、CEB=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15で定義されるCEB値を0.4〜0.6の範囲に限定する必要がある。CEB値が0.4未満では十分な強度が得られない。またCEB値が0.6を超えると強度が大きく上昇し、靭性の劣化が起こる。
【0020】一方、鋼管長手方向の溶接金属部の低温靱性は、(1)結晶粒のサイズ、(2)島状マルテンサイトなどの硬化相の分散状態など種々の冶金学的要因に支配される。とくに高強度化、厚肉化するほど合金元素の添加量は必然的に多くなり、焼入れ時の組織は上部ベイナイト主体の組織となり、従来の加熱温度においては結晶粒の粗大化と相まって靭性の劣化は避けられない。
【0021】そこで、Al、N,酸素およびTi量のバンランスを適正化することにより低温靱性を飛躍的に改善できることがわかった。すなわちP={1.5(O−0.89Al)+3.4N}−Tiで表される式において、P値が−0.010〜0.010%になるように各成分を適正化することにより、低温靱性が向上する。P値はTi量の過不足を示したもので、P値が低い(マイナス)場合にはTiが過剰に添加されていることになり、TiCなど析出硬化により低温靱性が劣化する。一方P値が高い(プラス)場合にはTi量が不足(または酸素量が過剰)しているために、低温靱性が劣化する。良好な低温靱性を得るためにはP値を−0.010〜0.010%にする必要がある。
【0022】溶接金属のCの下限0.03%は溶接金属部の強度、低温靱性の確保ならびにNb、V添加による析出硬化、結晶粒の微細化効果などを発揮させるための最小量である。しかしC量が多過ぎると低温靱性、現地溶接性の著しい劣化を招くので、上限を0.10%とした。
【0023】Siは溶接金属部において脱酸や強度向上のため添加する元素であるが、多く添加すると低温靱性を劣化させるので、上限を0.6%とした。溶接金属の脱酸はTiあるいはAlのみでも十分である。
【0024】Mnは強度、低温靱性を確保する上で不可欠な元素であり、その下限は0.8%である。しかしMnが多過ぎると鋼の焼入性が増加して現地溶接性、HAZ靱性を劣化させるだけでなく、連続鋳造鋼片の中心偏析を助長し、低温靱性も劣化させるので上限を2.2%とした。
【0025】Nbは制御圧延において結晶粒の微細化や析出硬化に寄与し、鋼を強靱化する作用を有する。この効果を発揮させるための最小量として、その下限を0.005%とした。しかしNbを0.05%以上添加すると、現地溶接性やHAZ靱性に悪影響をもたらすので、その上限を0.05%とした。
【0026】Ti添加は微細なTiNを形成し、スラブ再加熱時および溶接HAZのオ−ステナイト粒の粗大化を抑制してミクロ組織を微細化し、母材およびHAZの低温靱性を改善する。このようなTiNの効果を発現させるためには、最低0.005%のTi添加が必要である。しかしTi量が多過ぎると、TiNの粗大化やTiCによる析出硬化が生じ、低温靱性が劣化するので、その上限は0.03%に限定しなければならない。
【0027】Alは通常脱酸剤として鋼に含まれる元素で組織の微細化にも効果を有する。しかしAl量が0.05%を超えるとAl系非金属介在物が増加して鋼の清浄度を害するので、上限を0.05%とした。
【0028】NはTiNを形成して再加熱時のオ−ステナイト粒の粗大化を抑制して低温靱性を向上させる。このために必要な最小量は0.001%である。しかし多過ぎると固溶Nの増加による靱性の劣化の原因となるので、その上限は0.010%に抑える必要がある。
【0029】O量の低減は鋼中の酸化物を少なくして、低温靱性の改善に効果がある。したがってO量は低いほど好ましい。O量が多すぎると清浄度が劣化して、低温靱性が劣化するので、その上限の値は0.04%である。
【0030】さらに本発明では、不純物元素であるP、S量をそれぞれ、0.015%以下、0.01%以下とする。この主たる理由は母材、HAZ靱性の低温靱性をより一層向上させるためである。P量の低減は連続鋳造スラブの中心偏析を低減し、粒界破壊を防止し低温靱性を向上させる。またS量の低減は延伸化したMnSを低減して延靱性を向上させる効果がある。したがってP,S量は低いほど好ましい。
【0031】次にNi,Cu,Cr,Mo,Nb,V,B,Caを添加する理由について説明する。基本となる成分にさらにこれらの元素を添加する主たる目的は、本発明鋼の優れた特徴を損なうことなく、製造可能な板厚の拡大や母材の強度・靱性などの特性の向上をはかるためである。したがって、その添加量は自ら制限されるべき性質のものである。
【0032】Niを添加する目的は低炭素の本発明鋼の強度を低温靱性や現地溶接性を劣化させることなく向上させるためである。Ni添加はMnやCr、Mo添加に比較して圧延組織(特にスラブの中心偏析帯)中に低温靱性に有害な硬化組織を形成することが少なく、強度を増加させる。この効果を発揮させるために0.1%以上の添加が必要である。しかし、添加量が多すぎると経済性だけでなく、現地溶接性やHAZ靱性などを劣化させるので、その上限を1.0%とした。Niは連続鋳造時、熱間圧延時におけるCuクラックの防止にも有効である。
【0033】CuはNiとほぼ同様な効果を持つとともに、耐食性、耐水素誘起割れ特性の向上にも効果がある。またCu析出硬化によって強度を大幅に増加させる。この効果を発揮させるためには0.1%以上の添加が必要である。しかし過剰に添加すると析出硬化により母材、HAZの靱性低下や熱間圧延時にCuクラックが生じるので、その上限を1.0%とした。
【0034】Crは母材の強度を増加させる効果があり、この効果を発揮させるためには0.1%以上の添加が必要である。しかし、多過ぎると現地溶接性やHAZ靱性を著しく劣化させる。このためCr量の上限は1.0%である。
【0035】Moを添加する理由は母材、溶接部の強度を増加させる効果がある。Nbと共存して制御圧延時にオ−ステナイトの再結晶を強力に抑制し、オ−ステナイト組織の微細化にも効果がある。このような効果を得るためには、Moは最低0.1%必要である。しかし過剰なMo添加はHAZ靱性、現地溶接性を劣化させるので、その上限を1.0%とした。
【0036】Nbは結晶粒の微細化や析出硬化に寄与し、鋼を強靱化する作用を有する。この効果を発揮させるための最小量として、その下限を0.005%とした。しかしNbを0.05%以上添加すると、現地溶接性やHAZ靱性に悪影響をもたらすので、その上限を0.05%とした。
【0037】VはほぼNbと同様の効果を有する。この効果を発揮させるためには0.01%以上の添加が必要である。その上限は現地溶接性、HAZ靱性の点から0.10%まで許容できる。
【0038】Bは極微量で鋼の焼入れ性を飛躍的に高める。このような効果を得るためには、Bは最低でも0.0003%必要である。一方、過剰に添加すると、低温靱性を劣化させるだけでなく、かえってBの焼入れ性向上効果を消失せしめることもあるので、その上限を0.0030%とした。
【0039】Caは硫化物(MnS)の形態を制御し、低温靱性を向上(シャルピ−試験における吸収エネルギ−の増加など)させる。しかしCa量が0.001%未満では実用上効果がなく、また0.005%を超えて添加するとCaO−CaSが大量に生成してクラスタ−、大型介在物となり、鋼の清浄度を害するだけでなく、現地溶接性にも悪影響をおよぼす。このためCa添加量を0.001〜0.005%に制限した。
【0040】さらに、CEW=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15で定義されるCEW値を0.45〜0.75の範囲に限定する必要がある。CEB値が0.4未満では十分な強度が得られない。またCEB値が0.6を超えると強度が大きく上昇し、靭性の劣化が起こる。なお、上記成分を有する鋼の圧延方法として、制御圧延または制御圧延〜加速冷却することが望ましい。これはベンド管の袖部の強度と低温靱性を確保するためである。
【0041】次に製造条件の限定理由について説明する。本発明では、鋼管を800〜900℃の温度範囲に再加熱後、曲げ加工して、その後焼入れする必要がある。鋼管の加熱温度を800℃以上とする理由は、オ−ステナイト域で合金元素を十分に溶体化させ、強度と低温靱性を向上させるためである。しかし加熱温度が900℃を超えると、溶接金属において加熱時のオ−ステナイト粒が著しく成長し、結晶粒が大きくなって低温靱性の劣化を招いたり、ベンド管の所定の寸法が得られなくなるためである。このため加熱温度の上限は900℃とした。
【0042】加熱後、鋼管を曲げ加工して、その直後に焼入れ処理する必要がある。これは曲げ加工後直ちに焼入れ処理することにより高強度と優れた低温靱性を得るためである。曲げ加工後、直ちに焼入れしないと鋼管の温度が低下して、フェライトなどの生成により高強度化が達成できない。なお、焼入れ処理時の冷却速度は10℃/秒以上が望ましい。
【0043】
【実施例】種々の成分を有する鋼板を溶接して鋼管を製造した。成形方法はUOEおよびBR(ベンディングロ−ル)である。その後、種々の溶接金属成分を有する鋼管からベンド管を製造して、諸性質を調査した。機械的性質は圧延と直角方向で調査した。母材及び溶接金属の成分、鋼管の製造法、ベンド条件、及び母材及び溶接金属の機械的性質を表1(表1−1、表1−2)及び表2に示す。表から明らかなように、本発明の鋼管は優れた強度・低温靱性を有する。
【0044】これに対して比較鋼は、化学成分または鋼管製造条件が適切でなく、いずれかの特性が劣る。すなわち、鋼6は母材のC量が多過ぎるため、母材の低温靱性が悪い。鋼7は母材のMn量が高過ぎるため、母材の低温靱性が悪い。鋼8は母材のAl量が多過ぎるため、HAZの低温靱性が悪い。鋼9は母材のCEB値が小さいため、十分な強度が得られない。鋼10は母材のCEB値が大きいため、強度が著しく上昇し、低温靭性も悪い。
【0045】鋼11は溶接金属のC量が多過ぎるため、溶接金属の低温靱性が悪い。鋼12は溶接金属のMn量が少な過ぎるため溶接金属の低温靱性が悪い。鋼13はP値が小さすぎるため、溶接金属の低温靱性が悪い。鋼14はP値が高すぎるため溶接金属の低温靱性が悪い。鋼15は鋼管の再加熱温度が高すぎるため、低温靱性が悪い。鋼16は鋼管の再加熱温度が低すぎるため強度が低い。鋼17は曲げ加工後空冷したために強度が低い。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
【発明の効果】本発明により低温靱性に優れた高強度ベンド管(API規格X80以上)が安定して製造できるようになった。その結果、パイプラインの輸送効率の向上が可能となった。
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区大手町2丁目6番3号
【出願日】 平成14年5月20日(2002.5.20)
【代理人】 【識別番号】100062421
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弘明 (外1名)
【公開番号】 特開2003−342638(P2003−342638A)
【公開日】 平成15年12月3日(2003.12.3)
【出願番号】 特願2002−144991(P2002−144991)