| 【発明の名称】 |
履帯ブッシュとその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】高山 武盛 【住所又は居所】大阪府枚方市上野3丁目1−1 株式会社小松製作所生産技術開発センタ内
【氏名】大石 真之 【住所又は居所】大阪府枚方市上野3丁目1−1 株式会社小松製作所生産技術開発センタ内
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| 【要約】 |
【課題】オイル封入履帯としてのオイル封入性の確保、衝撃的な過酷な負荷に対する優れた靭性の確保、耐摩耗性および摩耗寿命の改善を図り、かつより安価な製造方法を提供する。
【解決手段】全体加熱された履帯ブッシュ5の外周面もしくは内周面の一方からの冷却を先行した後に、全周面を冷却することや、先行冷却中にその反対面からの高周波加熱を実施することなどの手段によって、外周面硬化層2、端面焼入れ硬化層4および内周面に焼戻しマルテンサイト硬化層6が形成され、外周面硬化層2と内周面焼戻しマルテンサイト硬化層6との間に形成される軟質層1がフェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトおよび焼戻しマルテンサイト組織の1種以上からなり、この軟質層が端面部内周面に繋がっている構成とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも、炭素が0.35〜1.2重量%の範囲で含有される炭素鋼および/または低合金鋼からなる履帯ブッシュにおいて、その外周面、両端面部が焼入れ硬化されるとともに、その内周面も焼入れ硬化され、それら焼入れ硬化層の中間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織の軟質な未焼入れ層が形成されていることを特徴とする履帯ブッシュ。 【請求項2】 前記履帯ブッシュの素材用鋼材において、その焼入性が、履帯ブッシュ内周面と外周面から同時に水冷却することによって、その肉厚全体がHRC45以上に焼入れ硬化されるように合金元素が調整されていることを特徴とする請求項1に記載の履帯ブッシュ。 【請求項3】 外周面焼入れ硬化層、両端面焼入れ硬化層および内周面焼入れ硬化層が連続的につながり、かつ、軟質な未焼入れ層がその肉厚内部に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の履帯ブッシュ。 【請求項4】 外周面焼入れ硬化層と両端面焼入れ硬化層が連続的につながり、かつ、その肉厚内部に形成される軟質層が内周面につながっていることを特徴とする請求項1または2に記載の履帯ブッシュ。 【請求項5】 内周面焼入れ硬化層と両端面焼入れ硬化層が連続的につながり、かつ、その肉厚内部に形成される軟質層が外周面につながっていることを特徴とする請求項1または2に記載の履帯ブッシュ。 【請求項6】 履帯リンクに圧入される部位の外径よりもスプロケットと噛合う部位の外径を大きくし、摩耗寿命を改善する目的で使用される段付き履帯ブッシュにおいて、その外周面焼入れ硬化層深さが内周面にほぼ平行に形成されていることを特徴とする請求項4または5に記載の履帯ブッシュ。 【請求項7】 前記履帯ブッシュにおいて、その素材全体をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、その履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないように履帯ブッシュの両端面部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、(1)内、外周面、端面からの冷却をほぼ同時に実施し、所定時間後に内周面冷却を途中で止める一連の焼入れ作業、(2)ほぼ同時に実施する内、外周面、端面からの冷却を、途中で1回以上一時止めて、所定時間後に再冷却を実施する一連の焼入れ作業等の履帯ブッシュ肉厚中心部における冷却速度が内外周面からの同時冷却時の冷却速度よりも遅くする焼入れ作業を実施することによって外周面焼入れ硬化層、両端面焼入れ硬化層および内周面焼入れ硬化層が連続的につながって形成され、その肉厚内部にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の履帯ブッシュ。 【請求項8】 前記履帯ブッシュにおいて、その素材全体をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、その履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないようにブッシュの両端面の内周面側部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、(1)外周面および端面からの冷却を先行して実施し,所定時間後に内周面からの冷却を施す一連の焼入れ作業、(2)前記(1)の一連の焼入れ作業中に、外周面及び端面からの先行冷却を所定時間停止して後に再冷却を実施する一連の焼入れ作業等の履帯ブッシュ肉厚中心部における冷却速度が内外周面からの同時冷却時の冷却速度よりも遅くする焼入れ作業を実施することによって外周面焼入れ硬化層とそれにつながる両端面焼入れ硬化層および内周面焼入れ硬化層が形成され、さらに、それらの硬化層の間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が残されたことを特徴とする請求項4に記載の履帯ブッシュ。 【請求項9】 前記履帯ブッシュにおいて、その素材全体をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、その履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないようにブッシュの両端面の外周面側部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、(1)内周面および端面からの冷却を先行して実施し,所定時間後に外周面からの冷却を施す一連の焼入れ作業、(2)前記(1)の一連の焼入れ作業中に、内周面及び端面からの先行冷却を所定時間停止して後に再冷却を実施する一連の焼入れ作業等の履帯ブッシュ肉厚中心部における冷却速度が内外周面からの同時冷却時の冷却速度よりも遅くする焼入れ作業を実施することによって内周面焼入れ硬化層とそれにつながる両端面焼入れ硬化層および外周面焼入れ硬化層が形成され、さらに、それらの硬化層の間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が残されたことを特徴とする請求項5または6に記載の履帯ブッシュ。 【請求項10】 前記履帯ブッシュにおいて、その履帯ブッシュ素材の内周面からの高周波加熱が出来るとともに、履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないようにブッシュの両端面の内周面側部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、1個以上の円筒状履帯ブッシュ素材を円筒軸中心に回転させながらその内周面側から高周波誘導加熱によって、その履帯ブッシュ素材をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、高周波加熱を継続しながら外周面と端面からの冷却を先行実施し,所定時間後、高周波加熱を止めて内周面からの冷却を施す一連の焼入れ作業によって、外周面焼入れ硬化層とそれにつながる両端面焼入れ硬化層および内周面焼入れ硬化層が形成され、それらの硬化層の中間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が残されてなることを特徴とする請求項4または6に記載の履帯ブッシュ。 【請求項11】 前記履帯ブッシュにおいて、その履帯ブッシュ素材の内周面からの高周波加熱が出来るとともに、履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないようにブッシュの両端面の外周面側部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、1個以上の円筒状履帯ブッシュ素材を円筒軸中心に回転させながらその内周面側から高周波誘導加熱によって、少なくともその履帯ブッシュ素材をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、高周波加熱を継続しながら外周面からの冷却を先行実施し,所定時間後、高周波加熱を止めて内周面と端面からの冷却を施す一連の焼入れ作業によって、内周面焼入れ硬化層とそれにつながる両端面焼入れ硬化層および外周面焼入れ硬化層が形成され、それらの硬化層の中間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が残されてなることを特徴とする請求項5または6に記載の履帯ブッシュ。 【請求項12】 前記履帯ブッシュにおいて、その履帯ブッシュ素材の外周面からの高周波加熱が出来るとともに、履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないようにブッシュの両端面の内周面側部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、1個以上の円筒状履帯ブッシュ素材を円筒軸中心に回転させながらその外周面側から高周波誘導加熱によって、その履帯ブッシュ素材をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、高周波加熱を継続しながら内周面からの冷却を先行実施し、所定時間後に外周面の加熱を止めて外周面と端面からの冷却を施す一連の焼入れ作業によって、外周面焼入れ硬化層とそれにつながる両端面焼入れ硬化層および内周面焼入れ硬化層が形成され、それらの硬化層の中間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が残されてなることを特徴とする請求項4または6に記載の履帯ブッシュ。 【請求項13】 前記履帯ブッシュにおいて、その履帯ブッシュ素材の外周面からの高周波加熱が出来るとともに、履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないようにブッシュの両端面の外周面側部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、1個以上の円筒状履帯ブッシュ素材を円筒軸中心に回転させながらその外周面側から高周波誘導加熱によって、その履帯ブッシュ素材をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、高周波加熱を継続しながら内周面と端面からの冷却を先行実施し、所定時間後に外周面の加熱を止めて外周面と端面からの冷却を施す一連の焼入れ作業によって、内周面焼入れ硬化層とそれにつながる両端面焼入れ硬化層および外周面焼入れ硬化層が形成され、それらの硬化層の中間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が残されてなることを特徴とする請求項5または6に記載の履帯ブッシュ。 【請求項14】 前記一連の焼入れ作業において、内周面および/または外周面の冷却を一時的に止めることによる肉厚中心部からの熱拡散および/または内周面または外周面からの高周波加熱による外周面および/または内周面焼き入れ硬化層の焼戻しを実施することを特徴とする請求項7〜13のいずれかに記載の履帯ブッシュ。 【請求項15】 肉厚全体がスルーハード化された履帯ブッシュ素材を用い、外周面からの高周波加熱中に内周面の冷却を行い、外周面からの冷却によって、外周面硬化層とその硬化層に繋がった端面焼入れ硬化層と、内周面に焼戻しマルテンサイト硬化層が形成され、前記外周面硬化層と内周面焼戻しマルテンサイト硬化層との間に形成される軟質層がフェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトおよび焼戻しマルテンサイト組織の1種以上からなり、この軟質層が端面部内周面側および内周面に繋がっていることを特徴とする請求項4または6に記載の履帯ブッシュ。 【請求項16】 内周面に焼入れ硬化層が形成された履帯ブッシュ素材を用い、外周面からの高周波加熱中に内周面の冷却を行い、外周面からの冷却によって、外周面硬化層とその硬化層に繋がった端面焼入れ硬化層と、内周面に焼戻しマルテンサイト硬化層が形成され、前記外周面硬化層と内周面焼戻しマルテンサイト硬化層との間に形成される軟質層がフェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトおよび焼戻しマルテンサイト組織の1種以上からなり、この軟質層が端面部内周面側および内周面に繋がっていることを特徴とする請求項4または6に記載の履帯ブッシュ。 【請求項17】 前記外周面および両端面部を焼入れ硬化した履帯ブッシュにおいて、その焼入れ硬化層表面硬さがHRC50〜65に調整され、かつ、その内周面焼入れ硬化層表面がHRC30〜45の微細な粒状セメンタイトが分散した高靭性の焼戻しマルテンサイト組織であることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の履帯ブッシュ。 【請求項18】 少なくとも炭素が0.35〜1.2重量%の範囲で含有される炭素鋼および/または低合金鋼からなり、かつ、肉厚全体がHRC30〜45未満の硬さに調整された履帯ブッシュ素材を外周面からの高周波加熱、焼入れ法によって、外周面焼入れ硬化層とそれに連続的につながる端面焼入れ硬化層が形成されることを特徴とする履帯ブッシュ。 【請求項19】 前記外周面からの高周波加熱中に内周面を冷却することによって、外周面焼入れ硬化層深さを肉厚さの30〜80%まで深くして履帯ブッシュの摩耗寿命を改善したことを特徴とする請求項18に記載の履帯ブッシュ。 【請求項20】 履帯ブッシュ両端面のシール平坦部の焼入れ硬化部分を避けて、その履帯ブッシュ内周面を高周波焼入れし、内周面焼入れ硬化層深さが肉厚さの5〜15%で、履帯ブッシュ肉厚内部に形成される軟質層が履帯ブッシュ両端面のシール平坦部を避けて、両端面近傍の内周面に繋がって形成されるとともに、内周面において30kg/mm2以上の圧縮残留応力が発生していることを特徴とする請求項18または19に記載の履帯ブッシュ。 【請求項21】 150℃以上の焼戻し処理が施され、高周波焼入れ硬化層表面の硬さがHRC50以上で、かつ、両端面部の焼入れ硬化深さが0.5mm以上であることを特徴とする請求項1〜20のいずれかに記載の履帯ブッシュ。 【請求項22】 少なくとも炭素が0.35〜1.2重量%の範囲で含有される炭素鋼および/または低合金鋼からなり、外周面または外周面と内周面に焼入れ硬化層が形成されるとともに、HRC45未満の軟質層が肉厚中心部から内周面にかけて形成されるか、または、外周面硬化層と内周面硬化層の間に形成され、その軟質層が両端面部に繋がっている履帯ブッシュの両端面部を高周波焼入れ法で硬化し、その軟質層が履帯ブッシュの外周面または外周面と内周面に繋がっていることを特徴とする履帯ブッシュ。 【請求項23】 前記両端面部が高周波焼入れ硬化された履帯ブッシュにおいて、前記外周面またはその外周面と内周面に高周波焼入れによる硬化層が形成され、その内周面硬化層および外周面硬化層と高周波焼入れしてなる端面部硬化層がそれぞれ重なる部位において焼戻しマルテンサイト組織の軟質層が存在していることを特徴とする請求項22に記載の履帯ブッシュ。 【請求項24】 前記両端面部が高周波焼入れ硬化された履帯ブッシュにおいて、履帯ブッシュの内周面および/または外周面の硬化層が両端面部において未焼入れ層を残し、後工程の両端面部の焼入れ硬化層と重ならないように高周波焼入れされていることを特徴とする請求項22に記載の履帯ブッシュ。 【請求項25】 前記両端面部が高周波焼入れ硬化された履帯ブッシュにおいて、1個以上の履帯ブッシュ素材が、A1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱された後、(1)高周波加熱を止めて、内周面もしくは外周面のどちらか一方からの冷却を先行して実施し、所定時間後にそれらの反対面(外周面もしくは内周面)からの冷却を施す一連の焼入れ作業、(2)履帯ブッシュ外周面からの前記高周波全体加熱後、高周波加熱を継続しながら内周面からの冷却を先行実施し、所定時間後に外周面の加熱を止めて外周面からの冷却を施す一連の焼入れ作業、(3)履帯ブッシュ内周面からの前記高周波全体加熱後、高周波加熱を継続しながら外周面からの冷却を先行実施し、所定時間後に内周面の加熱を止めて外周面からの冷却を施す一連の焼入れ作業のいずれかの焼入れ作業を施されることによって、その外周面と内周面に焼入れ硬化層が形成され、その両焼入れ硬化層間に形成される軟質な未焼入れ層が両端面部につながっていることを特徴とする請求項22〜24のいずれかに記載の履帯ブッシュ。 【請求項26】 前記一連の焼入れ作業のいずれかにおいて、(1)その作業途中で内周面側および/または外周面側の冷却を一時止めるかもしくは止めて、履帯ブッシュ内に残る残熱で内周面側硬化層を焼戻す一連の焼入れ作業、または(2)外周面側もしくは内周面側からの高周波加熱により、少なくとも、内周面焼入れ硬化層を焼戻したことを特徴とする請求項25に記載の履帯ブッシュ。 【請求項27】 前記履帯ブッシュにおいて、内周面焼入れ硬化層がHRC30〜45未満に焼戻されていることを特徴とする請求項26に記載の履帯ブッシュ。 【請求項28】 両端面部が焼入れ硬化された履帯ブッシュにおいて、両端面部近傍の内周面および/または外周面に形成されるマルテンサイトの焼戻し軟質層における履帯ブッシュ軸方向残留応力が圧縮応力であることを特徴とする請求項22〜27のいずれかに記載の履帯ブッシュ。 【請求項29】 両端面部が焼入れ硬化された履帯ブッシュにおいて、両端面部近傍の内周面および/または外周面に形成されるマルテンサイトの焼戻し軟質層または未焼入れ軟質層が、履帯ブッシュを履帯リンクに圧入する際の履帯ブッシュ外周面の圧入開始部を避けて形成されるとともに、その圧入開始部がHRC40以下になることを防止する請求項22〜28のいずれかに記載の履帯ブッシュ。 【請求項30】 履帯ブッシュの両端面部に高周波焼入れを実施する前処理として、150℃以上の焼戻し処理を施すことを特徴とする請求項22〜29のいずれかに記載の履帯ブッシュ。 【請求項31】 履帯ブッシュの最大摩耗部において、内、外周面表面硬さがHRC50以上で、外周面側硬化層深さが履帯ブッシュ肉厚さの30〜80%で、両端面部焼入れ硬化層を未焼戻し状態にしてその硬化層硬さが内、外周面硬化層より硬く、HRC52以上で、硬化深さが0.5mm以上である請求項22〜30のいずれかに記載の履帯ブッシュ。 【請求項32】 履帯ブッシュ両端面の高周波焼入れ硬化層に接して形成される前記マルテンサイトの焼戻し軟質層または未焼入れ層が繋がる外周面および外周面と内周面とにショットピーニングを施すことを特徴とする請求項22〜31のいずれかに記載の履帯ブッシュ。 【請求項33】 履帯ブッシュの両端面部近傍の形状において、内周面側の面取り部を外周面側の面取り部より大きくすることを特徴とする請求項1〜32のいずれかに記載の履帯ブッシュ。 【請求項34】 履帯リンクに圧入される前記履帯ブッシュの部位における外周面および/または内周面において、ショットピーニング処理などの機械的加工処理を施して、最表面部をより高硬度にし、かつ圧縮残留応力を付加することを特徴とする請求項1〜33のいずれかに記載の履帯ブッシュ。 【請求項35】 内周面および外周面に燐酸塩皮膜などの化成処理を施すことを特徴とする請求項1〜34のいずれかに記載の履帯ブッシュ。 【請求項36】 少なくとも炭素が0.35〜1.2重量%の範囲で含有し、その焼入性が、履帯ブッシュをA1もしくはA3温度以上に全体加熱した後、その内周面と外周面から同時に水冷却することによって、その肉厚全体がHRC45以上に焼入れ硬化されるように合金元素が調整されている炭素鋼および/または低合金鋼からなる履帯ブッシュ素材を用いて、その全体をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、その履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないように履帯ブッシュの両端面部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、(1)内、外周面、端面からの冷却をほぼ同時に実施し、所定時間後に内周面冷却を途中で止める一連の焼入れ作業、(2)ほぼ同時に実施する内、外周面、端面からの冷却を、途中で1回以上一時止めて、所定時間後に再冷却を実施する一連の焼入れ作業等の履帯ブッシュ肉厚中心部における冷却速度が内外周面からの同時冷却時の冷却速度よりも遅くする焼入れ作業を実施することによって外周面焼入れ硬化層、両端面焼入れ硬化層および内周面焼入れ硬化層が連続的につながって形成され、その肉厚内部にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が形成されるようにしたことを特徴とする履帯ブッシュの製造方法。 【請求項37】 履帯ブッシュ素材を用いて、その全体をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、その履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないようにブッシュの両端面の内周面側部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、(1)外周面および端面からの冷却を先行して実施し,所定時間後に内周面からの冷却を施す一連の焼入れ作業、(2)前記(1)の一連の焼入れ作業中に、外周面及び端面からの先行冷却を所定時間停止して後に再冷却を実施する一連の焼入れ作業等の履帯ブッシュ肉厚中心部における冷却速度が内外周面からの同時冷却時の冷却速度よりも遅くする焼入れ作業を実施することによって外周面焼入れ硬化層とそれにつながる両端面焼入れ硬化層および内周面焼入れ硬化層が形成され、さらに、それらの硬化層の間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が形成されるとともにその軟化層が両端面近傍の内周面につながるようにしたことを特徴とする履帯ブッシュの製造方法。 【請求項38】 履帯ブッシュ素材を用いて、その全体をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、その履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないようにブッシュの両端面の外周面側部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、(1)内周面および端面からの冷却を先行して実施し,所定時間後に外周面からの冷却を施す一連の焼入れ作業、(2)前記(1)の一連の焼入れ作業中に、内周面及び端面からの先行冷却を所定時間停止して後に再冷却を実施する一連の焼入れ作業等の履帯ブッシュ肉厚中心部における冷却速度が内外周面からの同時冷却時の冷却速度よりも遅くする焼入れ作業を実施することによって内周面焼入れ硬化層とそれにつながる両端面焼入れ硬化層および外周面焼入れ硬化層が形成され、さらに、それらの硬化層の間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が形成されるとともにその軟化層が両端面近傍の外周面につながるようにしたことを特徴とする履帯ブッシュの製造方法。 【請求項39】 履帯ブッシュ素材の内周面からの高周波加熱が出来るとともに、履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないようにブッシュの両端面の内周面側部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、1個以上の円筒状履帯ブッシュ素材を円筒軸中心に回転させながらその内周面側から高周波誘導加熱によって、その履帯ブッシュ素材をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、高周波加熱を継続しながら外周面と端面からの冷却を先行実施し,所定時間後、高周波加熱を止めて内周面からの冷却を施す一連の焼入れ作業によって、外周面焼入れ硬化層とそれにつながる両端面焼入れ硬化層および内周面焼入れ硬化層が形成され、それらの硬化層の中間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が形成されるとともにその軟化層が両端面近傍の内周面につながるようにしたことを特徴とする履帯ブッシュの製造方法。 【請求項40】 履帯ブッシュ素材を用いて、その内周面からの高周波加熱が出来るとともに、履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないようにブッシュの両端面の外周面側部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、1個以上の円筒状履帯ブッシュ素材を円筒軸中心に回転させながらその内周面側から高周波誘導加熱によって、少なくともその履帯ブッシュ素材をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、高周波加熱を継続しながら外周面からの冷却を先行実施し,所定時間後、高周波加熱を止めて内周面と端面からの冷却を施す一連の焼入れ作業によって、内周面焼入れ硬化層とそれにつながる両端面焼入れ硬化層および外周面焼入れ硬化層が形成され、それらの硬化層の中間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が形成されるとともにその軟化層が両端面近傍の外周面につながるようにしたことを特徴とする履帯ブッシュの製造方法。 【請求項41】 履帯ブッシュ素材を用いて、その外周面からの高周波加熱が出来るとともに、履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないようにブッシュの両端面の内周面側部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、1個以上の円筒状履帯ブッシュ素材を円筒軸中心に回転させながらその外周面側から高周波誘導加熱によって、その履帯ブッシュ素材をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、高周波加熱を継続しながら内周面からの冷却を先行実施し、所定時間後に外周面の加熱を止めて外周面と端面からの冷却を施す一連の焼入れ作業によって、外周面焼入れ硬化層とそれにつながる両端面焼入れ硬化層および内周面焼入れ硬化層が形成され、それらの硬化層の中間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が形成されるとともにその軟化層が両端面近傍の内周面につながるようにしたことを特徴とする履帯ブッシュの製造方法。 【請求項42】 履帯ブッシュ素材を用いて、その外周面からの高周波加熱が出来るとともに、履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないようにブッシュの両端面の外周面側部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、1個以上の円筒状履帯ブッシュ素材を円筒軸中心に回転させながらその外周面側から高周波誘導加熱によって、その履帯ブッシュ素材をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、高周波加熱を継続しながら内周面と端面からの冷却を先行実施し、所定時間後に外周面の加熱を止めて外周面と端面からの冷却を施す一連の焼入れ作業によって、内周面焼入れ硬化層とそれにつながる両端面焼入れ硬化層および外周面焼入れ硬化層が形成され、それらの硬化層の中間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が形成されるとともにその軟化層が両端面近傍の外周面につながるようにしたことを特徴とする履帯ブッシュの製造方法。 【請求項43】 履帯ブッシュの全体加熱が高周波加熱によって実施され、かつ、少なくとも、小径長尺な履帯ブッシュ内周面が、その履帯ブッシュの内径よりも小さな外径を有する導入管を内周面側に配し、この導入管にて流入される冷却媒体を壁面によって方向転換し、その導入管外周面と履帯ブッシュ内周面とに挟まれる空間に履帯ブッシュ軸心方向にほぼ平行に流すことによって行う(層流)冷却方法であることを特徴とする請求項36〜42のいずれかに記載の履帯ブッシュの製造方法。 【請求項44】 前記一連の焼入れ作業において、内周面および/または外周面の冷却を一時的に止めることによって、肉厚中心部からの熱拡散および/または内周面または外周面からの高周波加熱による外周面および/または内周面焼き入れ硬化層の焼戻しを実施することを特徴とする請求項36〜42のいずれかに記載の履帯ブッシュの製造方法。 【請求項45】 履帯ブッシュ素材を用いて、(1)その肉厚全体がHRC45以上の硬さにスルーハード化されるように焼入れ硬化または焼入れ焼戻しし、(2)外周面からの高周波加熱中にその熱拡散を利用した内周面部の焼戻しを施すようにその履帯ブッシュの内周面を冷却し、外周面からの焼入れを施すことによって外周面硬化層とその硬化層に繋がった端面焼入れ硬化層を形成するとともに、内周面に焼戻しマルテンサイト硬化層を形成し、さらに、外周面硬化層と内周面焼戻しマルテンサイト硬化層の間に形成される軟質層がフェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトおよび焼戻しマルテンサイト組織の1種以上からなり、その軟質層が端面部内周面側および内周面に繋がるようにしたことを特徴とする履帯ブッシュの製造方法。 【請求項46】 履帯ブッシュ素材を用いて、(1)履帯ブッシュ内周面が焼入れ硬化されるように高周波焼入れおよび/または高周波焼入れ焼戻しし、移動しながらかもしくは全体を同時に(2)外周面からの高周波加熱中にその熱拡散を利用した内周面部の焼戻しを施すようにその履帯ブッシュの内周面を冷却し、外周面と端面からの焼入れを施すことによって、外周面硬化層とその硬化層に繋がった端面焼入れ硬化層を形成するとともに、内周面に焼戻しマルテンサイト硬化層を形成し、外周面硬化層と内周面焼戻しマルテンサイト硬化層の間に形成される軟質層がフェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトおよび焼戻しマルテンサイト組織の1種以上からなり、その軟質層が端面部内周面側および内周面に繋がるようにしたことを特徴とする履帯ブッシュの製造方法。 【請求項47】 前記履帯ブッシュの製造方法において、その内周面および/または外周面の冷却を一時的に止めることと肉厚中心部からの熱拡散および/または内周面または外周面からの高周波加熱することのいずれか一方もしくは両方によって、外周面および/または内周面焼き入れ硬化層の焼戻しを実施するその焼入れ硬化層表面硬さがHRC50〜65に調整され、かつ、その内周面焼入れ硬化層表面がHRC35〜45の高靭性の焼戻しマルテンサイト組織もしくはその組織中に粒状セメンタイトが分散するようにしたことを特徴とする請求項36〜46のいずれかに記載の履帯ブッシュの製造方法。 【請求項48】 履帯ブッシュ素材を用いて、肉厚全体をHRC35〜45未満の硬さに調整した後、外周面からの高周波加熱、焼入れ法によって、外周面焼入れ硬化層とそれに連続的につながる端面焼入れ硬化層が形成されることを特徴とする履帯ブッシュの製造方法。 【請求項49】 前記履帯ブッシュの製造方法において、履帯ブッシュ両端面のシール平坦部の焼入れ硬化部分が軟化するのを避けて、その履帯ブッシュ内周面を高周波焼入れし、内周面焼入れ硬化層深さが肉厚さの5〜15%で、履帯ブッシュ肉厚内部に形成される軟質層が履帯ブッシュ両端面のシール平坦部を避けて、両端面近傍の内周面に繋がって形成されるとともに、内周面において30kg/mm2以上の圧縮残留応力が発生していることを特徴とする請求項48に記載の履帯ブッシュの製造方法。 【請求項50】 前記外周面からの高周波加熱中に内周面を冷却することによって、外周面焼入れ硬化層深さを肉厚さの30〜80%まで深くして履帯ブッシュの摩耗寿命を改善することを特徴とする請求項45〜49のいずれかに記載の履帯ブッシュの製造方法。 【請求項51】 150℃以上の焼戻し処理が施され、外周面焼入れ硬化層表面の硬さがHRC50〜65で、かつ、両端面部の焼入れ硬化深さが0.5mm以上にすることを特徴とする請求項36〜50のいずれかに記載の履帯ブッシュの製造方法。 【請求項52】 少なくとも炭素が0.35〜1.2重量%の範囲で含有される炭素鋼および/または低合金鋼からなり、外周面および内周面から肉厚中心部に向かって焼入れ硬化され、その肉厚中心部付近に形成される未硬化層が両端面部に繋がっている履帯ブッシュの両端面部を焼入れ硬化することを特徴とする履帯ブッシュの製造方法。 【請求項53】 前記外周面、内周面および両端面は高周波焼入れによって焼入れ硬化される請求項52に記載の履帯ブッシュの製造方法。 【請求項54】 前記外周面および内周面を高周波焼入れする際に、後の端面部の高周波焼入れ硬化層と重ならないように、未焼入れ層を残して焼入れされる請求項53に記載の履帯ブッシュの製造方法。 【請求項55】 両端面部の焼入れに供する履帯ブッシュにおいては、1個以上の履帯ブッシュ素材をその外周面側からの高周波加熱によって、少なくともその履帯ブッシュ素材の内周面温度を焼入れ硬化可能な温度に加熱した後、(1)高周波加熱を止めて内周面からの冷却を先行して実施し、所定時間後に外周面からの冷却を施す一連の焼入れ作業、(2)高周波加熱を継続しながら内周面からの冷却を先行実施し、所定時間後に外周加熱を止めて外周面からの冷却を施す一連の焼入れ作業、(3)前記(1)、(2)の焼入れ作業において、その作業途中で内周面側の冷却を止めて、履帯ブッシュ内に残る残熱で内周面側硬化層を焼戻す一連の焼入れ作業のいずれかの焼入れ作業によって、外周面および内周面から肉厚中心部に向かって焼入れ硬化層を形成するか、または、内周面部にHRC45未満の焼戻し層を形成し、内周面および外周面間に軟質な未焼入れ層が残されてなり、両焼入れ層間の軟質組織が焼入れ温度からの冷却過程で析出するフェライト、パーライト、ベイナイトおよびマルテンサイトのうちの1種以上の組織またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなることを特徴とする請求項52〜54のいずれかに記載の履帯ブッシュの製造方法。 【請求項56】 前記履帯ブッシュの両端面部が個別に高周波焼入れされた履帯ブッシュにおいて、両端面部近傍の内周面および/または外周面に形成されるマルテンサイトの焼戻し軟質層または未焼入れ軟質層が、履帯ブッシュを履帯リンクに圧入する際の履帯ブッシュ外周面の圧入開始部を避けて形成されるとともに、その圧入開始部がHRC45以下に焼戻ることを防止することを特徴とする請求項52〜55のいずれかに記載の履帯ブッシュの製造方法。 【請求項57】 前記履帯ブッシュの両端面部に高周波焼入れを実施する前処理として、150℃以上の焼戻し処理を施すことを特徴とする請求項52〜56のいずれかに記載の履帯ブッシュの製造方法。 【請求項58】 履帯ブッシュ両端面の高周波焼入れ硬化層に接して形成される前記軟質な焼戻しマルテンサイト組織層または未焼入れ層が繋がる外周面位置および内周面位置をショットピーニングすることを特徴とする請求項52〜57のいずれかに記載の履帯ブッシュの製造方法。 【請求項59】 履帯ブッシュの内周面および外周面に燐酸塩皮膜などの化成処理を施すことを特徴とする請求項36〜58のいずれかに記載の履帯ブッシュの製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、建設機械などに使用される履帯ブッシュおよびその製造方法に関するものであり、より詳しくは耐摩耗性、耐衝撃疲労性に優れたオイル封入式履帯ブッシュとそれをより低コストで生産する製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来、建設機械の履帯51は図26に示されるような各部品群で構成されており、とりわけ履帯ブッシュ52は、終減速装置からの回転運動を伝えるスプロケットティースと噛み合い、履帯51を回転させる機能を持つことから、外周面においては耐摩耗性が要求されるとともに、これに加わる負荷に耐えるために、内周面において強度と靭性とが要求される。 【0003】また、ブルドーザのように高速で走る履帯では、履帯ピン53と履帯ブッシュ52との焼付きを防止するために、これらの隙間に潤滑油を介在させたオイル封入履帯が使われており、この場合には、スプロケットと直接接触する外周面の耐摩耗性だけでなく、図27に示されるように、履帯ブッシュの両端部平坦面(シール平坦部)61とダストシール62で潤滑油をシールする必要から、少なくともブッシュ端面のシール平坦部61でのダストシール62当たり位置の範囲(外周面から肉厚の約1/2までが摩耗後の当たり位置)が焼入れによって十分に硬化されていることが必要である。 【0004】これらの必要特性を満足させるために、従来、この履帯ブッシュの製造に際しては、次に示されるような方法が実施されている。 ■肌焼鋼に浸炭処理を施して、内外周面およびその両端面部に高硬度なマルテンサイトを形成し、耐摩耗性と強度およびオイルシール性を確保するようにしたもの(例えば特公昭52−34806号公報参照)。 ■焼入れ性向上元素を含有する炭素鋼を履帯ブッシュに成形加工し、全体を焼入れした後更にその履帯ブッシュの内周面のみを誘導加熱により焼入れすることによって、その外周面、端面および内周面に焼入れ硬化層を形成させ、それらの焼き入れ硬化層の間に高靭性な焼入れ焼戻し軟化層を形成し、その軟化層が履帯ブッシュ両端面近傍の内周面につながるようにする履帯ブッシュの製造方法が特公平3−69969号公報に開示されている。また、特開2001−98326号公報においても、履帯ブッシュの肉厚全体を焼入れ硬化し、その内周面のみから誘導焼入れを施し、肉厚中心部に形成される焼入れ焼戻し軟化層がその両端面の近傍の内周面につながって形成する履帯ブッシュの製造方法を開示している。 ■さらに、履帯ブッシュの内周面用冷却媒体と外周面用冷却媒体を仕切り治具で分離できる焼入れ装置を使って、中炭素鋼のブッシュ素材を一旦焼入れ処理が可能な温度以上に高周波加熱し、内周面を先行冷却した所定時間後に外周面からの冷却を始めるか、もしくは高周波加熱によって外周面を加熱しながら内周面冷却を行い、所定時間後に外周面加熱を止めて、外周面冷却を行うことの一連の焼入れ操作によって、履帯ブッシュの外周面および内周面から肉厚中心部に向かって焼入れ硬化層を形成して、各両焼入れ硬化層間に軟質な未焼入れ層を残すようなU字型のスムーズな硬度分布をもち、さらに、外周面部からの硬化層深さを内周面からの硬化層深さに比べてより深く形成し、かつ、仕切り治具の工夫によって端面部を端面幅の1/2以上に硬化した耐摩耗性に優れたオイル封入式履帯ブッシュとその安価な製造方法が、特開平11−61264号公報および特開平11−236619号公報に開示されている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記■の浸炭法で作られる履帯ブッシュは、その端面部も均一に浸炭硬化されるのでオイル封入用ブッシュとしての両端面部の耐摩耗性は良いが、外周円筒面での耐摩耗性を高めるために浸炭硬化層を深くする必要があるため、浸炭時間を長くかかるとともに、浸炭ガスの大量使用等によるコスト面での問題がある。例えばブッシュの肉厚が厚くなる大型履帯ブッシュでは、強度、耐摩耗性の観点から必要硬化層深さがより深くなるため、生産性の低下とコストの高騰とが問題になる。さらに、内外周表面においては浸炭加熱時間が長時間に及ぶために粒界酸化層や不完全焼入れ層が数十μm厚さで形成されることになり、疲労強度や耐衝撃特性が劣化しやすくなる問題がある。 【0006】一方、前記■の高周波焼入れ法では、■の浸炭法に比べてコスト的な改善がなされているが、一旦全体硬化した履帯ブッシュの内周面を再焼入れする必要があるために、焼割れの発生など十分な品質上の管理に問題があるとともに、小径な履帯ブッシュの内周面を高周波焼戻しすることの困難性や、移動高周波焼入れなど生産性の低さおよび二度以上の熱処理工程を必要とすることからコスト的に安価にできない問題がある。 【0007】また、前記■の高周波焼入れ法では、特公昭63−16314号公報、特開平5−78745号公報に開示されているように、内周面からの誘導加熱によって外周面焼入れ硬化層がより中心部付近で焼き戻され、外周面焼入れ硬化層硬さが中心部に向かって軟化し易く、外周面の耐摩耗性を十分に改善できない問題がある。 【0008】さらに、特開平6−247351号公報、特開平10−68023号公報においては、履帯ブッシュの外周面および内周面の両方から、履帯ブッシュを移動させる移動式高周波焼入れを同時に実施し、少なくともスプロケットと噛み合う部位の内周面への高周波焼入れを実施せずに、履帯ブッシュの強度を高めた履帯ブッシュとその製造方法が開示されているが、前記と同様に、小径な履帯ブッシュ内径熱処理が困難であること、生産性の低い移動高周波焼入れであること、二つの高周波加熱用電源を必要として設備投資が高いこと、内周面未焼き入れ層がHRC35未満のフェライトおよびパーライト組織であるために強靭性が十分でない、さらに、全般的に薄肉な履帯ブッシュを内、外周面からの同時冷却を実施することから、スルーハード化されやすく、それを避けるためには外周面焼入れ硬化層深さが浅くなるために、履帯ブッシュの耐摩耗寿命が十分でない等の問題がある。 【0009】また、前記■の高周波焼入れ方法においては、より薄肉で、小型のオイル封入履帯ブッシュ端面部での焼入れ部分のムラや硬化層の抜けが完全に避けられず、最終検査工程が必要になるという問題がある。 【0010】本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、安価な高周波焼入れ技術をベースにして、オイル封入履帯としてのオイル封入性の確保、衝撃的な過酷な負荷に対する優れた靭性の確保、耐摩耗性および摩耗寿命の改善を図るとともに、前記■〜■の方法に対してより安価な製造方法を提供することを主たる目的とするものである。 【0011】また、本発明では、建機の大型化と高負荷化にともなって問題となる履帯ブッシュと回転、揺動摺動する履帯ピンとの耐焼き付き性および履帯リンクからの抜けを防止する方法についても改善することを目的とするものである。 【0012】 【課題を解決するための手段および作用・効果】例えば、小径な中小型ブルドーザ用のオイル封入式履帯ブッシュにおいては、肉薄で、端面部は履帯リンクへの圧入のための端面加工が施され、内周面側においては履帯ピンとのたわみによる局部当たりを避けるための面取り加工が施されていることから、端面部の平行面は極めて幅狭になっている。このため、端面シール部硬化層を確実に確保するため、および、履帯リンクへ履帯ブッシュを圧入する際のかじりによる圧入不良を防止するに、外周面圧入端面加工部を確実に硬化させることが必要である。またさらに、その履帯ブッシュとしての強度、靭性および耐摩耗性を確保するために、少なくとも、その外周面にはHRC50以上の硬質な焼入れ硬化層が形成され、その肉厚内部においてHRC45以下の軟質層を形成させることにとって、熱処理時の焼き割れを防止できるが必要である。 【0013】そこで、第1発明による履帯ブッシュは、少なくとも炭素が0.35〜1.2重量%の範囲で含有される炭素鋼および/または低合金鋼を素材として、一度の全体加熱とそれに続く冷却作業によって外周面、端面および内周面に焼入れ硬化層を形成するとともに、それら焼入れ硬化層の中間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織の軟質な未焼入れ層を形成するようにしたものである。この第1発明においては、肉厚が薄い中小型の履帯ブッシュの肉厚部内部に軟質層を形成するためには、使用する鋼の焼入性を幅狭く制限することが必要となり、その鋼材の入手性が問題となり、また、大型の履帯ブッシュにおいては、外周面の焼入れ硬化層を十分に深くすることが出来なくなり、十分な摩耗寿命が得られない。 【0014】そこで、第2発明による履帯ブッシュでは、履帯ブッシュ素材の焼入れ性が内周面と外周面から同時に水冷却することによって、肉厚全体がHRC45以上の硬さにスルーハード化されるものとし、さらに、履帯ブッシュを全体加熱した後の冷却作業において、肉厚内部の冷却速度が同時冷却時の冷却速度より遅くなるようにして軟質な未焼き入れ層が形成されることを特徴とした。 【0015】最も簡単な全体焼入れ法においては、履帯ブッシュの内周面、外周面および端面をほぼ同時に冷却し始めて、その冷却途中で肉厚内部における冷却速度を遅くすることによって製造されるものであって、その履帯ブッシュ全周面において焼入れ硬化層が連続して形成されることを特徴とする(第3発明)。 【0016】また、第4発明による履帯ブッシュでは、履帯ブッシュを全体加熱後、内周面と外周面が独立して冷却できる焼入れ装置を用いて、内周面もしくは外周面のいずれかを先行冷却して、所定時間後に全周囲を冷却するか、もしくは、その先行冷却中に反対面からの誘導加熱を施し、所定時間後にその誘導加熱を止めて、誘導加熱面を冷却することによって、肉厚内部の冷却速度をより遅くして製造されるものであって、かつ、その冷却過程において外周面と端面を同時に冷却することによって外周面焼入れ硬化層とその焼入れ硬化層につながった端面焼入れ硬化層と内周面に焼入れ硬化層が形成され、さらに、肉厚内部の軟化層が内周面につながっていることを特徴とするものである。 【0017】この第4発明においては、内周面から先行して冷却することによって、履帯ブッシュ肉厚に蓄積されている熱量が少ない状態になっていることから、外周面からの冷却による外周面側での冷却速度が速くなり、外周面焼入れ硬化層が形成されやすくなるので、低い焼入性鋼材によっても十分な外周面焼入れ硬化層深さが得られるので、安価な鋼材が利用できるので好ましく。さらに、一連の一回の熱処理によって履帯ブッシュ両端面部が焼入れ硬化される安価な熱処理である。 【0018】さらに、第5発明による履帯ブッシュは、前記第4発明におけるその冷却過程において内周面と端面を同時に冷却することによって内周面焼入れ硬化層とその焼入れ硬化層につながった端面焼入れ硬化層と外周面に焼入れ硬化層が形成され、さらに、肉厚内部の軟化層が外周面につながっていることを特徴とするものである。 【0019】また、前記第4発明、第5発明において記載した内周面もしくは内周面と端面の先行冷却方法もしくは外周面もしくは外周面と端面の先行冷却方法のいずれの場合においてもほぼ同じ肉厚内部の冷却速度を遅らせる効果が達成され、さらに、前記外周面からの誘導加熱と内周面からの誘導加熱にいずれの場合においてもほぼ同じ目的が達成されることは明らかである。 【0020】また、履帯リンクへ圧入される部位の肉厚よりもスプロケットと噛合う部位の肉厚を厚くして、摩耗寿命の改善を図る目的で使用される段付き履帯ブッシュにおける外周面焼入れ硬化層は、通常外周面位置から所定の深さで形成されているため、その摩耗寿命改善効果が十分でないが、前記第4発明、第5発明に記載した内周面先行冷却後に、外周面冷却するや、前記先行冷却中に誘導加熱する熱処理方法によって、外周面焼入れ硬化層深さが内周面と平行に形成され、段付き履帯ブッシュの摩耗寿命改善効果が有効に生かされることを特徴とすることもできる(第6発明)。 【0021】前記第1〜6発明をより具体的に記述すると、まず、第7発明による履帯ブッシュは、前記履帯ブッシュにおいて、その素材全体をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、その履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないように履帯ブッシュの両端面部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、(1)内、外周面、端面からの冷却をほぼ同時に実施し、所定時間後に内周面冷却を途中で止める一連の焼入れ作業、(2)ほぼ同時に実施する内、外周面、端面からの冷却を、途中で1回以上一時止めて、所定時間後に再冷却を実施する一連の焼入れ作業等の履帯ブッシュ肉厚中心部における冷却速度が内外周面からの同時冷却時の冷却速度よりも遅くする焼入れ作業を実施することによって外周面焼入れ硬化層、両端面焼入れ硬化層および内周面焼入れ硬化層が連続的につながって形成され、その肉厚内部にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が形成されていることを特徴とするものである。 【0022】さらに、第8発明による履帯ブッシュは、前記履帯ブッシュにおいて、その素材全体をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、その履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないようにブッシュの両端面の内周面側部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、(1)外周面および端面からの冷却を先行して実施し,所定時間後に内周面からの冷却を施す一連の焼入れ作業、(2)前記(1)の一連の焼入れ作業中に、外周面及び端面からの先行冷却を所定時間停止して後に再冷却を実施する一連の焼入れ作業等の履帯ブッシュ肉厚中心部における冷却速度が内外周面からの同時冷却時の冷却速度よりも遅くする焼入れ作業を実施することによって外周面焼入れ硬化層とそれにつながる両端面焼入れ硬化層および内周面焼入れ硬化層が形成され、さらに、それらの硬化層の間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が残されたことを特徴とするものである。 【0023】本発明によれば、履帯ブッシュに適用する鋼材としてはより安価に済むことになり、また、外周面および端面部を先行、もしくは同時に冷却する方法であることから、外周面と端面部がつながって焼入れ硬化層が確実に形成される特徴を持ち、さらに、肉厚中心部に未焼入れ軟質層を持ち、内周面に焼入れ硬化層が形成されることから、内周面においては確実な圧縮残留応力をもつ高強度なマルテンサイト組織が形成され、高強度な履帯ブッシュとなる特徴がある。 【0024】また、第8発明による履帯ブッシュは、例えば前記外周面先行冷却し、所定時間後に内周面冷却を実施する方法においては、その時間を調整することによって、内周面焼入れ硬化層深さをその外周面焼入れ硬化層深さよりも深くから浅くまで調整することが可能であり、その内周面焼入れ硬化深さを履帯ブッシュ肉厚の5〜50%に調整することによってより高強度な履帯ブッシュを提供できる特徴がある。 【0025】また、第9発明による履帯ブッシュは、前記履帯ブッシュにおいて、その素材全体をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、その履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないようにブッシュの両端面の外周面側部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、(1)内周面および端面からの冷却を先行して実施し,所定時間後に外周面からの冷却を施す一連の焼入れ作業、(2)前記(1)の一連の焼入れ作業中に、内周面及び端面からの先行冷却を所定時間停止して後に再冷却を実施する一連の焼入れ作業等の履帯ブッシュ肉厚中心部における冷却速度が内外周面からの同時冷却時の冷却速度よりも遅くする焼入れ作業を実施することによって内周面焼入れ硬化層とそれにつながる両端面焼入れ硬化層および外周面焼入れ硬化層が形成され、さらに、それらの硬化層の間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が残されたことを特徴とするものである。 【0026】本発明は、前述の第2発明に比べ、同じ焼入れ性の鋼材を用いた場合において外周面硬化層をより深くすることができ、より摩耗寿命の改善に好ましいが、前記軟化層がつながる外周面位置が、履帯リンクに圧入される際の圧入開始部位を避けることが好ましいことは明らかである。 【0027】なお、より大型、中小型を問わず、ブルドーザ用履帯ブッシュにおいては、その摩耗寿命を長くするために、外周面焼入れ硬化層をより深く形成させる必要性があり、本第10発明による履帯ブッシュは、前記履帯ブッシュにおいて、その履帯ブッシュ素材の内周面からの高周波加熱が出来るとともに、履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないようにブッシュの両端面の内周面側部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、1個以上の円筒状履帯ブッシュ素材を円筒軸中心に回転させながらその内周面側から高周波誘導加熱によって、その履帯ブッシュ素材をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、高周波加熱を継続しながら外周面と端面からの冷却を先行実施し,所定時間後、高周波加熱を止めて内周面からの冷却を施す一連の焼入れ作業によって、外周面焼入れ硬化層とそれにつながる両端面焼入れ硬化層および内周面焼入れ硬化層が形成され、それらの硬化層の中間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が残されてなることを特徴とするものである。 【0028】さらに、第11発明による履帯ブッシュは、前記履帯ブッシュにおいて、その履帯ブッシュ素材の内周面からの高周波加熱が出来るとともに、履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないようにブッシュの両端面の外周面側部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、1個以上の円筒状履帯ブッシュ素材を円筒軸中心に回転させながらその内周面側から高周波誘導加熱によって、少なくともその履帯ブッシュ素材をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、高周波加熱を継続しながら外周面からの冷却を先行実施し,所定時間後、高周波加熱を止めて内周面と端面からの冷却を施す一連の焼入れ作業によって、内周面焼入れ硬化層とそれにつながる両端面焼入れ硬化層および外周面焼入れ硬化層が形成され、それらの硬化層の中間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が残されてなることを特徴とするものである。 【0029】さらに、第12発明による履帯ブッシュは、前記履帯ブッシュにおいて、その履帯ブッシュ素材の外周面からの高周波加熱が出来るとともに、履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないようにブッシュの両端面の内周面側部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、1個以上の円筒状履帯ブッシュ素材を円筒軸中心に回転させながらその外周面側から高周波誘導加熱によって、その履帯ブッシュ素材をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、高周波加熱を継続しながら内周面からの冷却を先行実施し、所定時間後に外周面の加熱を止めて外周面と端面からの冷却を施す一連の焼入れ作業によって、外周面焼入れ硬化層とそれにつながる両端面焼入れ硬化層および内周面焼入れ硬化層が形成され、それらの硬化層の中間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が残されてなることを特徴とするものである。 【0030】特開平11−236619号公報に開示されているように、内周面と外周面の冷却媒体を仕切り、かつ、履帯ブッシュ両端面部の内周面からの冷却を遅らせる仕切り治具を用いる方法では、前述のように両端面部の焼入れ硬化むらや抜けが十分に避けられない問題があったが、本発明では、先の両端面部の焼入れ硬化むらや抜けは、内周面冷却が急速に起こり仕切り治具と履帯ブッシュ端面部形状が冷却時の形状変化によって隙間が発生しやすいことが原因である点に着目し、両端面部が冷却しすぎないうちに内周面冷却を一旦止めることによって冷却媒体の漏れを防止することによって前記不具合を防止したものである。 【0031】さらに、第13発明による履帯ブッシュは、前記履帯ブッシュにおいて、その履帯ブッシュ素材の外周面からの高周波加熱が出来るとともに、履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないようにブッシュの両端面の外周面側部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、1個以上の円筒状履帯ブッシュ素材を円筒軸中心に回転させながらその外周面側から高周波誘導加熱によって、その履帯ブッシュ素材をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、高周波加熱を継続しながら内周面と端面からの冷却を先行実施し、所定時間後に外周面の加熱を止めて外周面と端面からの冷却を施す一連の焼入れ作業によって、内周面焼入れ硬化層とそれにつながる両端面焼入れ硬化層および外周面焼入れ硬化層が形成され、それらの硬化層の中間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が残されてなることを特徴とするものである。 【0032】なお、前記第10〜第13発明において、外周面もしくは内周面からの高周波加熱を実施するいずれの方法においても、例えば、外周面高周波電力と内周面先行冷却時間または内周面高周波電力と外周面先行冷却時間の調整によって、履帯ブッシュ外周面焼入れ硬化層を自由に調整することが可能であり、摩耗寿命の改善に極めて有効な履帯ブッシュである。 【0033】また、第14発明による履帯ブッシュは、前記第7〜13発明における一連の焼入れ作業において、内周面および/または外周面の冷却を一時的に止めることによって、肉厚中心部からの熱拡散による内周面および/または外周面焼き入れ層の焼戻しを実施していることと、さらに、外周面もしくは内周面からの高周波加熱による内周面もしくは外周面焼入れ硬化層を焼戻し、別工程における追加の焼戻し処理を省略しても良いという特徴がある。履帯ブッシュの摩耗寿命を確保する観点からは、外周面焼入れ硬化層深さが肉厚の30〜80%となるように調整されるが、肉厚の70%以上に外周面を焼入れ硬化させた場合には、履帯ブッシュの耐衝撃性が劣化し始めることは良く経験することであり、また、履帯ブッシュの摩耗限界が肉厚のほぼ60%になるように設計されることから、外周面硬化層の深さ上限を70%とすることがより好ましい(第19発明)。 【0034】さらに、例えば、外周面高周波加熱しながら内周面先行冷却時間を調整し、内周面焼入れ硬化層をHRC30〜45未満に焼戻すことによって、高靭性な履帯ブッシュとすることができる(第17発明)。また、その内周面焼入れ硬化深さを履帯ブッシュ肉厚の〜15%に薄く調整することによって、より耐衝撃的強度に優れた履帯ブッシュが提供できることは明らかである。 【0035】さらに、第15発明による履帯ブッシュは、肉厚全体がスルーハード化された履帯ブッシュ素材を用い、外周面からの高周波加熱中に内周面がA1変態温度を超えない適切な温度範囲になるように冷却を行い、外周面と端面からの冷却によって、外周面硬化層とその硬化層に繋がった端面焼入れ硬化層と、内周面に焼戻しマルテンサイト硬化層が形成され、前記外周面硬化層と内周面焼戻しマルテンサイト硬化層との間に形成される軟質層がフェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトおよび焼戻しマルテンサイト組織の1種以上からなり、この軟質層が端面部内周面側および内周面に繋がっていることを特徴とするものである。 【0036】本発明によれば、中小型履帯ブッシュに適用する鋼材としてより安価で済むことおよび小径な内周面のみの高周波焼入れ作業を必要とせず、焼入れ作業が容易な外周面からの高周波焼入れ作業だけで良いことになり、自動化が図りやすいこと、また外周面からの高周波加熱時に内周面硬化層が焼戻されるように内周面冷却を実施することによって、高靭性でかつ耐摩耗性を必要とする外周面および両端面硬化層を焼戻し処理せずにより高硬度で使用することになるので、品質的にも、経済的にも好ましいことである。 【0037】なお、肉厚全体を焼入れ硬化した履帯ブッシュの外周面から重ねて焼入れ硬化する熱処理は、前述のように焼割れに関する感受性が高いと考えられるが、内周面を冷却し、内周面側の強度を確保しながら外周面を高周波加熱することと、内周面を冷却しながら外周面加熱時に十分な加熱温度勾配を緩やかに取れることから焼割れを防止することができる。 【0038】ところで、中大型ブルドーザ用のオイル封入式履帯ブッシュではより肉厚が厚くなり、肉厚全体を焼入れ硬化させるための鋼材はより多くの合金元素を必要とするので、より高価になるとともに、全体硬化のために熱処理費が高くなる。 【0039】このことに鑑み、第16発明による履帯ブッシュは、内周面に焼入れ硬化層が形成された履帯ブッシュ素材を用い、外周面からの高周波加熱中に内周面の冷却を行い、外周面からの冷却によって、外周面硬化層とその硬化層に繋がった端面焼入れ硬化層と、内周面に焼戻しマルテンサイト硬化層が形成され、前記外周面硬化層と内周面焼戻しマルテンサイト硬化層との間に形成される軟質層がフェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトおよび焼戻しマルテンサイト組織の1種以上からなり、その軟質層が端面部内周面側および内周面に繋がっていることを特徴とするものである。 【0040】本発明においても、外周面からの高周波加熱時に内周面硬化層が焼戻されるように内周面冷却を実施することによって、高靭性でかつ耐摩耗性を必要とする外周面および両端面硬化層を焼戻し処理せずにより高硬度で使用するのが、品質的にも経済的にも好ましい。また、本発明は、外周面からの高周波焼入れを実施するに際して、外周面側において重ね焼入れとしないことから、焼割れに関する危険性が軽減されるので好ましい方法である。 【0041】前記第15,16発明の高周波加熱・焼入れ方法としては、高周波コイルと履帯ブッシュを相対的に移動させる移動式高周波加熱焼入れ方法と履帯ブッシュを軸中心周りに回転させながら鞍型、渦巻き型または円筒状の高周波コイルを使って加熱速度を調整しながら全体加熱焼入れする方法のどちらでも利用することができる。 【0042】前記移動式加熱・焼入れ方法を利用する場合においては、両端面部近傍における高周波コイルと履帯ブッシュとの相対速度を遅らせることによって端面部を確実に焼入れ硬化されていることが好ましく、また、より耐摩耗寿命を改善するために、スプロケットと噛み合う部位においてもその相対速度を遅くすることによって外周面焼入れ硬化層をより深く焼き入れられていることが好ましい(第6発明)。 【0043】また、鉱山等の岩盤地を走行する大型ブルドーザや高速走行するブルドーザでは履帯ブッシュに過酷な衝撃的荷重が作用し、履帯ブッシュ内周部から破損する例がある。 【0044】これを防止する観点から、第17発明による履帯ブッシュは、前記外周面からの高周波加熱・焼入れ法によって、外周面、端面および内周面に焼入れ硬化層が形成されるとともに、内周面焼入れ硬化層がHRC45未満(2Uシャルピー衝撃値が5kg−m/cm2以上)に焼戻されていることを特徴とするものである。ここで、少なくとも内周面が、HRC30〜45の微細な粒状セメンタイトが分散した高靭性の焼戻しマルテンサイト組織であるのが好ましい。 【0045】前記第17発明による履帯ブッシュは、予め粒状セメンタイトが分散した強靭な焼戻しマルテンサイト組織に調質(焼入れ焼戻し処理)したものを履帯ブッシュ素材に利用することによっても製造されることは明らかである。また、強靭なパーライト組織にしても良いが、強度的な観点からはHRC30以上でHRC45未満のものが好ましい。また、履帯ピン外周面と履帯ブッシュ内周面との摺動による耐焼付き性を良くするためには、粒状セメンタイトが多いほど良く、セメンタイトの粒状化処理が容易にできる1.2重量%以下の範囲の炭素が含有される高炭素鋼を適用するのが好ましい(第18発明)。 【0046】また、通常浸炭焼入れ焼戻し硬さとほぼ同等以上の高周波焼入れ硬さを得るためには0.35重量%以上の炭素を含有した鋼が必要であり、耐衝撃性に優れた特性(シャルピー衝撃値5kg−m/cm2以上)を持たせるためには安全性を考慮して、焼入れ焼戻し鋼においてもHRC45以下に調整することが好ましいので、前記履帯ブッシュ内周面においては、その硬さがHRC45未満になるようにするのが良い。 【0047】前記第15〜18発明において、さらに摩耗寿命を改善するために、前記外周面からの高周波加熱によって焼入れする際において、内周面が鋼のA1温度(720℃)以上に加熱されないように、初めからもしくは加熱途中から内周面の冷却を外周面より先に開始し、外周面からの加熱終了後に外周面を冷却することによって、外周面焼入れ硬化層深さを肉厚さの30〜80%に深くするのが好ましい(第19発明)。肉厚の70%以上に外周面を硬化させた場合には、履帯ブッシュの耐衝撃強度が劣化し始めることは良く経験することであり、また、履帯ブッシュの摩耗限界がほぼ60%に設定されることから、外周硬化層の深さを40〜70%とすることがより好ましい。 【0048】なお、前記HRC45以下で微細粒状セメンタイトが分散した高靭性の焼戻しマルテンサイト組織は履帯ブッシュ素材を調質処理(焼入れ焼戻し処理)した後、前記履帯ブッシュ外周面からの高周波焼入れによって外周面および両端面部を焼入れることによって製造されるが、より高靭性の履帯ブッシュとするためには、高温焼戻し脆性が顕著に現れない(Crが0.5重量%以下で残りがMn、C、Si、Al、Ni、Mo,Ti等を含有する)炭素鋼または炭素ボロン鋼が履帯ブッシュ素材として好ましく、また調質処理の焼戻し温度は150℃以上であることが好ましい。また、後熱処理として外周面からの高周波焼入れを重ねて実施するため、その焼割れ性を避けてより生産性を高めるためにはHRC45以下に調質しておくことが好ましい。 【0049】前記外周面部および両端面部を高周波焼入れした履帯ブッシュにおいて、履帯ピンとオイル潤滑下で摺動する履帯ブッシュ内周面はHRC45未満の場合においても焼付き性に大きな問題はないが、とりわけ大型ブルドーザのようにより荷重負荷が大きく、偏荷重がかかりやすい場合や、高速で長距離の連続した走行を繰り返す場合には、履帯ブッシュ内周面と履帯ピン外周面が低速で摺動し、かじりを生じやすくなるとともに、高荷重下での履帯ブッシュの疲労強度の改善が重要になる。 【0050】そこで、第20発明では、前記外周面からの高周波焼入れによって外周面硬化層と端面硬化層が繋がって形成され、内周面がHRC45未満とした履帯ブッシュに、その両端面のシール平坦部の焼入れ硬化部分を避け避けて、その履帯ブッシュ内周面を高周波焼入れし、内周面焼入れ硬化層深さが肉厚さの1〜15%で、履帯ブッシュ肉厚内部に形成される軟質層が履帯ブッシュ両端面のシール平坦部を避けて、両端面近傍の内周面に繋がって形成されるとともに、内周面において30kg/mm2以上の大きな圧縮残留応力を付加するようにした。 【0051】また、前記炭素鋼および/または炭素ボロン鋼においても、焼入れ後の焼戻しは靭性回復に必要であり、少なくとも150℃以上、好ましくは200℃以上の焼戻し処理を実施したが、第21発明では、前記各発明において、150℃以上の焼戻し処理が施され、高周波焼入れ硬化層表面の硬さがHRC50以上で、かつ、両端面部の焼入れ硬化深さが0.5mm以上であることを特徴とし、耐摩耗性を確保するようにした。 【0052】なお、油圧ショベルなどに使う履帯は前述のようなオイル封入式でなく潤滑が関与しない乾式であるために、履帯ブッシュ内周面は焼入れ硬化されているが、両端面部は焼入れ硬化されていない。この乾式用履帯ブッシュにおいて、両端面を追加的に焼入れ硬化して利用できれば、端面部焼入れ硬化層の安定した形成と生産設備の共通化や生産性の向上が画期的に図ることができる。 【0053】そこで、第22発明による履帯ブッシュは、外周面または外周面と内周面に(高周波焼入れによって)焼入れ硬化層が形成されるとともに、HRC45未満の軟質層が肉厚中心部から内周面にかけて形成されるか、または、外周面硬化層と内周面硬化層の間に形成され、その軟質層が両端面部に繋がっている履帯ブッシュの両端面部を焼入れ硬化し、その軟質層が履帯ブッシュの外周面または外周面と内周面に繋がっていることを特徴とするものである。 【0054】また、前記両端面部の焼入れに供する履帯ブッシュにおいては、内、外周面がそれぞれ高周波焼入れすることを特徴とするが、端面部の高周波焼入れ硬化層と重なる位置での焼割れが発生しやすいことを勘案して、前述の重ね焼入れと同様に両端面部を高周波加熱するときには加熱深さが深くなるようにその温度勾配を緩やかにして焼入れるものとするのが好ましい。すなわち、第23発明は、前記第21発明において、両端面部が焼入れ硬化された履帯ブッシュにおいて、前記外周面またはその外周面と内周面に高周波焼入れによる硬化層が形成され、その内周面硬化層および外周面硬化層と高周波焼入れしてなる端面部硬化層がそれぞれ重なる部位において焼戻しマルテンサイト組織の軟質層が存在していることを特徴とするものである。 【0055】なお、両端面部が焼入れ硬化された履帯ブッシュにおいて、履帯ブッシュの内周面および/または外周面の硬化層が両端面部において未焼入れ層を残し、後工程の両端面部の焼入れ硬化層と重ならないように高周波焼入れされているのが、前記焼割れの危険性がないのでより好ましい(第24発明)。 【0056】前記両端面部が高周波焼入れ硬化された履帯ブッシュにおいて、1個以上の履帯ブッシュ素材が、A1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱された後、(1)高周波加熱を止めて、内周面もしくは外周面のどちらか一方からの冷却を先行して実施し、所定時間後にそれらの反対面(外周面もしくは内周面)からの冷却を施す一連の焼入れ作業、(2)履帯ブッシュ外周面からの前記高周波全体加熱後、高周波加熱を継続しながら内周面からの冷却を先行実施し、所定時間後に外周面の加熱を止めて外周面からの冷却を施す一連の焼入れ作業、(3)履帯ブッシュ内周面からの前記高周波全体加熱後、高周波加熱を継続しながら外周面からの冷却を先行実施し、所定時間後に内周面の加熱を止めて外周面からの冷却を施す一連の焼入れ作業のいずれかの焼入れ作業を施されることによって、その外周面と内周面に焼入れ硬化層が形成され、その両焼入れ硬化層間にフェライト、パーライト、ベイナイトおよびマルテンサイトのうちの1種以上の組織またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散してなる軟質な未焼入れ層が両端面部につながっていることを特徴とする履帯ブッシュが好ましい(第25発明)。 【0057】この高周波焼入れ方法においては、特開2001−240914号公報に開示されているように、複数個の履帯ブッシュを端面部で積み重ねて焼入れすることができ、また小径な履帯ブッシュにおいても内周面を層流冷却媒体で冷却することによって均一な冷却が可能なことから、極めて生産性良く、安価に製造できるので好ましい。 【0058】さらに、両端面部が未焼入れ層からなる履帯ブッシュを複数個同時に生産する方法としては、重ねる履帯ブッシュ間に適切な治具を挟み、端面部が加熱されにくくすることおよび/または端面部が冷却されるようにすることによって前述の方法が適用できるが、全体加熱するための渦巻き型または円筒型高周波誘電子の形状を調整することによって、重なる履帯ブッシュ端面部近傍が加熱されにくくし、端面部に未焼入れ層を残した履帯ブッシュを複数個同時に生産するのが極めて好ましい方法である。 【0059】なお、前記一連の焼入れ作業のいずれかにおいて、(1)その作業途中で内周面側および/または外周面側の冷却を一時止めるかもしくは止めて、履帯ブッシュ内に残る残熱で内周面側硬化層を焼戻す一連の焼入れ作業、または(2)外周面側もしくは内周面側からの高周波加熱により、少なくとも、内周面焼入れ硬化層を焼戻したことを特徴とする履帯ブッシュは、別工程での焼戻し処理を省略することができること、さらに、その硬さをHRC30〜45に調整することによって高靭性な履帯ブッシュとなるので好ましい(第26発明、第27発明)。 【0060】なお、未焼入れ層を両端面部に残した前記履帯ブッシュの両端面部を高周波焼入れする方法は、端面部の高周波加熱による焼割れの危険がないことから、極めて生産性が良く実施されるが、使用する高周波加熱源としては30kHz以上であるのが好ましい。 【0061】例えば、後述するように40kHzの高周波電源を用い、端面部からの高周波加熱焼入れを実施した例からも明らかなように、150kWh,5秒以内で、端面から4mmまで深く焼入れ硬化されるので、熱処理時間が極めて短時間で済む端面高周波焼入れ法が好ましい。また、履帯ブッシュを履帯リンクに圧入されるための履帯ブッシュ外周面取り位置(「圧入開始部」という。)に硬化層の重なる部位の軟質層が存在する場合には、その軟質層硬さがHRC40以上でないと圧入時のかじりによる不具合を発生しやすくするために、その軟質層硬さがHRC40未満、より好ましくはHRC45以下の場合には前記圧入開始部を避けて形成されるものとした(第29発明)。 【0062】なお、前記圧入開始部位置より端面から浅く高周波焼入れする場合には、高周波電源の周波数をより高めることや水中にブッシュを浸漬しながら端面を高周波焼入れする(「水中高周波焼入れ法」)ことが好ましい。 【0063】また、前記端面を高周波焼入れする前処理として、少なくとも150℃、好ましくは200℃以上の温度で焼戻し処理を施すことによって、内周面硬化層の靭性の回復を図っておくことがより好ましい(第30発明)。 【0064】さらに、端面部焼入れ硬化層深さが0.5mm以上で、好ましくは1〜3mmで、この硬化層を焼入れ状態のより硬質な状態で使用することによって、端面部の耐摩耗性をより改善することが好ましいが、端面部高周波焼入れ後に適切な焼戻し処理を施して使用することもできる(第31発明)。 【0065】前記端面部近傍の外周面および内周面にできる軟質層や未焼入れ層部にはいずれにしても引張残留応力が発生するので、本発明では、履帯ブッシュ両端面の高周波焼入れ硬化層に接して形成される前記マルテンサイトの焼戻し軟質層または未焼入れ層が繋がる外周面および外周面と内周面とにショットピーニングなどの機械的圧縮加工を施して、圧縮残留応力を発生させるようにして、耐遅れ破壊性の改善を図ることが好ましい(第32発明)。 【0066】また、前記履帯ブッシュ形状においても、両端面付近の外周面面取り位置が内周面面取り位置より履帯ブッシュ中心位置に近い場合においては、履帯ピンにかかる偏荷重や曲げ荷重によって端面面取り部に大きな曲げ荷重を発生させ、端面部近傍を破損する危険性が高いので、内周面側の面取り開始点が外周面面取り開始点以上に履帯ブッシュ中心位置にあるようにするのが好ましい(第33発明)。 【0067】また、前記履帯ブッシュの両端面を追加焼入れ硬化する場合には、内周面硬化層、外周面硬化層、端面硬化層との間に軟化層が存在するので、この部位に過負荷応力が作用することを避けることが好ましいので、前記履帯ブッシュの両端面部近傍の形状において、内周面側面取り部を外周面面取り部より大きくし、偏荷重による履帯ブッシュ端面コーナー部に大きな曲げ応力が発生することを防止するのが好ましい。なお、この結果は、履帯ピンとのかじりに対しても有効と考えられる。 【0068】さらに、内周面硬化層、外周面硬化層、端面硬化層との間に軟化層が存在する場合には、引張残留応力が発生しやすいので、少なくとも、履帯ブッシュ両端面近傍の内、外周面、端面部をショットピーニングすることによって大きな圧縮残留応力を付加し、強度の向上を図るのが好ましい(第34発明)。なお、ショットピーニングを内周面に施すことは、履帯ブッシュの画期的な強度向上と履帯ピンとの耐焼き付き性を向上させる手段として極めて有効である。 【0069】なお、前記両端面を追加焼入れ硬化した履帯ブッシュにおいても、前述のようにその内周面、外周面に燐酸塩皮膜などの化成処理もしくはメッキ処理を施すのが好ましい(第35発明)。 【0070】次に、第36発明による履帯ブッシュの製造方法は、少なくとも、炭素が0.35〜1.2重量%の範囲で含有し、その焼入性が、履帯ブッシュをA1もしくはA3温度以上に全体加熱した後、その内周面と外周面から同時に水冷却することによって、その肉厚全体がHRC45以上に焼入れ硬化されるように合金元素が調整されている炭素鋼および/または低合金鋼からなる履帯ブッシュ素材を用いて、その全体をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、その履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないように履帯ブッシュの両端面部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、(1)内、外周面、端面からの冷却をほぼ同時に実施し、所定時間後に内周面冷却を途中で止める一連の焼入れ作業、(2)ほぼ同時に実施する内、外周面、端面からの冷却を、途中で1回以上一時止めて、所定時間後に再冷却を実施する一連の焼入れ作業等の履帯ブッシュ肉厚中心部における冷却速度が内外周面からの同時冷却時の冷却速度よりも遅くする焼入れ作業を実施することによって外周面焼入れ硬化層、両端面焼入れ硬化層および内周面焼入れ硬化層が連続的につながって形成され、その肉厚内部にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が形成されるようにしたことを特徴とするものである。 【0071】また、第37発明による履帯ブッシュの製造方法は、前記履帯ブッシュ素材をもちいて、その全体をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、その履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないようにブッシュの両端面の内周面側部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、(1)外周面および端面からの冷却を先行して実施し,所定時間後に内周面からの冷却を施す一連の焼入れ作業、(2)前記(1)の一連の焼入れ作業中に、外周面及び端面からの先行冷却を所定時間停止して後に再冷却を実施する一連の焼入れ作業等の履帯ブッシュ肉厚中心部における冷却速度が内外周面からの同時冷却時の冷却速度よりも遅くする焼入れ作業を実施することによって外周面焼入れ硬化層とそれにつながる両端面焼入れ硬化層および内周面焼入れ硬化層が形成され、さらに、それらの硬化層の間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が形成されるとともにその軟化層が両端面近傍の内周面につながるようにしたことを特徴とするものである。 【0072】さらに、第38発明による履帯ブッシュの製造方法は、前記履帯ブッシュ素材を用いて、その全体をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、その履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないようにブッシュの両端面の外周面側部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、(1)内周面および端面からの冷却を先行して実施し,所定時間後に外周面からの冷却を施す一連の焼入れ作業、(2)前記(1)の一連の焼入れ作業中に、内周面及び端面からの先行冷却を所定時間停止して後に再冷却を実施する一連の焼入れ作業等の履帯ブッシュ肉厚中心部における冷却速度が内外周面からの同時冷却時の冷却速度よりも遅くする焼入れ作業を実施することによって内周面焼入れ硬化層とそれにつながる両端面焼入れ硬化層および外周面焼入れ硬化層が形成され、さらに、それらの硬化層の間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が形成されるとともにその軟化層が両端面近傍の外周面につながるようにしたことを特徴とするものである。 【0073】さらにまた、第39発明による履帯ブッシュの製造方法は、前記履帯ブッシュにおいて、その履帯ブッシュ素材の内周面からの高周波加熱が出来るとともに、履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないようにブッシュの両端面の内周面側部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、1個以上の円筒状履帯ブッシュ素材を円筒軸中心に回転させながらその内周面側から高周波誘導加熱によって、その履帯ブッシュ素材をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、高周波加熱を継続しながら外周面と端面からの冷却を先行実施し,所定時間後、高周波加熱を止めて内周面からの冷却を施す一連の焼入れ作業によって、外周面焼入れ硬化層とそれにつながる両端面焼入れ硬化層および内周面焼入れ硬化層が形成され、それらの硬化層の中間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が形成されるとともにその軟化層が両端面近傍の内周面につながるようにしたことを特徴とするものである。 【0074】また、第40発明による履帯ブッシュの製造方法は、前記履帯ブッシュ素材を用いて、その内周面からの高周波加熱が出来るとともに、履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないようにブッシュの両端面の外周面側部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、1個以上の円筒状履帯ブッシュ素材を円筒軸中心に回転させながらその内周面側から高周波誘導加熱によって、少なくともその履帯ブッシュ素材をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、高周波加熱を継続しながら外周面からの冷却を先行実施し,所定時間後、高周波加熱を止めて内周面と端面からの冷却を施す一連の焼入れ作業によって、内周面焼入れ硬化層とそれにつながる両端面焼入れ硬化層および外周面焼入れ硬化層が形成され、それらの硬化層の中間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が形成されるとともにその軟化層が両端面近傍の外周面につながるようにしたことを特徴とするものである。 【0075】さらに、第41発明による履帯ブッシュの製造方法は、前記履帯ブッシュ素材を用いて、その外周面からの高周波加熱が出来るとともに、履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないようにブッシュの両端面の内周面側部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、1個以上の円筒状履帯ブッシュ素材を円筒軸中心に回転させながらその外周面側から高周波誘導加熱によって、その履帯ブッシュ素材をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、高周波加熱を継続しながら内周面からの冷却を先行実施し、所定時間後に外周面の加熱を止めて外周面と端面からの冷却を施す一連の焼入れ作業によって、外周面焼入れ硬化層とそれにつながる両端面焼入れ硬化層および内周面焼入れ硬化層が形成され、それらの硬化層の中間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が形成されるとともにその軟化層が両端面近傍の内周面につながるようにしたことを特徴とするものである。 【0076】またさらに、第42発明による履帯ブッシュの製造方法は、前記履帯ブッシュ素材を用いて、その外周面からの高周波加熱が出来るとともに、履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないようにブッシュの両端面の外周面側部位で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、1個以上の円筒状履帯ブッシュ素材を円筒軸中心に回転させながらその外周面側から高周波誘導加熱によって、その履帯ブッシュ素材をA1もしくはA3変態温度以上の温度に加熱した後、高周波加熱を継続しながら内周面と端面からの冷却を先行実施し、所定時間後に外周面の加熱を止めて外周面と端面からの冷却を施す一連の焼入れ作業によって、内周面焼入れ硬化層とそれにつながる両端面焼入れ硬化層および外周面焼入れ硬化層が形成され、それらの硬化層の中間にフェライト、パーライトおよびベイナイトのうちの1種以上またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなる軟質な未焼入れ層が形成されるとともにその軟化層が両端面近傍の外周面につながるようにしたことを特徴とするものである。 【0077】また、第43発明による履帯ブッシュの製造方法は、前記履帯ブッシュの製造方法において、少なくとも、小径長尺な履帯ブッシュ内周面が、その履帯ブッシュの内径よりも小さな外径を有する導入管を内周面側に配し、この導入管にて流入される冷却媒体を壁面によって方向転換し、その導入管外周面と履帯ブッシュ内周面とに挟まれる空間に履帯ブッシュ軸心方向にほぼ平行に流すことによって行う(層流)冷却方法であることを特徴とするものであり、冷却媒体としては水、水溶性焼入れ液等が好ましい。 【0078】さらに、第44発明による履帯ブッシュの製造方法は、前記一連の焼入れ作業において、内周面および/または外周面の冷却を一時的に止めることによって、肉厚中心部からの熱拡散および/または内周面または外周面からの高周波加熱による外周面および/または内周面焼き入れ硬化層の焼戻しを実施することを特徴とするものである。 【0079】次に、第45発明による履帯ブッシュの製造方法は、履帯ブッシュ素材を、(1)その肉厚全体がスルーハード化されるように焼入れ硬化または焼入れ焼戻しし、(2)その履帯ブッシュの内周面を冷却しながら、外周面からの高周波加熱後に外周面からの冷却によって、外周面硬化層とその硬化層に繋がった端面焼入れ硬化層を形成するとともに、内周面に焼戻しマルテンサイト硬化層を形成し、さらに、外周面硬化層と内周面焼戻しマルテンサイト硬化層の間に形成される軟質層がフェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトおよび焼戻しマルテンサイト組織の1種以上からなり、その軟質層が端面部内周面側および内周面に繋がっており、外周面および両端面部硬化層を焼戻し処理せずにより高硬度で使用することを特徴とするものである。 【0080】また、第46発明による履帯ブッシュの製造方法は、履帯ブッシュ素材を、(1)履帯ブッシュ内周面が焼入れ硬化されるように高周波焼入れおよび/または高周波焼入れ焼戻しし、(2)外周面からの高周波加熱中に内周面の冷却を行い、外周面からの焼入れを施すことによって、外周面硬化層とその硬化層に繋がった端面焼入れ硬化層を形成するとともに、内周面に焼戻しマルテンサイト硬化層を形成し、外周面硬化層と内周面焼戻しマルテンサイト硬化層の間に形成される軟質層がフェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトおよび焼戻しマルテンサイト組織の1種以上からなり、その軟質層が端面部内周面側および内周面に繋がっており、外周面および両端面部硬化層を焼戻し処理せずにより高硬度で使用することを特徴とするものである。 【0081】前記第45発明および第46発明においては、外周面からの高周波加熱による内周面の温度を内周面冷却により制御して、少なくとも内周面においてHRC45未満で、セメンタイト粒子が分散した高靭性の焼戻しマルテンサイト層を形成するのが好ましい(第47発明)。 【0082】また、第48発明による履帯ブッシュの製造方法は、硬さがHRC45未満の履帯ブッシュ素材を用い、外周面からの移動もしくは全体の高周波加熱によって、内周面が鋼のA1変態温度以上に加熱されないように内周面を初めから、もしくは加熱途中から外周面より先に冷却しながら、外周面から高周波焼入れし、外周面焼入れ硬化深さをより深く、かつ、外周面と繋がる両端面部のシール平坦部の硬化層が、外周面位置から履帯ブッシュ肉厚さの1/2以上の幅にわたることを特徴とするものであり、さらに、その履帯ブッシュ両端面のシール平坦部の焼入れ硬化部分を避けて、その履帯ブッシュ内周面を高周波焼入れし、内周面焼入れ硬化層深さが肉厚さの5〜15%で、かつ、30kg/mm2以上の圧縮残留応力を発生させることを特徴とするものである(第49発明)。 【0083】前記外周面部および両端面部を高周波焼入れした履帯ブッシュにおいて、履帯ピンとオイル潤滑下で摺動する履帯ブッシュ内周面はHRC45未満の粒状セメンタイトが多量に分散する焼戻しマルテンサイトやパーライト組織の場合においても焼付き性に大きな問題はないが、とりわけ大型ブルドーザにおいてはより荷重負荷が大きいために偏荷重がかかりやすく、また低速で摺動する場合にはかじりを生じることがある。この場合には、履帯ブッシュ両端面のシール平坦部の焼入れ硬化部分を避けて、その履帯ブッシュ内周面の表面硬さをHRC45以上に高めるのが好ましいので、内周面焼入れ硬化層深さが肉厚さの5〜15%となるように浅く高周波焼入れして使用することができるものとした。また、製造コスト的な観点からすれば、内周面焼入れ硬化層深さが安定する1〜3mmが好ましい(第49発明)。 【0084】前記内周面からの高周波焼入れを実施するに際しては、外周面を冷却することによって内周面高周波加熱の熱拡散によって外周面焼入れ硬化層が軟化しないようにするのが好ましい。この場合、内周面高周波加熱電源として50kHz以上の電源を利用するのが好ましい。 【0085】また、履帯ブッシュの外周面および両端面部の焼入れ硬化層を連続的に形成するための外周面からの移動高周波加熱によって焼入れする方法において、(1)高周波加熱コイルと履帯ブッシュの移動相対速度を端面部において遅くする(2)外周面からの熱拡散による内周面温度を調整するための内周面冷却を履帯ブッシュ両端面近傍において弱くするか、または止める(3)履帯ブッシュ端面近傍の内周面に接するように円筒状または略円筒状治具を配置して、その内周面部位からの冷却を弱くするか、または断熱性を向上させて、端面部内周面が高周波加熱され易くする(4)熱伝導性の良い材料で作られるコレットチャックを内周面冷却が必要とされる内周面部位に配置し、履帯ブッシュを保持するのうちの1つ以上の方法を組み合わせて焼入れ硬化するのが好ましい。 【0086】前記移動高周波焼入れ方法においては、履帯ブッシュを連続的に生産するために、履帯ブッシュ間の端面近傍の内周面に断熱性の高いスペーサーを挟み込んで移動高周波焼入れを実施するのが生産性の観点から好ましい。 【0087】また、前記移動高周波焼入れ方法において、履帯ブッシュ外周面を深く焼入れ硬化するためには、内周面が鋼のA1温度を越えず、また内周面に焼戻しマルテンサイト層を形成するために内周面温度が昇温され過ぎないように内周面からの冷却を実施しながら外周面側からの移動式高周波焼入れを実施することが好ましい。さらに、履帯ブッシュ端面部近傍においてはその内周面からの冷却を弱めるかもしくは止めることによって、内周面からの冷却を遅らせ、かつ、外周面からの移動加熱速度を遅くすることによって端面部全体がほぼ十分に加熱され、次の冷却によって端面部のほぼ全体が焼入れ硬化されるようにするのが好ましい。また、前述のように端面近傍の内周面に断熱性の高い円筒状または略円筒状のスペーサーを挟み込んで移動高周波焼入れを実施することも端面部を十分焼入れ硬化させる同じ作用を示すことから、生産性の観点からより好ましい。 【0088】また、前記内周面の冷却方法としては、内周面に冷却ノズルを配置して、水、水溶性焼入れ液、空気、噴霧などを吹き付けながら行うことが好ましいが、前述のように冷却の強弱が制御されるか、もしくはON−OFF制御できるようにするのがより好ましい。 【0089】さらに、熱伝導性の良い材料(例えば銅系、鉄系などの金属材料)で作られる内周面用コレットチャックを、履帯ブッシュの端面部近傍内周面を避けて、内周面冷却を必要とする内周面部位に配置し、履帯ブッシュを保持することが好ましく、また、これらに履帯ブッシュの両端面近傍内周面に断熱材を配置し、より短時間で端面部近傍が焼入れ硬化に十分な温度に加熱されるようにすることが好ましい。なお、この金属材料製のコレットチャック部の冷却効率をより高め、調整できるように工夫されることは好ましく、例えば、空気、水などの冷却媒体が出るようにすることも好ましい。 【0090】次に、前記第45発明〜第49発明において、履帯ブッシュの外周面および両端面部の焼入れ硬化層を連続的に形成するための外周面からの全体高周波加熱によって焼入れする方法において、(1)履帯ブッシュ両端面部が有効に高周波加熱できるような鞍型、渦巻きコイル、または円筒コイルを用いる(2)外周面からの熱拡散による内周面温度を調整するための内周面冷却を履帯ブッシュ両端面近傍において弱くするかまたは、止める(3)履帯ブッシュ端面近傍の内周面に接するように円筒状または略円筒状治具を配置して、その内周面部位からの冷却を弱くするか、または断熱性を向上させて、端面部内周面が高周波加熱され易くする(4)熱伝導性の良い材料で作られるコレットチャックを内周面冷却が必要とされる内周面部位に配置し、履帯ブッシュを保持するのうちの1つ以上の方法を組み合わせて焼入れ硬化することができる。 【0091】また、前記外周面からの全体高周波加熱をする焼入れ方法は、履帯ブッシュの外周面からの高周波加熱ができるとともに、履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体が互いに干渉し合わないように履帯ブッシュの両端面部に仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却を独自に実施できる焼入れ装置を用いて、円筒状履帯ブッシュ素材を円筒軸中心周りに回転させながら全体を誘導加熱し始め、かつ、内周面が鋼のA1変態温度以上に加熱されないように内周面の冷却を初めから、もしくは加熱途中から外周面より先に開始し、外周面からの加熱終了後に外周面を冷却することによって、外周面焼入れ硬化深さをより深くし、かつ、両端面部のシール平坦部の表面層が、外周面位置から履帯ブッシュ肉厚の1/2以上の幅にわたって焼入れ硬化することを特徴とするものである。 【0092】なお、複数個の履帯ブッシュを同時熱処理する場合には、履帯ブッシュ端面部が隠れないように履帯ブッシュ間に仕切り治具を挟んで、外周面からの冷却による端面部の焼入れを十分に行うが、その際、それらの仕切り治具は履帯ブッシュ内周側端面または面取り部に接触し、かつ、端面部近傍内周面をカバーして、内周面冷却時に端面近傍の内周面からの冷却を遅らせるようにする円筒状または略円筒状形状であることが好ましい。また、内周面冷却媒体としては、水、水溶性焼入れ液、空気、霧などが利用することができる。 【0093】前記第36〜49発明によって製造される履帯ブッシュにおいては、外周面焼入れ硬化層深さを肉厚さの30〜80%まで深くして履帯ブッシュの摩耗寿命を改善することを特徴とするが、履帯ブッシュの摩耗寿命はその外周面摩耗量が肉厚の50〜60%に達した時点として設計されていることから、外周面焼入れ硬化層深さを肉厚の40〜70%に設定することがより好ましい(第50発明)。 【0094】また、前記履帯ブッシュにおいては、150℃以上の焼戻し処理が施され、内、外周面部および両端面部の表面硬さがHRC50以上で、かつ、両端面部の焼入れ硬化深さが0.5mm以上、より長時間のオイルシール性を確保するためには2.0mm以上となることが好ましい(第51発明)。 【0095】次に、第52発明による履帯ブッシュの製造方法は、外周面および内周面から肉厚中心部に向かって焼入れ硬化され、その肉厚中心部付近に形成される未硬化層が両端面部に繋がっている両端面部を焼入れ硬化することを特徴とするものである。このように乾式用履帯ブッシュの両端面を追加的に焼入れ硬化して、オイル封入式履帯ブッシュに利用できれば、生産設備の共通化が図れるとともに生産性を画期的に向上させることができる。 【0096】本発明において、前記外周面および内周面は高周波焼入れによって焼入れ硬化するのが好ましい(第53発明)。この場合、前記外周面および内周面を高周波焼入れする際に、後の端面部の高周波焼入れ硬化層と重ならないように、未焼入れ層を残して焼入れされるのが良い(第54発明)。こうすることで、端面部の高周波による予備加熱を必要とせず、良い生産性を高めることができる。また、端面高周波焼入れ前段階において少なくとも150℃以上の温度での焼戻し処理が施され、端面部焼入れ硬化層を焼戻さないでより高硬度で、耐摩耗性に優れた状態で製造することが好ましい(第57発明)。 【0097】前述のように軟質層が履帯ブッシュ端面部に繋がるような履帯ブッシュの製造方法は、内周面、外周面をそれぞれ高周波焼入れすることによって製造されるが、小径な履帯ブッシュにおいては内周面を高周波焼入れすることが困難であり、また、内周面と外周面を個別に高周波焼入れすることはコスト高であるという難点がある。そこで、第55発明による履帯ブッシュの製造方法は、前記第53発明において、前記両端面部の焼入れに供する履帯ブッシュにおいては、1個以上の履帯ブッシュ素材をその外周面側からの高周波加熱によって、少なくともその履帯ブッシュ素材の内周面温度を焼入れ硬化可能な温度に加熱した後、(1)高周波加熱を止めて内周面からの冷却を先行して実施し、所定時間後に外周面からの冷却を施す一連の焼入れ作業、(2)高周波加熱を継続しながら内周面からの冷却を先行実施し、所定時間後に外周加熱を止めて外周面からの冷却を施す一連の焼入れ作業、(3)前記(1)、(2)の焼入れ作業において、その作業途中で内周面側の冷却を止めて、履帯ブッシュ内に残る残熱で内周面側硬化層を焼戻す一連の焼入れ作業のいずれかの焼入れ作業によって、外周面および内周面から肉厚中心部に向かって焼入れ硬化層を形成するか、または、内周面部にHRC45未満の焼戻し層を形成し、内周面および外周面間に軟質な未焼入れ層が残されてなり、両焼入れ層間の軟質組織が焼入れ温度からの冷却過程で析出するフェライト、パーライト、ベイナイトおよびマルテンサイトのうちの1種以上の組織またはそれらの組織中に粒状セメンタイトが分散されてなる組織からなることを特徴とするものである。 【0098】特に、複数個の履帯ブッシュを同時に焼入れる場合には履帯ブッシュを端面部で接触させて重ねて焼入れすることが可能であり、端面部においては肉厚中心部の軟化層が繋がり、オイルシール性が確保できないが、多数個同時に熱処理が可能で、画期的に生産性が高まるので、極めて低コストで乾式履帯ブッシュを生産することができる。 【0099】また、多数個を同時に焼入れる場合には、内周面冷却は特開2001−240914号公報に記載された層流焼入れ方法を適用することが好ましい。また、前述の両端面部に未焼入れ硬化層を残した履帯ブッシュを生産する場合には、■全体加熱用の高周波コイル形状が履帯ブッシュ端面部近傍の加熱速度を遅くするようにする、■履帯ブッシュ端面部に熱伝導性の良い材料からなる治具を配置して加熱される速度を遅らせる、等の手段を講じるのが好ましい。 【0100】前記履帯ブッシュの両端面部焼入れ方法としては、3kHZ以上の高周波加熱源を用いた高周波焼入れ方法を用いるのが好ましく、履帯ブッシュは履帯リンクに圧入する際の履帯ブッシュ圧入開始部がHRC45以下に焼戻ることを防止することによって、圧入不具合が防止される。また、HRC45以下の軟化層が発生する場合には、圧入開始部を避け、より端面側もしくはより中心側に深くすることによって圧入不具合が防止される(第56発明)。また、圧入開始部位置より端面側に浅く高周波焼入れする場合には、高周波電源の周波数をより高めることや水中に履帯ブッシュを浸漬しながら端面部を高周波焼入れすることが好ましい。 【0101】また、前記履帯ブッシュの両端面部に高周波焼入れを実施する焼割れ防止の前処理として、150℃以上、好ましくは200℃以上の焼戻し処理を施すことが好ましい(第57発明)。 【0102】また、前記履帯ブッシュの両端面を追加焼入れ硬化する場合には、内周面硬化層、外周面硬化層、端面硬化層との間に軟化層が存在するので、この部位に過負荷な応力が作用することを避ける必要が好ましいので、前記履帯ブッシュの両端面部近傍の形状において、内周面側面取り位置が外周面面取り位置より大きくし、偏荷重による履帯ブッシュ端面コーナー部に大きな曲げ応力が発生するのを防止するのが良い。なお、この結果は、履帯ピンとのかじりに対しても有効であると考えられる。 【0103】さらに、内周面硬化層、外周面硬化層、端面硬化層との間に軟化層が存在する場合には、引張残留応力が発生しやすいので、履帯ブッシュ両端面の高周波焼入れ硬化層に接して形成される前記軟質な焼戻しマルテンサイト組織層または未焼入れ層が繋がる外周面位置および内周面位置をショットピーニングするのが好ましく(第58発明)、これによって大きな圧縮残留応力を付加し、強度の向上を図ることが可能となる。なお、ショットピーニングを内周面に施すことは、履帯ブッシュの画期的な強度向上と履帯ピンとの耐焼き付き性を向上させる手段として極めて有効である。 【0104】また、前記両端面を追加焼入れ硬化した履帯ブッシュにおいても、前述のようにその内周面、外周面に燐酸塩皮膜などの化成処理もしくはメッキ処理が施されるのが好ましい(第59発明)。 【0105】 【発明の実施の形態】次に、本発明による履帯ブッシュとその製造方法の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。 【0106】図1は、外径60mm、内径40mm、肉厚10mmの履帯ブッシュを、850℃に加熱し、内周面と外周面から同時に強水冷したときの外周表面(A位置)、外周表面から2mm深さ位置(B位置)および肉厚中心(C位置)における温度と冷却時間との関係を示したものである。また、同図中の太い破線でS45C相当材の連続冷却変態図におけるパーライト析出開始線(Cカーブ)の範囲をα、βの各Cカーブで示したものであるが、それらのカーブは、肉厚10.4mmの履帯ブッシュを850℃から内外周面同時焼入れた場合の外周面焼入れ硬化層深さに基づいて推定したものであり、αCカーブは焼入性の低い鋼(DI=0.515in、0.47C−0.34Mn)の外周面焼入れ硬化層深さが約2.2mmで、肉厚中心硬さがHv=310であったことに基づいて、ほぼB位置での冷却線と交わるように記載され、さらに、βCカーブは、DI=0.72in、0.53C−0.48Mn炭素鋼を用いた場合のもので、その外周面硬化層硬さがHv=760であるが、肉厚中心硬さがHv=510とスルーハード化されていることから、ほぼC位置での冷却線と交わるように記載されるが、肉厚内部に未焼入れ層の形成がわずかなDI値の差で決まることがわかる。 【0107】図2は、0.4〜0.6重量%炭素を含有した各種炭素鋼のDI値とスルーハード化する履帯ブッシュ肉厚の関係を実験的に求めたものであり、その関係は、ほぼDI(inch)≦1.75×肉厚(inch)(図2中の直線関係)で与えられることがわかった。またさらに、入手性の良いS45C相当材のDI値バラツキ範囲を図2中の破線で示したが、例えばPC60(肉厚8.25mm)で0.56inch、PC200(10.4mm)で0.71inch以下の焼入性を持つように鋼材成分範囲が厳重に狭く管理することが必要とされ、その鋼材の入手性がきわめて難しく、単純な内外周面同時焼入れ方法によって、中小型履帯ブッシュの肉厚内部に軟質な未焼入れ層を形成させる製造方法が極めて難しいことがわかる。 【0108】また、図2の破線で示した鋼を使って必ずスルーハード化しない肉厚17mm以上の大型履帯ブッシュを製造する場合には、平均的なDI値(0.96inch)が低いために、外周面焼入れ硬化層深さが3.4mm程度に浅くなり(肉厚の約20%)、その履帯ブッシュの摩耗寿命が十分に改善できない問題が起こることは明らかである。 【0109】前記の観点から、本発明では各種の熱処理方法を駆使して、履帯ブッシュ肉厚内部の冷却速度を遅らせることによって、より高いDI値の鋼材を使った履帯ブッシュ肉厚内部においてもパーライト変態を促進させようとするものである。 【0110】図3は、図1と同じ履帯ブッシュを850℃からの2秒間の内外周面同時冷却後に2秒冷却を中止し、さらにその後内外周面を同時に再冷却した場合の前記A,B,C位置での冷却線を示したものであり、A,B位置での温度は内外周面同時冷却を一時停止する間(2秒)に復温し、中心部のC位置では、550〜500℃で2秒間恒温処理されるような冷却挙動を取ることがわかる。 【0111】なお、前記CCT線図の最短時間でパーライト変態を起こす温度(ノーズ)が550℃近傍であり、DI値の増大に伴ってその鋼のノーズ位置がより長時間側に移動することはよく知られており、例えば図2の直線関係と各種肉厚の肉厚中心部温度が550℃になるための冷却時間の関係を求め、前記の2秒間の遅れがDI=0.7inchでスルーハード化するものをDI=1.05までスルーハード化しないようにすることができること示していることがわかる。 【0112】また、図3に示した肉厚中心部の冷却曲線が恒温状態に近い状態にある場合にはCCT線図での検討よりTTT線図(恒温変態線図)で議論するほうが適正と考えられるので、図3中に0.5重量%C−0.91重量%Mn炭素鋼のTTT線図(太破線;50%パーライト変態線、太実線;100%パーライト変態線)とマルテンサイト開始温度(Ms)を示したが、通常、パーライト変態のための駆動力が大きい状態で起こるTTT線図はCCT線図よりより短時間側にあることから、肉厚中心部でのパーライト変態が起こりやすくなることは明らかである。 【0113】さらに、前記各冷却線との関係から、外周表面層近傍では、一旦マルテンサイト化した後に内周部からの熱拡散による焼戻しが起こり、B位置では、復温されるがその期間中に軟質組織形成されることはなく、再冷却によって硬化するが、肉厚中心のC位置ではパーライト変態が進行し軟質な組織が形成されることがわかる。 【0114】図4は前記冷却停止時間を4秒としたときの肉厚中心部(C位置)での冷却曲線を比べたものであり、前記冷却途中の停止時間をかなり長くできることは、かなり広範囲な焼入性の炭素鋼を使った履帯ブッシュの肉厚内部に軟質な未焼入れ層を形成させることができることは明らかである。 【0115】なお、前記の方法は履帯ブッシュ肉厚内部の冷却速度を遅らせるための極めて有効な方法であることがわかるが、例えば、内外周面同時冷却を内外同時に停止するだけでなく、例えば、内周面冷却だけを一時停止するかもしくは再冷却しないで完全に停止することなどによっても、その肉厚内部の冷却速度を遅らせることができることは明らかである。 【0116】図5(a),(b)は、前記内外周面同時冷却開始後に冷却を一時停止させる等の考え方に従った本実施形態の履帯ブッシュの部分断面図を示したものであり、いずれの履帯ブッシュも全周面が焼入れ硬化されたマルテンサイト組織からなり、その肉厚内部にパーライト組織を含んだ未焼入れ硬化層が形成されているが、さらに図5(b)は、前記方法において内外周面同時冷却後、内周面冷却のみを止めて内部面側のマルテンサイトを内部からの熱拡散によってHRC45未満の焼戻しマルテンサイト組織としたものである。 【0117】またさらに、履帯ブッシュの肉厚内部の冷却速度を遅らせる方法としては、全体加熱した後に外周面もしくは内周面の一方を所定時間先行冷却し、肉厚中心部を遅く冷却することによってパーライト変態を起こさせ、所定時間後に内外周面を両方冷却する方法が有効であることは明らかである。 【0118】図6は、前記と同じ肉厚の履帯ブッシュを850℃に加熱した後、内周面から4秒間先行冷却し、その後外周面を冷却した場合の各工程における肉厚断面における各温度分布を示したものであり、同図中の内外周面同時冷却時の温度分布と比較して、肉厚中心部の冷却速度が明らかに遅らされており、図1に併記したCカーブを参照することによって、履帯ブッシュ肉厚内部に軟質な未焼入れ層を形成させる有効な手段であることは明らかである。 【0119】また、図6の場合とは逆に、外周面先行冷却後に内周面を冷却する方法であっても、ほぼ図6と同程度の肉厚中心部の冷却速度を有効に遅らせることができることは明らかである。 【0120】より具体的には、肉厚10.4mmのPC200の履帯ブッシュにおいては内外周面同時冷却によってスルーハード化する鋼のDI値が0.72inchであることを上述したが、内周面のみの冷却によってスルーハード化するDI値が約2倍の1.45inchとなることから、この外周面もしくは内周面の一方を所定時間先行冷却する方法に従うと焼入性幅の広い鋼を使っても容易に肉厚内部にパーライト変態層を形成させることができることがわかる。 【0121】図7(a),(b)および(c)は、前記外周面もしくは内周面の一方を先行冷却し、所定時間後に全周を冷却する考え方に従った本実施形態の履帯ブッシュの部分断面図を示したものであり、図7(a)は内周面と外周面の冷却媒体を仕切る治具を端面部内周面側に押し当て、外周面と端面部が同時に外周面冷却媒体で冷却されるようにしたもので、外周面と端面部を先行冷却するかもしくは内周面を先行冷却し、所定時間後に全周面が冷却されるようにして肉厚内部のパーライト組織を含んでなる軟質層が端面部内周面につながるように製造されるものであり、さらに、図7(b)はその熱処理中の内周面冷却を制御して、内周面に形成された焼入れ硬化層を肉厚中心部の熱拡散によってHRC45未満の硬さに焼戻したものである。また、図7(c)は内周面と外周面の冷却媒体を仕切る治具を端面部外周面側に押し当て、内周面と端面部が同時に外周面冷却媒体で冷却されるようにし、外周面と端面部を先行冷却するかもしくは内周面を先行冷却し、所定時間後に全周面が冷却されるようにして肉厚内部のパーライト組織を含んでなる軟質層が端面部外周面につながるように製造されるものである。 【0122】さらにまた、履帯ブッシュを全体加熱した後に、内周面もしくは外周面の一方から先行冷却する際に、その冷却面の反対面から誘導加熱を施すことによって肉厚に極めて大きな温度勾配を形成させ、かつ、肉厚芯部の冷却速度を最も遅らせることができることは明らかであり、肉厚内部にパーライト変態層が形成される所定時間後に誘導加熱を止めて、その加熱面を冷却するこの方法は、誘導加熱による誘導加熱深さや投入電力および先行冷却時間を適正に選定することによって、前記使用する鋼の焼入性に関する制限を大幅に緩和するとともに肉厚内部におけるパーライト変態層形成位置とその幅を任意に調整できる特徴を有することがわかる。 【0123】図8は前記の関係を図示したものであり、履帯ブッシュを全体加熱した後に内周面を先行冷却する状態においては図中の線で示すような温度勾配を形成するが、その先行冷却中に外周面からの誘導加熱を施した場合には、図中の矢印で示すような更なる急激な温度勾配が形成され、550℃近傍にある肉厚内部位置で前述のTTT変態図やCCT変態図に記載されるパーライト変態が優先しておこること、さらに、肉厚中心部近傍まで焼入れ可能な温度以上に外周面から加熱し、その誘導加熱を止めて外周面冷却を実施することによって、深い外周面焼入れ硬化層形成することができることは明らかであり、摩耗寿命の改善に適した履帯ブッシュを製造するのに好ましい方法であることがわかる。 【0124】さらにまた、前記内周面の先行冷却を外周面からの誘導加熱中もしくは誘導加熱を止めて外周面冷却中に一時停止するかもしくはそのまま完全停止することによって外周面側からの熱拡散や外周面からの誘導加熱による熱拡散で内周面のマルテンサイト組織が焼戻されることは明らかである。 【0125】前記外周面からの誘導加熱方法とは逆の内周面からの誘導加熱方法をとる場合においても、外周面先行冷却中の内周面誘導加熱が内周面側により集中されるようにすることで、外周面硬化層深さをより深くし、内周面焼入れ硬化層を浅くすることができることも明らかである。 【0126】図9(a),(b)は、上述の外周面もしくは内周面からの誘導加熱を施しながらその反対面から先行冷却する考え方にしたがった本実施形態の履帯ブッシュの部分断面図を示したものであり、履帯ブッシュの摩耗寿命を改善するために、外周面側焼入れ硬化層をより深くするとともに、図9(b)では、内周面焼入れ硬化層を高靭性な焼戻しマルテンサイト組織としたものである。また、肉厚内部のパーライト組織を含む軟質層は、前記の図7に示すように、内周面と外周面の冷却媒体を仕切る治具を押し当てる位置と内周面と外周面のどちらを誘導加熱するのかによって外周面,内周面もしくは端面部につながるように調整されることは明らかである。 【0127】図10は、外径70mm、内径45.2mm、肉厚さ12.4mmの履帯ブッシュを、3kHz、200kWの電源を用いて、多段階に電力調整しながら960℃に全体加熱したときの外周面、肉厚中心部および内周面での誘導加熱状況を示している。 【0128】この図10から明らかなように、内周面温度は加熱開始から約12秒でほぼA1温度(720℃)に達するが、その時の肉厚中心部ではほぼ外周面温度とほぼ同じ930〜940℃に加熱されており、この状態で焼入れた履帯ブッシュは外周面硬化層として肉厚さの1/2以上が得られることは明らかである。また、内周面昇温曲線を参考にすれば、内周面硬さが軟化し過ぎないタイミングでの内周面冷却が可能であり、さらに、あらかじめ内周面を焼入れ硬化ものや、あるいは油焼入れなどによって肉厚全体を硬化させた履帯ブッシュを素材として外周面からの高周波加熱を実施することによって、内周面に焼戻しされた硬化層を残しながら肉厚中心部に軟質層を形成し、かつ、端面硬化層が肉厚さを1/2以上に形成し、且つ肉厚さ中心部の軟化層が端面部近傍の内周面側に繋げることができるのは明らかである。この製造方法は、内径面が小径で、内周面を高周波焼入れしにくい小径な履帯ブッシュの製造方法として極めて有効であり、内周面が高温短時間の焼戻し処理をかね、別工程での焼戻し処理を必要としない低コストな製造方法である。 【0129】図11(a)〜(c)は、上述の考えに従った本実施形態の履帯ブッシュの部分断面図を示すものであり、図12はそのときの履帯ブッシュ肉厚断面における硬さ分布を示したものである。ここで、図11(a)(b)は、履帯ブッシュ素材を一旦焼入れし、その肉厚全体を焼入れ硬化させた後(図12(a)中(a)、(b)線)に、外周面から高周波焼入れすることによって、肉厚芯部にHRC45未満の軟質な焼戻しマルテンサイト組織の軟質層1(図12(b)中の(a)線)、または、その軟質層1と外周面焼入れ硬化層2との境近傍にパーライトを含む軟質層3(図12(b)中の(b)線)が形成され、それらの軟質層1,3が端面部焼入れ硬化層4を避けて、端面部近傍の内周面に繋がって形成されるオイル封入式履帯ブッシュ5の部分断面図である。また、図11(c)、(b)は履帯ブッシュ素材の少なくとも内周面を焼入れし、パーライト組織を含んだその肉厚芯部に向かって内周面に焼入れ硬化層を形成した(図12(a)中(b)、(c)線)後、前記と同様に外周面からの高周波焼入れを施したオイル封入式履帯ブッシュ5の部分断面図である(図12(b)中の(b)、(c)線)。なお、図11中、符号6は内周面部の焼戻しマルテンサイト硬化層、符号7はHRC45未満のフェライト+パーライト未焼入れ硬化層である。 【0130】前記肉厚全体を焼入れ硬化するための鋼材はより焼入れ性の高い高価なものを使用することになるのに対して、少なくとも内周面が焼入れ硬化される鋼材は焼入れ性を低く抑えることができるので、より安価な鋼材(例えば0.3〜1.5重量%C、〜1.5重量%Mn、〜0.5重量%Cr、Bの2種以上の合金元素を含有する中、高炭素鋼)が利用できる特徴がある。 【0131】また、本実施形態では外周面から高周波加熱中に内周面の焼入れ硬化層が、外周面からの熱拡散によって焼戻されるため、履帯ブッシュの靭性回復のために従来から実施されている焼戻し工程を廃止することができ、さらに、その結果としてより耐摩耗を必要とする外周面と端面部の焼入れ硬化層をより高硬度な状態で使用できることは極めて有効である。 【0132】さらに、通常、履帯ブッシュは外周面からの摩耗深さが肉厚の1/2に至る時点で履帯ブッシュ寿命として交換することが実施されているために、履帯ブッシュの外周面硬化層を肉厚の40〜70%まで深くすることが摩耗寿命を延ばす方策としてより有効であり、本実施形態では、外周面からの高周波加熱を施し始める際から、または、途中から内周面を各種の方法で冷却することによって、内周面の焼入れ硬化層が軟質に焼戻しされ過ぎないようにしながら外周面からの深い高周波焼入れができるようにした。 【0133】外周面からの高周波加熱方法としては、図13(a)に示されるように端面部、外周面が効率的に加熱されるような鞍型コイル8を用いて高周波焼入れする方法も有効であるが、図13(c)に示されるように端面部が効率的に加熱されるようにした渦巻きコイル状の誘電子9を用いる方法が加熱大電力の投入の観点から有効である。ここで、図13(b)は図13(a)のA矢視図である。 【0134】使用する高周波加熱用の周波数は履帯ブッシュの肉厚によって最適化されるものであるが、設備の共有性を考慮した場合には、1〜20kHz程度の高周波電源を用いることが好ましく、履帯ブッシュ5を回転させながら、外周面からの高周波加熱が均質化されるように実施し、所定時間後に外周からの高周波加熱を止めて、外周面から水スプレーなどによって冷却して焼入れる操業を行うのが良い。更に内周面焼入れ硬化層の硬さをHRC45以上に確保しながら、より深い外周面硬化層を得る場合には、前述したように内周面からの冷却を実施することが必要であり、内周面温度が500℃以上に過熱されないように制御することが必要である。 【0135】また、この場合においては、内周面温度を内周面冷却によって適切にコントロールすることによって、外周面側からの高周波加熱による内周面焼入れ硬化層の硬さが調整できることが大きな製造方法の特徴となり、例えば、内周面焼入れ硬化層をHRC45未満に制御することによって内周面焼入れ硬化層をセメンタイト粒が分散したマルテンサイト組織に改質することができ、より衝撃的荷重に耐える、高靭性の、オイル封入式履帯ブッシュを製造することができる。 【0136】図14(a)、(b)、(c)、(d)は前述の内周面冷却方法を示したものである。図14(a)は、履帯ブッシュ5両端面部に、内周冷却媒体が外周面側に漏れないようにする仕切り治具10,11を配し、さらに、水、水溶性焼入れ液等の冷却媒体導入管12を履帯ブッシュ5内周面に配して、この冷却媒体導入管12内を流れる冷却媒体の方向を変えて、その冷却媒体導入管12外周面と履帯ブッシュ5内周面で構成される隙間に、履帯ブッシュ5軸方向に冷却媒体を流す層流冷却方法で内周面の冷却を制御する方法を示すものである。この層流冷却方法は1秒以内での冷媒の流れをON−OFFできるために、より正確な内周面冷却が可能であるので好ましい方法である。 【0137】また、図14(b)は、冷却媒体導入管12として、ノズルタイプのものを使用する例であり、水以外にも空気、噴霧などの冷却媒体を使用するのに好ましいものである。図14(c)は、履帯ブッシュ5端面近傍を避けた内周面を熱伝導性の良い金属材料性の内径コレットチャック13によって保持し、外周面からの高周波加熱による内周面の温度上昇を抑制する方法である。なお、この内径コレットチャック13から空気を吹き付けることや水などを沁みださせる等によってその内径コレットチャック13に冷却機能を持たせるのが好ましい。 【0138】また、この図14中に示した仕切り治具10,11のように、仕切り治具を履帯ブッシュ端面近傍内周面を覆うような形状とすることによって、前述の内周面冷却による履帯ブッシュ端面部の内周面側からの冷却が遅れ、端面部のより安定した焼入れ硬化層が得られるので、図14(a)、(b)、(c)のいずれの方法においても、この仕切り治具を適用することが好ましい。なお、図14(d)は内周面に冷しがね(または水冷された冷しがね)14を配したものであって、最も内周面冷却効果の少ない方法である。 【0139】図15(a)、(b)、(c)は、前述のコレットチャック方式の他の例を示したものである。(b)は履帯ブッシュ端面部近傍の内周面部を断熱するように内径コレットチャック13に断熱材15を配したものである。こうすることで、端面部の焼入れ硬化層がより短時間の外周面からの加熱によって形成され易くなり、熱処理サイクルを短縮させるのに好ましい方法である。また、(c)はコレットチャック13中心部に空気、噴霧等冷却媒体が噴出せる冷却ノズル16を設けたものである。 【0140】図16(a)、(b)は、外周面からの移動式高周波焼入れ法による履帯ブッシュの外周面焼入れ硬化層および端面部焼入れ硬化層を形成させる製造方法を示したものである。図16(a)は前述の履帯ブッシュ5を連続的に矢印B方向に押し込みながら高周波加熱コイル9で加熱して、外周面冷却ノズル17から水もしくは水溶性焼入れ液、噴霧等の冷却媒体を吹き付けて焼入れ硬化する方法を示したものである。この際には、端面部近傍での履帯ブッシュ送りの速度V1を中央付近での送り速度V2より遅くすることによって、端面部近傍が十分に加熱され、それに続く冷却によって端面部での焼入れ硬化層が幅広く形成される。また、内周面硬さをHRC45以上に確保しながら、深い外周面焼入れ硬化層を形成するには、図16(b)に示されるように履帯ブッシュ5内周面を内周面冷却ノズル17Aにて前述とほぼ同じ原理で、水、水溶性焼入れ液、空気、噴霧の吹き付け等で適切に冷却しながら、外周面からの深い高周波加熱とそれに続く冷却を実施すると良い。なお、図16において、符号18にて示されるのは、隣接する履帯ブッシュ5,5間の隙間に介挿される隙間治具である。 【0141】なお、設備上の便利さからすれば、必ずしも履帯ブッシュ5を移動させることは無く、高周波加熱コイル9と冷却ノズル17,17Aを移動させても良い。また、履帯ブッシュ5を必ずしも連続的に送る必要もない。さらに、図16に示されるような横型でなく、縦型で移動焼入れすることも可能であり、例えば、図17に示されるように、図14,15に示されるような各種内周面冷却方法を併用しながら外周面からの高周波焼入れを実施することもできる。 【0142】本実施形態において、肉厚全体を焼入れ硬化した履帯ブッシュを外周面から急速加熱しすぎた場合には、いわゆる重ね焼入れによる焼割れが発生する危険があるので、外周面からの高周波加熱初期の昇温速度をやや遅くすることが好ましく、このような加熱速度調整ができる全体高周波加熱方法が移動式高周波加熱法より好ましい。さらに、前述の内周面焼入れ硬化した履帯ブッシュでは外周面からの急速加熱によっても焼割れを発生する危険性が無いので、より好ましい。 【0143】さらに、外周面からの全体高周波加熱による履帯ブッシュの昇温曲線(図10)を参考にすると、内周面温度が焼入れ硬化処理が可能になる800℃以上に加熱される状態で、外周面からの高周波加熱を止めるか、または、その加熱を継続しながら、内周面のみを強烈に先行冷却し、先行冷却中に一旦焼入れマルテンサイト層を形成した後に(所定時間後に)内周面冷却を止め、外周面からの熱拡散による内周面焼入れ硬化層をHRC45未満になるように焼戻しながら、外周面からの高周波加熱を止めて外周面からの冷却を実施する方法が強靭な履帯ブッシュの製造方法として適していることが分かる。 【0144】図18(a)、(b)、(c)は、この製造方法によって製造される履帯ブッシュの部分断面図を示したものである。この方法によれば、前述の履帯ブッシュ肉厚全体を焼入れ硬化したり、履帯ブッシュの内周面を焼入れ硬化させておく熱処理を必要としないことから極めて安価な製造方法となることは明らかである。さらに、HRC45未満のセメンタイト粒が分散した焼戻しマルテンサイト組織層19は、Uノッチシャルピー衝撃値が確実に5kg−m/cm2以上になるように設定されているが、その焼戻し温度400℃以上の温度で短時間焼き戻されている状態が好ましい。なお、図18(a)(b)において、符号20にて示されるのは、冷却途中で析出するフェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトの1種以上が焼戻された組織層である。 【0145】本発明者らは、ほぼ同じ手法で、内周面をHRC45以上の硬さの焼入れマルテンサイト組織の硬化層とする技術を先願として提案したが、この先願においては、より硬質な焼入れマルテンサイト組織を得るために、内周面先行冷却をし続けるために、仕切り治具との履帯ブッシュの接触部が変態途中に変形し、この部位からの内周面冷却媒体が漏れやすくなり、その端面部での焼きむらが発生しやすい問題があった。これに対して、本実施形態では、仕切り治具が接触する履帯ブッシュ両端面部近傍の面取り形状を外周面の面取り形状より大きくすること、および/または、より高靭性のHRC45未満の焼戻しマルテンサイトを形成させるために内周面先行冷却を途中で一旦止めることによって、仕切り治具からの冷却媒体の漏れによる焼きむらに対する防止を図ったものであり、一連の焼入れ操作で内、外周面の熱処理が完了する経済効果は大きい。さらに、その履帯ブッシュ肉厚中心部では再加熱再焼入れによる顕著な結晶粒の微細化(ASTM粒度番号で9〜13番)が図られ、履帯ブッシュの強度向上に寄与することは明らかである(図18参照)。 【0146】なお、外周面の焼入れ硬化層と繋がって端面部が焼入れ硬化される外周面高周波焼入れ方法については前述の通りである。本実施形態では、この外周面高周波焼入れ方法を適用し、その焼入れ硬化層2,4を除く部位がHRC45未満の高靭性の軟質層21からなるオイル封入式履帯ブッシュを得たものである。図19(a)〜(e)には、このオイル封入式履帯ブッシュの組織構成図が示されている。なお、HRC45未満の軟質層21を形成する方法としては、外周面高周波焼入れ前に、素材調質(焼入れ焼戻し)等によって硬さ、組織を調整しておく方法もあるが、前述の製造方法によって調整するのがコスト的より好ましい方法である。 【0147】さらに、履帯ブッシュ内周面に嵌る履帯ピンとの摺動によって焼付き現象が発生したり、耐摩耗性を必要とする場合や砂地などを長距離、高速走行するために、より確実な履帯ブッシュの疲労強度を高める必要がある場合には、図19に示した履帯ブッシュの内周面に図20(a)〜(e)に示されるように、肉厚の5〜15%に相当する薄い高周波焼入れ硬化層22を形成し、内周面に30kg/mm2以上の圧縮残留応力を形成することが好ましい。 【0148】また、内周面の高周波加熱による熱拡散によって外周面硬化層の硬さが減少し、焼入れ硬化深さが浅くなることは避けねばならないので、好ましくは20kHz以上の高周波電源を使うとともに、外周面を冷却しながら内周面高周波焼入れを実施することが好ましい。 【0149】図21(a)〜(e)には、油圧ショベルなどに使用されているオイル封入性を必要としない乾式履帯の履帯ブッシュが示されている。図示のように、この乾式履帯ブッシュにおいては、外周面硬化層23と内周面硬化層24との間に形成された肉厚中心部の軟質層25が両端面に繋がっている。なお、図21において、記号Pは外周面圧入開始点を示し、記号Qは内周面面取り開始点を示している。 【0150】ところで、前記履帯ブッシュの製造方法としては各種の方法が提案されているが、図22に示されているように、本発明者らが先願(特開2001−240914号公報)において提案した層流焼入れ方法により、複数個の履帯ブッシュ5の内外周面に同時に硬化層を形成させ、両硬化層間に軟質層を設けた履帯ブッシュを製造する方法を用いることができる。なお、図22において、1個以上の履帯ブッシュ端面部に未焼入れ層を形成させる場合においては、全体加熱する際に、端面部の加熱が遅れるように高周波加熱コイル(渦巻きコイル)9の間隔を調整するのが好ましい。 【0151】図23(a)〜(f)には、履帯ブッシュ端面を別途硬化させることによる、生産性の良い端面を硬化したオイル封入式履帯ブッシュの製造方法が示されている。 【0152】図23(a)〜(f)において、端面部に符号26にて示される部位は追加的に高周波焼入れした硬化層である。通常、この硬化層26はオイルシールが摺動し、外系からの土砂進入を防止する機能をも果たすために、より高い硬度が要求され、少なくとも0.5mm以上の硬化深さが要求されているが、より長時間の使用を考慮した場合には、1mm以上の硬化深さが必要である。とりわけ、図23(a)、(b)、(c)に示される履帯ブッシュにおいては、端面硬化層26と外周面硬化層23、内周面硬化層24が重なって焼入れされるために、その重なり部分には軟質な粒状セメンタイトが分散した焼戻しマルテンサイト層27が形成され、焼入れ硬化層26との境部においてはHRC40未満の一部フェライト、パーライト組織が形成される。このHRC40未満の軟質部位が、履帯ブッシュが履帯リンクに圧入される時の外周部の圧入開始点Pに存在する場合には、かじりによる圧入不具合を発生するために、圧入開始点Pの硬さをHRC40以上、好ましくはHRC45以上にするように、端面部焼入れ硬化深さをより浅くするか、または図23(b)、(c)、(e)に示されるように圧入開始点Pよりもより深く焼入れることが好ましい。なお、前記端面部焼入れ層26を浅くしたり、またその熱影響部を浅くする場合には、高周波加熱電源は40kHz以上に高くしたり、加熱焼入れ部以外を冷却しながら高周波焼入れすることが好ましい。 【0153】また、端面部の高周波焼入れによる焼割れが起こりやすい低合金鋼(SMn、SCr、SCrB、SCM、SNCM系鋼材)や、より高炭素の鋼(0.55重量%以上)からなる履帯ブッシュでは、この端面部の焼割れを防止するために、端面部から高周波加熱する場合には、端面部高周波加熱初期における急速加熱を避け、十分な高周波により余熱を実施しながら、本加熱で急速加熱焼入れを実施することや、端面部の内周面、外周面が焼入れ硬化されていない履帯ブッシュを図23(d)、(e)、(f)のように端面焼き入硬化させることが好ましい。 【0154】図24(a)(b)(c)は、三段に積み重ねて、全体高周波加熱後に内周面先行冷却、外周面冷却によって製造した履帯ブッシュ(S45C炭素鋼)の両端面部を150kW、40kHz、3,4,5秒の各条件で高周波焼入れしたもののマクロ組織を示したものである。また、図25は、図24に示される矢印R方向および位置での外周面の硬度測定結果を示したものである。端面硬化層のシール面硬さはHRC60(ビッカース硬さHv=700)と、浸炭焼入れ履帯ブッシュと同程度の硬さが得られていることがわかる。 【0155】また、図25の硬さ分布図から明らかなように、焼入れ硬化層から履帯ブッシュ中央方向に高周波加熱による軟化層が広がっている。この熱影響部を幅狭くするためには、例えば焼入れ硬化層以外の熱影響部を冷却することが好ましく、例えば履帯ブッシュを端面部を残して水浸する焼入れ方法や、水中で端面部を高周波焼入れする方法等を用いることが好ましい。 【0156】なお、これらの履帯ブッシュは図24に示されるように端面部近傍の内周面、外周面に軟化層が繋がるために、この繋ぎ部位に引張残留応力が発生しやすいことが危惧されたので、図24(c)に示される5秒の高周波焼入れ品の圧入開始点から履帯ブッシュの中央側へ1mm,3mm入った位置での残留応力をX線法によって調査した。この結果、1mm位置では軸方向応力=−53kgf/mm2、円周方向応力=39kgf/mm2の残留応力が観察され、最も危惧される焼入れ硬化層に沿った円周状の割れの危険性がないことが明らかになった。さらに、焼入れ処理により残留応力が150℃以上の焼戻し処理を施すことによって減少することから、履帯ブッシュの端面高周波焼入れによる焼割れなどの危険が完全に回避されることが明らかである。 【0157】また、履帯に係る偏荷重を受けて履帯ピンが撓む時には履帯ブッシュ端面部近傍に偏荷重が作用してもその軟質層に曲げ荷重がかかりやすいため、本実施形態では端面の内周側面取り終点が少なくとも外周面の圧入開始点よりも深い位置にくるようにして、曲げ応力を軽減できる形状とし、さらに、最終熱処理工程の焼戻し処理を廃止して使用する場合には、前記円周方向の残留応力を圧縮残留応力に変える目的から、その端面熱処理部近傍にショットピーニングなどの機械的加工処理を施すようにした。 【0158】なお、履帯ブッシュの内周、外周、端面部の一箇所以上の焼入れ硬化層硬さが少なくともHRC50以上であることが好ましいことから、履帯ブッシュに供する鋼材の炭素量は0.30〜1.5重量%であることが好ましい。また、その焼入れ性(DI値)は特に特定するもので無いが、DI値=2.0以下の焼入れ性の低い炭素鋼、炭素ボロン鋼で多く対応できるため、大きな経済効果が期待できる。 【0159】さらに、端面部の耐摩耗性をより強化するためには、前記端面部を追加高周波焼入れした焼入れ硬化層は150℃未満の焼戻しまたは未焼戻しの状態で使用することが好ましいので、この追加焼入れに供する履帯ブッシュにおいて焼戻し処理などを完了させておくことも好ましい。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000001236 【氏名又は名称】株式会社小松製作所 【住所又は居所】東京都港区赤坂二丁目3番6号
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| 【出願日】 |
平成14年5月24日(2002.5.24) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100097755 【弁理士】 【氏名又は名称】井上 勉
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| 【公開番号】 |
特開2003−342636(P2003−342636A) |
| 【公開日】 |
平成15年12月3日(2003.12.3) |
| 【出願番号】 |
特願2002−150469(P2002−150469) |
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