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【発明の名称】 鋼板の連続焼鈍方法
【発明者】 【氏名】油井 正弘
【住所又は居所】愛知県東海市東海町5−3 新日本製鐵株式会社名古屋製鐵所内

【氏名】関本 総裕
【住所又は居所】愛知県東海市東海町5−3 新日本製鐵株式会社名古屋製鐵所内

【要約】 【課題】先行材から焼鈍条件の異なる後行材への変更に伴う歩留まりの低下を最小限に抑制することができる鋼板の連続焼鈍方法を提供する。

【解決手段】めっき装置1の前段に設置されたガス加熱式の連続焼鈍炉5の入口などに、誘導加熱装置6,7を設ける。先行材と後行材との材質や板厚が異なる場合、両者の境界の条件変更部が炉を通過する際に、後行材の温度を急速に変化させることによって出口の板温を制御する。鋼板のラインスピードは変化させない。ガス加熱式の連続焼鈍炉5は温度応答性が悪いために従来は数百mに及ぶ「板温外れ」を生じていたが、本発明では10m以下になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ガス加熱式の連続焼鈍炉による鋼板の連続焼鈍方法において、先行材と後行材との境界の条件変更部を、ラインスピードを変更させることなく炉内に通板させるとともに、連続焼鈍炉に設置した誘導加熱装置により、条件変更部の板温を迅速に変更することを特徴とする鋼板の連続焼鈍方法。
【請求項2】 ガス加熱式の連続焼鈍炉が、無酸化炉と還元炉と冷却炉とを直列に配置した連続焼鈍炉であり、無酸化炉の入口と還元炉の入口とにそれぞれ設置した誘導加熱装置により、条件変更部の板温を変更することを特徴とする請求項1記載の鋼板の連続焼鈍方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は鋼板の連続焼鈍方法に関するものであり、更に詳細には先行材から焼鈍条件の異なる後行材への変更を円滑に行なえるようにした鋼板の連続焼鈍方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば溶融亜鉛めっきラインにおいては、図5に示すようにめっき装置1の前段に無酸化炉2と還元炉3と冷却炉4とを直列に配置したガス加熱式の連続焼鈍炉5が配置されている。鋼板は無酸化炉2の内部で例えば600℃まで加熱されたうえ、還元炉3の内部で鋼板の種類に応じた温度まで更に加熱され、冷却炉4を通過する間に500℃前後まで徐冷され、めっき装置1に送られる。
【0003】無酸化炉2の出口の板温は鋼板の種類に関係なく一定に管理されているが、図6に示すように還元炉3出口の板温は、高温サイクル品は800℃、中温サイクル品は750℃、低温サイクル品は700℃というように鋼板の種類により様々に設定されている。また鋼板の板厚も様々である。このため先行材と後行材との鋼種や板厚が異なる場合には、その境界部(条件変更部)で焼鈍条件を急速に変化させる必要がある。しかしガス加熱炉は温度変化に対する応答性が悪く、条件変更に迅速に対応できない。このため、先行材から焼鈍条件の異なる後行材への切り替えを行なう場合には、条件変更に伴う欠陥が発生する。
【0004】例えば図7は、板厚が1.2mmの先行材から板厚が1.6mmの後行材に鋼板の種類が変化するときの無酸化炉2の状態を示したグラフである。後行材は先行材よりも板厚が厚いので、板温を600℃の一定温度に維持するためにはガス量を増加させねばならず、先行材の終端部から徐々にガス量を増加させている。しかし先行材の品質に影響を及ぼすために昇温には限界がある。そのため板厚が1.6mmの後行材への条件変更点が無酸化炉2内を通過する際に、図示のように板温が急激に低下して管理限界である570℃を下回ってしまう。
【0005】そこで図7に示すようにラインスピードを落とすとともにガス量を増加させることにより、板温を上昇させて管理限界内に戻しているが、それまでに後行材の頭の部分でかなりの長さにわたり「板温外れ」となる。また図8は板厚が1.2mmで設定温度の低い先行材から、板厚が1.6mmで設定温度の高い後行材に鋼板の種類が変化するときの還元炉3の状態を示したグラフである。ここでも同様に、ラインスピードを落としているにもかかわらず、後行材の頭の部分を急速に昇温させることができず、かなりの長さにわたり「板温外れ」となる。
【0006】例えばラインスピードを100m/分とした場合、図7の無酸化炉2の「板温外れ」は150mに達し、図8の還元炉3の「板温外れ」は300mに達する。無酸化炉2の板温が低温側に外れるとカーボン残りによる不めっきを招き、高温側に外れるとめっきの密着性の低下を招く。また還元炉3の板温が低温側に外れると未結晶による材質不良を招き、高温側に外れると粗大粒による材質不良を招く。これらにより直接的な歩留まりの低下を生ずる。また、ラインスピードを落とすことによって後工程のめっき装置1などにも悪影響が生じ、外観不良等の欠陥発生を招く。これらを総合すると、先行材から焼鈍条件の異なる後行材への変更に伴う歩留まりの低下は大きい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記した従来の問題点を解決して、先行材から焼鈍条件の異なる後行材への変更に伴う歩留まりの低下を最小限に抑制することができる鋼板の連続焼鈍方法を提供するためになされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するためになされた本発明は、ガス加熱式の連続焼鈍炉による鋼板の連続焼鈍方法において、先行材と後行材との境界の条件変更部を、ラインスピードを変更させることなく炉内に通板させるとともに、連続焼鈍炉に設置した誘導加熱装置により、条件変更部の板温を迅速に変更することを特徴とするものである。なおガス加熱式の連続焼鈍炉が、無酸化炉と還元炉と冷却炉とを直列に配置した連続焼鈍炉であり、無酸化炉の入口と還元炉の入口とにそれぞれ設置した誘導加熱装置により、条件変更部の板温を変更することが好ましい。
【0009】本発明によれば、応答性に優れた誘導加熱装置をガス加熱式の連続焼鈍炉の入口等に設置し、後行材の板温を変更しておくことによって、先行材と後行材との境界の条件変更部が炉内を通過することに伴う板温変動を最小限に抑制し、「板温外れ」を大幅に短縮できる。またラインスピードを一定とするため、前後の工程に悪影響を及ぼすことがない。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に本発明の好ましい実施形態を示す。図1において、1は溶融亜鉛めっきを行うめっき装置であり、その前段に無酸化炉2と還元炉3と冷却炉4とを直列に配置したガス加熱式の連続焼鈍炉5が配置されていることは従来と同様である。しかし本発明では従来とは異なり、連続焼鈍炉5に誘導加熱装置6、7が設置されている。この実施形態では、誘導加熱装置6は無酸化炉2の入口に設置されており、誘導加熱装置7は還元炉3の入口に設置されている。
【0011】誘導加熱装置6,7は電磁誘導により鋼板を直接加熱することができるものであり、ガス加熱とは異なり電力調整によって鋼板の加熱温度を迅速に変化させることができる特性を持っている。この特性を利用して、本発明では以下に述べるように、先行材と後行材との境界の条件変更部が炉内を通過することに伴う板温変動を、ラインスピードを一定に保ったままで最小限に抑制する。
【0012】前記したと同様に板厚が1.2mmの先行材から板厚が1.6mmの後行材に鋼板の種類が変化する場合を例として説明する。図2は無酸化炉2を通過する際の鋼板温度の変化を示すグラフであり、先行材は無酸化炉2の出口で板温管理範囲内にまで加熱されているが、板厚が厚い後行材は熱容量が大きいために、そのままでは板温管理下限以下にまで温度ドロップしてしまう。そのドロップ幅は例えば60℃である。
【0013】そこで本発明では、無酸化炉2の入口に設置されている誘導加熱装置6を後行材に切り替わった瞬間から作動させ、無酸化炉2の入口における後行材を加熱して昇温させる。これにより後行材は図2に示すように加熱されて行き、無酸化炉2の出口温度が板温管理範囲内に入るようになる。なお入口温度により昇温勾配は変化するので、無酸化炉2の入口における誘導加熱装置6による昇温幅は、例えば100℃程度となる。
【0014】このようにして、無酸化炉2の入口に設置されている誘導加熱装置6を用いて、板厚が1.2mmの先行材から板厚が1.6mmの後行材に鋼板の種類が変化した場合にも、ラインスピードを一定に保ったままで無酸化炉2の出口温度を一定に保つことができる。同様に、還元炉3の入口に設置された誘導加熱装置7を用いて、還元炉3の出口温度を後行材に適した温度に調整することができる。さらに、上記とは逆に先行材よりも後行材の板厚が薄い場合にも、誘導加熱装置6、7を後行材に切り替わった瞬間から停止させることにより、ラインスピードを一定に保ったままで同様に板温制御を行うことができる。
【0015】図3は本発明の効果を示すグラフであり、図7に示した場合と同様に、板厚が1.2mmの先行材から板厚が1.6mmの後行材に鋼板の種類が変化するときの無酸化炉2の状態を示したグラフである。図示のように、条件変更点において誘導加熱装置6を動作させることにより、ラインスピードを一定に保ったままで板温を一定に保つことができ、「板温外れ」を防止できる。なお、後行材に移行した後はガス量を増加させるとともに、誘導加熱装置6の出力を次第に絞って行けばよい。
【0016】また図4は図8と同様に、板厚が1.2mmで設定温度の低い先行材から、板厚が1.6mmで設定温度の高い後行材に鋼板の種類が変化するときの還元炉3の状態を示したグラフである。本発明によれば条件変更点において誘導加熱装置7を動作させることにより、ラインスピードを一定に保ったままで板温を急速に後行材の設定温度まで昇温させることができ、「板温外れ」を防止できる。
【0017】前記したように、ラインスピードを100m/分とした場合、従来は無酸化炉2の「板温外れ」は150mに達し、還元炉3の「板温外れ」は300mに達していたのであるが、本発明によれば無酸化炉2の「板温外れ」も還元炉3の「板温外れ」も、10m以下にまで大幅に短縮することができた。
【0018】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の鋼板の連続焼鈍方法は、応答性に優れた誘導加熱装置をガス加熱式の連続焼鈍炉の入口等に設置し、条件変更部の通過と同時に後行材の板温を急速に変更するようにしたものである。これによって炉出口における後行材の板温変動を最小限に抑制し、「板温外れ」を大幅に短縮できる。また従来のように板温調整のためにラインスピードを変化させる必要がないため、前後工程に悪影響を及ぼすこともない。この結果、本発明によれば連続焼鈍ラインの総合的な歩留まりを1.2%程度向上させることが可能となった。
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区大手町2丁目6番3号
【出願日】 平成14年5月9日(2002.5.9)
【代理人】 【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄 (外2名)
【公開番号】 特開2003−328039(P2003−328039A)
【公開日】 平成15年11月19日(2003.11.19)
【出願番号】 特願2002−133631(P2002−133631)