| 【発明の名称】 |
磁気特性とグラス被膜特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】小林 英之 【住所又は居所】姫路市広畑区富士町1番地 新日本製鐵株式会社広畑製鐵所内
【氏名】竹田 和年 【住所又は居所】姫路市広畑区富士町1番地 新日本製鐵株式会社広畑製鐵所内
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| 【要約】 |
【課題】本発明は、最適量の均一で優れたグラス被膜特性と優れた磁気特性を有する方向性電磁鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 仕上げ冷延後に脱炭焼鈍した後焼鈍分離剤を塗布し、高温仕上げ焼鈍する工程を含む方向性電磁鋼板の製造方法において、焼鈍分離剤として用いるMgOの塩素含有量R(Cl換算、質量%)が同じくMgOに含有するアンチモン量S(Sb2 O3 換算、質量%)との間に、−3.75×R+0.2375≦S≦−3.75×R+0.5375の関係を満足することを特徴とする磁気特性とグラス被膜特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法。 【請求項2】 焼鈍分離剤に含有するアンチモンを酸化アンチモンのエマルジョンとして添加することを特徴とする請求項1に記載の磁気特性とグラス被膜特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は方向性電磁鋼板の製造に際し、高温仕上げ焼鈍工程において極めて均一で、優れた密着性を有する被膜をコイル全面に形成するとともに、優れた磁気特性を持つ方向性電磁鋼板を得るための製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】通常、方向性電磁鋼板はSi:2.5〜4.0%を含有するスラブを熱延し、冷延、焼鈍した後MgOを主成分とする焼鈍分離剤を鋼板に塗布乾燥した後巻き取り、高温仕上げ焼鈍を行い、絶縁被膜とフラットニング処理を行って最終製品とされる。焼鈍分離剤として使用されるMgOは鋼板の焼き付きを防止するだけでなく、高温焼鈍中に鋼板中のSiO2 主体の酸化膜と反応してグラス被膜と称されるフォルステライトを主成分とするセラミック層を形成する。グラス被膜は電磁鋼板をトランスなどの鉄芯に加工する時の作業性などに大きく影響を及ぼす為、絶縁性だけでなく優れた密着性が必要とされている。 【0003】一般に、グラス被膜形成反応には高温仕上げ焼鈍条件、酸化膜性状とともに焼鈍分離剤の性状、不純物等が大きく影響する。また、形成されたグラス被膜には熱膨張係数の差から鋼板にいわゆる張力効果による磁性改善作用があることから、方向性電磁鋼板に適したMgOの開発が盛んに行われている。 【0004】MgOは、一般に「微量添加剤」とともに水に懸濁させてスラリー状として鋼板に塗布した後乾燥させ、その後鋼板をコイル状に巻き取った後高温仕上げ焼鈍するという工程がとられている。微量添加剤を用いずにMgOのみでグラス被膜形成を行った場合、反応性の高いMgOを用いた場合には低温からグラス被膜形成が可能であるものの、MgOと水との反応性も高くなることから高温仕上げ焼鈍中の雰囲気露点は高く、生成したグラス被膜が不均一になったり、またグラス被膜が過剰に生成することにより占積率が悪化するといった問題があり、反応性の低いMgOを用いた場合には、低温でのグラス被膜形成反応の進行が抑制されることから、インヒビターが不安定になって磁気特性が劣化したり、ひどい場合にはグラス被膜が形成されないといった問題点がある。 【0005】MgOに含有せしめる微量添加剤としては金属酸化物、各種化合物が用いられているが、これらの微量添加剤により方向性電磁鋼板の磁性やグラス被膜の密着性が大きく変動し、向上したり劣化したりすることが判明している。 【0006】微量添加剤の具体的な例としては、酸化チタンやアンチモン化合物を用いる方法が知られている。酸化チタンの添加例としては、特公昭51−12451号公報にMgOにTi化合物としてTiO2 をMg化合物100に対して0.5〜80の重量比で添加する技術が開示されている。またアンチモン化合物の例としては、特開昭49−27423号公報にアンチモン、あるいはアンチモンを含む化合物を0.1〜15%(アンチモン化合物として)添加する技術が開示されており、優れた磁気特性が得られている。さらに塩素の例としては、特開昭60−145382号公報に、MgO:100重量部に対して、Sb,Sr,Ti,Zrの塩化物を一定量含有する硫酸アンチモン0.5〜2.0重量部を添加する技術が提案されており、これによりグラス被膜形成の反応性が向上し、グラス被膜特性と磁気特性が向上するものである。 【0007】さらに、塩素化合物などのハロゲンを添加する技術としては、例えば特開昭60−96770号公報には、MgOを主成分とし、Sb,Sr,Ti,Zrの塩化物の1種又は2種以上をMgO100重量部に対して0.02〜1.5重量部含有させる技術が開示されている。これらの公報に記載された技術は、微量添加剤として酸化チタンやアンチモン化合物、塩素化合物を単独あるいは複合添加することによりMgOの反応性を高め、グラス被膜特性と磁気特性を向上させるものである。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】高温仕上げ焼鈍は工業的にはコイルに巻き取った状態で実施されるが、近年生産性向上の為にコイル質量を大きくする傾向にあり、コイル内部の温度偏差も拡大してきている。従ってこれらの従来技術では、コイル内部の各場所ごとでグラス被膜が薄くなり過ぎたり、厚くなり過ぎたりする部分があり、より一層の技術改善が必要とされており、コイル質量が大きな場合でもグラス被膜を安定して鋼板表面に均一に最適量形成させることが課題である。 【0009】グラス被膜が薄過ぎる場合には、絶縁性が低下したり、張力効果が少なくて磁気特性が低下したりする問題が有り、グラス被膜が厚すぎた場合には、占積率が悪化したり、ひどい場合には密着性が低下して被膜が剥離するといった問題が有り、最適量のグラス被膜を均一に安定形成する技術が求められている。 【0010】さらに、これら微量添加剤を複合添加した場合、磁性向上効果が発揮される場合もあれば、それぞれの添加量が最適範囲内であるにもかかわらずその効果が見られない場合なども有り、各添加剤の効果が十分得られているとは言えない状況であった。 【0011】本発明は、それぞれの添加剤の複合添加の効果を明らかにし、とりわけアンチモン化合物と塩素化合物との間の関係を見出すことにより、方向性電磁鋼板のグラス被膜形成をよりいっそう低温から均一に反応させて最適量にするための新規の焼鈍分離剤を用いた電磁鋼板の製造方法を提供し、これによりグラス被膜の均一化と密着性向上及び磁気特性を向上させるものである。 【0012】 【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするところは下記のとおりである。 (1)仕上げ冷延後に脱炭焼鈍した後焼鈍分離剤を塗布し、高温仕上げ焼鈍する方向性電磁鋼板の製造方法において、焼鈍分離剤として用いるMgOの塩素含有量R(Cl換算、質量%)が同じくMgOに含有するアンチモン量S(Sb2O3 換算、質量%)との間に−3.75×R+0.2375≦S≦−3.75×R+0.5375の関係を満足することを特徴とする磁気特性とグラス被膜特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法。 (2)焼鈍分離剤に含有するアンチモンを酸化アンチモンのエマルジョンとして添加することを特徴とする前項(1)に記載の磁気特性とグラス被膜特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法。 【0013】本発明により、従来技術では達成できなかった、均一で密着性に優れた緻密な最適量のグラス被膜が得られ、さらに、グラス被膜形成反応が安定して得られるために鋼中のインヒビターが適切に保たれ、磁気特性に優れた方向性電磁鋼板が得られるものである。なお、本発明でいうグラス被膜の最適量とは、板厚、鋼成分などによって変化するものの、2〜3.5g/m2 程度をいい、2g/m2 未満では絶縁性や張力効果が劣り、3.5g/m2 超では不均一になったり、密着性が劣化したりしてやはり特性が劣化する。 【0014】 【発明の実施の形態】以下、本発明を実施する具体的形態について説明する。本発明で使用する塩素としては、予めMgO中に含有されているものを含み、後添加したものの合計量が本発明範囲にあれば如何なる形態のものでも特に限定するものではなく、塩素を含有する複数の形態を混合したものも本発明範囲内である。コスト的に安価であることから塩素量を調節するために微量添加剤として塩酸を使用するのが都合が良い。 【0015】なお、本発明で用いる「塩素含有量R(Cl換算、質量%)」とは、微量添加剤を加える前のMgOを主原料とする焼鈍分離剤の質量を分母にして、MgOを主原料とする焼鈍分離剤中のCl質量と微量添加剤中のCl質量とを足し合わせた質量を分子にして計算した結果を、パーセント表示した数値のことを言う。 【0016】また、アンチモン化合物としては3酸化2アンチモンが好適である。しかし、実際にグラス被膜が形成されるのは800℃以上の高温域であるため、この温度域ではMgOの水和水により発生した水蒸気により露点が上昇し、アンチモン化合物は酸化されて3酸化2アンチモンの形態を取ると推定されている。従って、アンチモン化合物で800℃前後で3酸化2アンチモンとなるものであれば特に限定するものでは無く、5酸化アンチモン、水酸化アンチモン、塩化アンチモンなどでもよく、これらアンチモン化合物を混合したものも本発明範囲内である。 【0017】なお、本発明で用いる「アンチモン量S(Sb2 O3 換算、質量%)」とは、微量添加剤を加える前のMgOを主原料とする焼鈍分離剤の質量を分母にして、MgOを主原料とする焼鈍分離剤中のSb質量と微量添加剤中のSb質量とを足し合わせた質量を分子にして計算した結果を、パーセント表示した数値のことを言う。 【0018】次にMgOの塩素含有量R(Cl換算、質量%)とアンチモン量S(Sb2 O3 換算、質量%)との関係であるが、−3.75×R+0.2375≦S≦−3.75×R+0.5375であることが必要である。後述する実施例に示すように、Sが−3.75×R+0.2375よりも小さい場合には、密着性が悪くポーラスなグラス被膜となるため良好な磁気特性が得られず、−3.75×R+0.5375よりも大きい場合には、グラス被膜量の生成量が少なくてやはり磁気特性が劣化する。 【0019】これら塩素とアンチモン微量添加剤の働きは、詳細はいまだ解明されていないが、微量添加剤の働きで高温仕上げ焼鈍中のグラス被膜の形成温度が変化することが確認されている。グラス被膜形成反応が低温から開始された場合、インヒビターが安定化して磁気特性が向上すると推定されている。しかし、グラス被膜形成反応が促進され過ぎると最終的にグラス被膜が厚くなり過ぎて密着性などが劣化する恐れがある。このように微量添加剤はグラス被膜の生成時期、被膜性状と密接な関係があるため、本発明の様に、その種類、添加量を適切に調節することが非常に重要である。 【0020】次にアンチモンの添加方法であるが、酸化アンチモンは溶解度が非常に小さいため、MgO中に均一分散させることが難しい。コロイド状アンチモンも市販されているが、コストが高くて工業的に不利である。本発明者らは鋭意実験した結果、酸化アンチモンをエマルジョン化したものであっても十分な分散性を持ち、グラス被膜形成反応に関してはエマルジョン化した酸化アンチモンで問題無いレベルにMgO中分散することを見出した。 【0021】一般に、方向性電磁鋼板の焼鈍分離剤として使用されるMgOの活性度CAAの範囲は75から350の範囲である。75未満では、MgOの持ち込み水分が多く被膜不良の発生が避けられないためであり、350を超えるとMgOの反応性が低く、十分な被膜量が得られないからである。本発明では、特に限定するものではないが、CAAが150前後の方向性電磁鋼板用のMgOを用いるのが良い。また微量添加剤としては、本発明で着目したアンチモン系、塩素系以外に、酸化チタンや硼酸系の物質もグラス被膜形成反応を安定化させる元素として知られている。 【0022】 【実施例】質量%でSi:3.3%、C:0.08%、Mn:0.07%、S:0.02%、Al:0.03%、N:0.008%、Cu:0.05%、Sn:0.06%で、残部が実質的にFeである鋼塊を熱延して熱延板とした後、焼鈍、酸洗、冷延し最終板厚0.23mmの冷延板とした。その後、水素−窒素−水蒸気雰囲気中で脱炭焼鈍した。次いで後述するようなMgO調製剤を水に懸濁してスラリーとし、乾燥後の質量で6g/m2 になるように塗布乾燥し、コイルに巻き取った後、1200℃×20時間の高温仕上げ焼鈍を行った。次いで余剰のMgOを水洗除去し軽酸洗した後、りん酸アルミとシリカを主成分とする方向性電磁鋼板用の通常の絶縁被膜剤を塗布乾燥し最終製品とした。本発明で使用するMgOについて表1に示す。 【0023】表1に示したMgOに質量%で3%の酸化チタンと0.2%の硼酸ナトリウムを添加し、表2の含有量となるよう酸化アンチモンと塩素量を調整した。この試験におけるグラス被膜特性と磁気特性の結果を表2に示す。 【0024】 【表1】
【0025】 【表2】
【0026】表2において、■:密着性の評価は20mmφ曲げで評価し、セロハンテープにて剥離面を引き剥がして剥離量を評価した。剥離のほとんど無いものを◎、一部剥離するものを○、全面剥離を△、被膜剥離が激しく剥離量の多いものを×と評価した。 ■:被膜量は蛍光X線測定法で算出した。 ■:総合評価は表面外観、密着性、被膜量、磁気特性ともに良好なものを◎、磁気特性、密着性、被膜量は最適範囲であるが、表面外観にやや均一性に欠ける場合には○、被膜量は外れるが密着性のよいものは△、被膜量が外れ、密着性もよくない場合には×とした。図1に実施例と比較例の総合評価結果を示した。 【0027】 【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明により、均一で密着性に優れたグラス被膜が最適量得られ、さらに磁気特性にも優れた方向性電磁鋼板が得られる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000006655 【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社 【住所又は居所】東京都千代田区大手町2丁目6番3号
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| 【出願日】 |
平成14年4月10日(2002.4.10) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100062421 【弁理士】 【氏名又は名称】田村 弘明 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−301222(P2003−301222A) |
| 【公開日】 |
平成15年10月24日(2003.10.24) |
| 【出願番号】 |
特願2002−108133(P2002−108133) |
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