| 【発明の名称】 |
溶接部靱性の良好な高強度低降伏比鋼管の製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】林 透 【住所又は居所】岡山県倉敷市水島川崎通1丁目 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内
【氏名】星野 俊幸 【住所又は居所】岡山県倉敷市水島川崎通1丁目 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内
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| 【要約】 |
【課題】高強度かつ低降伏比という機械的特性を満足する溶接鋼管において、その溶接部靱性を向上する有利な方途を与える。
【解決手段】C:0.05〜0.15mass%、Si:0.10〜0.50mass%、Mn:0.5 〜2.0 mass%、Al:0.005 〜0.10mass%、Cr:0.05〜0.50mass%およびMo:0.05〜0.50mass%を含み、さらにTi:0.002 〜0.03mass%およびREM : 0.001 〜0.01mass%を含有する成分組成を有する鋼板に、Ac3変態点〜1000℃の温度域に加熱して焼入れを施し、 或いは同組成の鋼スラブを加熱圧延後にAr3変態点以上から焼入れを施し、次いでAc1変態点以上Ac3変態点以下の温度域に再加熱して焼入れを施し、 さらに460 〜650 ℃の温度域での焼戻しを行ったのち、該鋼板を管状に成形しその継目を溶接して鋼管を作製し、該鋼管を500 〜700 ℃の温度域で焼鈍する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 C:0.05〜0.15mass%、Si:0.10〜0.50mass%、Mn:0.5 〜2.0mass%、Al:0.005 〜0.10mass%、Cr:0.05〜0.50mass%およびMo:0.05〜0.50mass%を含み、さらにTi:0.002 〜0.03mass%およびREM : 0.001 〜0.01mass%を含有し、かつ下記式に従うCeqが0.47以下である成分組成を有する鋼板を、Ac3変態点〜1000℃の温度域に加熱して焼入れを施し、 次いでAc1変態点以上Ac3変態点以下の温度域に再加熱して焼入れを施し、 さらに460 〜650 ℃の温度域での焼戻しを行ったのち、該鋼板を管状に成形しその継目を溶接して鋼管を作製し、該鋼管を500 〜700 ℃の温度域で焼鈍することを特徴とする溶接部靱性の良好な高強度低降伏比鋼管の製造方法。記Ceq=C[mass%] + Mn[mass%]/6+ Si[mass%]/24+ Ni[mass%]/40+ Cr[mass%]/5+ Mo[mass%]/4+V[mass%] /14【請求項2】 C:0.05〜0.15mass%、Si:0.10〜0.50mass%、Mn:0.5 〜2.0mass%、Al:0.005 〜0.10mass%、Cr:0.05〜0.50mass%およびMo:0.05〜0.50mass%を含み、さらにTi:0.002 〜0.03mass%およびREM : 0.001 〜0.01mass%を含有し、かつ下記式に従うCeqが0.47以下である成分組成を有する鋼スラブを、Ac3変態点〜1300℃の温度域に加熱し、Ar3変態点以上の温度域で圧延を行い、この圧延後の鋼板をそのまま焼入れし、 次いでAc1変態点以上Ac3変態点以下の温度域に再加熱して焼入れを施し、 さらに460 〜650 ℃の温度域での焼戻しを行ったのち、鋼板を管状に成形しその継目を溶接して鋼管を作製し、該鋼管を500 〜700 ℃の温度域で焼鈍することを特徴とする溶接部靱性の良好な高強度低降伏比鋼管の製造方法。記Ceq=C[mass%] + Mn[mass%]/6+ Si[mass%]/24+ Ni[mass%]/40+ Cr[mass%]/5+ Mo[mass%]/4+V[mass%] /14【請求項3】 請求項1または2において、鋼板は、さらにCu:0.05〜1.0 mass%、Ni:0.05〜1.0 mass%、V:0.005 〜0.05mass%、Nb:0.005 〜0.05mass%およびCa:0.0005〜0.005 mass%のいずれか1種または2種以上を含有する成分組成を有することを特徴とする溶接部靱性の良好な高強度低降伏比鋼管の製造方法。 |
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、 建築や土木の分野に供する高強度低降伏比鋼管、具体的には降伏応力が440 〜590MPaおよび引張強さが590 〜740MPaで、かつ降伏比が85%以下の諸特性を有する溶接鋼管、とりわけ溶接部靱性の良好な高強度低降伏比鋼管の製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来、 高層建築物の柱には、条切りした鋼板4枚を箱型に溶接した柱、いわゆるボックスタイプが多く利用されていたが、 近年は、 剛性、 変形性能および耐火性能に優れ、 かつ柱の断面積が小さく建築物内の有効空間を大きくできる、鋼管柱、中でも鋼管内部にコンクリートを充填して構造柱とする、いわゆるCFT (Concrete Filled Steel Tube) が用いられるようになってきた。 【0003】このCFT タイプの鋼管は、鋼板を曲げて管状に成形したのち、その継目を溶接して管とし、その後焼戻して使用に供されるため、 この焼戻し後に上記した機械的性質を有する必要があり、 その製造は容易ではなかった。すなわち、高層建築物の柱として用いられる鋼管用鋼は、主に高層建築物の柱として引張強さが590MPa級は必要であり、かつ建築用のために降伏比は85%以下に制限され、これらの機械的性質とりわけ低降伏比を、高強度の下に実現させるのは難しいものであった。 【0004】ここで、特許文献1には、所定の成分に調整した鋼を熱間圧延したのち、Ac3変態点〜1000℃の温度範囲に加熱焼入れし、 引き続き 750〜850 ℃の温度範囲に再加熱焼入れして2相混合組織とすることによって、低降伏比を実現することが提案されている。この技術によって、高強度の下に低降伏比を実現することが可能になったのである。 【0005】ところで、上記したように、この種の鋼管は、鋼板を曲げて管状に成形しその継目を溶接して作製されるため、溶接部が生じることは不可避である。そして、この溶接部における靱性は、母材と同様に、最低でも0℃で47J以上のシャルピー吸収エネルギーが必要である。最近では、鋼管を作製する組立加工業者間での競争が激化していることもあり、鋼管の溶接作業効率の向上に対する要求は強くなっている。さらに、鋼が高強度化されるに伴い、母材は勿論、溶接部についても良好な靱性が強く求められていたのである。例えば、上記ボックスタイプの柱における角溶接では、60万J/cmの大入熱での溶接が施された溶接部において、70J以上の吸収エネルギーを有することが求められている。従って、上記CFT においても、近い将来10万J/cmの入熱での溶接部に、同様の要求がなされることは確実である。 【0006】この点、特許文献1には、溶接部靱性をTiの添加によって向上することが記載されているが、このTi添加による溶接部靱性の改善には限度があり、例えば大径の鋼管を製造するに当り、とりわけ7万J/cmを越える大入熱での溶接を行った際の溶接部靱性は、保証の限りではなかった。 【0007】 【特許文献1】特開平5−117746号公報【0008】 【発明が解決しようとする課題】そこで、この発明の目的は、高強度かつ低降伏比という機械的特性を満足する溶接鋼管において、その溶接部靱性を向上する有利な方途を与えることにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】発明者らは、上述のCFT 用鋼の開発に鋭意取り組んだ結果、 所望の高強度低降伏比を実現するためには、鋼板の段階で2相域焼入処理を行ってCおよびMnの濃度分布をつけること、MoおよびTi添加による析出物の微細化にて歪取り焼鈍後の強度を確保すること、Cr添加による固溶Cの固定にて降伏比を低減すること、が有効であることを確認した。その上で、溶接部の靱性を向上する手段について鋭意究明したところ、Tiに併せてREM を複合添加することが極めて有効な手だてとなることを見出し、この発明を完成するに到った。 【0010】すなわち、この発明の要旨構成は、次のとおりである。 (1) C:0.05〜0.15mass%、Si:0.10〜0.50mass%、Mn:0.5 〜2.0 mass%、Al:0.005 〜0.10mass%、Cr:0.05〜0.50mass%およびMo:0.05〜0.50mass%を含み、さらにTi:0.002 〜0.03mass%およびREM : 0.001 〜0.01mass%を含有し、かつ下記式に従うCeqが0.47以下である成分組成を有する鋼板に、Ac3変態点〜1000℃の温度域に加熱して焼入れを施し、 次いでAc1変態点以上Ac3変態点以下の温度域に再加熱して焼入れを施し、 さらに460 〜650 ℃の温度域での焼戻しを行ったのち、該鋼板を管状に成形しその継目を溶接して鋼管を作製し、該鋼管を500 〜700 ℃の温度域で焼鈍することを特徴とする溶接部靱性の良好な高強度低降伏比鋼管の製造方法。記Ceq=C[mass%] + Mn[mass%]/6+ Si[mass%]/24+ Ni[mass%]/40+ Cr[mass%]/5+ Mo[mass%]/4+V[mass%] /14【0011】(2) C:0.05〜0.15mass%、Si:0.10〜0.50mass%、Mn:0.5 〜2.0 mass%、Al:0.005 〜0.10mass%、Cr:0.05〜0.50mass%およびMo:0.05〜0.50mass%を含み、さらにTi:0.002 〜0.03mass%およびREM : 0.001 〜0.01mass%を含有し、かつ上記式に従うCeqが0.47以下である成分組成を有する鋼スラブを、Ac3変態点〜1300℃の温度域に加熱し、Ar3変態点以上の温度域で圧延を行い、この圧延後の鋼板をそのまま焼入れし、 次いでAc1変態点以上Ac3変態点以下の温度域に再加熱して焼入れを施し、 さらに460 〜650 ℃の温度域での焼戻しを行ったのち、鋼板を管状に成形しその継目を溶接して鋼管を作製し、該鋼管を500 〜700℃の温度域で焼鈍することを特徴とする溶接部靱性の良好な高強度低降伏比鋼管の製造方法。【0012】(3) 上記(1) または(2) において、鋼板は、さらにCu:0.05〜1.0 mass%、Ni:0.05〜1.0 mass%、V:0.005 〜0.05mass%、Nb:0.005 〜0.05mass%およびCa:0.0005〜0.005 mass%のいずれか1種または2種以上を含有する成分組成を有することを特徴とする溶接部靱性の良好な高強度低降伏比鋼管の製造方法。【0013】 【発明の実施の形態】まず、この発明を導くに到った実験結果について、詳述する。すなわち、C:0.11mass%、Si:0.30mass%、Mn:1.45mass%、Al:0.027 mass%、Cr:0.16mass%およびMo:0.25mass%を含む成分組成を基本として、さらに種々の量のTiおよびREM を単独添加または複合添加した、鋼板をそれぞれ用意し、これら鋼板を900 ℃に加熱して焼入れを施し、 次いで790 ℃に再加熱して焼入れし、 さらに540 ℃での焼戻しを行ったのち、該鋼板を管状に成形しその継目をサブマージアーク溶接にて入熱20000 、50000 、70000 および100000J/cmの条件で溶接して鋼管を作製し、該鋼管を550 〜700 ℃の温度域で焼鈍した。 【0014】かくして得られた鋼管の溶接部における低温靱性 vE0 (溶接ボンド部から溶接熱影響部側へ1mm隔てた位置における0℃でのシャルピー吸収エネルギー:J)について調査した結果を、表1に示す。表1に示すように、上記基本成分になる鋼を用いた鋼管Aにおける溶接部靱性に比較し、この基本成分にTiまたはREMを単独添加した鋼による鋼管BおよびCはいずれも溶接部靱性が向上しているが、いずれも70000 J/cmを越える大入熱による溶接を経ると、その溶接部における吸収エネルギーは70J未満に低下してしまう。 【0015】 【表1】
【0016】これに対して、基本成分にTiおよびREM を複合添加した鋼による鋼管Cにおける溶接部靱性は、入熱20000 および50000 J/cmでの溶接条件で向上しているのは勿論、70000 および100000J/cmの大入熱で溶接を行った場合にあっても、溶接部のシャルピー吸収エネルギーを70J以上に維持することができる。 【0017】さらに、このTiおよびREM の複合添加による効果について、詳しく述べる。すなわち、図1にTiおよびREM の添加の概念を示すように、まずTiはTiN として析出し強力に初期γ粒をピンニングし粒成長を抑制して靱性を向上するが、TiN は1400℃以上で溶解してしまうため、大入熱溶接時などの1400℃をこえる温度域では靱性向上効果を発揮することが難しい。一方、REM はREM(O,S)として1400℃以上でも溶解せずに残留し、TiN 程ではないが、初期γ粒をピンニングし粒成長を抑制する、効果を有する。従って、両者を複合して添加すれば、大入熱溶接時などの1400℃をこえる温度域が拡大し、TiN によって粒成長を抑制することが難しくなったとしても、REM による粒成長の抑制が引き続き維持されるため、十分な靱性を得ることが可能になる。すなわち、TiおよびREM を複合添加することによって、双方の不足分を補完し合う形となる結果、両者の単なる和に止まらない効果が得られるのである。 【0018】この発明は、上記の新規知見に由来するものであり、特にTiおよびREM を複合添加して溶接部靱性を確保することによって、高層建築物の柱用CFT に好適の鋼管の提供が、ここに実現したのである。 【0019】以下に、この発明の製造方法について、各工程毎に詳しく説明する。まず、鋼板の成分組成における各成分量の限定理由を説明する。 C:0.05〜0.15mass%Cは、所望の強度を得るためおよび炭化物を析出させるために、少なくとも0.05mass%は必要であり、一方上限は靭性および溶接性の劣化の観点から0.15mass%とした。 【0020】Si: 0.10 〜0.5 mass%Siは、製鋼上0.10mass%以上が必要であり、一方 0.5mass%を超えると、母材の靱性を劣化させるため、 0.10 〜0.5 mass%の範囲とする。 【0021】Mn:0.5 〜2.0 mass%Mnは、母材の強度を確保するために0.5 mass%以上は必要であり、一方、2.0mass%を超えると溶接部の靱性を著しく劣化させるため、Mn:0.5 〜2.0 mass%の範囲とする。 【0022】Al:0.005 〜0.10mass%Alは、脱酸剤として0.005 mass%以上は必要であるが、0.10mass%以上添加してもその効果が飽和する。 【0023】Cr:0.05〜0.50mass%Crは、0.05mass%以上の添加により、後述の製造工程における歪取り焼鈍後の鋼管の降伏応力を低下させて降伏比を低下するのに有効であるが、0.50mass%をこえて添加してもその効果は飽和するため、0.05〜0.50mass%の範囲とする。 【0024】Mo:0.05〜0.50mass%Moは、0.05mass%以上の添加により析出物の微細化が達成され、後述の製造工程における歪取り焼鈍後の鋼管の引張強さを上昇させる効果がある。一方、0.50mass%をこえて添加すると、溶接性が劣化するため、0.50mass%を上限とする。 【0025】以上の成分組成を基本として、さらにTi:0.002 〜0.030 mass%およびREM :0.001 〜0.01mass%を複合して含有させることが肝要である。すなわち、上述のとおり、TiおよびREM を複合添加することによって、溶接部靱性を格段に向上することができるのである。 【0026】Ti:0.002 〜0.030 mass%Tiは、TiN として析出し、1400℃までの温度域において初期γ粒の成長を抑制することによって、溶接部靱性を向上するのに有用である。そのためには、0.002 mass%以上の含有が必要であるが、0.030 mass%をこえて添加してもその効果は飽和するため、0.002 〜0.030 mass%の範囲とする。 【0027】REM :0.001 〜0.01mass%REM は、Tiと同様に、初期γ粒をピンニングし粒成長を抑制する効果を有し、特に1400℃以上の高温域においてもREM(O,S)として残留するため、その効果を、例えば大入熱溶接を行った場合等にも発揮することができる。そのためには、0.001 mass%以上の含有が必要であるが、0.01mass%をこえて添加してもその効果は飽和するため、0.001 〜0.01mass%の範囲とする。 【0028】さらに、上記の成分組成において、上記した式に従うCeqを0.47以下に規制する必要がある。すなわち、Ceqが0.47をこえると、溶接性が極めて悪くなり、溶接後に割れが発生し易くなるため、Ceqは0.47以下とする。 【0029】また、以上の必須成分に加えて、Cu:0.05〜1.0 mass%、Ni:0.05〜1.0 mass%、V:0.005 〜0.05mass%、Nb:0.005 〜0.05mass%およびCa:0.0005〜0.005 mass%のいずれか1種または2種以上を含有することができる。 【0030】Cu:0.05〜1.0 mass%Cuは、0.05mass%以上の添加により固溶強化を期待できるが、1.0 mass%をこえて添加すると靱性を劣化するため、0.05〜1.0 mass%の範囲とすることが好ましい。 【0031】Ni:0.05〜1.0 mass%Niは、0.05mass%以上で添加すると、母材の高靭性を阻害することなしに強度の上昇に寄与するが、1.0 mass%をこえて添加しても、その効果が飽和するため、0.05〜1.0 mass%の範囲とすることが好ましい。 【0032】V:0.005 〜0.05mass%Vは、0.005 mass%以上で添加すると、V(CN)として析出し、後述の製造工程における歪取り焼鈍後の引張強さの確保に役立つが、 0.05mass%をこえると靭性の低下を招くため、0.005 〜0.05mass%の範囲とすることが好ましい。 【0033】Nb:0.005 〜0.05mass%Nbは、0.005 mass%以上の添加で析出し、後述の製造工程における歪取り焼鈍後の引張強さの確保に役立つが、 0.05mass%を超えて添加しても、その効果が飽和するため、0.005 〜0.05mass%の範囲とすることが好ましい。 【0034】なお、上記の成分組成に成る鋼板は、以下に示す2通りの方法によって、有利に円柱鋼管柱に製造することができる。すなわち、1つは、再加熱焼入れ、2相域焼戻し、焼戻し、造管、歪み取り焼鈍による方法(以下、A法とする)、残りの1つは、圧延後直接焼入れ、2相域焼戻し、焼戻し、造管、歪み取り焼鈍による方法(以下、B法とする)である。 【0035】まず、A法について述べる。すなわち、上記の成分組成に成る鋼板は、所定の組成範囲に溶製された鋼を、Ac3変態点以上のγ単相域に加熱し、γ再結晶域で所定板厚まで圧延して空冷する工程を経て得られるが、特にこの工程に限定する必要はない。 【0036】次いで、上記鋼板を、Ac3変態点〜1000℃の温度域に加熱して焼入れを施し、次いでAc1変態点以上Ac3変態点以下の温度域に再加熱して焼入れを施し、 さらに460 〜650 ℃の温度域での焼戻しを行ったのち、該鋼板を管状に成形し、その継目を溶接して鋼管を作製し、該鋼管を500 〜700 ℃の温度域で焼鈍する。 【0037】すなわち、造管前の鋼板をAc3変態点〜1000℃に加熱焼入する理由は、 この温度域に加熱することで鋼を完全にオーステナイト化し、次いで焼入れることで十分な強度を確保するためである。Ac3点以上に加熱しなければ完全にオーステナイト化せず、 十分な強度は得られない。一方、 1000℃をこえて加熱すると、初期オーステナイト粒径が粗大化し靱性が劣化する。 【0038】次に、Ac1変態点以上Ac3変態点以下の2相域に加熱し焼入れる理由は、CおよびMnを十分に2相分離させて濃度分布をつくるためである。 これにより、その後の造管、 そして歪取り焼鈍後も濃度分布が維持され、硬質域と軟質域との2相化により、降伏比を低下することが容易になる。Ac1変態点以上Ac3変態点以下の2相域で保持しなければ、 このようなCおよびMnの濃度分布を起こしにくい。なお、このような硬質域および軟質域の分配は1:1で起こることが最適である。 また、 2相域加熱後、 焼入れることにより、最終的な強度を確保しやすい。 【0039】さらに、460 〜650 ℃に焼戻す理由は、460 ℃以上に加熱しなければ、 鋼板強度が高くなって、 引き続く造管の負荷が大きくなる。一方、 650℃をこえて加熱すると、著しい強度低下が生じて、 最終的に強度が確保できない。 【0040】最後に、造管後の焼鈍は、500 〜700 ℃の温度範囲で行う。なぜなら、500 ℃未満では強度が高くなりすぎ、 一方700 ℃をこえると強度が低くなるためである。 【0041】次に、B法について述べる。すなわち、上記した所定の組成範囲に溶製された鋼を、Ac3変態点以上のγ単相域に加熱し、Ar3変態点以上の温度域で圧延を行い、この圧延後の鋼板に直ちに焼入れを施し、 次いでAc1変態点以上Ac3変態点以下の温度域に再加熱して焼入れを施し、 さらに460 〜650 ℃の温度域での焼戻しを行ったのち、鋼板を管状に成形しその継目を溶接して鋼管を作製し、該鋼管を500 〜700 ℃の温度域で焼鈍する。 【0042】ここで、始めにAc3変態点以上のγ単相域に加熱し、Ar3変態点以上の温度域で圧延を行い、この圧延後の鋼板に直ちに焼入れを施す理由は、このAc3変態点以上のγ単相域に加熱することで鋼を完全にオーステナイト化し、次いでAr3変態点以上の温度域で圧延を行うことで粗大化したγ粒を微細化し、併せて鋼板を所定形状に整えるためである。さらに、圧延後の鋼板をそのまま焼入れ、つまり圧延後すみやかに、少なくともAr3変態点以上から冷却することにより、十分な強度を確保することができる。なお、このB法はA法に比べて、旧γ粒径が粗大となり易いため、降伏応力(YS)が低くなり降伏比(YR)をより低くすることが可能である。 【0043】 【実施例】実施例1表2に示す成分組成になる鋼スラブを、A法:1200℃に加熱後1100℃までに圧延を終了する、熱間圧延によって作製し、該鋼板を900 ℃に再加熱して焼入れまたは、B法:1150℃に加熱後、温度が930 ℃に低下する間に圧延を行って、直ちに900℃以上から室温まで水冷した。 【0044】引き続き、790 ℃の2相域で焼入れたのち、540 ℃で焼戻しを行ったのち、該鋼板に、板厚(t)/外径(d)=8%の造管処理を施して管状に成形し、その継目をサブマージアーク溶接にて入熱20000 、 50000、70000 および100000J/cmの各条件で溶接して鋼管を作製し、該鋼管を550 ℃の温度の歪取り焼鈍に供した。 【0045】 【表2】
【0046】かくして得られた鋼管について、母材の機械的性質について評価した結果を表3に示す。また、一部の鋼については、TiおよびREM 添加の影響を調査するため、溶接部靱性を評価した。その評価結果を、表3に併記する。表3から、この発明に従う成分組成を有する鋼管は、高強度でありながら低降伏比であり、特にTiおよびREM を所定の範囲で複合添加した鋼No. 15および21〜23では、溶接部靱性、とりわけ大入熱溶接後の溶接部靱性が大きいことは明らかである。 【0047】 【表3】
【0048】実施例2表2に示した鋼No. 15の成分組成になる鋼板を実施例1と同じく熱間圧延によって作製し、該鋼板に、表4に示す種々の条件の熱処理を施したのち、該鋼板に、板厚(t)/外径(d)=4〜8%の造管処理を施して管状に成形し、その継目を表4に示す種々の条件で溶接して鋼管を作製し、該鋼管を表4に示す温度の歪取り焼鈍に供した。 【0049】かくして得られた鋼管について、母材の機械的性質について評価した結果を、表4に併記する。表4から、この発明に従う熱処理を施して得られた鋼板は、高強度でありながら低い降伏比を有することがわかる。また、直接焼入れを用いたB法に従って製造することにより、低い降伏比が得られることがわかる。 【0050】 【表4】
【0051】 【発明の効果】この発明によれば、高強度かつ低降伏比を満足した溶接鋼管における、溶接部靱性が格段に向上されるから、特に高層建築物の柱となるCFT に最適の鋼管を提供することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000001258 【氏名又は名称】JFEスチール株式会社 【住所又は居所】東京都千代田区内幸町二丁目2番3号
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| 【出願日】 |
平成14年10月29日(2002.10.29) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100072051 【弁理士】 【氏名又は名称】杉村 興作
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| 【公開番号】 |
特開2003−301219(P2003−301219A) |
| 【公開日】 |
平成15年10月24日(2003.10.24) |
| 【出願番号】 |
特願2002−314704(P2002−314704) |
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