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【発明の名称】 連続式熱処理炉
【発明者】 【氏名】酒井 崇之
【住所又は居所】静岡県小笠郡菊川町堀之内547番地の1 旭テック株式会社内

【要約】 【課題】昇温速度を速く、かつ温度の振れを小さくし、しかも、より高い温度で溶体化処理や時効処理を連続的に行うことができる連続式熱処理炉を提供する。

【解決手段】金属からなるワークピース26の熱処理に用いられ、炉体内に、熱風の吹き込みにより粉粒体24が熱せられ流動している流動層20を有し、ワークピース26を入口部12から出口部16まで流動層20中を移動させながら熱処理する連続式熱処理炉10である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属を連続的に熱処理する連続式熱処理炉であって、金属からなるワークピースの熱処理に用いられ、炉体内に、粉粒体が熱せられ流動している流動層を有し、該ワークピースを入口部から出口部まで該流動層中を移動させながら熱処理することを特徴とする連続式熱処理炉。
【請求項2】 該流動層は、熱風吹き込みにより粉粒体が熱せられ流動するように構成されている請求項1記載の連続式熱処理炉。
【請求項3】 軽合金からなるワークピースの溶体化処理を行う請求項1又は2記載の連続式熱処理炉。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、Al合金、Mg合金などの金属を連続的に熱処理する連続式熱処理炉に関し、詳細には、金属製品、例えばAl合金からなる自動車用ホイールの、機械的強度を向上するために行う熱処理に好適に用いる連続式熱処理炉に関する。
【0002】
【従来の技術】 従来から、自動車等の軽量化材料として、アルミニウム合金、マグネシウム合金、セラミックス、金属複合材料、FRP等樹脂材料等が知られている。このうち、例えば、アルミニウム合金は、鉄の1/3の密度で、既に自動車等のエンジンシリンダヘッド、エンジンシリンダブロック等に、高速射出成形、所謂ダイカスト法によって製造された鋳造品が多く用いられている。
【0003】 また、より軽量化が要請される自動車などの足廻り部品に対し、例えば、アルミニウム合金やマグネシウム合金等の軽合金について、高速射出ダイカスト製法や、スクイズ鋳造法、半溶融加工法などが適用されている。これらダイカスト法やスクイズ鋳造法などで得られる軽合金の鋳造品は、製造法の改善により、その引張強度、耐力、伸び等の機械的性質をさらに向上させることができれば、部材の厚さ、寸法、重量を薄く、小さく、軽くすることが可能となり、ひいては、自動車の燃費改善、さらに環境的にも待望されるものである。
【0004】 上記のような観点から、軽合金の鋳造品については、従来からその機械的性質を改善するために、鋳造品を更に熱処理することが行われている。これは、熱処理を行うことにより、例えばAl−Si系合金にMgを添加したアルミニウム合金の場合には、Mg2Siの中間相による析出硬化が生じ、強度等を向上させているものである。
【0005】 上記のように、例えば、Al合金の高強度化は、他元素の添加とそれによる中間相の時効析出によって得られるものであり、時効析出のための熱処理は、溶体化処理及び時効処理からなる。
【0006】 溶体化処理は、凝固時に晶出した非平衡相を高温で固溶化させ、その後水冷することによって常温で組成が均一な固溶体を得る熱処理である。溶体化処理に引き続く時効処理は、比較的低い温度で保持することによって、中間析出相による析出硬化を起こさせるものであり、これらの熱処理により金属、例えばAl合金において、機械的特性の向上を図ることが出来る。
【0007】 従来、このような溶体化処理及び時効処理としては、空気を熱媒体としたトンネル炉等の雰囲気炉が用いられているが、溶体化温度までの昇温速度が遅く昇温に時間がかかり、しかも、温度の振れが約±5℃と大きく、そのため、より高い温度での溶体化処理及び時効処理ができないという問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】 本発明は、上記した従来の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、昇温速度を速く、かつ温度の振れを小さくし、しかも、より高い温度で溶体化処理や時効処理を連続的に行うことができる連続式熱処理炉を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】 即ち、本発明によれば、金属を連続的に熱処理する連続式熱処理炉であって、金属からなるワークピースの熱処理に用いられ、炉体内に、粉粒体が熱せられ流動している流動層を有し、該ワークピースを入口部から出口部まで該流動層中を移動させながら熱処理することを特徴とする連続式熱処理炉が提供される。
【0010】 本発明においては、流動層は、熱風吹き込みにより粉粒体が熱せられ流動するように構成されていることが好ましく、また、本発明の連続式熱処理炉は、Al合金、Mg合金などの軽合金からなるワークピースの溶体化処理を行う場合に、好ましく用いられる。
【0011】
【発明の実施の形態】 以下、本発明を詳しく説明する。本発明は、アルミニウム合金、マグネシウム合金などの金属を連続的に熱処理する連続式熱処理炉であり、炉体内に、好ましくは熱風の吹き込みにより粉粒体が熱せられ流動している流動層を有し、ワークピースを入口部から出口部まで流動層中を移動させながら熱処理するものである。
【0012】 このように、本発明では、粉粒体が熱せられ流動している流動層中にワークピースを存在させて熱処理することにより、ワークピースをより速く昇温することができるとともに、流動層中の温度分布がより均一になり(温度の振れも小さくなり)、かつより高い温度で溶体化処理や時効処理を連続的に行うことができるのである。また、本発明では、上記熱処理炉において、その入口部の流動層中に加熱ヒーターを存在させることが好ましい。このように熱処理炉における入口部の流動層中に加熱ヒーターを存在させることにより、非加熱状態(低温)のワークピースが入口部の流動層へ投入される際に生じる入口部の流動層の温度降下を防止或いは最小限にすることができ、その結果、ワークピースのより速い昇温、および流動層中の温度分布のさらなる均一化を達成することができる。
【0013】 以下、本発明の連続式熱処理炉を図面に基づいて更に詳細に説明する。図1(a)(b)(c)は、本発明に係る連続式熱処理炉の好ましい一実施態様を示すもので、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のX−X断面図、図1(c)は図1(b)のY−Y断面図である。図1(a)(b)(c)において、10は連続式熱処理炉を示しており、連続式熱処理炉10は、入口部12、該入口部12に続く熱処理帯部14、及び該熱処理帯部14に続く取出部(出口部)16から構成されている。これらの入口部12、熱処理帯部14及び取出部16はいずれも内部において、熱風が分散パイプ30から吹き込まれ粉粒体24が熱せられ流動化されてなる流動層20を形成している。
【0014】 入口部12は、図1(a)の平面図からわかるように、他の熱処理帯部14及び取出部16に比して移動方向に対する断面積が大きく、容積的に大きく形成されており、また、入口部12における両側張出部12a、12bにはそれぞれ加熱ヒーター18a、18bが配置されている。入口部12から熱処理帯部14、取出部16に至る流動層20中にはコンベア22が配設されており、コンベア22上にワークピース26が載置され、ワークピース26が熱処理炉の入口部12から取出部16まで流動層20中を移動しながら熱処理されるようになっている。
【0015】 ワークピース26は、入口部12において、ワークピース搬入機28により入口部12の流動層20中に投入され、コンベア22上に載せられる。ここで、上記したように、入口部12は、熱処理帯部14及び取出部16に比して容積的に大きく形成され、しかも入口部12の両側張出部12a、12bには加熱ヒーター18a、18bが配置されて流動層20内の粉粒体24及び熱風をさらに加熱、保温している。このように、入口部12の流動層20の容積が大きく粉粒体24も多量となって入口部12の熱保有量が大きくなるため、低温のワークピース26が入口部12の流動層20内へ投入されても流動層20の温度降下が防止され、ワークピース26のより速い昇温が達成される。
【0016】 次に、入口部12に投入されたワークピース26は、コンベア22の移動に伴って入口部12から熱処理帯部14を通過し、取出部16まで流動層20中を移動するが、ワークピース26は、入口部12から熱処理帯部14を経由し取出部16に至る間に所望の熱処理がなされることになる。従って、入口部12から熱処理帯部14を経由し取出部16に至る熱処理炉の長さ及び寸法、及び処理時間は、対象とする熱処理の種類、ワークピースである金属の種類、大きさに依存して決定される。
【0017】 所定の熱処理がなされ、取出部(出口部)16まで到達したワークピース26は、ワークピース搬出機32により炉外に搬出され、製品とされるか、或いは次の処理工程に付されることになる。このようにして、本発明の好ましい実施態様である連続式熱処理炉10によれば、非加熱状態(低温)のワークピース26が入口部12の流動層20内へ投入される際の流動層20の温度降下を効果的に防止或いは最小限にして、ワークピース26のより迅速な昇温とともに、入口部12から熱処理帯部14及び取出部16に至る流動層20中の温度分布のさらなる均一化を達成することができる。
【0018】 なお、本発明で対象とする金属としては特に限定されず、熱処理を必要とする金属全般に適用することができるが、Al合金、Mg合金などの軽合金が好ましい。
【0019】 また、本発明のように、熱処理炉として流動層炉を用いることにより、流動層内部の温度均一化(約±2〜3℃)により、より高い温度において熱処理を行うことができ、例えば、Al合金のより高温での溶体化処理が可能となり、また伝熱効率が良いことから、溶体化処理温度までの昇温時間を短縮することができる。
【0020】 更に、流動層方式は、一般に、流動層容器の外部から加熱する容器加熱方式やラジアントチューブを流動層中に内蔵するラジアントチューブ方式等の間接加熱方式のほか、熱風の直接吹込みによる直接加熱方式が知られているが、本発明においては、流動層中の温度分布が良好になることから、熱風の直接吹込みによる直接加熱方式を採用することが好ましい。なお、本発明において、直接加熱方式に、上記した他の方式を併用することもできる。
【0021】
【実施例】 以下、本発明を実施例に基づき、更に具体的に説明する。
(実施例)図1に示す連続式熱処理炉を用いてAl合金の溶体化処理及び時効処理を行った。用いた熱処理炉は、図2に示す平面寸法を有しており、入口部12の横幅3m、長さ1.5mで、入口部12から熱処理帯部14、取出部(出口部)16に至る全長は7.5mであり、熱処理帯部14及び取出部(出口部)16の横幅は1mであった。また、熱処理炉の高さは1.5mであった。炉内部は、分散パイプ30より吹き出される熱風により、平均粒径50〜500μmの砂(粒状物)が流動されて流動層20が形成されている。入口部12の両側張出部12a、12bにはそれぞれラジアントチューブ型の加熱ヒーター18a、18bが配置され、入口部12から熱処理帯部14、取出部16に至る流動層20中に配設されたコンベア22上にワークピース26が載置されて、熱処理炉の入口部12から取出部16まで流動層20中を移動しながら熱処理された。なお、500mmピッチ送りでコンベア22を運転し、ワークピース26は1時間に15本の割合で処理された。また、熱処理炉の入口部12における温度分布を測定したところ、溶体化処理時において、±2℃の範囲内であることを確認した。
【0022】 熱処理の対象物たるワークピースとしては、鋳造された車両用アルミホイール(14kg)を用い、テストピースの採取位置は、アウターリム・フランジとした。上記アルミホイールの組成は、Siを7.0質量%、Mgを0.34質量%、Srを50ppm含有し、残部がAlであった。熱処理条件としては、図3のスケジュールに示すように、溶体化処理温度を550℃、時効処理温度を170℃とし、溶体化処理温度での保持時間を60分、及び時効処理の保持時間を60分とした。
【0023】 上記のようにして熱処理された車両用アルミホイールからテストピースを採取し、引張試験(引張強さ、0.2%耐力、伸び)を行った結果、引張強さが270MPa以上、0.2%耐力が170MPa以上、伸びが7%以上であった。
【0024】
【発明の効果】 以上説明したように、請求項1に係る発明の連続式熱処理炉によれば、粉粒体が熱せられ流動している流動層中にワークピースを存在させて熱処理することにより、ワークピースをより速く昇温することができるとともに、流動層中の温度分布がより均一になり(温度の振れも小さくなり)、かつより高い温度で溶体化処理や時効処理を連続的に行うことができるという効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】000116873
【氏名又は名称】旭テック株式会社
【住所又は居所】静岡県小笠郡菊川町堀之内547番地の1
【出願日】 平成13年7月4日(2001.7.4)
【代理人】 【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平 (外1名)
【公開番号】 特開2003−301216(P2003−301216A)
【公開日】 平成15年10月24日(2003.10.24)
【出願番号】 特願2003−74715(P2003−74715)