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【発明の名称】 加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼電縫管の製造方法
【発明者】 【氏名】井上 正二
【住所又は居所】兵庫県尼崎市鶴町1番地 日新製鋼株式会社技術研究所内
【氏名】垂水 一政
【住所又は居所】兵庫県尼崎市鶴町1番地 日新製鋼株式会社尼崎製造所内
【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 フェライト系ステンレス鋼帯を断面円形に突合せ成形後、突合せ部を高周波溶接して鋼管を製造する際、溶接後、溶接部を保温または加熱することにより、溶接温度から700℃までを平均冷却速度70〜700℃/秒で冷却することを特徴とする加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼電縫管の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車排気系パイプ等の配管部材あるいは手摺,フェンス等の装飾部材に使用されるフェライト系ステンレス電縫管の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】SUS430LXなどのフェライト系ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼に比べて比較的安価であり、耐食性、耐熱性に優れることから、その溶接鋼管は自動車排気系パイプや各種プラント部材などの耐熱用途で用いられている。また、SUS447J1などのフェライト系ステンレス鋼は、耐候性に優れていることから、その溶接鋼管は手摺,フェンス等の装飾部材に使用されている。フェライト系ステンレス鋼帯を溶接して溶接管を製造する際には、一般に生産性や結晶粒の粗大化等を考慮して、TIG法ではなく高周波溶接による方法が採用されている。高周波溶接法では、成形ロールにより円筒状に連続成形された鋼帯端部を高周波溶接した後、溶接ビードの除去等、その後の作業性を考慮して、速やかに冷却している。
【0003】ところで、フェライト系ステンレス鋼を溶接する際、熱履歴によって炭化物,窒化物,金属間化合物等の微細な析出物の析出と、溶接時のスクイズロールにより加えられるアプセット負荷による加工硬化の複合作用により、溶接部の靭性が低下しやすい。このため、その後の曲げ加工や拡管加工が行い難くなっている。そこで、材料面からは、含有C,N量を低減し、さらにはNb,Ti等によりCやNを炭窒化物として固定し、耐食性や耐熱性を改善するとともに、靭性低下を抑制して加工性を優れたものとしている。さらに、現場では、例えば図1に示すように、高周波溶接後、速やかに冷却して結晶粒の粗大化を防ぎ、その後700〜800℃で1時間程度の焼鈍を施して、組織を回復させ加工性を改善することも実施されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】最近では、加工形状が複雑になるとともに加工精度の向上が望まれ、それに伴って鋼管に要求される加工性はさらに厳しくなっている。工業的に安価な材料を提供する面からは、CやNの低減、TiやNbの添加など、成分の調整にも限界があり、また造管技術の面から高周波溶接に替わる溶接法として、溶接部の加工性に優れたレーザー溶接法も開発・提案されているが、設備が大きくなり、高周波溶接法の代替法としてのコスト的なメリットはない。さらに、上記のような溶接後急冷した材料を焼鈍する方法は、オフラインでの作業を必要とするため、コスト的なメリットはない。
【0005】本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、前記SUS430LXやSUS447J1など、11〜32%のCrを含有する従来のフェライト系ステンレス鋼を素材とし、レーザー溶接のような新たな溶接方法を用いることなく、従来の高周波溶接による造管法を一部変更することにより、加工性を確保し、かつコスト的に安価に溶接管を製造する方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼電縫管の製造方法は、その目的を達成するため、フェライト系ステンレス鋼帯を断面円形に突合せ成形後、突合せ部を高周波溶接して鋼管を製造する際、溶接後、溶接部を保温または加熱することにより、溶接温度から700℃までを平均冷却速度70〜700℃/秒で冷却することを特徴とする。
【0007】
【実施の形態】通常、高周波溶接による造管ラインは、アンコイラー,ロール成形,高周波溶接,ビード研削,サイジング,矯正,切断等を行う装置で構成されている。本発明では、溶接装置の後段階に保温装置または加熱装置を設置して、溶接部を溶接後に所定範囲の冷却速度で徐冷させる。造管ラインでは、図2に示すように、スクイズロールの後工程、サイジングロールの前工程に設ける。保温装置としては、セラミックファイバーのような断熱材で溶接部または管全体を覆うようなカバーで十分である。加熱装置としては、高周波誘導により加熱するような装置が効率的であるが、アークやプラズマなどの放電を利用した装置、燃料の燃焼熱を利用した装置などを使用することができる。保温・加熱時の酸化を防止するために、不活性ガスでシールしながら保温・加熱を行うことが好ましい。700℃まで徐冷した後は、その後のビード研削,サイジングによる定形を円滑に行うために、水冷などで急冷することが好ましい。なお、図2中の装置では、徐冷後、サイジングを速やかに行うために加熱装置の後ろに冷却装置を設けている。
【0008】ところで、溶接急冷後の焼鈍による方法に替え、溶接後に徐冷する方法を採用するに到った実験例について説明する。11%のCrと0.2%のTiを含有し、通常の熱延,冷延および最終焼鈍を施した板圧1mmのステンレス鋼板を、前述したような図2に示す造管ラインで19mmφに成形し、ライン速度30m/分,アプセット量1mm,冷熱および入熱過大を避けた入熱条件で高周波溶接した後、約1400℃の溶接終了温度から700℃までを、3秒間高周波誘導加熱で加熱した(この場合の冷却速度は230℃/秒に相当)。
【0009】造管後、20℃で図3に示すような偏平テストを行った。すなわち、長さ5mの溶接管を2枚の板間の中央に溶接部が位置するように配置し、上下方向に圧下して溶接管を偏平化した。全く平らになるまで偏平させても割れることはなかった。また造管後の組織観察も行ったが、熱応力は十分除去させており、組織は回復され、粗大化も起こっていなかった。優れた加工性を発揮できることがわかった。したがって、この高周波溶接後の徐冷により組織調整を行うことができ、従来の冷却後の焼鈍を代替できることが予測されるので、実施例を拡大した。その結果に基づいて、請求項に記載したような適正な平均冷却速度70〜700℃/秒を見いだしたものである。以下に拡大した実施例を説明する。
【0010】
【実施例】実施例1:SUS436の冷延焼鈍鋼板(板厚1mm)を、図2に示す造管ラインで19mmφに成形し、ライン速度30m/分,アプセット量1mm,冷熱および入熱過大を避けた条件で高周波溶接した後、約1400℃の溶接終了温度から700℃までを、図4に示すように冷却時間(冷却速度)を変えて冷却した。図中( )は溶接後700℃までの冷却時間を示している。なお、冷却時間0.5秒は水冷、1秒は溶接後1mの間をグラスウールの断熱材で保温、3秒以上はライン速度を調整しつつ高周波誘導加熱で加熱したものである。平均冷却速度は、700℃までの冷却速度から逆算したものである。このようにして造管した溶接管について、図4に示す偏平試験を0℃と20℃で行うとともに、溶接部中央の硬度測定並びに組織観察を行った。その結果を表1に示す。
【0011】

【0012】実施例2:鋼種をSUS429、SUS436、SUS447J1に変更し、実施例と全く同じ条件で溶接し、同じ条件で徐冷した。それらの鋼管について、0℃で偏平試験を行った。その結果を表2に示す。
【0013】

【0014】以上の結果から、溶接後その温度1400℃程度から700℃までの間を急冷したものでは、溶接部は硬化しており低温での靭性は低いこと、すなわち加工性に劣ることがわかる。これに対して、溶接後、上記温度範囲を保温ないしは加熱することにより徐冷したものは、ごく短時間で組織が回復し、低温での靭性が向上していることがわかる。しかしながら、冷却速度が遅すぎると組織は回復されるが結晶粒が粗大化しはじめ、粗大化に伴って靭性が低下する傾向にあることもわかる。そして、さらに適正な冷却速度は100〜500℃/秒であることもわかる。従来、加工性に優れるものを得るために参考的に実施されている技術において、冷却後、700〜800℃での焼鈍で与えられたエネルギーの内、組織の回復等、靭性改善に必要なエネルギー分を、溶接直後の造管ライン内での徐冷で短時間に溶接鋼管に与えることができたと推測される。
【0015】
【発明の効果】以上に説明したように、フェライト系ステンレス鋼帯を成形し高周波溶接して溶接管を製造する際、溶接直後の700℃までの冷却を適切な冷却速度で徐冷することにより、組織を短時間で回復させることができ、低温での靭性を向上することができ、従来、加工性が必要なもののみ部分的にオフラインで実施されている、溶接急冷後、所定の温度・時間で焼鈍した電縫鋼管と同等の低温靭性、すなわち低温で優れた加工性を有する電縫鋼管を製造することができた。溶接時の熱を利用し保温ないし僅かな加熱で徐冷することができるので、再加熱法に比べて使用するエネルギー量を大幅に低減できるといった効果もある。
【出願人】 【識別番号】000004581
【氏名又は名称】日新製鋼株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内3丁目4番1号
【出願日】 平成14年2月18日(2002.2.18)
【代理人】 【識別番号】100092392
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 亘 (外2名)
【公開番号】 特開2003−239019(P2003−239019A)
【公開日】 平成15年8月27日(2003.8.27)
【出願番号】 特願2002−39999(P2002−39999)