| 【発明の名称】 |
含クロム鋼精錬スラグの処理方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】水上 敦嗣 【住所又は居所】神奈川県川崎市川崎区小島町4番2号 日本冶金工業株式会社
【氏名】轟 秀和 【住所又は居所】神奈川県川崎市川崎区小島町4番2号 日本冶金工業株式会社内
【氏名】石井 照彰 【住所又は居所】神奈川県川崎市川崎区小島町4番2号 日本冶金工業株式会社内
【氏名】長島 信一 【住所又は居所】神奈川県川崎市川崎区小島町4番2号 日本冶金工業株式会社川崎製造所内
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| 【要約】 |
【課題】含クロム鋼の溶解又は精錬に当たり、この溶解時又は精錬時に多量に発生するスラグに対し、該スラグ中に含まれるクロムを三価の状態に固定する含クロム鋼精錬スラグの処理方法について提案する。
【解決手段】含クロム鋼の溶解又は精錬に当たり、この溶解時又は精錬時に発生するスラグについて、スラグの塩基度をCaO/SiO2≦1.2に調整して、遊離の未滓化CaOを滓化させた後、排滓すること。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 含クロム鋼の溶解又は精錬に当たり、この溶解時又は精錬時に発生するスラグについて、スラグの塩基度をCaO/SiO2≦1.2に調整して、遊離の未滓化CaOを滓化させた後、排滓することを特徴とする含クロム鋼精錬スラグの処理方法。 【請求項2】 含クロム鋼の溶解又は精錬に当たり、この溶解時又は精錬時に発生するスラグについて、スラグの塩基度がCaO/SiO2>1.2のときは、クロムの還元処理を行った後、排滓することを特徴とする含クロム鋼精錬スラグの処理方法。 【請求項3】 上記スラグを、スラグ湯面面積(S)とスラグ容積(V)との比(S/V)が、4以下である容器中に排滓することを特徴とする請求項1または2に記載の含クロム鋼精錬スラグの処理方法。 【請求項4】 上記スラグを、不活性ガス雰囲気下において冷却することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の含クロム鋼精錬スラグの処理方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、含クロム鋼を溶解し、あるいは精錬する工程において、これらの処理時に発生するスラグの処理方法に関し、とくに、土木材料や建築材料などの資源として再利用できるスラグを生成させるための技術を提案する。【0002】 【従来の技術】ステンレス鋼を典型例とする含クロム鋼は、一般に、電気炉で溶解した後、AOD法およびVOD法等の炉外精錬を経て製造され、それぞれの段階でスラグを発生する。こうしたスラグは、溶解−精錬工程において、主として脱酸剤、脱硫材および脱燐材の添加により、溶鋼中に含まれる不純物(C、O、S、Pおよび非金属介在物)の除去に伴って発生し、とくに含クロム鋼の場合、スラグ中にCr2O3が含まれる。その他の成分として、溶鋼中のSiやAl等が、脱酸工程およびCr2O3の還元時に酸化されてSiO2やAl2O3等の酸化物となり、炉または取鍋等の耐火物を保護する目的で添加されるCaOやMgO等とともに溶融スラグを形成する。 【0003】とくに、ステンレス鋼のような含クロム鋼の溶解又は精錬においては、溶解工程の低温期や精錬工程の脱炭用の酸素吹き込み期において、溶鋼中のクロムの一部が酸化されてクロム酸化物を生成し、前記溶融スラグ中に移行することが知られている。そのため、通常、溶解−精錬工程の末期において、クロム酸化物の還元処理を行なうが、どうしても一部のクロム酸化物がスラグ中に残存してしまい、こうしたスラグを有価資源として路盤材等に再利用できない場合があった。 【0004】しかしながら、近年、廃棄物の低減や天然資源の枯渇等の問題点から、このようなスラグを土木向け材料等として再利用することが注目されるようになってきた。 【0005】そのため、こうしたクロム酸化物含有スラグの処理の方法について様々な検討が行なわれてきた。たとえば、排出スラグから六価クロムが溶出するのを防止する方法として、特開昭48-71371号公報、特開昭52-152651号公報および特開平5-345658号公報など、多数の技術が開示がされている。しかしならが、これらの方法はいずれも、炉外に排出したスラグを高温で還元処理する方法やそのスラグをBa塩等を添加し処理する方法であり、処理コストが高く、しかも大量の排滓スラグを処理する方法ではないため、多量に発生する含クロム鋼スラグの処理方法としては不向きであった。 【0006】また、特開平8-302418号公報および特開平8-295917号公報には、含クロム鋼スラグの再資源化処理を溶解−精錬工程で行なうことが提案されている。しかし、これらの方法は、排滓後のスラグ冷却過程も十分に制御しないと資源として再利用できない場合があり、スラグ処理方法として、なお不十分であった。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、従来技術が抱えている上述した実情に鑑み、含クロム鋼の溶解又は精錬に当たり、この溶解時又は精錬時に多量に発生するスラグに対し、該スラグ中に含まれるクロムを三価の状態に固定する含クロム鋼精錬スラグの処理方法について提案する。 【0008】 【課題を解決するための手段】発明者らは、含クロム鋼精錬スラグを、再資源化する上で最大の課題が、このスラグ中に含まれる三価のクロム酸化物の一部がさらに酸化され、六価のクロム酸化物に変化することにあるという認識の下で、その課題解決のために鋭意研究を行なった。その結果、三価のクロム酸化物は、大気中の酸素およびスラグ中に含まれる遊離酸素イオンとの反応によって酸化され、六価のクロム酸化物に変化することをつきとめ、そして、この遊離酸素イオンの最大の供給源が、未滓化CaOであることも明らかとなった。 【0009】本発明は、このような知見の下に開発されたものであって、含クロム鋼の溶解又は精錬に当たり、この溶解時又は精錬時に発生するスラグについて、このスラグの塩基度をCaO/SiO2≦1.2に調整して、フリーの未滓化CaOを滓化させた後、排滓することを特徴とする含クロム鋼精錬スラグの処理方法である。 【0010】また、本発明は、含クロム鋼の溶解又は精錬に当たり、この溶解時又は精錬時に発生するスラグについて、このスラグの塩基度がCaO/SiO2>1.2のときは、クロムの還元処理を行った後、排滓することを特徴とする含クロム鋼精錬スラグの処理方法である。 【0011】なお、本発明において、上記スラグは、スラグ湯面面積(S)とスラグ容積(V)との比(S/V)が、4以下である容器に排滓すること、そして、このスラグは、不活性ガス雰囲気下で冷却することが望ましい。 【0012】 【発明の実施の形態】上述したとおり、ステンレス鋼のような含クロム鋼の溶解又は精錬においては、溶解工程の低温期や精錬工程の脱炭用の酸素吹き込み期において、溶鋼中クロムが酸化され、Cr2O3が生成する。このCr2O3は、還元剤として添加されるSiやAlなどの酸化物およびフラックスとして添加されるCaOやMgOなどと共にクロム酸化物を含む精錬スラグを生成する。 【0013】上記含クロム精錬スラグに関し、発明者らは、まず、スラグ中に含まれる遊離酸素イオンを主因とする六価のクロム酸化物の生成機構について研究を行なった。その結果、含クロム精錬スラグ中に遊離のCaOおよびCr2O3が存在すると、精錬の高温期で生成したCaO・Cr2O3が、その後のスラグ冷却過程において、未滓化CaOから発生する遊離酸素イオンにより酸化され、下記(1)式に示す相変態を起こし、六価のクロム酸化物であるCaCrO4を生成することを知見した。 2CaO+2CaO・Cr2O3+3O2 → 4CaCrO4・・・(1) 【0014】そこで、発明者らは、六価のクロム酸化物が生成しないようにするには、上記(1)式の酸化反応を防止する方法が有効であるとの考えの下で、上記酸化反応の次のような抑制機構に想到した。その第1の方法は、電気炉溶解スラグや精錬スラグの塩基度CaO/SiO2(以下、単にC/Sと略記する。)を、1.2以下に調整すれば、スラグ中の全てのCaOが主としてSiO2と溶融珪酸塩を形成し、スラグ中に遊離のCaOが存在することがなくなり、そのために、上記(1)式に示した反応が右に進むことがなく、たとえスラグ中に、三価のクロム酸化物Cr2O3が含有されていても、その三価のままに固定され、六価のクロム酸化物を生成させるようなことがないのである。 【0015】もちろん、排滓時の温度不足や攪拌不足等によりCaOが滓化不良となった場合には、未滓化CaOの周辺が局部的に高C/Sになるため、SiO2によるCaOの滓化効果が小さくなって、六価のクロム酸化物が生成しやすくなる。そのため、とくに限定されないが、排滓前の溶鋼温度は1550℃以上とすることが好ましい。より好ましくは、1570℃以上である。また、スラグ中に含まれる三価のクロム酸化物Cr2O3自体の濃度を低減するため、Crよりも酸素との親和力の強いSi、AlおよびMn等の還元剤を添加してもよい。 【0016】一方、スラグ中のC/Sが1.2より大きい場合は、溶鋼中に含まれるSi等が還元剤として働き、スラグ中の三価のクロム酸化物Cr2O3が還元され、メタルのCrとして回収される。そのため、スラグ中のCr2O3濃度が低下し、六価のクロム酸化物の生成が抑制される。とくに限定する必要はないが、還元後のCr2O3濃度は、5wt%以下とすることが好ましい。より好ましくは、3wt%以下である。また、Cr2O3の還元を促進させる目的で還元剤を添加する場合には、Crよりも酸素との親和力の強いSi、AlおよびMn等を添加することが好ましい。 【0017】次に、大気中の酸素を主因とする六価のクロム酸化物の生成機構について説明する。排滓後にスラグが大気にさらされる面積を、できるだけ小さくすれば、上記(1)式に示す反応を抑制し、六価のクロム酸化物の生成を抑制できることに想到した。 【0018】すなわち、スラグ湯面面積(S)とスラグ容積(V)の比率(S/V)を4以下に調整すると、スラグ容量に対して、大気にさらされる面積が十分に小さく、上記(1)式による反応が進むようなことがなく、たとえスラグ中に三価クロム化合物Cr2O3が含有されていても、三価のまま固定され、六価のクロム酸化物の生成を阻止することができる。ここで、S/Vを4以下に限定した理由は、S/Vが4より大きい場合、スラグ容積に対して大気にさらされる面積が大きく、条件によっては六価のクロム酸化物が生成する場合があるためである。 【0019】さらに、大気による酸化を防ぐため、排滓スラグをスラグポット等の容器に受け、不活性ガス雰囲気下にて冷却することが好ましい。具体的には、不活性ガスの吹き付けや、不活性ガスで満たされた容器内で冷却することなどが挙げられる。不活性ガスの種類としては、とくに限定されないが、アルゴン、窒素、ヘリウムおよび二酸化炭素等が好適である。なお、容器を不活性ガスで満たし、密閉するため、スラグポット上に蓋をすることが好ましい。 【0020】 【実施例】含クロム鋼原料の電気炉での溶解時及び、その後のAOD法またはVOD法による炉外精錬時に生成するスラグの塩基度および冷却条件を種々に変化させ、精錬スラグを作製した。なお、実機での操業において極端に各条件を変更すると、操業上の不具合を引き起こす場合があるため、一部(比較例)については、実験室にて少量のスラグを作製した。 【0021】作製した各精錬スラグについて、六価のクロムの溶出量を土壌環境基準の検定方法である環境庁告示46号に基づいて測定した。さらに、スラグ組成については、蛍光X線回折により、また、未滓化CaOの有無については、サンプリングした試料のミクロ観察によって特定した。その結果を表1に示す。 【0022】 【表1】
【0023】表1に示されている実験結果によれば、六価のクロムの溶出が検出されていないため、スラグ中のクロムが三価に固定されていることがわかる。しかしながら、比較例では、少なくとも1項以上が、本発明で規定する範囲を外れているため、ごく微量の六価クロムが溶出している。 【0024】 【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、含クロム鋼の溶解又は精錬に当たり、この溶解時又は精錬時に多量に発生するスラグ中に含まれるクロム酸化物のほとんどを、三価に固定することができ、資源としての有効利用が可能となった。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000232793 【氏名又は名称】日本冶金工業株式会社 【住所又は居所】東京都中央区京橋1丁目5番8号
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| 【出願日】 |
平成14年4月15日(2002.4.15) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100080687 【弁理士】 【氏名又は名称】小川 順三 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−301215(P2003−301215A) |
| 【公開日】 |
平成15年10月24日(2003.10.24) |
| 【出願番号】 |
特願2002−112020(P2002−112020) |
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