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【発明の名称】 精錬用ランス
【発明者】 【氏名】宮田 政樹
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内

【氏名】樋口 善彦
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内

【要約】 【課題】溶融金属の浴面に粉体をキャリヤガスと共に吹き付けて精錬をおこなう場合に生じやすいスピッティングを抑制できる精錬用ランスの提供。

【解決手段】ランス先端に設けたノズルの孔の内面形状が、スロートから最先端の出口に向かっていくにしたがい、その中心軸に垂直な断面の面積が小さくなっている精錬用ランス。その場合、ノズルの孔のスロートより出口までの内壁面の中心軸に対する傾きの角度θが1〜12°であり、ノズルの孔のスロートから出口までの中心軸の長さをH、出口の直径をdとするとき、H/dを0.7〜4とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】溶融金属の浴面にキャリヤガスと共に粉体を吹き付けるための精錬用ランスであって、ランス先端に設けたノズルの孔の内面形状が、スロートから最先端の出口に向かっていくにしたがい、その中心軸に垂直な断面の面積が小さくなっていることを特徴とする精錬用ランス。
【請求項2】ノズルの孔のスロートより出口までの内壁面の中心軸に対する傾きの角度θが1〜12°であることを特徴とする請求項1に記載の精錬用ランス。
【請求項3】ノズルの孔のスロートから出口までの中心軸の長さをH、出口の直径をdとするとき、H/dが0.7〜4であることを特徴とする請求項1または2に記載の精錬用ランス。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は溶銑や溶鋼など溶融金属の精錬を目的に、浴面にキャリヤガスとともにフラックスなど粉体を吹き付ける際に用いるランスに関する。
【0002】
【従来の技術】酸素上吹転炉製鋼法は、溶融銑鉄の浴面の上から高圧の酸素を吹き付けて、脱炭反応を主とする鋼の酸化精錬をおこなわせるものである。この溶湯の上からガスを吹き付ける際に、精錬用の粉体を混ぜて溶融金属に接触させ、溶銑や溶鋼の精錬効果を高めたり、より好ましいスラグを形成させたりする方法が提案されている。
【0003】たとえば、特開平8-3111523号公報には、転炉形反応容器に収容された溶銑に対して、上吹きランスから酸化カルシウム粉を酸素と共に吹き付け、同時に炉底またはまたは側壁から攪拌用の不活性ガスを吹き込んで、脱燐をおこなわせる方法の発明が開示されている。
【0004】これらの溶銑の前処理時あるいは製鋼時の精錬過程で、上吹きランスから粉体を吹き付けるために用いられるランス先端のノズルは、ランス上部に比し内径を小さくしてスロートを形成させ、そのままの径でノズルの出口に達するストレートノズル、または断面を図1に示すようなスロート1から出口2に向けて孔の径を大きくしていく、逆テーパーのついたラバールノズルが用いられる。
【0005】ラバールノズルは、高圧の酸素の圧力エネルギーを有効に運動エネルギーに変え、超音速の酸素ジェットを噴射させ攪拌を効果的におこなわせるもので、酸素上吹転炉のランスにはすべてこのノズルが取り付けられ、3孔以上の多孔ノズルが広く使用されている。
【0006】ガスに上述のような粉体を混ぜて溶融金属表面に吹き付ける場合、細かい鉄粉が飛散し、炉外に散逸するスピッティングという現象が多く現れる。スラグが十分多い場合は生じ難いが、精錬初期や溶融金属組成によりスラグが少ない場合には、とくにスピッティングが生じやすい。このため、より精錬効果を高めるため粉体混入量を増そうとしても、十分にはできなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、溶銑の脱燐、溶鋼の脱燐、脱硫等、溶融金属の浴面に粉体をキャリヤガスと共に吹き付けて精錬をおこなう場合に生じやすい、スピッティングを抑制できる精錬用ランスの提供にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、粉体をキャリヤガスと共に溶融金属浴表面に吹き付けたときに生じやすい、スピッティングを抑制することの可能性について、水を使ったモデル実験装置を用い、種々検討をおこなった。
【0009】水モデル実験装置は、容器を透明アクリル樹脂で構成させ、溶融金属に水を用いるもので、その概要は次のとおりである。
【0010】図2に実験装置を模式的に示す。転炉形の反応容器3には直胴部の内径を570mmとし、中央部にて深さ360mmの溶湯に相当する水4を入れる。ランス5は内径42mmで、下端のノズル6の出口と水面との距離、すなわちランス高さは260mmとした。圧縮空気をキャリヤガスとし、粉体はポリエチレン製の粒子径0.18mm以下のものを、粉体供給装置7から配管8を通じて供給する。ランス上部には圧力計9を取り付け、ランス前のガス圧力を測定した。スピッティング量としては、浴面から350mmの位置に吸水紙10を設置して、水の飛沫を採取できるようにした。また、浴面位置にビデオカメラ11を設置し、粉体吹き付け時の状況を側面から観察記録する。
【0011】この装置を用い、図3に示す孔径10mm、スロ−トから出口までの長さが20mmのストレートノズルを先端にを有するランスを用い、ガス供給量を400L/minの一定として、粉体供給速度を10〜1000g/minの範囲で変え、ランス前ガス圧力およびスピッティング量、さらには浴の挙動の観察等をおこなった。
【0012】粉体の供給速度と、スピッティング量またはランス前圧力との関係について測定した結果を図4に示す。図の縦軸のスピッティング量またはランス前圧力は、粉体供給速度が10g/minのときの値を基準値とし、この値に対する比、すなわち相対値で示している。この図から粉体の供給速度が増すと共に、スピッティング量もランス前圧力も増加していることがわかる。
【0013】一方、粉体吹き付け時の粉粒子、浴および水滴の挙動を観察した結果では、スピッティングの水滴はガスジェットにより形成されるキャビティの周辺部(通常リップ部と呼ばれる)から生成しているが、粉体はガスジェットの中心部に凝集している。このことは、粉体が直接スピッティング量を増加させているのではなく、ランス前の圧力増加が大きく影響しているのではないかと思われた。
【0014】図4によれば、粉体の供給速度が増すとスピッティング量が増しているように見える。しかし、ガス供給量が一定であるにもかかわらず、ランス前圧力が上昇している。ランス前圧力が高くなると噴出するガスの運動エネルギーは増加する。このことからも、上吹きガスジェットに粉体を混入することによるスピッティングの増加は、粉体が直接作用しているのではなく、それによるランス前圧力の上昇が原因であると推測された。
【0015】そこで、粉体供給時のランス前圧力におよぼすランス構造、とくにノズルの形状について形状を種々変え、その影響を調べてみた。その結果、図1に示したラバ−ルノズルとは逆の、先端出口に近づくほど孔の径が小さくなるテーパーノズルとすると、ランス前圧力の増加を抑止できることがわかってきたのである。
【0016】図5に示す出口の径が10mmのノズル孔で、スロートから先端出口まで、すなわちノズル孔テーパー部における逆円錐面の中心軸に対する角度が7°、中心軸に沿った長さが20mmであるノズルを取り付けた、テーパーランスによる例を以下に述べる。この場合、上述のストレートランスを用いた実験と全く同じ条件にて、粉体供給速度を10〜1000g/minの範囲で変え、ランス前ガス圧力およびスピッティング量を調査した。
【0017】図4と同じ表示法で整理した結果を図6に示すが、粉体供給速度が増してもスピッティング量はほとんど増加せず、ランス前圧力は図4と比較すればわかるように、その高くなる傾向は小さくなっている。このように、テーパーランスを用いると、粉体混入によるランス前圧力が抑制され、スピッティングはランス前圧力が粉体供給速度が高くなっていくにもかかわらず増加しない。これは、同じ出口径ではノズル孔を先端に行くほど小さくしたことによって、ガスの通過抵抗が減少しランス前圧力が低下したことに加えて、ガスジェットの中心部に粉体が効率よく凝集されたためではないかと思われる。
【0018】このテーパーランスにおけるノズル孔の形状の効果について検討した。出口径を10mm、テーパー部の中心軸の長さを20mmの一定とし、逆円錐面の中心線に対する角度θを変え、スピッティング量を調べると、図7の結果が得られた。この場合、粉体の供給速度は300g/minの一定とし、他の条件は、図4または図6を得たときと同じである。この図7から、スピッティング量はテーパー部の角度θが5〜6°で最小値を示し、15°以上になるとストレートランスと変わらなくなることがわかる。
【0019】また、テーパー部のθを7°の一定とし、上述の粉体の供給速度300g/min一定の条件で、出口径dとテーパー部の中心軸の長さHについてH/dを変えスピッティング量を調べた結果を図8に示す。H/dは約2でスピッティング量は最小となり、0.5未満あるいは5を超えると、ストレートランスと変わらなくなってしまう。ノズルのテーパー部は、図5に示したように逆円錐面として上記の実験はおこなったが、テーパー部の面は図9または図10に示すように多少湾曲させてもよく、その場合、スロ−トと出口を結ぶ線の中心軸となす角度が、上述の範囲であれば同様な効果が得られた。
【0020】以上は水モデル実験装置による結果であるが、溶銑または溶鋼の金属溶湯に対し、このようなテーパーランスを用い効果を確認した結果、とくにノズルの形状に関してその効果はそのまま適用できることが確認された。すなわち本発明の要旨は次のとおりである。
【0021】(1) 溶融金属の浴面にキャリヤガスと共に粉体を吹き付けるための精錬用ランスであって、ランス先端に設けたノズルの孔の内面形状が、スロートから最先端の出口に向かっていくにしたがい、その中心軸に垂直な断面の面積が小さくなっていることを特徴とする精錬用ランス。
【0022】(2) ノズルの孔のスロートより出口までの内壁面の中心軸に対する傾きの角度θが1〜12°であることを特徴とする上記(1)の精錬用ランス。
【0023】(3) ノズルの孔のスロートから出口までの中心軸の長さをH、出口の直径をdとするとき、H/dが0.7〜4であることを特徴とする上記(1)または(2)の精錬用ランス。
【0024】
【発明の実施の形態】本発明の、溶融金属の上面よりキャリヤガスと共に粉体を吹き付けて精錬をおこなう際に用いる精錬用ランスは、ランス先端に設けたノズルの孔の内面形状が、スロートから最先端の出口に向かって、その中心軸に垂直な断面の面積が小さくなっているものとする。
【0025】通常、溶湯上面よりガスを吹き付ける目的に用いられるランスは、ランス下端に設けられたノズルが、ランスの内径より径の小さくなったスロートから、ノズル出口に向かっていくにしたがって内径が大きくなる図1に示したラバールノズルが用いられる。これに対し本発明では、逆に内径を小さくしていくのは、それによって溶融金属が粉化するスピッティングが抑止されるからである。
【0026】このノズルのスロートから出口までの内壁面の、中心軸に対する傾きの角度θは1〜12°とする。θが0の場合はストレートランスであるが、1°以上あれば、スピッティング抑止に効果がある。しかしθが12°を超えるとストレートランスと変わらなくなる。望ましいのはθを3〜8°とすることである。
【0027】ノズルの孔のスロートから出口までの中心軸の長さをH、出口の直径をdとするとき、H/dが0.7〜4であることとする。これは、H/dが0.7未満のときストレートランスを用いた場合との差がなく、4を超えるとやはりストレートランスの場合と同様になってしまうからである。望ましいのはH/dを1.3〜2.5とすることである。
【0028】ランス先端のノズル数は、いずれも上述のテーパーノズルを用いるのであれば、単数でも複数でもよい。また、ノズル内面は、Crメッキあるいはセラミックのコーティングなどにより耐摩耗性を向上させる処置が施されていることが望ましい。
【0029】
【実施例】試験転炉にて、2トンの溶銑に対し上方からランスにより酸素をキャリヤガスとして生石灰粉を吹き付け、精錬をおこなった。その際、ランスは本発明のテーパーランスと、ストレートランスとの2種を用い、スピッティングを比較した。テーパーランスの先端ノズルは図5に示したものと同形状で、ノズル出口の口径dが10.8mm、ノズル孔テーパー部の逆円錐面の中心軸に対する傾きは7°、孔のテーパー部の中心軸に沿った長さは25mmとした。したがってH/dは2.3である。比較のため用いたストレートランスは、ノズル口径が10.8mm、ノズル孔の長さが25mmの図3に示したものと同形状である。ただしいずれのランスもその内径Rは38mmである。
【0030】ランス先端の溶銑面に対する高さは、いずれの場合も500mmとした。スピッティングについては、溶銑面からの高さ700mmの位置に捕獲箱を取り付け、中に溜まった屑粉量を計測した。これはスピッティングの絶対量を計測するものではないが、いずれの吹錬の場合にも同一寸法の捕獲箱を同一位置に取り付けているので、貯まった屑粉量から、相対的な発生量の多少を比較できる。
【0031】吹錬条件および結果を表1にまとめて示す。表中のスピッティング量は相対値である。これから本発明のテーパーランスを用いることにより、ストレートランスの場合に比較して1/5にまでスピッティング量が低減できたことがわかる。
【0032】
【表1】

【0033】
【発明の効果】溶銑や溶鋼など溶融金属の精錬のため、粉体をキャリヤガスとともに溶湯表面から吹き付ける場合、本発明のランスを用いることによりスピッティングの発生量を大幅に低減することができる。それにより粉体の混入量を増すことができるので精錬効率が向上し、歩留まりも向上する。
【出願人】 【識別番号】000002118
【氏名又は名称】住友金属工業株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号
【出願日】 平成14年4月12日(2002.4.12)
【代理人】 【識別番号】100103481
【弁理士】
【氏名又は名称】森 道雄 (外1名)
【公開番号】 特開2003−301213(P2003−301213A)
【公開日】 平成15年10月24日(2003.10.24)
【出願番号】 特願2002−111202(P2002−111202)