トップ :: C 化学 冶金 :: C21 鉄冶金




【発明の名称】 ステンレス鋼精錬方法及びダスト分別回収装置
【発明者】 【氏名】新飼 昭男
【住所又は居所】福岡県北九州市戸畑区飛幡町1番1号 新日本製鐵株式会社八幡製鐵所内

【氏名】岡田 安弘
【住所又は居所】福岡県北九州市戸畑区飛幡町1番1号 新日本製鐵株式会社八幡製鐵所内

【要約】 【課題】リサイクルに適したダストが生成できるステンレス精錬方法及びダスト分別回収装置を提供することを課題とする。

【解決手段】製鋼炉での精錬において、合金元素添加開始前と添加開始後に発生するダストを分離して回収するステンレス精錬方法である。全吹酸脱炭精錬時間の1/5から4/5の間に合金元素添加を実施すると良い。ダスト分別回収装置30は、合金元素添加手段とダスト回収手段17、18と、複数のダスト貯蔵槽25、29と、合金元素添加開始時にダスト貯蔵槽25、29を切替える切替え手段24、27とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 合金元素添加開始前と添加開始後に発生するダストを分離して回収することを特徴とするステンレス鋼精錬方法。
【請求項2】 全吹酸脱炭精錬時間の1/5から4/5の間に前記合金元素の添加を実施することを特徴とする請求項1記載のステンレス鋼精錬方法。
【請求項3】 前記添加する合金元素がCrを含む合金元素であることを特徴とする請求項1又は2記載のステンレス鋼精錬方法。
【請求項4】 合金元素添加手段と、ダストを回収するダスト回収手段と、複数のダスト貯蔵槽と、合金元素添加開始時に前記ダスト貯蔵槽を切替える切替え手段とを有することを特徴とする製鋼炉におけるダスト分別回収装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はステンレス鋼精錬において、リサイクルに適したダストが生成できる方法、ならびにダストの回収装置に関する。
【0002】
【従来の技術】溶銑の脱炭時には、転炉における溶銑の吹酸脱炭精錬による溶湯のスプラッシュを起源とするダストや、脱炭反応時のCOガス発生にともなう溶湯のバーストに起因するダストや、前記スプラッシュのバーストに起因するダストなどが発生する。このダストはFe等の有価値金属を含むため、回収してリサイクルを実施するが、回収したままのダストでは自然酸化により発熱するため、搬送や貯蔵には適さない。従ってダストの酸化処理等の事前処理が一般に実施されている。この事前処理したダストは、還元処理ができ、多量の処理が可能であり、かつ既存の製鉄工程の一つである高炉工程を用いて一般的には処理されることが多く、鉄源としてリサイクルされる。
【0003】ところが本発明が対象とするステンレス鋼精錬においては、発生するダストには製造するステンレスの成分であるCr等を含有し(以下、含Crダストと称す)、これら元素を添加する必要の無い普通鋼においては不純物として作用するため、普通鋼の鉄源でもある高炉工程は、含Crダストのリサイクルには適さないという課題がある。この課題に対して、いくつかの提案がなされている。特開昭53−116214号公報においては、転炉の溶銑に含まれるCにより含Crダストを還元する方法が提案されている。この方法では還元のための熱補償が必要となり、処理量にも限界がある。この課題に対しては、特開昭55−097434号公報や特開平11−021612号公報において、コークスやA1などの還元剤と共に含Crダストを溶湯に投入し、還元のための熱を補償する方法が提案されているが、還元剤配合の手間や精錬処理時間の延長を招き、コスト負担の増大や生産能力が減少する等の課題がある。特開平4−325614号公報においては、含Crダストを非酸化性雰囲気下で加熱することにより含Crダストに含まれる水分量の上限を制限し、酸化発熱を防止する方法を開示するが、この方法では含Crダストのリサイクルに際して還元剤は不要となるものの、事前の処理が必要であるのみならず、含Crダストの搬送、一時貯蔵時の吸湿等による酸化発熱を根本的に防止することは困難である。
【0004】前記いずれの従来技術も、含CrダストはCr等を含まないいわゆる普通鋼が鉄源としてのリサイクル先ではなく、ステンレス鋼等のCrを含む鋼に限定するもので、またそのリサイクルに際しては、発熱防止のための酸化処理等の事前処理や還元剤配合等の手間を必要とするものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、リサイクル先をステンレス鋼のみに限定することのない、更にはリサイクル時に必要な上記事前処理の簡略化、省略が可能なダストを生成できるステンレス精錬方法及びダスト分別回収装置を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】発明者らは転炉における13mass%Crを含むステンレス鋼精錬を例に、吹酸脱炭精錬時に発生したダストを調査したところ、以下の知見を新たに得た。まず、ステンレス鋼吹酸脱炭精錬時に発生するダストは、従来より総称して含Crダストと呼ばれているが、微視的に観察すると含有するCrが0mass%すなわちFeを主成分としてCrを含まないダスト粒(以下、Feダストと称す)と、約20mass%を上限とするCrやその他合金元素を含有するダスト粒(以下、合金ダストと称す)の混合物であることを新たに知見した。またこれらの混合物である含Crダストの発熱の原因は、含Crダストを構成するFeダストの酸化による発熱が主原因で、発熱に対する合金ダストの酸化の寄与は少ないことも新たに発見した。上記Feダストと合金ダストが発生するメカニズムについても調査し、以下の知見を得た。一般に転炉中の溶銑の吹酸脱炭精錬中にステンレスを構成する元素(以下、合金元素と称する)を添加し、またダストは既述の通り吹酸に起因して発生するが、Feダストは合金元素添加開始前から発生し、合金ダストは合金元素の添加開始直後から発生し、Feダスト発生と合金ダスト発生は時間的に区別できるものであった。従来は時間的に分かれて発生するFeダストならびに合金ダストを区別することなく回収するため、Feダストと合金ダストが混合した状態で含Crダストとして回収していたのである。
【0007】以上の知見に基づいて発見者らは課題解決の手段として、合金元素添加開始時期に新たに着目し、合金元素添加開始時期をはさんで時間的に区別して発生するFeダストと合金ダストを分別回収することに想到した。これにより、分別回収したFeダストはリサイクル先をステンレス鋼に限定する必要がなく、高炉工程等を用いたリサイクル方法も新たに適用できるものである。合金ダストは分別回収することにより、含Crダスト量よりも大幅に減少できる。その上従来不可欠であった酸化処理等の事前処理や還元剤配合等の手間をも簡略化、省略できる。
【0008】更に合金元素添加開始時期の適切な設定により、Feダストと合金ダストの混合の無い回収がより確実にできる。発生ダストはスラリーとして回収するが、吹酸開始直後のスラリーは、スラリー流路の内壁に一時的に付着・堆積する場合があり、この付着・体積はFeダストと合金ダストの混合の原因となる。これについては、概ね全吹酸脱炭精錬時間の1/5を経過するまでには一時的に付着・堆積したスラリーは、後続して流れてくるスラリーによって除去される。以上の知見から、Feダストと合金ダストのより確実な分別回収には、全吹酸脱炭精錬時間の、吹酸開始後1/5から4/5の間に合金元素添加を実施すると良い。これにより吹酸開始から合金元素添加開始時刻の間に合金ダスト混入のほぼないFeダストが採取でき、合金元素添加開始時刻以降にはFeダスト混入のほぼない合金ダストが採取できる。なお全吹酸脱炭精錬時間の4/5から1の間は合金元素添加は実施せず、終点C量制御、終点温度制御、溶鋼均一攪拌等に費やす。
【0009】更に回収Feダスト量の比率増加ができる。合金元素の低炭化や細粒化等、合金元素添加方法の改善や、より溶鋼の攪拌が期待できる底吹きの適用等吹酸方法の改善等により、合金元素の溶融時間の減縮や、脱炭負荷の減少を図れば、合金元素添加開始時期を、吹酸開始後2/5以降、更には3/5以降に遅らせることができ、吹酸開始後4/5までに合金元素添加を終了すると、合金ダスト混入がほぼない回収Feダスト量比率がより高められるため望ましい。ここで全吹酸脱炭精錬時間の4/5〜1の間は、前記終点C量制御、終点温度制御、溶鋼均一攪拌等の所要時間と規定したが、溶製する鋼種数が少ない等安定操業が可能となる場合や精錬モデルの発展による更なる短時間制御が可能となる場合は、前記終点C量制御、終点温度制御の所要時間を短くすることができる。従って、合金元素添加開始から終了に至る時期(上記では全吹酸脱炭精錬時間の1/5〜4/5、より好ましくは2/5〜4/5、更には3/5〜4/5の間)を更に遅らせることが可能となり、発生するダストのFeダスト量比率をより高めて回収できる。
【0010】上記については、ステンレス鋼を構成する合金元素の添加時期について述べたが、ステンレス鋼の主要添加元素であるCrの添加時期にのみに上記発明を適用してもほぼ同様な効果を得ることができる。これは、Cr以外の添加元素が少量である場合があり、Crを含まないダストに含まれる合金元素はリサイクルの際に許容できる不純物として扱える場合が多く、Crを含まない合金元素を含むダストはFeダストと同等な扱いができるためである。
【0011】更にダストを分別回収する装置について述べる。一般のダスト回収貯蔵装置は、発生ダストを精錬時に発生するガスと共に回収する装置、ガス中に散水して補足したダストをスラリーとして回収するダスト回収手段と、複数のダスト貯蔵槽からなる。そして、複数回の吹酸脱炭精錬を経てダスト貯蔵槽の貯蔵余力が減少した後に、ダスト貯蔵を他の空のダスト貯蔵槽に切替えて、ダストを含むスラリーの貯蔵を新たに開始する。このダスト貯蔵槽の切替えは吹酸脱炭吹錬終了後に実施し、また吹酸脱炭精錬中の合金元素添加開始に同期させて切替える機能は無く、ダストの分別回収はできない。
【0012】発明者らは、分別回収する機能をもたせるために、合金元素添加開始時にダスト貯蔵槽を切替える手段を付設することを発明した。この切替え手段は、合金元素添加開始時に電気信号を含む任意の手段の連絡を受けた後に、複数のダスト貯蔵槽から特定のダスト貯蔵槽を選択する機能を必要とするものである。この切替え手段は、可動式のスラリー流路を複数のダスト貯蔵槽間を移動させるものや、複数のダスト貯蔵槽の各々に付設するスラリー流路を弁などの手段で選択するもの等いずれの方法を用いても良い。また前記の合金元素添加開始時の定義は、合金元素添加時刻に溶鋼から発生したダストがダスト流路を経由してダスト貯蔵槽の切替え手段に到達するまでの時間を加えることができる。また回収するダストは目的に応じてFeダストへの合金ダストの混入を極めて制限する場合や、合金ダストにFeダストの混入を極めて制限する場合があるため、合金元素添加時刻に実態調査により自明となる時間を、加えること又は減じることもできる。上記のダスト分別回収装置は転炉、電炉、AOD等の製鋼炉、特に酸素吹き製鋼炉で有効であり、更には酸素吹き転炉において特に有効である。またステンレス鋼のみならず、例えばFe−Mn系合金、Fe−Ni系合金など、溶融金属に合金元素を添加する鋼種、工程におけるダスト分別回収に有効である。
【0013】以上から、ステンレス鋼精錬においてリサイクルに適したダストが生成できるステンレス鋼精錬方法、ならびにダスト分別回収装置に関する手段をまとめると下記の通りである。
1.ステンレス鋼精錬において、合金元素添加開始前と添加開始後に発生するダストを分離して回収すること、2.更には、全吹酸脱炭精錬時間の1/5から4/5の間に前記合金元素の添加を実施すること、3.前記合金元素がCrを含む合金元素のみであること、である。更に上記分離回収を実現できる装置として、4.合金元素添加手段と、ダストを回収するダスト回収手段と、複数のダスト貯蔵槽と、合金元素添加開始時に前記ダスト貯蔵槽を切替える切替え手段とを有すること、を提示するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】続いて添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。図1は、本発明の一実施の形態に係るダスト分別回収装置の説明図である。図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るダスト分別回収装置30は、溶銑11を蓄えた転炉10に酸素12を吹き込む機構と、合金元素13を添加する合金元素添加手段と、吹酸脱炭精錬時に発生するガス及びダストを捕集するフード14を有する。フード14には、ガス流路15を連結し、更にガス流路15にブロアー16を連結し、ガス流路15を通過する前記発生ガスはブロアー16を通過して、図示しないガス処理装置へと導かれる。
【0015】前記ガス流路15の途中には、ダスト回収手段を構成する2台のダスト捕捉装置17、18を設置し、水19を噴射することによりダストをスラリーとする。ダスト捕捉装置17で生成したスラリーはスラリー流路20を通じて分級装置21に供給する。ダスト捕捉装置18で生成したスラリーはスラリー流路22を通じて回収する。ここで、発生するダストは概ね大きさが3mm以下であるが、ダスト捕捉装置17では3mm以下のダストが捕捉できるが、大きさ60μm以下のダストの一部は捕捉できず、当該ダストはダスト捕捉装置18でスラリーとなり、発生するダストのほぼすべての捕捉が可能となる。
【0016】スラリー流路20を通じて分級装置21に供給したスラリーに含まれるダストのうち、大きさが60μmを超える粗粒と称したダストは、粗粒流路23を通過し、複数ある粗粒ダスト貯蔵槽25のいずれかに貯蔵される。複数ある粗粒ダスト貯蔵槽25は、切替え手段の一例であるダスト流路切替え装置24により粗粒ダストを投入・貯蔵する槽が選択される。スラリー流路20を通じて分級装置21に供給したスラリーに含まれるダストのうち、大きさが60μm以下の細粒と称したダストは、スラリー流路26を通過して、複数ある細粒ダスト貯蔵槽29のいずれかに貯蔵される。複数ある細粒ダスト貯蔵槽29は、切替え手段の一例であるダスト流路切替え装置27より細粒ダストを投入・貯蔵する槽が選択される。スラリー流路22を通じて回収したスラリーは、複数ある細粒ダスト貯蔵槽29のいずれかに貯蔵するが、切替え手段の一例であるダスト流路切替え装置28より細粒ダストを投入・貯蔵する槽を選択する。上記一連のダスト分別回収装置30により回収したダストを含むスラリーは、脱水、乾燥等を実施し、リサイクルに使用する。
【0017】次に本発明の一実施の形態に係るステンレス鋼精錬方法において、前記ダスト分別回収装置30を使用した場合について説明する。転炉10にある溶銑11に、酸素12を吹酸することにより、吹酸脱炭精錬を実施する。この吹酸脱炭精錬時には、ガスと共にダストが発生する。合金元素添加手段によって合金元素13を添加する前には、主として溶銑11の成分で構成されるFeダストが発生し、合金元素13を添加した後には合金元素を含むダストが生成する。発生したダストは発生したガスと共に、フード14、ガス流路15を経由して、ダスト捕捉装置17、18にて水19を噴射し、ダストを冷却かつスラリー化し、ガスから分離する。スラリーは、スラリー流路20、22、26を通して細粒ダスト貯蔵槽29に貯蔵し、また大きさが60μmを超える粗粒ダストについてはスラリー流路20に連結した分級装置21にて取り出し、粗粒ダスト貯蔵槽25に貯蔵する。
【0018】上記の一連のダスト回収工程において、既述のように吹酸脱炭精錬開始直後はダスト回収工程の途中にてダストを含むスラリーが付着・堆積することがあるが、吹酸脱炭精錬時間全体の概ね1/5を経過するまでには前記付着・堆積を解消し、安定してダストを含むスラリーを回収することができる。このため合金元素13は、吹酸脱炭精錬時間全体の概ね1/5を経過した後に添加し、合金元素添加時刻と同時刻に図示しない制御手段により、ダスト流路切替え装置24、27、28に合金元素添加信号を伝達し、ダスト流路切替え装置24、27、28を移動させ、Feダストを含むスラリーを貯蔵していた粗粒ダスト貯蔵槽25、細粒ダスト貯蔵槽29から、合金ダストを含むスラリーを貯蔵するための粗粒ダスト貯蔵槽25、細粒ダスト貯蔵槽29に切替える。以上により、Feダストと合金ダストを分別して粗粒ダスト貯蔵槽25、細粒ダスト貯蔵槽29に貯蔵する。
【0019】前記粗粒ダストは、粗粒ダストを含むスラリーの脱水処理、乾燥処理後に粗粒ダストを貯蔵しても、その大きさが60μmを超える大きなものであるため発熱が起こらず、酸化処理等のリサイクルのための事前処理が不要であり、粗粒ダストは脱水処理、乾燥処理後にそのままリサイクルに使用する。リサイクルに際しては、Feダストは合金成分を含まないためそのリサイクル先に制約はなく、合金ダストのリサイクル先はその合金ダスト成分に応じて実施できるが、分別回収したために従来の含Crダストに比べてその量は著しく減少しておりリサイクル時に熱を補償する手間が大きく減縮できる。
【0020】前記細粒ダストのうち、Feダストは、その大きさが60μm以下であり、Feダストを含むスラリーの脱水処理、乾燥処理後にFeダストを貯蔵する際には酸化発熱が発生するため、リサイクルに際しては酸化処理等の事前処理が不可欠となる。但し前記Feダストには合金成分が含まれないため、高炉工程を用いたリサイクルも可能となり、またリサイクル先の鋼種も普通鋼を含めて任意の鋼種が可能となる。前記細粒ダストのうち、合金ダストは合金成分を含むため、合金ダストを含むスラリーの脱水処理、乾燥処理後に合金ダストを貯蔵する際には、酸化発熱が顕著ではなく、リサイクルに際しては酸化処理等の事前処理を必要としない。また、Feダストと合金ダストを分別回収しているため、従来の含Crダスト量に比べて合金ダスト量は著しく減少しており、リサイクル時に熱を補償する手間が大きく減縮できる。
【0021】
【実施例】次に本発明の実施例について説明する。脱燐、脱硫処理をした溶銑を転炉に装入し、約25分間の吹酸脱炭精錬を実施し、13%Cr鋼を溶製した。用いた合金元素はフェロクロムのみである。吹酸は上吹き、下吹きを併用した。Feダストと合金ダストに分別回収(実施例1)した成分分析結果と従来の分別回収しない方法(比較例1)で回収したダストの成分分析結果を表1に示す。合金元素添加は吹酸脱炭精錬開始後5分に開始し、20分に終了した。分析は、図1に示す本発明の一実施の形態に係るダスト分別回収装置30の細粒ダスト貯蔵槽29に貯蔵したスラリーを、フィルタープレスにて脱水後、乾燥して評価サンプルを20g採取後、化学分析にてCr濃度を測定した。ダスト分別回収装置30のダスト流路切替え装置27、28の細粒ダスト貯蔵槽29の切替え時刻は合金元素添加開始時刻(吹酸開始後5分)と同時刻である。
【0022】
【表1】

【0023】従来法である比較例1の含Crダストの平均Cr濃度は9.1%であるのに対し、実施例1の分別回収により、合金ダストは平均Cr濃度が11.2%に増加し、Feダストは平均Cr濃度は0.2%で、普通鋼ダストの一般的な平均Cr濃度と同等なダストが得られている。また含Crダストの量を1とすると、Feダストの量は1/5弱、合金ダスト量は4/5強であり、分別回収により合金ダスト量は含Crダスト量よりも減少できた。
【0024】次に、合金元素添加開始時期を変更した実施例について述べる。Feダストと合金ダストの区別した発生を評価するため、スラリー流路(図1の20)にて採取したダスト粒子5〜20個のCr濃度(質量%)を定量分析機器(EPMA)にて測定した。実施例1〜8における合金元素添加開始時期、合金元素添加終了時期、回収ダスト量比率を表2に示す。各実施例においては、吹酸は上吹き、下吹きの併用は共通であり、所定の転炉処理ができる範囲で上吹き酸素量は15000〜28000Nm3 /Hrの範囲、下吹き酸素量は1400〜2500Nm3 /Hrの範囲で変更させたが、図2に示した様に酸素量の変更によるダスト発生量の顕著な変化は見られなかった。図2は実施例1〜8における吹酸脱炭精錬開始後の各時間において発生したダスト量(mg/1)を示したものである。ダスト量は、分級装置(図1の21)にてスラリーを採取し、採取スラリー量1リットルあたりに含まれるダスト量(mg/1)として評価している。
【0025】
【表2】

【0026】実施例1〜3、5〜8は、継続した吹酸中に合金元素添加を実施した。実施例4は合金元素添加の際に吹酸を一旦停止し、この停止時間は吹酸脱炭精錬時間(約25分間)から除外している。図3〜図10は、実施例1〜8各々におけるダスト粒子のCr濃度(mass%)の時間推移を示したもの(●プロット)である。表2の回収ダスト量比率欄ならびに図3〜図10に示した様に、合金元素添加開始前のダスト回収によりFeダストを回収することができる。合金元素については、全吹酸脱炭時間の1/5以降に合金元素添加を開始した実施例1〜5、実施例8(図3〜図7、図10)においてはFeダストの混入のない合金ダストが回収できる。全吹酸脱炭時間の1/5を超えない時期に合金元素添加を開始した実施例6、7(図8、図9)については、合金元素とFeダストを混合して回収する時期があるため、合金ダストのみの回収はできない。また表2の実施例1、2、4から、合金元素添加開始時期が遅くなるほど回収ダストにおけるFeダスト比率が増加する傾向があり好ましいが、合金元素添加終了時期が遅くなるために、転炉における所定の処理が終了することができない場合がある。脱炭吹錬精錬開始後24分に合金元素添加を終了した実施例8は、Feダストならびに合金ダストの分離回収はできるが、合金元素添加終了から吹酸完了までの時間が少なく、脱炭処理ならびに溶鋼の均一化の攪拌処理等が完了しなかった。吹酸脱炭精錬開始後22分で合金元素添加を終了した実施例3は転炉における所定の処理は完了した。以上の実施例より、分別回収には全吹酸脱炭精練時間の4/5までに合金元素添加を終了させることが望ましい。
【0027】以上述べたように、合金元素添加開始前の発生ダストの分別回収により、Feダストを回収することができ、合金元素添加開始〜終了の時期を本発明の方法で選定すればFeダストと合金ダストの混合のない回収がより確実にでき、転炉における所定の処理を実施することが可能である。また合金元素添加開始時刻を、可能な範囲で吹酸脱炭精錬時間の終了側におくと、Feダスト発生総量を増加させ、合金ダスト発生総量を減少させることもできる。
【0028】次に実施例2において、ダスト貯蔵槽切替え時期を変化させた結果について述べる。図1のダスト流路切替え装置27、28の切替え時刻を3条件設定して実施した。前記切替え時刻条件は、合金元素添加開始時刻(吹酸開始後10分)と同時刻(実施例2−1)、実施例2よりも3分早い時刻(実施例2−2)、実施例2から3分遅い時刻(実施例2−3)とし、各例のCr濃度を表3に示した。Cr濃度の測定方法は、表1に示したCr濃度の測定と同方法である。
【0029】
【表3】

【0030】合金元素添加開始時刻と、FeダストのCr濃度の関係は、実施例2−1〜2−3に示したようにいずれの実施例も普通鋼へのリサイクルには不純物として許容できる範囲の濃度であるが、合金元素添加開始時刻より早い時刻(実施例2−2)と合金元素添加開始時刻と同時刻(実施例2−1)に前記の切替えを実施すると、より低いCr濃度のFeダストが得られる傾向にあり、リサイクル先のCr濃度制約によっては好ましい条件となる。
【0031】合金元素添加開始時刻と、合金ダストのCr濃度の関係は、実施例2−1〜2−3に示したように、いずれも含CrダストCr濃度(表1の比較例1、9.1%)と比較して合金ダストは高いCr濃度で回収できているが、合金元素添加開始時刻より遅い時刻(実施例2−3)に前記の切替えを実施すると、より高いCr濃度が得られた。実施例2のCr濃度の時間推移である図4に示した通り、5〜20個のダスト粒子の調査結果ではCr濃度が0%のFeダスト粒子はなかったが、本調査方法では合金ダスト中へのFeダスト粒子の混入が皆無とは断言できず、酸化発熱をより確実に防止することを優先する場合には実施例2−3のダスト貯蔵槽切替え時刻の条件が、実施例2−1、2−2に比べてより好ましいと考えられる。なお、本実施例では、切替え時刻条件は合金元素添加開始時刻に前後させること3分としたが、ダスト流路の長さ等に応じて増減させても良い。以上本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない条件の変更等はすべて本発明の適用範囲である。
【0032】
【発明の効果】請求項1〜3記載のステンレス鋼精錬方法及び請求項4記載のダスト分別回収装置において、合金元素添加時期あるいはCrを含む合金元素添加時期を規定することにより、従来ステンレス鋼精錬時に発生していた含Crダストを、Feダストと合金ダストに分別して発生させ、更には分別回収を可能とすることにより、リサイクルに適したダストを回収することができる。従来Cr等の不純物元素を含む含Crダストは高炉工程を用いたリサイクルが不可能であったが、本発明によるFeダストでは可能となった。また、Feダストはリサイクル先の鋼種として普通鋼等が可能であるなどリサイクル先が広がった。合金ダストはFeダストをほとんど含まないため、Feダスト粒子をも含んでいた従来の含Crダストがリサイクルに際して必要としていた酸化発熱防止等の事前処理が簡略化、省略できるようになり、また従来リサイクル時に必要であった還元剤配合等や還元の際に必要な熱補償も簡略化又は省略できるようになった。更には、本発明による合金ダストは従来の含Crダストに比べて、Cr濃度が高く、ステンレス鋼へのリサイクルに際しては、フェロクロム等の合金元素の一部に代替することも可能である。
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区大手町2丁目6番3号
【出願日】 平成14年4月9日(2002.4.9)
【代理人】 【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
【公開番号】 特開2003−301212(P2003−301212A)
【公開日】 平成15年10月24日(2003.10.24)
【出願番号】 特願2002−106984(P2002−106984)