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【発明の名称】 高炉炉底における湯流れ状態の診断装置、方法、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体
【発明者】 【氏名】中川 淳一
【住所又は居所】富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技術開発本部内

【氏名】吉野 博之
【住所又は居所】富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技術開発本部内

【氏名】栗田 泰司
【住所又は居所】北九州市戸畑区飛幡町1−1 新日本製鐵株式会社八幡製鐵所内

【氏名】八ヶ代 健一
【住所又は居所】北九州市戸畑区飛幡町1−1 新日本製鐵株式会社八幡製鐵所内

【要約】 【課題】高炉炉底における湯流れ状態を的確に診断できるようにする。

【解決手段】高炉炉底の底盤303a中央に埋め込まれた熱電対301により計測された時系列の温度情報から得られた時系列の熱流束情報と、高炉炉底の出銑孔252付近に埋め込まれた熱電対302により計測された時系列の温度情報から得られた時系列の熱流束情報とに基づいて、2変数の相互リカレンスプロットを作成し、その相互リカレンスプロットに基づいて、高炉炉底における湯流れ状態を診断する。2箇所の検出端間に強い流れが存在すれば、相互リカレンスプロット上では対角線に平行な線分として表現されるので、相互リカレンスプロット上で対角線に平行な線分が存在するか否かによって、炉底中央から出銑孔252に向かう健全な流れが存在するか、炉底中央において湯流れが停滞しているかを診断することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 高炉炉底の底盤中央に埋め込まれた第1の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報と、高炉炉底の出銑孔付近に埋め込まれた第2の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報とに基づいて、2変数のリカレンスプロットを作成するリカレンスプロット作成手段と、上記リカレンスプロットに基づいて、高炉炉底における湯流れ状態を診断する診断手段とを備えたことを特徴とする高炉炉底における湯流れ状態の診断装置。
【請求項2】 上記第1の温度検出手段により計測された時系列の温度情報と、上記第2の温度検出手段により計測された時系列の温度情報とから、逆問題解析により、各温度検出手段に対応する高炉炉底の稼動面での時系列の熱流束情報或いは温度情報を求める逆問題解析手段を備え、上記リカレンスプロット作成手段は、上記逆問題解析手段により求められた各温度検出手段に対応する高炉炉底の稼動面での時系列の熱流束情報或いは温度情報に基づいて、上記2変数のリカレンスプロットを作成することを特徴とする請求項1に記載の高炉炉底における湯流れ状態の診断装置。
【請求項3】 上記高炉は炉壁の周方向に複数の出銑孔を有し、各出銑孔の付近に上記第2の熱電対が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の高炉炉底における湯流れ状態の診断装置。
【請求項4】 上記診断手段は、上記第1の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報と、上記各第2の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報とに基づき作成されたリカレンスプロットに基づいて、所定数の出銑孔について湯流れがないと診断した場合、異常診断とすることを特徴とする請求項3に記載の高炉炉底における湯流れ状態の診断装置。
【請求項5】 上記所定数は、上記複数の出銑孔のうち出銑を行っている出銑孔の数より多い数であることを特徴とする請求項4に記載の高炉炉底における湯流れ状態の診断装置。
【請求項6】 高炉炉底の底盤中央に埋め込まれた第1の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報と、高炉炉底の出銑孔付近に埋め込まれた第2の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報とに基づいて、2変数のリカレンスプロットを作成するリカレンスプロット作成手順と、上記リカレンスプロットに基づいて、高炉炉底における湯流れ状態を診断する診断手順とを有することを特徴とする高炉炉底における湯流れ状態の診断方法。
【請求項7】 高炉炉底の底盤中央に埋め込まれた第1の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報と、高炉炉底の出銑孔付近に埋め込まれた第2の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報とに基づいて、2変数のリカレンスプロットを作成するリカレンスプロット作成処理と、上記リカレンスプロットに基づいて、高炉炉底における湯流れ状態を診断する診断処理とをコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項8】 請求項7に記載のコンピュータプログラムを格納したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高炉炉底における湯流れ状態の診断装置、方法、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】高炉炉底の湯だまりから溶融生成物を抽出する作業を出銑という。出銑がスムーズに行われなければ、湯面が上昇して羽口に達し、送風が不可能になったり、羽口が破損したりするおそれがある。また、羽口まで到達する前に、レースウェイが歪むことによって通気不良が起こるおそれもある。したがって、高炉の操業においては、溶融生成物をスムーズに出銑孔から抽出することが重要とされる。特に、大型高炉の場合、常にどこかの出銑孔から出銑が行われており、生成速度と比較して出銑速度があまり大きくないことから、溶融生成物をスムーズに出銑孔から抽出することが更に重要とされる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、高炉内は非常に高温であり、炉底における湯流れ状態を直接観察することは不可能である。
【0004】また、出銑孔から出銑が行われているが、何らかの原因により炉底内では湯流れが停滞しているといった状態もありうる。そのため、出銑孔からの出銑を外部観察するだけでは、高炉炉底における湯流れ状態を的確に診断することができない。
【0005】本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、炉底における湯流れ状態を的確に診断できるようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の高炉炉底における湯流れ状態の診断装置は、高炉炉底の底盤中央に埋め込まれた第1の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報と、高炉炉底の出銑孔付近に埋め込まれた第2の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報とに基づいて、2変数のリカレンスプロットを作成するリカレンスプロット作成手段と、上記リカレンスプロットに基づいて、高炉炉底における湯流れ状態を診断する診断手段とを備えた点に特徴を有する。
【0007】また、本発明の高炉炉底における湯流れ状態の診断装置の他の特徴とするところは、上記第1の温度検出手段により計測された時系列の温度情報と、上記第2の温度検出手段により計測された時系列の温度情報とから、逆問題解析により、各温度検出手段に対応する高炉炉底の稼動面での時系列の熱流束情報或いは温度情報を求める逆問題解析手段を備え、上記リカレンスプロット作成手段は、上記逆問題解析手段により求められた各温度検出手段に対応する高炉炉底の稼動面での時系列の熱流束情報或いは温度情報に基づいて、上記2変数のリカレンスプロットを作成する点にある。
【0008】また、本発明の高炉炉底における湯流れ状態の診断装置の他の特徴とするところは、上記高炉は炉壁の周方向に複数の出銑孔を有し、各出銑孔の付近に上記第2の熱電対が配置されている点にある。
【0009】また、本発明の高炉炉底における湯流れ状態の診断装置の他の特徴とするところは、上記診断手段は、上記第1の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報と、上記各第2の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報とに基づき作成されたリカレンスプロットに基づいて、所定数の出銑孔について湯流れがないと診断した場合、異常診断とする点にある。
【0010】また、本発明の高炉炉底における湯流れ状態の診断装置の他の特徴とするところは、上記所定数は、上記複数の出銑孔のうち出銑を行っている出銑孔の数より多い数である点にある。
【0011】本発明の高炉炉底における湯流れ状態の診断方法は、高炉炉底の底盤中央に埋め込まれた第1の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報と、高炉炉底の出銑孔付近に埋め込まれた第2の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報とに基づいて、2変数のリカレンスプロットを作成するリカレンスプロット作成手順と、上記リカレンスプロットに基づいて、高炉炉底における湯流れ状態を診断する診断手順とを有する点に特徴を有する。
【0012】本発明のコンピュータプログラムは、高炉炉底の底盤中央に埋め込まれた第1の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報と、高炉炉底の出銑孔付近に埋め込まれた第2の温度検出手段により計測された時系列の温度情報から得られた時系列情報とに基づいて、2変数のリカレンスプロットを作成するリカレンスプロット作成処理と、上記リカレンスプロットに基づいて、高炉炉底における湯流れ状態を診断する診断処理とをコンピュータに実行させる点に特徴を有する。
【0013】本発明のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、上記コンピュータプログラムを格納した点に特徴を有する。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の高炉炉底における湯流れ状態の診断装置、方法、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の実施の形態を説明する。
【0015】図1には、本実施の形態の高炉炉底における湯流れ状態の診断装置の概略構成を示す。101は逆問題解析部であり、後述するように高炉炉底の底盤中央に埋め込まれた熱電対301により計測された時系列の温度情報と、高炉炉底の出銑孔付近に埋め込まれた熱電対302(1)〜302(4)により計測された時系列の温度情報とから、逆問題解析により、各熱電対301、302(1)〜302(4)に対応する高炉炉底の稼動面での時系列の熱流束情報を求める。
【0016】102はアトラクタ作成部であり、上記逆問題解析部101での逆問題解析により算出された各熱電対301、302(1)〜302(4)についての時系列の熱流束情報に基づいて、アトラクタと呼ばれる軌道を再構成する。
【0017】103はリカレンスプロット作成部であり、上記アトラクタ作成部102により再構成されたアトラクタに基づいて、2変数のリカレンスプロットを作成する。
【0018】104は診断部であり、上記リカレンスプロット作成部103により作成された2変数のリカレンスプロットに基づいて、高炉炉底における湯流れ状態を診断する。
【0019】次に、図2を参照して、高炉について簡単に説明する。同図に示すように、高炉内は概ね5つの領域に大別することができる。すなわち、原料が挿入前と同じように塊として存在する塊状帯201、原料が熱と荷重とにより半溶融状になっている融着帯202、溶けた銑鉄やスラグがコークスの間を降下する滴下帯203、コークスが羽口251からの送風によって燃焼、運動するレースウェイ204、溶融生成物(スラグ、銑鉄)が貯留される湯だまり205である。なお、滴下帯203については、コークスが長時間ほとんど静止している領域(炉心203a)と、連続的にコークスがレースウェイ204に溶下する領域(活性コークス帯203b)とに分けられる【0020】ここで、一般的に、離れた位置にある2箇所間の情報は、流体の連続性の性質により上流から下流へと伝達される。また、流れを誘起するような動力源が下流に存在する場合、その動力源に関する下流の情報が上流にも伝達される。本発明は、出銑という動力源により誘起されて炉底中央から出銑孔252に向かう湯流れが生じることに着目し、離れた位置にある2箇所の検出端から得られる時系列情報を用いて、高炉炉底における湯流れ状態を診断しようとするものである。
【0021】本実施の形態では、図2、3に示すように、炉底303の底盤303a中央には、熱電対301が埋め込まれている。また、炉底303の炉壁303bには、周方向に配置された複数(No.1〜No.4)の出銑孔252(1)〜252(4)の付近、例えば各出銑孔252(1)〜252(4)の真下位置に、熱電対302(1)〜302(4)が埋め込まれている。
【0022】そして、上流側の検出端に相当する底盤303a中央の熱電対301について得られる時系列の熱流束信号と、下流側の検出端に相当する出銑孔252(1)〜252(4)付近の各熱電対302(1)〜302(4)について得られる時系列の熱流束信号とを用いて、高炉炉底における湯流れ状態を診断する。
【0023】以下、図4のフローチャートを参照して、本実施の形態の高炉炉底における湯流れ状態の診断処理について説明する。まず、逆問題解析部101において、熱電対301、302(1)〜302(4)により計測された炉底煉瓦を介しての時系列の温度情報から、逆問題解析により、各熱電対301、302(1)〜302(4)に対応する炉底303の稼動面での時系列の熱流束情報を求める(ステップS401)。
【0024】底盤303a中央の熱電対301を例にして説明すると、逆問題解析では、熱電対301、熱電対301から埋め込まれた炉底303煉瓦を含む系を対象にした所定の方程式(偏微分方程式等)と、熱電対301に対応する炉底303の稼動面での熱流束の仮定値とを用いて、熱電対301位置での温度を算出する。そして、その算出した熱電対301位置での温度と、熱電対301により実際に計測された温度との誤差が所定の値より小さくなるように、上記熱流束の仮定値を修正し、熱電対301位置での温度の算出を繰り返す。その結果、算出した熱電対301位置での温度と、熱電対301により実際に計測された温度との誤差が所定の値より小さくなったときの熱流束の仮定値を、熱電対301に対応する炉底303の稼動面での熱流束値とする。
【0025】また、例えば、下記の数1に示す式(1)、(2)に基づいて、熱電対に対応する炉底303の稼動面での熱流束を算出する。
【0026】
【数1】

【0027】上記式(1)は非定常の熱伝導方程式である。式(1)に対して所定の演算等を施すと、式(2)に示すような積分境界方程式になる。式(2)において、Gは共役方程式の解、uはスカラー量(本例の場合、温度)、∂u/∂nはスカラー勾配(本例の場合、熱流束)である。
【0028】上記式(2)において、左辺は熱電対301に対応する炉底303の稼動面に関する積分であり、右辺は所定の既知境界面、例えば熱電対301位置を含む面に関する積分である。したがって、熱電対301での計測温度に基づいて、式(2)の右辺の各値が求められ、その求められた値から式(2)の左辺のスカラー勾配∂u/∂n(熱電対301に対応する炉底303の稼動面での熱流束)が求められる。
【0029】図5には、ある高炉の実績例であり、底盤303a中央の熱電対301について上記のような逆問題解析により求められた時系列の熱流束情報を示す。同図に示すように、符号1〜7を付した部分で炉底中央での熱流束の落ち込みが見られるが、特に符号1〜4を付した部分においては、炉底中央での熱流束が大幅に低下する現象(いわゆる炉底不活性)が発生した。
【0030】次に、アトラクタ作成部102において、上記逆問題解析により求められた各熱電対301、302(1)〜302(2)から得られた熱流束情報に基づいて、アトラクタと呼ばれる軌道を再構成する(ステップS402)。
【0031】まず、アトラクタ作成部102は、逆問題解析部101により算出された各熱電対301、302(1)〜302(2)についての熱流束情報から、対象とする現象の2倍以上の次元mを持つ遅延ベクトルv(t)=(u(t),u(t+τ),u(t+2τ),・・・,u(t+(m−1)τ))を作成する。なお、u(T)は時刻Tにおける熱流束、τは時間遅れ間隔である。
【0032】続いて、アトラクタ作成部102は、上記作成した遅延ベクトルv(t)を所定の次元を有する位相空間に写像する。この写像した遅延ベクトルv(t)の時間推移による軌道を作成することによりアトラクタを再構成する。
【0033】次に、リカレンスプロット作成部103において、上記再構成されたアトラクタに基づいて、リカレンスプロットを作成する(ステップS403)。リカレンスプロットとは再構成されたアトラクタの非定常挙動を2次元表示したものであり、ここで作成するリカレンスプロットは、リカレンスプロットを2変数(上流側の検出端に関する変数及び下流側の検出端に関する変数)に拡張したものであり、以下では「相互リカレンスプロット」と称する。
【0034】具体的には、一方の変数の再構成アトラクタ上にある現在時刻点から所定の範囲内にあるの近傍点を、他方の変数の再構成アトラクタ上から検索する。その結果、検索された近傍点の時刻を、横軸を現在時刻、縦軸を上記近傍点の時刻として2次元表示することにより相互リカレンスプロットを作成する。
【0035】図6には、ある高炉での実績例であり、底盤303a中央の熱電対301から得られた熱流束情報と、No.1出銑孔252(1)付近の熱電対302(1)から得られた熱流束情報との相互相関性を表す相互リカレンスプロットを示す。
【0036】同様に、図7には、底盤303a中央の熱電対301から得られた熱流束情報と、No.2出銑孔252(2)付近の熱電対302(2)から得られた熱流束情報との相互相関性を表す相互リカレンスプロットを示す。
【0037】同様に、図8には、底盤303a中央の熱電対301から得られた熱流束情報と、No.3出銑孔252(3)付近の熱電対302(3)から得られた熱流束情報との相互相関性を表す相互リカレンスプロットを示す。
【0038】同様に、図9には、底盤303a中央の熱電対301から得られた熱流束情報と、No.4出銑孔252(4)付近の熱電対302(4)から得られた熱流束情報との相互相関性を表す相互リカレンスプロットを示す。
【0039】次に、診断部104において、上記作成された相互リカレンスプロットに基づいて、高炉炉底における湯流れ状態、具体的には炉底中央からNo.1〜No.4各出銑孔252(1)〜252(4)に向かう健全な流れが存在するか、炉底中央において湯流れが停滞しているかを診断する(ステップS404)。
【0040】具体的には、熱電対301(上流側の検出端)と各熱電対302(1)〜302(4)(下流側の検出端)とについての相互リカレンスプロットを考えると、2箇所の検出端間に強い流れが存在すれば、相互リカレンスプロット上では対角線(現在時刻と近傍点の時刻とが同じ点の集合)に平行な線分として表現される。
【0041】したがって、相互リカレンスプロット上で対角線に平行な線分が存在するか否かによって、炉底中央からNo.1〜No.4各出銑孔252(1)〜252(4)に向かう健全な流れが存在するか、炉底中央において湯流れが停滞しているかを診断することができる。
【0042】例えば、図7の符号1に示す部分では、対角線に平行な線分がほとんど存在しておらず、炉底中央からNo.2出銑孔252(2)に向かう流れが存在しないことが分かる。No.2出銑孔252(2)が閉じているのであれば、炉底中央からNo.2出銑孔252(2)に向かう流れが存在しなくても問題はないが、No.2出銑孔252(2)から出銑を行っているにもかかわらず、図7の符号1に示すような状態であれば、何らかの理由により高炉炉底において湯流れが停滞しているものと考えられる。
【0043】なお、ノイズのない系では実際の流線を表す1本の線分として表示されるが、現実世界にあるノイズを含む系では、類似状態にある流れの集合体として表現されるため、多数の線分が表示される。
【0044】また、ノイズが小さい系では、2つの検出端間の距離を相互リカレンスプロット上の対角線と線分との間の垂直距離で除した値が流速を示し、線分の長さが流れの安定性を示す。現実世界にあるノイズを含む系では、ノイズが小さな系のように流速の直接評価は困難であるが、相互リカレンスプロット上の対角線に平行に現れる多数の線分の集合体としての密度で流れの大きさを表現することができる。
【0045】図10には、図6〜9に示した相互リカレンスプロットを重ね合わせた図(対角線からの一定垂直距離範囲でのみ重ね合わせたもの)を示す。図中符号1〜4は、図5における符号1〜4に対応する部分、すなわち炉底不活性が発生している部分である。炉底不活性は、炉底中央とNo.1〜No.4すべての出銑孔252(1)〜252(4)との間の相関性が完全に消失しているときに発生するが、同図に示すように、炉底不活性が発生している符合1〜4部分では、対角線に平行な線分が存在せず、炉底中央とNo.1〜No.4すべての出銑孔252(1)〜252(4)との間の相関性が完全に消失していることがわかる。
【0046】ここで、図6〜9の符号1は、図5(図10)における符号1部分(炉底不活性が発生している部分)より時間的に前の範囲を指す。この範囲において、図6では対角線に平行な線分がわずかに見られるが、図7〜9では対角線に平行な線分は見られない。
【0047】また、図6〜9の符号2は、図5(図10)における符号2部分(炉底不活性が発生している部分)より時間的に前の範囲を指す。この範囲において、図8では対角線に平行な線分がわずかに見られるが、図6、7、9では対角線に平行な線分は見られない。
【0048】また、図6〜9の符号3は、図5(図10)における符号3部分(炉底不活性が発生している部分)より時間的に前の範囲を指す。この範囲において、図9では対角線に平行な線分がわずかに見られるが、図6〜8では対角線に平行な線分は見られない。
【0049】また、図6〜9の符号4は、図5(図10)における符号4部分(炉底不活性が発生している部分)より時間的に前の範囲を指す。この範囲において、図9では対角線に平行な線分がわずかに見られるが、図6〜8では対角線に平行な線分は見られない。
【0050】これらの結果から、炉底中央での熱流束が大幅に低下する炉底不活性が発生する前には、いずれの場合も、4つの出銑孔252(1)〜252(4)のうち3つの出銑孔について炉底中央との間の相関性が消失していることがわかる。すなわち、3つの出銑孔について炉底中央との間の相関性が消失していることをもって、炉底中央とNo.1〜No.4すべての出銑孔252(1)〜252(4)との間の相関性が完全に消失する炉底不活性が発生すると予測する異常判断を行うことができる。
【0051】なお、本実施の形態のように4つの出銑孔がある場合、通常は、そのうち2つの出銑孔から出銑を行い、残り2つの出銑孔を閉じるという制御を繰り返し行う。したがって、4つの出銑孔252(1)〜252(4)のうち2つの出銑孔について炉底中央との間の相関性が消失している場合は問題がないが、残り2つの出銑孔のうち1つの出銑孔について炉底中央との間の相関性が消失している場合、炉底不活性が発生する予兆として捉えるようにしたものである。すなわち、複数の出銑孔のうち出銑を行っている出銑孔の数より多い数だけ炉底中央との間の相関性が消失している場合、炉底不活性が発生する予兆として捉えるようにしている。
【0052】以上述べたように、底盤303a中央の熱電対301から得られた熱流束情報と、No.1〜No.4出銑孔252(1)〜252(4)付近の各熱電対302(1)〜302(4)から得られた熱流束情報との相互相関性を表す2変数の相互リカレンスプロットを作成し、その相互リカレンスプロットに基づいて高炉炉底における湯流れ状態を判断するようにしたので、高炉炉底における湯流れ状態を的確に診断することができ、出銑孔から出銑が行われているが、炉底内では湯流れが停滞しているといった状態を診断することも可能となる。
【0053】なお、上記実施の形態では、逆問題解析により炉底303の稼動面での時系列の熱流束情報を求めるようにしたが、上述したように式(2)の左辺のスカラー勾配∂u/∂n(熱電対301に対応する炉底303の稼動面における熱流束)を求め、さらにその熱流束を高炉炉底温度を境界条件として解くことにより、炉底303の稼動面での時系列の温度情報を求めるようにしてもよい。また、逆問題解析でなくても、熱電対301、302(1)〜302(4)により検出された温度情報に対して炉底煉瓦による時間遅れ等を考慮した補正処理を行うようにしてもよい。
【0054】(その他の実施の形態)上述した実施の形態の高炉炉底における湯流れ診断装置は、コンピュータのCPU或いはMPU、RAM、ROM等により構成され、RAMやROMに記憶されたプログラムが動作することによって実現される。したがって、コンピュータに対し、上記実施の形態の機能を実現するためのプログラム自体が上述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラム自体は本発明を構成する。
【0055】また、上記プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを格納した記録媒体は本発明を構成する。かかるプログラムコードを記憶する記録媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0056】また、コンピュータが供給されたプログラムを実行することにより、上述の実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)或いは他のアプリケーションソフト等と共同して上述の実施の形態の機能が実現される場合にもかかるプログラムドは本発明の実施の形態に含まれることはいうまでもない。
【0057】さらに、供給されたプログラムがコンピュータの機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに格納された後、そのプログラムの指示に基づいてその機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合にも本発明に含まれることはいうまでもない。
【0058】なお、上記実施の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、本発明をネットワーク環境で利用すべく、全部或いは一部のプログラムが他のコンピュータで実行されるようになっていてもかまわない。
【0059】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、底盤中央の第1の温度検出手段について得られた時系列情報と、出銑孔付近の第2の温度検出手段について得られた時系列情報との相互相関性を表す2変数のリカレンスプロットを作成し、そのリカレンスプロットに基づいて湯流れ状態を判断するようにしたので、高炉炉底における湯流れ状態を的確に診断することができ、出銑孔から出銑が行われているが、炉底内では湯流れが停滞しているといった状態を診断することも可能となる。
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区大手町2丁目6番3号
【出願日】 平成14年4月12日(2002.4.12)
【代理人】 【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
【公開番号】 特開2003−301210(P2003−301210A)
【公開日】 平成15年10月24日(2003.10.24)
【出願番号】 特願2002−111088(P2002−111088)