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【発明の名称】 水中接着剤組成物
【発明者】 【氏名】大崎 勝
【住所又は居所】兵庫県高砂市荒井町新浜2丁目1番1号 三菱重工業株式会社高砂研究所内

【氏名】上田 剛史
【住所又は居所】兵庫県神戸市兵庫区和田崎町一丁目1番1号 三菱重工業株式会社神戸造船所内

【氏名】名島 憲治
【住所又は居所】兵庫県高砂市荒井町新浜二丁目8番19号 高菱エンジニアリング株式会社内

【氏名】亀井 博正
【住所又は居所】兵庫県高砂市荒井町新浜二丁目8番19号 高菱エンジニアリング株式会社内

【要約】 【課題】原子力発電所における燃料保管水槽等の補修工事を水中で円滑に実施することを可能とし、かつ、施工後の耐放射線特性も良好に維持することのできる水中接着剤組成物を提供する。

【解決手段】水中接着剤に芳香族アミンなどのアミン系添加剤や炭化硼素、酸化硼素、窒化硼素などのボロン系添加剤などの耐放射性添加剤を配合した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水中接着剤に耐放射性添加剤を配合してなることを特徴とする水中接着剤組成物。
【請求項2】 上記耐放射性添加剤が耐γ線耐久性を向上させるためのアミン系添加剤であることを特徴とする請求項1の水中接着剤組成物。
【請求項3】 上記アミン系添加剤が、芳香族アミンの取り扱い作業性を改良したジエチルトルエンジアミン、メタキシレンジアミン、メンセンジアミン等の変性芳香族ポリアミンよりなる群から選択された少なくとも一の化合物であることを特徴とする請求項2の水中接着剤組成物。
【請求項4】 上記耐放射性添加剤が耐中性子吸収能を高め遮蔽特性を向上させるためのボロン系添加剤であることを特徴とする請求項1の水中接着剤組成物。
【請求項5】 ボロン系添加剤が、炭化ホウ素、酸化ホウ素、窒化ホウ素、無水ホウ素、ホウ素酸鉄、正ホウ酸及びメタホウ酸よりなる群から選択された少なくとも一の化合物であることを特徴とする請求項4の水中接着剤組成物。
【請求項6】 上記ボロン系添加剤の粒径が、1〜200μmであることを特徴とする請求項4又は5の水中接着剤組成物。
【請求項7】 上記ボロン系添加剤の添加割合が水中接着剤組成物の全重量に対し、0.1〜30重量%であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかの水中接着剤組成物。
【請求項8】 請求項2又は3で規定されるいずれかのアミン系添加剤と、請求項4〜請求項7のいずれかで規定されるいずれかのボロン系添加剤とを配合してなることを特徴とする水中接着剤組成物。
【請求項9】 上記水中接着剤を、主剤と硬化剤とを混合して硬化させる二液系水中接着剤としたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかの水中接着剤組成物。
【請求項10】 上記アミン系添加剤の配合割合が水中接着剤の主剤100重量部に対し、0.1〜20%重量部であることを特徴とする請求項9の水中接着剤組成物。
【請求項11】 上記主剤と硬化剤の各々に耐放射性添加剤を配合してなることを特徴とする請求項9又は10の水中接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水中接着剤組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、原子力発電所における燃料保管水槽等のような比較的大型の水槽の内張り材の予防保全及び補修工事等に際して、特に好適な水中接着剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】原子力発電所における燃料保管水槽は、その深さは約12m余、幅、長さもそれぞれ10〜20mに及ぶ大型水槽であり、その中には水深約8m位置にその上部が位置するようにして燃料保管ラックが配置され、かつ、燃料の安全保管上ほぼ満面に水が蓄えられている。
【0003】このような水槽は、コンクリートの基礎面上にステンレス製等の内張り材を接着して形成されているが、長年の使用中には、水槽の内壁面を区画する前記内張り剤の汚損が進み、さらに劣化、破損等が生じる可能性があるため、補修が必要となる。
【0004】補修の工事は、水槽内を排水した後大気中で施工されることもある。この場合、大気中で施工されるので、あえて水槽内部の工事であることを意識せず、通常の建造物の壁面等に施工する工具と工法を用いて実施されていた。
【0005】しかしながら、水槽が大形となるほどに、排水作業一つをとってみても大がかりのものとなり、しかも原子力発電所の燃料保管水槽にあっては、燃料を水中に浸漬しておくことが安全上必須の要件であることから、これを一時的でも他の水槽に移さねばならず、予備的な設備が必要となる。
【0006】したがって、このような一時的な作業空間確保のための大がかりな排水作業を省略し、かつ予備水槽等の余分な設備の並置を不要とするために、燃料保管ラックを水中に設置したまま、同水中で必要な作業が実施できる技術の確立が待たれるところである。
【0007】すなわち、燃料保管水槽を排水することなく、補修が必要な内壁面を水中で施工する要請がある。そして、原子力発電所における燃料保管水槽では、放射線を受けるために、このような補修にあたっては、使用した補修剤(材)の耐放射線特性を考慮する必要がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような要請に鑑みてなされたもので、これらのニーズに応え、上記した補修工事を水中で円滑に実施することを可能とし、かつ、施工後の耐放射線特性も良好に維持することのできる水中接着剤組成物を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、水中接着剤に耐放射性添加剤を配合してなることを特徴とする。上記耐放射性添加剤は、好適には、耐放射性添加剤として、耐γ線耐久性を向上させるためのアミン系添加剤を配合することが好適である。アミン系添加剤は、ジエチルトルエンジアミン、メタキシレンジアミン、メンセンジアミン等の変性芳香族ポリアミンよりなる群から選択された少なくとも一の化合物であることが好適である。
【0010】上記耐放射性添加剤は、別の実施の形態として、耐中性子遮蔽特性を向上させるためのボロン系添加剤である。ボロン系添加剤としては、炭化ホウ素、酸化ホウ素、窒化ホウ素、無水ホウ素、ホウ素酸鉄、正ホウ酸及びメタホウ酸よりなる群から選択された少なくとも一の化合物が好適である。ボロン系添加剤の粒径は、1〜200μmの範囲が好適である。ボロン系添加剤の添加割合は、水中接着剤組成物の全重量に対し、0.1〜30重量%の範囲が好適である。
【0011】本発明に係る水中接着剤組成物は、上記のようなボロン系添加剤とアミン系添加剤との両方を配合することもその実施の形態として含む。水中接着剤は、主剤と硬化剤とを混合して硬化させる二液系水中接着剤が好適である。この場合、アミン系添加剤を配合する場合、その配合割合は、水中接着剤の主剤100重量部に対し、0.1〜20%重量部が好適である。このような二液系水中接着剤の場合、上記主剤と硬化剤の各々に耐放射性添加剤を配合することが好適である。
【0012】
【発明の実施の形態】以下に本発明に係る水中接着剤組成物の実施の形態をさらに詳細に説明する。本発明に係る水中接着剤組成物は、上記したように水中接着剤に耐放射性添加剤を配合している。
【0013】水中接着剤としては、水中で硬化し、本発明の目的に反しない限り、限定されるものではない。しかし、例えば上記説明したような燃料保管水槽のような環境で使用されることを考慮すると、二液性系水中接着剤が好適である。すなわち、一般的に主剤と硬化剤との二液で構成され、好適には特段の加熱操作を伴うことなく、二液を混合することによって硬化するタイプのものが好適である。
【0014】このような二液性系水中接着剤の主剤としては、分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ当量が150〜500のものが好適である。このような主剤としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、及びノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0015】一方、硬化剤としては、ポリアミドアミン、変性ポリアミドアミン、変性ポリアミドポリアミン、変性脂肪族ポリアミン、変性芳香族ポリアミン、複素環状ポリアミン、変性脂環状ポリアミン等のアミン類ないしポリアミン類からなる群から選ばれる少なくとも一の硬化剤が好適である。
【0016】すなわち、反応硬化性樹脂として、エポキシ樹脂を用い、これに対して上記したような硬化剤を用いたものが好適である。さらに、具体的には主剤として、例えば、ビスフェノールA型グリシジルエーテル(油化シェルエポキシ社製:エピコート#828)を用い、硬化剤として、変性ポリアミン(旭電化工業株式会社製:アデカハードナEH265−4)、変性ポリアミドポリアミン(スリーボンド株式会社製:スリーロンジW805)、変性脂肪族ポリアミン(富士化成工業株式会社製:フジキュアF5405)、変性ポリアミドポリアミン(大都産業株式会社製:ダイトサイダーHR787)等のうちの少なくとも一種以上を用いるものが好適である。なお、主剤と硬化剤を予め組み合わせて市販されているダイトサイダHR(大都産業)スリーボンドW805(スリーボンド社)、パーマスタWE300(中国塗料株式会社製)等も用いることができる。
【0017】さらに、このような水中接着剤以外に、不飽和ポリエステル樹脂及びその硬化剤、ポリイソシアネート化合物又は特願昭63−304069号公報に記載される架橋硬化性アクリル共重合体及びその硬化剤といった組み合わせの水中接着剤であっても、本発明の目的に反しない限り用いることができる。硬化剤のエポキシ樹脂に対する添加量は、好適には、エポキシ1当量当り0.7〜1.2当量である。
【0018】本発明に係る水中接着剤組成物で、このような水中接着剤に配合されるべき耐放射性添加剤としては、ボロン系添加剤及びアミン系添加剤を挙げることができる。アミン系添加剤は、耐γ線の耐久性向上を主目的として添加される。アミン系添加剤としては、ジエチルトルエンジアミン、メタキシレンジアミン、メンセンジアミン等の変性芳香族ポリアミンが好適である。具体的には、エキキュア−Z(油化シェルエポキシ株式会社製)、サンマイドTX983又はM1800(三和化学株式会社製)等を挙げることができる。
【0019】アミン系添加剤の配合割合は、水中接着剤の主剤の100重量部に対し、最大20重量部である。なお、添加する効果が現れるのは、1%重量部からである。したがって、添加する場合には、水中接着剤の主剤の100重量部に対し、1〜20%重量部が好適である。
【0020】ボロン系添加剤は、耐中性子遮蔽特性を向上させるために添加される。ボロン系添加剤としては、無機ホウ素化合物が好適であり、具体的には、炭化ホウ素(B4C)、酸化ホウ素(B23)、窒化ホウ素、無水ホウ素、ホウ素酸鉄、正ホウ酸及びメタホウ酸を挙げることができる。これらのうちでも、炭化ホウ素が特に好適である。
【0021】ボロン系添加剤は、粉末状であることが好ましく、平均粒径は、1〜200μmが好適な範囲であり、特に、10〜100μmのものが好ましい。ボロン系添加剤の配合割合は、水中接着剤組成物の全重量に対し、0.1〜30重量%である。中性子の遮蔽効果を考慮すると、1重量%以上がより好適である。30重量%未満で、機械的特性が良好である。最適には、1〜5重量%の範囲である。
【0022】さらに、本発明に係る水中接着剤組成物では、その品質向上のために他の添加剤を配合することができる。タルク、クレー、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、珪藻土等の無機充填材を配合することができる。とりわけ、タルク、クレー等の疎水性無機充填材が好適である。これらの配合割合は、30〜50%である。この中で体質顔料としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ等であり、垂れ防止剤としては、珪藻土等が好適である。
【0023】二液系水中接着剤の場合、上記主剤と硬化剤の各々に耐放射性添加剤及びその他の添加剤を配合し、主剤と硬化剤の中での添加剤の割合が均一となることが好適である。主剤と硬化剤とを混合し、接着硬化後のコーテイング層、接着層等が均一な層として形成されるためである。
【0024】なお、本発明に係る水中接着剤組成物は、用途として、燃料保管水槽等の補修に使用され、あて板等の接着剤又はコーテイング層として採用されるものである。したがって、ある程度大量に用いることもある。係る場合には、むしろ水中接着材組成物と表現したほうが良いことがある。本発明の水中接着剤組成物の概念には、係る水中接着材組成物も含まれる。
【0025】本発明に係る水中接着剤組成物は、通常の接着剤と同様に、ヘラ、ノズル押し出し等により、対象物に適用することができる。例えば、燃料保管水槽では、損傷箇所に対するあて板の接着剤として用いたり、損傷箇所そのものに対するコーテイング層として適用したりすることができる。コーテイング層とした場合には、100μm〜5mmの範囲で施工することができる。
【0026】図1について、本発明に係る水中接着剤組成物の施工方法について、その一実施の形態を説明する。図1は、水中接着剤組成物のミキサーノズル(ディスポーザブルミキサー)1を先端に有する空動式ガン2の概念図である。図に示すように、ガン2は主剤を充填する主剤用カートリッジ3と硬化剤を充填する硬化剤用カートリッジ4を別個に設けている。一方の主剤用カートリッジ3は、これに連結されている管継手5にホース6が接続され、ホース6の他端側は二股管継手7の一方の入口側に接続している。同様に、他方の硬化剤用カートリッジ4は、これに連結されている管継手8にホース9が接続され、ホース9の他端側は二股管継手7の他方の入口側に接続している。この二股管継手7は、2方向の流路を1方向に合流するものであり、管継手7に接続されているミキサーノズル1にて、接着剤と硬化剤とが混合されるこのような構成とすることにより、離れた位置から主剤と硬化剤とを別個に流し、施工位置の直前で主剤と硬化剤とを混合することができる。施工面に水中でコーテイング層を形成するのに適した装置である。
【0027】
【実施例】実施例1主剤として、ビスフェノールA型グルシジルエーテル(油化シェルエポキシ社製エピコート#828:エポキシ当量190)100重量部、硬化剤として変性ポリアミン(旭電化工業株式会社製:アデカハードナEH265−4)15重量部を用いた。そして、耐γ線耐久性の向上を図るために、変性芳香族ポリアミン(油化シェルエポキシ社)エピキュアZ5重量部を、各々の重量部に比例して配合した。さらに、粘度調整を図るために、炭酸カルシウム10重量部、タルク35重量部、二酸化チタン5重量部を無機充填材として、同様に、主剤と硬化剤に各々の重量部に比例して配合した。このようにして調整した水中接着剤組成物の施工性、鋼板との密着性を試したが施工上問題ないことが判明した。耐γ線耐久性については、Co60γ線(最大線量率1×103Gy/H)条件で照射試験したところ図2に示すように、大きく向上した。
【0028】他の実施の形態本発明に係る水中接着剤組成物は、上記の実施の形態及び実施例について説明したが、本発明は、このような実施の形態又は実施例に限定されるものではなく、当業者にとって自明な修飾・変更・付加は、全て本発明の技術的範囲に含まれる。
【0029】
【発明の効果】上記したところから明らかなように、本発明によれば、原子力発電所における燃料保管水槽等の補修工事を水中で円滑に実施することを可能とし、かつ、施工後の耐放射線特性も良好に維持することのできる水中接着剤組成物が提供される。
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内二丁目5番1号
【出願日】 平成13年11月20日(2001.11.20)
【代理人】 【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一 (外2名)
【公開番号】 特開2003−155466(P2003−155466A)
【公開日】 平成15年5月30日(2003.5.30)
【出願番号】 特願2001−354351(P2001−354351)