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【発明の名称】 米ぬか油インキおよびそれを用いた印刷物
【発明者】 【氏名】江花 実
【住所又は居所】東京都台東区台東1丁目5番1号 凸版印刷株式会社内

【氏名】賀来 俊行
【住所又は居所】東京都台東区台東1丁目5番1号 凸版印刷株式会社内

【氏名】小川 勝也
【住所又は居所】東京都台東区台東1丁目5番1号 凸版印刷株式会社内

【要約】 【課題】オフセット印刷用の油性インキとして、VOCの総量規制に係わる環境に配慮され、かつ廃棄物となっている米ぬかを再利用し、コストの嵩まない米ぬか油を用いたオフセットインキ及びそれを用いた印刷物の提供にある。

【解決手段】米ぬかから抽出、精製で得られる米ぬか油をオフセット印刷用インキの溶剤として用いた米ぬか油インキ及びそれを用いた印刷物とするもので、ヨウ素価を100以上に調整した米ぬか油を用いたオフセットインキである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】米ぬかから溶剤抽出によって得られる米ぬか油をオフセット印刷用インキの溶剤として用いたことを特徴とする米ぬか油インキ。
【請求項2】ヨウ素価が100以上である米ぬか油を用いることを特徴とする請求項1記載の米ぬか油インキ。
【請求項3】前記請求項1または2に記載の米ぬか油インキを用いて印刷されていることを特徴とする印刷物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、米ぬか油を用いたオフセット印刷用インキに関するものであり、さらに詳細には、石油系の揮発性有機化合物(VOC)を全く含まない環境配慮型の米ぬか油インキとそれを用いた印刷物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、カタログやポスター等の印刷には、油性のオフセットインキが用いられているて、この油性インキは、色材、ビヒクルおよび添加剤でなり、乾燥性を上げて作業効率と棒積み適性を向上させるため、そのビヒクル中に、25〜40重量%の鉱物油、ナフテン、パラフィン等石油系の揮発性有機化合物(VOCという)が含まれていて、揮発性有機化合物の総量を規制する通称V0C(VolatileOrganic Compound )規制の遵守など環境保全に係わる負荷が増大するという問題点のあるものであった。
【0003】そこで近年、上記VOC総量規制の遵守に貢献する油性のオフセットインキとして、植物油、特に大豆油を用いたオフセット印刷用インキが使用されるようになってきた。特に米国では政府刊行物について一部法律でこの大豆油を用いたインキを使用するように定められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の大豆油を用いたオフセット印刷用インキにおいて、特に日本においては、従来の石油系溶剤に比べてコストが高く、この大豆油インキの使用量は伸びていないのが現状である。
【0005】また一方、精米工場から得られる米ぬかは、加工されて動物用の飼料とする他、溶剤抽出と高度な精製によって米ぬか油としてサラダ油等食用油等に7割程度利用されているが、その残りは、需要がないため廃棄物として処分されていて、増加する廃棄物の処理・処分で苦慮している現状において問題点の多いものであった。
【0006】そこで本発明者らは、廃棄されている米ぬかの再利用方法につき誠意検討した結果、米ぬか油をオフセット印刷用インキの溶剤として使用する本発明の米ぬか油インキに至ったものである。
【0007】本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、オフセット印刷用の油性インキとして、VOCの総量規制に係わる環境に配慮され、かつ需要がなく廃棄物となっている米ぬかを再利用し、コストの嵩まない米ぬか油を用いたオフセットインキおよびそれを用いた印刷物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に於いて上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、米ぬかから溶剤抽出で得られる米ぬか油をオフセット印刷用インキの溶剤として用いたことを特徴とする米ぬか油インキとしたものである。
【0009】上記請求項1の発明によれば、オフセット印刷用の油性インキとして、従来のようなビヒクル中の石油系の揮発性有機化合物(VOC)を含む鉱物油等に代え、廃棄物として処分されている米ぬかから得られる米ぬか油を用いているので、廃棄物の再利用に加え、VOCの総量規制に係わる環境保全にも配慮され、かつ植物油、特に大豆油に比べ、原材料のコストが嵩まない米ぬか油インキとすることができる。
【0010】また上記の原材料のコストでは、例えば図1の米ぬか抽出工程図および図2の米ぬか油精製工程図に示すように、原料の米ぬかを胚芽等粒状物を分別し、十分な乾燥工程を経た後、溶剤抽出によって米ぬかの原油とし、その原油につき、脱夾雑、脱ガム、脱酸、脱蝋、脱色さらに脱臭等々高度の精製を経て米ぬか油とするが、このような純度の高い食用の米ぬか油でも大豆油インキ用の大豆油に比べれば2/3程度のコストで、印刷用の米ぬか油インキとして精製の程度等を考慮したものとすることによって、更なるコスト低減が可能な米ぬか油インキとすることができる。
【0011】また、請求項2の発明では、ヨウ素価が100以上の米ぬか油を用いることを特徴とする請求項1記載の米ぬか油インキとしたものである。
【0012】上記請求項2の発明によれば、ヨウ素価が100以上の米ぬか油を用いることことによって、オフセット印刷用の油性インキとして用いる際に、乾燥性のよいインキとし、これによって棒積み適性と作業効率を向上させることができ、更なるコスト低減に寄与する米ぬか油インキを提供することができる。
【0013】さらにまた、請求項3の発明では、前記請求項1または2に記載の米ぬか油インキを用いたことを特徴とする印刷物としたものである。
【0014】上記請求項3の発明によれば、廃棄物の再利用に加え、VOCの総量規制に係わる環境保全にも配慮され、かつ大豆油より低コストの米ぬか油インキを用いた印刷物とすることによって、究極の環境配慮型で、かつ低コストの印刷物を提供することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明の米ぬか油インキは、精米の際に出る米ぬかから抽出されて得られる米ぬか油をインキの溶剤として用いて、揮発性有機化合物(VOC)の全く含まない環境配慮型のオフセット印刷用インキである。
【0016】ここで使用される米ぬか油としては、まず図1の米ぬか抽出工程図に示すように、例えば原料の精米工場からでる米ぬかから夾雑物を篩選別で取り除き、風力選別で胚芽等粒状物を分別した後、クッキング、乾燥後、溶剤抽出によって原油を得る。
【0017】続いて図2の米ぬか油精製工程図に示すように、上記で得られた原油から脱夾雑、脱ガム工程で夾雑物とガム油滓を除き、続いて脱酸工程でフーツ油滓を、脱蝋工程でワックス類を取り除き、さらに脱色、脱臭工程を経て米ぬか油とするが、例えばこの脱ガム、脱酸、脱蝋、脱色等工程のいずれかを省略したりあるいはその程度を軽減したりして、コスト低減を図ることもでき、オフセットインキの溶剤としてその機能(条件)を満たしたものであれば、この精製工程に限定されるものでなく適用可能なものである。
【0018】この米ぬか油の原料である米ぬかは、加工されて家畜の飼料や肥料として使われ、上記のように抽出・精製されてサラダオイル、料理用油、硬化バターあるいは石鹸等に全体の7割程度使用されているが、残りの3割程度が需要がなく廃棄物として処分されていて、年々廃棄物が増加し、その処理・処分に苦慮している現状において、本発明のように再利用することは、環境保全に多大な貢献をもたらすものである。
【0019】本発明での米ぬか油を用いた米ぬか油インキとしては、平版用のオフセットインキが挙げられ、さらには枚葉印刷機用インキとオフセット輪転印刷機用インキがあるが、特にこれら用のインキに限定するものではなく、活版印刷機、凸版オフセット(ドライオフセット)印刷機等にも適用可能なものである。
【0020】上記枚葉印刷機用のオフセットインキの組成の例として、例えば色材としての顔料0〜20重量%(0%とは、透明なメジウムインキとする場合があるから)、ビヒクルとしてロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の樹脂25〜30重量%、溶剤25〜40重量%、油10〜25重量%、添加剤としてのドライヤー0.5〜1.5重量%、他酸化抑制剤、ワックス等助剤2〜10重量%の構成のものが挙げられ、本発明の米ぬか油インキでは、この溶剤と油として用いるもので、これら組成のものを通常の方法で適宜配合、練肉することによって枚葉印刷機用の米ぬか油インキとすることができる。
【0021】また上記オフセット輪転印刷機用のインキの組成の例として、例えば色材としての顔料10〜20重量%、ビヒクルとしてロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の樹脂20〜30重量%、溶剤25〜40重量%、油5〜15重量%、添加剤としてのドライヤー0.5〜1.5重量%、他酸化抑制剤、ワックス等助剤2〜10重量%の構成のものが挙げられ、本発明の米ぬか油インキでは、この溶剤と油として用いるもので、これら組成のものを通常の方法で適宜配合、練肉することによってオフセット輪転印刷機用の米ぬか油インキとすることができる。
【0022】以上のような本発明の米ぬか油インキを使用して印刷することにより、従来の鉱物油、ナフテン、パラフィン等石油系を用いたオフセット印刷用インキに比べ、大気へ放出されるVOCを激減せしめ、VOCの総量規制の遵守とともに、印刷現場において、VOC塵も無くなり作業環境(労働安全衛生)面でも作業者にとって良好な環境とすることができる。さらにまた、印刷作業後の印刷機の洗浄もし易く、天然の植物油なので残肉や印刷物とした場合の生分解性に優れ、かつ印刷物の脱墨性にも優れていて再生紙にもし易いという特長を有する米ぬか油インキである。
【0023】また、本発明の米ぬか油インキのコストについて、少なくともVOCを含まない大豆油インキに使用している大豆油に比べれば、例えば図1および図2に示すような高度な精製工程を経た食用の米ぬか油の場合で2/3程度であり、例えば図2に示すような脱ガム、脱酸、脱蝋、脱色等工程のいずれかを省略したり、あるいはその精製の程度を軽減したりして、オフセットインキの油や溶剤としての最低限の条件を満たしたものとすることによって、1/2程度まで下げることができる。さらにこれらコスト低減の条件に、従来の米ぬかを廃棄物として処理・処分していた費用等を勘案すれば、実質的にはさらなるコスト低減となる米ぬか油インキとすることができる。
【0024】また、本発明では、使用される米ぬか油のヨウ素価が100以上のものとするものであり、好ましくは110以上、さらに好ましくは120以上とするものである。このヨウ素価が100に満たないと、オフセット用インキとして印刷される際に乾燥性に劣るものとなる。特に枚葉印刷のように、酸化重合反応で乾燥させる場合では、裏面印刷前の乾燥に多くの時間を要し、印刷作業の効率を大幅に低下させるものとなり好ましくない。
【0025】本発明の米ぬか油インキに係わる米ぬか油のヨウ素価は、原料である米ぬかによることが多く、さらに例えば動物油系のコンタミなどで90代のものもあるので、それを本発明の米ぬか油インキとして使用する場合は、例えば図1に示すような米ぬか抽出工程で得られた原油の段階でチェックし、100以上のものを選定して使用するようにしなければならない。
【0026】また、本発明では、以上のような米ぬか油インキを用いた印刷物とするもので、例えば雑誌、カタログ、パンフレット、カレンダー等、あるいはパッケージとしての化粧箱等とするもので、あらゆる面で環境に配慮され、コストが低減されたオフセット印刷物とするものである。
【0027】
【実施例】次に実施例により、本発明を具体的に説明する。
〈実施例1〉図2に示すような米ぬかの精製によって得られた米ぬか油で、そのヨウ素価が100、110の米ぬか油を用意し、これら米ぬか油を前記枚葉印刷機用インキの溶剤と油とした組成のオフセット用インキを作製した。
【0028】上記で得られた各米ぬか油インキを用いて、4色平版枚葉印刷機により、坪量104.7g/m2 の両面アート紙の片面に印刷し、それぞれの印刷物を12時間、24時間、36時間放置後、前記と同じインキを用いてもう一方の面に印刷を行い、それぞれの印刷適性を乾燥性の面から評価した。その結果を表1に示した。
【0029】〈比較例1〉米ぬか油に意識的に動物性油を混入し、ヨウ素価を95に調整した米ぬか油を枚葉印刷機用インキの溶剤と油とした以外は、実施例1と同様にして米ぬか油インキを作製し、さらに印刷試験を行ってその印刷適性を乾燥性の面から評価した。その結果を表1に示した。
【0030】〈比較例2〉ヨウ素価が130の大豆油を枚葉印刷機用インキの溶剤と油とした以外は、実施例1と同様にしてオフセットインキを作製し、さらに印刷試験を行ってその印刷適性を乾燥性の面から評価した。その結果を表1に示した。
【0031】
【表1】

【0032】上記表1より、ヨウ素価が100以上の米ぬか油であれば、36時間の放置で乾燥状態が良好となり、裏刷りが可能となるものであった。なお、ヨウ素価が110以上の米ぬか油であれば、24時間の放置で裏刷りが可能となり、インキコストでは問題があるがヨウ素価が130の大豆油では、12時間の放置で裏刷りが可能となるものであった。
【0033】
【発明の効果】本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。即ち、米ぬかから溶剤抽出で得られる米ぬか油をオフセット印刷用インキとすることによって、従来のような石油系の揮発性有機化合物(VOC)である鉱物油等に代え、廃棄物として処分されている米ぬかから得られる米ぬか油を用いているので、廃棄物の再利用に加え、VOCの総量規制に係わる環境保全にも配慮され、かつ植物油、特に大豆油に比べ、原材料のコストが嵩まない米ぬか油インキとすることができる。
【0034】また、ヨウ素価が100以上の米ぬか油を選定し、それを用いることによって、オフセット印刷用の油性インキとして、特に枚葉印刷機用のインキとして用いる際に、乾燥性のよいインキとし、これによって棒積み適性と作業効率を向上させることができ、更なるコスト低減に寄与する米ぬか油インキを提供することができる。
【0035】従って本発明は、米ぬか油インキを用いた印刷物で、雑誌、カタログ、パンフレット、あるいはパッケージとしての化粧箱等とするもので、VOCの総量規制面、作業環境面、さらには廃棄物の再利用面等あらゆる面で環境保全に配慮され、コスト面でも低減されたオフセット印刷物として、優れた実用上の効果を発揮する。
【出願人】 【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
【住所又は居所】東京都台東区台東1丁目5番1号
【出願日】 平成13年9月25日(2001.9.25)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−96375(P2003−96375A)
【公開日】 平成15年4月3日(2003.4.3)
【出願番号】 特願2001−290778(P2001−290778)