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【発明の名称】 アゾ顔料の製造方法及びそれにより得られるアゾ顔料
【発明者】 【氏名】浅見 政彦
【住所又は居所】東京都中央区京橋二丁目3番13号 東洋インキ製造株式会社内

【氏名】柳 正人
【住所又は居所】東京都中央区京橋二丁目3番13号 東洋インキ製造株式会社内

【氏名】和田 輝紀
【住所又は居所】東京都中央区京橋二丁目3番13号 東洋インキ製造株式会社内

【氏名】高宮城 一禎
【住所又は居所】東京都中央区京橋二丁目3番13号 東洋インキ製造株式会社内

【要約】 【課題】耐水性の低下や収率の低下といった不具合を生ずることなく生成するアゾ顔料の一次粒子の粒径を制御することにより色材としての透明性、色相、流動性等の諸特性を向上させる製造方法を提供することにある。

【解決手段】シクロデキストリン類等の包接化合物の存在下、カップラー成分とアゾ成分とをカップリング反応させ、ゲストとして包接されるカップラー成分(a)とシクロデキストリン類(b)の包接比がモル比で(a):(b)=100:0.1乃至100:20としたアゾ顔料の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】包接化合物の存在下、カップラー成分とアゾ成分とをカップリング反応させて顔料を得ることを特徴とするアゾ顔料の製造方法。
【請求項2】包接化合物がシクロデキストリン類であることを特徴とする請求項1記載のアゾ顔料の製造方法。
【請求項3】ゲストとして包接されるカップラー成分(a)とシクロデキストリン類(b)の包接比がモル比で(a):(b)=100:0.1乃至100:20であることを特徴とする請求項1記載のアゾ顔料の製造方法。
【請求項4】請求項1から3記載の製造方法によって得られるアゾ顔料。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インキ、塗料、プラスチック用着色剤、捺染、カラートナーやその他の色材用原料として適性の優れたアゾ顔料を製造する方法、およびその組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】アゾ顔料は、芳香族第一級アミン化合物をジアゾ化してジアゾニウム塩をつくり、これとフェノール類、ナフトール類等のカップラー成分とをカップリング反応することにより得られる。このカップリング反応の大半は、ジアゾ成分とカップラー成分とを室温領域で撹拌混合することで比較的簡単に行うことが可能である。また、これらのアゾ顔料をインキや塗料等の色材として使用する場合、生成する粒子径が透明性、色相、流動性等の特性に大きな影響を与えることが判っている。
【0003】しかしながら、従来技術においてカップリング反応の段階で生成粒子の粒子径を制御するには高度な温度管理や撹拌状態の管理が必要とされていた。
【0004】このような粒子径を制御を改良した技術としては、伊藤征司郎編集「顔料の事典」(朝倉書店)に記載されているように、(1)カップラー成分に対して異種カップラー成分を併用したりジアゾ成分に対して異種ジアゾ成分を併用する方法、(2)ロジン等の樹脂類で顔料表面を処理する方法、等がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】(1)の方法は、異種成分の添加により導入された可溶性基等の末端基が分子立体障害を形成し一次粒子の成長を妨げるものである。従って末端基の分子量が小さい場合は充分な効果が得られず、顔料の製造工程あるいはインキ、塗料等の製造工程に於いて一次粒子が成長してしまう。これを避けるために添加量を増すと可溶性基の増加に伴う耐水性の低下といった不具合が生じてしまう。また分子量の大きな末端基を使用するとカップリング反応が進みにくくなり顔料収率の低下といった悪影響を及ぼす可能性がある。
【0006】(2)の方法は、一次粒子が凝集して二次粒子となってから顔料表面を樹脂処理されることになり、樹脂処理された以降の粒子成長を抑制することは可能であるが、一次粒子の粒径制御には何ら効果を発揮するものではない。
【0007】本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は耐水性の低下や収率の低下といった不具合を生ずることなく生成するアゾ顔料の一次粒子の粒径を制御することにより色材としての透明性、色相、流動性等の諸特性を向上させる製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、アゾ顔料を合成する際に反応系内に予め包接化合物(以下「ホスト化合物」と記す場合もある)を存在させてからカップリング反応を行うことによりアゾ顔料の粒子径を適切に制御する方法を見い出し本発明に至った。
【0009】本発明は包接化合物の存在下、カップラー成分とアゾ成分とをカップリング反応させて顔料を得ることを特徴とするアゾ顔料の製造方法である。
【0010】また本発明は包接化合物がシクロデキストリン類であることを特徴とする上記記載のアゾ顔料の製造方法である。
【0011】また本発明はゲストとして包接されるカップラー成分(a)とシクロデキストリン類(b)の包接比がモル比で(a):(b)=100:0.1乃至100:20であることを特徴とする上記記載のアゾ顔料の製造方法である。
【0012】また本発明は、上記記載の製造方法によって得られるアゾ顔料である。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明におけるアゾ顔料は、アゾ成分とカップラー成分のカップリング反応によって得られる顔料であり、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料等が挙げられる。
【0014】ここでアゾ成分とは芳香族第一級アミン化合物をジアゾ化したジアゾニウム塩を指し、カップラー成分とはアゾ成分とカップリング反応するフェノール類、ナフトール類等をいう。
【0015】アゾ顔料としては、ピグメントレッド(以下PRと略す)53、PR50、PR49、PR57:1、PR48:1、PR52:1等の溶性アゾ顔料、PR1、PR3、ピグメントオレンジ(以下POと略す)5、PR21、PR114、PR5、PR146、PR170、PO38、PR187、ピグメントイエロー(以下PYと略す)1、PY3、PY167、PY154、PO36、PY12、PY13、PY14、PY17、PY83等の不溶性アゾ顔料、PR144、PR166、PR214、PR242、PY93、PY94、PY95等の縮合アゾ顔料等が挙げられる。
【0016】本発明で用いる包接化合物はアゾ顔料のカップリング反応系内に予め存在させられることにより、アゾ成分、カップラー成分および生成したアゾ顔料の何れかまたは総てを包接することができる。
【0017】ここで用いられる包接化合物としてはシクロデキストリン類、デキストラン類、クラウンエーテル、カリックスアレーン、アミロース、シクロフラクタン、セルロース、チオ尿素等が挙げられる。その包接形態は、ホスト化合物の三次元構造が形成する筒状、環状またはその他の形状の空孔内にゲスト分子が完全に取り込まれた形態、前記空孔内にゲスト分子の一部が取り込まれた形態、ホスト化合物とゲスト化合物とが交互に配列し結晶性の化合物を形成する形態等が挙げられる。これらの包接化合物は単独で用いることもできるが必要に応じて複数を併用しても構わない。
【0018】包接化合物の選定にあたってはゲスト分子を包接させることができ得るか否かといった化学的要素の他に経済的要素も加味する必要がある。両要素を満足させる包接化合物としてはシクロデキストリン類が最も適切である。またシクロデキストリン類で予めカップラー成分を包接させる方法が最も効果的である。
【0019】シクロデキストリン(以下CDと略すこともある)は環状オリゴ糖とも呼ばれ、一般に多数のグルコースがα−1,4−グルコシド結合によって環状につながったものである。そのグルコース単位が6個のものをα−CD、7個をβ−CD、8個をγ−CDと称している。また単位数が9から12個のものも知られている。
【0020】本発明で用いるシクロデキストリンは必要に応じて置換基が付加されたり他の物質と重合させたりして変性されたものでもよい。特開平5−132642号公報には本発明に使用しうる種々のシクロデキストリン類が開示されている。即ち、シクロデキストリン環の1個以上の水酸基の水酸基全体もしくは水素原子をアシル基、アミノ基、ニトロ基、ハロゲン置換基あるいは任意の適当な置換基で置換したもの、シクロデキストリン環と適当な多官能性物質とを共に結合させて重合体を形成したもの等である。
【0021】本発明で用いるシクロデキストリン類は、ゲスト分子であるアゾ成分、カップラー成分および生成したアゾ顔料によって選択される。すなわち、シクロデキストリンの分子空洞の空洞径はグルコース単位数によって変化する。従ってゲスト分子の分子サイズと合致したものを適切に選択する必要がある。この選択は理論的に行っても良いし実験的に求めたのでもかまわない。
【0022】通常シクロデキストリン類の包接は水溶液中で行われるが、アゾ顔料のカップリング反応に悪影響を及ぼさない限りに於いてその他の溶媒を併用してもかまわない。そのような溶媒としては、それ自身がシクロデキストリン類に包接されにくいメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、アセトン、エチレングリコール、プロピレングリコール等を挙げることができる。
【0023】これらの包接は公知の撹拌方法で行うことができる。本発明による包接は前記のごとく水溶液中で行われるため一般的なプロペラ翼、タービン翼、イカリ翼、ヘリカル翼、マックスブレンド翼等を用いることができる。また溶液の粘度が高かったりスラリー状の場合はホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、アトライター等の湿式分散機で積極的に混合、摩砕することも有効である。
【0024】またこれらの包接は室温で充分に進行するが必要に応じて加温しても差し支えない。また包接に要する時間はシクロデキストリン類、ゲスト分子または包接方法によって異なるが概ね数十分から数時間程度で完了する。
【0025】本発明で述べるところのシクロデキストリン類による包接は、アゾ成分、カップラー成分および生成したアゾ顔料の何れをゲスト分子としても良いが、その中でもカップラー成分を包接させることが最も効果的である。
【0026】シクロデキストリン類とカップラー成分の比率はいかなる割合であっても何ら制限するものではない。しかしアゾ顔料の主な用途であるインキや塗料に於ける諸特性を考慮した場合、カップラー成分に対するシクロデキストリン類のモル比率が0.1%未満であると前記の立体障害による結晶成長抑止効果が現れにくくなり一次粒子が成長してしまい、結果として透明性の低下や色相の変化が生じてしまうため不適切である。またモル比率が20%を越えると色素分が減ることによる着色力の低下が生じたり、加えた分の効果が得られず不経済である。従ってモル比率は0.1乃至20%であることが望ましい。
【0027】本発明によってアゾ顔料を製造する大まかなフローの一例をジスアゾ顔料を例にして説明すると、カップラー成分を水酸化ナトリウム水溶液に溶解後、シクロデキストリン類を加え撹拌し包接させる。一方これとは別にアゾ成分を調製しておく。しかる後に所定濃度の酢酸−酢酸ナトリウム緩衝溶液中に両者を定量的に供給し徐々にジスアゾ顔料を合成する。その結果、分子構造中の一部がシクロデキストリン類によって包接された顔料組成物を得ることができる。
【0028】
【実施例】以下、実施例に基づき本発明をより詳細に説明するが本発明はこれによって限定されるものではない。実施例において「部」はすべて重量部、「%」はすべて重量%を示す。
【0029】
【実施例1】3,3’−ジクロロベンジジン塩酸塩をその3倍モルの塩酸と2倍モルの亜硝酸ナトリウムを使って常法によりテトラゾ化し、10℃、0.125[モル/リットル]のテトラゾ水溶液を調製した。一方、アセトアセトアニリド19部を水酸化ナトリウム8部を含む水溶液に溶解し、25℃、0.259[モル/リットル]のカップラー水溶液を調製し、この溶液にα−シクロデキストリンを5.2部加え30分間撹拌し包接させた。さらに酸性水溶液として80%酢酸11.9部と水酸化ナトリウム3.2部と水とからなる25℃、pH4.7の緩衝溶液500部を調製し、撹拌機を有する反応器に仕込んだ。
【0030】このpH緩衝溶液中に互いに離れた位置に出口を持つ2本の注入管をセットし、テトラゾ水溶液とカップラー水溶液とをそれぞれの注入管を通してpH緩衝溶液中に注入した。これらの溶液は同時に注入を開始し、定量ポンプにより同じ体積流量で40分間注入し、同時に注入を終了した。注入の間、液面より採取した反応液からはテトラゾは検出されなかった。この時点でのカップラー基準のカップリング反応率は93.5%であった。その後、反応系内にテトラゾが極僅か認められるまでテトラゾ水溶液のみを追加注入した結果、カップラー基準のカップリング反応率は98.0%であった。なお、テトラゾの検出はβ−ナフトールによる発色反応を用いて行い、カップリング反応率は液体クロマトで分析して得た未反応カップラー量から求めた。この顔料スラリーを濾過、精製し、85℃で乾燥して38部のアゾ顔料1を得た。
【0031】
【実施例2】実施例1と同様にして3,3’−ジクロロベンジジン塩酸塩を常法によりテトラゾ化し、10℃、0.125[モル/リットル]のテトラゾ水溶液を調製した。一方、アセトアセト−o−トルイジド20部を水酸化ナトリウム8部を含む水溶液に溶解し、25℃、0.259[モル/リットル]のカップラー水溶液を調製し、この溶液にγ−シクロデキストリンを6.8部加え30分間撹拌し包接させた。さらに酸性水溶液として80%酢酸11.9部と水酸化ナトリウム3.2部と水とからなる25℃、pH4.7の緩衝溶液500部を調製し、撹拌機を有する反応器に仕込んだ。
【0032】このpH緩衝溶液中に互いに離れた位置に出口を持つ2本の注入管をセットし、テトラゾ水溶液とカップラー水溶液とをそれぞれの注入管を通してpH緩衝溶液中に注入した。これらの溶液は同時に注入を開始し、定量ポンプにより同じ体積流量で40分間注入し、同時に注入を終了した。注入の間、液面より採取した反応液からはテトラゾは検出されなかった。この時点でのカップラー基準のカップリング反応率は92.8%であった。その後、反応系内にテトラゾが極僅か認められるまでテトラゾ水溶液のみを追加注入した結果、カップラー基準のカップリング反応率は97.5%であった。なお、テトラゾの検出はβ−ナフトールによる発色反応を用いて行い、カップリング反応率は液体クロマトで分析して得た未反応カップラー量から求めた。この顔料スラリーを濾過、精製し、85℃で乾燥して41部のアゾ顔料2を得た。
【0033】
【実施例3】2−アミノ−5−メチル−ベンゼンスルホン酸30部を水酸化ナトリウム6部を含む水溶液に溶解した後、塩酸で酸析を行った。これを0℃に冷却してから亜硝酸ナトリウムを使って常法によりジアゾ化して5℃のジアゾ溶液を得た。一方、β−オキシナフトエ酸30部を水酸化ナトリウム16部を含む水溶液に溶解し、10℃に冷却してカップラー水溶液を調製し、この溶液にα−シクロデキストリンを7.8部加え30分間撹拌し包接させた。
【0034】しかる後に前掲のジアゾ溶液をカップリングさせ染料を得た。これにロジンソープ8部を加え、pH11.0にした後、35%塩化カルシウム水溶液67部を加えレーキ化を行った。この顔料スラリーを濾過、精製し、85℃で乾燥して83部のアゾ顔料3を得た。
【0035】
【比較例1】カップラー水溶液にα−シクロデキストリンの添加を行わない以外は、実施例1と同様な方法で、アゾ顔料4を得た。
【0036】
【比較例2】カップラー水溶液にγ−シクロデキストリンの添加を行わない以外は、実施例2と同様な方法で、アゾ顔料5を得た。
【0037】
【比較例3】カップラー水溶液にα−シクロデキストリンの添加を行わない以外は、実施例3と同様な方法で、アゾ顔料6を得た。
【0038】上記実施例1乃至3および比較例1乃至3で得たアゾ顔料はそれぞれ以下に示す方法で評価した【0039】1.質量分析【0040】アゾ顔料1乃至3の分子量およびその分布を日本電子(株)製二重収束系質量分析計によって測定した。図1に示すのはアゾ顔料1のマススペクトルである。比較対照となるアゾ顔料4として得られるPY12の分子量629の他にα−シクロデキストリンで包接された分子量1602のピークが観察された。同様に図2に示すのはアゾ顔料2のマススペクトルである。比較対照となるアゾ顔料5として得られるPY13の分子量685の他にγ−シクロデキストリンで包接された分子量1982のピークが観察された。同様に図3に示すのはアゾ顔料3のマススペクトルである。比較対照となるアゾ顔料6として得られるPR57:1の分子量424の他にα−シクロデキストリンで包接された分子量1397のピークが観察された。
【0041】2.色相評価【0042】顔料のオフセットインキ試験を実施した。オフセットインキビヒクル80gと粉砕した顔料20gを紙コップ中でプレミックス後、3本ロールで練肉した。練肉後、ビヒクルおよび溶剤を計10g加えインキを得た。得られたインキを用いて次に示すような評価を行った。
【0043】透明性および鮮明性:比較対照はシクロデキストリン類を含む顔料と含まない顔料のそれぞれによるインキを並べて展色し色見本を作成した。この色見本を目視で評価した。即ち、アゾ顔料1とアゾ顔料4、アゾ顔料2とアゾ顔料5、アゾ顔料3とアゾ顔料6で比較を行った。
【0044】その結果、アゾ顔料1の方がアゾ顔料4よりも鮮明性が優れ、透明性は特に優れた。またアゾ顔料2の方がアゾ顔料5よりも透明性、鮮明性が優れた。またアゾ顔料3の方がアゾ顔料6よりも透明性、鮮明性が優れた。
【0045】
【発明の効果】本発明によれば、アゾ顔料を合成する際に予めカップラー成分をシクロデキストリン類で包接することにより生成するアゾ顔料の粒子径を制御することが可能となった。その結果、インキとした場合の透明性、鮮明性に優れたアゾ顔料を得ることが可能となった。
【出願人】 【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキ製造株式会社
【住所又は居所】東京都中央区京橋2丁目3番13号
【出願日】 平成13年11月21日(2001.11.21)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−155421(P2003−155421A)
【公開日】 平成15年5月30日(2003.5.30)
【出願番号】 特願2001−355960(P2001−355960)