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【発明の名称】 ガスバリア性熱可塑性樹脂用押出トルク低減剤
【発明者】 【氏名】日野 享子
【住所又は居所】大阪府高槻市塚原2丁目10番1号 住友化学工業株式会社内

【氏名】花田 暁
【住所又は居所】大阪府高槻市塚原2丁目10番1号 住友化学工業株式会社内

【氏名】高畑 弘明
【住所又は居所】大阪府高槻市塚原2丁目10番1号 住友化学工業株式会社内

【氏名】黒田 竜磨
【住所又は居所】大阪府高槻市塚原2丁目10番1号 住友化学工業株式会社内

【要約】 【課題】ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂を押出機を用いて押出加工するにあたり、そのガスバリア性を損なうことなく押出加工時のトルクを低減させることができる添加剤を提供する。

【解決手段】ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂を押出機を使用して押出加工するにあたり、エチレン単位含有量70〜95mol%、ケン化度25〜100%のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を主剤とする押出トルク低減剤を添加することにより、熱可塑性樹脂のガスバリア性を維持しつつ、押出トルクを低減する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】エチレン単位含有量70〜95mol%、ケン化度25〜100%のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を主剤とすることを特徴とするガスバリア性熱可塑性樹脂用押出トルク低減剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、優れたガスバリア性を有する熱可塑性樹脂のガスバリア性を損なうことなく、押出加工時のトルクを低減させるガスバリア性熱可塑性樹脂用押出トルク低減剤に関する。
【0002】
【従来の技術】エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下、EVOHと記すことがある)やナイロンなど、優れたガスバリア性を有する熱可塑性樹脂は、食品、医薬品、電子材料など特に酸素に対するガスバリア性が必要な分野において幅広く使用されている。しかしながら、優れたガスバリア性を有する熱可塑性樹脂は、一般に押出加工時に非常に高いトルクがかかる。そのため、例えば通常のポリオレフィン用の押出加工設備では、このような優れたガスバリア性を有する熱可塑性樹脂を安定して押出加工することができず、高トルクにも耐えうる専用の押出加工設備が必要であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のような従来の技術に鑑みて、本発明の目的は、優れたガスバリア性を有する熱可塑性樹脂を押出機を用いて押出加工するにあたり、そのガスバリア性を損なうことなく押出加工時のトルクを低減させ得る添加剤を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂の押出加工時に、特定のエチレン単位含有量と特定の酢酸ビニル単位のケン化度を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる押出トルク低減剤を使用することにより上記目的を達成することができることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、エチレン単位含有量70〜95mol%、ケン化度25〜100%のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を主剤とすることを特徴とする押出トルク低減剤。
【0005】
【発明の実施の形態】前記目的を達成するために、本発明の押出トルク低減剤に含まれるEVOHのエチレン単位含有量は70〜95mol%であり、好ましくは、80〜95mol%であり、より好ましくは、85〜95mol%である。エチレン単位含有量が70mol%未満のEVOHを用いると、押出トルクを効果的に低減させることができない。一方、エチレン単位含有量が95mol%を超えるEVOHを用いると、ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂のガスバリア性を著しく悪化させる。
【0006】本発明の押出トルク低減剤に含まれるEVOHのケン化度は25〜100%であり、好ましくは、40〜80%であり、より好ましくは、45〜70%である。ケン化度が25%未満のEVOHを用いると、ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂のガスバリア性を著しく悪化させる。
【0007】本発明の押出トルク低減剤は、EVOHを1種類のみ含有してよく、また、該当する範囲でエチレン単位含有量やケン化度が異なる2種類以上のEVOHを含有してもよい。
【0008】本発明の押出トルク低減剤に含まれるEVOHの量は必ずしも臨界的ではないが、通常は押出トルク低減剤全体の50〜100%であり、好ましくは70〜100%であり、より好ましくは90〜100%である。
【0009】本発明の押出トルク低減剤をガスバリア性を有する熱可塑性樹脂に加える量は特に限定されないが、ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂の押出加工後のガスバリア性を大きく損なわないという観点から、熱可塑性樹脂100重量部に対し、5〜30重量部であることが好ましい。
【0010】本発明の押出トルク低減剤に含まれるEVOHを製造する方法は特に限定されず、その一例として、所望のエチレン単位含有量となるように共重合してなるエチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化する方法が挙げられる。ケン化するエチレン−酢酸ビニル共重合体のエチレン単位含有量、およびケン化条件を適宜調節することにより、所望のEVOHを得ることができる。
【0011】エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化方法は特に限定されるものではなく、例えば、有機溶媒、具体的にはキシレン、トルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素にエチレン−酢酸ビニル共重合体を溶解させて、アルカリ触媒を用いてケン化し、反応系内にメタノールのようなエチレン−酢酸ビニル共重合体の貧溶媒を添加して生成物を沈殿させ分別する方法や、ペレット状または粉末状のエチレン−酢酸ビニル共重合体をメタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール中に分散させ、アルカリ触媒を用いてケン化し、アルコールと触媒とを濾過により除去し、残さをアルコールで洗浄する方法を適用することができる。
【0012】アルカリ触媒としては、アルカリ金属のアルコキシド、特にナトリウムメトキシドおよびナトリウムエトキシド、およびアルカリ金属の水酸化物、特に水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムを使用することができる。
【0013】エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化条件は、例えば以下のとおりである.
反応基質(エチレン−酢酸ビニル共重合体)濃度: 10〜50%反応温度: 30〜60℃反応時間: 1〜6時間触媒使用量: 0.02〜0.6当量(酢酸エステル基当り)
反応基質濃度、反応温度、反応時間、触媒使用量などの反応条件を調節することにより、ケン化度を調節することができる。
【0014】本発明の押出トルク低減剤に含まれるEVOHは、本発明の押出トルク低減剤の特性が著しく損なわれない限り、α−オレフィン、不飽和酸、不飽和酸無水物、不飽和酸塩、オレフィンスルホン酸、オレフィンスルホン酸塩、モノまたはジアルキルエステル類、ニトリル類、アミド類、アルキルビニルエーテル類、ビニル類など共重合可能なモノマー類で変性されていてもよい。
【0015】また、本発明の押出トルク低減剤は、その特性が著しく損なわれない限り、EVOH以外の樹脂や添加剤を適宜含有することができる。本発明の押出トルク低減剤が含有することができるEVOH以外の樹脂には、例えば下記の熱可塑性樹脂がある。本発明の押出トルク低減剤は、EVOH以外に、一種類の樹脂を含有しても二種類以上の樹脂を含有してもよい。
ポリオレフィン系樹脂エチレン−ビニルエステル共重合体エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体ポリエステル系樹脂ポリアミド系樹脂アクリル系樹脂アクリロニトリル系樹脂ポリビニルアルコール(無水)ポリカルボン酸請求項1に記載のEVOH以外のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物【0016】ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂および本発明の押出トルク低減剤およびその他の任意成分の押出機への投入方法には特に制限はなく、例えば、ペレット状または粉体状の材料を予めドライブレンドし、得られた混合物をフィーダーやコンパクターなどの装置により押出機内に投入する方法、複数のフィーダーを用いて各材料を別々に押出機に投入する方法を挙げることができる。また、一つ以上の原料を溶媒(主に有機溶媒)に溶解し、送液ポンプを用いて押出機に供給することもできる。また、予め調製した押出トルク低減剤および/またはガスバリア性を有する熱可塑性樹脂の高濃度マスターバッチに、ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂および/または押出トルク低減剤、および所望の追加的成分をブレンドし、押出加工することもできる。
【0017】本発明の押出トルク低減剤を用いると、ガスバリア性樹脂本来のガスバリア性を損なうことなく押出トルクを低減させることができる。
【0018】本発明において、酸素透過度はJIS K−7126に準じて次のような方法で測定する。先ず、本発明の押出トルク低減剤をガスバリア性を有する熱可塑性樹脂に加えて押出加工し、試料フィルムを作製した。次に、この試料フィルムを測定装置に装着して酸素透過度を連続的に測定し、酸素透過度が実質的に一定になった時点(通常は、測定開始から数時間〜3日程度の後)における酸素透過度を求める。酸素透過度の測定には、米国MOCON社製の酸素透過度測定装置(商品名:OX−TRAN 100)もしくはこれと同等の装置を使用する。尚、上記方法で実測された酸素透過度から厚さ1μmあたりの酸素透過度を算出し、この計算値を用いて成形品の酸素透過度を表示する。同一の製品からなるフィルムの酸素透過度(cc/m2dayatm)は、フィルムの厚さに反比例する。
【0019】本発明の押出トルク低減剤を用いて加工する方法は、その加工時に装置にかかるトルクが低く、かつ、樹脂圧力の変動が小さいため、加工性に優れている。よって、ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂専用の高トルクにも耐えうる押出加工設備のみならず、通常のポリオレフィン用の押出加工設備などでも安定に押出加工することができる。
【0020】本発明の押出トルク低減剤を用いて押出トルクを低減することができるガスバリア性熱可塑性樹脂としては、例えば下記の熱可塑性樹脂がある。
エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)
ポリ塩化ビニリデンナイロン6、ナイロン6/66コポリマー、ナイロン6/12コポリマー、ナイロン66、ナイロン12、のようなポリアミド系樹脂メタキシリレンジアジパミドなどのMXナイロン【0021】
【実施例】以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。本実施例中における測定方法、評価方法については以下の通りである。
【0022】[エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化]押出トルク低減剤は、市販のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)下に記す方法でケン化して調製した。フラスコに攪拌機、温度計、冷却管を設置し、1−ブタノール700重量部、フィルム状のエチレン−酢酸ビニル共重合体(エチレン単位含有量89mol%、商品名:スミテートKA−31、住友化学工業株式会社製)20重量部、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(28%)14重量部を入れ、50℃で30分間反応させた。その後、40℃以下に冷却、ろ過し、フィルムを分別して反応物を取出し、水2000重量部で2回洗浄し、ケン化度63%のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を得た。これを押出トルク低減剤として用いた。
【0023】[ケン化度]エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のケン化度は以下の方法で同定した。フィルム状の、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物とケン化前の原料のエチレン−酢酸ビニル共重合体のFT−IRスペクトルをそれぞれ測定した。内部標準をメチレン基のC−H変角振動(1466cm-1付近)に起因する吸収ピークとした場合に、酢酸ビニル単位のC=O伸縮振動(1738cm-1付近)に起因するピークの吸光度の減少量として求めた。具体的には以下の式に代入して求めた。
ケン化度(%)={1−(A2×B1)/(A1×B2)}×100A1:ケン化前のエチレン−酢酸ビニル共重合体のカルボニル基のC=O伸縮振動(1738cm-1付近)に起因する吸光度A2:エチレン−酢酸ビニル共重合体のカルボニル基のC=O伸縮振動(1738cm-1付近)に起因する吸光度B1:ケン化前のエチレン−酢酸ビニル共重合体のメチレン基のC−H変角振動(1466cm-1付近)に起因する吸光度(内部標準)
B2:エチレン−酢酸ビニル共重合体のメチレン基のC−H変角振動(1466cm-1付近)に起因する吸光度(内部標準)
【0024】[酸素透過度]酸素透過度は、JIS K−7126(等圧法)に準じて測定した。市販の酸素透過度測定装置(商品名:OX−TRAN 100、米国MOCON社製)に試料フィルムを装着し、酸素透過度を連続的に測定し、酸素透過度が実質的に一定になった時点における酸素透過度を求めた。試料フィルムとしては、後述の実施例1のような方法で押出加工により得られた厚さ50μmのフィルムを用いた。上記測定で実測された酸素透過度から厚さ1μmあたりの酸素透過度を算出し、この計算値を用いて成形品の酸素透過度を表示した。
【0025】(実施例1)ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂として、エチレン単位含有量44mol%、ケン化度99%のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(商品名:エバールEP−E105、株式会社クラレ製)を、押出トルク低減剤として、エチレン単位含有量89mol%、ケン化度60%のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を使用した。ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂100重量部に対し押出トルク低減剤11重量部を混合した。この混合物を、押出機(スクリュー直径=40mm)を用いてスクリュー温度:230℃、押出し量:10kg/時で溶融混練し、Tダイ(SHIモダンマシナリー製)から押し出して厚さ50μmのフィルムを製膜した。混練時に押出機にかかった負荷電流(トルク)は9Aであり、樹脂圧力は111kg/cm2であった。得られたフィルムの酸素透過度は71cc/m2dayatmであった。
【0026】(比較例1)押出トルク低減剤を使用しなかった以外は実施例1と同様にして製膜した。混練時に押出機にかかった負荷電流(トルク)は12.5Aであり、樹脂圧力は107kg/cm2であった。得られたフィルムの酸素透過度は56cc/m2dayatmであった。
【0027】(実施例2)実施例1で使用したガスバリア性を有する熱可塑性樹脂に代えて、エチレン単位含有量32mol%、ケン化度99%のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(商品名:エバールEP−F101、株式会社クラレ製)を用いた以外は実施例1と同様にして製膜した。混練時に押出機にかかる負荷電流(トルク)は10Aであり、樹脂圧力は164kg/cm2であった。得られたフィルムの酸素透過度は10cc/m2dayatmであった。
【0028】(比較例2)押出トルク低減剤を使用しなかった以外は実施例2と同様にして製膜を試みた。混練時に押出機には限界圧力の350kg/cm2以上の樹脂圧力が掛かり、押出成形することができなかった。
【0029】
【発明の効果】ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂を押出機を使用して押出加工するにあたり、エチレン単位含有量70〜95mol%、ケン化度25〜100%のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を主剤とする押出トルク低減剤を添加すれば、熱可塑性樹脂のガスバリア性を維持しつつ、押出機に掛かるトルクを効果的に低減することができ、その結果、例えば通常のポリオレフィン用の押出加工設備を用いた場合にも安定して押出を行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学工業株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号
【出願日】 平成14年2月7日(2002.2.7)
【代理人】 【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆 (外2名)
【公開番号】 特開2003−226813(P2003−226813A)
【公開日】 平成15年8月15日(2003.8.15)
【出願番号】 特願2002−30735(P2002−30735)