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【発明の名称】 溶融流動性改良剤、及びこれを用いた熱可塑性樹脂組成物
【発明者】 【氏名】鍋島 泰彦
【住所又は居所】広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイヨン株式会社中央技術研究所内

【氏名】小白井 厚典
【住所又は居所】広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイヨン株式会社中央技術研究所内

【要約】 【課題】得られる成形品が耐熱性、耐剥離性、耐衝撃性、難燃性等に優れるというエンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物の本来の特性を損なうことなく、溶融流動性(成形加工性)を向上させることが可能な手段を提供する。

【解決手段】エンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物用として好適な本発明の溶融流動性改良剤は、ポリカーボネート樹脂に対して相溶性又は親和性を有する、質量平均分子量が10000以上60000未満の重合体(A)を主成分とすることを特徴とする。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性エンジニアリングプラスチック(Y)100質量部に対して、この溶融流動性改良剤(X)0.1〜100質量部を配合してなることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリカーボネート樹脂に対して相溶性又は親和性を有する、質量平均分子量が10000以上60000未満の重合体(A)を主成分とすることを特徴とする溶融流動性改良剤。
【請求項2】 前記重合体(A)の質量平均分子量が10000以上30000未満であることを特徴とする請求項1に記載の溶融流動性改良剤。
【請求項3】 前記重合体(A)が、少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体又は共重合体(a−1)、芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物との共重合体 (a−2)、アルキル(メタ)アクリレートとシアン化ビニル化合物又は芳香族アルケニル化合物との共重合体(a−3)のうちいずれかであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の溶融流動性改良剤。
【請求項4】 前記重合体(A)が、芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物との共重合体(a−2)であることを特徴とする請求項3に記載の溶融流動性改良剤。
【請求項5】 熱可塑性エンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物用であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の溶融流動性改良剤。
【請求項6】 熱可塑性エンジニアリングプラスチック(Y)100質量部に対して、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の溶融流動性改良剤(X)0.1〜100質量部を配合してなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】 前記エンジニアリングプラスチック(Y)が、ポリカーボネート樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項6に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶融流動性改良剤、及び、該溶融流動性改良剤を配合した熱可塑性樹脂組成物に係り、特に、エンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物の溶融流動性を向上させる技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリカーボネート樹脂に代表される熱可塑性エンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物の成形品は、耐熱性、耐剥離性(耐表層剥離性)、耐衝撃性、難燃性、機械強度、電気特性、寸法安定性等に優れることから、複写機、ファックシミリ、パソコン等のOA(オフィスオートメーション)機器、情報・通信機器、電気・電子機器、家庭電化機器、自動車、建築等の様々な分野において広く利用されている。なお、本明細書では、単に「エンジニアリングプラスチック」と記載している箇所があるが、すべて、熱可塑性エンジニアリングプラスチックを意味しているものとする。
【0003】近年、エンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物が使用される、OA機器、情報・通信機器、電気・電子機器等のハウジングや部品等は、形状が複雑化してきており、また、軽量化、省資源の観点から薄型化も進められている。このような背景下、エンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物にはより高い成形加工性が求められているが、例えば、従来のポリカーボネート系の熱可塑性樹脂組成物は、溶融流動性があまり良くなく、複雑な形状や薄型の成形品を得るには適していなかった。
【0004】ポリカーボネート系の熱可塑性樹脂組成物の溶融流動性を向上させる手段としては、(1)マトリクス樹脂であるポリカーボネート樹脂自体を低分子量化することや、(2)ポリカーボネート樹脂に、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、ゴム変性ポリスチレン樹脂(HIPS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)等のスチレン系樹脂を配合してポリマーアロイ化すること(特公昭38−15225号公報、特公昭43−6295号公報、特公昭43−13384号公報)が提案されている。
【0005】また、ポリカーボネート系の熱可塑性樹脂組成物の溶融流動性をさらに向上させるために、種々の溶融流動性改良剤が提案されている。かかる溶融流動性改良剤としては、例えば、(3)ポリエステルオリゴマー(特公昭54−21455号公報)、(4)ポリカーボネートオリゴマー(特開平3−24501号公報)、(5)低分子量のスチレン系共重合体(特公昭52−784号公報、特開平4−332742号公報、特開平11−181197号公報、特開2000−178432号公報)、(6)ポリオルガノシロキサンセグメントを有する重合体(特開平11−35831号公報)、(7)ポリアルキル(メタ)アクリレートの存在下にスチレンを重合して得られる重合体(特開2000−239477号公報)が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、(1)ポリカーボネート樹脂自体を低分子量化する場合には、得られる熱可塑性樹脂組成物の溶融流動性を大きく向上させることができるものの、ポリカーボネート樹脂を低分子量化する程、得られる成形品の耐熱性、耐衝撃性、耐薬品性が低下するという問題があった。また、(2)ポリカーボネート樹脂に、スチレン系樹脂を配合してポリマーアロイ化する場合には、得られる熱可塑性樹脂組成物の溶融流動性を向上させることができるものの、スチレン系樹脂の添加に伴い、得られる成形品の耐熱性、耐衝撃性、難燃性が低下するという問題があった。
【0007】また、溶融流動性改良剤として、(3)ポリエステルオリゴマーや(4)ポリカーボネートオリゴマーを添加する場合にも、得られる熱可塑性樹脂組成物の溶融流動性を向上させることができるものの、これらの添加量が増大するにつれて、得られる成形品の耐熱性や耐衝撃性が低下するという問題があった。また、溶融流動性改良剤として、(5)低分子量のスチレン系共重合体、(6)ポリオルガノシロキサンセグメントを有する重合体、(7)ポリアルキル(メタ)アクリレートの存在下にスチレンを重合して得られる重合体を添加する場合には、得られる成形品の耐熱性を保持したまま、熱可塑性樹脂組成物の溶融流動性を向上させることができるものの、これらの溶融流動性改良剤とポリカーボネート樹脂との相溶性が十分でなく、得られる成形品に表層剥離が生じやすく、その結果、耐衝撃性が低下すると共に、美観を損ねる恐れがあった。
【0008】このように、エンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物の本来の特性を保持したまま、溶融流動性を向上させる技術は開発されていないのが現状である。そこで、本発明は、得られる成形品が耐熱性、耐剥離性、耐衝撃性、難燃性等に優れるというエンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物の本来の特性を損なうことなく、溶融流動性(成形加工性)を向上させることが可能な手段を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記課題を解決するべく検討を行った結果、ポリカーボネート樹脂に対して相溶性又は親和性を有する特定の質量平均分子量の重合体を、ポリカーボネート樹脂に代表されるエンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物に添加することにより、得られる成形品が耐熱性、耐剥離性、耐衝撃性、難燃性等に優れるというエンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物の本来の特性を損なうことなく、溶融流動性(成形加工性)を向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】本発明の溶融流動性改良剤は、ポリカーボネート樹脂に対して相溶性又は親和性を有する、質量平均分子量が10000以上60000未満の重合体(A)を主成分とすることを特徴とする。また、本発明の溶融流動性改良剤において、前記重合体(A)の質量平均分子量が10000以上30000未満であることがより好ましい。なお、本発明の溶融流動性改良剤において、「重合体(A)を主成分とする」とは、重合体(A)の含有量が50質量%以上であることを意味しているものとする。
【0011】また、前記重合体(A)としては、少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体又は共重合体(a−1)、芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物との共重合体 (a−2)、アルキル(メタ)アクリレートとシアン化ビニル化合物又は芳香族アルケニル化合物との共重合体(a−3)のうちいずれかであることが好ましく、中でも特に、芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物との共重合体(a−2)が好適である。以上の本発明の溶融流動性改良剤は、熱可塑性エンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物用として好適である。
【0012】本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性エンジニアリングプラスチック(Y)100質量部に対して、前記の本発明の溶融流動性改良剤(X)0.1〜100質量部を配合してなることを特徴とする。また、前記エンジニアリングプラスチック(Y)としては、ポリカーボネート樹脂を主成分とするものが好適である。なお、エンジニアリングプラスチック(Y)において、「ポリカーボネート樹脂を主成分とする」とは、ポリカーボネート樹脂の含有量が50質量%以上であることを意味しているものとする。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。
[溶融流動性改良剤(X)]本発明の溶融流動性改良剤(X)は、ポリカーボネート樹脂に対して相溶性又は親和性を有する特定の質量平均分子量の重合体(A)を主成分とすることを特徴とする。本発明の溶融流動性改良剤(X)は、エンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物用として好適なものであり、本発明の溶融流動性改良剤(X)を、エンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物に添加することにより、得られる成形品が耐熱性、耐剥離性、耐衝撃性、難燃性等に優れるというエンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物の本来の特性を損なうことなく、溶融流動性(成形加工性)を向上させることができる。
【0014】本明細書において、「ポリカーボネート樹脂に対して相溶性又は親和性を有する重合体」とは、重合体10質量部と粘度平均分子量17000〜25000のポリカーボネート樹脂90質量部とを270℃で溶融混練した後、成形して得られる成形試片が、耐表層剥離性(層状剥離性)を有するものと定義する。
【0015】ここで、耐表層剥離性(層状剥離性)は、得られた成形品の表面にカッターナイフで1 mm2 のマス目を100個作り、これらのマス目に対して粘着テープを十分に密着させた後、勢い良く剥し、剥離するか否かを試験するテープ剥離試験(JIS K−5400に基づく碁盤目剥離試験)により評価するものとする。また、より厳しい評価試験として、成形試片の突き出しピン跡に、カッターナイフで斜め水平に切り込みを入れ、表層が剥離するか否かを目視により試験する評価試験によっても評価するものとする。そして、本明細書では、これら両試験を合格したものを「耐表層剥離性を有するもの」と定義し、少なくともいずれか一方の試験に対して不合格であったものを「耐表層剥離性を有しないもの」と定義する。
【0016】重合体(A)としては、ポリメチルメタクリレート、(メチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート)共重合体、(メチルメタクリレート/フェニルメタクリレート)共重合体等の少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体又は共重合体(a−1)、(スチレン/アクリロニトリル)共重合体、(スチレン/メタクリロニトリル)共重合体等の芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物との共重合体(a−2)、(メチルメタクリレート/スチレン)共重合体、(メチルメタクリレート/アクリロニトリル)共重合体等のアルキルメタクリレートとシアン化ビニル化合物又は芳香族アルケニル化合物との共重合体(a−3)、ポリ−ε−カプロラクトン等の脂肪族ポリエステル、ポリカーボネート、あるいはこれらを主成分とする重合体を例示することができる。
【0017】これらの中でも特に、得られる溶融流動性改良剤を、エンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物に添加することにより、得られる成形品が耐熱性、耐剥離性、耐衝撃性、難燃性等に優れるというエンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物の本来の特性を損なうことなく、高い溶融流動性(成形加工性)向上効果が得られることから、少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体又は共重合体(a−1)、芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物との共重合体(a−2)、アルキル(メタ)アクリレートとシアン化ビニル化合物又は芳香族アルケニル化合物との共重合体(a−3)、あるいはこれらを主成分とする重合体が好適である。
【0018】中でも特に、得られる溶融流動性改良剤を、エンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物に添加することにより、得られる成形品の耐衝撃性、難燃性の低下をより抑制することができると共に、より高い溶融流動性(成形加工性)向上効果が得られることから、芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物との共重合体(a−2)、あるいはこれを主成分とする重合体が好適である。
【0019】また、本発明の溶融流動性改良剤(X)において、重合体(A)の質量平均分子量は10000以上60000未満とされる。重合体(A)の質量平均分子量が10000未満では、相対的に低分子量物の含有量が多くなるため、得られる溶融流動性改良剤を添加した熱可塑性樹脂組成物の成形品の耐熱性や剛性等が低下すると共に、熱可塑性樹脂組成物の成形時に発煙、ミスト等が発生して成形装置が汚染され、得られる成形品に、いわゆるフィッシュアイ等の外観不良が発生する。なお、得られる溶融流動性改良剤を添加した熱可塑性樹脂組成物の成形加工性と、得られる成形品の物性を考慮すれば、重合体(A)の質量平均分子量は12000以上であることがより好ましく、15000以上であることがさらに好ましい。
【0020】一方、重合体(A)の質量平均分子量が60000以上では、得られる溶融流動性改良剤自体の溶融粘度が高くなるため、得られる溶融流動性改良剤を添加した熱可塑性樹脂組成物の溶融流動性向上効果が十分に得られない。なお、熱可塑性樹脂組成物の溶融流動性(成形加工性)を考慮すれば、重合体(A)の質量平均分子量は50000未満であることがより好ましく、40000未満であることがさらに好ましく、30000未満であることが特に好ましい。
【0021】重合体(A)の製造方法としては特に限定されるものではなく、塊状重合法、溶液重合法、塊状懸濁重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の製造方法を採用することができる。乳化ラジカル重合法を例に取ると、水、乳化剤、少なくとも1種のビニル系単量体、重合開始剤、連鎖移動剤等からなる混合物に、必要に応じて重合触媒を添加し、高温下で単量体を重合することにより、重合体(A)を合成することができる。ビニル系単量体は、合成する重合体(A)の分子構造に応じて選択され、例えば、重合体(a−1)を合成するには、少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレート、重合体(a−2)を合成するには、芳香族アルケニル化合物及びシアン化ビニル化合物、重合体(a−3)を合成するには、アルキル(メタ)アクリレート及びシアン化ビニル化合物又は芳香族アルケニル化合物を選択すれば良い。
【0022】ラジカル重合の重合開始剤としては、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤;酸化剤、還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤等を例示することができる。レドックス系開始剤としては、硫酸第一鉄、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩、ロンガリッド、ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤等を例示することができる。
【0023】乳化剤としては、ノニオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性イオン性乳化剤等を例示することができる。ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、アルキルセルロース等を例示することができる。アニオン性乳化剤としては、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、脂肪族アミンあるいは脂肪族アマイドの硫酸塩類、脂肪族アルコールリン酸エステル塩類、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン酸塩類、脂肪酸アミドスルホン酸塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類、ホルマリン縮合物のナフタリンスルホン酸塩類等を例示することができる。カチオン性乳化剤としては、脂肪族アミン塩類、第四アンモニウム塩類、アルキルピリジニウム塩等を例示することができる。両性イオン性乳化剤としては、アルキルベタイン等を例示することができる。
【0024】連鎖移動剤としては、n−オクチルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等を例示することができる。
【0025】本発明の溶融流動性改良剤(X)には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、上述した以外の成分を配合しても良い。但し、本発明の溶融流動性改良剤(X)において、重合体(A)の含有量は50質量%以上とする。重合体(A)の含有量が50質量部未満では、単位質量あたりの溶融流動性改良剤(X)による熱可塑性樹脂組成物の溶融流動性向上効果が低下する。すなわち、単位質量あたりの溶融流動性改良剤(X)による熱可塑性樹脂組成物の溶融流動性向上効果が低下すると、エンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物の溶融流動性を十分に向上させるためには、溶融流動性改良剤(X)を多量に配合する必要が生じ、その結果、エンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物におけるエンジニアリングプラスチックの配合量が相対的に低下するので、エンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物の特性が低下する恐れがある。
【0026】[熱可塑性樹脂組成物]本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性エンジニアリングプラスチック(Y)に対して、上述の溶融流動性改良剤(X)を配合してなることを特徴とする。
【0027】エンジニアリングプラスチック(Y)としては特に限定されるものではないが、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、シンジオタクチックポリスチレン、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のナイロン系重合体、ポリアリレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等を例示することができる。これらは公知の製造方法により製造することができる。また、これらは1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用することもできる。
【0028】中でも特に、本発明の溶融流動性改良剤(X)による流動性向上効果が高いことから、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル等が好ましく、ポリカーボネートが特に好ましい。ポリカーボネートとしては、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン(すなわちビスフェノールA)系ポリカーボネート等の4,4’−ジオキシジアリールアルカン系ポリカーボネート等を例示することができる。4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン系ポリカーボネートの製造方法としては、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパンを原料とし、アルカリ水溶液と溶剤の存在下、ホスゲンを吹き込んで反応させる方法や、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパンと炭酸ジエステルとを、触媒存在下にエステル交換させる方法等を例示することができる。
【0029】溶融流動性改良剤(X)の配合量は、エンジニアリングプラスチック(Y)100質量部に対して、0.1質量部以上100質量部以下とされる。また、溶融流動性改良剤(X)の配合量の下限は、1質量部であることがより好ましい。また、溶融流動性改良剤(X)の配合量の上限は、30質量部であることがより好ましく、10質量部であることがさらに好ましい。溶融流動性改良剤(X)の配合量が0.1質量部未満では、溶融流動性改良剤(X)によるエンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物の溶融流動性向上効果が不十分となる。また、溶融流動性改良剤(X)の配合量が100質量部超では、エンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物の特性が損なわれる。
【0030】本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、ゴム質重合体や、各種添加剤、安定化剤、強化剤、無機フィラー、耐衝撃性改質剤、難燃剤、他の熱可塑性樹脂等を配合しても良い。例えば、耐衝撃性を向上させるために、ゴム質重合体を配合することは好適である。また、成形品の強度、剛性、難燃性を向上させるために、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維等の無機フィラーを配合することは好適である。また、耐薬品性等を向上させるために、ポリエチレンテレフタレート等の他の熱可塑性樹脂を配合することも好適である。
【0031】ゴム質重合体としては、ゴム重合体に硬質重合体をグラフト共重合したグラフト共重合体等を例示することができ、具体的には、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル・アクリル系弾性共重合体・スチレン共重合体)、ポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とが交互に絡み合って複合一体化された構造の複合ゴムに、少なくとも1種のビニル系単量体をグラフト重合した複合ゴム系グラフト共重合体等が挙げられる。
【0032】ここで、ゴム重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン・ブタジエンのランダム共重合体又はブロック共重合体、該ブロック共重合体の水素添加物、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、ブタジエン・イソプレン共重合体等のジエン系ゴム、エチレン・プロピレンのランダム共重合体又はブロック共重合体、エチレン・ブテンのランダム共重合体又はブロック共重合体、エチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレン・メタクリレート、エチレン・ブチルアクリレート等のエチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、アクリル酸エステル・ブタジエン共重合体、ブチルアクリレート・ブタジエン共重合体等のアクリル系弾性重合体、エチレン・酢酸ビニル等のエチレンと脂肪酸ビニルとの共重合体、エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・ヘキサジエン共重合体等のエチレン・プロピレン非共役ジエンターポリマー、ブチレン・イソプレン共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とが交互に絡み合って複合一体化された構造の複合ゴム等を例示することができる。
【0033】本発明の熱可塑性樹脂組成物は、少なくとも、エンジニアリングプラスチック(Y)と溶融流動性改良剤(X)を含む原料を混合(混練)することにより得られる。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用い、射出成形法、中空成形法、押出成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法等の公知の成形法により成形することにより、所望の形状の成形品を得ることができる。
【0034】本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の溶融流動性改良剤(X)を所定量配合したものであるので、得られる成形品が耐熱性、耐剥離性、耐衝撃性、難燃性等に優れると共に、溶融流動性(成形加工性)に優れたものとなる。すなわち、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いることにより、各種物性に優れると共に、複雑な形状や薄型の成形品を含む任意の形状の成形品を容易にかつ安定して成形することができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる成形品は、複写機、ファクシミリ、テレビ、ラジオ、テープレコーダー、ビデオデッキ、パソコン、プリンターなどのOA機器、電話機、情報端末機等の情報・通信機器、冷蔵庫、電子レンジ等の電化機器のハウジングや各種部品、自動車部品等として好適に利用することができる。
【0035】
【実施例】次に、本発明に係る実施例及び比較例について説明する。はじめに、合成例1〜4において、ポリカーボネート樹脂に対して相溶性又は親和性を有する、質量平均分子量が10000以上60000未満の重合体(A)を合成した。また、比較のため、合成例5において、ポリカーボネート樹脂に対して相溶性又は親和性を有するが、質量平均分子量が10000未満の重合体(B)を合成した。なお、各合成例において、得られたエマルション(ラテックス)の固形分は、得られたエマルションを170℃で30分乾燥した後の質量から求めた。また、合成した重合体の質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、溶離液をクロロホルムとし、ポリメチルメタクリレート換算で測定した。各合成例において使用した主な原料と配合量、及び得られた重合体の質量平均分子量(Mw)を表1に示す。なお、表1において、各原料の配合量の単位は「質量部」を示す。
【0036】(合成例1) 重合体(A−1)の合成冷却管及び攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、アニオン系乳化剤(花王(株)製ラテムルASK、固形分28%)1. 0質量部(固形分)、蒸留水295質量部を仕込み、窒素雰囲気下、水浴中で80℃まで加熱した。次いで、硫酸第一鉄0.0008質量部、エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩0.0024質量部、ロンガリット1質量部を、蒸留水5質量部に溶解したものを添加した後、アクリロニトリル30質量部、スチレン70質量部、t−ブチルヒドロパーオキサイド0.5質量部、n−オクチルメルカプタン2質量部の混合物を180分かけて滴下した。その後、60分間攪拌し重合を完了した。得られたエマルション(ラテックス)の固形分を測定したところ24.6%であった。次いで、得られたエマルションを希硫酸水溶液中に注入し、生じた沈殿物を乾燥することにより、重合体(A−1)を得た。
【0037】(合成例2) 重合体(A−2)の合成冷却管及び攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、水相として、リン酸カルシウム0.4質量部、分散安定剤(花王(株)製デモールP)0.0075質量部、蒸留水123質量部を、均一に攪拌混合したものを仕込み、油相として、別途、アクリロニトリル29質量部、スチレン71質量部、乳化剤(東邦化学(株)製フォスファノールGB520)0.003質量部、t−ドデシルメルカプタン1質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部を、均一に攪拌混合したものを仕込んだ。しばらく攪拌し、さらに窒素を30分バブリングした後、水浴中、80℃で4時間加熱攪拌し、重合を行った。さらに90℃で1時間加熱攪拌を行い、重合を完了した。得られた沈殿物を水洗後、脱水乾燥し、重合体(A−2)を得た。
【0038】(合成例3、4) 重合体(A−3)、(A−4)の合成t−ドデシルメルカプタンの使用量を表1に示す通りとした以外は合成例2と同様にして、重合体(A−3)、(A−4)を得た。
(合成例5) 重合体(B−1)の合成t−ドデシルメルカプタンの使用量を表1に示す通りとした以外は合成例2と同様にして、重合体(B−1)を得た。
【0039】
【表1】

【0040】次に、実施例1〜5、比較例1〜4において、エンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物を調製し、得られた組成物を用いて成形品を作製した。各実施例、比較例において調製した組成物の組成を表2、表3に示す。
(実施例1〜4、比較例1)合成例1〜5において得られた重合体と、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製ユーピロンS−2000F)とをブレンドした後、ニ軸押出機(東芝機械(株)製TEM−35)を用いて、280℃で溶融混練し、ポリカーボネート系の熱可塑性樹脂組成物を調製した。
(比較例2)合成例1〜5において得られた重合体の代わりに、AS樹脂(SAN樹脂、宇部サイコン(株)製SR05B、Mw63000)を用いた以外は、実施例1〜4、比較例1と同様にして、ポリカーボネート系の熱可塑性樹脂組成物を調製した。
(比較例3)用いる原料樹脂をポリカーボネート樹脂のみとした以外は、実施例1〜4、比較例1と同様にして、ポリカーボネート系の熱可塑性樹脂組成物を調製した。
【0041】(実施例5)合成例1において得られた重合体(A−1)、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製ユーピロンS−2000F)、ABS樹脂(宇部サイコン株式会社製UX050)、AS樹脂(SAN樹脂、宇部サイコン(株)製SR30B、Mw117000)、トリフェニルフォスフィン(TPP、大八化学製)、PTFE樹脂(旭フルオロポリマー製CD−1)をブレンドした後、ニ軸押出機(東芝機械(株)製TEM−35)を用いて、280℃で溶融混練し、ポリカーボネート系の熱可塑性樹脂組成物を調製した。
(比較例4)合成例1において得られた重合体を添加する代わりに、AS樹脂(SAN樹脂、宇部サイコン(株)製SR30B、Mw117000)を増量した以外は、実施例5と同様にして、ポリカーボネート系の熱可塑性樹脂組成物を調製した。
【0042】(評価項目、及び評価方法)
<スパイラルフロー長さSFL(溶融流動性)>得られた組成物のスパイラルフロー長さSFLを、射出成形機(東芝機械(株)製IS−100)を用いて評価した。なお、成形温度は280℃、金型温度は80℃、射出圧力は98MPaとした。また、成形品の肉厚は2mm、幅は15mmとした。それぞれの実施例、比較例で得られた結果から、下記基準に基づいて評価した。
実施例1〜4、比較例1〜3の判定基準○:スパイラルフロー長さSFLが170mm以上であり、溶融流動性に優れる。
×:スパイラルフロー長さSFLが170mm未満であり、溶融流動性が不十分である。
なお、原料樹脂としてポリカーボネート樹脂のみを用いた比較例3において得られた組成物のスパイラルフロー長さSFLが148mmであったので、これの15%増以上(すなわち、170mm以上)を良好と判定した。
実施例5、比較例4の判定基準○:スパイラルフロー長さSFLが470mm以上であり、溶融流動性に優れる。
×:スパイラルフロー長さSFLが470mm未満であり、溶融流動性が不十分である。
なお、原料樹脂としてポリカーボネート樹脂を主成分とするポリカーボネート樹脂/ABS/ASアロイ樹脂のみを用いた比較例4において得られた組成物のスパイラルフロー長さSFLが409mmであったので、これの15%増以上(すなわち、470mm以上)を良好と判定した。
【0043】<耐表層剥離性(耐剥離性)>得られた組成物を用い、射出成形機(東芝機械(株)製IS−100)により、1 辺が10cmで厚みが2mmの平板成形品を得た。なお、成形温度は280℃、金型温度は80℃とした。得られた成形品の突き出しピン跡にカッターナイフで切り込みを入れ、表層の剥理状態を目視により観察し、下記基準に基づいて評価した。
判定基準○:表層剥離が見られず、耐剥離性に優れる。
×:表層剥離が見られ、耐剥離性が不十分である。
【0044】<荷重たわみ温度(耐熱性)>得られた組成物を用い、射出成形機(東芝機械(株)製IS−100)により、肉厚1/4インチの試験片を得た。得られた成形品の荷重たわみ温度をASTM D648に準拠して測定した。なお、アニールは行わず、荷重は1.82MPaとした。得られた結果から、下記基準に基づいて評価した。
判定基準○:荷重たわみ温度が90℃以上であり、耐熱性に優れる。
×:荷重たわみ温度が90℃未満であり、耐熱性が不十分である。
【0045】<アイゾット(Iz)衝撃強度(耐衝撃性)>得られた組成物を用い、射出成形機(東芝機械(株)製IS−100)により、肉厚1/8インチの試験片を得た。得られた成形品のIz衝撃強度をASTM D256に準拠して測定した。なお、測定温度は23℃とした。得られた結果から、下記基準に基づいて評価した。
判定基準○:Iz衝撃強度が700J/m以上であり、耐衝撃性に優れる。
×:Iz衝撃強度が700J/m未満であり、耐衝撃性が不十分である。
【0046】<難燃性>得られた組成物を用い、射出成形機(東芝機械(株)製IS−100)により、肉厚1/8インチの試験片を得た。得られた5個の成形品の難燃性を、アンダーライターズラボラトリーズインコーポレーションのブレチン94 材料分類のための燃焼試験UL94に示される試験法に基づいて評価した。なお、燃焼試験UL94における各等級の基準は概略下記の通りである。
V−0:点火炎を取り除いた後の平均火炎保持時間が5秒以下であり、かつ全試料とも脱脂綿に着火する微粒炎を落下しない。
V−1:点火炎を取り除いた後の平均火炎保持時間が25秒以下であり、かつ全試料とも脱脂綿に着火する微粒炎を落下しない。
V−2:点火炎を取り除いた後の平均火炎保持時間が25秒以下であり、かつこれらの試料が脱脂綿に着火する微粒炎を落下する。また、得られた結果から、下記基準に基づいて評価した。
判定基準○:燃焼試験UL94に基づく等級がV−0、又はV−1であり、難燃性に優れる。
×:燃焼試験UL94に基づく等級がV−2であり、難燃性が不十分である。
【0047】(結果)各実施例、比較例において得られた評価結果を表2、表3に示す。表2に示すように、ポリカーボネート樹脂95質量部に対して、ポリカーボネート樹脂と相溶性又は親和性があり、質量平均分子量が10000以上60000未満の重合体(A−1)〜(A−4)のうちいずれかを5質量部添加した実施例1〜4において得られた熱可塑性樹脂組成物のスパイラルフロー長さSFLは、比較例3において得られたポリカーボネート樹脂のみからなる熱可塑性樹脂組成物に比較して、15%以上向上しており、重合体(A−1)〜(A−4)がエンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物の溶融流動性改良剤として機能し、重合体(A−1)〜(A−4)を添加することにより、エンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物の溶融流動性を著しく向上できることが判明した。また、実施例1〜4において得られた熱可塑性樹脂組成物の成形品は、耐剥離性、耐熱性、耐衝撃性、難燃性に優れ、重合体(A−1)〜(A−4)を添加しても、エンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物の本来の特性を損ねないことが判明した。
【0048】また、ポリカーボネート樹脂を主成分とするポリカーボネート樹脂/ABS/ASアロイ樹脂95質量部に対して、ポリカーボネート樹脂と相溶性又は親和性があり、質量平均分子量が10000以上60000未満の重合体(A−1)を5質量部添加した実施例5においても、得られた熱可塑性樹脂組成物は溶融流動性に優れると共に、得られた成形品は、耐剥離性、耐熱性、耐衝撃性、難燃性に優れることが判明した。
【0049】これに対して、ポリカーボネート樹脂に対して、重合体(A−1)〜(A−4)の代わりに、ポリカーボネート樹脂と相溶性又は親和性があるが、質量平均分子量が10000未満の重合体(B−1)を添加した比較例1では、エンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物の溶融流動性を向上させることができたものの、得られた成形品の耐衝撃性が著しく低下した。また、重合体(A−1)〜(A−4)の代わりに、AS樹脂を添加した比較例2では、得られた熱可塑性樹脂組成物の成形品が耐剥離性、耐熱性、耐衝撃性、難燃性に優れていたものの、溶融流動性を十分に向上させることができなかった。
【0050】また、ポリカーボネート樹脂を主成分とするポリカーボネート樹脂/ABS/ASアロイ樹脂に対して、重合体(A−1)を添加しなかった比較例4では、エンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物の溶融流動性を十分に向上させることができず、得られた成形品の耐衝撃性が低下した。
【0051】以上の結果から、ポリカーボネート樹脂と相溶性又は親和性があり、質量平均分子量が10000以上60000未満の重合体(A−1)〜(A−4)を添加することにより、エンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物の本来の特性を損ねることなく、溶融流動性を著しく向上できることが判明した。なお、実施例1〜5では、溶融流動性改良剤として、重合体(A−1)〜(A−4)のうちいずれかのみを添加する場合について説明したが、本発明者は、重合体(A−1)〜(A−4)を主成分とする溶融流動性改良剤を用いても、同様の効果が得られることを確認している。
【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、エンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物に添加することにより、得られる成形品が耐熱性、耐剥離性、耐衝撃性、難燃性等に優れるというエンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物の本来の特性を損なうことなく、溶融流動性を向上させることが可能な溶融流動性改良剤を提供することができる。また、本発明によれば、得られる成形品が耐熱性、耐剥離性、耐衝撃性、難燃性等に優れると共に、溶融流動性(成形加工性)に優れたエンジニアリングプラスチックを含有する熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
【住所又は居所】東京都港区港南一丁目6番41号
【出願日】 平成14年2月4日(2002.2.4)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外6名)
【公開番号】 特開2003−226802(P2003−226802A)
【公開日】 平成15年8月15日(2003.8.15)
【出願番号】 特願2002−27371(P2002−27371)