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【発明の名称】 難燃性樹脂組成物およびそれを用いた絶縁電線
【発明者】 【氏名】石田 克義
【住所又は居所】東京都江東区木場一丁目5番1号 株式会社フジクラ内

【氏名】鈴木 淳
【住所又は居所】東京都江東区木場一丁目5番1号 株式会社フジクラ内

【氏名】村山 元久
【住所又は居所】東京都江東区木場一丁目5番1号 株式会社フジクラ内

【要約】 【課題】燃焼時にハロゲン化水素ガスなどの有毒ガスの発生がなく、高度の難燃性を持ち、引張強度、伸びおよび柔軟性にすぐれた難燃性樹脂組成物を提供することにある。

【解決手段】ポリエチレン20〜60重量部と、極性基を持つエチレン系共重合体20〜70重量部と、ポリプロピレン5〜20重量部と、相溶化樹脂5〜30重量部からなるベース樹脂100重量部に対して、水酸化マグネシウム30〜80重量部、水酸化アルミニウム30〜80重量部および難燃助剤を10重量部以下配合する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】ポリエチレン20〜60重量部と、極性基を持つエチレン系共重合体20〜70重量部と、ポリプロピレン5〜20重量部と、相溶化樹脂5〜30重量部からなるベース樹脂100重量部に対して、水酸化マグネシウム30〜80重量部、水酸化アルミニウム30〜80重量部および難燃助剤を10重量部以下配合してなる難燃性樹脂組成物。
【請求項2】エチレン−プロピレン共重合体またはエチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体10〜30重量部をベース樹脂中に含む請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】請求項1または2に記載の難燃性樹脂組成物を被覆材として用いた絶縁電線。
【請求項4】ベース樹脂がゲル分率5〜75%に架橋されている請求項3に記載の絶縁電線。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明はノンハロゲン難燃性樹脂組成物およびこれを用いた、配電盤の内部配線、発電機および電動機などのリード線として使用される絶縁電線(以下、口出し線と略す)に関するものであり、特に伸び、引張強度、柔軟性を改善したものである。
【0002】
【従来の技術】配電盤の内部、発電機および電動機周りなどの高温雰囲気で使用される電線は耐熱性が要求され、更に配線時の取り回しおよび端末の口出しが容易でなければならない。そのため絶縁体のベース樹脂としては低密度ポリエチレン(以下、LDPEと略す)、直鎖状低密度ポリエチレン(以下、LLDPEと略す)などの柔軟なポリエチレンが使用されている。難燃性が要求される場合には、少量の添加で難燃効果の大きいことから、ハロゲン系の難燃剤が使用されている。
【0003】しかし、ハロゲン系の難燃剤を使用しているため、火災時にハロゲン化水素などの有毒ガスが発生する欠点がある。また、廃却時に焼却処理されると発生するハロゲン化水素などの有毒の腐食性ガスにより、大気を汚染し、また焼却炉を傷めなるなどの欠点がある。そこで、最近では無公害型の難燃剤として水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの無機金属化合物の水和物を添加する方法が検討されている。
【0004】しかし、難燃剤として無機金属化合物の水和物を添加する方法においては、高度の難燃性を得るためには、多量の難燃剤を添加する必要があり、LDPE,LLDPEなどの結晶性ポリオレフィンのみをベース樹脂とした難燃性樹脂組成物では、引張強度および伸びが低下し、口出し線としての要求特性を満たすことができない欠点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明における課題は、燃焼時にハロゲン化水素ガスなどの有毒ガスの発生がなく、高度の難燃性を持ち、引張強度、伸びおよび柔軟性にすぐれた難燃性樹脂組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】かかる課題は、ポリエチレン20〜60重量部と、極性基を持つエチレン系共重合体20〜70重量部と、ポリプロピレン5〜20重量部と、相溶化樹脂5〜30重量部からなるベース樹脂100重量部に対して、水酸化マグネシウム30〜80重量部、水酸化アルミニウム30〜80重量部および難燃助剤を10重量部以下配合してなる難燃性樹脂組成物で解決できる。また、エチレン−プロピレン共重合体またはエチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体10〜30重量部をベース樹脂中に加えることにより、柔軟性を向上させることができる。さらに、この難燃性樹脂組成物を電線の被覆材として用いることができる。さらに、該被覆材を架橋して電線の耐熱性を高めることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳しく説明する。本発明の難燃性樹脂組成物のベース樹脂としては、ポリエチレンと、極性基をもつエチレン系共重合体と、ポリプロピレンと、相溶化樹脂のブレンド樹脂が用いられる。
【0008】このブレンド樹脂の第1の成分であるポリエチレンとしてはLDPE,LLDPE、超低密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレン(以下、HDPEと略す)の1種または2種以上の混合物が用いられる。これらのポリエチレンの中でもLDPEが柔軟性に優れていることから好ましい。
【0009】極性基を持つエチレン系共重合体としてはエチレン−エチルアクリレート共重合体(以下、EEAと略す)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと略す)、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、これらをマレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸で変性したものの1種または2種以上の混合物が用いられる。
【0010】これらの極性基を持つエチレン系共重合体の中でもEEAがポリエチレンとの相溶性に優れていることから好ましい。EEAとしては、エチルアクリレート含有量が15〜50wt%、メルトフローレート0.01〜10のものが好ましい。
【0011】ポリプロピレンはメルトフローレート0.05〜10のポリプロピレンが、難燃性樹脂組成物の耐熱性、柔軟性を向上させることから、好ましい。
【0012】相溶化樹脂としては、結晶性オレフィン樹脂−エチレン−ブチレン−結晶性オレフィン樹脂の構造をもつブロック共重合体(以下、CEBCと略す)が好ましい。市場流通品としては、JSR株式会社製の「DYNARON 6200P」(商品名)などがあげられる。
【0013】ベース樹脂中の各成分の配合割合は、ベース樹脂全量を100重量部としたときに、ポリエチレンが20〜60重量部、極性基を持つエチレン系共重合体20〜70重量部、ポリプロピレン5〜20重量部、相溶化樹脂5〜30重量部とされる。ポリエチレンが20重量部未満では引張強度が低下し、60重量部を越えると柔軟性が低下する。極性基を持つエチレン系共重合体が20重量部未満では柔軟性が低下し、70重量部を越えると引張強度が低下する。ポリプロピレンが5重量部未満では耐熱性が不足し、20重量部を越えると柔軟性が不足となる。相溶化樹脂が5重量部未満では混合された樹脂が相分離するため伸びが低下し、30重量部を越えると耐熱性が低下する。
【0014】該ベース樹脂にエチレン−プロピレン共重合体またはエチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体、またはこれらを不飽和カルボン酸で変性したものを10〜30重量部添加してもよい。 これらを添加することにより、難燃性樹脂組成物の柔軟性を更に向上させることができる。10重量部未満では柔軟性の向上効果が表れず、30重量部を越えると耐熱性が不足となる。
【0015】難燃剤としては、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムが配合される。配合量はベース樹脂100重量部に対して、水酸化マグネシウム30〜80重量部および水酸化アルミニウム30〜80重量部とされる。さらに、水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムを合計した配合量を60〜120重量部とすることが好ましい。60重量部未満では、難燃性が十分得られず、120重量部を越えると引張強度が低下する。
【0016】また、難燃剤の水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムは、ベース樹脂に対する親和性を高めるため,ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸などの高級飽和脂肪酸、ビニルシラン、エポキシシラン、アミノシランなどのシランカップリング剤、チタネートカップリング剤などを用いて表面処理されたものを使用してもよい。
【0017】この難燃性樹脂組成物には、難燃助剤を加えて水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムの配合量を減らし、該組成物の引張強度の低下を抑えることができる。この難燃助剤としては、シリコーンパウダー、シリコーンガムなどのシリコーン化合物、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛などの亜鉛化合物、赤リン、ポリリン酸アンモニウムなどのリン化合物、炭酸カルシウム、水酸化カルシウムなどのカルシウム化合物などが用いられる。
【0018】この難燃助剤の配合量は、ベース樹脂100重量部に対して10重量部以下の範囲で、要求される難燃度合いにより決められる。10重量部を越えると、引張強度が低下する。
【0019】本発明において、本発明の難燃性樹脂組成物の物性を損なわない範囲で、酸化防止剤、着色剤、銅害防止剤、滑剤などを添加してもよい。
【0020】また、この難燃性樹脂組成物は架橋して使用することもでき、シラン架橋、化学架橋、電子線架橋などの架橋方式をとることができる。
【0021】本発明の絶縁電線は、上述の難燃性樹脂組成物を電線、ケーブルの絶縁体、シースなどの被覆材として押出し被覆してなるものである。また、該難燃性樹脂組成物のベース樹脂成分のポリエチレンとして、シラノール基をグラフトしたLDPEとシラン架橋の触媒となるジブチル錫ジラウレートを練りこんだHDPE(シラン架橋用触媒マスターバッチ)の混和物を用いることにより被覆材を架橋し、電線、ケーブルの耐熱性、引張強度を高めてもよい。
【0022】この架橋によるベース樹脂のゲル分率は、5〜75%とすることが良く、5%未満では耐熱性が不足し、75%を越えると伸びが低下する。
【0023】このような配合組成の難燃性樹脂組成物にあっては、ベース樹脂の一成分として極性基を持つエチレン系共重合体を使用しているので,柔軟性に優れている。また、ベース樹脂の一成分として、ポリプロピレンを使用しているので耐熱性および柔軟性が向上する。 また、ベース樹脂の一成分として相溶化樹脂(CEBC)を使用しているので、混合された樹脂同士の親和性が高められ、樹脂組成物の機械的特性の低下が抑えられる。
【0024】さらに、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムおよび難燃助剤を配合することで、高度の難燃性が得られる。また、エチレン−プロピレン共重合体またはエチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体を添加することで、樹脂組成物の柔軟性が更に向上する。
【0025】本発明の絶縁電線では、したがって柔軟性に優れ、さらには高い難燃性を有し、焼却処分しても有害なハロゲン含有ガスの発生がない。また、被覆材を架橋した絶縁電線では、被覆材の耐熱性、機械的特性が高いものとなる。
【0026】以下、具体例を示す。表1、表2に示す配合組成の樹脂組成物をロールによって混練し、押出機によって断面積2mm2の軟銅線上に厚さ0.8mmで押出し成型し、絶縁電線とした。この絶縁電線について引張強度、伸び、加熱変形率、硬度、難燃性を評価した。
【0027】引張強度および伸びはJIS C3005により測定した。引張強度は10MPa以上を、伸びは200%以上を合格とした。加熱変形率はJIS C3005により温度120℃、荷重1kgの条件で測定し、40%以下を合格とした。硬度はショアD硬度計により測定し、50以下を合格とした。難燃性はJISC3005の60度傾斜燃焼試験により評価した。結果を表1に示す。
【0028】表1において、使用材料は次の通りである。
「シラン架橋用LDPE*1」 シラノール基をグラフトしたメルトフローレート0.7の低密度ポリエチレン「触媒マスターバッチ*2」 ジブチル錫ジラウレートを練り込んだメルトフローレート3の高密度ポリエチレン「HDPE*3」 メルトフローレート0.3の高密度ポリエチレン「EEA*4」 エチルアクリレート含有率25%、メルトフローレート0.7のエチレン−エチルアクリレート共重合体【0029】「PP*5」 メルトフローレート1.0のポリプロピレン「CEBC*6」 DYNARON 6200P(JSR株式会社製)
「EPゴム*7」 エチレン含有量70%のエチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体「水酸化マグネシウム*8」 ステアリン酸で表面処理をした水酸化マグネシウム「水酸化アルミニウム*9」 ステアリン酸で表面処理をした水酸化アルミニウム「酸化防止剤*10」 イルガノックス1010(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の難燃性樹脂組成物は、ポリエチレン20〜60重量部と、極性基を持つエチレン系共重合体20〜70重量部と、ポリプロピレン5〜20重量部と、相溶化樹脂5〜30重量部からなるベース樹脂100重量部に対して、水酸化マグネシウム30〜80重量部、水酸化アルミニウム30〜80重量部および難燃助剤を10重量部以下配合してなるものであるので、機械的特性、柔軟性に優れ、さらには高い難燃性を有し、焼却処分しても有害なハロゲン含有ガスの発生がないなどの効果がある。
【0033】また、さらにエチレン−プロピレン共重合体またはエチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体10〜30重量部をベース樹脂中に含むものにあっては、柔軟性がさらに向上する効果がある。
【0034】また、本発明の絶縁電線は、上記の難燃性樹脂組成物を被覆材としたものであるので、同様の効果を示すことになり、被覆材を構成する樹脂分を架橋したものでは、更に耐熱性も向上したものとなる。
【出願人】 【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
【住所又は居所】東京都江東区木場1丁目5番1号
【出願日】 平成13年11月26日(2001.11.26)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外3名)
【公開番号】 特開2003−160702(P2003−160702A)
【公開日】 平成15年6月6日(2003.6.6)
【出願番号】 特願2001−360049(P2001−360049)