| 【発明の名称】 |
超微粒子を含有する樹脂組成物及びその成形体 |
| 【発明者】 |
【氏名】加和 学 【住所又は居所】神奈川県横浜市青葉区鴨志田町1000番地 三菱化学株式会社内
【氏名】江崎 聡 【住所又は居所】茨城県稲敷郡阿見町中央八丁目3番1号 三菱化学株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】高度の透明性、優れた耐光性及び低い吸水率を併せ持つ樹脂組成物成形体を提供する。
【解決手段】半導体結晶である内核(コア)及びその表面に設けられたアルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、スズ及びアンチモンから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物である外殻(シェル)からなる数平均粒径1〜50nmのコアシェル型半導体超微粒子を含有し、ナトリウムD線波長における光路長1mm当たりの光線透過率が70%以上であり、ASTM D570規格による60℃、相対湿度90%条件で測定される飽和吸水率が0.4重量%以下である樹脂組成物。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 半導体結晶である内核(コア)及びその表面に設けられたアルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、スズ及びアンチモンから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物である外殻(シェル)からなる数平均粒径1〜50nmのコアシェル型半導体超微粒子を含有し、ナトリウムD線波長における光路長1mm当たりの光線透過率が70%以上であり、ASTM D570規格による60℃、相対湿度90%条件で測定される飽和吸水率が0.4重量%以下である樹脂組成物。 【請求項2】 半導体結晶が酸化チタン結晶、酸化亜鉛結晶及び酸化セリウム結晶のいずれかである請求項1に記載の樹脂組成物。 【請求項3】 窒素雰囲気下600℃において120分間熱分解させて得る残渣が、該熱分解前の重量の1〜60%である請求項1又は2に記載の樹脂組成物。 【請求項4】 粒径が60nm以上の超微粒子の割合が、全超微粒子の体積に対して10体積%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。 【請求項5】 波長350nmにおける光路長1mm当たりの光線透過率が、30%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。 【請求項6】 ガラス転移温度が、150℃以上である請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。 【請求項7】 コアシェル型半導体超微粒子が、有機配位子を結合したものである請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。 【請求項8】 有機配位子が、アミノ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基のいずれかの官能基を分子構造中に含有するものである請求項7に記載の樹脂組成物。 【請求項9】 樹脂マトリクスを構成する高分子が、エステル結合、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合、尿素結合、炭素−炭素2重結合のいずれかの官能基を分子構造中に含有するものである請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。 【請求項10】 アミノ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基のいずれかの官能基を分子構造中に含有する金属アルコキシド類を、半導体結晶を主体とし数平均粒径が1〜50nmである超微粒子に結合する工程を必須とする請求項1〜9に記載の樹脂組成物の製造方法。 【請求項11】 請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物を主体とし、光路長1mm当たりの複屈折の平均が10nm以下である樹脂組成物成形体。 【請求項12】 最小厚みが0.1mm以上である請求項11に記載の樹脂組成物成形体。 【請求項13】 40℃の温水中に1時間浸漬し次いで23℃相対湿度50%の空気雰囲気下に1週間静置する温水試験前後の寸法変化率が0.05%以下である、請求項11又は12に記載の樹脂組成物成形体。 【請求項14】 樹脂組成物が架橋樹脂組成物である請求項11〜13のいずれかに記載の樹脂組成物成形体。 【請求項15】 架橋樹脂組成物が、重合性単量体を含有する重合性液体混合物を重合させてなるものである請求項14に記載の樹脂組成物成形体。 【請求項16】 重合性単量体が下記一般式A及び/又はBを主体とするものである請求項15に記載の樹脂組成物成形体。 成分(A):下記一般式(1)で表される含脂環骨格ビス(メタ)アクリレート。 【化1】
(一般式(1)において、RaおよびRbはそれぞれ独立してそれぞれ水素原子又はメチル基を、RcおよびRdはそれぞれ独立して炭素数6以下のアルキレン基を、xは1又は2を、yは0または1を、それぞれ表す。) 成分(B):下記一般式(2)で表される硫黄原子を有するビス(メタ)アクリレート。 【化2】
(一般式(2)において、RaおよびRbは前記一般式(1)の場合と同一であり、Reは炭素数1〜6のアルキレン基を表す。各Arはそれぞれ炭素数が6〜30であるアリーレン基又はアラルキレン基を表し、これらの水素原子はフッ素以外のハロゲン原子で置換されていても良い。各Xはそれぞれ酸素原子または硫黄原子を表し、各Xが全て酸素原子の場合、各Yのうち少なくとも一つは硫黄原子又はスルホン基(−SO2−)を、各Xのうち少なくとも1つが硫黄原子の場合、各Yはそれぞれ硫黄原子、スルホン基、カルボニル基(−CO−)、並びに炭素数1〜12のアルキレン基、アラルキレン基、アルキレンエーテル基、アラルキレンエーテル基、アルキレンチオエーテル基及びアラルキレンチオエーテル基のいずれかを表し、j及びpはそれぞれ独立して1〜5の整数を、kは0〜10の整数を表す。またkが0の時はXは硫黄原子を表す。) 【請求項17】 請求項11〜16のいずれかに記載の樹脂組成物成形体からなる光学部材。 【請求項18】 超微粒子が分散した熱可塑性樹脂組成物である原料塊を、該熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度よりも10〜80℃高い温度条件で保温しながら加圧成形することを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の樹脂組成物成形体の製造方法。 【請求項19】 加圧成形圧力が10〜20000g/cm2である請求項18に記載の樹脂組成物成形体の製造方法。 【請求項20】 加圧成形の際、原料塊又は樹脂組成物成形体の周囲が不活性ガス雰囲気又は真空である請求項18又は19に記載の樹脂組成物成形体の製造方法。 【請求項21】 加圧成形の最後の1分間以上における加圧成形圧力の時間平均が0〜1000(g/cm2 )の範囲である請求項18〜20のいずれかに記載の樹脂組成物成形体の製造方法。 【請求項22】 加圧成形後、樹脂組成物成形体を挟んだ面から剥離する温度D(℃)が、熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度Tg(℃)に対して、下記数式(A)の範囲内にある請求項18〜21のいずれかに記載の樹脂組成物成形体の製造方法。 【数1】Tg>D≧Tg−120 (A) 【請求項23】 熱又は活性エネルギー線によって重合性液体混合物を硬化させることを特徴とする請求項15又は16に記載の樹脂組成物成形体の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、半導体超微粒子を均質に分散し優れた透明性及び耐光性を有する樹脂組成物に関する。本発明の樹脂組成物は、半導体超微粒子の有する特性、例えば紫外線吸収能や優れた耐熱性等を有するので様々な光学部材用途に利用される。 【0002】 【従来の技術】無機塩、半導体及び金属等の非有機物質の性質を、優れた成形加工性を有する材料の特性として利用する場合に、一般に有機樹脂材料に該非有機物質を微粒子として分散する手法が用いられる。特に、熱可塑性樹脂の組成物とすることは、射出成形等の生産性に優れた製造方法の使用を可能とするので産業上好ましい。 【0003】高度の透明性を要求される光学材料にかかる手法を利用する場合、該微粒子は一般に樹脂マトリクスとの屈折率差を有するので、光散乱を低減するためにはその粒径を少なくとも使用する光の波長よりも小さくする必用がある。更に、レイリー散乱による透過光強度の減衰を低減するためには、超微粒子化、特に粒径が10nm未満程度のナノ粒子をできる限り狭い粒径分布をもって調製して分散することが好ましく、こうしたナノ粒子の合成自体が最先端の研究課題となっているのが現状である。 【0004】レンズ、プリズム、ファイバ、光カプラ、透明パネル、透明基板等の光学部材には、長時間の光照射に耐える耐光性(特に耐紫外線性)が求められる。この点は、有機樹脂材料をガラス等の無機材料と比較した場合の一般的弱点である。こうした有機樹脂材料の耐光性の弱点を改良するために、従来、樹脂材料の透明性を損なわない相溶性を有する有機物である紫外線吸収剤の添加が行われているが、該紫外線吸収剤が徐々に樹脂マトリクス中で分解し黄ばみや濁りを生じるという問題があった。 【0005】こうした問題を解決する目的で、有機物に比べて耐久性に優れると考えられる酸化亜鉛や酸化チタン等の紫外線吸収能を有する半導体超微粒子を有機樹脂材料中に分散する技術が提案されている。特開平5−221640号公報には、酸化チタン超微粒子の表面にトリアルコキシシラン類を結合させて樹脂マトリクスに分散させた樹脂組成物に関する技術が開示されている。特開平11−43556号公報には、半導体超微粒子に表面修飾を施し、更にその表面修飾の持つ官能基と樹脂とを反応させる(特に溶液中での高分子反応が好ましい)ことにより、粗大粒子の生成を抑制しかつ凝集を抑えつつ半導体超微粒子を分散させた透明性に優れた樹脂組成物を得る方法が報告されている。特開2000−230107号公報には、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の酸化物超微粒子の表面に重合性を有する有機化合物等を結合し架橋樹脂マトリクスに分散させる技術が開示されている。特開2000−95967号公報及び特開2000−281934号公報には、酸化物超微粒子の表面に変性メタクリレート類等で処理することにより樹脂マトリクスへの分散性を向上させる技術が開示されている。特開2001−2417号公報には、酸化チタン超微粒子を変性ポリシロキサン類を用いて樹脂マトリクスへの分散性を向上させる技術が開示されている。しかしながらこれらいずれの公報が開示する樹脂組成物技術は、紫外線吸収コーティングや紫外線カット用化粧品等の用途には有効な分散技術であるが、比較的厚みのある成形体である上記光学部材とした場合には透明性が不十分であった。 【0006】酸化亜鉛や酸化チタン等の半導体超微粒子を有機樹脂材料中に分散させて利用する場合に生じるもう1つの技術課題は、半導体結晶表面において有機物を分解する光触媒活性の抑制である。この光触媒活性とは、半導体結晶が光を吸収して生じるエキシトン(励起子、即ち電子と正孔の対)がある確率で結晶表面において有機物との電子又は正孔の授受反応(酸化還元反応)を起こし、この反応により該有機物を分解するという活性と理解されている。 【0007】このような光触媒活性を抑制する方法がいくつか提案されている。特開昭63−225532号公報には、粒径が1〜50nmである酸化チタン結晶にCo,V,Cr,Mn,Cu,Sb,W,Pt,Hg,Pb,Biから選ばれる遷移金属元素をドープすることにより、光触媒活性が抑制されかつ耐摩耗性、紫外線遮蔽、耐光性及び透明性が改良された塗料を得るという技術が開示されている。特開平08−59238号公報には、酸化亜鉛微粒子をアルミニウムキレート化合物等により表面処理することにより光触媒活性を抑制するとともに有機マトリクスへの分散性を付与する技術が開示されている。特開平11−286619号公報には、粒径が2〜1000nmの酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の酸化物超微粒子の表面に配位アニオン重合触媒活性を持たせポリオレフィン樹脂系の高分子被膜を形成させることにより、酸化物超微粒子の光触媒活性を低減させながら有機物マトリクスへの分散性を向上させる技術が開示されている。特開2000−264632号公報には、3〜5電子ボルトのバンドギャップを有し粒径が10〜100nmである金属酸化物微粒子にポリオキシアルキルエーテル鎖を有する界面活性剤を吸着させ更にポリシロキサンの薄層コーティングを行うことで、光触媒活性を抑制しながら分散安定性を向上させる技術が開示されている。特開2001−26423号公報には、四塩化チタンから合成される粒径が30nm以下(好ましくは5〜30nm)であるルチル型2酸化チタン超微粒子の表面をアルコキシシランまたはアミノアルコキシシランで被覆処理することで、有機成分を劣化させない高耐候性を該超微粒子に付与する技術が開示されている。特開2001−58821号公報には、酸化亜鉛微粒子にケイ酸亜鉛からなる被覆層を施すことで光触媒活性が抑制され、特に酸化亜鉛結晶に鉄又はコバルトを固溶させるとこの効果が大きく、こうした微粒子は分散性を向上させるために有機ケイ素化合物や金属石鹸などで更に処理可能である旨開示されている。しかしながら、これらの技術は光触媒活性の抑制に効果を発揮するものの、有機樹脂マトリクスへの分散性が依然不足しており、上記光学部材とした場合に十分な透明性を有する樹脂組成物を得ることはできなかった。 【0008】上記光触媒活性の抑制方法に関する各公報のように、シリカ等の酸化物外殻(シェル)を半導体超微粒子の表面に設けることは、例えばS.Changら;J.Am.Chem.Soc.,116巻,6739−6744(1994)及びS.C.Farmerら;Polym.Mater.Sci.Eng,82巻,237−238(2000)に報告のあるシリカ被覆された硫化カドミウム超微粒子(CdSナノ結晶の粒径サイズは約6nm、シリカ被覆超微粒子の平均粒径は52nm)の合成、並びにH.Liら;Journal of Nanoparticle Research,3巻,157−160(2001)に報告のあるシリカ被覆された酸化亜鉛超微粒子の合成においても知られている。これら3つの文献が教示する技術によっては透明性に優れた樹脂組成物は依然得られなかったので、これを改良した技術として、S.C.Farmerら;Polym.Prepr.(Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem.),42巻,578−579(2001)には、上記シリカ被覆された硫化カドミウム超微粒子表面に固定された重合開始点からのリビングラジカル重合によりポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂を生成させることにより、光触媒活性が抑制され強度に優れた塗布膜をテトラヒドロフラン溶液から与える樹脂組成物が報告された。しかし、樹脂マトリクスはアクリル系樹脂に限られており、飽和吸水率が比較的高いことが問題であった。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】本発明は上記実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体超微粒子を均質に分散して含有しており、優れた透明性、耐光性(特に耐紫外線性)及び低吸水性を兼備する樹脂組成物、それからなる成形体とその用途及び製造方法を提供することに存する。 【0010】 【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、特定元素の酸化物である外殻(シェル)を有する半導体超微粒子を特定の粒径に調製するとともにその表面に透明樹脂マトリクスへの相溶性又は反応性を付与する有機配位子を結合させて該樹脂マトリクスへの分散性を向上させたところ、非常に優れた透明性、耐紫外線性及び低吸水性を有する樹脂組成物を得ることができ、かかる樹脂組成物を特定の温度条件で保温プレス成形する熱可塑成形法又は特定の重合性単量体を使用する架橋樹脂成形法により上記3つの特徴に合わせて光学歪みが極度に低減された成形体を得ることができることを見いだし、本発明に到達した。 【0011】即ち、本発明の第1の趣旨は、半導体結晶である内核(コア)及びその表面に設けられたアルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、スズ、アンチモンから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物である外殻(シェル)からなる数平均粒径1〜50nmのコアシェル型半導体超微粒子を含有し、ナトリウムD線波長における光路長1mm当たりの光線透過率が70%以上であり、ASTM D570規格による60℃、相対湿度90%条件で測定される飽和吸水率が0.4重量%以下である樹脂組成物、に存する。 【0012】本発明の第2の趣旨は、上記樹脂組成物からなる成形体であって、光路長1mm当たりの複屈折の平均が10nm以下である樹脂組成物成形体、に存する。本発明の第3の趣旨は、上記樹脂組成物成形体からなる光学部材、に存する。本発明の第4の趣旨は、超微粒子が分散した熱可塑性樹脂組成物である原料塊を、該熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度よりも10〜80℃高い温度条件で保温しながら加圧成形することを特徴とする上記樹脂組成物成形体の製造方法、に存する。 【0013】本発明の第5の趣旨は、熱又は活性エネルギー線によって重合性液体混合物を硬化させることを特徴とする上記樹脂組成物成形体の製造方法、に存する。 【0014】 【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。 [樹脂組成物]本発明の樹脂組成物は、後述する透明樹脂マトリクス中に、半導体結晶である内核(以下「半導体コア」と称する)及びその表面に設けられたアルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、スズ、アンチモンから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物である外殻(以下「酸化物シェル」と称する)からなる数平均粒径1〜50nmのコアシェル型半導体超微粒子を含有し、ナトリウムD線波長における光路長1mm当たりの光線透過率が70%以上であり、ASTM D570規格による60℃、相対湿度90%条件で測定される飽和吸水率が0.4重量%以下であるものである。 【0015】上記半導体結晶については後述するが、本発明の課題の1つである耐光性(特に耐紫外線性)を付与する役目を果たす。つまり、半導体結晶のバンドギャップに応じた光(特に波長220〜400nmである紫外線)を吸収する性質により、樹脂マトリクスの光劣化を抑制又は防止する役目を果たす。上記酸化物シェルは、半導体コアの光触媒活性を封鎖する役目を主に果たす。これは、半導体コアが紫外線等の電磁波を吸収して生成するエキシトンが樹脂マトリクスを酸化還元反応により分解する作用を遮断する障壁として作用する機構によるものと考えられる。上記酸化物シェルのもう1つの役割は、半導体コアを外界からの化学反応から遮蔽して安定に保つことである。例えば、水、酸(塩酸、硫酸、酢酸等)、塩基(苛性アルカリ等)、硫化水素等の半導体結晶との反応性を有する可能性がある活性化学種を遮蔽することにより、上記半導体コアの性能を保護する働きが推定される。 【0016】かかる酸化物シェルは、公知の金属酸化物合成方法、例えば蒸着法、いわゆるゾル−ゲル法と呼ばれる金属アルコキシド類や、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、塩化物等のハロゲン化物等の金属塩類の加水分解縮合反応、後述するホットソープ法などにより形成される。本発明において好ましい酸化物シェルの形成方法は、生成するコアシェル型半導体超微粒子の2次凝集を抑制する点でゾル−ゲル法とホットソープ法であり、中でもテトラエトキシシランやテトラメトキシシラン及びこれらのオリゴマー等を利用できるゾル−ゲル法が最適である。本発明における酸化物シェルの化学組成として化学的安定性や合成の容易性の点で好ましく用いられるものは、珪素酸化物、アルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物であり、中でも珪素酸化物とアルミニウム酸化物が更に好ましく、珪素酸化物が最も好ましい。 【0017】本発明における「コアシェル型」なる術語は、任意数の半導体結晶を上記酸化物組成が包含している構造を意味する。即ち、1つの半導体結晶をシェルが包含した状態又は複数の半導体結晶をシェルが包含した状態のいずれでもよい。本発明におけるコアシェル型半導体超微粒子において、半導体コアはコアシェル型半導体超微粒子の表面にその一部を露出していないことが望ましい。これは、光触媒活性の高い半導体コアの露出によりコアシェル型半導体超微粒子全体の光触媒活性が増大する場合があるためである。1つのコアシェル型半導体超微粒子中に含有される半導体コアの個数に制限はないが通常1〜2000個であるが、半導体コアが半導体結晶としての性質(電子準位のバンド構造の形成等)を顕著に有する点で該半導体コアの粒径は1nm以上であるのが好ましいので、1つのコアシェル型半導体超微粒子中に含有される半導体コアの個数は好ましくは1〜1000個、より好ましくは1〜500個、更に好ましくは1〜100個である。 【0018】1つのコアシェル型半導体超微粒子における上記半導体コアの含有量(以下「粒子中コア含量」と短縮して記述する)には、上記半導体コアの露出により本発明の目的の1つである光触媒活性の抑制効果が著しく低下しない限りにおいて可及的に大きいことが、紫外線吸収能等の半導体コア固有の特性を顕著にするために好適である。一般に、与えられた樹脂組成物に含まれるコアシェル型半導体超微粒子の元素分析は、熱重量分析、有機元素分析、蛍光X線分析、固体発光分析、酸やアルカリに溶解させて分析する無機元素分析などの各種組成分析手法を組み合わせて可能である。従って、本発明においては、与えられたコアシェル型半導体超微粒子における粒子中コア含量を、半導体コアが含有する遷移金属元素と酸化物シェルが含有するアルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、スズ、アンチモンから選ばれる少なくとも1種の元素とのモル比(以下「コア:シェル元素比」と記述する)で評価する。このコア:シェル元素比の値は通常0.001〜10であり、その下限値は半導体コア固有の特性を顕著にする点で好ましくは0.01、更に好ましくは0.1であり、一方その上限値は光触媒活性の抑制効果の点で好ましくは8、更に好ましくは6である。 【0019】本発明において、コアシェル型半導体超微粒子に含有される半導体コアの粒径は通常0.5〜40nmであり、その下限値は半導体コア固有の特性を顕著にする点で好ましくは1nm、更に好ましくは2nmであり、一方その上限値は光触媒活性の抑制効果の点で好ましくは30nm、更に好ましくは20nmである。上記半導体超微粒子の数平均粒径が小さすぎると半導体コア固有の特性(例えば半導体の結晶性に起因するバンド構造の形成)が顕著でなくなる場合があり、逆に該数平均粒径が大きすぎると半導体超微粒子の凝集性が極端に増大して樹脂組成物の透明性や機械的強度が極端に低下したり量子効果による特性(例えば半導体結晶におけるエキシトン吸発光能)が顕著でなくなる場合がある。従って該数平均粒径の下限値は好ましくは1nm、より好ましくは2nm、更に好ましくは3nmであり、上限値は好ましくは40nm、より好ましくは30nm、更に好ましくは20nmである。なお、本発明の樹脂組成物の透明性の点で、粒径が60nm以上の超微粒子の割合は、全超微粒子の体積に対して通常10体積%以下、好ましくは5体積%以下、更に好ましくは3体積%以下である。 【0020】本発明における各種粒径測定や上記体積%の決定には、透過型電子顕微鏡(TEM)観察像より測定される数値を用いる。即ち、観察される超微粒子像と同面積の円の直径を該粒子像の粒径と定義する。こうして決定される粒径を用い、例えば公知の画像データの統計処理手法により該数平均粒径を算出するが、かかる統計処理に使用する超微粒子像の数(統計処理データ数)は可及的多いことが当然望ましく、本発明においては、再現性の点で無作為に選ばれた該粒子像の個数として最低でも50個以上、好ましくは80個以上、更に好ましくは100個以上とする。上記体積%の計算は、上記により決定される粒径を直径とする球の体積で換算する。 【0021】本発明の樹脂組成物の透明性を規定する上記ナトリウムD線波長における光路長1mm当たりの光線透過率(以下「D線透過率」と称する)が小さすぎると透明性は不十分となり光学部材としての使用に支障を来す場合があるので、該D線透過率の値は好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上、最も好ましくは89%以上である。 【0022】本発明の樹脂組成物は、ASTM D570規格による60℃、相対湿度90%条件で測定される飽和吸水率が0.4重量%以下であることを特徴とする。これは、後述するように光学部材として利用する場合にその吸湿による寸法変化を十分に小さくするためである。この飽和吸水率は、好ましくは0.3重量%以下、更に好ましくは0.2重量%以下である。かかる低吸水率は、単に低吸水性の樹脂マトリクスを使用することだけでは十分には達成されず、上記半導体超微粒子の分散により顕著となる予期しない特徴である。この理由は定かでないが、吸水性が実質的にない半導体結晶が混合された効果(体積分率で効くと予想される効果)だけでなく、樹脂マトリクスを構成する高分子鎖が半導体超微粒子が有する非常に大きな表面積に対して吸着し分子鎖の運動性がある程度制約されることにも関係するものと推測される。 【0023】本発明の樹脂組成物に使用される半導体超微粒子の形状は、後述する樹脂組成物成形体の総体としての線膨張係数の方向異方性を小さくする目的で、アスペクト比(長軸と短軸との比)が通常1〜10、好ましくは1〜5、更に好ましくは1〜3である。最も好ましいのは球状(即ちアスペクト比が1)である。上記半導体超微粒子は、複数種を併用してもよく、またその粒径分布に制限はなく例えば2山分布等の異なる粒径分布の半導体超微粒子を併用してもよい。 【0024】本発明の樹脂組成物を窒素雰囲気下600℃において120分間熱分解させて得る残渣は、該熱分解前の重量の通常1〜60%である。かかる残渣の量は与えられた樹脂組成物中の無機成分(半導体コアと酸化物シェルの和)の含有量を反映する指標でもある。上記残渣の量が少なすぎると半導体コアの特性が発現しにくくなる場合があるので該下限値は好ましくは3%、更に好ましくは5%である。一方、上記残渣の量が多すぎると本発明の樹脂組成物の透明性や機械的強度が極端に悪化する場合があるので該上限値は好ましくは50%、更に好ましくは40%である。かかる残渣の量の測定は、例えば、与えられた樹脂組成物を窒素雰囲気の電気炉中で加熱して行ってもよく、より簡便には窒素雰囲気における熱重量分析(TG)により行ってもよい。 【0025】本発明の樹脂組成物の吸光特性については適用する用途に応じ特に制限はないが、耐紫外線性や紫外線遮蔽性を必要とする用途においては、波長350nmにおける光路長1mm当たりの光線透過率(以下「350nm透過率」と称する)が50%以下であることが好ましい。ここで挙げた350nmという特定波長を指定する理由は、半導体結晶の基礎吸収により有機樹脂材料の光分解が顕著となる波長350nm以下の紫外線を有効に吸収することが可能であるため、該紫外線の吸収能評価指標として適切であることに存する。上記350nm透過率が大きすぎると本発明の樹脂組成物の耐紫外線性や紫外線遮蔽性が極端に低下する場合があるので、その上限値はより好ましくは30%、更に好ましくは15%、最も好ましくは5%である。 【0026】本発明の樹脂組成物の耐熱性については、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上であることが好ましい。このガラス転移温度が小さすぎると耐熱性は不十分となる場合があるので、該ガラス転移温度の値は好ましくは160℃以上、更に好ましくは170℃以上である。かかるガラス転移温度測定は、与えられた樹脂組成物の示差熱分析(DSC)、与えられた樹脂組成物の短冊状成形片の動的粘弾性試験(いわゆるtanδ測定)、あるいは熱機械的分析法(TMA)等の荷重下加熱による機械的変位を測定する軟化温度測定等、公知の方法により行うが、これら例示の複数の測定方法においてそれぞれ信頼できる測定値が異なるガラス転移温度を与える場合はそれらのうち最も高い測定値を採用する。 【0027】上記コアシェル型半導体超微粒子における酸化物シェルの厚みには光触媒活性の抑制効果を極端に低下させない限りにおいて制限はないが、通常0.5〜20nmである。光触媒活性の抑制効果の点で該下限値は好ましくは1nm、より好ましくは2nm、更に好ましくは3nmであり、一方半導体コア含量を増大させて吸光能を確保するために該上限値は好ましくは15nm、より好ましくは12nm、更に好ましくは10nmである。 【0028】本発明の樹脂組成物において、上記半導体超微粒子は有機配位子を結合していることがその分散性の点で好ましい。ここでいう有機配位子とは、超微粒子表面に結合する有機分子であり、後に詳述する。かかる有機配位子が、アミノ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基のいずれかの官能基を分子構造中に含有するものである場合、樹脂マトリクスとの反応性を有するので好ましく、これら官能基との反応性の点で好ましい樹脂マトリクスはこれを構成する高分子が、エステル結合、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合、尿素結合、炭素−炭素2重結合のいずれかの官能基を該高分子構造中に含有するものである。樹脂マトリクスを構成する樹脂については後述する。本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を著しく逸脱しない限りにおいて、各種添加剤を併用してもよい。かかる添加剤としては、例えば酸化防止剤、熱安定剤、あるいは光吸収剤等の安定剤類、ガラス繊維、アエロジル、シリカコロイド粒子、ガラスビーズ、マイカ、タルク、カオリン、粘土鉱物、金属繊維、金属粉、金属コロイド粒子等のフィラー類、炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛等の炭素材料、チタン酸バリウム等の誘電体(ナノ粒子も可能である)、帯電防止剤、可塑剤、離型剤、消泡剤、レベリング剤、沈降防止剤、界面活性剤、チクソトロピー付与剤等の改質剤類、顔料、染料、色相調整剤等の着色剤類等が例示される。これらの添加剤は、樹脂組成物を製造する際に混合しても良いし、後述する本発明の樹脂組成物成形体の成形時に添加することも可能である。これらの各種添加剤の添加量は用途に応じて適宜設定されるが、通常、10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。 【0029】[樹脂組成物の製造方法]本発明の樹脂組成物の製造方法に制限はないが、例えば、前記コアシェル型半導体超微粒子と熱可塑性樹脂との溶融又は溶液混合による方法、該コアシェル型半導体超微粒子と熱可塑性樹脂との溶融又は溶液混合により得るマスターバッチ(高濃度の組成物)を再度熱可塑性樹脂と溶融又は溶液混合する方法、該コアシェル型半導体超微粒子と樹脂マトリクス原料である重合性単量体との混合及び次いで行う重合反応による方法、上記マスターバッチと樹脂マトリクス原料である重合性単量体との混合及び次いで行う重合反応による方法等が挙げられる。 【0030】好ましい手順として、あらかじめ適切な有機配位子をコアシェル型半導体超微粒子の表面に結合させておく方法が挙げられる。この方法には、半導体結晶コアに上記ゾル−ゲル法等により酸化物シェルをまず形成させ次いで有機配位子を結合する方法、並びに酸化物シェルの形成反応時に有機配位子を共存させる方法があり、後者の方法に適する酸化物シェルの形成反応は、金属アルコキシド類を原料とする前記ゾル−ゲル法である。特に好ましい上記ゾル−ゲル法を利用する方法として、アミノ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基のいずれかの官能基を分子構造中に含有する金属アルコキシド類を、半導体結晶を主体とし数平均粒径が1〜50nmである超微粒子に結合する工程を必須とする方法が例示される。ここでいう「半導体結晶を主体とし数平均粒径が1〜50nmである超微粒子」とは、既に酸化物シェルを形成させたコアシェル型半導体超微粒子又は酸化物シェルの形成反応中の半導体超微粒子を意味する。樹脂マトリクスとの反応性及び樹脂組成物の化学的安定性の点で、上記金属アルコキシド類が含有する官能基として好ましいのは、アミノ基、メタクリロイル基及びエポキシ基であり、中でもアミノ基が最適である。 【0031】[樹脂組成物成形体]本発明の樹脂組成物成形体は、前記樹脂組成物を主体とし、その特徴を保持し、しかも光路長1mm当たりの複屈折の平均が10nm以下であるものである。ここでいう「平均」とは、与えられた成形体の少なくとも10の任意箇所における複屈折の測定値を、該測定における光路長に基づいて比例計算により光路長1mm当たりの値に換算したものであり、その測定箇所の数は平均値の信頼性の点で可及的に多いことが望ましい。上記複屈折の平均が大きすぎると本発明の樹脂組成物成形体の光学歪みが大きすぎて光学部材としての使用に支障を来す場合があるので、該複屈折の平均の値は好ましくは5nm以下、更に好ましくは3nm以下、最も好ましくは2nmである。かかる複屈折の測定は市販の複屈折計で行ってよく、その測定温度条件の許容範囲は20〜25℃である。 【0032】本発明の樹脂組成物成形体における最小厚みは通常0.1mmでありこれが小さすぎると樹脂組成物成形体の機械的強度が極端に低下する場合があるので、この最小厚みは好ましくは0.5mm、更に好ましくは1mmである。また、本発明の樹脂組成物成形体における最大厚みは通常200mmでありこれが大きすぎると樹脂組成物成形体の総体としての光線透過率が極端に低下する場合があるので、この最大厚みは好ましくは100mm、更に好ましくは50mm程度である。 【0033】本発明の樹脂組成物成形体の寸法について特に制限はないが、本発明の樹脂組成物の特徴である透明性、耐光性、低吸水率及び低光学歪み等、並びに無機ガラスに比較した透明樹脂材料一般の特徴である軽量性及び耐衝撃性という諸特徴から、比較的大面積の薄肉成形体用途(例えば面積が50cm2以上程度のディスプレイパネル等)において本発明の樹脂組成物成形体の利用価値が大きくなる。これは、例えば携帯電話の液晶ディスプレイパネルのように比較的小さな面積の場合はデバイス全体の構造設計によりガラスパネルの乏しい耐衝撃性を補うことが可能であるが、ノートパソコン等比較的大面積のパネルを使用する用途ではこうした耐衝撃性設計に限界が生じる、といった事情によるものである。従って、本発明の樹脂組成物成形体の好ましい寸法は厚みが0.1mm〜50mmであって、面積が好ましくは50〜50000cm2、より好ましくは100〜20000cm2、更に好ましくは200〜10000cm2である。この面積が大きすぎると、たとえ本発明の樹脂組成物成形体の製造方法を採用したとしても成形型(金型等)からの剥離性の悪化や複屈折の増大などによる光学歪みの増大する場合、あるいはかかる光学歪みを低減しようとすると成形サイクルが極端に長くなる場合がある。 【0034】上記樹脂組成物成形体は、本発明の樹脂組成物の諸物性、特性、組成等に関する前記記述をそのまま保持するものであり、これらの好ましい範囲や測定方法も前記と同一である。本発明の樹脂組成物成形体は、40℃の温水中に1時間浸漬し次いで23℃相対湿度50%の空気雰囲気下に1週間静置する温水試験前後の寸法変化率が0.05%以下であることが望ましい。ここでいう寸法変化率とは、与えられた樹脂組成物成形体において実測される任意の直交する2方向の寸法変化率の算術平均である。例えば平面状成形体が与えられた場合、該平面上に直交する2直線を定め次いでそれぞれの直線上に長さ測定可能な任意の線分を定め(通常インクや凹凸によるマーキングにより表示しておく)、上記加熱試験前後における各線分の長さ変化を測定し、該長さ変化を加熱試験前の対応する線分の長さで除した値を使用して算術平均をとる。 【0035】上記温水試験は、上記パネルを製造する際の温水処理条件を参酌して設定したものである。即ち、上記成形体は、パネル製造の際、画素形成前、透明電極形成前、配向膜形成後にそれぞれ複数回温水洗浄されるが、この洗浄は通常、40℃の温水で数分ないし数時間行われている。そして、空気中で23℃、1週間静置する条件については、これらの洗浄工程内における樹脂成形体の保管条件の代表例として、また、JIS K−7100に準ずるものとして設定した。上記温水試験における温度、相対湿度及び時間の各条件の許容範囲は、それぞれ±2℃、±5%相対湿度及び±5分である。従って、上記温水試験前後の寸法変化率が大きすぎると精密な光学部材用途に支障を来す場合があるので、好ましくは0.03%以下、更に好ましくは0.01%以下である。 【0036】上記寸法安定性が得られる理由は定かでないが、半導体超微粒子表面に樹脂マトリクスの高分子鎖が吸着される効果が、上記特定の粒径を有する超微粒子の使用による従来にない非常に大きな表面積により全く予期しない程顕著となり、これが成形体の総体として該高分子鎖の可動性を抑制することに関係するとも推測される。 【0037】上記樹脂組成物成形体の製造方法に制限はないが、好ましい製造方法としては、超微粒子を含有した熱可塑性樹脂組成物を溶融し金型等により賦形して製造する方法(以下「熱可塑成形法」と称する)、並びに重合性単量体と超微粒子とを含有する重合性液体混合物を成形型内に装入し次いで重合反応を行い樹脂組成物を該成形型内において形成させる方法(以下「架橋樹脂成形法」と称する)が例示される。こうした製造方法については後に詳述する。 【0038】本発明の樹脂組成物成形体の線膨張係数は、通常6×10-5/℃以下である。この値は小さいほど寸法の熱的安定性が向上するので光学部材への応用に好適となるので、好ましくは4×10-5/℃以下、更に好ましくは3×10-5/℃以下である。上記半導体超微粒子は線膨張係数が樹脂マトリクスよりも小さな無機物であるので、この含有量の増大とともに本発明の樹脂組成物成形体の線膨張係数は小さくなるという特徴がある。 【0039】本発明の樹脂組成物成形体においては、成形体の総体として測定される線膨張係数の方向異方性の標準偏差が、線膨張係数の平均の10%以下であることが望ましい。ここでいう線膨張係数の測定は、市販の熱機械的分析法(TMA)装置により行われる。上記線膨張係数の方向異方性の標準偏差の測定は、与えられた成形体の少なくとも6の任意方向における線膨張係数の測定値の算術平均を上記線膨張係数の平均として算出する。この測定方向の数は数値の信頼性の点で可及的に多いことが望ましい。上記線膨張係数の方向異方性の標準偏差が大きすぎると本発明の樹脂組成物成形体の寸法安定性が光学部材として不十分となる場合があるので、該標準偏差の値は好ましくは7%以下、更に好ましくは5%以下である。 【0040】本発明の樹脂組成物成形体においては、その表面粗さRaの平均が0.1μm以下であることが望ましい。このRa値は、市販の表面粗さ測定器(例えばダイヤモンド針(1μmR、90度円錐)を使用)により測定される。上記Ra値が大きすぎると、例えば液晶表示素子部材として利用する場合に、色滲み等の問題が発生し画質が悪化するといった光学部材としての性能を悪化させる場合があるので、好ましくは0.05μm以下、より好ましくは0.01μm以下である。 【0041】本発明の樹脂組成物成形体の主体をなす樹脂組成物が熱可塑性樹脂組成物である場合、後述する熱可塑成形法により製造可能であり生産性が向上するので好ましい。一方、本発明の樹脂組成物成形体の主体をなす樹脂組成物が架橋樹脂組成物である場合には、上記寸法安定性及び耐熱性、並びに耐溶剤性が向上するという特徴を獲得するので好ましい。こうした2種の樹脂組成物の異なる特徴は、用途により選択される。後者における寸法安定性及び耐熱性、並びに耐溶剤性が向上するという特徴は、樹脂マトリクスが架橋樹脂であるため、高分子鎖の絡み合い状態が外部応力や熱により変化することにより起きるマクロな変形が、該架橋樹脂マトリクス中のに架橋点により顕著に抑制される架橋効果によるものと推定される。こうした架橋樹脂組成物の製造方法に制限はないが、後述する重合性単量体を含有する重合性液体混合物を重合させて好適に得られるものである。 【0042】本発明の樹脂組成物成形体が含有する前記半導体超微粒子は有機物である樹脂マトリクスと異なる光学特性を有する無機物であるため、成形体の総体として有機物単独では実現し得ない特異な屈折率とアッベ数とのバランスを有するという特徴を有する場合がある。かかる特異な屈折率とアッベ数とのバランスは、レンズやプリズム等光の屈折を利用しかつ複屈折が小さいことが望ましい用途において有用である場合があり、具体的にはナトリウムD線波長において23℃で測定される屈折率nDとアッベ数νDとの関係を表す下記数式(B)の定数項Cが1.70〜1.90の範囲を逸脱するような場合をいう。 【0043】 【数2】nD = −0.005νD + C (B) 透明樹脂材料において、一般に光路長が大きくなるに従って複屈折も大きくなる傾向がある。しかし、上記半導体超微粒子を樹脂マトリクスに分散した場合、光路長の増大の割には従来になく複屈折の増加率が小さくなるという特徴を獲得する場合がある。従って、本発明の樹脂組成物成形体のように厚み0.1mm以上という比較的厚い成形体において、かかる特徴は低複屈折率化の点で有利となる。 【0044】本発明の樹脂組成物成形体には、本発明の目的を著しく逸脱しない限りにおいて、各種添加剤を併用してもよい。かかる添加剤の例示は前記樹脂組成物における記述と同一である。本発明の樹脂組成物成形体において、これらの各種添加剤の添加量は用途に応じて適宜設定されるが、通常、10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。 【0045】本発明の樹脂組成物成形体の表面には、例えばガスバリア層、ハードコート層又は導電層等のコーティング層を施すことができる。コーティングの具体例としては、無機酸化物コーティング層からなる透明導電層(例えば略称ITOであるインジウム錫酸化物)やガスバリア層(例えばシリカ)、有機物コーティング層からなるガスバリア層やハードコート等が挙げられ、そのコーティング法としては真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法、ディップコート法、スピンコート法等公知のコーティング法を用いることができる。接着性を高めるため、接着層を使用してもよい。これらのコーティング層の厚さに制限はないが、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。 【0046】[熱可塑性樹脂組成物]本発明の樹脂組成物又は樹脂組成物成形体の樹脂マトリクスとして熱可塑性樹脂を使用することができる。かかる熱可塑性樹脂の種類には、前記透明性の条件を満たす限りにおいて制限はなく、熱可塑性(加熱により軟化し賦形可能となる性質)を保持する限りにおいて架橋高分子成分を含有していてもよい。このような熱可塑性樹脂として好ましいものは、ASTM D−1003(3mm厚)規格による光線透過率が70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上のものである。 【0047】上記熱可塑性樹脂を以下に例示するが、熱可塑性樹脂は上記光線透過率を満たす限りにおいて任意数の異種を混合して使用してもよい。スチレン系樹脂・・・スチレン誘導体の単独重合体、およびスチレン誘導体を主成分としこれと共重合可能なビニル化合物との共重合体樹脂を言う。スチレン誘導体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレン、等の芳香族ビニル化合物を挙げることができる。上記芳香族ビニル化合物を重合させる際に、ゴム成分を共存させることもできる。スチレン系樹脂の製造方法には特に制限はなく、従来から知られている塊状重合、懸濁重合、塊状−懸濁重合、乳化重合等の任意の重合法によるラジカル重合により製造することができる。代表的なスチレン樹脂としては、ポリスチレン(PS樹脂)、ポリ(α−メチルスチレン)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN樹脂)、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体等が例示でき、これらは単独でも複数種の併用であってもよい。本発明に用いられるスチレン樹脂の分子量に特に制限はなく、通常はメルトインデックスが0.5〜25の範囲で選ばれ、特に好ましいのは5〜20の範囲のものである。 【0048】アクリル系樹脂・・・アクリル酸またはそのエステル類、メタクリル酸またはそのエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のアクリル酸誘導体の単独重合体または共重合体である。かかるアクリル酸誘導体としては、例えば日刊工業新聞社刊の「プラスチック材料講座」第16巻等に記載されている。代表的なものとして、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ノルボルナンメチル、メタクリル酸ノルボルネンメチル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸フェニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。アクリル系樹脂の製造方法には特に制限はなく、従来から知られている塊状重合、懸濁重合、乳化重合等の任意の重合法によるラジカル重合により製造することができる。代表的なアクリル系樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸シクロヘキシル(PCHM)、ポリアクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、等が挙げられ、単独でも複数種の併用であってもよい。本発明に用いられるアクリル系樹脂の分子量に特に制限はなく、通常はメルトインデックスが1〜20の範囲で選ばれ、特に好ましいのは5〜15の範囲のものである。 【0049】芳香族ポリカーボネート樹脂・・・3価以上の多価フェノール類を共重合成分として含有しても良い1種以上のビスフェノール類と、ビスアルキルカーボネート、ビスアリールカーボネート、ホスゲン等の炭酸エステル類との反応により製造される重合体である。本発明に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、その製造方法に制限はなく、例えば(a)ビスフェノール類のアルカリ金属塩と求核攻撃に活性な炭酸エステル誘導体とを原料とし生成ポリマーを溶解する有機溶剤とアルカリ水との界面にて重縮合反応させる界面重合法、(b)ビスフェノール類と求核攻撃に活性な炭酸エステル誘導体とを原料としピリジン等の有機塩基中で重縮合反応させるピリジン法、(c)ビスフェノール類とビスアルキルカーボネートやビスアリールカーボネート等の炭酸エステルとを原料とし溶融重縮合させる溶融重合法等の従来から知られているいずれの方法によって製造されたものでもよい。芳香族ポリカーボネート樹脂は、単独でも複数種の併用であってもよい。本発明で用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量には特に制限はなく、通常、40℃のテトラヒドロフラン(THF)溶媒によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定し、単分子量分散ポリスチレンを対照としての重量平均分子量Mwが15,000以上であればよい。靭性や成形容易性を考慮すると、20,000〜80,000の範囲で選ぶのが好ましく、最も好ましいのは35,000〜65,000の範囲のものである。 【0050】非晶質ポリオレフィン樹脂・・・炭素−炭素多重結合を含有する炭化水素の配位重合やラジカル重合により得られる。水素添加ポリスチレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ブテン)、ノルボルネン類の開環メタセシス重合体の二重結合に水素添加して得られるシクロオレフィンポリマー類やエチレンとノルボルネン系炭化水素共重合体(商標名として例えばJSR社製アートンや日本ゼオン社製セオネックス等)、ポリテトラシクロドデセン類等、及びこれらの構造を主体とする共重合体(例えば極性モノマーの共重合による親水性の制御された共重合体等)等が例示される。 【0051】ポリアミド樹脂・・・主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を含み加熱溶融できる重合体であり、酸素等に対する高いガスバリヤ性を特徴とする。本発明への使用に適するポリアミド系脂としては通常の成形条件で非晶質成形体を与えるものが好ましく、具体的にはテレフタル酸および/またはイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとから得られるポリアミド、テレフタル酸および/またはイソフタル酸とアジピン酸とヘキサメチレンジアミンとから得られるポリアミド、共重合成分として1,3−フェニレンジオキシジ酢酸を含む共重合ポリアミド、共重合成分として二量体化脂肪酸を含む共重合ポリアミドなどが挙げられる。ポリアミド樹脂は、単独でも二種以上混合物であってもよい。ポリアミド樹脂の分子量には特に制限はないが、通常、25℃の濃硫酸中で測定した相対粘度が0.5〜5.0の範囲のものが好ましく用いられ、靭性および成形性の点からさらに好ましいのは0.8〜4.0の範囲のものである。 【0052】芳香族ポリエステル樹脂・・・ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオール、あるいはそのエステル形成性誘導体との縮合反応により得られる芳香族環を分子鎖中に有するポリエステルである。本発明への使用に適する芳香族ポリエステル樹脂としては非晶質成形体を与えるものが好ましく、具体的には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等が挙げられる。これらは単独でも複数種の併用であってもよい。本発明で用いられる芳香族ポリエステルの分子量には特に制限はなく、好ましくは、フェノールとテトラクロロエタンとの重量比1:1の混合溶媒を使用し、濃度1g/dLとし30℃で測定した極限粘度[η]が、0.5〜3.0dL/gの範囲のものである。極限粘度がこの範囲よりも小さい場合には、靭性が極端に低下し、逆にこの範囲よりも大きい場合には、溶融粘度が大きすぎて成形に支障を来すため好ましくない。 【0053】ポリフェニレンエーテル樹脂・・・ベンゼン環残基がエーテル結合を介して結ばれた重合体であり、加熱溶融できるものである。これらはフェノール類またはその反応性誘導体を原料として、公知の方法、例えば酸化カップリング触媒を用いた酸素、または酸素含有ガスによる酸化カップリング重合等で製造される重合体である。このフェノール類および重合触媒等の具体例は、例えば特開平4−239029号公報等に詳述されているが、代表的なフェノール類としてはフェノール、o−クレゾール、2,6−キシレノール、2,5−キシレノール、2,3,6−トリメチルフェノール等のメチルフェノール類等が挙げられ、これらフェノール類は単独または2種以上を組み合わせて用いることもできる。最も一般的なポリフェニレンエーテル樹脂としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、またはこれを主構造とする共重合体が挙げられる。ポリフェニレンエーテ系樹脂は、単独でも複数種の併用であってもよい。本発明に用いられるポリフェニレンエーテル樹脂の分子量には特に制限はなく、通常、0.6g/dL濃度のクロロホルム溶液の25℃での極限粘度[η]が0.2〜0.6dL/gの範囲内で選ばれ、靭性および成形性の点から0.35〜0.55dL/gの範囲で選ぶのが好ましい。 【0054】ポリアリーレンスルフィド樹脂・・・芳香族残基がチオエーテル結合を介して結ばれた重合体であり加熱溶融できるものである。こうした重合体構造の具体例と製造方法は、例えば特開平5−194851号公報に詳述されている。本発明において好適に用いられる主鎖構造は、次式、すなわち、−(−S−Φ−)n−、[式中、Φはフェニレン基を、nは各構造の繰り返しを意味する自然数である。]の繰り返し単位をもつポリフェニレンスルフィドと、次式、すなわち、−(−S−Φ−)m −(−SO2−Φ−)n−、[式中、Φはフェニレン基を、mとnは各構造の繰り返しを意味する自然数であり、mとnで表される各繰り返し単位はランダム配列、またはブロックを構成する配列いずれであっても良い。]の繰り返し単位をもつポリフェニレンスルフィドスルフォンである。これらは、単独でも複数種の併用であってもよい。本発明に用いられるポリアリーレンスルフィド系樹脂の分子量は、特に制限はなく、通常は重量平均分子量にして10,000〜500,000の範囲で選ぶことができる。靭性および成形性の観点から、好ましいのは30,000〜300,000の範囲のものであるが、非晶質成形体を与えやすい高分子量のものが好ましい場合もある。この重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により求めることができ、例えばポリフェニレンスルフィドの場合には、1−クロロナフタレンを展開溶媒として用いることができる。 【0055】これら例示のうち好ましく用いられるのは、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂及び非晶質ポリオレフィン樹脂等の高分子構造の繰り返し単位が、水素、炭素、及び酸素から選択される元素の組み合わせから構成されるものであり、中でもアクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂及び非晶質ポリオレフィン樹脂が機械的強度の点でより好適であり、芳香族ポリカーボネート樹脂と非晶質ポリオレフィン樹脂は耐熱性の点で更に好適であり、非晶質ポリオレフィン樹脂は低い吸水性の点で最も好適である。 【0056】また、半導体超微粒子が結合する有機配位子が有する好ましい官能基であるアミノ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基のいずれかの官能基との反応性の点で、好ましい樹脂マトリクスは、前記のとおり、これを構成する高分子が、エステル結合、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合、尿素結合、炭素−炭素2重結合のいずれかの官能基を該高分子構造中に含有するものであるので、かかる条件を満たす好ましい熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂及びエステル基を高分子側鎖に有する非晶質ポリオレフィン樹脂(例えばJSR社から供給されている商標名アートンである非晶質ポリオレフィン樹脂等)である。 【0057】[重合性液体混合物と重合性単量体]本発明の樹脂組成物成形体の樹脂マトリクスとして架橋樹脂組成物を使用する場合、その樹脂マトリクスの主体を形成する架橋樹脂の種類には前記透明性の条件を満たす限りにおいて制限はない。こうした架橋樹脂の原料は、通常分子内に2個以上の重合性官能基を有する重合性単量体を必須成分とする重合性液体混合物である。 【0058】かかる重合性液体混合物は分子内に1個の重合性官能基を有する重合性単量体を含有していてもよく、また上記重合性単量体の重合性を著しく阻害しない限りにおいて重合性を有さない液体(溶媒)を含有していてもよい。また。通常、重合開始剤を添加することが好ましい。かかる重合開始剤としては、光によりラジカルを発生する性質を有する化合物である光ラジカル発生剤及び熱によりラジカルを発生する性質を有する化合物である熱ラジカル発生剤が一般的であり、公知のかかる化合物を使用可能である。重合反応の進行の均質性や加熱が必ずしも不要である点から好ましい重合開始剤は光ラジカル発生剤であり、かかる光ラジカル発生剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等が例示され、複数種を併用してもよい。これらのうち好ましいのは、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド及びベンゾフェノンである。かかる重合開始剤の添加量は、重合性単量体の総和100重量部に対し通常0.001〜3重量部、好ましくは0.01〜1重量部、更に好ましくは0.02〜0.3重量部であり、この添加量が多すぎると重合反応が急激に進行し複屈折の増大をもたらすだけでなく色相も悪化する場合があり、また少なすぎると十分に硬化させることができなくなる場合がある。 【0059】上記分子内に2個以上の重合性官能基を有する重合性単量体として、透明性と低複屈折性に優れた架橋樹脂組成物を与える点で2官能性以上の(メタ)アクリレート類が好ましく用いられる。ただしここで「(メタ)アクリレート」なる表記は、アクリレート又はメタクリレートのいずれか、という意味である。具体的には、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス(オキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレート、p−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]キシリレン、4,4’−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]ジフェニルスルフォン等の2価の(メタ)アクリレート類、トリメチロールプロパントリス(メタ)アクリレート、グリセリントリス(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリス(メタ)アクリレート等の3価の(メタ)アクリレート類、ペンタエリスリトールテトラキス(メタ)アクリレート等の4価の(メタ)アクリレート類、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の不定多価の(メタ)アクリレート類等が例示される。これらのうち、架橋生成反応の制御性から上記2価の(メタ)アクリレート類は好ましく用いられる。 【0060】上記例示の(メタ)アクリレート類のうち得られる重合体の透明性と低複屈折性をバランスよく実現する点で特に好ましいのは、下記成分A及び下記成分Bを単独もしくは複合での使用である。成分Aは、下記一般式(1)で示される脂環骨格を有するビス(メタ)アクリレートである。 【0061】 【化3】
【0062】ただし一般式(1)において、RaおよびRbはそれぞれ独立してそれぞれ水素原子又はメチル基を、RcおよびRdはそれぞれ独立して炭素数6以下のアルキレン基を、xは1又は2を、yは0または1を、それぞれ表す。一般式(1)で示される成分Aの具体例としては、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=アクリレートメタクリレート及びこれらの混合物、ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=アクリレートメタクリレート及びこれらの混合物等が挙げられる。これらのトリシクロデカン化合物及びペンタシクロデカン化合物は、複数種を併用しても構わない。 【0063】成分Bは下記一般式(2)で表される硫黄原子を有するビス(メタ)アクリレートである。 【0064】 【化4】
【0065】ただし一般式(2)において、RaおよびRbは前記一般式(1)の場合と同一であり、Reは炭素数1〜6のアルキレン基を表す。各Arはそれぞれ炭素数が6〜30であるアリーレン基又はアラルキレン基を表し、これらの水素原子はフッ素以外のハロゲン原子で置換されていても良い。各Xはそれぞれ酸素原子または硫黄原子を表し、各Xが全て酸素原子の場合、各Yのうち少なくとも一つは硫黄原子又はスルホン基(−SO2−)を、各Xのうち少なくとも1つが硫黄原子の場合、各Yはそれぞれ硫黄原子、スルホン基、カルボニル基(−CO−)、並びに炭素数1〜12のアルキレン基、アラルキレン基、アルキレンエーテル基、アラルキレンエーテル基、アルキレンチオエーテル基及びアラルキレンチオエーテル基のいずれかを表し、j及びpはそれぞれ独立して1〜5の整数を、kは0〜10の整数を表す。またkが0の時はXは硫黄原子を表す。 【0066】一般式(2)で示される成分Bを具体的に例示すれば、p−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]キシリレン、m−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]キシリレン、α、α’−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]−2,3,5,6−テトラクロロ−p−キシリレン、4,4’−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ]ジフェニルスルフィド、4,4’−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ]ジフェニルスルフォン、4,4’−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]ジフェニルスルフィド、4,4’−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]ジフェニルスルフォン、4,4’−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]ジフェニルケトン、2,4’−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]ジフェニルケトン、5,5’−テトラブロモジフェニルケトン、β,β’−ビス−[p−(メタ)アクリロイルオキシフェニルチオ]ジエチルエーテル、β,β’−ビス−[p−(メタ)アクリロイルオキシフェニルチオ]ジエチルチオエーテル等が挙げられ、これらは複数種を併用しても構わない。これらの中でもビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレートは優れた透明性及び耐熱性を有し、特に好適に用いられる。 【0067】上記重合性液体混合物が含有する重合性単量体の総和に対する分子内に2個以上の重合性官能基を有する重合性単量体の割合は通常0.1〜100モル%であり、重合反応により生成する架橋樹脂組成物の寸法安定性や機械的強度の点で該下限値は好ましくは1モル%、更に好ましくは3モル%である。上記重合性液体混合物には、製造される樹脂組成物成形体が本発明の目的を著しく逸脱しない限りにおいて、各種添加剤を加えても構わない。かかる添加剤としては、例えば酸化防止剤、熱安定剤、あるいは光吸収剤等の安定剤類、ガラス繊維、ガラスビーズ、マイカ、タルク、カオリン、粘土鉱物、金属繊維、金属粉等のフィラー類、炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、C60等のフラーレン類等の炭素材料、帯電防止剤、可塑剤、離型剤、消泡剤、レベリング剤、沈降防止剤、界面活性剤、チクソトロピー付与剤等の改質剤類、顔料、染料、色相調整剤等の着色剤類等が例示される。 【0068】上記重合性液体混合物の製造方法については、その構成成分、即ち前記一般式A及び/又はBで表される分子内に2個以上の重合性官能基を有する重合性単量体、上記超微粒子及び必要に応じて使用される追加成分(分子内に1個の重合性官能基を有する重合性単量体、重合性を有さない液体、上記重合開始剤、あるいは上記各種添加剤等)を混合して実施する。かかる混合は、機械的攪拌装置を有していてもよい公知の混合装置を使用して行うことが可能であり、重合開始挙動を制御する目的等必要に応じて遮光、冷却、不活性雰囲気の使用などを併用してもよい。 【0069】[半導体結晶]半導体結晶は、価電子帯と伝導帯とのエネルギー差(バンドギャップ)に応じた電磁波吸収(以下、特に断りのない限り単に「吸収」と記す)や高屈折率といった特性を有するので、前記超微粒子の構成物質として特に有用である。また、その粒径を10nm以下程度とすることで量子効果が顕著に見られるようになり、エネルギー準位の量子化によりエネルギー準位が互いに離れた状態となり、かつそれらが結晶粒径の関数として制御されるようになる。かかる半導体ナノ結晶において、半導体結晶の基礎吸収(Fundamental absorption)の長波長側吸収端よりもわずかに低エネルギー域に現れるエキシトン(Exciton、励起子)吸収帯はエネルギー幅が極めて小さいだけでなく、エキシトン準位が伝導帯準位から孤立しており近接したエネルギー準位との相互作用確率が比較的小さいという特徴を有する。 【0070】発光特性を有する半導体結晶を含有する超微粒子を使用すると、本発明の樹脂組成物及び樹脂組成物成形体はかかる発光特性を利用する用途にも有用となる。特に、上記エキシトン準位からの発光は発光帯の線幅が小さいので色純度の優れた発光となり、しかも前記の量子効果により半導体結晶の粒径により発光波長を制御可能であるので、特に有用である。また、かかるエキシトン吸収帯の特徴は、例えば、該吸収帯での光吸収飽和特性を利用して光ディスクにおける入射光ビーム径を実効的に絞って高密度記録を達成せしめる超解像技術等に応用することができる。 【0071】本発明に用いられる半導体結晶の組成には特に制限はないが、具体的な組成例を元素記号あるいは組成式として例示すると、C、Si、Ge、Sn等の周期表第14族元素の単体、P(黒リン)等の周期表第15族元素の単体、SeやTe等の周期表第16族元素の単体、SiC等の複数の周期表第14族元素からなる化合物、SnO2、Sn(II)Sn(IV)S3、SnS2、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe等の周期表第14族元素と周期表第16族元素との化合物、BN、BP、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb等の周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物(あるいはIII−V族化合物半導体)、Al2S3、Al2Se3、Ga2S3、Ga2Se3、Ga2Te3、In2O3、In2S3、In2Se3、In2Te3等の周期表第13族元素と周期表第16族元素との化合物、TlCl、TlBr、TlI等の周期表第13族元素と周期表第17族元素との化合物、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe等の周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物(あるいはII−VI族化合物半導体)、As2S3、As2Se3、As2Te3、Sb2S3、Sb2Se3、Sb2Te3、Bi2S3、Bi2Se3、Bi2Te3等の周期表第15族元素と周期表第16族元素との化合物、Cu2O、Cu2Se等の周期表第11族元素と周期表第16族元素との化合物、CuCl、CuBr、CuI、AgCl、AgBr等の周期表第11族元素と周期表第17族元素との化合物、NiO等の周期表第10族元素と周期表第16族元素との化合物、CoO、CoS等の周期表第9族元素と周期表第16族元素との化合物、α−Fe2O3、γ−Fe2O3、Fe3O4等の酸化鉄類、FeS等の周期表第8族元素と周期表第16族元素との化合物、MnO等の周期表第7族元素と周期表第16族元素との化合物、MoS2、WO2等の周期表第6族元素と周期表第16族元素との化合物、VO、VO2、Ta2O5等の周期表第5族元素と周期表第16族元素との化合物、TiO2、Ti2O5、Ti2O3、Ti5O9等の酸化チタン類(結晶型はルチル型、ルチル/アナタースの混晶型、アナタース型のいずれでも構わない)、ZrO2等の周期表第4族元素と周期表第16族元素との化合物、Y2O3、La2O3、Ce2O3等の周期表第3族元素(ランタノイド元素を含む)と周期表第16族元素との化合物、MgS、MgSe等の周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物、CdCr2O4、CdCr2Se4、CuCr2S4、HgCr2Se4等のカルコゲンスピネル類、あるいはBaTiO3等が挙げられる。なお、G.Schmidら;Adv.Mater.,4巻,494頁(1991)に報告されている(BN)75(BF2)15F15や、D.Fenskeら;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,29巻,1452頁(1990)に報告されているCu146Se73(トリエチルホスフィン)22のように構造の確定されている半導体クラスターも同様に例示される。 【0072】これらのうち実用的に重要なものは、例えばSnO2、SnS2、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe等の周期表第14族元素と周期表第16族元素との化合物、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb等のIII−V族化合物半導体、Ga2O3、Ga2S3、Ga2Se3、Ga2Te3、In2O3、In2S3、In2Se3、In2Te3等の周期表第13族元素と周期表第16族元素との化合物、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe等のII−VI族化合物半導体、As2O3、As2S3、As2Se3、As2Te3、Sb2O3、Sb2S3、Sb2Se3、Sb2Te3、Bi2O3、Bi2S3、Bi2Se3、Bi2Te3等の周期表第15族元素と周期表第16族元素との化合物、α−Fe2O3、γ−Fe2O3、Fe3O4等の酸化鉄類やFeS等の周期表第8族元素と周期表第16族元素との化合物、前記の酸化チタン類やZrO2等の周期表第4族元素と周期表第16族元素との化合物、Y2O3、La2O3、Ce2O3等の周期表第3族元素(ランタノイド元素を含む)と周期表第16族元素との化合物である。 【0073】これらの中でも、SnO2、GaN、GaP、In2O3、InN、InP、Ga2O3、Ga2S3、In2O3、In2S3、ZnO、ZnS、CdO、CdS、前記の酸化鉄類、ルチル型やアナタース型二酸化チタン、ZrO2、Y2O3、Ce2O3、MgS等は毒性の高い陰性元素を含まないので耐環境汚染性や生物への安全性の点で好ましく、この観点ではSnO2、In2O3、ZnO、ZnS、α−Fe2O3、ルチル型やアナタース型二酸化チタン、ZrO2、Y2O3、Ce2O3等の毒性の高い陽性元素を含まない組成は更に好ましい。 【0074】ZnO、α−Fe2O3、ルチル型やアナタース型二酸化チタン、Ce2O3等の金属酸化物半導体結晶は、光吸収能、高い屈折率、安全性、安価であることから、紫外線吸収材料や高屈折率コーティング等の用途に最も好ましいものである。また、α−Fe2O3等の酸化鉄類等、可視領域に吸収能のある着色した半導体結晶は、顔料等の色材用途に重要である。 【0075】本発明の樹脂組成物成形体をほぼ無色透明としかつ優れた紫外線吸収能を発揮させる目的において最も好ましいな半導体結晶は、上記酸化チタン類(代表的にはルチル型やアナタース型二酸化チタン)、ZnO及びCe2O3である。一方、半導体結晶の発光能を利用する場合には、可視領域とその近傍に発光帯を有するGaN、GaP、GaAs、InN、InP等のIII−V族化合物半導体、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、HgO、HgS等のII−VI族化合物半導体、In2O3、In2S3等が重要であり、中でも半導体結晶の粒径の制御性と発光能から好適なのはZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe等のII−VI族化合物半導体であり、特にZnO、ZnS、ZnSe、CdS、CdSe等がこの目的では更に好適に用いられる。 【0076】前記で例示した任意の半導体結晶には、必要に応じて微量のドープ元素(故意に添加する不純物の意味)として例えばAl、V、Cr、Mn、Co、Cu、Sb、W、Zn、Zr、Ag、Pt、Cl、Ce、Eu、W、Hg、Pb、Bi、Eu、Tb、Dy、Er、Sm等の元素を加えても構わない。例えば、Y2O3へのEuの添加、ZnSへのAg、Cu、Tb、Mn等の添加により、該ドープ元素を発光源とする蛍光体とすることができる。また、上記二酸化チタン、ZnO及びCe2O3にZr等の適当なドープ元素を添加するとその光触媒能を低減させる効果を奏する場合がある。かかるドープ元素の本発明における主要な効果は、電磁波吸収のエネルギーを発光や発熱等、化学反応以外の現象により散逸させて樹脂マトリクスの分解劣化を抑制又は防止のように樹脂組成物の化学的安定性を向上させることにあると考えられる。 【0077】本発明における半導体結晶は、例えばA.R.Kortanら;J.Am.Chem.Soc.,112巻,1327頁(1990)あるいは米国特許5985173号公報(1999)に報告されているように、内核(コア)と外殻(シェル)からなるいわゆるコアシェル構造を形成していてもよい。かかるコアシェル型半導体結晶では、エキシトン吸発光帯を利用する用途に好適な場合がある。この場合、シェルの半導体結晶の組成として、禁制帯幅(バンドギャップ)がコアよりも大きなものを起用することによりエネルギー的な障壁を形成せしめることが一般に有効である。これは、外界の影響や結晶表面での結晶格子欠陥等の理由による望ましくない表面準位等の影響を抑制する機構によるものと推測される。かかる半導体シェルに好適に用いられる半導体結晶の組成としては、コア半導体結晶のバンドギャップにもよるが、バルク状態のバンドギャップが温度300Kにおいて2.0電子ボルト以上であるもの、例えばBN、BAs、GaNやGaP等のIII−V族化合物半導体、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS等のII−VI族化合物半導体、MgSやMgSe等の周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物等が好適に用いられる。これらのうちより好ましいシェルとなる半導体結晶組成は、BN、BAs、GaN等のIII−V族化合物半導体、ZnO、ZnS、ZnSe、CdS等のII−VI族化合物半導体、MgS、MgSe等の周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物等のバルク状態のバンドギャップが温度300Kにおいて2.3電子ボルト以上のものであり、最も好ましいのはBN、BAs、GaN、ZnO、ZnS、ZnSe、MgS、MgSe等のバルク状態のバンドギャップが温度300Kにおいて2.5電子ボルト以上のものであり、化学合成上ZnSは最も好適に使用される。特に好適なコアシェル組成の組み合わせ例を組成式で表現すると、CdSe−ZnS、CdSe−ZnO、CdSe−CdS、CdS−ZnS、CdS−ZnO等が挙げられる。 【0078】上記半導体結晶の吸光能を利用する場合、その吸収スペクトルの吸収端波長が300〜600nmの範囲内にあることが好ましい。この吸収端波長の範囲の下限値は前記樹脂マトリクスを変質させる紫外領域を吸収させる目的でより好ましくは330nm、更に好ましくは370nmであり、一方、該上限値は可視領域における透明性の点でより好ましくは550nm、更に好ましくは500nm、最も好ましくは450nmである。 【0079】[半導体ナノ結晶の製造方法]前記半導体結晶の超微粒子(本発明では「半導体ナノ結晶」と記す)の製造方法に制限はないが、例えば以下の3つの液相法が例示される。 (1)原料水溶液を非極性有機溶媒中の逆ミセルとして存在させ該逆ミセル相中にて結晶成長させる方法(以下「逆ミセル法」と記す)であり、例えばB.S.Zouら;Int.J.Quant.Chem.,72巻,439(1999)に報告されている方法である。公知の逆ミセル安定化技術が利用でき、比較的安価かつ化学的に安定な塩を原料とすることができ、しかも水の沸点を超えない比較的低温で行われる点で工業生産に適した方法である。但し、下記のホットソープ法の場合に比べて現状技術では発光特性に劣る場合がある。 (2)熱分解性原料を高温の液相有機媒体に注入して結晶成長させる方法(以下「ホットソープ法」と記す)であり、例えばJ.E.B.Katariら;J.Phys.Chem.,98巻,4109−4117(1994)に報告されている方法である。前記逆ミセル法に比べて粒径分布と純度に優れた半導体結晶粒子が得られ、生成物は発光特性に優れ有機溶媒に通常可溶である特徴がある。ホットソープ法における液相での結晶成長の過程の反応速度を望ましく制御する目的で、半導体構成元素に適切な配位力のある配位性有機化合物が液相成分(溶媒と有機配位子を兼ねる)として選択される。かかる配位性有機化合物の例としては、トリブチルホスフィンやトリオクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類、トリオクチルホスフィンオキシド(以下TOPOと略記)等のトリアルキルホスフィンオキシド類、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン等のω−アミノアルカン類等が挙げられる。これらのうち、上記TOPO等のトリアルキルホスフィンオキシド類やヘキサデシルアミン等のω−アミノアルカン類が好適に用いられる。かかるホットソープ法により、CdSe、CdS、ZnSe、ZnS、ZnO等のII−VI族化合物半導体ナノ結晶、TiO2やγ−Fe2O3や等の酸化物半導体ナノ結晶などが数平均粒径3〜8nm程度で合成可能である。 (3)酸塩基反応を駆動力として半導体結晶やその前駆体を、水やエタノールなどのプロトン性溶媒中において100℃以下程度の比較的低い温度で生成させる工業生産に適した方法(以下「ゾル生成法」と記す)である。例えば、酸化チタンナノ結晶の合成例が伊藤征司郎ら;色材,57巻6号,305−308(1984)に、酸化亜鉛ナノ結晶の合成例がL.Spanhelら;J.Am.Chem.Soc.,113巻,2826頁(1991)にそれぞれ報告されている。ゾル生成法における好適な原料として、例えば酸化チタンナノ結晶の合成には硫酸チタニルが、酸化亜鉛ナノ結晶の合成には酢酸亜鉛や硝酸亜鉛等の亜鉛塩が、それぞれ例示される。テトラエチルオルソシリケート(略称TEOS)やテトライソプロポキシオルソチタネート等の金属アルコキシド類も原料として好適に使用可能である。特にゾル生成法により酸化物ナノ結晶を合成する場合においては、例えば硫酸チタニルを原料として用いる酸化チタンナノ結晶の合成のように、水酸化物等の前駆体を経由し次いで酸やアルカリにより(好ましくは酸により)これを脱水縮合又は解膠してヒドロゾルを生成させる手順も可能である。かかる前駆体を経由する手順では、該前駆体を、濾過や沈殿分離(必要であれば遠心分離)等の任意の方法で単離精製することが最終製品の純度の点で好適である。該ヒドロゾルにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(略称DBS)や3−メタクリロイルオキシプロパンスルホン酸カリウム等の適当な界面活性剤を加えて、ゾル粒子(即ち半導体又はその前駆体のナノ粒子)を非水溶化させて単離してもよい。 【0080】前記半導体原料物質が複数種ある場合、これらをあらかじめ混合しておいても良く、あるいはこれらをそれぞれ単独で反応液相に注入しても良い。これら原料は、適当な希釈溶媒を用いて溶液にして使用しても構わない。 [有機配位子]本発明に使用する前記半導体超微粒子は、樹脂マトリクスへの相溶性又は反応性を有する有機配位子を結合させたものとすると、該樹脂マトリクスへの半導体超微粒子の分散性が飛躍的に改善され本発明の樹脂組成物又は樹脂組成物成形体の透明性、耐光性、寸法安定性、機械的強度が向上したり複屈折低減に有効である場合がある。かかる有機配位子の効果は、半導体超微粒子同士の凝集が抑制される効果、上記樹脂マトリクスへの相溶性が向上する効果、あるいは有機配位子と樹脂マトリクスを構成する高分子との化学反応による結合生成の効果、等の複合効果によるものと考えられる。なお、上記有機配位子の結合により、半導体超微粒子の吸発光能等の電磁気学的特性が改良される場合がある。 【0081】本発明に使用される有機配位子の分子量は、通常100〜900、より好ましくは200〜800、更に好ましくは300〜750である。この分子量が大きすぎると樹脂マトリクスの各種物性、特に機械的物性(強度、弾性率、耐熱性等)を損なう場合がある。また該分子量には分布があってもよいが、有機配位子の上記役割の点で重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnとして通常1〜10であり、好ましくは1〜7、更に好ましくは1〜5、最も好ましくは1〜3に制御することが好ましい。 【0082】上記でいう有機配位子の樹脂マトリクスへの反応性とは、有機配位子と樹脂マトリクス(熱可塑性樹脂又は架橋樹脂を問わない)を構成する高分子とが結合を生成している状態を与えるための反応性を意味する。かかる状態を与えるには次の4通りの方法が考えられる。即ち、第1は半導体超微粒子に結合した有機配位子と樹脂マトリクスを構成する高分子との化学反応、第2は半導体超微粒子に結合した有機配位子と樹脂マトリクスを構成する高分子を与える重合性単量体との反応(該重合性単量体との共重合反応でもよい)及び次いで進行させる該重合性単量体の重合反応、第3は有機配位子と樹脂マトリクスを構成する高分子との化学反応及び次いで進行させる有機配位子と半導体超微粒子との結合反応、第4は有機配位子と樹脂マトリクスを構成する高分子を与える重合性単量体との反応(該重合性単量体との共重合反応でもよい)、次いで進行させる該重合性単量体の重合反応及び更に次いで進行させる有機配位子と半導体超微粒子との結合反応、である。 【0083】かかる半導体超微粒子への有機配位子の結合方法とこれに使用する有機配位子の分子構造に制限はないが、かかる有機配位子の分子構造概念は下記一般式(3)で表されるものである。 【0084】 【化5】X−R−Y (3) 但し、Xは半導体超微粒子の表面と任意の化学結合(例えば共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合等)を形成する官能基を表し、Yは上記樹脂マトリクスとの相溶性又は反応性を有する官能基を表し、RはXとYとを連結する炭素原子数1〜30である2価有機残基を表す。 【0085】該官能基Xは、好ましくは使用する半導体超微粒子の表面と共有結合又は配位結合を、最も好ましくは共有結合を形成するものである。かかる官能基Xの具体例としては、シリカ、アルミナ、チタニア等の酸化物の表面処理に従来使用されているシランカップリング剤やチタネート系カップリング剤等の活性官能基である金属アルコキシド基、あるいは周期表第15又は16族元素を含有する以下のような官能基、即ち、1級アミノ基(−NH2)、2級アミノ基(−NHR;但しRはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基等の炭素数6以下の炭化水素基である;以下同様)、3級アミノ基(−NR1R2;但しR1及びR2は独立にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基等の炭素数6以下の炭化水素基である;以下同様)、ピリジル基、アミド結合等の窒素含有官能基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、リン酸基、亜リン酸基、ホスフィンセレニド基等のリン含有官能基等の周期表第15族元素を含有する官能基、水酸基、カルボキシル基、β−ジケトン基、β−ジケトネート基等の酸素含有官能基、メルカプト基(又はチオール基)、スルフィド結合、スルホキシド基、チオ酸基(−COSH)、ジチオ酸基(−CSSH)、スルホン酸基、キサントゲン酸基、キサンテート基、イソチオシアネート基、チオカルバメート基、チオフェン環等の硫黄含有官能基等の周期表第16族元素を含有する官能基等が例示される。これらのうち好ましく利用されるのは、ピリジル基や1級アミノ基等の窒素含有官能基、ホスフィン基やホスフィンオキシド基等のホスフィン誘導体基、リン酸基、カルボキシル基、スルホン酸基等の酸性基、メルカプト基等の硫黄含有官能基である。これらのうち、ホスフィンオキシド基とメルカプト基は半導体超微粒子が含有する遷移金属元素への結合力に優れ、リン酸基、カルボキシル基、スルホン酸基等の酸性基は前記酸化物半導体結晶への結合力に優れるので最も好ましく用いられる。 【0086】上記官能基Yについては、これが上記樹脂マトリクスとの反応性を有する官能基である場合、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、エステル基、アミド基等の求核又は求電子置換反応性官能基、アクリロイル基、メタクリロイル基、マレオイル基、ビニルフェニル基、ビニルエステル基、ビニルアミノ基、エチニル基等のラジカル重合性基、エポキシ基やテトラヒドロフラニル基等の脂肪族エーテル基のような開環反応性を有する官能基等が例示される。 【0087】上記上記官能基Yの例示のうちアミノ基は、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合等のカルボキシル基から誘導される結合及びエポキシ基への求核置換反応性に富むので、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合及びエポキシ基を含有する樹脂(例えば芳香族ポリエステル樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、エステル結合特にメチルエステル基を側鎖に有するアクリル系樹脂や非晶性ポリオレフィン樹脂等)を主体とする樹脂マトリクスへの適用に好適である。また、アクリロイル基、メタクリロイル基、マレオイル基、ビニルフェニル基、ビニルエステル基、ビニルアミノ基、エチニル基等のラジカル重合性基は、前記スチレン系樹脂及びアクリル系樹脂を与える重合性単量体又は酢酸ビニル等任意のラジカル重合性単量体とのラジカル共重合性を有するので、これら2種の樹脂を主体とする樹脂マトリクスへの適用に好適である。上記ラジカル重合性基のうち、ラジカル重合性の点でアクリロイル基、メタクリロイル基、マレオイル基及びビニルフェニル基が好適であり、中でもアクリロイル基、メタクリロイル基及びビニルフェニル基が更に好適であり、ラジカル重合性の制御性の点で最も好適なのはメタクリロイル基及びビニルフェニル基である。 【0088】一方、上記官能基Yが上記樹脂マトリクスとの相溶性を有する官能基である場合、その化学構造は、該樹脂マトリクスの主体である高分子の繰返し単位の化学構造の一部又は全部と同一又は類似であることが好ましい。前記2価有機残基Rの炭素原子数については、官能基Yの上記相溶性又は反応性を十分に機能させるに必要な可動性の確保と半導体超微粒子を外界からの好ましくない化学反応から保護する点から、その下限値は好ましくは3以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは9以上であり、一方本発明の樹脂組成物成形体の耐熱性や機械的強度を極端に低下させない目的では好ましくは25以下、更に好ましくは20以下とする。 【0089】以下、上記有機配位子の具体例を挙げるが、これら例示中(b)〜(e)における官能基は上記一般式(3)における官能基Xに該当するものである。 (a)金属アルコキシド基含有有機配位子・・・3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−カルボキシエチルトリメトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン類、3−グリシジルオキシプロピルトリイソプロピルオキシチタン、n−ブチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン等のアルコキシチタン類等。 【0090】(b)硫黄含有有機配位子・・・メルカプトエタン、1−メルカプト−n−ブタン、1−メルカプト−n−ヘキサン、メルカプトシクロヘキサン、1−メルカプト−n−オクタン、1−メルカプト−n−デカン等のメルカプトアルカン類、下記一般式(4)で表される片末端がメルカプト基となったポリエチレングリコール類、下記一般式(5)で表されるポリエチレングリコール類のω−メルカプト脂肪酸エステル類、下記一般式(6)で表される1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキル−1−チオール類、チオフェノール、4−メチルチオフェノール、4−tert−ブチルチオフェノール、4−ヒドロキシチオフェノール等のチオフェノール誘導体、6−メルカプト−n−ヘキサノール等のω−メルカプトアルコール類、ジブチルスルフィド、ジヘキシルスルフィド、ジオクチルスルフィド等のジアルキルスルフィド類、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、ジオクチルスルホキシド等のジアルキルスルホキシド類、ジブチルジスルフィド、ジヘキシルジスルフィド、ジオクチルジスルフィド等のジアルキルジスルフィド類、チオ尿素、チオアセタミド等のチオカルボニル基を有する化合物、チオフェン等の硫黄含有芳香族化合物、オクチルスルホン酸、デシルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸等のスルホン酸類、あるいは下記一般式(5)のエステル類の原料となるω−メルカプト脂肪酸類等。 【0091】 【化6】HS−(CH2CH2O)n−R1 (4) 【0092】 【化7】 HS−(CH2)m−COO−(CH2CH2O)n−R1 (5) 但し、一般式(4)及び一般式(5)においてR1は水素原子、炭素数6以下の炭化水素基、又はベンゼン環を表し、nは重合度を表す自然数であり通常2≦n≦15、過度の立体的障害を避ける観点で好ましくは2≦n≦10、更に好ましくは2≦n≦5である。また、一般式(5)においてmは自然数であり通常1≦n≦20、過度の立体的障害を避ける観点でその上限値は好ましくは15、更に好ましくは12であり、一方該mの下限値は半導体超微粒子表面を外界から遮蔽する観点で好ましくは5、更に好ましくは8である。 【0093】 【化8】HS−(CH2)2−RF (6) 但し一般式(6)において、RFはトリフルオロメチル基(CF3−)又はジフルオロメチレン基(−CF2−)を含有する炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基を表す。 【0094】(c)リン含有有機配位子・・・トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリデシルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類、トリエチルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド(略称TOPO)、トリデシルホスフィンオキシド等のトリアルキルホスフィンオキシド類、トリフェニルホスフィンやトリフェニルホスフィンオキシド等の芳香族ホスフィンあるいは芳香族ホスフィンオキシド類、n−ブチルホスホン酸、n−ヘキシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、ベンジルホスホン酸等のホスホン酸類、ジオクチルホスフィン酸等のホスフィン酸類等。 【0095】(d)窒素含有有機配位子・・・ピリジンやキノリン等の窒素含有芳香族化合物、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミン、トリフェニルアミン、メチルジフェニルアミン、ジエチルフェニルアミン、トリベンジルアミン等の3級アミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン等の2級アミン類、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、フェニルアミン、ベンジルアミン等の1級アミン類、ニトリロ三酢酸トリエチルエステル等のアミノ基を有するカルボン酸エステル類等。 【0096】(e)カルボン酸有機配位子・・・ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、オクタデカン酸等の炭素数4〜20の脂肪酸類、安息香酸、4−オクチル安息香酸、4−ドデシル安息香酸等の安息香酸誘導体等。また、上記有機配位子は、半導体結晶等の超微粒子を大気(特に酸素ガスや水)や光等の外界からの影響から遮蔽して保持する効果(以下「遮蔽効果」と呼ぶ)をも有する。かかる遮蔽効果の点では、該有機配位子は炭素数4以上のメチレン基連鎖を含有するものであることが好ましく、特に製造過程に水やエタノール等のプロトン性溶媒を併用する場合にその効果を顕著に発揮する。これは、該メチレン基連鎖がその疎水性により一種の疎水障壁を半導体結晶表面に形成し、プロトン性溶媒分子等の極性化学種が半導体結晶等の表面に接近して金属元素を溶出する等の悪影響を妨げる、といった機構によるものと推測される。かかる炭素数4以上のメチレン基連鎖を有する有機配位子の使用により、具体的には、半導体ナノ結晶の量子効果の安定化が見られる場合が多い。このメチレン基連鎖の炭素数は通常4〜20、好ましくは5〜16、最も好ましくは6〜12程度とする。 【0097】半導体超微粒子の表面への上記有機配位子の具体的な配位化学構造は十分に解明されていないが、本発明においては前記一般式(3)における官能基Xは必ずしもそのままの構造を保持していなくてもよい。例えば、メルカプト基(SH)の場合、半導体結晶や遷移金属結晶終端に存在する遷移金属元素M(例えばII−VI族化合物半導体における亜鉛やカドミウム、III−V族化合物半導体におけるガリウムやインジウム等)との共有結合を形成した構造(例えばS−Mなる構造)への変化、ホスフィンオキシド基(P=O)の場合、該遷移金属元素Mとの共有結合を形成した構造(例えばP−O−Mなる構造)への変化等も考えられる。 【0098】上記有機配位子の半導体超微粒子への結合量は、半導体超微粒子と該有機配位子との総和に対する重量百分率(wt%)として、通常5〜80wt%、好ましくは10〜60wt%、更に好ましくは15〜40wt%である。かかる重量百分率は、核磁気共鳴スペクトル(NMR)、赤外吸収スペクトル(IR)、元素分析、あるいは熱重量分析(TG)等の各種分析手法の組み合わせにより分析することにより見積もることが可能である。 【0099】[熱可塑性樹脂組成物を使用する成形体の製造方法]本発明の樹脂組成物成形体の製造方法に制限はないが、上記半導体超微粒子を分散した熱可塑性樹脂組成物を使用する場合、該熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度よりも10〜80℃高い温度条件で保温しながら加圧成形する方法(以下「保温プレス成形」と称する)が好ましい。かかる保温プレス成形においては、成形体原料となる半導体超微粒子が分散した熱可塑性樹脂組成物の塊(以下「原料塊」と称する)をまず調製し、これを加圧成形する。該加圧成形圧力は通常10〜20000g/cm2である。 【0100】上記原料塊は、保温プレス成形により賦形されてそのまま目的成形体となるので、通常、気泡や異物など目的成形体において望ましくない含有物を含まない状態であることが好ましい。かかる原料塊の大きさ、形状及び製造方法に制限はなく、例えばTダイ等のスリット先のダイスから溶融樹脂を押し出す、樹脂溶液を流延する等の公知の押し出し成形法や射出成形法、或いは樹脂溶液のキャストによるプロセスなどにより製造可能である。かかる成形方法の中では、成形に適した分子量、及び成形時の分子配向の強さ、、残留溶媒の除去、及び熱プレス処理の際、使用する型からの転写性、配向緩和のし易さから考えて、光学部品の成形方法としては、使用する樹脂の流動性が高く、溶媒を使用しない射出成形がより望ましい。 【0101】上記保温プレス成形において、原料塊の段階では複屈折の値に制限はなく、熱可塑性樹脂マトリクスが結晶性を有する場合には原料塊の段階ではかかる結晶化による不透明状態が含有されていてもよい。上記保温プレス成形の顕著な効果は非常に小さい成形残留歪み(例えば複屈折により評価される)を可能とする点にあり、これは、上記温度条件での保温により熱可塑性樹脂マトリクスの高分子鎖が可動性を持ちかつ過度の粘性流動性は持たない状態を可能とすることによる。即ち、原料塊が含有していても良い光学歪みや上記結晶化による不透明状態が、かかる保温で熱的に緩和して解消され均質透明な状態となりしかも同時に賦形される、という過程に特徴がある。また、このような熱的な緩和により、得られる樹脂組成物成形体の寸法安定性の方向異方性が低下する効果が得られる場合がある。 【0102】上記保温温度範囲(ガラス転移温度との温度差)の下限値は、使用する熱可塑性樹脂マトリクスの性質にもよるが小さすぎると複屈折に顕著に現れる成形残留歪みが増大する場合があるので好ましくは20℃、更に好ましくは30℃である。一方該保温温度範囲の上限値は使用する熱可塑性樹脂マトリクスの性質にもよるが大きすぎると成形体の表面平坦度や生産性が低下する場合があるので好ましくは70℃、更に好ましくは60℃である。 【0103】上記保温プレス成形により得られる成形体の冷却工程の温度条件に制限は特にないが、加熱と冷却のサイクル時間を低減する上で、該冷却工程の温度は上記ガラス転移温度よりも10〜30℃低い温度条件であることが好ましい。上記加圧成形圧力の下限値は、使用する熱可塑性樹脂マトリクスの性質にもよるが小さすぎると表面平坦度が悪化する場合があるので好ましくは30g/cm2、更に好ましくは50g/cm2である。一方該加圧成形圧力の上限値は使用する熱可塑性樹脂マトリクスの性質にもよるが大きすぎると成形体の複屈折が増大する場合があるので好ましくは15000g/cm2、更に好ましくは10000g/cm2である。 【0104】上記保温プレス成形における加圧成形圧力は、少なくとも上記保温温度に保持されている最後の1分間の時間平均(以下「最終圧力」と称する)が、0〜1000g/cm2であることが好ましい。この値が小さすぎると、平坦面からの転写精度が十分ではない場合があり、また大きすぎると、保温温度を上げても熱可塑性樹脂マトリクスの高分子鎖の緩和が不十分となり、複屈折が目標まで低減されない。これらの点に鑑み、上記最終圧力の下限値は好ましくは10g/cm2、より好ましくは20g/cm2、更に好ましくは40g/cm2であり、一方該上限値は好ましくは500g/cm2、より好ましくは200g/cm2、更に好ましくは100g/cm2である。 【0105】本発明における保温プレス成形において、加熱時間と冷却時間は特に限定されないが、その機器の加熱・冷却サイクルにおいて温度の均一性を損なわない範囲で可及的に短くすることが工業的に有利である。一般に、上記保温温度での加熱時間は、通常、数秒〜1時間、好ましくは数秒〜30分、更に好ましくは1〜20分である。 【0106】上記保温温度までの加熱速度は,通常、5〜70℃/分、好ましくは,20〜50℃/分程度が望ましい。この速度が遅すぎると,サイクルタイムが長くなって工業化上問題が発生する上、高温にさらされる時間が長くなって熱劣化の問題が発生する場合がある。一方速すぎると,均一な加熱が妨げられる傾向がある。また上記保温温度からの冷却速度は、通常、5〜50℃/分程度、好ましくは10〜40℃/分程度が望ましい。この速度が遅すぎると,サイクルタイムが長くなって工業化上問題が発生する上、高温にさらされる時間が長くなって熱劣化の問題が発生する場合がある。一方速すぎると均一な冷却が妨げられる上、冷却に伴う歪みが局部的に残留し、寸法安定性や複屈折に悪影響を与える場合がある。 【0107】さらに上記加熱及び冷却に際しては、各部の温度制御精度が極めて重要である。プレス機の加熱ステージ(加圧熱板)の有効範囲内で,加熱・冷却時におけるある瞬間で、通常10℃以上の温度差があると,成形品の寸法精度が損なわれ、反りが発生したり、複屈折が十分に低減しない場合がある。以上より,本発明における保温プレス成形に適した加熱プレス機としては,熱媒を循環させて加熱ステージ全体の加熱及び冷却を精密に,かつ迅速に加熱・冷却制御できる高精度プレス機の使用が望ましい。 【0108】上記保温プレス成形の際、原料塊を上下から押さえつけ転写する面の平面を構成する部分の表面粗さRaは、0.1μm以下であることが好ましい。この値が大きすぎると、例えば、液晶表示素子等に組み上げた際、色滲み等の問題が発生し、画質が悪化する。更に、一般の光学部材として考えた場合も表面で乱反射、散乱の問題が発生し光学特性が悪化する。良好な画質や光学特性を得るためには、該Ra値はより好ましくは0.05μm以下、さらに好ましくは0.01μm以下であることが望ましい。 【0109】上記保温プレス成形を実施する雰囲気は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気又は真空中が望ましく、この中では、特に真空中が望ましい。通常の大気中で実施した場合、問題無く目的の基板を得ることもできるが、高温と大気中の酸素のため、樹脂基板表面及び転写媒体の樹脂加工体を上下から挟む面が酸化され、樹脂基板との剥離が困難になる場合がある。特にこの平坦面を何度も再使用する場合には、この現象が顕著に発生する場合が多い。このため、上記保温プレス成形を実施する雰囲気の酸素ガス濃度は10容量%以下、好ましくは5容量%以下、より好ましくは1容量%以下、最も好ましくは0.1容量%以下である。 【0110】また真空中で実施した場合、万一樹脂基板と平坦面との間に隙間が生じても、この部分が気泡となって残留することは無く、製造条件としてより適切である。このため真空中での実施の場合、系内の圧力は100mmHg以下、好ましくは50mmHg以下、より好ましくは20mmHg以下が望ましい。加熱プレス機としては、上記に示された点を考慮すると、高精度に面仕上げされた熱板及び加熱・冷却及び圧力制御、真空度制御プログラムの正確な実施を可能とする制御システムを搭載した高温槽式真空油圧プレス機が推奨される。 【0111】上記保温プレス成形後、本発明の樹脂組成物成形体を挟んだ面から剥離する剥離温度D(℃)は、原料である樹脂組成物(原料塊)のガラス転移温度Tg(℃)に対して、下記数式(A)を満たすことが望ましい。 【0112】 【数3】Tg>D≧Tg−120 (A) この剥離温度Dが高すぎると、剥離時に変形してしまう場合がある。また低すぎると、樹脂組成物とプレス面の材質との線膨張係数の違いから成形体が割れたり、亀裂が入る場合がある。上記数式(A)の範囲内であれば剥離は問題なく行われるが、品質や歩留まり等の生産性を考慮すると、該剥離温度D(℃)は、好ましくは、【0113】 【数4】Tg−20>D≧Tg−100より好ましくは、【0114】 【数5】Tg−40>D≧Tg−90最も好ましくは、【0115】 【数6】Tg−40>D≧Tg−60とすることが望ましい。これらの工程はバッチ処理により行っても、例えばステンレスベルトやターンテーブル等を用いて連続プロセス化しても差し支えない。このように剥離された本発明の樹脂組成物成形体は、上記Tgの10〜50℃低い温度範囲でアニール処理することが、複屈折に顕著に現れる成形残留歪みを低減する点で好ましい。 【0116】[架橋樹脂組成物を使用する成形体の製造方法]本発明の樹脂組成物成形体において架橋樹脂組成物を使用する場合の製造方法に制限はないが、例えば、熱又は活性エネルギー線によって前記重合性液体混合物を硬化させる方法により好適に製造可能である。かかる方法を以下説明する。上記硬化は、重合性液体混合物の必須成分である重合性単量体の重合反応により進行する。この重合反応の形式に制限はなく、例えばラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合、縮重合、開環重合などの公知の重合形式を用いることができる。これらの重合形式の例示のうち、厳密な脱水や脱気が必ずしも不溶である等重合条件を幅広く取ることができる観点で好適なのはラジカル重合、縮重合及び開環重合であり、中でもラジカル重合が更に好ましい。一方、光学部材としての諸特性、例えば光線透過率、寸法安定性及び低複屈折性などを高めるためには、活性エネルギー線照射による任意の重合形式が好ましく、その理由は定かではないが、重合反応の開始が重合系内で均質かつ短時間に進行することによる生成物の均質性によるものと推定される。従って、最も好ましい重合形式は活性エネルギー線照射によるラジカル重合である。 【0117】上記活性エネルギー線とは、必用とする重合反応を開始する重合開始剤に作用して該重合反応を開始する化学種を発生させる働きを有する電磁波(ガンマ線、エックス線、紫外線、可視光線、赤外線等)又は粒子線(電子線、α線、中性子線、各種原子線等)である。本発明において好ましく用いられる活性エネルギー線は上記電磁波であり、エネルギーと汎用光源を使用可能であることから紫外線と可視光線が更に好ましく、最も好ましくは紫外線である。 【0118】従って、もっと好ましい重合態様は、紫外線によりラジカルを発生する光ラジカル発生剤(前記例示参照)を重合開始剤とし紫外線を活性エネルギー線として使用する方法である。この時、必要に応じて増感剤を併用してもよい。上記光ラジカル重合開始剤の添加量は、重合性単量体の総和100重量部に対し通常0.01〜1重量部、好ましくは0.02〜0.3重量部であり、この添加量が多すぎると、重合が急激に進行し複屈折の増大をもたらすだけでなく色相も悪化する場合があり、また少なすぎると組成物を十分に硬化させることができなくなる場合がある。上記紫外線は、波長が通常200〜400nmの範囲であり、この波長範囲は好ましくは300〜400nmである。一方、該紫外線の強度は通常0.1〜200J/cm2のエネルギー範囲で照射し、該照射時間は通常1秒〜3時間、反応促進と生産性の点で好ましくは10秒〜1時間程度とする。かかる活性エネルギー線の照射エネルギーや照射時間が極端に少ない場合は重合が不完全なため得られる樹脂組成物成形体の耐熱性,寸法安定性又は機械特性が十分に発現されない場合があり,逆に極端に過剰な場合は黄変等光による色相悪化に代表される劣化を生ずる場合がある。該活性エネルギー線の照射は,一段階、あるいは複数段階で照射しても良く、その線源として通常は活性エネルギー線が全方向に広がる拡散線源を用い、通常、型内に賦形された前記重合性液体混合物と光源を固定静置した状態で照射する。また、前記重合性液体混合物を適当な基板(例えば樹脂、金属、半導体、ガラス、紙等)上の塗布液膜とし、次いで活性エネルギー線を照射して該塗布液膜を硬化させることも可能である。 【0119】重合形式としてカチオン重合やアニオン重合を行う場合には、光酸塩基発生剤を通常併用する。 [用途]本発明の樹脂組成物成形体の用途としては、ディスプレー用等の各種表示素子用、中でも液晶表示素子用途(例えば液晶表示パネル)、或いは各種光学部材として好適に用いることができる。 【0120】本発明の樹脂組成物成形体は、その優れた光学特性(透明性、寸法安定性、光学的又は寸法安定性の等方性、低光学歪み、分散された半導体ナノ結晶の紫外線吸収性による耐紫外線性など)により、特に光を透過する光学部材(いわゆるパッシブ(Passive)光学部材)に好適に利用される。例えば、可視領域を含む350〜650nmの波長成分を含有する光線を透過させる機構を有する光学機能装置における上記パッシブ光学部材に用いられる。かかる光学機能装置としては、各種ディスプレイ装置(液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等)、各種プロジェクタ装置(OHP、液晶プロジェクタ等)、光ファイバー通信装置(光導波路、光増幅器等)、カメラやビデオ等の撮影装置等が例示される。 【0121】かかる光学機能装置における上記パッシブ光学部材としては、レンズ、プリズム、パネル(板状成形体)、フィルム、光導波路(フィルム状やファイバー状等)、光ディスク等が例示される。かかるパッシブ光学部材には、必要に応じて任意の被覆層、例えば摩擦や摩耗による塗布面の機械的損傷を防止する保護層、半導体結晶粒子や基材等の劣化原因となる望ましくない波長の光線を吸収する光線吸収層、水分や酸素ガス等の反応性低分子の透過を抑制あるいは防止する透過遮蔽層、防眩層、反射防止層、低屈折率層等や、基材と塗布面との接着性を改善する下引き層、電極層等、任意の付加機能層を設けて多層構造としてもよい。かかる任意の被覆層の具体例としては、無機酸化物コーティング層からなる透明導電性膜やガスバリア膜、有機物コーティング層からなるガスバリア膜やハードコート等が挙げられ、そのコーティング法としては真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法、ディップコート法、スピンコート法等公知のコーティング法を用いることができる。 【0122】本発明の光学部材の具体例を更に詳細に例示すると、眼鏡用レンズ、光コネクタ用マイクロレンズ、発光ダイオード用集光レンズ等の各種レンズ、光スイッチ、光ファイバー、光回路における光分岐、接合回路、光多重分岐回路、光度調器等の光通信用部品、液晶基板、タッチパネル、導光板、位相差板等各種ディスプレイ用部材、光ディスク基板や光ディスク用フィルム・コーティングを初めとする記憶・記録用途、更には機能性フィルム、反射防止膜、光学多層膜(選択反射膜、選択透過膜等)、超解像膜、紫外線吸収膜、反射制御膜、光導波路、及び識別機能印刷面等各種光学フィルム・コーティング用途等が挙げられる。 【0123】 【実施例】以下に本発明の内容及び効果を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の例に限定されるものではない。また合成例における各種同定や分析、実施例及び比較例における各種成形や評価は以下の方法で実施した。なお、原料試薬は、特に記載がない限り、Aldrich社より供給されるものを精製を加えず使用した。但し、市販の溶剤を以下のような精製操作により精製溶媒とした。 【0124】精製トルエン・・・濃硫酸、水、飽和重曹水、更に水の順序で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥次いで濾紙で濾過し、五酸化二リン(P2O5)を加えて大気圧にて蒸留した。 精製メタノール・・・硫酸カルシウムと水素化カルシウムで乾燥した後更に水素化ナトリウムを加え、ここから大気圧にて直接蒸留したもの、又はAldrich社より供給された無水(「Anhydrous」)グレードを使用した。 【0125】[分析、成形及び評価の方法] (1)核磁気共鳴(NMR)スペクトル:日本電子社製JNM−EX270型FT−NMR(1H:270MHz、13C:67.8MHz)。溶媒は特に断らない限り重水素化クロロホルムを溶媒として使用し、テトラメチルシランを0ppm対照として23℃にて測定した。 (2)赤外吸収(IR)スペクトル:日本分光工業社製FT/IR−8000型FT−IR。23℃にて測定した。 (3)X線回折(XRD)スペクトル:リガク(株)製RINT1500(X線源:銅Kα線、波長1.5418Å)。23℃にて測定した。 (4)透過型電子顕微鏡(TEM)観察:日立製作所(株)社製H−9000UHR型透過型電子顕微鏡(加速電圧300kV、観察時の真空度約7.6×10-9Torr)にて行った。 (5)光励起発光(PL)スペクトル:日立製作所(株)社製F−2500型分光蛍光光度計にて、スキャンスピード60nm/分、励起側スリット5nm、蛍光側スリット5nm、フォトマル電圧400Vの条件で室温にて測定した。 (6)吸収スペクトルと光線透過率:ヒューレットパッカード社製HP8453型紫外・可視吸光光度計にて室温で測定した。樹脂組成物成形体の光線透過率測定には1mm厚の試験片を用い、任意の異なる10箇所で測定を行いその算術平均値を以下の評価に使用した。 (7)熱分解残渣率:樹脂組成物成形体の一部を採取し、熱重量分析(TG)をセイコーインスツルメンツ(株)製TG−DTA320を用いて、200mL/分の窒素気流下、アルミニウム皿の上で、昇温速度は10℃/分、140℃で保温30分次いで最高設定温度590℃(サンプル直下の実測温度は602〜603℃程度)で保温120分の条件で行った。こうして測定された残渣重量のTG測定前の重量に対する百分率を以下「熱分解残渣率」と称する。 (8)保温プレス成形:窒素ガス雰囲気下で所定温度に加熱可能なオーブン中において、表面粗さRaが0.004μmである2枚のステンレス板の間に原料塊を1mmの厚みのスペーサとともに挟み所定荷重を加えて、厚さ1mmのシートを成形した。 (9)射出成形:日本製鋼所JS28A射出成形機を用い、金型温度は使用した熱可塑性樹脂組成物のガラス転移点よりも30℃低い温度に設定して厚さ1mmのシートを成形した。 (10)ガラス転移温度:デュポン社製DSCにより昇温温度10℃/分の条件で測定した。 (11)複屈折:1mm厚の樹脂組成物成形体を用い、自動複屈折測定装置(オーク製作所製、ADR−150N)を用いて25℃で測定した。測定は任意の異なる10箇所で行いその算術平均値を以下の評価に使用した。 (12)温水試験:1mm厚の樹脂組成物成形体に対し、40℃に保温した蒸留水中に1時間浸漬し次いで23℃相対湿度50%の空気雰囲気下に1週間静置する操作を行い、寸法変化率を測定した。但し、ここでいう寸法変化率とは、前記の通り、成形体平面上に直交する2直線を定め次いでそれぞれの直線上に長さ測定可能な任意の線分を定め(市販の黒マジックインクでマーキングして表示しておく)、温水試験前後における各線分の長さ変化を測定し、各長さ変化の温水試験前の対応する線分の長さに対する各百分率を求め、該百分率の算術平均により定義される量である。これを以下「温水寸法変化率」と記す。 【0126】[コアシェル型半導体超微粒子の合成例] 合成例1:珪素酸化物シェルを有するCdSコア超微粒子の合成前記文献S.Changら;J.Am.Chem.Soc.,116巻,6739−6744(1994)に記載の方法に一部改良を加えて行う。ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(平均重合度は5)をシクロヘキサン中で分散して透明な逆ミセル液を調製し、正確に2等分する。硫化アンモニウム水溶液と硝酸カドミウム水溶液(濃度はともに0.15モル/L)を調製し、上記の2等分した逆ミセル液にそれぞれ同当量加えて、2種の逆ミセル液を得る。これらを十分に平衡に達しさせた後、混合し室温で一晩静置する。ここに、水酸化アンモニウム水溶液(濃度は9.00モル/L、カドミウムに対して75当量)及びテトラエトキシシラン(カドミウムに対して200当量)を加え、約18時間攪拌反応させる。反応液中の生成粒子を遠心分離により沈降させ、シクロヘキサン、次いでメタノールで洗浄して、目的とする珪素酸化物シェルを有するCdSコア超微粒子を得る。この生成物は乾燥せずに濡れたケーキ状で保存し、次の工程に使用する。 【0127】合成例2:珪素酸化物シェルを有するCdSコア超微粒子への有機配位子の結合合成例1で得る珪素酸化物シェルを有するCdSコア超微粒子をテトラヒドロフラン中で分散させ攪拌しながらオクチルトリメトキシシラン及び3−アミノプロピルトリエトキシシランを4:1のモル比で加え、約18時間加熱還流する。反応液を濃縮して得る残渣をメタノールで洗浄後乾燥して、オクチルトリメトキシシラン及び3−アミノプロピルトリエトキシシランを有機配位子として表面に結合した珪素酸化物シェルを有するCdSコア超微粒子(以下「A−CdS/SiOx」と略記)を得る。3−アミノプロピルトリエトキシシランに由来するアミノ基の存在は、IRスペクトルにより確認される。A−CdS/SiOxのTEM観察より、数平均粒径が約6nmのCdSナノ結晶を含有し全体の数平均粒径が40〜50nmであるコアシェル型超微粒子であることがわかる。 【0128】合成例3:珪素酸化物シェルを有するZnOコア超微粒子の合成前記文献H.Liら;Journal of Nanoparticle Research,3巻,157−160(2001)に記載の方法に一部改良を加えて行う。亜鉛塩(硫酸塩、硝酸塩、)の加水分解で得るZnO超微粒子をエタノールに分散し、テトラエトキシシランを加え、少量の水酸化アンモニウム水溶液を加える。約5時間の室温反応後、反応液中の生成粒子を遠心分離により沈降させ、エタノールで洗浄する。 【0129】[実施例] 実施例1:非晶性ポリオレフィン樹脂組成物及びその成形体の製造と評価合成例2で得るA−CdS/SiOx5重量部及びJSR社から供給された非晶性ポリオレフィン樹脂であるアートンF5023(ロット番号:912260−00002)95重量部を1,4−ジオキサンに溶解し、1日以上加熱還流した後に減圧濃縮すると、黄色透明の樹脂組成物を得る。この樹脂組成物のASTM D570規格による60℃、相対湿度90%条件で測定される飽和吸水率は約0.3重量%である。この樹脂組成物を上記保温プレス成形により厚さ1mmの平板に成形し、ナトリウムD線波長における光路長1mm当たりの光線透過率を測定すると70〜80%の値となる。この樹脂組成物の熱分解残渣率を測定すると、約2.5重量%となる。この樹脂組成物のTEM観察において、粒径が60nm以上の超微粒子は全超微粒子の体積に対して1体積%以下となる。上記厚さ1mmの平板を使用し、波長350nmにおける光路長1mm当たりの光線透過率を測定すると、含有されるCdS結晶の吸収効果により10%以下の値となる。この樹脂組成物のガラス転移温度を測定すると、165〜175℃の実測値を得る。上記厚さ1mmの平板において光路長1mm当たりの複屈折の平均を求めると10nm未満の値となる。上記厚さ1mmの平板の温水寸法変化率は約0.01%である。 【0130】実施例2:架橋アクリル系樹脂組成物成形体の製造と評価合成例2で得るA−CdS/SiOx5重量部及びビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレート95部を混合し、窒素雰囲気下80℃で加熱攪拌し、固化する前に熱ラジカル発生剤としてアゾビスイソブチロニトリル(通称AIBN)0.5重量部を溶解した塩化メチレンを加え、上記保温プレス成形で用いる2枚のステンレス板の間にスペーサーとして厚さ1mmのステンレス板を挟んだ隙間に流し込み、乾燥窒素雰囲気下約80℃で加熱してラジカル重合を進行さる。更に120℃で60分加熱することにより、黄色透明な厚さ1mmのシート状樹脂組成物成形体を得る。この樹脂組成物成形体のASTM D570規格による60℃、相対湿度90%条件で測定される飽和吸水率は約0.3重量%である。この樹脂組成物成形体のナトリウムD線波長における光路長1mm当たりの光線透過率を測定すると70〜80%の値となる。この樹脂組成物成形体の熱分解残渣率を測定すると、約2.5重量%となる。この樹脂組成物成形体のTEM観察において、粒径が60nm以上の超微粒子は全超微粒子の体積に対して1体積%以下となる。この樹脂組成物成形体の波長350nmにおける光路長1mm当たりの光線透過率を測定すると、含有されるCdS結晶の吸収効果により10%以下の値となる。この樹脂組成物成形体のガラス転移温度を測定すると、約130℃となる。この樹脂組成物成形体の光路長1mm当たりの複屈折の平均を求めると3nm未満の値となる。この樹脂組成物成形体の温水寸法変化率は0.01%以下となる。 【0131】 【発明の効果】本発明の樹脂組成物成形体は、酸化物シェルを有する半導体超微粒子を均質に分散して含有しているので高度の透明性、優れた耐光性及び低い吸水率を併せ持つ。該半導体超微粒子が紫外線吸収性を有する場合にはその特性を保持するので耐紫外線性に優れる。しかも複屈折により評価される光学歪みが小さいという効果を併せ持つものである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000005968 【氏名又は名称】三菱化学株式会社 【住所又は居所】東京都千代田区丸の内二丁目5番2号
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| 【出願日】 |
平成13年11月21日(2001.11.21) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100103997 【弁理士】 【氏名又は名称】長谷川 曉司
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| 【公開番号】 |
特開2003−155415(P2003−155415A) |
| 【公開日】 |
平成15年5月30日(2003.5.30) |
| 【出願番号】 |
特願2001−355895(P2001−355895) |
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