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【発明の名称】 熱安定性に優れたカチオン硬化性組成物
【発明者】 【氏名】佐々木 裕
【住所又は居所】愛知県名古屋市港区船見町1番地の1 東亞合成株式会社新製品開発研究所内

【氏名】伊藤 直和
【住所又は居所】愛知県名古屋市港区船見町1番地の1 東亞合成株式会社高分子材料研究所内

【要約】 【課題】本発明は、光または熱カチオン硬化性組成物の熱分解開始温度を調整して、保存性能を高め工業的な使用が容易となる硬化性組成物を提供することを目的とするものである。

【解決手段】光または熱カチオン硬化性組成物中にホスフィンオキサイド誘導体を添加することで、この熱分解開始温度を調整できる事を見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は、カチオン重合性基を有する化合物(A−1)およびカチオン重合開始剤であるオニウム塩(A−2)からなる組成物(A)にホスフィンオキサイド誘導体(B)を配合する事を特徴とするカチオン硬化性組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 カチオン重合性基を有する化合物(A−1)およびカチオン重合開始剤であるオニウム塩(A−2)からなる組成物(A)にホスフィンオキサイド誘導体(B)を配合する事を特徴とするカチオン硬化性組成物。
【請求項2】 カチオン重合性基を有する化合物(A−1)の少なくとも一部がオキセタン化合物である事を特徴とする請求項1に記載のカチオン硬化性組成物。
【請求項3】 カチオン重合性基を有する化合物(A−1)の少なくとも一部がオキセタン化合物およびエポキシ化合物である事を特徴とする請求項1に記載のカチオン硬化性組成物。
【請求項4】 カチオン重合開始剤であるオニウム塩(A−2)の熱分解温度が40〜200℃である事を特徴とする請求項1〜3にそれぞれ記載のカチオン硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塗料、コーティング剤、シート状材料、封止材、接着剤、成形材料および注型材料などの材料として有用な、光または熱の適応によりカチオン重合を誘起して硬化物を与えるカチオン硬化性組成物に係わる。この組成物にホスフィンオキサイド誘導体を添加する事により、その熱分解温度を調整することができる光および/あるいは熱カチオン硬化性組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】重合性材料とカチオン重合開始剤とを配合した組成物において、光あるいは熱の刺激により重合が開始されるカチオン硬化の技術は公知である。この重合性材料としては、各種のエポキシ化合物、オキセタン化合物およびビニルエーテル化合物などが知られている。また、このカチオン重合開始剤として潜在性を有する各種オニウム塩が知られている。これら重合性材料と潜在性を有するカチオン重合開始剤とを配合した組成物の組み合わせによっては、重合開始温度が低下しカチオン重合開始剤としてのオニウム塩の潜在性を十分に発揮できない場合があった。例えば、オキセタン化合物を重合性材料とした場合、スルフォニウム塩系の熱潜在性カチオン重合開始剤との配合において重合開始温度の低下により塗布作業が可能な時間(可使時間)の著しい短縮、およびヨードニウム塩系の光潜在性カチオン重合開始剤との配合において保存性の低下が当該者の間で知られていた。
【0003】光または熱潜在性カチオン重合開始剤とカチオン重合性基を有する化合物を重合性材料として配合したカチオン硬化性組成物において工業的に使用可能なオニウム塩の種類は限られたものしか知られていない。また、これらの光または熱潜在性カチオン重合開始剤を配合して重合・熱分解開始温度を調整しうるものは、未だ見出されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、光または熱カチオン硬化性組成物の熱分解開始温度を調整して、保存性能を高め工業的な使用が容易となる硬化性組成物を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、熱分解開始温度を調整するという課題について鋭意検討を重ねた結果、光または熱カチオン硬化性組成物中にホスフィンオキサイド誘導体を添加することで、この熱分解開始温度を調整できる事を見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は、かかる新たな知見に基づき完成されたものである。
【0006】すなわち、本発明は、カチオン重合性基を有する化合物(A−1)およびカチオン重合開始剤であるオニウム塩(A−2)からなる組成物(A)にホスフィンオキサイド誘導体(B)を配合する事を特徴とするカチオン硬化性組成物に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳しく説明する。
カチオン重合性基を有する化合物(A−1)本発明のカチオン硬化性組成物に使用されるカチオン重合性を有する化合物(A−1)としては、三員環の環状エーテルであるオキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)や四員環の環状エーテルであるオキセタン環を有する化合物(オキセタン化合物)などの環状エーテル化合物やビニルエーテル化合物などが挙げられる。これらカチオン重合性を有する化合物(A−1)をA−1成分と称することもある。A−1成分においては、これら複数の化合物を組み合わせて使用することもできる。
【0008】カチオン重合性基を有する化合物(A−1)としてのオキセタン化合物とオニウム塩との組合せにおいて重合開始温度の低下が生じやすいことは先に述べたように知られている。オキセタン化合物とは、オキセタン環を化合物中に1個または複数有しているものであり、この具体的なものを例示するが、オキセタン環を有する化合物であれば、これらに限定されるものではない。
【0009】オキセタン環を1個有するオキセタン化合物は、下記一般式(1)で表されるものもある。
【0010】
【化1】

【0011】式(1)中、R1は水素原子または低級アルキル基であり、メチルまたはエチル基が好ましく、R2およびR3はそれぞれ水素原子または置換基を有していてもよい低級アルキル基などであり、この置換されたものとしてはクロロメチル、3−クロロプロピルおよび3,3,3−トリフルオロプロピルなどのような炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基並びに3−シアノプロピルなどのような炭素数2〜4のシアノアルキル基などの置換アルキル基などであり、これらはそれぞれ異なっていても良く、R4はアリル基、アリール基、炭素数7〜10のアラアリル基、炭素数1〜18個の直鎖状あるいは分岐状アルキル基、または炭素数1〜10の水酸基を有する分岐があっても良いアルキル基などであり、Xはメチレンまたは酸素原子などである。
【0012】この具体的な例として、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンおよび3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタンなどがある。
【0013】オキセタン環を2個有するオキセタン化合物は、下記一般式(2)に示されるものもある。
【0014】
【化2】

【0015】式(2)中、R5およびR6はそれぞれ水素原子、低級アルキル基または置換炭化水素基を示し、それぞれ異なっていても良く、R7は酸素原子または下記一般式(3)を示す。この置換された炭化水素基とはクロロメチル、3−クロロプロピルおよび3,3,3−トリフルオロプロピルなどのような炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基並びに3−シアノプロピルなどのような炭素数2〜4のシアノアルキル基などである。
【0016】
【化3】−O−(R8−O)k− (3)
【0017】式(3)中、kは1〜5の整数であり、R8は炭素数2〜12の直鎖状あるいは分岐状の水酸基があっても良い炭化水素基を示し、好ましくはエチレン、プロピレンおよびベンゼンジメチルなどである。
【0018】この具体的にものとして、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル(商品名OXT−221、東亞合成製)が挙げられる。
【0019】多官能オキセタン化合物としては、特開平06−16804号に記載されている下記式(4)で表される化合物が例示できる。
【0020】
【化4】

【0021】式(4)中、R9は水素原子または炭素数1〜6の分岐があっても良いアルキル基であり、R10は炭素数1〜6のアルキレン基、鎖状または分岐状ポリ(アルキレン)基、キシリレン基などから成る群から選ばれるm価基を示し、Zはエーテル基、チオエーテル基、メチレン基、エステル基などを示し、mは2、3または4である。
【0022】カチオン重合開始剤(A−2)本発明において、カチオン重合開始剤(A−2)は光あるいは熱の適応により活性化されて酸成分を生成し、組成物中のカチオン重合性基の重合を誘発するように作用するものである。このカチオン重合開始剤(A−2)をA−2成分と称することもある。
【0023】光潜在性を有する光カチオン重合開始剤(A−2)とは、光が照射されて活性化されエポキシ化合物およびオキセタン化合物などが有している開環重合性基の開環を誘発し得るオニウム塩類である。
【0024】上記オニウム塩類としては、例えば、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩およびヨードニウム塩などが挙げられる。例えば、オプトマーSP−150{商品名、旭電化工業(株)製}、オプトマーSP−170{商品名、旭電化工業(株)製}、UVE−1014(商品名、ゼネラルエレクトロニクス社製)、ロードシル2074(商品名、ローディア社製)およびCD−1012(商品名、サートマー社製)などの市販品を利用することもできる。
【0025】熱潜在性を有するカチオン重合開始剤(A−2)とは、加熱により活性化されエポキシ化合物およびオキセタン化合物などが有している開環重合性基の開環を誘発するものであり、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩およびスルホニウム塩などの各種オニウム塩類などが例示できる。
【0026】上記オニウム塩類としては、例えば、アデカオプトンCP−66およびアデカオプトンCP−77{いずれも商品名、旭電化工業(株)社製}、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80LおよびサンエイドSI−100L{いずれも商品名、三新化学工業(株)製}、およびCIシリーズ{日本曹達(株)製}などの市販の化合物を用いることができる。
【0027】カチオン重合開始剤(A−2)であるオニウム塩の熱分解温度は40〜200℃であることが好ましい。熱分解開始温度が40℃以下の場合潜在性が不十分で一般に使用できなく、200℃以上であれば本発明による安定性の向上を行う必要がない。
【0028】また、カチオン重合開始剤(A−2)の配合割合は、A−1成分100重量部に対し、0.01〜5重量部の範囲とすることが好ましい。A−2成分の配合割合が0.01重量部未満の場合には、光あるいは熱の作用によりこれが活性化しても、開環重合性基の開環反応を十分に進行させることができないことが有る。また、これを5重量部超えて配合したとしても、重合を進行させる作用はそれ以上高まらず、逆に硬化性能が低下することがある。
【0029】ホスフィンオキサイド誘導体(B)本発明おいて使用されるホスフィンオキサイド誘導体(B)は、下記一般式(5)で表わされる化合物が使用できる。ホスフィンオキサイド誘導体(B)をB成分と称することもある。
【0030】
【化5】

【0031】式(5)中、R11〜R13はそれぞれ同一あるいは異なっていてもよい直鎖状あるいは分岐状炭化水素基、または芳香族基などを示す。具体的にこれらR11〜R13は、それぞれ同一であっても異なっていても良い炭素数1〜10の分岐があっても良いアルキル基であり、水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などを有する炭素数1〜10の分岐があっても良いアルキル基であり、炭素数4〜10の分岐があっても良いアルケニル基であり、フェニル基であり、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を有するフェニル基であり、アラアルキル基などである。
【0032】B成分は、組成物(A)と相溶性を有するものであれば、特に上記式(5)に限定されるものではない。これら相溶性に優れる例として、式(5)のR11〜R13がすべてブチル基であるトリブチルホスフィンオキサイド、フェニル基であるトリフェニルホスフィンオキサイド、3−ヒドロキシプロピル基であるトリ(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキサイドおよびブチル基と3−ヒドロキシプロピル基からなるn−ブチル−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0033】B成分の添加量は、組成物(A)100重量部に対して、0.0001〜1重量部とすることが好ましい。0.0001重量部以下であった場合、重合開始温度の高温化が困難となり、1重量部を超えて添加した場合、硬化不良が生じる場合がある。
【0034】他の添加物本発明におけるカチオン硬化性組成物には、上記の組成物(A)およびホスフィンオキサイド誘導体(B)の他に、本発明の目的を阻害しない範囲で、公知のモノマー、可塑剤、老化防止剤および増量剤などを適宜配合してもよい。また、塗布性を向上させる目的で、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、イソプレンゴムおよびブチルゴムなどの増粘剤、コロイダルシリカ、ポリビニルピロリドンなどのチキソトロープ剤、炭酸カルシウム、酸化チタンおよびクレーなどの増量剤などを添加してもよい。
【0035】さらに、ガラスバルーン、アルミナバルーンおよびセラミックバルーンなどの無機中空体;ナイロンビーズ、アクリルビーズおよびシリコンビーズなどの有機球状体;塩化ビニリデンバルーン、アクリルバルーンなどの有機中空体;ガラス、ポリエステル、レーヨン、ナイロンおよびセルロースなどの単繊維などを添加してもよい。
【0036】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定を受けるものではない。
【0037】<実施例1〜4および比較例1>A−1成分として二官能オキセタン化合物であるジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル(商品名、OXT−221、東亞合成製)、A−2成分として熱潜在性を有するカチオン重合開始剤であるCP−66(商品名、旭電化製)からなるカチオン重合性組成物(A)に、B成分としてトリブチルホスフィンオキサイド(TBPO)あるいはトリフェニルホスフィンオキサイド(TPPO)を表1に示したように配合し、実施例1〜4の組成物とした。また、比較例1はB成分未添加のものである。
【0038】
【表1】

【0039】示差熱温度測定(DSC)の測定結果を図1(実施例1,2:TBPO配合品)および図2(実施例3,4:TPPO配合品)に比較例1とともに示す。実施例1〜4および比較例1の重合開始温度および配合後の組成物の使用可能な時間(可使時間)を表2に示した。この可使時間とは、表1に記載の配合割合で作製した組成物をガラス瓶中に入れて25℃で放置し、これら組成物における粘度増加が認められるまでの時間である。
【0040】
【表2】

【0041】<実施例5〜7および比較例2>A−1成分としてOXT−221および3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名、UVR−6110、ユニオンカーバイド社製)、A−2成分として光潜在性を有するカチオン重合開始剤であるトリルクミルアイオドニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(商品名、ロードシル2074、ローディア製)からなるカチオン重合性組成物に、B成分としてトリブチルホスフィンオキサイド(TBPO)を表3に示したように配合し、実施例5〜7の組成物とした。また、比較例2はB成分未添加のものである。
【0042】
【表3】

【0043】DSC測定結果を図3(実施例5〜7および比較例2:TBPO配合品)に示し、それらの重合開始温度を表4に示した。また、表3の割合で作製した組成物を60℃にて保管し、組成物の粘度増加が認められるまでの日数(加熱劣化促進時間)および組成物の光硬化性(T.F.T.:タックフリータイム)を測定した結果も表4に示した。なお、T.F.T.は、バーコーターにて鋼板上に組成物を塗布(厚さ約4ミクロン)した後、これらの塗布物を120W/cmの超高圧水銀灯をランプ高さ10cmに設置したコンベアー型の光照射装置(10m/分のコンベアースピード)で光照射し、これらの組成物表面がタックフリー(粘りがなくなる)になるまでの通過回数で表した。
【0044】
【表4】

【0045】熱潜在性を有するカチオン重合開始剤(A−2)を配合した組成物(A)において、B成分を添加した実施例1〜4は、比較例1に比べ重合開始温度が高くなり、可使時間の著しい延長が可能であった。その際の重合熱の発生量は、ほとんど変化が認められなかった。このことは、ホスフィンオキサイド誘導体(B)を加えて重合を開始させる温度を上昇させても、即ち配合後の使用可能な時間が延長できても、組成物中に含まれているカチオン重合性基の重合する量は、B成分を加えていないものと同等量であり、重合した後の硬化度などの性状が同じであることを示している。
【0046】また、実施例5〜7に示したように、光潜在性を有するカチオン重合開始剤(A−2)を配合した組成物(A)においても、重合熱の発生量が変化することなく重合開始温度が高くなった。この加熱劣化促進時間が延長したことから、保存安定性の著しい向上が認められた。このことは、ホスフィンオキサイド誘導体(B)を加えても加えていないものと同等量のものが重合し、重合した後の硬化度などの性状が同等であることを示している。なお、実施例7において2パスと光硬化性が若干低下したが、実用上の問題とはならない程度であった。
【0047】
【発明の効果】以上述べたように、本発明は、カチオン重合性基を有する化合物(A−1)および潜在性を有するカチオン重合開始剤であるオニウム塩(A−2)からなる組成物(A)にホスフィンオキサイド誘導体(B)を添加することにより、光および熱潜在性を有する光および熱カチオン重合開始剤(A−2)の重合性能を低下させることなく重合開始温度を高温にシフトすることができる。このことは、カチオン重合による硬化性組成物を使用するときの用時調製が不要となるだけでなく、保管時間の延長など工業的価値がきわめて大きく、多様な用途での使用が大いに期待され得るものである。
【出願人】 【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
【住所又は居所】東京都港区西新橋1丁目14番1号
【出願日】 平成13年11月21日(2001.11.21)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−155413(P2003−155413A)
【公開日】 平成15年5月30日(2003.5.30)
【出願番号】 特願2001−355648(P2001−355648)